2ntブログ
E小説(中出し・孕ませ・時間停止・催眠・環境変化など)
エロ小説のサイトですので18歳未満の方はお帰りください。傾向はマニア向け、作品中のほぼ100%中だし妊娠描写、付属性として時間停止・催眠・環境変化などです。
下着泥棒の来客
 浅川ハルミ(あさかわ はるみ)は、自宅のマンションでたまの休日を楽しんでいた。ハーブティーを淹れて、雑誌でも読みながら寛いでいた矢先に、ピンポーンとチャイムが鳴る。休日の来客、出てもろくな事は無いと思うのだが、宅急便とかだったら困る。出ないわけにも行かない。
「はーい」
 玄関の前には、灰色の背広を着た男が立っていた。あちゃー、セールスの人かな。出なければ良かったとハルミは後悔する。
「あのー、セールスはお断りなんですけど」
 さっさと返ってもらおうと、断りの文句を口にする。
「いえいえ、そういうものではありません。この度、この地域に引っ越してきましたのでご挨拶をと思いまして」
「はあ、ご近所の方なんですか。それはご丁寧にどうも」
 引越しの挨拶か何かだろうかと、ハルミは笑顔を見せる。背広にアタッシュケースなんて紛らわしい格好だったから間違えたけど、ご近所の人にツッケンドンな対応は失礼だったかもしれない。
「ご挨拶が遅れました、ボク下着泥棒です」
「ハァ? シタギ、ドロボウさん……変わった、いえ個性的な、お名前ですね」
 ハルミはポカンと口を開けて、男の言葉を繰り返した。
「いえ、名前ではなくて。ボクの職業が下着泥棒なんです。女性の下着を盗む泥棒のことです。知ってますよね」
「それは、知ってますけど……ええ」
 ハルミはワケが分からないと困惑した顔で、肩をすくめて小首を傾げた。
 このサラリーマン風の男は、下着泥棒であると言う。本人がそう言っているのだから間違いはないのだろうが、泥棒が自らチャイムを鳴らして訪ねてくるなんて聞いたことがない。
 突拍子も無い話で、ハルミの理解が追いつかない。

 困惑しているハルミに、男は噛んで含めるように説明する。
「怪盗ルパンを知っていますか、プロの下着泥棒は怪盗と一緒で予告して盗みに参上するんです。ですからご挨拶に上がった次第でして、今日からボクは、ハルミさんの下着を盗んで盗んで盗みまくってさしあげます」
「ちょっと、そんなことをさしあげられたら困りますよぉー」
 男の人には分からないかもしれないけど、女性の下着はけっこう高価なものなのだ。特にハルミぐらいの大きなサイズになると、値段は若干割高になる。
 自分が下着泥棒の被害にあうなんて考えたこともなかったけど、盗まれたらすごく嫌だ。
「おや、ハルミさんは下着は盗まれたくないと」
「あたりまえですっ!」
 下着を盗まれたいなんて人がいるわけがない。
「困りましたねえ……。では盗む代わりに、下着を貸し出して頂くということで一つ手を打ちませんか?」
「貸し出し……ですか?」
 下着の貸し出し、ハルミは男のセリフを繰り返してみたが、意味が分からない。
「ハルミさんは、下着泥棒が下着を盗んだら、それを一体何に使うか考えたことはありませんか」
「そんなの、ありませんけど……」
 そういえば外に干していたら盗まれるというので、家の中に干しているのだが。どうして盗む人がいるのか、それを何に使うのかまで考えたことはなかった。
 漠然と、変態さんが何かイヤラシイことに使うのかとも考えたが、そんなこと初対面の男に言えることでもない。
 言葉を濁して、頬を赤らめてるハルミに男は笑いかけて囁く。
「実地でご説明して差し上げたほうがいいみたいですね。では、ハルミさんが履いているパンティーを貸してください」
「えっ、いきなり何を言ってるんですか。嫌ですよ、そんなの」
 今日履いている下着は、そんなにお気に入りのでも高いのでもないけれど、いきなり知らない男によこせと言われて渡せるものではない。

「タダでとは申しません、こっちの新しいパンティーと交換ということで」
 男は、アタッシュケースからビニールで包装された真新しいパンティーを取り出して見せる。デザイナーズブランドのオシャレな真紅のパンティーだった。
 普段ハルミが履いているような野暮ったいパンティーではなくて、シャープな縁取りがスタイリッシュに決まっている。お店の見本で飾られてる水準のモノだ。ちょっと欲しいなと思ってしまう。
(サイズが合うかしら、いや私は何考えてるんだろ。いくら交換といっても下着を渡すなんて)
「ううんっ。どうしよお……」
 戸惑いを見せるハルミに男はそっと囁くように提案した。
「ちょっと借りるだけですよ。ほんの一刻、貸していただくだけですぐお返しします。それに加えて新しい下着が手に入るんですよ。お得な取引、そう思われませんか」
「そう言われれば、そうかもしれないですけど」
 下着泥棒に、下着を渡してしまっていいものだろうか。
 何だか男の口車に乗せられた気がして不安だが、ハルミも女性なので『お得』って言葉に弱い。
「それに、下着を盗んだ男がそれで何をするのか。ハルミさんだってちょっと興味を惹かれませんか」
 確かに、そう言われて見れば興味がないわけではない。ハルミが、知的好奇心をそそられるのも事実だった。
(うーん、でも何かいやぁ~な予感がするんだけど)
 男は張り付いたような笑顔を浮かべたまま、玄関につったっている。おそらく、ハルミがウンと言うまで帰らないだろう。
「じゃあ、分かりました。ちょっとそこで待ってくださいね」
 ため息ひとつ付くと、ハルミはトタトタと玄関先からリビングに入る。リビングの扉をしっかり閉める、脱ぐ所を男に見られたくないからだ。
 そこで、スルッとパンティーを脱いだ。
「うーん、何でよりにもよってこんな日なんだろ」
 安物の綿、しかも縞々のパンツだった。柄なんか気にしない普段穿きってやつ。こんな子供っぽいパンティーを他人に見せるのは、ちょっと恥ずかしい。

 いま穿いているものって約束だったし、こっそり交換するわけにも行かない。
 また玄関にに戻ろうと、振り向いたら目の前に男がしゃがみながらハルミのスカートの中を覗き込んでいて、心臓が止まるかと思った。
 リビングの扉はいつのまにか開いていた……上がりこんだのか。
「キャァ、なんで勝手に上がりこんでるの!」
 全く気配を感じさせないあたり、さすがに下着泥棒といったところ。感心している場合ではない、ハルミは怒る。
 男はまあまあと宥めながら、ニンマリと笑ってハルミの手からひったくるようにパンティーを受け取った。
「いやいや失敬失敬。ボクは下着泥棒ですから、職業柄女性が下着を脱ぐシーンは見逃すわけにはいかなくてね」
「もうっ、人の家に勝手に入ってきちゃ駄目なんですからね」
 お仕事なら仕方がないのかなとハルミはちょっと考えて、いややっぱりオカシイと思い至る。
 だいたい、下着泥棒って職業なのだろうか。お仕事なら何かしら給金が発生するはずだが、下着でお金が儲かるのかと不思議な気分になる。
 家宅侵入については、相手は泥棒だと主張しているのだから今更咎め立てしてもしょうがないのかもしれないけれど。
「はい、パンティーをお貸し頂く代わりにプレゼントです」
 男はさっきのオシャレな下着を、まるでハンカチを差し出すような気障なポーズでハルミに手渡した。
「ありがとうございます……」
 袋から開けて手で触ると、滑らかなシルクだった。きっと高級なものだろう、履き心地がよさそう。後で洗濯してから大事にしまっておこうと、ハルミはリビングのソファーの上にそっと置いた。
「さて、それではハルミさんにお貸しいただいたパンティーで、実演をやらせていただきますがよろしいですか」
 男がお伺いを立てるとハルミも頷く。それを見て、満足気に男はソファーにドッカリと座り込んだ。勝手に上がりこまれて寛がれてしまった。まあ仕方がないのでハルミも対面のソファーに腰掛ける。
 飲みかけのハーブティーに口をつけたが、すっかり冷えてしまっていた。やれやれである。

「さて、まずはパンティーのテイスティングです」
「まるで、ワインのソムリエか紅茶の鑑定士さんみたいですね」
 ハルミがそう言うと、その通りですと笑って男は大事そうに持っているハルミのパンティーの香りを、クンカクンカと嗅ぎ始めた。
「ハルミさんのパンティーは……ほおっ、青と白のスプライトとは素晴らしいですね。材質は綿か、この少しよれてごわついた生活感に食指をそそられます。ボクはもう100枚以上のパンティーを見てきましたが、この形状といい匂い立つ芳醇な香りといい最高級品質ですよ」
「はあっ、お褒めいただいて光栄ですけど。安物ですよそれ……」
 使いふるしのパンツを褒められても、あんまり嬉しくはなかった。何が楽しいのか、パンティーを丸めたり大きく広げたりしながら、男は鼻を押し付けて匂いを嗅いでいる。眺めているハルミの頬が紅色に染まる。
 なんだか自分の体臭を直接嗅がれているようで、とても恥ずかしい気持ちになってきたのだ。
「まるで満開の桜が舞い散る丘を、そっと指だけつないで歩く初々しい恋人たちのような……なんと爽やかで甘い香り。ハルミさん、香水か何かをふりかけているんですか」
「いえ、そんなモノは別に使ってませんけど……」
「そうは言っても……。そうか香水じゃなくてハルミさん自体の体臭がこれほどの甘いのですね、おおぅ……甘さの中に仄かに漂うこの酸っぱい香りはっ!」
「恥ずかしいから、あまり嗅がないでください」
「たまらんです、ハルミさんの香りは癖になりそうですなー」
 舐めんばかりに、フガフガと鼻を押し付ける男……

 ……いや、男は本当に舐め始めた。クロッチの部分を舌で執拗に。
「この味わい、なんと素晴らしいっ! マッ、マーベラスッ!」
 男は本当に感激しているらしく、感極まった表情でパンツをかぶると、身体をピンッと硬直させ、プルプルと肩を小刻みに震わせた。
「やだっ、そんなとこ本当にヤメて!」
 ハルミが感じた強烈な嫌悪感は、もらったパンティーを返して今すぐに取り返してしまおうかと考えたぐらいだった。男はそんなハルミの様子を頓着もせず、舐め回すとニヤっと笑って話し始めた。
「ハルミさんは、二十一歳ですね。誕生日は、九月二十九日。血液型はO型」
「すごい……どうして分かるんですか?」
 見知らぬ男に、いきなり自分のプロフィールを語られてハルミは驚きを隠せない。
「ボクはプロの下着泥棒ですから、パンティーを嗅いで舐めればこれぐらいは分かるんです。ご両親は健在、年の少し離れた妹さんがいますね」
 ピタリとハルミの生活環境まで当てるので、感心した。
「いまは一人暮らしで、恋人はいない?」
 男の最後の言葉だけは疑問形だった。
「ええ……恋人といえる人はいませんけど。そこまで分かるんですか」
 男は情感豊かな深い笑みを見せると、パンティーを裏返して広げてみせた。
「もちろんですよ、ここにほんの少しシミがついてるでしょう。これを舐めれば一発で分かるんです」
「やだ、そんなとこ見せないでください」
 占い師みたいな技術にちょっと尊敬すらしていたハルミは、また我に返って羞恥に顔を背けた。まるでほっぺがリンゴみたいに赤く染まる。
「これぐらいで恥ずかしがってもらっては困りますよ。いまから、ボクのオナニーを見ていただくんですから」
「えっ、なんですって?」
 本当はちゃんと聞き取れたけど、まさかと思ってハルミは聞き返してしまう。
「オナニーです、オナニー。男の場合はセンズリとも言いますね、文字通りペニスを擦って射精することです」
 男の赤裸々な説明に、ハルミは言葉を失ったように俯く。
「まさか、ハルミさん。オナニーを知らないってわけじゃないでしょうね」
「知識としては、知ってますけど……」
 ハルミは言葉を濁す。顔は真っ赤だった。
「男がオナニーをするところを見たことがないんですか」
「そんなのあるわけないじゃないですかぁ」
 怒気を込めて、顔を赤くするハルミに初々しいことだなと男はほくそ笑んだ。
「では、今日はいい機会でしたね。たっぷりご覧ください」
 そう言うと、男はジーとズボンのジッパーを外して、鎌首を持ち上げた蛇のようなイチモツを屹立させた。大きさは日本人男性の標準ぐらい。すっかり皮が向けて、先っぽが赤黒くなっている見事な大人ペニスだった。

