第三章「うまくできない」 |
次の日の朝、パンツ交換の時刻……そう勝手にマサキが定めている午前九時にちゃんと起き出した。玄関の中まで、ズカズカとやってきたマサキに鶴奈が差し出したのは、洗濯でヨレヨレになっているベージュのパンティーだった。握ってみると、温かみはあるが材質もナイロン生地だし、とにかく普段の鶴奈のパンツよりも格が落ちている。せっかく今日もたっぷりと出してやったのに、性的なアピールが足りないと少し不満に思うマサキだったが、ふと思いついて聞いてみた。 「鶴奈さん、もしかしたらぼくに汚されても良い安物のパンツを差し出してないですか」 何事も素直に答えると催眠をかけられている鶴奈だ。 「うーん、そうなのよね。やっぱりお気に入りは、汚されたくないし。もちろんパンツの交換は当たり前だからしてもいいんだけどね……だけど、マサキくんがもういいっていうなら止めない?」 そういわれて、止めると答えるわけが無い。 「さあ、今日も交換ですから汚してきた昨日のパンツを穿いて生活してください」 そう断言されると、無言で顔を下に向けて汚されたパンツを黙って穿く鶴奈に安心はしたが。昨日よりも催眠が弱まったということなのか、それとも一日考えて常識が催眠を押し返して来てしまったのか。どっちにせよ、これは試作品でどう転ぶか分からない代物なのだ。失敗をきっかけにして、なにやら暗雲が立ち込めてきたような空気である。深追いは禁物だと思い、その日はこれで帰ることにした。 うまくいかなくてムシャクシャした気持ちをぶつけるように、自分の部屋でベージュのパンツを乱暴に犯す。二回ほど射精すると、気もおさまってきた。 いま学校は中間テストの時期に入っているはずだ、ツバメは今日も早く帰ってくる。昨日より遅い時間に催眠をかければ、十分二十四時間経ってるということだし、今日はツバメとセックスできるかもしれない。なにせマサキとツバメは恋人同士なのだから。そう思い直すと、心がうきうきしてくるのを感じる。 昨日の失敗を繰り返すことなく、十分な時間を置いて鳥取家に行くと、ヒナもツバメもちゃんと家に帰っていた。寄り道もせずに二人ともいい子たちだ。ヒナの頭をなでてやると、ヒナも嬉しそうに「ありがとう、マサキお兄ちゃん」と言ってくれる。子供は素直でいい。 いくらツバメの恋人と暗示をかけていたとしても、ヒナの目に映るマサキの容姿のデブオタのままだから、ツバメの恋人に対する純粋な好意と思えて、さらにヒナを可愛く思うマサキだった。 「さあ、恋人同士の語らいをしに君の部屋に行こうか!」 やる気満々で、ツバメを誘うマサキ。 「う……うん」 なにやら沈んだ様子で、それでも逆らわずにツバメは着いて来た。さてと。 「恋人同士だから……その、恋人らしいことをやろうか」 そういって、マサキがツバメに手を伸ばすと 「だめ! キモイ! 触らないで!」 激しく抵抗される。恋人に向かってキモイはないだろう。そうマサキが声を上ずらせながらも、あわてて抗議すると。 「ごめんなさい……まだ付き合ったばかりだし、付き合ってるからってそういうのは駄目だと思うの」 それが、ツバメの言い訳だった。もちろん、ただの言い訳で生理的拒否をしているに過ぎない。ほんとに催眠なしで、恋人同士だったとしたらマサキはこういわれたらどうしようもないだろう。しかし、いまのマサキには催眠の術があった。 「ああ……そうだね、こっちこそごめん」 そういう風にある程度抵抗してくるのは予測済みだ。こっちには、催眠タイムウオッチがあるんだよ。そう思って、満面の笑みでボタンを押す。 やはり頭が、ちょっと痛いが、昨日ほどの激痛もなく数秒で脳から目にかけて電流のようなものが流れる。マサキの催眠術師化完了。 「さあ、君は恋人のマサキくんに何でも素直に答えるよ」 「マサキくんに……なんでも素直に答える」 「恋人のマサキくんに何でもしてあげたくなるよ」 「なんでも……して、あげたく…………なる」 ちょっと、間があったな。 「恋人のマサキくんとセックスしたくなるよ」 「マサキくんと、セックス……駄目……セックスは駄目!」 突然、トロっとしていた目が反転して意志の輝きを見せ始める。どうなってんだ一体、どっかでミスったのか、それとも機械の故障か!? マサキは完全に狼狽してしまい、どうしていいか分からなくなった。ただ、機械的にマサキを催眠術師にしている脳と目は、冷静に抵抗するツバメを催眠の状態に抑え込んではいてくれた。 「駄目……セックスは絶対駄目……」 そうつぶやき続けるツバメを落ち着かせる方法が思い浮かばなくて。 「うん、無理にセックスしなくてもいいよ」 そう言ってやるしかなかった。そう言ってあげて、ようやくツバメは落ち着いたのである。催眠を一回分無駄に使ってしまったも同然だ。絶対できると思ってたのに、ツバメのでかいおっぱいを目の前にして、この高鳴る性欲をどうしたらいいんだ。 しかし、そうは思っても、催眠後の催眠術が使えない状態でツバメが暴れだして、ヒナや鶴奈が感づいて部屋に飛び込んでくるとか最悪のケースを考えると長居するわけにはいかない。 後ろ髪を引かれるような思いで、ツバメの部屋を退出するとさっさと家に帰って、ネット探偵にすごい剣幕でメールを送った。すると、さすがにこっちの怒り狂った様子に見るに見かねたのか、向うもメッセンジャーで直接対話してきた。 「どうして、催眠術なのにセックスできないんですか!」 単刀直入に怒りをぶつけてくるマサキに、ネット探偵も呆れ気味であった。 「君は、催眠を魔法かなにかと勘違いしているようだね」 まあ、そこはネット探偵は大人なのでそういってマサキを諭す。 「催眠はあくまで、暗示をかけるだけなんだ。強い抵抗がある行為は拒否されて当然だろう」 「……でも、鶴奈と精子パンツを交換はできましたよ」 「それは、彼女が既婚者で性的な経験も豊富にあって、精子が付いたパンツを穿いても別に妊娠する危険はほとんどないことを知っていたからだろう。君が、妊娠の危険もある中出しセックスをしようとすれば、彼女だってやはり拒否したはずだ 「そんな……じゃあ、催眠は何のためにあるんですか」 メッセンジャーでの会話だが、向うのため息が聞こえそうな間があったあと。 「少なくとも、君のいま考えている短絡的なやり方のためには存在しないな」 マサキが黙っているとさらに続ける。 「まあ、君はまだ中学生だから催眠術に話術が必要だと言っても理解しにくいだろうね。相手に抵抗があったら、いったん引いて違う攻め方を試してみるんだよ」 「違う攻め方?」 「そう、引田博士によるとその催眠タイムウオッチは同じ対象に繰り返し使うことによって暗示力が高まるそうなんだ。ただ、相手の抵抗がとても強い場合は、それでも強制力が足りないだろう」 「じゃあ、どうすればいいんですか」 「時に、一緒に同封した催眠マニュアルは読んだかね」 「文章が難しくて、必要な箇所だけは読んだんですけど」 「辞書を引いてでも全部読みなさい、答えはその中にあると思うよ」 「そうですか」 聞いてもいちいち面倒臭いから、噛み砕いて教えてくれないということなんだろう、中二のマサキにもそれぐらいは分かる。 「君の成長を祈るよ、そうすれば成果もあがってくる」 マサキは、強い性欲にせきたてられるようにパソコンで辞書を引きながら、難しい漢字の多い催眠マニュアルの本論の部分を、分からないなりに読み進めていくことにした。全ては、鳥取ツバメとのセックスのためであった。
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第二章「パンツの交換です」 |
「あら、えっと安西マサキくんだったわね。また回覧板ですか」 そうそう、回覧板があるわけがない。 「いや、そうじゃないんですよ。昨日パンツと回覧板を交換しましたよね」 「ああ、そうだったわね」 当然と思って対応してくれる、これで催眠で指示したことは後々にも影響を及ぼしていることが分かる。こういうのを後催眠というそうだ、それなりにマサキも一夜漬けで催眠術の基本は勉強したのだ。 「それで、これ」 「えっ、これって昨日のショーツじゃ……キャーー!」 鶴奈のお気に入りのパンツは、裏返しにされて誰にでも分かるほど精液でドロドロにされていた。何度も何度も出されて、カピカピに乾燥した上に駄目押しにオマンコの当たる布の厚くなった部分の上に射精したらしい。まだ先ほど射精されたばかりと言わんばかりの湯気があがるほどの、生々しい精液がたっぷりと付着していた。 鶴奈が驚くのも当然だ。パンツの交換は常識と思っていても、こんな用途に使用されるなんて想像もしていなかったからだ。 ここで、催眠のボタンを押す。また頭痛か、それでも昨日よりはひどく無くなった気がする。驚愕の顔がゆっくりと弛緩していき、またあのトローンとした目に戻る。催眠がかかった証拠だ。 「とりあえず、ここじゃなんですから玄関の中に入りましょう」 「……はい」 催眠のかかった鶴奈は従順に従う。 「まず、男がパンツに精子をかけるのは当然の行為です。今日来たのは、パンツの交換をするためです」 「パンツの交換……」 「これから、しばらく毎朝精子をかけたパンツを持ってきますから、昨晩から穿いているパンツと交換して、ぼくの精子つきのパンツを穿くようにしてください。これは当然ですわかりましたか」 「はい」 問題はここからだ、十分でやれることなど限られている。