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E小説(中出し・孕ませ・時間停止・催眠・環境変化など)
エロ小説のサイトですので18歳未満の方はお帰りください。傾向はマニア向け、作品中のほぼ100%中だし妊娠描写、付属性として時間停止・催眠・環境変化などです。
「奈須歌の催眠」
序章「テキサス研究所のころ」

 俺がこんな能力を持ち始めたのは、六歳にも達しない幼児のころ孤児院でのことだった。俺は、人と目と目をあわすと少しだけ相手の脳の情報を入れ替えることができるのだ。俺は捨て子で自分の居場所がいつもないような気がしていた。そのために気が弱く会う相手にいつも心を合わせていた。するといつしか、相手の目を通してすっと自分が相手に入っていき、俺の思うことを相手に移すことができるようになったのだ。その能力をつかって、孤児院で罪のないイタズラを繰り返しているうちに、俺の能力は経営側にばれてしまい、おれは孤児院から研究所に移されることになった。
 そこが、アメリカのテキサス州の荒野に立てられた研究所であるということはずっとあとになって知った。研究所では、いろんな国の子供たちがいて各国語が飛び交っていたが、なぜか一人もアメリカ人の子供はいなかったからだ。研究所の内部では、わりと行動に自由があり、自然に日本人の子供は日本人同士で固まることが多かったから、英語が片言でも生活に支障がなかった。
 俺の感応力、俺の担当の研究者は「支配の目」と呼んでいたが、その力は非常に弱いもので、訓練を重ねても強くなるということはなかった。この研究所が主目的にしている研究テーマ、催眠術のような力ではなく、俺の力は俺個人の才能によるものだった。
 しかも、強化できないときている。実用性が薄い上に汎用性を持たない。そう判断した担当者はため息一つ吐いて、俺をファイル五に分類した。そして俺は、みんなに蔑まれる最低の生活を送るようになった。

 この研究所では、各人の能力はファイル一から六に分類され、六に一度入ってしまうと追放処分にされる。警備員に研究所の外に出されて、その後のことを知るものはいない。もしかしたら、殺されていたのだろうか。ファイル一は、その能力の強さと汎用性から研究員と同等の扱いをされる。いずれ成長すれば、この研究所が付属している大学に編入することもできるし、この研究を後援しているAC社などの多国籍企業へ就職することもできる。望めば、研究員にそのまま成れることさえある。ファイル二は、一に準じる扱い。一と二のランクは流動的なもので、上がったり下がったりすることも多かった。
 ファイル三、四は実動部隊としての訓練を受けて、各企業や政府の要請をうけた機関さらに上部の研究所、軍や警察組織などにまわされる。最近マスコミで噂されるようになった超能力捜査官というのはこういう出身の連中だ。そして、ファイル五はとりあえず生かされているだけというやっかいものあつかいをされるのだった。

 研究所という閉鎖空間で、俺たちファイル五は不満の捌け口として利用された。能力が発現するかもしれないものをプールするためという名目もあったが、結局はいじめられ役だ。俺たちフォルダ五は弱いので、反撃される恐れもなく上の階級の子供や研究員の慰み者になったのだ。俺は理不尽な理由でよくボコボコに殴られたが、もっと酷いのになると性的虐待を受けたものも多い。俺みたいな男でも、子供だからその危険はあった。俺が助かったのは海馬の兄貴がいたからだ。海馬の兄貴は、フォルダ一の筆頭にいて、その催眠能力の汎用性の高さから研究所の至宝のような特別扱いを受けていた。海馬の兄貴からいわすと「それでも、俺は大学にいけば落ち零れの類だがな」とのことだ。
 大学には、天才的な能力者もいて海馬の兄貴を軽く越える能力を誇っているらしい。研究所の片隅で何とか糊口を凌いでいた俺たちには想像もつかない世界だ。

 とにかく兄貴は俺を庇ってくれた。
「ナス、自信を持て!御前は、俺達みたいな訓練で作った偽物の能力じゃなくて本物の超能力を持っているんだ。戦うんだよ」
 そういって、励まし守ってくれた兄貴への恩は一生忘れない。
 俺の本名は、いちおう矢岳奈須歌という。新潟の矢岳孤児院の院長がつけた変な名前だ。ナスカというのが言いにくいので、仲間にはナスというあだ名で呼ばれていた。