「いやぁっ! いきなり……なんてもの出すんですかぁ!」
 ハルミは悲鳴を上げると、目を手で覆った。
「ハルミさんが、見たいって言ったんですよ?」
「そんな事、言ってません!」
 怒るハルミに、男は悠然と言い放った。
「嘘です、さっき見たいって言ったじゃないですか」
「いえっ、それは、その確かに言いましたけど……。私はまさか、そんなモノまで見せられると思ってなかったからですよ」
 男は、ハルミを言葉で嬲るように畳み掛ける。
「ハルミさんはウブなんですね。普通、男が女の下着を盗んだらそれでセンズリこくに決まっています。常識的に考えたら分かりそうなものでしょう。そんなことも想像してなかったんですか」
 常識的に考えたら分かるなんて言われたら、なんかハルミのほうが悪い気がする。
「あのっ、すいません。私、そこまで本当に深く考えてなかったんで本当に止めて下さい」
 だから勘弁して欲しかったのだが、男はソファーから立ち上がって勃起した陰茎をハルミの眼前に突き出した。
「ほら、ちゃんとハルミさんのご要望通りオナニーしてるんだから、しっかり見てください。これで大人の女性としての知識も得られますよ。良かったですね」
「良くないですっ……そんなイヤらしい知識いりません」
 頬を染めて顔を背けるハルミの目の前で、男は勃起した逞しい肉棒を楽しげに上下揺らした。玉袋も左右に揺れる。
「ううっ、やっぱり本人を目の前にすると興奮しますね。まだ触ってもいないのに、ボクの先っぽからカウパー液が垂れていますよ。なんなら舐めて、カウパーの味を確かめてみますか」
「そんなのいりません……」
「ほら遠慮しないで、ボクもハルミさんの香りや味を確かめたんですから、ハルミさんだって味わっていいんですよ」
 顔を背けているハルミの鼻先にべちょっとした感触、なんと直接顔に摺りつけてきたのだ。ハルミはわあきゃあと悲鳴をあげて、ソファーに倒れこんだ。
「いやあぁっ、近づけないでぇ!」
「なんだ意気地がないな。じゃあ、せめてオナニーするの見ててくださいよ。ハルミさんに見せるのにやってるのに、見てくれないと何をするかわかりませんよ」
 恐ろしくて、ハルミは頷くしかなかった。
「わかりました。見るだけですからね……」

 よそ見をしているうちにまた顔に擦り付けられてはたまらない。ハルミは恥ずかしさを堪えて、男の有様を眺めることにした。ハルミと視線を合わせると、男は勃起した陰茎を見せつけるようにセンズリを再開する。
 ハルミの眼に、初めて見る男の陰茎はグロテスクで赤黒い肉の塊と感じられた。鼻先にイカ臭いすえた匂い。それが男の生殖器の匂いなのだ。ハルミの目の前で青筋張った血管の通ったそれはピクピク脈打って、エイリアンの頭みたい。
「こうやって手で刺激して十分に勃起したチンコを、ハルミさんがさっきまで履いていたパンティーのちょうどオマンコが当たる部分に擦り付けます」
 料理番組の手順を説明するみたいに、男は淡々とパンティーを広げて、勃起したものをクロッチの部分に当てた。そして、またパンティー越しに陰茎をこすり続ける。
「オマ……、なんて卑猥な……」
 目の前で自分のパンティーが犯されている。ハルミは、なんでこんなことになったのか分からなくて、あまりの情けなさに涙を流した。
「どうですか、下着泥棒はパンツを盗んだらみんなこうやってチンチンを挟んで擦ってるんですよ。何か感想はありますか?」
「最低です、最低の変態だと思います」
 瞳に涙を浮かべて、でも目を背けることが出来ないハルミは、恨めし気に男のニヤニヤ顔を睨みつけて、憤懣やるかたないといった調子で吐き捨てた。
「いいですネ、いいですヨ! その侮蔑を含んだ表情。興奮します」
「もーッ、私は怒ってるんですよッ!」
「だからそれがいいんですヨ! ご自分のショーツが犯されてるのを侮辱に感じて怒ってるんですよネ。その声、その視線、たまりません、震えが来ます。アアッ、ハルミさん、ハルミ……あううっ」
 男は情けない声を上げると、腰をガクガクと震わせた。ハルミのパンティーの部分が
じわりと濡れていくのが分かる。
 あたりに、プンと鼻を突く栗の花のような匂いが漂った。
「もしかして、私のパンツに出しちゃたんですか」
「ええっ、さすがハルミさんは大人ですね。射精したのバレちゃいましたか。タップリと出してしまいましたよ。ほら」
 男は自分の股間をショーツでふき取ると、裏返してみせた。
 ハルミのパンティーのクロッチの裏地に、タップリと糸を引くような白濁した粘液が付着していた。
「そんなのまで、見せないでください」
 さすがにハルミは顔を青くして眼を背けた。

「下着を使ったオナニーはこうやって間接的に股間と股間を摺りあわせて、セックスをイメージするのが作法なんです。分かりましたか?」
 分かりたくないが、そうやって目の前で汚れたパンティーを示されて諭されたら頷かざる得ない。
「もう十分に分かりましたから、勘弁してください」
「さて、ではボクのオナニーの説明は終わりましたから。このパンティーはお返ししますね」
 男は、ベットリと精液で汚れたパンティーをハルミに手渡そうとしてくる、あたふたとそれを避けながらハルミは叫んだ。
「そんなモノ返されてどうしろっていうんですかっ!」
「どうしろって、また履けばいいじゃないですか」
 男は、平然と信じられないことを言う。
「こっ、この汚れたパンティーを履けって言うんですか」
「そうですよ、それが下着を使ったオナニーの作法ですもの」
 男はさも当然といった口調だった。
「作法って……」
「ハルミさん、もう二十歳を過ぎたいい大人の貴方が、まさか下着オナニーの作法も知らないわけもないですよね」
 男は、汚れたパンティーを差し出しながらニンマリと笑う。
「作法は……。その知ってますけど」
 男のオナニーを見るのも、下着を汚されるのも初めてだったハルミはぼんやりとしていたが、男に何度も言われるとそういう『作法』があったと思い出してくる。
「じゃ、マナー通りにお返ししたパンティーを履いて、マンズリしてくださいよ」
「まっ、マンズリ?」
 汚れたパンティーを指の先で引っ掛けるように受け取ったハルミは、さらに発せられた言葉を疑問形で返す。
「男がセンズリしたら、女がマンズリで返す。まさかご存知ない?」
「いえっ、知ってますよそれぐらい」
 センズリが男の自慰行為なら、マンズリは女の自慰行為であろう。察しの良いハルミは、それがオナニーを意味する言葉だと教えられなくても理解できた。
 しかし、理解できるから納得できるものでもない。
「でも、その……」
 汚れたパンティーを広げながら、ハルミは躊躇したように口ごもる。

「どうしました?」
「あの、こんな精液で汚れたものを履いて、まっ……マンズリしたら精液が膣に入って妊娠しちゃうんじゃないですか」
 ハルミが口ごもりつつ、勇気を出して聴くと男は高笑いをし始めた。
「アハハハッ、面白いジョークですね」
「えっ、ええ……」
 ハルミは、愛想良く笑い返す。頬は少しひきつっている。
「まあ実際、精子は空気に触れると死んでしまいますから、マンズリで妊娠する心配はありません。性教育で習いましたよね」
「そうでしたね」
 そうだったのか。そう言われると、そうだったような。あとは、汚いのを我慢すればいいだけか。まさかマナーを返さないわけにも行かず、ハルミは恐る恐る汚れたパンティーに足を通した。
「どうですか、ボクの精液付きパンティーの感触は」
「すごく股がベタベタして気持ち悪いです」
 亜矢は、震えるような声で呟く。頬はひきつったままだ。
「ほら、早くマンズリしてくださいよ。ハルミさんは精液パンティーマンズリは始めてなんですよね。よかったらお手伝いしましょうか」
 男が手を伸ばしてくるのを跳ね除ける。
「いいえっ、自分で出来ますから」
(ただオナニーすればいいのよね……)
 ハルミは、いつもしているように濡れたパンティーの上からゆっくりと円を描く用に優しく撫でさすった。
「ずいぶん大人しいオナニーですね」
「ええっ……」
 ハルミは、オナニー姿を男に見られていると思うとまた恥ずかしくなってきた。顔を真赤にして俯く。

「いま、ハルミさんのパンティーのなかでボクの精液とハルミさんの愛液がジュクジュクに混じり合ってるんですね」
「お願いですから……。そんな意地悪なこと、いわないで、くださいよぉ……」
 いま、耳元でそんなことを囁かれては性経験に乏しいハルミにはシゲキが強すぎて、腰が抜けてしまいそうだ。
「ボクの精液で、ハルミさんのマンコが濡れているんですよ。もしかしたら、精子がマンコに入って妊娠しちゃうかもしれないですね」
「そんな! 妊娠しないんじゃなかったんですか」
 そんな酷いことを言われているのに、なぜかハルミの股間をまさぐる手は止まらなかった。すでに気持よくなってしまっているのだ、中途半端では止まらない。
「もちろん常識で考えたら妊娠しませんよ、でも絶対とは言い切れない。どうします、ボクの赤ちゃんを妊娠したら」
 男は、この世のものとは思えないほど酷薄な笑みを浮かべている。
「困ります、そんなの絶対に困りますよぉ」
「そうやって、妊娠を意識したほうが子宮が疼くでしょう。なんだかんだ言っても、女ってそんな生き物ですもんね」
「馬鹿にして、そんなわけないでしょ……はぁ」
 女性蔑視も甚だしい。この世界のどこに、今日あったばかりの知らない男の精子で妊娠したい女性がいるというのか。エロ漫画じゃあるまいし。
 それでも、そんな最低のセリフを囁かれて嫌悪を感じているはずのハルミの手の動きは激しくなった。
「気持よさそうですね、キスしてあげましょうか」
「止めてください、いらないです」
 ハルミは顔を背けた、唇が触れるぐらいの距離に顔を近づけてきながら、男はハルミの身体に触れるような真似はしなかった。
「どうですか、いっちゃいそうですか」
「ううっ、オナニーっていつまでやらないといけないですか……」
 男は自分を馬鹿にしたようなことを言うし、こんな辱めを受けるのは、いい加減に終りにしたい。
「ハルミさんが満足するまで、軽くオーガズムに達したら終わってかまいませんよ」
「じゃあ、さっさと終わらせちゃいますぅ」
 イッたら終わりと聞いて、ハルミは股をさする手を強めて、さらに左手でクリトリスを刺激して、絶頂に達した。ハルミは結構感じ易いほうだ。軽くであれば、気持ちを高めるだけでいけてしまう。
「はぁぁッ……。ハァハァ……終わりましたよ。これでいいんですよねっ!」
「ええ、ご苦労さまでした。じゃあ、精液のついたパンティーは一日ずっと履きっぱなしで過ごしてくださいね」
「えぇー、脱いじゃダメなんですか」
「それが礼儀ですよ」
 男は、そう言い残すとさっさと出て行った。ハルミは、溜息をついてオナニーで盛り上がっていたときはそうでもなかったけど、冷静になってみると濡れたパンティーが気になってソファーにも座れない。
 変な男が訪ねてきたせいで、せっかくの休日が台なしになってしまった。