それよりは、鳥取家に深く侵入することが大事だとマサキは考えたのだ。いい加減、玄関先に来るたびに鶴奈の怪訝な顔に向かえられるのも辛い。 「これから、ぼくの質問には全部素直に答えてくださいね。これは催眠にかかってない時も一緒です。ぼくの顔を見ると、あなたは素直な気持ちになって全てを話してしまいます。それが当然なんです、わかりましたか」 「はい」 嘘をつかれては今後の情報収集にも支障がでる。この条件は何度も確認しておいた。催眠タイムウオッチを見ると、時間は後五分だ。なんとかなるだろう。 「ぼくは、あなたの義妹の鳥取ツバメの同級生です。知っていましたか」 「同じ学校だというのは知っていました」 「同級生で、実は恋人なんです。ぼく安西マサキは、鳥取ツバメの恋人です。わかりましたね」 「はい」 「恋人だから、鳥取家とは家族も同然です。だから、ぼくはいつも自由にこの家にやってきます。あなたは、ぼくの顔を見るとツバメの恋人として最大限の歓迎をしたくなります」 「はい……歓迎したくなります」 猛烈に頭が痛くなってきた、思考能力も鈍るが。あと一息だ。 「ぼくは、家庭の事情で中学を自主休校しています。だから朝や昼間に来ても、あなたは不自然だとは思いません、わかりましたか」 「はい、わかりました」 頭が切り裂かれるような痛み、目が痛くなってきたのは限界だろう。時計をちらりとみるともう十分過ぎている。 「では、あなたは催眠にかけられたことを忘れて、爽やかな気持ちで目を覚まします」 それと同時に、催眠タイムウオッチのスイッチを切る。切っても、しばらく痛みがひどくて立ちくらみを起こしていた。 「あれ……私なにを、マサキ君、どうしたの大丈夫?」 玄関の軒先に座り込んでしまうマサキを、優しく介抱してくれる。 「すいません、たまにあるんです。もう大丈夫ですから」 気がつくと、マサキは手がべっちょりとしている。ああ、鶴奈さんの精子つけたパンツもったままだったか。 「あらあら、手が精液でべっとりねえ……手を洗いましょうか」 「その前に、下着の交換が先ですよ。早く脱いでください」 「あら、そうね……ちょっとまってね」 今日は薄紅色のワンピだ。こういうデザインが好きらしくこの季節はこういうデザインのを普段着として着まわしているのだろう。ワンピのすそをたくし上げて、なるべく穿いているパンツが見えないようにするすると脱いで、マサキに手渡す。 「はい……じゃあそっちの」 「どうぞ、付着したぼくの精液がなるべく取れないようにそっと穿いてくださいね」 鶴奈は目の前で、どろどろになったパンツを見上げる。裏返しになったのをそっと表に戻すときに、手に精液が付いてしまう。 「うあ……気持ち悪い」 「しょうがないですよ、パンツの交換は常識ですから。そっと穿いてくださいね」 「あの、これせめて……お水で洗ってから」 「そうだと意味が無いでしょう。粋のいい精子がどろどろに付着したのを穿き続けることに意味があるんですから」 「わかったわ……」 その言葉に押されるように、そっと足から昨日脱いだパンツを穿く。 顔を最初赤らめていたが、きっちり穿いてしまうと気持ち悪い感触なのだろう今度は顔が少し青ざめてきた。 「お互い手がドロドロだから、洗面台に行きましょう」 二人で手を洗う。先にマサキに洗わせてくれたが、マサキはちょっと水で洗うだけだ。一方、鶴奈は手を石鹸水をつけて汚いものを削ぎ取るようにゴシゴシと洗っている。股に精子がべったりと付着しているというのに、嫌悪感をそれで晴らしているのが滑稽だ。 「ううう……マサキくんがせっかく来てくれたからお茶でも入れるわね」 動くたびに、股が気持ち悪いのか、情けない顔をする。それでも歓待するという行動には逆らえずに、来客用らしいハーブティーを時間をかけて入れてくれる。リビングは、年頃の子供がいるというのにすっきりとシンプルなデザインで片付いている。部屋にかかっている絵やインテリアは特に高価なものではないだろうが、趣味がよくしっくりと調和している。子供が倒しても平気なように丈夫で軟らかい材質でできているところもちゃんと考えられている。リビングのゆったりとした気分を壊さない程度には効率的なのだ。こういう優しいセンスを持つ奥さんを持てる旦那は、幸せ者だろう。 すっかりリビングでくつろいでいると、マサキの前にハーブティーが出された。 「私は、ちょっとこれから仕事があるから、自分の家だと思ってくつろいでいってね」 そういって、仕事に戻る。さっき脱ぎたてホカホカの鶴奈のパンティーを持ちながら、お茶を入れてもらって嗜むというのはなんともシュールだ。とりあえずいつまでも手にブラブラ持っているわけにもいかないので、パンティーを自分のチンコにまきつけてパンツの中に収納することにした。 今日の頭痛は、大したことはなかったので十二時間時間をおいてから、午後にもう一度使うことにした。さて、鶴奈に使うべきか、帰ってきたヒナかツバメに使うべきか。そんなことを考えながら、暇をつぶしていると今日の分の仕事が終わったのか、バタバタとスリッパの音をさせて、鶴奈が出てくる。 普段より仕事を片付けるのは遅かった、やっぱり濡れたパンツが気になって仕事に集中できなかったのだ。 「ごめんなさいね、おかまいもしないで。もらい物のクッキーがあるんだけどマサキくんも食べる?」 ありがたくいただくことにした。クッキーを出すそぶりも、微妙におかしい。やっぱりまだパンツが乾いていないだろう。五発分の精液だから、そうそう簡単に乾くものではない。棚に手を伸ばして、腰を振る鶴奈のなめかましい尻をみていたら催してきた。ぼくの精液で汚されたパンツを穿いてるんだよなあとマサキは思う。 ムクムクと、パンツのなかで鶴奈のパンティーに包まれた亀頭が勃起する。 「妊娠しないかなあ」 「はっ、なにかいったマサキくん」 「いや、なんでもないです」 甘いものは、脳の疲労を回復させる。本当なら、ヒナとツバメを催眠にかけたいところだが、同時に返って来るとは限らない。片方に催眠をかけた直後、もう片方が帰ってきたらそこでアウトだ。今日は、鶴奈の催眠を優先すべきだろう。 「午後に、また来ます」 そういい残して、自宅に一度帰還する。 「昼ご飯でも食べていったらいいのに」 帰り際に鶴奈にそんなことを言われたのがマサキには嬉しかったが、うちにクソババアが用意している昼飯があるからな。いきなり食べないで残したら、怪しまれる危険もある。理由を聞かれたりするとうざい。いつか、うちのババアに催眠使うとしても、優先順位は最後になるだろう。 美味くも不味くもない、冷凍食品が主体の母親の冷めた飯を食いながら、ここまでの催眠の報告をあげる。とりあえず順調っと。 時間が余ったので、鶴奈のパンティーでオナニーしながらネットを徘徊してエロCGなどを集めていたのだが、どうしても頭に思い浮かぶのは鶴奈の歳の割りには引き締まった尻だった。本物を見てしまうと、これまで楽しめてきた二次元が色あせて見えた。 十二時間、まだ経ってないが、鶴奈と話ながら時間の経過を待つか。そう思って、鳥取家を再来した。 「あー、いらっしゃいマサキくん。早かったのね」 マサキが射精パンツはちゃんと穿いてくれているかと訪ねたら、あんまりそんなこといわないでと怒られた。まあ、穿いていればいいんだ。午後の主婦業を手際よく片付ける鶴奈をからかいながら、くだらない話に興じていると玄関先でゴソゴソする音が。ほどなくして、元気なおかえりーという声が聞こえてきた。しかも二重に。 「テスト期間中で、帰り道にヒナちゃんと一緒になったからー」 そんなツバメの声が聞こえる。一緒に帰ってきてくれるのはむしろ好都合だが、まだ十二時間経過していないんだ。どこに隠れるかとか思考しているうちに。 「あーいま、マサキくん来てるわよ」 そう、鶴奈が言ってしまう。しまった、口止めとかまったくしてない。 「ええ……だれそれ」 ドドドドという足音で、ツバメとそれに引き連れてヒナが……最悪のご対面だ。 「あんた……確かクラスの……なんでいるの」 凍りついた空気、乾いた声と死んだ表情でツバメが言う。呆然と立ち尽くし、何も言い返せないマサキ。頭には、走馬灯が回っている。ここは室内だが、たぶんいま天空を見上げたら死兆星が見えるクラスのピンチだ。 「ああ、ツバメちゃんの彼氏だからでしょ」 ニッコリと笑って、鶴奈が答える。さらに空気の温度が絶対零度まで下がった。 「なっ!」 何かをツバメが、言いかけた瞬間。十二時間経ってないにもかかわらず、催眠タイムウオッチのボタンを押す。空気に耐えるのが、限界だったからだ。 とたんにあの悪夢の脳が鷲掴みを二乗したような痛みと、目から血が出るほどの痛みが走る。やはり、一時間でも半日に満たないと身体に悪影響があるに違いない。それでもこのピンチにかまっていられない、目の前にいる三人にいるはトロっとした一様に濁った目をしている。正常にかどうかは知らないけれど、催眠マシンは作動した。 すかさず、ツバメに「俺はお前の彼氏だから家にいるのは当然」という催眠と、ヒナに「ぼくは、ツバメの彼氏だから家にいるのは当然」という催眠を相次いでかける。かかったという確認もできないまま、あまりの痛みに催眠装置のスイッチを切った。 「あー、マサキくんは私の彼氏だから、この家にいてもあたりまえね」 「マサキお兄ちゃんは、お姉ちゃんの恋人だから大歓迎だよ」 二人とも、自分に言い聞かせるように白々しいぐらい明るいセリフを口走ってくれて、絶望的な空気はとりあえず一変した。マサキは、目頭を押さえて後遺症の激痛に耐えながらも、正常に作動してくれた催眠装置に感謝の念を捧げる。 二人とも、マサキが家に居てもいいという概念に徐々になれたのか、帰り際には引き止めてくれるぐらい馴染んでくれていたが、目と脳の痛みがどうにも治まらなかった家に帰った。もう、危ない使用は絶対にしないと心に誓いつつ、とりあえず人体に大丈夫なのかネット探偵にメールした。 十一時間ぐらいで連続使用してしまったという報告をあげると、普通の報告だとすぐにレスポンスないのに、すぐさま返信が来た。 「君の軽率な行動には呆れるが、いいサンプルにはなってくれたようだ」 そんなことどうでもいいから、身体は大丈夫なのか答えろよという苛立ちを抑えつつ、この痛みをどうしたらいいかを聞く。 「いま、開発者に代わるから、症状を話せ」 素直に症状を話すと、博士とネット探偵に呼ばれている開発者は、それなら普通に時間を置けば大丈夫だと断言した。とりあえず、いまから二十四時間は連続使用しないでいたほうがいいらしいとは付け加えられた。 「うう……まあ、パンツの交換は明日もできるだろう」 今日はもうなにか出来なくても、とりあえずオナニーのネタがあるだけマシか。そう思って、マサキは明日の鶴奈とのパンツ交換を思い、何度も何度もパンツの少し色がついたオマンコの部分に射精したのだった。