 俺があの地獄のような研究所から抜け出せたのも海馬の兄貴のおかげだった。兄貴が組織に掛け合って、日本へ帰国するとき俺も一緒に連れて行ってくれたのだ。唯一の味方だった、兄貴がいなくなって研究所に残っていたらどんな目にあわされたかわからない。俺は日本で、兄貴のために必死になって尽くそうとおもったんだ。

 だが、兄貴は空港で「俺は俺で生きるから、お前はお前で生きろ」といって放り出したんだ。てっきり助手として、いや奴隷としてでもよかったんだ。一緒にいられるなら。
 俺は、兄貴の言葉に呆然となった。
 そして、必死にすがった。
 そんな俺をみて兄貴は悲しい目でこういった。
「バーカ! まだ、分からないのか。お前は俺なんかよりずっとポテンシャルが上なんだよ。お前と一緒に居たら、いつか俺がお前に服従しなくちゃならなくなるぜ……」
 俺は兄貴の言葉の意味が分からなかった。
 困惑していると、やさしく兄貴はいった。
「いまは……いまは分からなくて良い。どうしても、お前が俺に恩返しをしたいというなら借りということにしておいてやる。お前が、本物になったときに嫌ってほど返してもらうから、強くなれナス」
 分からない、分からないが、兄貴の足手纏いになるってことかもしれない。俺は、再会した時必ず兄貴の役に立つ男になると約束して、固く握手して空港で別れた。
 あの時は分からなかったが、未熟な俺を一人前の男として扱ってくれた兄貴のやさしさに今なら気がつく。俺は依存してるだけじゃなくて、独り立ちしなきゃならなかったんだ。
 俺の能力は弱い、だがそれは兄貴たちフォルダ一も本質的には一緒だ。俺の弱さは、その能力を生かして戦う術を考えないところにあったんだ。

第一章「支配の目」

 空港で兄貴を見送った後、俺は途方にくれていた。
 忙しく行き交う人の群れ、いまから観光に行こうという家族連れ。帰国した途端に携帯電話でなにやら忙しげに話すビジネスマンたち。
 この国は、自分の故郷だ。だが、孤児である俺には身寄りもない。行く当てもなかった。あるのは、この《支配の目》の能力だけ。使うしかないようだ。
 周りは、おじさんとかおばさんとか……微妙だな。国際線の利用者だから、金は持ってるだろうが。
 そんな時、目の前をいい女が通りかかった。
 じっとその女を見る。その女にとっては不幸なことに、俺にとっては幸運なことに女は俺の強い目線を受けて、つい見てしまったのだ。俺の目を……。

     ※※※

 取りあえずここまで、ほぼボツプロットですね。海馬の弟分と、アルジェ・ハイゼンベルグを対決させてみたかったような。書こうと思えば書けないこともないのですが、結局アルジェはどうしようもなく無敵なので、マトモな能力者が真っ向勝負しても結果が眼に見えてるので、そのテーマでは面白くない。成立しない。

 奈須歌くんも、対アルジェ対策に頭を振り絞って天才の数で勝負とか、いろいろ策を練っていたようなのですが……やっぱり無理です。将棋で言うと、奈須歌くんが三手先読みしてる間に百通りの勝ち筋を考えてしまうので。だいたい、各界の天才をネットワークするアイディアはすでにアルジェのほうが実用化しているようなので(中二病の催眠術)土台から無理です。
 だから単純に対決というテーマでは無理。キャラと大体どういう行動をするかは見えているのでは、何か別の話に使えるかもしれないけど。
視姦者の穴ぼつぷろっと
男根や、それぐらいの大きさのものを突っ込めば破れてしまうのだが、それも完全になくなることはなく。
 形骸は残っていて、大体出産のときに完全に擦り切れてなくなってしまうらしい。

 なぜ、オカルトを始めたのか。そこから、秋人は質問を始めた。
「わかりません……私は、もしかすると母親を殺すためにやっていたのかも」
 呪い殺すか、恐ろしげなことをいうわりに、表情はさっぱり口調は淡々としている。それは本当の理由ではないと秋人は感じた。
「殺すほど恨んでいたんですか」
 そう秋人が聞けば、いいえと答える。だったら違いますね。そういう話になる。別に、未央が嘘を言ったわけではない、理由には表面上のものと本物があって、本当の理由というやつが浮き出してくるには時間がかかるのだ。
「私は……私は、なにか起こることを期待してずっと儀式をやっていたんです。とにかく、何かしていないとしかたがなかったから、それで酷いことになってもいいと思っていたのに」
「ふむ、実際に起こってどうでしたか」
「実際こんなことになって……驚いてしまって。期待していたのに、終わっていいとすら思ってたのに……困惑してます」