     ∀∀∀

 その日の夜、お風呂上りに牛乳を飲んでいると、またチャイムが鳴った。無視しようかと思ったけれど、律儀なハルミは出ないわけにはいかなかった。
「こんばんわ、下着泥棒です」
「また貴方ですか……何のようなんですか」
「ちょっと下着の点検に来ました」
 そう言うと、男は何の前触れもなくハルミの寝間着のズボンをずり下ろした。
「キャーッ!」
 ハルミはすぐにズボンをずり上げようとするが、男の力が強くて持ち上がらない。
「なんだ、パンティー履き替えちゃったんですね」
「当たり前です、お風呂入りましたもん」
「ボクは『今日一日』って言いましたよね。まだ一日が終わってないのに、勝手に履き替えるなんてルール違反じゃないですか」
「そうなんですか? でもお風呂には入りたかったんです」
「お風呂から上がったら、また同じ下着を履けばよかったでしょう」
「……」
 汚れた下着をまた履くなんて発想は、ハルミには全くなかった。そう言われては、二の句も告げなく黙りこむしかない。
「しょうがないですね、さっさと今履いてるパンティーを貸してください」
 ハルミは、溜息を付くとズボンから足を抜いて、履いていた真新しブルーの綿パンを脱いで渡した。
「また材質は綿ですか、さすがハルミさん心憎いチョイスですね」
 男は綿のパンツが好きらしい。
「値段も安いし、お肌にも優しいので……」
 男は目の前で、ハルミの綿パンをチンチンに挟んで下着オナニーを始める。
「何をぼさっとしてるんですか、ハルミさんが違反したせいでオナニーするハメになってるんですよ」
「えっ、なんですか」
 脱いだズボンを手になんとか股を隠しているハルミに、男はオナニーしながら注文をつけてくる。
「射精しやすいように、生乳を見せるぐらいのサービスはしたらどうなんです」
 ハルミは、躊躇したが仕方なく青いブラジャーを後ろ手で外して、パジャマの前を開いて大きなオッパイをぷるんと弾けさせた。
「うう、玄関先で私なにやってんだろ……」
 ハルミは恥ずかしそうに頬を赤らめて、顔を背ける。
「見事なナイスおっぱいですね。凄いデカイ乳じゃないですか、乳首もピンクだ」
「あんま言わないでくださいよ」

 男のチンチンを擦る手は、否が応にも盛り上がった。
「隠れ巨乳もイイトコですね、ハルミさんをナイスバディーに産んでくれたお母さんに感謝ですね」
「なんで母が出てくるんですかっ!」
 こんな状態で母親のことを言われて、ハルミは顔を真赤にして涙目になった。肌を露出しながら母親のことを言われるのはキツイにも程がある。
 その羞恥に染まる頬が、男の琴線に触れたのはこどなく「ううっ」と声を上げて男が気持よさそうに力を抜いた。
 チンチンを包んでいる布は、またじわっと濡れ始めている。
「もういいですよね」
 ハルミはブラを元に戻すとパジャマを着る。
「はい、これも履いてくださいね」
 ハルミは、股がしっかりと汚れたパンティーを受け取ると、ためらわずに履いてズボンをあげた。濡れていて、お風呂上りの火照った股がヒヤッとするがそれだけだ。
「おや、もう汚いとか濡れて気持ち悪いとか言わないんですね」
「あとで洗えば済むことですから、そのうち乾燥しちゃうし」
 それでも、股がガビガビになって履けなくなってしまうかもしれない。男が代わりに高級そうな下着をくれるから、まだ我慢できると言うものだった。
「終わったんなら、さっさと帰ってください。私も明日早いので寝たいんです」
「言うまでもないことですが、ボクがいまオナニーしたんだから寝る前にハルミさんも精液パンティーで、また一回イッてから寝てくださいね。それがマナーですからね」
 男は言うだけ言うと、満足気に帰っていった。
 ハルミは、ハァと溜息を付くと、それでも律儀に寝る前にオナニーでイッてから床に着くのだった。眠るときもチラチラ射精する瞬間の男の満足気な顔が頭に浮かんで、なんだか悔しくて寝付きが悪い。
 今夜の夢は、きっと悪夢になるに違いないとハルミは覚悟した。
短篇「マジシャンズヒプノシス」
 暇を持て余している主婦、和泉亜抄子(いずみ あさこ)は、ふらりと街の公民館に立ち寄った。家にいるのも退屈なので、ボランティアでもやってみようかと思い立ったのだ。まだ子供に恵まれない亜抄子は出来れば、子供と接せるようなモノがあるといい。テレビでやっていたような図書館で子供たちを相手に絵本の読み聞かせボランティアなんかあれば最高なんだけれど。
「うーん、思っていたようなのが無いわね」
 そんなに都合よく募集があるわけもない。当たり前かと亜沙子は苦笑した。町の公民館の入り口には、各種ボランティアの募集の他に公民館で開催されている定期講座などが貼り出されている。
「あら、こんなのもあるのね」
 マジック講座初級編というのがある。
(手品かあ、懐かしいなあ)
 学生時代にちょっと練習したことがある。掲示板を隅々まで見たのだけれど、マジック講座に初級編とあるのに、中級編とか上級編とかの募集は見当たらない。こんな市民公民館で、難しいマジックを覚えようという人がいないのかもしれない。もし受けられるなら、高度なマジックが学んでみたかったのだけど。
 公民館の受付でマジック講座を受けてみたいのですがと尋ねると、受付の人が小さく苦笑いした。
「ああ、あれね。講師の人が、どうしても貼り出して欲しいって言うから出したんだけど、まさか本当に問い合わせがあるとは思ってなかったですよ」
「そうなんですか」
 確かにいまどきマジックなんて流行らないのかもしれないけど、まさか問い合わせをしたのが亜沙子一人とは思わなかった。暇を持て余しているとは言え、すごく物好きなのかもしれない。
「お嬢さんの他に、受けようって人はいないんですけど……。どうされます?」
(まあ、お嬢さんなんて……)
 既婚には見えないのだろうか。亜沙子は二十五歳でお嬢さんと呼ばれるには微妙な年齢だ、相手がオジサンならそう呼ばれるのも分かるけど、若い職員さんなのに。
(でもでもお世辞でもないんだから、謙遜するのもおかしいかも……)
「あのぉ……迷っていらっしゃるんでしたら考えてからでも」
 亜沙子が思案しているのを見て、講座受けようか迷っていると思われたらしい。
「あっ、スイマセン。試しに受けてみようかなと思うんですけど」
「受けられるんですね。講師の方に連絡しておきますから、日曜日の午後二時に来てください。とりあえず一回だけと言うことにしておきますから」
 一人でも、参加者が来れば講座は開設されるのだという。もし、講座を受けるのが亜抄子だけなら自分だけのために来てもらうのは申し訳ない気持ちになったけど、なんだかとても受けてみたい気持ちだった。
(どうしてなのかしらね)
 受付のところにある『マジック講座初級編』って書いてある文字が、他とは一風変わった書体だったからかもしれない。なんとなく、亜沙子の興味を引くのだ。やっぱり自分は、物好きなのかもしれない。
 今度の日曜日ってことを忘れないようにしなきゃと思いながら家路に付く頃には、最初に子供向けのボランティアをやりたいなんて考えていたことは、すっかり忘れている気まぐれな亜抄子だった。

 日曜日の午後二時、時間通りに公民館の談話室までやってきた。入り口の黒板には、チョークで『マジック講座初級編』と書かれている。あの一風変わった独特な書体だ。どうやら、講師の手書きだったらしい。
 講座の部屋に入ると、座ってくつろいでいたらしい、ずんぐりむっくりとしたオジサンが席を立った。手には、なにやらカードやハンカチを持っている。
 ようこそと仰々しく手を広げるオジサン。確かに服装こそタキシードだが……イメージはマジシャンとはかけ離れている。親戚の結婚式の帰りのくたびれた中年オヤジと言ったところか。
 マジシャンの講師というからにはさっそうとした紳士をイメージしていた亜抄子の想像は、甘かったようだ。亜抄子の浮かべている愛想笑いが乾いた。少し念入りに化粧してオシャレなんて無駄だったなあ。
 この冴えないオジサンと一時間だかそこいら一緒にマジックをやらなければならないかと思うと、亜沙子はもうこのままユーターンして帰りたくなる。
「あのー、マジック講座と聞いてきたんですが」
 もしかしたら勘違いだったらイイなと思いつつ、確認を取る亜抄子。
「和泉亜抄子さんですね、ようこそいらっしゃいました。講師の荻原 天(おぎわら たかし)と申します」
 悠然と頷くオジサン、やっぱりこの人が講師だったか。ポーズだけは一人前なんだけどたるんだお腹が見苦しい。
「あの……。他の受講の方はいらっしゃるんですか?」
「いえ、亜抄子さん一人ですね」
 あーやっぱりそうか。たとえ冴えないオジサンだったとしても、自分一人のために来てくださったのだから我慢しなければ。講義だって、せめて一回ぐらい受けて続けるか決めないと申し訳ない。
 どうして、受講しようなんて思ってしまったのか。暇つぶしにしても、もっとマシな潰し方があるだろうに……。せいぜい一時間の我慢だと、亜抄子は我慢することにした。
「どうぞ、お楽になさってください」
 お楽になさってくださいと言われても、談話室にはテーブルが一つと椅子が二つ並んでいるだけだ。
「えっと、貴方はマジシャンさんなんですよね?」
「ええ、私は確かにプロのマジシャンです」
 自信有りそうに頷くオジサン。ふうん、そんなに言うなら見せてもらおうかな。相手は亜沙子をズブの素人だと思っているはずだ。この自信ありげなオジサンの鼻をあかしてやろうと、亜沙子はちょっと意地悪な笑みを浮かべた。