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第一章「頭痛に至る催眠」 |
安西マサキが与えられた力は、ほんの小さな力だった。 「お前はまだ歳若いし、組織に何の手助けもできないからこんなものだな」 「十分間、簡単催眠タイムウオッチ?」 DLOという組織から贈られてきたその道具は、陸上部がよく使っているタイムを計る時計みたいな形状のもので十分間だけが計測できるようになっている。 「とりあえず十分だけ、その時計はお前を催眠術師にしてくれる。相手の目を見れば、相手は催眠状態にかかる。時間内なら何人でも催眠は可能。最初は軽い催眠しか仕掛けることができないだろうが、それも訓練しだいだ」 「うう、十分は短いなあ。回数は一日何回使えるんですか」 十分は長いようで短い。いろいろは出来ないなあ。しかし、何度でも使えるなら問題ないだろうとマサキは考えた。 「ふふ、お前の考えてることは分かるぞ。連続して何回も使えばいいと思ってるんだろう。残念ながら、十分を超えると耐え切れないほど目と頭が痛くなるはずだ。慣れないうちは、半日は時間を置かないと続けて使用できないはずだ」 「うう、制約が多いなあ」 「普通の人間を強化して催眠術師にするというのは、とても身体に負荷がかかるんだ。特に脳みそと視神経に負担がかかる。本当に催眠術師になろうと思って訓練したら五年・十年は平気でかかるんだぞ。これでもよくできたほうだ」 「もしかして、これ身体に悪影響が」 男は、しばらく 嫌 な 間 をあけてから続ける。 「まあ、こっちも慈善事業じゃないんだ。とりあえず試作品のテストを手伝ってもらうということだ。動物実験では大丈夫だって話だが、使用中以外に身体に変調があったらすぐ言え。欲張って連続使用するなよ。あと、レポートを書けとまでは、まあ中学生だから言わんが、出来る限り報告はあげてこい。使っているうちに、追加効果も期待できると引田博士もいっていた。まずは実績をあげることだ。期待しているぞ」 「はあ……」 ぷちんとPCの画面が消えた。さてと、マサキは窓の外に目をやる。ちょうど窓の向かい側の部屋が、鳥取ツバメに与えられた部屋だ。今は徹夜明けの早朝であり、玄関のほうを見るとちょうどツバメが登校するところだった。相変わらず、遠めからでもわかる見事なバストである。さすがに隠し撮りまではできないが、体育の授業のときのあの揺れる乳とケツは目に焼き付けておいて、後からお世話になったものだ。 「いってらっしゃー」 幼女と母親がツバメを玄関先まで見送るのが見える。 マサキは登校拒否して暇になってから、半ばストーカーのようにツバメだけではなく鳥取家の全体の情報を収集しているので、大体鳥取家がどういう生活をしているのかも分かっている。 幼女の名前は鳥取ヒナ、近くの小学校の指定のグレイの制服を着ている。確か、歳は八歳で小学校三年生である。母親譲りのしっとりとした長髪が落ち着いてみせるが、活発な性格を反映してか髪留めで動きやすいようにポニーテールでまとめている。 ピンクのランドセルが、実に可愛らしい。昔はランドセルは赤と相場が決まっていたが、最近はいろんな色が出て女の子だから赤とは指定されていない。可愛らしいデザインのものも増えてきている。なんでも、赤色が好きな母親と揉めて、ピンクで妥協したという話を井戸端会議で話しているのを聞いた。 「じゃ、お母さん私もいくねー」 程なくして、ヒナもぴょこぴょことランドセルを揺らせながら小学校に向かった。ツバメとは逆方向だが、近くの公園に集まってから集団登校するのだろう。見えなくなるまで、それを見送ると母親はやれやれと、腰に手を当てて一息ついた。 母親の名前は、鳥取鶴奈。マサキの母親と違ってとても若々しく見える。それもそのはずで学生結婚でヒナを生んだ彼女は、まだ二十七歳である。中学生のマサキから見ても、十分守備範囲内だ。 普段着にしている可愛らしいピンクのワンピに上から安物の赤いエプロンをひっかけている。安物でも鶴奈が着ると、どこか上品に見えるのは知的に見える相貌からだろうか。主婦といってもパートに出ているわけでもなく、ヒナが手のかからない年頃になってからは、手慰み程度に女性誌などでライターの仕事をしているという話を聞いた。今はやりの奥様ブログライターというわけだ。手入れが行き届いているのか生まれつきなのか、結構忙しい主婦業にも関わらず、肌は白魚のように綺麗だ。 ツバメは、鶴奈の旦那の妹でこの近くの私立吾妻坂中学に通うために同居している。だからツバメと鶴奈に血縁関係はないため、まったく似ていない。ツバメの中学生としては反則すぎるほどの豊かなボディーに比べて、鶴奈の身体はややすんなりとした感じだ。そこが、若奥様っぽくて中学生のくせに不倫妻モノが好きなマサキの欲望を高める。 車が無いところを見ると、大手商社勤務の旦那はすでに出社したあとなのだろう。家には、鶴奈が一人。好都合だ。 思い立ったが吉日という、早速行動に移すことにした。 明るい時間に、家から出るのは久しぶり。マサキの家は共働きだから、両親はいつも夜にしか居ない。玄関まで出ると、回覧板を見つけた。これは好都合。これを利用すれば、いいんだ。 鳥取家のチャイムを鳴らし、回覧板を掲げて門から玄関先まで入る。今回は、これが免罪符というわけだ。すぐに、バタバタと足音をさせて鶴奈が出てくる。 「はーい……あれ、あなたはお隣のえっと、安西さんの息子さん」 「はっはい、安西マサキといいます……これ」 マサキが母親以外の人と話したのは、久しぶりだ。消え入るような声が、鶴奈に届いたかどうか自信はない。それでも、回覧板を見て気がついてくれたようだ。 「ああ……回覧板ね、はいありがとう」 ちょっと怪訝そうにだが、笑顔を返してくれる。まあ、回覧板なんて郵便受けに放り込んで置くものだからだ。不審がるのも、当然だ。 ポケットの中の催眠装置のボタンを押す。
キュルルルルルル――
別にそういう音が鳴ったわけではない。脳みそを鷲掴みにされるような不快な感覚を、表現したら、そういう音としか表現しようが無い。脳髄の中をかき回されるような衝撃に耐えかねて、今にも倒れそうになる。冷や汗が滝のように流れてくる、もう耐えられないと思った数秒後。 「ちょっと、大丈夫、君……ひゃ」 脳から発生した電気が、目から飛び出すような感覚だった。その目から飛び出した電気の輝きを鶴奈が見た瞬間。トロンとした、顔になって彼女は手をだらりと下げて反応を止めた。 「どうやら、かかったみたいだな」 不快な感覚は、使った直後しかないみたいだ。もう、今のマサキはどうということはない。さてとりあえず使えることはわかったが、十分で何が出来るのか。 「鶴奈さん、ぼくのこえが聞こえますか」 「……はい」 トロンとした目で答える。玄関先では目立ちすぎる。とりあえず中に入るように促す。家は一人のはずだ。玄関は鶴奈の几帳面な性格どおり綺麗に整頓されていた。 「鶴奈さん、回覧板を持ってきたんだからお礼してください」 「……お礼」 「そうです、お礼です。そうだな……ぼくにフェラチオしてください」 「フェラチオ……わかりました」 なんで、いきなりフェラチオなのかは分からないが、たぶんそういうシチュエーションのエロ動画を昨晩見たからに違いない。 躊躇なく、ズボンのベルトを外すと、すえた匂いのするマサキの皮かぶりのチンコにむしゃぶりついた。 ねっとりとした、舌でマサキのチンポを勃起状態へと導く。まあ、導くまでもなくギンギンに勃起しているわけだが。ねっとりとした口内の暖かい感触に、思わず昇天しそうになる。包茎での皮越しでも、なめかましい舌の感触がたまらないのに、ズボズボと口を動かしたと思うと、マサキの皮を舌で剥き始めた。 チンコの皮を剥いて洗うこともあるが、そのときもやはり若干の痛みを感じるほど敏感なのだ。昨日の夜も散々オナニーで抜いたというのに、皮を剥かれてむき出しの亀頭に吸い付かれた衝撃であっけなく射精してしまった。
ドピュドピュドピュドピュドピュ!