「私は、人に恨まれることが無いぐらいどうでもいいと思われてるんです。親はただ私が生きてるだけでいいと思ってるし」
「私はたぶん、男の人とは一生お付き合いできないと思います」


 秋人は、今日は大天使ガブリエル様というわけだ。悪魔になったり天使になったり、この男も忙しいものだ。

     ※※※

 小説を書いていると、こういうゴミが一杯湧いてきます。たぶん、未央と母親との因縁話みたいなのを描きたかったんだと思いますが、瑣末なのでカットしたような記憶があります。
少年『村上海馬』の物語
 村上海馬は、当時社会問題となりかけていたストリートチルドレンの走りだった。
 孤児である彼は、孤児院にいれられたのだが、持ち前の偏屈な性格のせいで管理のキツイ環境に耐えられなくなった。物心つくころには、孤児院を飛び出していた。
 機転は利く海馬のことだ。
 地方都市の路上で、周りの大人を垂らしこんでは乞食のように食事を得る。地頭がいいから、拾った雑誌から文字を覚えることもできる。そんなこんなで、子供なりに一人で、なんとか活きていくことはできた。
 すさんだ生活ながらも、路上の生活にも最低限のルールがあることを学ぶ。知り合いからは盗みはしない、大人は騙さない。拙い悪行には報復がつきまとうからだ。まだ海馬は、うまく大人に自分を庇護させる必要があるガキだった。最低限の信義は守った方が生きやすい。その環境が、最低限の節度を持ったまともな少年へと彼を成長させていた。
 だがそれが、海馬の不幸となった。

 村上海馬が十歳を数える頃、最悪の男に拾われてしまう。
 海馬が初めて力を分け与えてもらい、師匠と呼んだその男は、たちの悪い催眠術師であった。
 その男は、名前や国籍も定かではない。
 ただ『ハンドパイパー』という二つ名は、けっこう有名な殺し屋として通っていた。
 ハンドパイパーは、少年法に守られる子供に催眠術をかけて、手足として使うことを得意としていた。
 小さな身体、どこに紛れ込んでも怪しまれない身分、使い込んでみれば子供は犯罪の道具にはうってつけだったのだ。

 犠牲となり、そして後に加害者となった多くの少年たち。その最後のひとりに、村上海馬は選ばれてしまう。
 ただ、海馬には生まれつき催眠術師としての天性の才能が備わっていたことだけがハイドパイパーの誤算であった。
 海馬は、気がついたときにはナイフを手にして人の首筋を刺していた。
 催眠に操られて、ハンドパイパーの標的を刺し殺したのだ。
 海馬の才能の芽が開くのが罪を犯す、ほんの数秒のところで間に合わなかった。
 殺害の現場から逃げる海馬は、ハンドパイパーの元にたどり着くまでに、全てを推理し終えていた。
 海馬は騙されたのだ。そうして利用された。殺人が取り返しのつかない罪であることを十歳の子供である海馬にはっきりと分かったわけではない。ただ、信じていたのに裏切られたという強くて静かな怒りが、少年を支配していた。

 暖かく海馬を迎え入れるハイドパイパー。海馬は使える少年なので、次の仕事もまかせるつもりだったのだ。
 だが、海馬はすでに催眠が解けていた。そうして本能的に理解していた。目の前の優しげな男が、自分に何をさせたのか。その手段・方法の全てを。
 海馬は無造作とも言える手つきで、血塗られたナイフを、油断しているハイドパイパーの背後に回って、真っ白い首筋に突き立てた。
 簡単だった。刺した、抜いた。吹きこぼれる熱い血液にも構わず、もう一度深く刺した。そして、また引きぬいて三度目に刺すころには動かない肉の塊になっていた。

 海馬は、ハイドパイパーから新しい知識を学んだ。
 人間は誰も信用できないということ。
 そうして、彼の所持していた催眠術の道具をかき集めて、それを使い始めた。
 ハイドパイパーの身代わりを立てて、今度は依頼主の側を殺し始めたのだ。
 それは思いつきのような、それでいて必死な子供の暴走だった。