「では、まずコインを使ったマジックから見せますね」
 オジサンは、太い指で机の上の五百円玉を掴んで亜抄子に掲げてみせた。
 左手にコインがあることを示して見せてから、左手をギュッと握りしめる。
「魔法をかけると、このコインが右手に移ります」
 左手をさっと開いて、コインがないことを示す。次に開いた左手を、ふって同じように握りしめた右手に魔法をかけるそぶりを見せる。
 パッと、右手を開くと右手に五百円玉が移っている。
「どうです、なかなかのものでしょう」
 オジサンは自慢気に笑う。私も、クスクスと笑う。
「それって、フィンガーパームってヤツですよね」
 亜抄子がそう指摘すると、オジサンは笑みを強ばらせて顔色を変えた。まさか、初見で技の名前まで見抜かれるとは思っていなかったのだろう。
 亜抄子は、学生時代簡単なマジックをかじったことがあるのだ。学芸会程度の知識に過ぎないが、コインマジックのトリックならあらかた覚えている。パームとは隠すという意味で、フィンガーパームとは中指の第二関節を曲げたあたりにコインを隠すことを言う。
 確かにオジサンの手つきはなかなかのモノで、コインを持っていることを亜抄子に悟らせない技巧を持っていたが『魔法をかける』はいただけなかった。オジサンが魔法をかける動作で、左手に隠し持ったコインをズボンのポケットにさりげなく隠したのがよくわかったのだ。
 もちろん、右手には握りしめたときに別の五百円玉を入れておくのである。何のことはない、コインが移動したわけではなくて最初から二つのコインがあっただけなのだ。
「まさか、初見で見抜かれてしまうとは……。フィンガーパームをご存知とは、お詳しいんですね」
「いえいえ、昔ちょこっと齧っただけでほとんど素人ですから」
 オジサンは恥ずかしそうに頭をかいて恐縮した。簡単なトリックとはいえプロのマジシャンを出し抜いたのは、悪い気持ちではない。亜抄子はしてやった気分になってニンマリと笑った。
 初級編だから、プロのマジシャンというオジサンも油断したのだろう。
「じゃあ、亜沙子さんはお詳しいみたいだから、今度はもっと別のやり方でコイン移動のマジックをお見せしましょう」
 オジサンは、同じように左手でコインを掴んだ。

 亜抄子はしっかりと見据える。確かに掴んだ、いまコインはオジサンの左手にちゃんとある。あとは、そのコインをどこかに隠されなければ見抜くことができる。
 左手にコインを握りしめたまま、ゆっくりと左右に振った。亜抄子の眼も、一緒のように左右に触れる。
 オジサンは、パッと手を開く。まだ左手にコインはある。
 何を思ったのか、握りしめるのをやめてコインをつまみ上げると、また亜抄子の前でコインをゆっくりと左右に振った。
 おそらく、オジサンはリテンションパニッシュをやるつもりだと亜抄子は警戒した。眼の残像現象を利用して、コインを消失させたように見せる技法である。マジックは魔法ではない、コインが消えるわけがないのだ。コインから眼を離さなければ、絶対に消えることはない。
 二十五、いや三十往復しただろうか。ずっと眼で追っている亜抄子に「眼が疲れませんか?」と聞いてきた。その手に乗るものか「いえ、ぜんぜん疲れません」と答える。本当は、少しフラフラとしてきた。頭を振らないようになるべく眼球だけで追うことにするか。少し楽になったので、左右に振られるコインを追う動作を続ける。
「疲れたでしょう、少し休憩しましょうか」
 ピタっと、空中につまみ上げられたコインが止まる。亜抄子は休憩と言われても休まない。油断をするまいと、コインをジッと見つめて集中する。
「亜抄子さんは、なかなか集中力が高いですね」
 また、オジサンはゆっくりとコインを左右に振り始めた。
「油断させて、コインを隠そうとしても、そうはいかないですからね」
 コインの残像が、まるで一本の線のように見える。まだ大丈夫、まだ追える。
 オジサンは三十往復ほどすると、またピタリとコインの動きを止めた。
「少し休憩」
 亜抄子は、休憩せずにコインを見つめている。またコインが左右に振られる、亜抄子は次第にどうして自分がコインをムキになって追っているのか分からなくなった。ただ、コインを視線で追うという動作に執着し続ける――

 ――やがて、左右に振られるコインは一本の棒のように見えた。ピタリとコインの動きを止めても、亜抄子の眼はゆっくりと左右に動き続ける。さて、なんで眼球を左右に振っていたのか、それすらも亜抄子は分からない。眼球運動を続けながら、亜抄子の中で完全に行動の意味が崩壊していった――

「亜抄子さん、亜抄子さん?」
 オジサンに肩を揺すられる。
「あっ、私……」
「大丈夫ですか? 急に倒れるからどうしたのかと思いましたよ」
「えっ、ええ……。えっと、なんでしたっけ」
 どうしてここにいるのか、そもそも自分は誰なのか。亜抄子は、物凄く長く深い夢から覚めた後みたいに、呆然としてしまう。なんだか少し、物悲しい気持ちだ。
「本当に大丈夫ですか、私は誰か分かりますか?」
「えっと、マジックの先生」
「そうです。大丈夫みたいですね。じゃあ、マジックの続きをやりますよ」
 マジックの先生は、ニコリと笑う。そうだった、マジック講座初級編の途中だった。先生は、左手にコインを握りしめると。パッと手のひらを開いた。
「あっ、消えた」
「ふふっ、不思議でしょう」
 亜抄子にはコインがどう消えたのかまったく分からない。でも、動作は見えなくても察しはついた。
「先生、きっと上着の袖の隠しポケットに入れたんでしょう?」
「ほほう、さすが亜抄子さんは鋭いですね。では、これでどうです」
 先生はタキシードの上着を脱いで中のシャツも脱ぎ捨てて、上半身裸になった。
(先生、胸毛がすごい。それにすごい太鼓腹……)
 亜抄子がそんなことを考えている間に、また五百円玉を握りしめて消失させる先生。
「うーん、分からなかったけどズボンのポケットに入れたとか」
「じゃあ、みんな脱いでしまいますね」
 先生は、ズボンも脱いでパンツも脱ぎ捨てて裸になった。
(たるんだ身体だけど、あそこは大きいのね……)
 旦那のモノしか見たことがない亜抄子はちょっとドキドキしてしまう。亜抄子より二十歳近くも年上の旦那より、先生のものは元気で大きかった。
「先生、裸になって恥ずかしくないんですか」
「トリックがないことを示すのに、裸になるのは基本ですよ」
 そう述べて先生は爽やかに笑う。なるほど、確かにこれでもう隠しようがない。

「さあ、どうです」
 先生がコインを握りしめて、左手を離すとやっぱりコインは消えた。
「すごい……」
 ハッと息を飲む亜抄子。先生が、握りしめていた右手を開くと、さっき消えた三枚の五百円玉がジャラリと音を立ててテーブルに転がり落ちた。
 亜抄子は、感嘆の叫びをあげて思わず手をパチパチと拍手していた。
「ハハッ、亜抄子さん大げさですよ」
「どうやったんですか。ねえっ、先生どうやったんです?」
 すっかり興奮している亜抄子を手で押しとどめて、次は透視をやりますよと笑う。
「透視ですか」
「ふふっ、奥さんの下着はピンクですね。ブラもパンティーも、ピンク色で花の模様がレースであしらってある上品なものだ」
 亜抄子は思わず胸を手で押さえる。スカートの中はちらりと見えたのかもしれないけど、ブラジャーまで一緒の柄だと当てるなんて。
「どっ、どうしてわかったんですか」
 今日は上着を二枚重ね着して、その上にカーディガンまで羽織っているのだ。
「ふふっ、どうしてでしょうねえ」
「早くトリックを教えてください」
 不思議な現象の連続で、亜抄子は種明かしをねだるように媚びた。
「種を明かせば簡単なんですよ、だって見たままですから」
 先生は、亜抄子のピンク色のブラジャーをパンティーをさっとテーブルの下から取り出した。
「あっ、いつのまに……」
 なるほど、下着を直接見たなら色を当てるなんて当たり前のこと。マジックは種が分かれば拍子抜けするぐらい単純なことだ。
 さっきからスカートの中がスースーするとは思っていたのだけど、なんでパンティーを脱がされたことに気がつかなかったのだろう。上着の裾から手をたくし入れて調べると、ブラジャーもちゃんと無くなっている。
 すり替えではない。服を着せたままで、肩紐までちゃんと通っていたブラジャーを抜き取る。ほとんど、不可能に思えた。

「これはテレポーテーションってことになるんですかね」
 先生は分厚い唇を歪めて、自慢気な笑みを浮かべた。さっきは気持ち悪い顔だと思えたが、こうして奇跡を目の当たりにするとニヒルな笑みに見えてくるから不思議だ。亜抄子の心境の変化すら、マジックの一部なのだろうか。
「先生、テレポーテーションの種も教えてくださいよ」
「基本的には、コインの移動と変りないんですが、では今度は液体のテレポーテーションをやってみましょう」
 先生はテーブルをどけると、自分の勃起したイチモツを示した。
「亜抄子さん、いまからこれを擦って射精させてみてください」
「先生のそれをですか……」
 恐る恐る手を伸ばす。
「ただのマジックですから、汚くないですよ。普段の旦那さんのものをシゴイてるみたいにおもいっきりやってみましょう」
 旦那様のものをシゴくなんて、そんなに機会なかったんだけどと思いつつ、その太い肉棒を手でシコシコと擦る亜抄子。
(太いわねえ……、先生のピクピクしてたくましい)
 旦那様のそれとは、生命力と温かさが違うように思えた。まるで、動物の心臓に直接触れているような熱と脈動。
(そう言えば、もう半月もしてないなあ)
 旦那様と結婚してからもう三年になる。夫婦生活は、半月か一月に一回程度だった。夫婦仲が冷めているわけではないのだけど、跡取りを作るためだけのセックス。しかも、その子どもが中々出来ないとなると盛り上がりに欠けてしまう。
「どうしました、手が止まってますよ」
「あっ、すいません先生。ちょっと考え事をしていたもので」
 マジックの途中に夫婦生活のことを考えるなんて、亜抄子はハシタナイ自分が恥ずかしくて頬を染めた。

「そうだ、亜抄子さんちょっと胸をはだけてくれませんか」
「えっ、こうでしょうか」
 カーディガンを脱いで上着をたくし上げてオッパイを出す亜抄子。
「うん、いいですね。亜抄子さんの手だけではちょっと刺激が足りなくて射精に至らないもので……」
「すいません、私の手が下手くそなんですよね」
 セックスは結婚した時から旦那様任せで、自分から積極的に手でシゴくなんて、亜抄子は経験したことがないのだ。
「いえいえ、不慣れなのはそれはそれで、初々しくて良いものですよ」
 亜抄子にしごかせたまま、胸を揉みしだく先生。
(変な気持ちになっちゃダメ、これはただマジックをするために……)
 見慣れない男性器を見せられて、胸を揉まれては、亜抄子も次第に椅子から腰が浮くような変な気分になっていた。ただでさえ若く、セックスの機会に恵まれない若奥様なのだ。貞淑を気取っていても、我慢しきれるものではない。
 ぷっくりと勃起した乳首を、つまみ上げて引っ張る先生。
「先生、乳首は弄っちゃダメですっ!」
「気持いいんでしょう。良いんですよ、亜抄子さんも気持よくなっても」
「そんな、ただのマジックで気持よくなるなんていけませんわ」
 チンチンをしごきながら、そんな白々しいことを言って見せるのだから大したものだった。亜抄子は呼吸も荒くなり、明らかに興奮しているのは傍目に居る先生にもよく分かっているというのに。
 乳首の根元を摘まんで、ギュウウッと引っ張り上げられるのを、亜抄子は奥歯を噛み締めて目を瞑って耐えた。
「亜抄子さん、そろそろ射精しますから眼を開けて見ていないといけませんよ」
「えっ、はい」
 亜抄子は、眼を開けてジッと自分がこすり続けている肉棒の先っぽを見つめた。
 あの鈴口から、精液が飛び出てくる。それが男の射精だ。
「亜抄子さん。このまま射精したら、どうなると思います?」
「私のオッパイに飛び出ちゃいますね」
「なるほど、じゃあそうなるかやってみましょう。出ます!」
 亜抄子がギュッと股間を握りしめると、生き物のようにビクビクと痙攣した。肉棒がブクっと膨れ上がると、射精の瞬間を向かえる。

 ドピューッ! どぴゅ! どぴゅ!