黄みがかった精液を飲み干して、ゴクゴクと喉を鳴らす鶴奈。ちゃんと、亀頭についているチンカスまでなめ取って綺麗にしてくれる。さすがは、経験の豊富な奥様の性戯はなかなかのものだ。 これまでオナニーの射精では味わったことが無いような快楽に、マサキの腰はガクガクと砕けてまともに立てなくなった。ムクムクとまた大きくなるマサキの男根を、焦らずにゆったりと弄り続ける鶴奈。 浅く深く、強くやさしく、緩急をつけてフェラチオしてくれる鶴奈の技術に。 「あ、また!」
ドピュドピュドピュドピュドピュ!
また飲み干して、綺麗になめ取ってくれる。そうしているうちに、またチンポは強度を増し……いくら中学生だってここまで連続で痛みを感じる。 「ちょ、鶴奈さんストップ、ストップ」 鶴奈は、マサキの腰から手を離すと、口の中に少し残った精子を舐めて飲んでいる風情だ。知的な奥様のほうがいいセックスをするという言葉をマサキは思い出した。彼女は性的にも、しっかり訓練された良妻なのだ。 目はやはり、催眠にかかったままのようでトロンとしたままだ。そんな鶴奈の様子を見ていると頭がキリキリと痛み出してきた。慌てて、ポケットから催眠タイムウオッチを取り出すとリミットが近づいている。 「うう、ここまでか。まあ今日は初めてだしなあ」 初めての日の記念が欲しくなった。 「それじゃ、鶴奈さんお礼ありがとうございました。回覧板は、鶴奈さんがいま穿いているパンツと交換です」 鶴奈は、さっとワンピースのスカートをたくしあげると、パンティーをするすると脱いでマサキに渡して、交換に回覧板を受け取った。その間にも、脳を突き刺す頭痛はどんどん酷くなっていく。 「この行為は、当然のことですからおかしいと思いません。ぼくが立ち去ったら、回覧板を受け取ったということだけを覚えています」 頭が錐で刺されるような痛み、目も周辺部から痛み出してきた限界だ。 「じゃ、失礼します」 玄関から飛び出して、バタンと扉を閉めると同時に催眠装置のスイッチを切った。すーと、頭を万力で押さえつけられていたような頭痛が消えてなくなる。鶴奈の赤いレース地のパンツを握り締めて、マサキは家に帰った。
スイッチを切ると同時に、玄関先で鶴奈は意識を取り戻した。 「はて、私は何していたんだっけ」 ああ、そうだ。隣家の安西マサキくんが回覧板を届けてくれたのを受け取ったんだった。隣の子、いつも家に居てなんかうちのほうをねっとり見ているというか、洗濯物とかも眺めてるような視線を感じて、気持ち悪いなと思ってたけど、家のお手伝いをするわりとまともでいい子なのかもしれない。そんなことを鶴奈は思う。 朝の主婦業は全部片付いたし、午前中の頭がスッキリしているうちに今日のブログの更新と、依頼されてるライティングの仕事を少しでも片付けようかな。 そう考えて、しばらくお茶を入れて飲んだりしながら仕事をしてふと、なにか股間がスースーすることに気がつく。あれ……私なんでショーツはいてないんだろ。ちょっと焦るがすぐに思い出す。 「そうだ、回覧板と交換したんだった、なんで忘れてたんだろう」 持って来て貰った回覧板と穿いていたショーツを交換することはおかしいことではない。たんすから、新しいショーツを取り出して穿いた。そして、また仕事に集中する。今日はなぜか、頭がリセットされたようにスッキリしていたので、仕事が捗りそうだった。
そして家に帰ったマサキは、鶴奈のパンツを使ってあれだけフェラチオしてもらったのに、今日始めての催眠がうまくいったことにも興奮して、一晩に五回もオナニーするのだった。半日たったら使えるようなことを言われていたが、この日はこれで満足してしまったので使うことは無かった。正直、頭痛がひどかったので体の影響も心配だということもある。それでも、この快楽は止められない。鶴奈のイヤラシイパンティーをもてあそびながら、明日はどう使おうか、想像するだけでも楽しかった。
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序章「引き篭もりと始まり」 |
「お前は存在がきもいんだよ、きもすぎ、一回死ねよ!」 「おい見ろよ、ゲロマサ皮かぶってんじゃねーの、超ウケル」 「やぁ!! めろうぇ!!」
安西マサキは、いじめられっこである。 教室から秩序が失われると、常に弱いものが踏みにじられるという結果に終わる。 大人しいデブオタであるマサキなど、その標的にはもってこいだった。 それにしたって、今日のイジメはひどい。 ドキュンA、Bに左右から押さえつけられ、ズボンとパンツを一緒に降ろされ、仮性包茎のチンチンを露出させられた。解剖と呼ばれるいじめの類でも、単純にして最悪の部類に属する残酷行為である。 正義感のある女の子でも現れて助けてくれようものなら、ドラマの一つも生まれようというものだが現実はそんなに甘くない。誰も目をそむけたり、横目で見て面白がるだけで助けちゃくれないのだ。 さすがに日ごろは無気力で無抵抗なマサキも、これには死ぬほど暴れてズボンを戻そうと必死に抵抗したが不良どもの無駄に発達した筋肉に、デブオタ帰宅部の贅肉がかなうわけもない。 一発、腹を強かになぐられて、ぐったりと大人しくなった。 小学生なら、まだ軽いトラウマで済んだイジメであっただろう。 しかし、マサキは中学二年生。 中学校で同級生の女の子にチンチンを曝すという行為は、死を意味する。
教室を男子の爆笑と女子の嬌声が響く。 「きゃーー」 「なにあれー」 「……ちょっと、立ってない」 なんということであろうかこの羞恥に曝されるという刺激に、強い性欲を持て余した中学生マサキのチンポは、皮をかぶりながらもその存在を誇示していたのだ。別に変態的性欲を持っているわけではない、中学生は風が吹いてもチンコが立つほど性欲を持て余しているのだ。この衝撃に立ってもちっとも不思議ではない。 ちなみに完全に勃起しても皮かぶっている重度の仮性包茎だ。 そして、女子たちのざわめきの中から、マサキの無駄にいい聴覚思いを寄せていた女子である鳥取ツバメの吐き捨てるようなつぶやきを拾ってしまう。 「最低、超キモイ……」 あとのことはもうマサキの記憶になかった。ただ、踏みつけられたメガネが床で粉々になっていたのを覚えているだけだ。思い出しても、我ながら悲しすぎて、涙も出なかった。
そもそもマサキが、虐げられるだけの毎日に我慢をして学校に来ていたのは、ただ鳥取ツバメの煌めくような笑顔をその愛らしくも豊かな肢体を、こっそりと横目で垣間見たい一心だった。そんな中学生らしい密かな思いも、無きに等しい関係も、壊れて、壊れて、もう二度と戻らない。この日から安西マサキは、いじめられっこから登校拒否の引き篭もりに見事なクラスチェンジを遂げたのだった。
リアル世界での活動を完全に休止したマサキは、ネット社会で積極的な活動を行うことにした。安西マサキ、ハンドルネーム「中二病」はその名に恥じぬ活躍ぶりを示す。リアルへの怨念を払拭するため、ネット社会で最低の荒らし活動を行ったのだ。大体において、いじめられる側はお話において全力で無力な弱者と美化されがちだが、実際はいじめられる側にも問題があるもので、マサキの性格のほうもその暗い顔立ちに負けず劣らず、十分に歪んでいた。往々にして弱者は、さらに弱いものを探して、憂さ晴らしをするものだった。 二つのネットゲーム世界と、五つのネトゲ系の大規模コミュニティーが不眠不休で劣悪行為を繰り返す彼の手によって再生不可能なまでに荒らされたころ、中二病の悪逆に業を煮やしたネット探偵を名乗る一人の男によってついに捕縛される。一見、無法にみえるネット社会においても、秩序や暗黙のルールはちゃんとあって、悪はやはり永遠に栄えることはない。 「中二病……いや、安西マサキ」 「なぜ、ぼ……俺の本名を知っ」 「君は敵に回しては成らない組織を敵に回したのだよ。こっちはすでに君の住所から家族構成、君がどんな機種のパソコンを使ってるかまで分かってる。逃げることは不可能だ。君の行為は現実に被害を与えているし、犯罪にも該当してる。君の態度によっては、裁判によって訴えることも考えている」 「くう……くそ! どうにでもしろ」 「どうにでもしろってね……君はまだ中学生だろう。親御さんにも迷惑がかかる」 「うるさい、みんな死ねばいいんだ!」 「それにしてもギルドDLOのギルドハウスから、バグ利用とはいえハウスルートできる奴がいるとはいまでも信じられんよ。君は人間として最低だが、その発想力と手数の多さ、目的のために手段を選ばないやり方は、才能はあると認められる」 才能がある、などと自分の力を認められた経験はそのときが始めてだった。だから、マサキは悪態つくのを止めて、少し大人しくなった。 「なあ、なぜこんな行為をしたのか、話を聞かせてくれないか。聞いた上で、力になってやってもいい」 「……わかりました」 「でもその前に、とりあえずギルドのレアアイテム全部返せ、できれば色つけて。なに、悪いようにはしないさ」