 海馬によって十三人目の人間が殺傷されるころに、ようやく海馬は逮捕された。
 高々、十歳の何の訓練も受けていない少年が、訓練も受けずに使った催眠術を駆使して行った犯行。それは望まずに殺人へと駆り立てられた復讐だったのかもしれない。
 その様な『若い才能』を欲していた、アメリカのテキサス研究所が村上海馬を放っておくわけがなかった。
 こうして、村上海馬の存在と一緒に、彼の罪状も日本から消えた。

――――

 村上海馬は、青年になっていた。
 相変わらず、テキサス研究所で催眠術の研究に明け暮れることに、いい加減嫌気がさしていたころだ。
 彼の前に、十歳の少女が連れてこられた。金髪碧眼の怜悧な少女。
 すでにこの歳で卓越した天才と呼ばれている。
 アルジェ・ハイゼンベルグ。

 村上海馬は、彼女をその才能を組織に順応させるように命じられていた。
「才能を順応させるだって?」
 ようは目の前の子供に、組織の都合のいいように人を操って殺す道具を造らせろということだった。
 村上海馬は笑った、この酷薄な男にしては珍しく微笑んだ。そうして
 その笑顔はアルジェの目の前で、見る見る苦いものに変わり、自嘲の叫びとなった。
(つまり、今度は俺がハンドパイパーと同じことをやれということだ)
 あの時の無秩序な憤りを思い出した。まだ情緒も育っていない子供に、罪を犯させるということ。
 海馬は最初から結末を知っていた。ハンドパイパーはどうなった?
「俺は、この子に刺されて死ぬのだけはごめんだな」
 そう呟いた海馬の表情は、やけに晴れ晴れとしていた。
 知ったことかと思ったのだ。彼はついに組織のほうを、見限ることにしたのだ。

――――

 アルジェは、目の前で訳の分からないことを言って、目まぐるしく表情を変える男を、本当に不思議そうに見つめていた。
 アルジェに対して研究所の人間がとる反応は二種類に分類される。親しげに近づいてきて、アルジェに何かさせようというもの。つまり利用。
 そうでなければ、存在自体が巨大な力であるアルジェを訳もなく恐れて遠ざかろうとする。面白いのは、アルジェを子供と侮り、利用しようと近づく人間も、密かにアルジェに対して恐怖を抱いていることだ。
 ちょっと潜在した恐怖の尾っぽを引っ張ってやれば、どんな大人も悲鳴を上げて逃げ出すのだ。人間というものを理解したアルジェにとって、それは単純すぎる構造のつまらないオモチャだった。

 この新しい怜悧で酷薄そうな青年は、そのどちらにも当てはまらないようだとアルジェはすぐ気がついた。アルジェを利用するのでもなく、恐れているわけでもない。
(ふうむ、興味深い――人)
 アルジェが村上海馬に感じたイメージは、七色に光る虹だった。表情は目まぐるしく変わり、この男の性格は複雑で安易な予想を許さない。
 光の角度を変えると色も性質も変える輝石のような男だ。

 それは、アルジェが見る――初めての人間的な人間だったのだ。
「三丁目のデブレデター」(透明人間似非科学小説)ボツネタ
「それにしても酷い無秩序ぶりだな」
 流石のアルジェ・ハイゼンベルグもこの反古の山を押しのけながら辟易せざるを得ない。
 単純な情報処理能力で言えば、通常の人間に換算すると九の九乗という莫大な知能を持つアルジェでも、物理的にはたった一人の人間であることに変わりはなく、三次元の情報をいちいち取り上げて調べるという手間をかける必要があった。
 つまりは――面倒臭い。その一言に尽きる。

 この物理法則も安定しない星界に置いては、天才アルジェ・ハイゼンベルグと言えども無秩序な書庫を前にした一書生に過ぎないのだ。
 助手も居ない世界で、無秩序の海の中から意味を拾い上げる徒労に近い作業。そうして、幸か不幸かその作業にかけるための時間も、また同じように無限にほど近く存在する。他にすることもなく、仕方がなく作業に戻る。