「あっ、くる……。あれっ?」
 ドクドクと肉棒は痙攣しているにも関わらず、いっこうに鈴口から精液は飛び出してこない。
「出てきませんね……?」
 思わず亀頭の先の鈴口を覗き込んだが、パクパクと口を開くだけで白い精液は飛び出してこなかった。それどころか、射精を終えたように満足気に手の中で収縮していく。
「射精しないでちっちゃくなっちゃったのかな……」
 小さくなった手のひらで遊ばせるように、小首を傾げる亜抄子。
「さあ、どうでしょう」
 突然、亜抄子が叫び声をあげて腰を浮かせた。
「ああっ!」

 ドピューッ! どぴゅ! どぴゅ!

「はあんっ! なに、どうしたのぉ?」
 熱い飛沫を身体に感じる。どこかで、射精している。自分の身体の目の見えないところで……。お腹が凄く熱くじわりと濡れるのを感じた。
「まさか……」
 オッパイをむき出しにしたまま、お腹をさする亜抄子。確かにここだ。正確には、膣奥に生中出しの熱い飛沫を感じた。でも、先生のオチンコは目の前にあるから、膣の中に出されたわけもない。
 スカートを捲ってみると、なぜか自分の割れ目は濡れていてぱっくりと口を開けていた。まるで、さっきまでそこにチンチンが挿し込まれていたとでも言うかのように。
 そうして、ドロリッと白いものが自分の膣口から零れ落ちてくる。
「あああっ……すごい」
 膣口から零れ落ちてきた白い粘液を手ですくいとって、臭いを嗅ぐ亜抄子。栗の花の香りだった。精液の匂いだ。
「空中に出したはずの精液が、テレポーテーションして膣内に移動するというマジックでした。いかがでしたか」
「素晴らしいです先生、こんな不思議なマジック見たことがありません」
 今でも信じられないというように、亜抄子はドンドン自分の膣口から零れてくる精液を手ですくいとって確かめている。
「あの、でも先生ちょっと質問してもいいですか?」
 気になったのか、精液がついたままの手をハーイとあげる亜抄子。どこか子供っぽい仕草を見せるときもある。
「なんでしょう、亜抄子さん」
「あの、精液が膣内に入っちゃってるんですけど。マジックと言っても、これは大丈夫なんですか?」
 妊娠の危険はないのかと聞いているのだ。いまさらそんなことに気がつくとは、もっと最初に慌てるべきだろうと先生は苦笑する。
「大丈夫ですよ。マジックなんですから、種はちゃんとあります」
 先生は安心してくださいと笑う。ほっとしたのか、誘われるように亜紗子も強張った頬の緊張を緩めて微笑を見せた。
「そうなんですか、先生のマジックを信用してないわけじゃないんですが、私ちょっとだけ心配しちゃいました」
 先生の言う種があるとは、子種があるという意味なのだが、それを安全と誤解したのは亜紗子のミスであった。
短編「簡単、瞬間、魔法使い」
「ううっ、お腹冷やしちゃったかな」
 千波ちゃんは、ほっそりとしたお腹を抱えて小走りに歩いています。
 幸いにして、ここはショッピングモール。少し歩けば、トイレがあるはず。
「ちょっと、お嬢さんいいかな」
 客引きのお兄さんが、千波ちゃんを押しとどめます。いいかなって言いながら、前に立ちはだかって結構強引に足止めしてきます。
(なによこの人、こっちは大ピンチなのよ)
「あの、あとにしてもらえますか。いま……」
「ほら、これ見てくださいよ」
 お兄さんは、右手の手の平に乗せたコインを見せると握りこみました。
「だから、いまそれどころじゃ」
「はいっ!」

 ドピュッ!

 お兄さんが、手を開くとコインがなくなっていました。
「あっ、すごい。手品ですよね、どうやったんですか?」
「普通に、コインを右手から左手に移動させただけですよ」
 お兄さんは、握り締めている左手を前に出して開いて見せました。
 そこにはキラキラと輝くコインが乗っていました。
「すごーい、もう一回やってください!」
「えっ、もう一回やっていいんですか」
「もったいぶらないで、もう一回見せてくださいよ。今度はわかるかも」
 千波ちゃんは手品が大好きなのです。
 便意も忘れて、お兄さんに何度も懇願しました。
「じゃー、やりますね」
 お兄さんは、また左手のコインを握りしめました。
 千波ちゃんはそれを食い入るようにみつめています。
「はいっ!」

 ドピュッ!

 お兄さんが、手を開くとコインがなくなっていました。
「すごーい、ぜんぜんわかんなかった」
 お兄さんは、右手を出すと中に握りこんでいたコインを見せました。
「もう一回、もう一回おねがいします」
「しょうがありませんね、もう種切れなので最後の一回ですよ」
 お兄さんが、右手のコインを握りこんで
「はいっ!」

 ドピュッ!

 また消して見せました。
「すごーい、やっぱりなんど見てもわかんないや」
 千波ちゃんは、可愛らしく舌を出しました。
「お粗末さまでした」
 お兄さんは左手のコインを見せると頭を下げました。
 千波ちゃんは、パチパチと手を叩いてお礼を述べました。
「こっちも楽しい時間が過ごせました。ところでお嬢さん、何か急いでらしたんではないのですか?」
「あっ、そうだった!」
 千波ちゃんは、慌ててトイレに走っていきます。
 その背中を、愉快な笑顔でお兄さんは見送りました。

     ※

「トイレ、トイレ……」
 千波ちゃんは、近くの女子トイレに駆けこみました。スカートをたくし上げて、洋式便器に座り込むと、お尻がヒヤッとします。
「あれ、私なんでパンツ履いてないの?」
 スカートをたくし上げたままで、左右を確認しました。どこかにパンツを落としたのではないかと思って。
「ないわね、まあいいか」
 千波ちゃんは、そんなことより便意を先に何とかしてしまうことにしました。
 お腹は強い圧迫を受けているのに、力を入れてもぜんぜんでないのです。
「あれ、おかしい……キャッ、なにこれ?」
 千波ちゃんがオカシイと思ってスカートをたくし上げて股間を見ると、肛門に何か棒のようなものが突き刺さっているのです。前の方は何故か、陰毛をそられて縦筋に沿って大きな絆創膏が貼ってありました。
「やだ、こんなの刺さってたら出ないはずだわ」
 とにかく、その棒を引き抜こうと力を込めました。プルプルと、肛門から押し出されてくるのはプラスチックのビーズでした。
 大きな玉が棒についていて、それが凹凸となって千波ちゃんの肛門を押し広げるのです。
「ううっ、やだこれなに」
 そう言いながらも、早くこれを出してしまわないと排便できないので、千波ちゃんは必死に棒を引っ張って肛門からビーズを次々と引き出しました。
「あああッ」
(何この感触、気持ちいい)
 千波ちゃんの肛門から、ビーズが抜けるたびに圧迫からの開放感を感じます。うんこを出しているわけではないのに、排便に等しい快楽を肛門から感じるのです。
 こんなものに気持よさを感じている自分を恥ずかしいと思いながら、千波ちゃんはようやく全部の玉を引きぬき終わりました。
(ああ、やっとうんこできる)
 千波ちゃんは、お腹に力を入れて腹に溜まっていたものを全部吐き出してしまいました。
「ふうっ……」

 千波ちゃんはオシッコしたいと思って、何気なく絆創膏を剥がしました。
 ぴったりと閉じていた割れ目は、急にパカっと割れました。
 まるで何か指が入り込んできたみたいに、刺激されます。
「なんなのっ?」
 ビックリして千波ちゃんは身を硬くしました。柔らかい膣襞は見えない指の激しい刺激を受けて、グチュグチュに濡れました。
 そうして
「はあんっ、ああんっ!」
 ぬるっとした肉が入ってきて、千波ちゃんのオマンコはパカっと口を開きました。一気に膣の奥まで突きあげてきます。
「あっ、あんっ! なにこれっ! うそでしょ!」
 透明人間にでも犯されているのかと空想して、千波ちゃんは目の前の虚空に向けて必死に手を振り払いますが、そんなモノが居るわけありませんでした。
 その間にも、見えない肉棒は千波ちゃんを突きあげてきます。
 そうして、膣の中でムクムクと膨れ上がると射精しました。
「ああっ、中で出さないでよっ!」
 膣から、ピュッピュッと漏れ出した精液が飛び出してきます。
 実にシュールな光景でした。
「もうっ、なんなのよー、もう出したでしょ、なんで終わらないのぅぅぅ!」
 射精が終わっても、まだ硬いままの肉棒は千波ちゃんの膣をえぐります。
 そうして、千波ちゃんも絶頂に達して足を震わせながらオシッコを漏らしました。
 シャーっと、黄色い液体が飛び散ります。
「ううっ、もうやだっ」
 また、膣内で射精が始まりました。
 ドピュドピュと爆発するような勢いで膣奥に叩きつけられます。
 そのほとんどは、パックりと開いたマンコからドロドロこぼれ出しました。
 それでもまだ、見えない肉棒の動きは止まらないのでした。
「止まって、もう終わって、ああんっ!」
 もう一度、射精するまで終わらない。
 それが先ほど、何度もマジックを懇願したせいだとは千波ちゃんは知る由もありませんでした。

     ※

「おやおや、嬌声が遅れて聞こえるよ?」
 女子トイレの前で、可愛らしいピンクの下着と手にぬらぬらとしたアナルビーズを持った手品師のお兄さんが、楽しげにくっくと笑いました。
 そうして、ビーズの汚れを下着で拭き取ると、カバンにしまってゆっくりと歩いて行ってしまいましたとさ。

短編「簡単、瞬間、魔法使い」 完 著作 ヤラナイカー 
「下着になった男」
 俺の名前は佐藤安志(さとう やすし)二十一歳、女性用下着にかけてはちょっとうるさいぜ。

 ……まあ、ぶっちゃけて言うと下着フェチなんだよね。いや、そんなに変態的なフェチではないつもりだった。普通にオッパイもオマンコも好きだしね……まあ、まだ童貞なんだけど。
 街中を歩いている女性がみんなカラフルなランジェリーに身を包んでいると思うと興奮して仕方がなかった。このままで行くと、本当に下着泥棒に身を落としてしまいそうなので、俺は妥協策を取ることにした。
 選択肢は二つ、妹の発達未了な下着を取るか、母親のレースもヨレたようなダルダルの下着を取るか。彼女を作るってルートは見当たらなかったので仕方がない、俺は妹の下着を取った。恋愛ゲームで言うと妹ルートに進んだわけだが、ここらへんでたぶん選択肢を間違えてしまったのだろうと思う。
 妹のパンツを被ってセルフプレジャーに励んでいるところを発見された俺は「下着じゃなくて、中身に興味を持ってよ」とかそういう展開もなく、即座に家族会議に連行された。会議どころじゃなくて、弾劾裁判の様相を呈していた。
 オヤジは、見たこともないような酷い顔で泣きじゃくってるし、オフクロは呆れ果てたような顔をしてるし、怒りが頂点に達した妹は俺の襟首を掴んで何度も殴り倒した。倒れても倒れても、無理に引っ張り起こされて殴られるのね。殴られて健康な歯が欠けるってことが本当にあるんだね。うん、そんなに強く殴ったら一姫(イチコ 妹の名前)の拳も痛いだろうにね。つうか、スイマセンでした勘弁してください。背中も踏まないでくれると嬉しいです。