マサキは、男にありのままを語った。ネットゲームで出会ったお互いに顔も分からない関係だからこそ、心の奥底のドロドロとした全てを吐き出せたのだろう。 学校でいじめられて、登校拒否であること。家の隣に住んでいる同級生の女の子に嫌われてしまったこと。持て余す性欲から、鬱屈した思いから、いっそのこと世界が滅びればいいと願っていることまで洗いざらい聞かれるままに。中学生は大人とはいえない。だが中学生には中学生の残酷と絶望がある。ネット以外のマサキの世界は、すでに壊れて取り返しが付かなくなってしまっていた。 だから男は全てを聞いてから、こういった。 「よろしい、我々は本来なら子供を相手にしないのだが、君の境遇と知性は同志と呼ぶにに値する。ようこそDLOへ。君を仲間と認めて、絶望を力に変える方法を進呈しよう」
デブオタ解放機構 - the Debuota Liberation Organization - 《DLO》
この日から、安西マサキはDLOの仮メンバーとなったのだった。
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終章「天使」 |
目の前に天使としか言いようのないものが見える。まるで美の女神を描いた名画のような現実離れした姿態に、金色のローブに身をまとい羽の生えたエンジェルが、服の色と同じ輝きと柔らかさを持った髪はこの止まった世界に時を取り戻してくれるようだった。それは見るものの心を暖かくしてくれるような美しい光景なのだが。気になったのはその右手に持った不釣合いなほどの禍々しい三叉の矛。 天使は、頬を緩め笑顔を作る。その笑顔の優しいこと。だが、それに反して高々と天に突き上げた羽はこわばり、一瞬の時間差を置いて右手の矛をこちらに向けて力いっぱい投げつけてきた。とんでもない夢だなと思考する。 その途端に時の止まった世界の静寂は破れて、矛は爆音を上げながら、ぼくの数センチ先の床を粉々に破壊して突き刺さった。破片がビチビチと、ぼくの顔や身体に飛び散り、その小さな痛みで、これが現実であることに気がついた。 「おや、外しましたか」 天使が慈愛の笑みを浮かべたまま、こちらにゆっくりと近づいてくる。 寝ぼけていた頭が急速に覚醒する。ここは、さっきいたスタジオ。周りを見渡せば止まった人ばかりで、時の止まった世界はそのままだ。心地よい射精の気持ちよさで、少し意識が抜けていたらしい。それにしても、目の前の天使はなんだ。考える前に目前の危機を避けるほうが先だ、ぼくは飛びのくようにしてスタジオを駆け抜けて逃げた。 全力疾走で迷路のようなテレビ局の通路を走る。こんなに必死に走ったのは久しぶりだ。疲れはまったく感じない、この世界になってからというもの精力も体力も、極限まで高められているからだ。身体の芯が熱くなるような躍動感に支配されて、ぼくは通路をひた走る。 走りながら考える。あまりの無茶苦茶さに、まったく現実味というものを感じない。いったいなんなんだこの展開、なぜ天使が。そこまで考えて、ちょっと後ろを振り返ってみると。
「ちょ!」 さっきの矛を構えて、羽根で滑空しながら飛んで追っかけてきている。やっぱり空を飛ぶのかよ。そうか、わかったぞ。人間とちょっと違う硬質なこの雰囲気が、サウサに似ているんだ。格好が天使だから、天使と思ったがこの物理法則の無視っぷりは、同じ種類のものだ。そうするとこれはあっちがらみのトラブルか。 考えるまもなく、距離を詰められる。吸い付くように滑空して接近してくる。こっちは、たぶん人間としての体力の限界まで強化されてるはずなのに。それ以上の速度か。直線だと負ける、障害物を盾にするしかないと思って、ジグザグにわき道にそれまくる。足が滑って少しドリフトするぐらいの勢い。 路地を曲がった瞬間に、肩に風を感じてまた壁の砕ける音が。たぶん矛を投げたな。ジグザグに動いたのは正解だったか。矛を拾うだけの時間は稼げるはずだ。いつしか、建物の外に飛び出して中庭のようなところに出てしまった。これはマズイ、障害物がないと飛べる相手のほうが有利だ。 「うあーこんなところで、わけもわからず死ぬのかよ」 そう叫んだ瞬間、身体がふわりと浮き上がった。何かに手を掴まれてる、天使につかまってジ・エンドかと思ったら、この小さい手には見覚えが。振り向くとやっぱり青い髪を振り乱したサウサがぼくを掴んで、空を滑空していた。見る間にテレビ局を離れて、海の方に飛んでいく。すごいスピードだ、本気出すと早いんだなサウサ。 「助かったよサウサ」 「いや、あれはこっちがらみのトラブルだから」 そういって、あとは前を向いて押し黙って飛ぶ。余裕はないらしい。こんな本気の表情のサウサは始めてみるかもしれない。後ろを振り返ると、さっきの天使が同じぐらいの速度で追いかけてきているのが見える。サウサの小さい手でも、割合がっしりと掴まれてるらしくて安心感がある。 手持ちぶたさで、なんというかまだ現実感が薄かったぼくは、これ幸いとサウサの胸を触ってみることにした。プニプニっと。 うーむ、小ぶりだが、いい感触。身体にぴったりとフィットしたスーツ越しなのが惜しいぐらい。ひと揉みすると、グンっとサウサがさらに速度をあげてぼくの身体が吹き飛ばされそうになる。まだ速度あげられたんだ。 「おまえ、あとで覚えてろよ」 サウサがドスを効かせた声で叫ぶと、さらに顔を険しくして速度をあげた。まあ死ぬほど冷たい目だ。どうやらさっきの飛ぶ速度はこっちにあわせて調節してくれていたらしい。まるで、高速でぶっ飛ばしている車の上で半身さらしてるような風速に、さすがに胸揉む余裕はなくなった。怖いよーとか、無駄に抱きついてみたが、その感触の心地よさを感じる場合じゃない爆風。さらに錐もみ回転。吐き気を通り越して、魂が抜けるような低血圧を感じた。少しの時間ならともかく、ずっと爆風にぶち当てられてると、身体ってどんどん疲弊していくと始めて知る。すごく、身体が寒くなってきた。 薄れ掛けてきた意識を振り絞って、目の前を見ると眼下に何か大きいものが近づいてきた。船だな、あれは。そう思考してまもなく、速度を落とさずに甲板へと落ちるように着陸した。 「ぎゃああ」 思わず叫んでしまったが、着陸の衝撃は少なかった。甲板が柔らかく迎えてくれるような感触。トランポリンみたいだ。 「きたな」 こっちを床に放り出すと、サウサは両手を広げて迎撃の態勢をとった。次の瞬間、天使がさっきのまがまがしい矛を構えて突っ込んでくるのが見える。ぶつかったと思った瞬間、ものすごい爆音を上げて、船の甲板が砕けて四散した。 「うおおお、放せ」 矛を振り回しながら暴れる天使の身体に、身体に触手のようなものがまとわりついていた。何だこれはと、叫ぶ間に砕けた船の甲板から生えるたくさんの触手のようなものに掴まれて、床にたたき伏せられる天使。 「罠にかかったな」 身動きが取れなくなった天使の頭を蹴っ飛ばすサウサ。鬼の形相だ。 「これが分かるか」 「委任状……だと」 「そうだ、私は裁定会議の全権委任を受けている。いまなら、あらゆる物理法則が操れるんだ」 「ぐげええ」 天使は触手に身体を強く締め付けられ悲鳴を上げた。肋骨かどこかの骨が折れる音がした。 「油断したな、同等の悪魔だと思って」 天使はなみだ目になって、ぼくのほうを向いた。 「おい人間……助けろ。