「これは、「三丁目のデブレデター」のボツか……」


 ――――

「エイォ! エイォ! エイォ! エイォ!……」
 運動部独特の掛け声を上げながら、走っていく少女たち。
 上半身Tシャツ、下に揃いの真っ赤なジャージをはいて、タオルを巻いた女子高の選手たちが真夏だというのに、小麦色に日焼けした女子高生たちの肌はどこまでも滑らかだった。
 この暑い中、元気なものだ。汗ばんだTシャツからは、下のブラが透けて見え、通りがかりのものは男なら自重しつつも、やっぱり欲情してしまうだろうし、女ならあー蒸れるだろうなと、同情する。
 走っている運動部の選手たちも、本当ならブラなど脱ぎ捨てたいぐらい。
 汗を吸収するスポーツブラなのが救いだが。
 部長は、たるんでるからそういうのが気になるのだ。運動に集中していれば、気にならなくなるとか精神論を振り回して、三人の選抜部員たちを引っ張っていく。
「きゃ!」
 その鬼部長が突然、髪を振り乱して立ち止まると、身をよじり始めた。
 あの部長でも、こんな可愛い声がでるのかとびっくりする。
「どうしたんですか……ぶちょー」
 部員の一人が、立ち止まって声をかける。
 よく観察していれば、胸の部分が浮き沈みして部長の運動には不向きと噂される巨乳が揉みしだかれているのが分かっただろうが、なにせこの炎天下に十キロも走っているのだ。
 気がつかない。部長がとまって、身をくねらせてるのを不思議そうに見つめるだけだ。