「そんなに下着が好きなら下着になってしまえ!」
 妹の一姫がそう叫んだ瞬間、俺は家から追い出されてランジェリーショップへと出荷されることが決定された。

     ※※※

 えっと、分かるだろうか。ついてこれてるかな。俺は下着になっちゃったんだよね。たぶん、何かの罰なんだろうけど。妹ルートからバットエンドかと思ったら、下着ルートに来ちゃったんだね。
 「下着には服はいらねーだろ」と妹に言われて、衣服を没収された全裸の俺はダンボール詰めにされてランジェリーショップに出荷されたんだよね。長い旅だった、たぶん半日ぐらい箱に入ってたから腰が痛くてしょうがなかったね。
 ようやく、何処かについた感じで蓋が開けられる。久しぶりに感じる外気の涼しい空気(トラックの荷台って意外と暑いんだよね、なんか湿ってるし)。俺を箱から出してくれたのは、ランジェリーショップのお姉さんだった。名前は三瀧 紗良(みたき さら)さん。超美人。
「えっと……」
 流石に裸の男そのものが品名、下着って書かれて送られてきたら困るよね。
「佐藤安志です、年齢は二十一歳です。よろしくお願いします」
 箱から引っ張り出してもらった、俺はペコッと頭を下げて挨拶した。第一印象が肝心だからね。
「佐藤安志? 聴いたことないメーカーだけど。新製品なのかな……奇抜なデザイン」
 俺の身体を上から下までジロジロと眺めて、手で触って確かめるようにする。いろんな部分をこねくり回したりして、どんどん困ったような顔になる紗良さん。
 若い男の身体と、下着とは形も何もかも全く違う。下着として、理解しようとしても難しいのだろう。
「ちなみに、無料です」
 あんまり困らせて廃品処分にされたら嫌なので、そう付け加えてみる。
「えっ、ただなの。ふうん、試作品ってわけね」
 無料と聞いて、紗良さんは嬉しそうな顔をした。極彩色のランジェリーショップ、その奥まったところに、俺は展示されることになった。結構流行っている店らしく、女の子が下着を物色する姿を眺めているだけで、ホワホワと気持ちが良くなっていた。
 女の子たちは、俺のところまで来ると、大抵は俺を気持ち悪そうな眼で見てすぐに違うところに行ってしまう。たまに、興味を持って眺める人もいたが俺を試着してみたいという女の子は表れなかった。
 暇を持てますこともあったが、普段男が入れないランジェリーショップに居られるだけでも、俺は幸せだったし夜になれば下着にイタズラしたり、紗良さんのロッカーを覗いたりするだけでも、存分に楽しめた。
「別にこのまま売れなくてもいいか……」
 人間をやってたときもやる気がない感じだったが、下着になってからも実にやる気の無いことをつぶやいていた俺なのだが、ついに試着の時が訪れた。

 平日の午後という客が少ない時間帯に、胸のすごく大きな女の子がやってきた。身長がそこそこあるから、妹よりは若干年上だろう。黒髪が艶やかで、大きなメガネをかけている大人しそうな女の子。ラフな格好で制服ではなかったが、たぶんまだ学生をやっている年齢に見える。
 キョロキョロと慣れてない感じで店内を見ていたから、無聊をかこっていた紗良さんもここぞとばかりにやってきて話しを聞く。どうも初めての来店のお客さんみたいだ。会話に耳を傾けてみる。
「あの……通販だと、Dまでしかなくて……あっても可愛いのがぜんぜん」
「ああ、お客様ご立派ですものね、分かります。Gでしたら上下セット展開のみになりますが、結構種類もございますよ」
「見ただけで分かるんですか」
 胸を手で押さえて、眼鏡の奥で眼を見開いてクリクリさせる女の子。
「一応、店員ですから目測でもある程度は」
 そう言ってニッコリと笑う。紗良さんもプロ根性があるのだ。
 いろいろと、大きめのサイズを裏から出してきて、あーでもないこーでもないとやっていたが、女の子はあんまりお金を持って来てないらしい。
「今日はちょっと持ち合わせが……」
「そうですね、まあ安いのもございますが……」
 そう言ってから、思い出したように俺のほうを振り向く。
「……実は、ちょーと変わったデザインなのですが、試作品で無料の下着がございまして。もしよろしければですが、そちらの方をお試しになってみませんか」
 お金にならないとお客だと思った紗良さんは、不良在庫化している俺を押し付けるつもりらしい。俺を抱えるようにして……あんまり重そうなので自分で動くことにした。女の子の前に持ってくる。
「えっ、これ下着なんですか……ちょっと大きすぎるというか」
 たぶん、問題はそれだけじゃないだろうな。自分で言っててもしょうがないが。
「でも無料ですから、とりあえず試着だけでもしてみませんか。フリーサイズってありましたから、たぶんお似合いになりますよ」
 紗良さんは、よっぽど俺が邪魔らしい。確かに、決して広くない店のスペースをだいぶ取ってしまってるし、もしかするとロッカーを物色したのがバレたのかな……。
「じゃじゃあ……試着だけ」
 紗良さんの必死のプッシュで、俺と一緒に試着室へと追いやられる女の子。初めて入ったが、下着屋の試着室って結構広いのだ。俺がたまにいく古着屋の二倍の広さはある。つまり、人が二人入っても狭くは感じないぐらいのスペースはあるわけだ。

 俺は女の子がトレーナーやスカートを脱ぎ始めたので、脱いだものをハンガーにかけてやる。紳士たるもの、これぐらいの手伝いはしてあげないといけない。
 大きいピンクのブラを外すと、ドカンとスイカかと思うぐらいの爆乳が二つ飛び出してきた。確かに、これは合うブラジャーを探すのが大変だろう。そんな感想を抱くまもなく、さっとパンティーも脱いでしまった。
 彼女からしたら、俺は男じゃなくてただの下着なのだなあと思うと、ちょっと寂しい気がする。クンカクンカする暇もないので、ブラジャーを自分の胸に……つけようとしたら、さすがに幅が合わなかったので首に付けた。ピンクのパンティーは頭にかぶることにした。もちろん、ハンガーが一つしかないからここにしか掛ける場所がないだけである。やましい気持ちはこれっぽっちもない。
「さてと、この下着どうやってつけるんだろ……店員さん説明してくれたらいいのに」
 俺の手や足を触って、どう付ければいいのか悩んでいるらしい。それはそうだろう、俺だってどうやれば下着として自分が機能したことになるのかよく分からない。
 取りあえず、女の子の後ろに回って、手で胸を押さえてみた。手ブラとよく言うから、これでブラジャーの代わりにならないだろうか。
「あっ、胸はこれでいいのか……サイズは合ってるみたいだけどちょっと布面積が小さいような」
 女の子は俺の掌を上から触って、伸ばすようにする。そんなことをしても、俺の掌は伸びたりしない。
「やだ……なんかサイズがキツくなったりユルくなったりする」
 それは俺が、おっぱいを揉んでいるからだ。ブラジャーに成りきっているとはいえ、生まれて初めて女の子のオッパイに触れて、揉まないという選択肢はなかった。
(ああ、こんなに柔らかいんだ、マシュマロというよりつきたてのお餅みたい)
 むしろ積極的に揉んで行く。完全にブラジャーとしての仕事を放棄してしまっている反省である。
 揉まれるとやっぱり困るらしく、女の子はしばらく俺の腕を引っ張ったりしていたが、俺が頑強に揉むのを止めないと分かると諦めたらしい。今度は下半身のほうを何とかするつもりのようだ。屈み込んで、股を見ているから揉みやすい。
「下はどうするのかな、ああっこの出っ張りみたいなのを股に当てるようにするの……なんだかフンドシみたいでイヤらしいなあ」
 なんと、女の子は俺の股間のイチモツを、つまり勃起して屹立したナニを手で掴んで自分の股に押し当てた。確かに後ろからの体勢で、俺の身体で股を隠すものといえばこれしか無いのだが、これは性器と性器が触れ合ってることにならないだろうか。
 まさかの童貞喪失寸前の出来事に、俺の胸は高鳴った。
「あっ……ちゃんとこの棒が伸びるんだ。でもやっぱり、布面積が小さい。Tフロントみたいなものかな。こんな下着穿いてたら、恥ずかしいよね」
 女の子が俺のチンチンに触れている。ヤバい、ヤバい……。
「きゃ、やだ……胸が出てる」
 乳首がむき出しになっていた。俺が揉んでいたから、指の間から可愛い乳首が見えてしまっていた。俺はもう、興奮状態でブラジャーであるという自分の立場も忘れて、指で乳頭をつまみ上げてクリクリした。すると、乳首がにょきにょきと立ったのである。大人の階段を登った瞬間だった。
「もうやだ……、ああっ、もとに戻ったかな」
 乳首を立たせたので満足して、俺は乳輪を手で覆い隠すようにした。揉むのは止められないが、股の方が気になるようで女の子は今度は俺のイチモツをさすっている。
「なんだかこれ硬くて……もっと伸びないのかな。やだ、何これ先っぽがヌルヌルしてきた」
 そんなにさすられたら、そうなるに決まっている。これに関しては、俺が悪いんじゃないんだ!

「やっぱり、このインナーおかしい……店員さんちょっと来て下さい」
 女の子の呼び掛けで、紗良さんが飛んでくる。女の子の説明を聞くと、紗良さんは眉を顰めた。
「はいはい……試作品ですからやっぱりおかしい部分が出てきますよね。胸が露出したんですか」
「そうなんです、それだけじゃなくてキツくなったりユルんだり、まるで揉まれるみたいに……」
 そういうと、女の子は恥ずかしそうに俯いてしまう。俺は、バレないようにジッとしているから、目の前ではちょっと布面積が小さいブラジャーにしか見えないはずだ。それを紗良さんは、手で触ってじっと見つめている。
「ところで、ショーツの方の履き心地はいかがでしょうか」
「それが……なんだか濡れてきて」
 女の子は、必死にショーツがおかしいと説明する。俺のショーツは、すでに女の子の股に挟まれるようにして、ピクピクと脈打って今にも射精しそうだ。
「ふーん、たしかにTフロントとしても面積が狭すぎますね。ちょっと失礼してよろしいですか」
 紗良さんは、ニュッと俺のイチモツを掴んで、根元からしゅるっとカリの部分までを優しく撫でていった。
「ここの出っ張りがなにか……」
 紗良さんの繊細な指が、俺の亀頭を掴んで引っ張る。もう限界……

 ドピュドピュドピュドピュ!