私は天使だぞ、お前を天界に導いてやるぞ」 助けろって、まあ少しかわいそうだと思うけど無理だろ。 「おい、だまされるなよ。こいつは天使なんかじゃない」 そう笑いながら、サウサは骨の折れたであろう背中をさらに踏みつけた。綺麗な羽根が、へし折れてしまった。惨い。 「神の世界を捻じ曲げる悪魔が、何を言うか!」 そう悪態つくだけの元気はまだ天使にはあるようだった。きっと人間とは体力の出来が違うんだろう。それでも、辛そうなのは変わらなかった。 「こいつらはな、元人間の悪魔なんだ」 「元人間?」 ちょっと興味が沸く話題だったので聞き返した。ぼくだって殺されかけたんだから知る権利はあるだろう。 「お前たち複雑な心理構造を持つ人間が生まれたこの星が管轄に入ったとき、悪魔の数が足りなくて人間をベースに粗製濫造された悪魔が、こいつら天使を自称している悪魔だ」 そういって、憎々しげにサウサは小さい足に力を込める。そのたびに骨がきしむ音がして、天使は悲鳴をあげる。悲惨な光景だ。 「元人間ごときが、われわれ純粋な悪魔と同等の力を得て、反逆する。しかもこいつらは一神教の神の使いに擬して、人間を騙して無償で魂を手に入れているんだ」 「私たちに着いてくれば人間には救いが……」 「何が救いか、だまされるなよ。こいつらに従っても、人間牧場で永久に奴隷としてこき使われるだけだ」 「悪魔が……」 さらに力を込めて足を床にたたきつけたサウサ。完全に砕ける音がして、ぐちゃりと倒れ臥して天使は黙り込んだ。 「ここまで痛めつけても、こいつらは私と一緒で死なないんだ。いまいましいものだな。さてどうしてやるか、永久に地中と結びつけて封印でもしてやるかな」 しばし考えるようだったサウサ。天使は、完全に骨を砕かれて羽根は折れてしまっていたが、ピクピクと震える間に身体の再生を始めているようだった。しかし、身体はしっかりと触手がロープのように巻きついていて、身動きは取れるものではない。 「そうだ、面白いことを考えた」 サウサは、そういってぼくに笑いかけた。 「おまえ、こいつを犯さないか」 「えー」 まさか、そう来るとは思わなかった。天使か、元悪魔か知らないがいいのか。 「こいつは元人間だからな、ちゃんと受胎するだけの構造は備えているはずだ」 そういわれて床で死んだように寝そべっていた天使は、震えるように身体をこわばらせて暴れ始めた、二本三本と触手をぶちぎって、なんとか空に舞い上がろうとする。それでも、その身体にさらに複数の触手が巻きついて、空中で八つ裂きにされる罪人のように両手両足を縛られて、身動きが取れなくされた。 「はなーせ! 何を考えているのよ!」 信じられないという青ざめた顔で、空から見下ろしている天使。ああ見ると、ただ犯されるのを待っているような白人の綺麗なねーちゃんに見えないこともない。犯すのは可能だとサウサに伝えると、サウサは悪魔的なとしか言いようがない表情を浮かべた。 天使が持っていた矛を拾うと、サウサはそれを一閃した。はらりと、天使が着ていたローブや下着などがすべて切り裂かれて、その肢体をわれわれの眼前に晒した。 「や、やめて」 結構しおらしい感じになった。サウサは爆笑をこらえているという感じだ。 「全権委任状は、あらゆる物理法則を操作できるからな、こういう使い方もできる」 そういうと、天使のむき出しになった股から鮮血が滲んだ。 「ぎゃーー」 天使は、顔から血の気が引くほどに青ざめた。 「くく……月経がちゃんと来たようでよかったじゃないか。千年ぶりぐらいの生理なんじゃないのか。よかったな、女の機能がちゃんと残ってて」 そういって、サウサは意地悪げに笑う。 「謝るから……助けて、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」 身体は触手にピンと縛り付けられて、胸は股などの大事な部分だけがあらわにされて身動きが出来ない状態。これ以上扇情的な体勢もないだろう、サウサが操作しているのかぼくが嬲りやすい位置まで降りてくる。 「天使に触ったら罰があたるわよ!」 それにサウサが身をよじるように爆笑する。 「罰だってよ、当ててもらおうじゃないか」 言うなりに犯すぼくがいうことでもないだろうが、こいつ性格悪いな。 「いや、お願い止めて」 ポロポロと涙を流しながら懇願する天使。ぼくは結構冷静で、こうなってしまうと普通の女と変わらないなという気持ちも出てくる。少し、可哀想かもしれないが。そそられるのも事実だし、そういいつつちょっと手を伸ばしてみる。 「いやー止めて」 ちょっと胸触っただけなのに、すごい過剰反応。サウサでもそんなに騒がなかったぞ。 サウサは、どっからか椅子を引っ張り出してきて、ゆっくりと眺める様子だ。いつも犯してるシーンとか見に来ないのに、よっぽどこいつらになにか腹に据えかねることがあったらしい。 ぼくは天使の腰に手を回して、口付けをしてみることにした。とたんに歯をむき出しにして噛もうとしてくる。獣かよ。 「おっと、口は止めたほうがいいぞ」 そう、サウサがいうと小さい触手が噛もうとした天使の口に猿轡をかける。 「ぐぁ……だげ……が」 こうなってしまうと、もう何をいっているのかわからないけど、顔を真っ赤にしてそれなりに迫力ある形相で叫んでいる。そういや、さっき殺されかけたんだよなぼくは。なら犯すぐらいしてもいいんじゃないのか。 そう思い立って、オマンコを手で弄っていることにした。ちょっと肌に触れるだけで、全身をこわばらせるのは変わらない。なんて綺麗な陰毛なんだろう。純金を伸ばして作られた作りものだと言われても信じてしまいそうだ。そして、薄ピンク色の下の唇。 ビクッと、そこに触れると天使の身体がものすごい力で震えた。それにちょっとビビリつつも、ゆっくりとその入り口を開いていく。どんなに、磨き上げられた女であったとしても、オマンコの中というのは海産物系のグロテスクさがあるのだ。 それに比べて、天使の穴というのは、本当に綺麗なものだった。それこそ、神というなの職人が一寸の隙もなく襞一枚一枚を丁寧に作ったようだ。そんな創造物めいた美しさでも、指を入れて触れるとちゃんと汁も出すし、暖かい。そっと、押し開いて舌舐め取ってみると、ほのかに甘い味が広がった。 甘いわけがないのだが、甘いと舌が知覚した。汚れとか、混じりけのない女性が分泌する液そのものをぼくは舐めているという気がした。その瞬間に、腰が熱くなって痛いほどぼくは勃起しているのが分かった。すぐさま服を脱いで、余韻もへったくれもなく動物のように挿入した。 天使は、身をよじりながら、獣の彷徨のような叫びを上げる。それを可哀想だとか、気持ちがいいとか感じる余裕すらなく、ぼくはただ腰の熱い塊をこの肉襞の奥底にぶちまけるためだけに動いていた。なんという感触だろう、肉の襞の一枚一枚がぼくを包み込むみたいにして受け入れてくれていた。混じりけのないセックス。意識が吹き飛んで、ただピストンをするためだけに、息を吐いて息を吸って身体を嬲って、嬲り続けた。 天使は気丈にも、まだこの生殖器が繋がってる状況で、にらみつけるだけの元気があるようだった。首に巻きついた触手を振りほどこうとしながらも、こちらを殺しかからんばかりの鋭い目つきでにらみつけてくる。ほんとに大丈夫だろうな、作り物めいた美貌を汚すのはたまらないのだが。人外の者を敵に回すのは、正直背筋が凍る思いだ。しかしここまでそそられて止めるわけにも、もう身体がいかないので、サウサの力を信じることにした。ふと、後ろに陣取っているサウサを眺めると、ニヤニヤとした目つきでもっとやれと即した。覚悟を決めてやるしかないな。 中途半端が一番よくないのだ、目の前の小さめの乳房を力強く揉みしだき、腰を思いのままに振って、亀頭に力を込めた。小さめの天使の背に手を回して、ぐっと抱きしめると腰から熱い熱い塊が競りあがってくるのを感じる。顔を舐めて、その目をよく見つめて、出すぞといってやったら、天使が身をよじるようにして何かを叫んだ。猿轡を血がにじむほどにかみ締めているようだが。もうどっちにしても手遅れだ。ぼくは、腰の熱さをためらうことなく解き放った。
ドピュドピュドピュドピュドピュドピュ!