 もちろん透明にデブレデター化した引田将人の仕業であった。通りかかりに、運動している彼女たちをみて、声援を送る代わりに悪戯したのである。

「ちょ、や……」
「大丈夫ですかー」
 部長が踊るように、ステップを踏むと、今度は周りを見回して構えた。
 まるで、見えない敵を見据えるようなかんじだ。
 すると、今度は部員の芳沢友香が身をくねりはじめた。
「やぁーん」
 部員で一番冷静な酒見モヨリはずり落ちるメガネをなおしながら、いろんな悲鳴があるものだなあと考えている。
 友香は、一番乳が小さいが、部長のこととあわせ比べてすぐ誰かに身体を触られているというアクションだと気がついた。
 気がついたから、モヨリにどうにも出来るということはない。巻き込まれてしまわないように後ろに三歩さがって観察するのみである。
 友香は気が弱いし、突然の事態にも弱いほうなので、身をくねらせながらも「やーん」だの「はーん」だのいいながら、抵抗らしい抵抗ができないでいるようだ。
 部長が、友香に駆け寄って、空中にパンチを繰り出してようやく友香の身体をまさぐる見えない手はどこかに消えたようだ。
「ひぃー」
 すると、今度は園崎倫子が叫び声を上げた。
 モヨリは、油断をしてるから狙われたんだなと思う。
 倫子は、友香ほどのんびりしてないが、要領が悪い。
 やばいと勘付いてるなら、下がればいいのに。
「いゃー、これなんなの、キモイ!」
 あまり刺激しないほうがいいのになとモヨリは思ったが、いってしまったものはしかたがない。倫子を弄る手は、さらに力を込めてジャージをズリ落とすところまでいったようだ。
 真っ白いパンツが見えている。
「きゃーーー」
 これで、この見えない何かは日本語が理解できるということだとモヨリは冷静に分析する。さらに巻き込まれないように、倒れそうな友香を支えている部長の後ろに下がる。戦闘力でいえば、部長が一番だから、まあ部長に助けを求めるのが一番いいだろう。 部長は、友香をシャッキリさせると、遅ればせながら倫子を助けに走る。
 部長が空気を相手に、空手技を繰り出している間。モヨリは、なんでこんなことになってるんだろうなと考えていた。自分が、面白くない日常がどうにかならないかと、願ったからだろうか。
「あぁーもぉーー」
 倫子はようやく解放されたようで、降ろされたジャージを持ち上げる。部長は、さらに周りを警戒しつつ空手技を繰り出しているが手ごたえがないようだ。
「モヨリは大丈夫」とか聞いてくれるので。
「ういー、今のところ大丈夫です」
「酔っ払いじゃないんだから、その相槌やめなさい」
「いや、それどころじゃないんじゃないかと」
 部長は、超常現象にも強いなあと、改めて我らがリーダーの強さに感服する坂見モヨリだった。
 気配をはかりながら、まるで武道家のように突きや蹴りを舞うように繰り出し続ける部長。そんな無駄な動きはしないが、モヨリも周りを注意する。
 友香や倫子は、呆然としてるが、あれで再びなんかされたら部長の拳が飛ぶだろう。部長の圏内にいれば、安全ということだ。
 忙しいだろうが、マトモに頭を働かせているのは部長だけだろうから、モヨリは部長に声をかける。
「いったい、これなんですかね」
「わからない! でも透明の何かが襲い掛かって来てることはたしか」
 そういって、手を休めない。
 モヨリはそんなに心配はしていない。実際透明な何かが、害意を持って襲ってきたのなら、すぐさま殺されているに違いない。
 なにせ、こっちは相手が見えないのだ。相手を、人間の成人ぐらいの力があるものと推測すると、不意打ちすれば部長だって殺せるに違いない。
 まあ……せいぜい、悪戯してやれって程度のことなのだろう。
 なんとなく、スケベな意味での害意は感じるから、犯人は男だろうか。
 透明な男……透明人間。
 あるいは、宇宙人って可能性もないことはない。人間の女が、どんなものか調べにきたのか。夢は広がる、ハードボイルドワンダーランド……。
「モヨリ、油断しない! 他の二人もそろそろちゃんと周りを警戒して」
 考えに黙考しているのを油断と見たのか、声をかけてくれる部長。自分は、他の二人より期待されているのだなと思う。
「もう、大丈夫だと思いますよ」
 だから、期待には答えるモヨリなのです。
「大丈夫? ふぅ……どうしてそんなことがいえるの」
 部長は、分からないといった表情だが、流石に炎天下で武道の舞を続けることで疲れてもいたのだろう。すこし拳を休めて立ち止まる。もちろん警戒は緩めないが。
「もう、私たちの周りの全エリアに部長は攻撃しました。私たちの半径五メートルの空間には、もういないと考えます」
「ふーん、モヨリがいうのならそうかもね」
 部長は、警戒も緩めた。また何かあればすぐ動けるが。疲れたし、モヨリの判断を信頼しているのだ。モヨリは、いわゆるオタクで不可思議の国に片足突っ込んでるから、こんな現象で、冷静な判断力を失ったりしないだろう。
 この子は宇宙人に、発信機埋め込まれそうになっても、冷静な判断力を失わない冷血動物と部長は認知している。その上で、大事な部員であることには変わりないのだが。
「で、あんたはこの現状をどう考えてるの」
「そうですね、電話します」
 友香が「もういやだー」とか泣いてたり、倫子が「いったいなんなのよぉ」とか叫んでるのも半ば無視して、何か電話で指示を出しているモヨリ。
「いったい、どこに電話してるの……警察」
 電話を素早く終わらせたモヨリ。
「警察が、透明な何かに触られましたといって来てくれるわけないので。超常現象研究クラブと探偵同好会に連絡しました。超常現象だといえば、この距離ですから五分で飛んで来てくれることでしょう」
「五分って、ここ学校から十キロは離れてるし、いま夏休み中よ」
「超研の小石川部長は、車持ってますから」
 当然学校には内緒で。
 部長は、じと眼で見る。あんまり変な連中と係わり合いになるなと。
「ま……、応援が来てくれるのは助かるし」そういって、まともな状態ではない友香と倫子を見る。
「車も助かるわね。今日の練習はここまでにしましょうか」
 ほどなくして、小石川部長のセダンが到着。相変わらず渋い。
 二人は、車で送られた。きっと、車の中で小石川の馬鹿に、根掘り葉掘り尋問されていることだろう。超研にとって、不思議な出来事は甘い蜜だ。
 当然、運動部の練習はここまでだ。学校側には、科学部と届けている超研の連中は、なにやらガーガー音を立てる計測器で計測中。
 探偵同好会の面々は、この炎天下だというのに山高帽にフロックコートで、道に落ちている残骸や足跡を調べている。
「あいかわらずの変態っぷりね」
 その暑苦しい格好に、部長は他人事とはいえ意識が遠のく。
「でも安心した……この分だと、もうおかしなことは起こらないでしょう」
「彼らは優秀です。明日には、何らかの報告を出せると思います」
「いや、報告とかはいらないから」
 部長は、現場で一緒に調査したがっているモヨリを引っ張って帰ることにした。