 ランジェリーショップに来て一週間近く、俺はオナニーをしていなかった。一週間分の溜まった白濁液が、しゃがんで俺のイチモツを見ていた紗良さんの顔に飛び散った。プルプルで指で摘めそうなほどの精液が、紗良さんの顔いっぱいを真っ白に染め上げている。試着室は、精液の青臭い匂いに包まれて、俺も女の子も精液塗れになっている紗良さんも無言だった。

 紗良さんは、ポケットからハンカチを取り出して顔を拭くと、女の子に厳かに頭を下げた。
「失礼しました、やっぱりこれは不良品のようですね。濡れる下着なんて使い物になりません。他の下着を安価にサービスさせていただきますので……」
 女の子が下着を買って帰ると、俺は紗良さんに元々入っていたダンボールに押し込められた。「不良品につき返品します」と書かれて元の住所(つまり、俺の自宅)に送り返されたのだった。

     ※※※

 こうして、返品された俺は家に戻ってきた。ちょっとした小旅行である。
 箱から引っ張り出してくれた妹の一姫の怒りは収まっていたらしく、俺も反省したようなので(確かに反省はしていた、一姫が言っているのとは違う意味でだが)元の生活に戻ってよしと許された。佐藤家の全権限は妹が握っているので妹が良しと言えば良しなのだ。まるでエロゲに出てくるような妹である、何故俺とフラグが立たないのか不思議でならない。ちなみに、エロゲ的な妹の一姫は『さまよえるオランダ人』という二つ名まで持っている。中学の修学旅行で長崎に行ったときに、ハウステンボスで迷子になったことに由来してついた二つ名なのだが、当然この名前で呼ぶと殴られるので自粛している。繰り返し言うが、何故俺とフラグが立たないのか不思議でならない。大事なことなので二回言いました。

 反省して許されたはずの俺は、結局また女性用下着への欲望に負けて妹の子供パンツのクロッチでセルフバーニングしているのだが、別に妹の子供パンツが好きだからというだけの理由ではない。大事なことなので、二回やってるわけでもない。
 またいつか、妹のパンツをイタズラしているところを発見されて――
「そんなに下着が好きなら下着になってしまえ!」
 ――と、叫ばれて再びランジェリーショップに送られないかと密かに期待しているのだ。紗良さんにもまた会いたいし、前回の失敗を活かして、次はもっとうまく下着が出来そうな気がする。でもその過程で妹にボコボコに殴られたり、歯が欠けたり、ダンボールに詰められたりするのはやっぱり辛いので、なるべくバレないようにオナニーに励む俺であった。

『下着になった男』 完結
「トイレの備品」
 俺が最近気に入って通っている店は、オシャレなイタリアンレストランだ。
 大通りに面しながら、見つけにくい隠れ家的なお店。手頃な値段で手打ちのパスタと美味しいスイーツが堪能できる、若い女性に人気のお店だ。
 当然ながら俺のような、不審者スレスレの男が入るような店ではなくて店に侵入する時は本当に緊張する。さっと入ってトイレに駆け込む俺を、二つしかないテーブルの一つを占拠していた女子高生のグループが不審気な目で見ていたが、気にかけている暇はない。
 まだ若いシェフが、一人で切り盛りしている店だから。シェフが厨房に入ったほんの少しの隙にさっと侵入できる点も、俺がこの店を気に入っている理由の一つである。
 トイレも洒落ている。見慣れた白塗りの壁のイタリア風建築の男女兼用トイレに駆け込んでしまうと、俺はホッと一息つく。

 おっと、気を緩めている暇はない。俺は部屋の四隅に、貼り付けるように赤い石を置いていく。この儀式はオマジナイみたいなもので、別に赤い石に特別な力があるわけではない。色々試してみた結果、この赤褐色の小石が一番シックリくるので毎回これを使うようにしているだけだ。
 小石を四隅に置くと、今度は部屋の壁をグルッと一周するように手で撫でていく。ざわりとした漆喰の感触。いつもと変りなく壁がそこにあることを感じる。
「……よしっ!」
 俺は様式便器の上で胡座をかき目を閉じて、意識を張り詰める。真っ白いトイレの全体をイメージすると、自分の身体の内側に集中させた力をグワッと拡大させて、部屋全体を力の膜で覆うようにする。ちょうど赤い石のある四隅が、目印だ。
 目を瞑っていても分かる。確かに、このトイレの四角い空間と俺の力のフィールドがカチリッと音を立てるようにして重なった。その瞬間に、目を開ける。他者から見れば、全く変わらないなんの変哲もないトイレに見えるだろう。だが、俺にとっては真っ暗な部屋のスイッチをヒネって明かりをつけたような気分だ。ようやく安心できる。
 部屋に自分を守る力が充満しているのが『視える』のだ。この店のトイレは、この瞬間から俺がスイッチを切って解除するまで、俺の『テリトリー』になったのだ。今よりしばらくの間、この小さいスペースが、俺の縄張りであり狩場となる。

     ※※※

 まずは準備。トイレットペーパーを予備の分もまとめて回収して、洗面所の戸棚に隠しておく。あとは、入り口の扉のちょうど内側、死角になる壁に張り付いていると最初の獲物が入ってきた。二十代中頃のブラウンのビジネススーツに身を固めたOL風の女性。さっき見た女子高生グループの誰かが入ってきてくれるのではないかと期待していたので、ちょっとがっかりする。
 だがこの女性も悪くはない。艶やかな黒髪ロングを腰辺りまで伸ばした、目鼻立ちもくっきりしたなかなかの美人なお姉さんである。飛び込むようにトイレに入ってきて扉を閉めて洋式便所に腰掛けた瞬間、目の前にいる俺のことに気がついたのだろう、大きな黒目勝ちの瞳をまん丸に見開いて驚きを隠せないようだ。
 普通、トイレの個室で若い男と鉢合わせすれば、悲鳴でもあげるのが普通と思うのだが、意外なもので驚いてはいても叫ぶ女は少ない。ビックリしすぎて声が挙げられないというのとも違うようで、どうやら意表を突かれて思考が追いついていかないようなのだ。
 仮に叫ばれたとしても、テリトリーを一度張り巡らせてしまえば、俺は絶対安全なのでこれは相手の反応を楽しむ、遊びの一環に過ぎない。
「あっ、あの……すいません鍵が空いていたもので……」
 ここは建前上男女兼用トイレ。先に俺が入って鍵をかけ忘れたと解釈してくれたのだろう。この女は、気立てのよい女性のようだ。
 OLが、立ち上がろうとするのを俺は呼び止める。
「ああ、良いんですよ。俺は『ただのトイレの備品』ですから」

 キョトンとした顔で、女は俺を見つめる。迷惑な闖入者を見る目だったのが、まるで路傍の石を見つめるような顔に変わった。
 この瞬間に、俺は彼女の意識の中で、トイレの備品に変化していく。
「やだ、ワタシったらなんで備品に話しかけてたんだろ……どうかしてる」
 そう一人で呟くと、女は紺色のストッキングと紫色のパンティーをズリ下ろして、よっぽど溜まっていたのだろう。しゅぅぅぅぅうと、ものすごい音を立ててションベンをし始めた。
 女性が使う便器なので、乙姫様(水が流れる音でトイレの音を誤魔化す機械)も取り付けられているのだが、この女は珍しく使わない。やはり女性しかいない空間という油断があるのだろうか。
 俺は無防備な女の股間を見つめながら、チャックを下ろす。チャックから、ポロリと息子を取り出すと既に勃起していた。綺麗な太もも、元々薄毛なのか綺麗に整えられているのかこんもりとした女の恥丘にまばらに茂っている褐色の草原を見るだけで、男なら興奮しても仕方がない。
 しかも今、目の前の女は恥丘の洞穴を半開きにしてションベンをまき散らしているのだ。別に俺に見せつけているわけでもないだろうが、開放感に溢れる女の緩んだ表情を見るだけで、俺は興奮して、自然とイチモツを手でこすってしまう。
 よっぽど溜まっていたのだろう、女のションベンは一分あまりも続いた。
「ふうっ……」
 満足気なため息をついて、微笑んでいた女の表情が曇る。
「やだ、紙がない」
 慌ててオシッコしたためだろう、トイレットペーパーがないことにも気付かずにオシッコしてしまったのだ。補充のケースが付属しているのだが、そこにも紙はない。俺がさっき抜き取っておいたのだから当たり前だ。

「紙ならここにありますよ」
「どこに?」
 俺は、自分の勃起したチンコを差し出す。
「ここです、俺のチンコが『紙』です」
「えっ……ああっ、こんなところに」
 流石にチンコが紙というのは無理があったのだろうか。一瞬、迷いを見せたが俺のチンコを手でつかみ……思いっきり引っ張った。
「イタタタッ、ストップ! ストップ!!」
 俺は慌てて叫ぶ。女は、俺のチンコを掴んだまま手を止める、痛くても勃起はそう簡単に収まらないもので、女の手で引っ張られても俺のチンコはカチカチになっている。
 テリトリーの中では、俺は絶対安全と決まっているので、チンコをトイレットペーパーに見立てるなんて『無茶な設定』をしてみたのだが、どうやらケガをしない程度になら俺に痛い目を見せることも出来るらしい。
 これは少し気をつけないと。
 女は、俺のチンコを引っ張ったままで、彫刻のように固まっている。

「いいですか、これは紙ですけど無理やり引っ張ってはいけません。まず立ち上がって下さい」
 女は、言われた通りに立ち上がる。一度、肉体に制御をかけると言いなりになるので便利だが、いささか興ざめする。
「手で引っ張らずに、股間でチンコ……いえっ、紙を挟むようにしてすりつけて拭いてください」
 ウオシュレットの水を浴びたマンコを、女は言われた通りに擦り付ける。少々ぎこちない上に不恰好だが、まるで素股をしてもらっているような感じだ。
「あのっ、すいません……紙なのに全然拭けないんですけど」
「いいから、もっとオマンコ押し付けてこすって下さい」
 気持ちよくなってくると、自分で立てた設定とかどうでも良くなってくるのが俺の悪い癖だ。
「あのぉ……」
「ああ、イキそうだ。マンコを思いっきり指で開いて下さい」
 俺は、開いてもらったマンコに何度か擦り付けるようにして、股間にぶっかけるように、どっぷりと射精した。
「あのぉ、余計に汚くなってしまったんですけど」
 不満げな声をあげる女。どっぷりとマンコに付着した白濁した粘液は、そのまま太ももを伝ってポタポタと床にこぼれ落ちて行く。
「ふぅ、なんだまだいたのか。気にせずにパンツ履いて、さっさとトイレから出て行ってください」
 女は、いわれたとおりに脱げかかっていたパンツとストッキングをあげる。

「ううっ」と気持ち悪そうなうめき声をだした。股間には精液がべっとりとついたままだから当たり前だろう。女がどうなろうと、俺の知った事ではないが、そのうち乾くだろう。
 女はため息をつきながら、すぐ出て行った。

     ※※※

 茶髪の女子高生が入ってくる。
 俺はよしと思わずガッツポーズした。さっき見た女子高生グループの中でも、間違いなく一番可愛い娘だ。茶色のブレザーに、チェックのスカート、よく駅前で見かける制服だ。胸は残念ながら控えめな大きさだが、小柄ながらスタイルはなかなか良い。それになにより、短いスカートから覗く、ツヤツヤした太ももが魅力的だ。
「あっ、入ってるなら鍵ぐらいかけなさいよ! てかっ、あんたはさっき……まだ入ってたの。おかしいな、だいぶ前に女の人が出てきたはずなのに……」
 最初のOLの後に、何人か入れ替わりに入ってきたがあんまりいい女じゃないからスルーしたのだ。それにしても、一回りも年上の男相手に「あんた」呼ばわりはないだろう……いや、それはいいとしてこの子は俺をトイレに入ったのを知っている様子だ。
 なんでだろうと考えると、そういえばさっき俺がトイレに入るときに不審げな表情で見たのは、この女の子だったかと思い出した。
「気にしないでください、俺はただのトイレの備品ですから」
「なによトイレの備品って、胡散臭いわね……」
 そう言いながらも、納得したように様式トイレに腰掛ける。さっきのOLは、俺がトイレの備品になると興味を失ったようだったが、この娘とは会話が成立している。『トイレの備品』という曖昧なものになったときに、それをどう解釈するかは相手の判断に任せられているからこういうこともある。
「ああ、そうだ。君名前は?」
「ええっ、紗季だけど。払田 紗季(ほった さき)それがどうかしたの?」
「何年生」
「一年だけど……あの、私今からね」
 煩わしげな声で、俺の執拗な質問を跳ね除けようとしてくる。便所に入ってスッキリしようとしたときに、横からいろいろ聞かれたらウザったくて仕方が無いだろうな。しかも、質問している俺は『トイレの備品』なのだ。紗季の立場で考えてみれば、実にシュールである。
「うんわかってるよ。トイレするんでしょ、大小どっち?」
「えっ、なんでそんな……なによっ」
 少し怒った声を出す紗季。トイレの備品相手でも、年頃の娘が申告するのは恥ずかしい質問だったらしい。
「うんこか、オシッコかどっち」
「ヤダッ……なんでそんなこと聞くのよ」
「ここは『注文の多いトイレ』だからね。ちゃんと言うとおりに答えないと、トイレさせてあげないからね」
「うん……大の……ほうよ。もうっ、ホントなんなのよ。いいでしょ……」
 何がいいのか知らないが、トイレさせてもらえないのは困るらしい。紗季は、俯き加減で恥ずかしそうに申告した。そうか、うんこか。