永遠とも思える余韻。腰は快楽に踊り、最後の一滴まで出し切らんと動き続けている。まるで、自分の欲望のすべてが吐き出されてしまったような心地よさだった。 「終わったか」 静かに、後ろからサウサが声をかけた。 「ああ……」 ぼくはもう余韻で、答えるまもなく振り向いてサウサの視線に押しのけられるようにして後ろに引いた。サウサは、口の猿轡だけ解いたようだった。口が自由になった天使は、サウサを睨みつけて、サウサの顔に唾を吐きかけた。 「天使様とやらは、品がないな。所詮人間が元だからな」 「殺してやる、お前らを殺しつくしてやるぞ!」 どこから出しているのか分からないほどの猛獣が吼えるような声の大きさに、よろめいたぼくにサウサは小さく心配いらないと声をかけてくれる。サウサの声には、力があるのかよろめいた身体に力が戻った。 さらに悪態つく天使の叫びを無視して、むき出しの天使の腹に手をかざしてサウサは静かに宣告する。 「排卵、着床、受胎……」 天使が受胎告知されるというのは皮肉なものだ。もう、天使の叫びは意味を持たなかった身体をよじりながら、ただサウサの力に抗おうとする。その衝撃で、船全体が揺れる。それでも、サウサはただ爽やかに笑うだけだったので、ぼくも安心してみていた。やがて、天使の腹が徐々にせりあがってくる。天使は鳴いた。泣いたのではなくて、鳴いた。それは言葉として意味をなさない慟哭だった。 なおも天使を無視して、サウサはぼくに振り返った。 「なあ、どうする」 なにがどうするだろう聞き返してみる。 「このままだと、この天使は子供が生まれても、子供を殺すぞ」 「当たり前だ、こんな子供が認められるものか!」 天使が、なおも叫んだ。 「うるさいお前の意見は聞いていない。悪魔と人間の合いの子とか、珍しいケースだからな。うちの上層部も興味を示すかもしれん。父親としての意見を聞いているのだ」 父親としての、という部分を強調してサウサはいった。たぶん天使に対するあてつけだろう。ぼくは、子供が元気なのに越したことはないというようなことをしどろもどろでいった。やっぱり性欲が抜けて冷静になると、人外の力を持った存在に恨まれてにらみつけられるというのは背筋が寒くなる。 「じゃ、このまま生ませてしまうか」 こともなげにサウサはいうと、天使がまた絶叫をあげた。腹は見るも無残に膨れ上がって破水して出産を始めたのだ。ぼくも、同じことを何度もやったから見慣れてきている光景だ。あえてサウサは時間をかけたのかもしれない、生まれてきた子供の髪は母親と同じ柔らかい金髪だった。 出産が終わった、天使は魂が抜けたようにぐったりと倒れた。ただ、赤子の鳴き声だけが響き渡った。 「この子供は、うちで預かるがいいか」 「あ……ああ」 「しっかりしろよ、お父さん」 そういってサウサはこれまで見せたこともないような清々しい笑いを見せた。ほんとに性格が悪いと思った、ぼくも人のことは言えないが。魂が抜けたような天使と産み落とされた赤子は、サウサの操作でどこかへと送られて消えた。
「なあ」 サウサから声をかけられるとは思ってなかったので、少し驚いて振り返る。 「お前の棲んでた町って、あの向こう側の陸地じゃなかったか」 うーんそういえば、あの湾の形には見覚えがあるような気もする。そんなところまで飛んできていたのか。何百キロもの距離をぐるっと一周して戻ってきたことになると思うと、それなりに感慨深いものがあった。 「今回のことは、不穏分子にもいい戒めになった。こちらもお前の命をおとりにしたことで負い目があるから、功績も鑑みて、いまなら特別にすべてを元に戻してやってもいいぞ。お前の魂はいらないから、全部元に戻す。お前はこれから、元の場所に帰って新しく人生をやり直したらいい。そのチャンスをやろうか」 それは、思いもよらない提案だった。 「どうだ、そろそろやり尽くして飽きたんじゃないか。悪魔に魂を握られるっていうのは、辛いことなんだぞ。限りある生を生きる人間に、永遠は長すぎるからな。いまならこの全権委任状があるから、全部元に戻せる」 そういって、サウサはぼくに、初めて本当の優しい表情を見せた。答えによっては、これが最後になるからかもしれない。 それには答えずに、ぼくは自分の住んでいた町のほうではなくて、外海の向こう側を見た。止まった世界でも、潮の香りはちゃんとする。この小さな島国の向こう側に何百倍もの広さの世界は広がっている。 「この客船なら、食料もその間に遊ぶ人間も十分だな」 「おまえ、何を言っている」 「このまま、太平洋を越えて向こう側の国に渡る。どうせ、船の操作は可能なんだろう」 サウサは、ふっと諦めたような顔をして表情を消した。 「わかったよ、おまえがどうしようもないってことは最初からわかってたんだ。せっかく気分がよかったから、助けてやろうと思ったのに……しょうがない奴め」 サウサはクルッと回転して、船の先頭に向けて歩き始めた。 「どこまでも付き合ってやろうじゃないか」 そんなサウサの背中も見つめていると、不意に潮風が吹いてくるのを感じた。風が吹いたわけではなくて、船が動き出したのだろう。 この止まった世界で、青空はどこまで続くのだろう。静かに止まった水面を走り始めた船の甲板に寝そべりながら、ぼくは心地よい疲れに目を閉じて、海の向こう側の行ったこともない世界へと思いをはせるのだった。
『止まった世界に生きるぼく』完結(著作 ヤラナイカー)
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第十三章「降り立った埠頭」 |
湾の埋立地にある日本一大きなテレビ局。ルートは、電車で行くのが一番近いのだが、この止まった世界では当然のごとく動かないので、それ自体が観光スポットにもなっている大橋をつたって遠回りでやってきた。橋から見える巨大な建物を見ていると、ようやく首都らしいところを観光しているではないかと思う。 港がすぐそこというか、むしろここは海の上。こんな都会でも、やはり湿った潮の香りが鼻をくすぐる。ここはテレビ局でもあると同時に、観光施設でもある。一般客は、モノレールで正面入り口から入って見学するのだろう。正面玄関の前には、イベント会場や芸能人のグッツを売る店などが軒を連ねているのが見える。 芸能人は橋から車ではいるのだろう、裏からは複数の警備員が常に目を光らせている、関係者以外立ち入り禁止のゲート。 「当然、ぼくは関係者だからこっちからだな」 そういうわけで、裏口から入る。綺麗にはなっているが、割と狭い入り口でイメージと違ったが。中のロビーは多層構造になっているとても広いものだ。さすがにテレビ局のロビーらしくて、業界人っぽい人間が多数ウロウロとしている。あんまり興味がないので名前までは知らないが、テレビで見たことある芸人もちらほら。玄関にある概略図を見てみると、ものすごい入り組んでいて分かりづらい。テレビ局はテロ対策のために、わざと入り組んだ構造になっていると聞いたことがあるな。とりあえず、道に迷っても困るので、入り口詰め所の目つきの鋭い警備員から、携帯用の地図を奪い、これを見て進んでいくことにした。 「二階からの低層階が番組収録用のスタジオだな」 一階のロビーには、居なかったのに。二階に上がると、小さめのフロントあって青い制服を着込んだ受付嬢が二人座っていた。さすがはテレビ局、ただの受付も顔で選んでいるらしく美人ぞろいだ。時間はたっぷりとある。やはり、入り口から攻めるのが正解だろう。 派手めの美人でまつげが長いのが特徴な受付嬢を、抱きかかえるようにして移動する。案の定、少し進むと広めの通路に自販機やソファーが用意してあった。通路が入り組んで無駄に歩かされる分、小さい休憩所は多めに作られている。通行人が多少休憩していたが、この世界で陵辱するうちに気にならなくなっている。 「脱がしにくい服だな……」 急いでもしょうがないので、ゆっくりと剥いていくがぴっちりとしたスーツ風の制服は、ボタンやつなぎが多くて、脱がすのに苦労した。 「胸は小さめだな」 痩せ型なので、こんなもんだろう。太ももに張り付いたストッキングは股の部分だけ破いて、下着だけ降ろす。 こんな服を一日きて仕事をしていたら、身体が大変だろうなと同情するが、剥いて犯す分にはこれほど興奮させられるものもない。スタイルのいい肢体が、ストッキングを破かれてソファーから足を投げ出している姿は結構そそる。 とりあえず早々に一発目を決めることにした、足をこっちに引っ張りこんで、下でオマンコを舐めあげて準備を整える、毛が濃い目だが味は悪いことはない。やっぱり仕事で股に汗をかいているのだろう、ちょっと塩辛い味がした。 「こんなもんかな」 ソファーに寝そべる受付嬢にのしかかるように、勃起した逸物を押し付けていく。さほど抵抗もなく入った、挿入したての膣壁をこするような感覚は、背筋がぞわぞわするような気持ちよさだ。たまった性欲を抑えて、ゆっくりと腰を出してピストンを開始する。 趣味のいい香水を使っているのだろう、鼻にかかったさらりとした髪から花が咲くようないい香りが広がる。受付嬢の緋色の唇に口をつけて、舌を絡ませる。なじんできた膣の中で、逸物がさらに硬く膨張していくのを感じる。 口をつけた先から動き出したのか、受付嬢の膣を深々と突くたびに暖かい吐息がぼくの顔にかかる。顔をしかめているような、それでいて喜んでいるような、突くたびに端正な顔をゆがませて、それがぼくを興奮させる。 腰が熱く滾ってきた。そろそろ射精欲が高まってきた、受付嬢の足を一杯に開いてそこに腰を打ち付けるようにして深々と挿入して一気に溜まった精液を放出した。
ドピュドピュドピュドピュドピュ!