 手を引っ張られて、学校へと帰っていく二人の少女を見つめながら、現場が大変なことになっちゃったなあとデブレデター引田は、思っていた。
 素人の高校生が、現場検証しても自分まではたどり着かないだろうけど、無思慮な行動はやっぱりいかんなあと反省する引田。
 とりあえず当初の予定を変更して、少女たちについていくことにした。炎天下の日照りだが、裸の引田はそこまで暑くはない。引田を透明化している光子歪曲スプレーは、日差しを歪曲させて避けるため、常に日陰に居るのと変わりがないのだ。
 部長と呼ばれている巨乳娘と、知的なめがねっ子。車で運ばれてた子たちも、可愛くはあったが、一風変わった感じだがこの二人のほうがひきつけられる。
 やはりこの二人にしようと引田は思っていた。
「ハァハァハァハァハァ……」
 まさか、学校まで十キロも走らされるとは思っても見なかった引田である。
 長い道のりも安心の引田ジャンピングシューズを持ってしても、運動部エースの足の速さにはついていけなかった。
 二人はすでにクラブハウスでシャワーを浴びている。



 道端で、走っている陸上部の高校生のオッパイを揉んでからかっているときだった。
「身体が動かない」
 突然、目の前が青く光ったと思うと、引田の身体が動かなくなった。
 身体が、青白く光る。世界の光が反転する。イメージが広がり、無意識が活性されていくのを感じる。脳の裏側が熱い。
 こんなことを感じている場合じゃない、危険は目の前にある。
「とにかく、逃げ出さないと……」
 だが、その次の瞬間に目の前の世界は先ほどの昼の道路ではなく、どこまでも境目のみえない闇だった。ここは……。
「引田……将人……博士」
 目の前の静電気が一つの形をつむぎ出す、ホログラフィックか。
 青い十字架ののような形になったそれは、次第に明瞭な声で語りだした。
「失礼……このような場所に御呼びだてしてしまって」
「ここは、仮想空間だな」
 引田は落ち着いた声で言った。
「さすが博士、一瞬で御見抜きになるとは」
「私の肉体はどうなっている」
 道端に放置されているはずの肉体が心配だ。
「博士の肉体は、いまここにある肉体ですよ」
「物質の転送を可能にしているのか!」
 目の前の十字架がいうのが確かなら、引田の肉体は電子の状態まで分解されてあることになる。現実とは思えない。なんて、科学力だ。
「そうなりますね、多少不安定ですが、二世代ほど我々の技術は進んでいるので」
「ふむ……宇宙人かなにかかね。で、何のようだ」
「残念ながら、異世界人でも未来人でもなく、ただの人間ですよ。おかしな政府機関でもありません。ご紹介が遅れました、我々はデブオタ解放機構という組織です」
 DLOか……ネットの中で、噂には聞いたことがある。
 デブオタによる、デブオタのための、デブオタ解放組織。
「私は、その組織を統括させていただいている古森正夫というものです。本名ですよ、あなたの経歴を調べさせていただきました。最近の活発な活動も把握しています。その上で、あなたを同志としてお迎えしたいと思いコンタクトしました」
「ふむ……」
「見ての通り、我々は博士のような雌伏する才能を結集しています。組織として集まれば、我々はもっと大きなことができる。この世界もその技術の一つです」
「私の才能は、君たちのメガネに叶ったというわけかね」
「博士の技術は、我々の組織に必要なものだと考えています」
 悪い気持ちはしない、群れるのは嫌いだが、自分の才能は誰にも理解されなかった。それでもいいと思っていたが、こう言われると。
「組織に協力していただければ、博士に我々の技術をすべて解放します。研究施設もそれなりのものを用意しています。博士の才能をもっと大きな世界で生かすことが出来る。我々は仲間です」
「だが……」
 そのとき、静電気の十字架が、人の形を取った。青白いデブオタ。
 自分と同じ人種か。
「ご協力ください」
「分かった、私自身は自由にさせてもらうが技術は君たちにも提供しよう」
「それで結構です、才能は最良の自由の中にあってこそ輝く」
 パッシュという電子音と共に、目の前が輝き。
 その瞬間に、引田の身体はは自分のマンションに戻ってきた。
 目の前のモニターにはご丁寧に、DLOのWebが映っている。
「仲間……同志か」
 一人で生きて、一人で戦っていた自分に、そう呼びかけてくるものがあるとは。才能ある引田は、組織などという脆弱な群れを信用しない。他人など利用し、利用されるものだと考えていたが。
 彼らは自分を捕縛するだけの力を有しながら、無理やりにではなくちゃんと礼儀を持って協力を要請してきた。
「それには答えないと、そのうえで」
 引田は、DLOのWebにアクセスしていた。端末が光り出す。
「私はそこで、私の力をさらに飛躍させてやろう」
 引田の身体はマンションから消失していた。