「よし、じゃあ取り敢えず制服を脱いで、裸になってもらえるかな」
「ええっ、ちょっと待ってよ。どこの世界に裸になってトイレするバカがいるのよ!」
 いちいち口答えが厳しい。どうせテリトリーの強制力で言う事を聞かせてしまうのだが、人によって強制力のかかり方は様々である。大人のほうがすんなり言う事を聞いてくれる傾向がある。若い女の子は、きつく命令しないと反発してくることが多い。
 反応がある方が面白いとも言えるのだが、いちいち突っかかられるとそれはそれで面倒になってくる。
「ここは注文の多いトイレで独特のルールがあるんだよ。それには従ってもらうし、やっぱりトイレするの辞めておこうってのも駄目だからね。トイレが終わるまで、出られないから、わかった紗季ちゃん?」
「……わかった。脱げばいいんでしょ、脱げば……」
 ごねた癖に、割と堂々と脱いでくれる。乱雑にポイポイ脱ぐと思ったら、脱い衣服は綺麗に洗面台の上に畳むのだ。いまいち、若い子は性格がつかみにくい。
「これでいいでしょ。もうさっさとして出ていくわ」
「まった」
「今度は何よ……」
 怒ったように、顔を真っ赤にする。

「うんこをするときは、洋式便所の上に和式便所にするみたいに跨って。こっちにケツを向けて、うんこをひねり出すんだ」
「ううっ、そんなのひどいわ」
 そう言いながらも、命令に従わないわけにはいかない。
 紗季は言われたとおりに、ケツを突き出して力み始めた。
「なかなか出ないんだな、便秘気味か」
「ばっ……こんな状態で、見られて……すぐ出るわけないでしょ」
 言い訳なのか、本当に恥ずかしいのか知らないが。真っ白いケツが、赤みを帯びているところを見ると本当に恥ずかしいのかもしれない。
 俺は手持ちぶたさで、紗季のパンツでも探ろうと脱いである制服に手を伸ばす。色気のない安物のパンツよりも、面白いものを見つけた。紗季の制服のポケットに携帯が入っていたのだ。
 パシャリと、紗季の携帯でお尻の写真をとってやる。
「ちょっと! ああっ、なに今の音。まさか写メを!」
 紗季の抗議も聞かないで、パシャリパシャリと音を立てて何枚か撮る。
 確認すると、なかなか良く取れている。特に肛門がうんこをひねり出そうと、ムクっとふくれあがった感じなんか見事な接写だ。
「この写真、あとで友達に送るか、出会い系サイトに投稿するかどっちか選んでやっといてね」
「そんなっ……ああああっ」
 友達に見られるか、どこかの誰か知らない男に見られるのなら、出会い系の方を選ぶだろう。俺は会心の出来の作品を自慢できるし、見た男どもはきっと喜ぶに違いない。みんなが幸せになれるグッドアイディア。良い事したという満足で俺はついつい笑顔になる。 紗季は諦めたように、プルプルと固めのうんこをひねり出した。

「あのぉ」
「なんだよ」
 せっかくいい気分に浸っていたのに。紗季は、出すものを出し終えて、水を流したのだがケツを突き出した姿勢で固まっている。
「こんな態勢のままだとウォシュレット使えないから……紙も何故かないし。ちゃんと座り直してもいい?」
「ダメ」
「じゃあ、どうすればいいのよ!」
 また顔を真赤にして怒る、顔は可愛いのに性格のきつい娘だなあ。
「そのままでいて、すぐ俺のウォシュレットで綺麗にしてやるから」
 そういうと、俺はズボンのチャックをかけて、イチモツを取り出すとションベンした。「ふうっ」
「なまぬる……あっ、あんたなにをかけてるの……」
 紗季は尻の穴に感じた異様な感覚を確かめようと後ろを振り返るが、ケツ穴に押し付けるようにして、ションベンしている俺の姿が確認できないらしい。最近の子供は、身体が硬いからな。
 ちょっと勃起気味だったんでションベンのコントロールが上手くいかず、お尻の周辺部にオシッコが飛び散ってしまったが、まあだいたい綺麗になっただろう。
「終わったよ、綺麗になっただろう」
「あんたまさか、オシッコをかけたの?」
「見たらすぐ分かると思うが、このトイレのウォシュレットは俺のオシッコだから」
「そんなムチャクチャな……全然綺麗にならないじゃない。あんたのオシッコなんて、むしろ汚くなってる!」
「贅沢だなあ、今の娘は」
「もういい……もうトイレは終わりでしょ。出てっていいよね?」
 立ち上がって、洗面所の自分の服のところに駆けろうとするので、俺はすぐストップをかけた。
「そう焦るなよ……そうだなあ、オシッコは出るかな?」
「オシッコ? 出るけど……んっ」
 自分で言ってしまってから、手で口を塞いでも遅い。俺の質問に答えない訳にはいかないのだが、それでも反抗しようとするだけ紗季は生命力が強くて、テリトリーの強制力に抵抗しているのだろう。

「じゃあ、洗面台まできたんだから、洗面台に乗ってしゃがみ込むようにしてオシッコをしてくれるかな」
「……こんなことトイレでするのおかしいよ」
「いや?」
 俺は逆らえないと分かっていて聞いてやる。
「嫌よ……嫌に決まってるけど、するよ。すればいいんでしょっ……」

 鏡面大に尻を向けて、俺の方にマンコを向けてしゃがむ。
「そうだ、見せつけるようにもっと腰を突き出して」
「ああ、また撮るつもりなの。覚えてなさいよ!」
 パシャリパシャリと紗季の携帯で、写真を撮ってやる。何を覚えていればいいのか知らないが、悔しかったのだろう。紗季は瞳に涙を浮かべている。
「水っぽいオシッコだな」
「ウルサイ!」
 最初はちょろちょろと出したオシッコだったが、一度出たら女のションベンは止まらない。
 紗季は洗面台の中にオシッコをまき散らしたが、もともと排尿を受け入れるためのものではない洗面台は浅くて、俺の顔やあたりに紗季のオシッコはピチャピチャと爆ぜた。
「終わりか」
「ううっ……もういいでしょう」
「まて、綺麗にしないとな」
 俺は左手で紗季の腰をガッツり掴んで固定すると、右手でマンコを開いてぺろぺろと舐め始める。
「ああっ、いやぁ……」
 しばらく一心不乱に舐めていると少し濡れてきた。唾液だけの湿り気じゃない。
「濡れてきたじゃないか、助平な女だな」
「こんなことされたら誰だって……はっうぅ」
 最近の女子高生は進んでいるというし、これだけ可愛い女だ。処女ではないだろうが、桜貝を思わせる紗季のヴァギナは意外と無垢に見えた。舌で丹念にクリトリスの皮をむいて、チュッと吸ってやる。
「綺麗にしてるだけなのに、どんどん濡れてきて困るんだが」
「当たり前でしょ、もうこんなことしてたら」
 目の前でピンと存在を誇張しているピンク色の乳首が気になった。やや貧乳気味なので乳首がおっ立つと余計に強調されて見える。のだ
 両方の手で、乳首をつまみあげてギュッと引っ張ってやる。
「やはっ!」
 紗季は腰を折り曲げるようにして、ビクビクと背中を震わせた。乳首を刺激したのが契機になって行ってしまったようだった。

 紗季の身体が落ちないかと心配で、俺は胸をギュッと掴んで抱きしめるように支えてやる。ハァハァと肩で息をするようにして、紗季は息を荒らげている。
「このままじゃらちが開かないな、こっちで中を綺麗にするから」
 そう言って、俺は抱えるようにして紗季を便器に座らせる。
「ハァハァ……ハァ……アアッ!」
 今度は紗季が便所になる番だ。精液便所になってもらおう。俺は、便所に座らせた紗季の腰をぐっと開いて有無をいわさずに勃起した男根を挿入した。
 濡れそぼった肉襞は優しく俺を迎え入れてくれる。スムーズにピストンできる。
「いやぁ、若い襞はやっぱ吸付きが違う」
「アアッ、あんたなに勝手に入れてるのよ! 辞めて! 抜いて!」
「だから中を綺麗に」
「止まって! ああぁ! あんたゴムもつけないでぇ、ほんとに生で何考えてんのぉ! ダメだってぇ!」
「何がダメだよ、気持ちイイんだろっ」
「ダメ、こんなの。私……彼氏いるしっ!」
「へーそうなんだ」
 そう聞いて、深々と挿入しながらも俺の動きが止まる。さすがに高校生、彼氏ぐらいはいるか。俺は処女だったらいいなとか思ってたので少し残念だった。
「ねぇ、だから浮気になっちゃうからやめて」
 上目遣いにそうお願いしてくる紗季の頬は、真っ赤に染まっていた。感じていないことはないだろうに、彼氏に悪いというのは悪い子ではないんだろうな。
「だったら、浮気にならないからいいじゃん」
「へっ?」
「紗季はただトイレでマンコを綺麗にしているだけだぞ。別に他の男とセックスしてるわけじゃないんだから問題ない」
「ええっ、そうなの……あんっ」
 俺が腰を突きながら、そう教えてやると困惑したように考え込んだ。

「それに、どうせ彼氏とも生でやってるんだろう。万が一、ガキを孕んでも大丈夫だよな」
「ええっ、なにそれ。私、絶対ゴムつけてるし。中で出すつもりじゃないでしょうね。それだけは絶対……」
「あっ、ゴメンもうでちゃったわ」

 ビュクっ ビュルッビュルッ!

 びくっびくんと、膣の中で俺は激しく脈打って精液をまき散らした。

「あああっ、嘘! 嘘ぉ!!」
「はい、これは精液が漏れないようにサービスのタンポンだからね。今日一日はこのままにしておくように。さあ、もう制服を着て帰っていいよ」
 俺は、チンコをさっと抜き出すと、精液と愛液の入り混じった中出し汁がこぼれないように、トイレに置いてあったタンポンのアプリケーターを突っ込んで、中に押し込んでやる。
 紗季は、しばらく放心状態でだらりとトイレに座り込んでいたが、やがてふらふらと起きだして無言で制服を身につけると、ゆっくりとトイレに出て行った。

 二回も射精して俺も疲れた。そろそろ今日は辞めにするか、続けるか。次の女の容姿を見てから判断しようと。俺はまた入り口から死角になる壁にそっと身体を押し付けるのだった。

「トイレの備品」 完


プロフィール

ヤラナイカー

Author:ヤラナイカー
おかげさまでプロ作家になって五年目です。
ボツボツと頑張っていきますので、今後ともよろしくお願いします。
(プロフの画像、ヤキソバパンツさんに提供してもらいました)



最近の記事



最近のコメント



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



FC2カウンター



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



ブログ内検索



RSSフィード



リンク

このブログをリンクに追加する