覆いかぶさるようにして抱いたまま。最後の一滴まで、ゆっくりと腰を抱いて注ぎ込む。 「ふー」 とりあえず一発出して落ち着いた。そのまま、背中を暖めるようにして排卵を即す。何度かトライして、受精と着床を確認した。ちょっと考えて、ここで止めておくことにした。後で分かるほうが面白いかもしれないと思ったからだ。 その場をそのままにして、射精後の虚脱感を感じながら何も考えずに通路を進む。ふと気がつくと、収録スタジオに出た。よくあるバラエティー番組みたいなのを収録しているようだ、芸人もアイドルもテレビで見たことあるタレントばかりだ。 華やかにライトアップされたスタジオにたくさんの観客が見つめる中で、時が止まった世界の静寂が包んでいる。カメラのケーブルを飛び越えて、スタジオの真ん中にズンズンと進む。静かだ、周りを見回してもまるでテレビの静止画像を見ているように、誰もが止まったままだ。そんな光景をしばらく見つめていた。もっとも騒がしいはずの場所で聞く、耳が痛くなるほどの無音。本当の意味での、群集の中の孤独とはこういうことをいうのだろう。 それでも、寂しさは感じない。いまのぼくには、この環境を楽しめる余裕がある。司会者をけり倒して、司会者席に座ってみる。日本でいったい何人がこの席に座れるだろう。社長席に座る人間よりもずっと少ないはずだ。そう思うと、なかなか面白いものだ。 コメンテーター席に居並ぶ女性タレントを見てみる、若手のアーティストやモデル、グラビア上がりのタレント、ちょっと年配の女優などもいる。さすがにテレビで商売しているだけの水準はあり、華やかで個性的な美人ぞろいだ。 「うーん」 青少年がアイドルでオナニーしてた昭和は遠くなってしまった。ぼくも、特にアイドルを神聖視するような感覚はない。自分の趣味を言えば、むしろ遠くの偶像より、近場の女の子のほうが性欲を掻き立てられる。面白みはあるものの、性的魅力を感じるかどうかといえば、そうとは限らないのだ。 あと、さすがに衆人環視は気にならなくなったとはいえ、ライトアップされたスタジオのドン前でやるという気持ちにはなかなかならない。百人程度の人間が居てカメラが五台も向けられているからだ。たとえ止まってるとはいってもここで堂々とできる人間は相当なもんだろう。 「……熊沢礼美か」 一時期巨乳グラビアアイドルで少年誌を飾っていたアイドルで、最近は人気が出てきてグラビアの仕事を止めて残念がられている。その豊かなバストが作り出す巨乳の谷間には引かれるものを感じる。顔は十分に可愛いが、体格が少し大柄で、性格が勝気でむかつくところが好みの分かれるところだろう。こいつならやってやってもいいなと思う。 コメンテーター席は、前に机があるから一応隠れるし、裏側の椅子に回り込んで後ろからその巨乳を揉みしだいてみる。 「ふあーやわらけー」 もっと硬質なバストだと思っていたのだが、意外にも張りがなくて手で押せばどこまでもめり込んでいきそうなマシュマロのような柔らかい揉み心地、服の中に手を入れてブラを強引にはずして、揉んで見るとやっぱり蕩けるような弾力。 「これは、補正いれてたな」 グラビアの写真ではいつもピンと上向いたGカップだったのに。ヌードはなかったから、下着や水着等は補正をかませていたのだろう。 「まあ、これはこれで好みだけどな」 スカートはそのままに、机の下に回りこんで下着だけ脱がせる。飾り気のないピンクの下着はコンビニで売ってるような綿パンだった。服はスタイリストがついてて豪奢な装いなのだが、見えない部分は安物で間に合わせることもあるんだろう。華やかに見えても、芸能界なんてこんなものなのだろう。 スカートが長めだったので、腰までたくし上げて、あー結構毛が濃いな。オマンコは、当然のことながら使用済みだった。グラビアアイドルで、二十代にもなって処女だったら逆に引くから、これはこれでいい。 実際、やるだけなら適度にこなれてるほうがいいのだ。陰毛が濃い目で、オマンコも体格に比例して大きめだが、これはこれでおいしい身体といえる。きっとヘアヌードでも出したら、売れるしいい作品ができるだろう。 「きちんと手入れしてあるんだから、出せばいいのにな」 みんな人気がなくなってから、ヘアヌード出すのはどうしてなんだろうな。いまだしたら、一財産稼げるだろうに。 そんなことを考えながら、椅子の下に回りこんでゆっくりとオマンコを嘗め回す。別にタレントだから特別ってわけじゃない。かなり手入れはして肌は磨きこまれているものの、やっぱりマンコからはマン臭がするし、舐めれば汁が出る。 グラマーな腰つきと、尻の形のよさや足の細さはやはり際立った美しさを感じるが、普通のいい女の範疇を出るものではない。オマンコの準備が整ったようなので、身体を持ち上げて下に回りこんで座位の姿勢でゆっくりと挿入する。 「ふう」 礼美のオマンコは、包み込むような暖かさでぼくの逸物をゆっくりと飲み込んでくれる。肌は滑らかで、どちらかというとひんやりした抱き心地で、ライトで照らされて少しほてった肌には気持ちがいい。ゆっくりとピストンする。 「テレビよりも美人に見えるのな」 どんなに普通の女だと落ち着こうと思っても、やはりテレビでよくみた顔を抱いているというシチュに興奮は隠せなかった。グングンと礼美の膣の中で、硬度を増していく息子に苦笑する。 「こんな特異な環境なのに、興奮してるぼくもぼくだな……」 後ろから豊かなバストを持ち上げて、ゆったりと礼美の全身を楽しむ。椅子の下になって持ち上げてる体勢だから、無理なピストンはできないが、こういうゆっくりしたセックスも悪くはない。 下で腰を持ち上げるように振るたびに、形のよい尻が震えて、質量のある胸がブルンブルンを震えるのを見るのは興奮をいやがおうにも高めてくれる。腰の中に熱い塊が熱を帯び始めた。そろそろか。 ふと冷静になって見つめていると、コメンテーター席をはさんで百人ぐらいの観衆がまるで公開セックスを見ているような構図だ。我ながらすごいシチュだなと思いながらも、射精欲に負けて吐き出してしまうことにした。形のよい尻をめい一杯自分の腰に密着させて、オマンコの最も奥に射精するつもりだ。 ぐっと身体を抱きしめるように密着したとき、オッパイが一呼吸遅れてプルンと震えた。それで、もう限界を超えてしまった。 「うう、いくぞ礼美……中に出す」
ドピュドピュドピュドピュドピュ!
射精の瞬間、目の前に広がるスタジオのライトが、まばゆく光った。網膜を焼くような熱さを感じて思わず目を閉じた。しばらく豊かな胸の感覚を味わいながら、最後の一滴まで吐き出すようにドクドクと痙攣させながら奥へ奥へと男根を押し付け続けた。心地よい疲労を感じて、しばし意識を真っ白にした。
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