 ――――

「書きかけで、別のラストに変更になったのだな」
 アルジェは、うまく加工すれば使えるのに、勿体無いとため息をついてそれを書棚に整理してしまい込み、また文句も言わずに反古の山の中に身を沈める。
 結局のところ、今はこれしか暇を潰す材料がないのだから。
「没の、降り、注ぐ」

 様々なアイディアは星の数ほどあって、それは流星のように降り注ぐ。それが星の屑になるか、とこしえに輝く星の瞬きとなるかは、運否天賦というものであろう。
 アルジェ・ハイゼンベルグは、夢の研究を続けるうちに、世界の意思とも換言できる生物の集合体としての人間の共同無意識の世界を垣間見た。そして存在論の果てにいたり、ついには運命そのものをねじ伏せた。
 だが、力の源、イレギュラーを生み出す根源には至らなかったのだ。
 その結果として、はまり込んだのがこの星屑の世界。世界の外側に追放されて、一休みといったところ。

 アルジェは少し考えて、この説明を分かりやすく例える。

 人の人生を一編の小説にたとえるなら、ここはその小説のプロットが滞留する地点である。それが作品として生まれでる運命にあるのなら、ここからはすぐ旅立っていく。だが、選択されなかった多くの可能性。つまり、没プロットはここに残り続ける。没プロットという名のゴミは、ここに滞留して増え続けるのである。
 ここを発見者の権利として、アルジェは『星屑の部屋』と名づけることにした。
 少し気取りすぎかと自嘲してみるが、よく考えるとそのままである。

 誰にも管理されていない、このゴミ捨て場はまるで不法投棄が頻発する夢の島のような惨状になっていた。暇を持て余していた彼女は、そのゴミの一つ一つを見てまわり、適当に管理することにした。
 するとそこに一応の秩序が生まれた。とりあえず、形だけ整えてはいるが、きっちりと分類できているとまでは言いがたい。整頓は出来ているが、整理はできない。使われていない、誰もくることのない資料室といった程度の乱雑さか。研究所時代の図書館書庫が、こんな感じだったと懐かしく思い出す。
 アルジェの勤めていたテキサス研究所の図書館書庫がちょうどこんなうらぶれた感じだった。何層にも分かれた図書館書庫の最下層には、古い紙の資料が半ば整理を放棄された形で押し込まれていて、一応研究できるような最低限の設備もあったのだが、誰も使用していなかった。
 人が寄り付かないことをいいことに、幼い日のアルジェは、そこでよく時間を潰したものだった。自分とは一回りも二回りも年齢が上の研究員とは、仕事でならともかくプライベートでは話が合わない。そんな人間たちが集まるカフェで、遠巻きに見られながらではくつろげないというものだ。
 誰にも顧みられることもなくなった、古い紙たちの匂いだけが、アルジェの早急な成果を求められる研究で、ささくれ立った気分をやわらげてくれた。
「役に立たないものは存在する価値がない」
 そんな功利主義そのものの価値観を標榜するテキサス研究所の中にすら、こういう場所が存在する。人間社会が生み出す余分や余裕というもの、そのことを実感できたことが、アルジェの人間的な情緒を最低限育ててくれた。そのおかげで、狂わずに済んだと言い換えても良い。
 数学で条理は解ける。だが、数学で人間は解けないのだ。人間は不純であり、純粋な理性ではないから。そして、そのような不純が交じり合った世界を解こうとすれば、割り切れぬカオスを飲み込まなければならない。
 だからこのような、プロットのゴミ溜めがあることは、暇をもてあました世界の遊びであろうと、鷹揚に構えるべき――

「混沌とした結論」

 こけ倒れていた机を建て直し、埃を払う。椅子の代わりになりそうな台を見つけて腰を落ち着ける。
「図書館司書というのも一度やってみてもよいな」
 手近の没プロットを紐解きながら、ゆるりと珈琲を飲み飲み、分類作業を始めた。それは作業そのものが娯楽であり、そこに意味を求められない楽しさがあった。




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Author:ヤラナイカー
おかげさまでプロ作家になって五年目です。
ボツボツと頑張っていきますので、今後ともよろしくお願いします。
(プロフの画像、ヤキソバパンツさんに提供してもらいました)



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