第二章「女性専用車両 連続中出し」 |
「順番にやるからお前たちも、裸になって濡らしておけ」 居並ぶ女性たちも、服を脱いでオナニーし始めた。異様な光景、なんで乗客の女性たちはオジサンの言うとおりになるのだろう。
オジサンのさもあたりまえのような口調を聞いていると、それが当然みたいな雰囲気が醸しだされているのは、私にも感じる。だが、それにしたって限界というものがあるだろう。 私は、自分が大掛かりなドッキリに引っかかってるのじゃないかと疑った。そんな疑いを持つ方がオカシイのだけど。アダルトビデオの撮影じゃあるまいし、女性客が電車で裸になってオナニーするなんて放送できるものではない。あるいは、新種のアダルトのドッキリカメラみたいなのがあるんだろうか。 念の為に、辺りを見回すが当然テレビカメラもなかった。念入りに辺りの人を観察してみるとオカシナ点もないではない。こんな異変が起こったら普通は、あそこ辺りにいる活発そうな女子高生の集団が騒いで携帯で写メを撮ったりするんじゃないかな。 誰も騒ぎなんか起こっていないって感じで、我関せずといった表情で電車に揺られている。オジサンの周りだけが異様な雰囲気で、裸の女たちがワイワイキャーキャー嬌声を上げながら、異常な興奮の中でオナニーに興じている。他の乗客は、その邪魔にならないように端っこに追いやられているのだ。 こんな異常な光景を目の前にして、車掌が飛んでくる気配もない。 そう言えば、この列車はいつになったら駅につくのだろう。さっきから外の景色が無限にループしている。いつまでもいつまでも、まるでドラマのセットのように見慣れた景色が続く。 こういうの何かの漫画で読んだような、集団催眠……。 バカげている。集団心理を操る催眠術というのは存在するにはするが、こんなオカルトめいた現象を起こすものではない。ファンタジーじゃあるまいし、これが催眠か何かだと認めてしまったら、それこそ私の頭がオカシクなったということだ。 私は精神異常者ではない、だから言い知れぬ恐怖に心臓がバクバクと高鳴っても、オジサンが女だなどと認めるわけにはいかなかった。 「ああ、そうかこれは夢」 「なんだ、現実逃避か。ホッペタでもつねってみろよ」 私のつぶやきを聞いていたのか、オジサンはそんなことを言ってくる。 古典的な方法だが、確かに試してみる価値はある。 夢が覚めないかとおもって、私は思いっきりホッペタをつねった。 「痛い……」 「なあっ、当たり前だよ」 「でもさっきからもう一時間ぐらい時間が経ってるし、おかしいです」 私の大学までの通学時間は、三十分ちょっとだ。 「時計見てみろよ」 「えっ……」 携帯の時刻を確認すると、電車に乗ってからまだ二十分程度しか経過していない。私は、起きるのに目覚ましがいらないぐらい体内時計には自信があるほうなのに。 (私の気のせいってこと?) 「アヤネちゃんだけじゃなくて、この車両全員の体感時間を遅らせてるんだよ」 「そんなバカなこと……」 確かに強い集中力によって時間感覚の操作は可能だとは、私も知っている。だけど、こんな広範囲にわたって他人を巻き込んでの遅延などありえない。 「女たちの準備が終わったみたいなんだけど、もう質疑応答はいいかアヤネちゃん?」 「ちょ、ちょっと待ってください」 本当に合点のいかないことばかり、私はオジサンの肩を掴んで引き止める。こういう不合理がどうしても許せない質なのだ。 「なんだよ、しつこいな。おいお前ら壁に手をついて腰を突き出せよ」 私が呼び止めているのに、オジサンは居並ぶ女の子たちに指示を出している。 「やっぱり、どう考えてもこんなのありえないです」 きちんと痛みを感じるけれど、でも私は目の前の現実をどうしても飲み込めない。 「夢だと思ってるならさ、一言『俺は女だ』って認めてしまえばいいじゃん」 「嫌ですよ、仮に夢でも自分でそう思ってないことを口にするなんて」 我ながら損な性分、愚かなこだわりだと思うのだけど。私は嘘をつくのが我慢ならないのだ。 オジサンは、さかんに自分を女だと私に認めさせようとしてくる。 もしかして、これが悪夢だったら『貴方は女です』と言った途端に目が醒めるかもしれない。 そんなことを思ってみても、それでも言えないのだ。 明らかに男を、女なんて認められるわけがない。
「強情だなあアヤネちゃん、しょうがないね。じゃあ俺はもうひと頑張りして自分が女だって認めさせるしかないね」 「どうするつもりですか」 私がそう尋ねると、オジサンは可笑しそうに腹を抱えて笑った。身体をくの字に曲げて、そのまま転がってしまいそうなぐらい抱腹絶倒した。 「フハハハッ、まさかこの期に及んでも分かんないとかありえないでしょ」 「その……」 わからないわけではないのだ、でも口にするとこの酷い現実を認めてしまうように思えて私は口ごもった。 「そこの危険日の女たちに次々中出ししていくからね、それで妊娠しなければ女だと完全に証明できるでしょ」 ニカッと暑苦しい顔に爽やかな笑みを浮かべるオジサン。 「そんなあ……」 あーやっぱり、そうなってしまうのか。 「まずはこの子かな」 オジサンは、適当に一番近くに居た女の子の後ろに陣取る。背が低い子で、よく見ると胸はつるぺたでまだ十代の前半に見える顔立ち。 ツインテールにしてる髪が、幼さを強調している。 「ちょっと、オジサン待って下さい。この子まだ子供じゃないですかッ!」 「えっ……、あーん小さく見えるけど違うでしょ。だって生理周期がわかる娘だけなんだから、ほらマンコ見てみてよ」 オジサンはなんのためらいもなく、その子のピンク色の肉のワレメを指で開いてみる。思わず私も膣中を覗きこんでしまって、自分で何をやっているのかと恥ずかしくなった。「ちょ、見ちゃったじゃないですか」 いや、私のことはこの際どうでもいい。恥ずかしさに耐えているのは秘所をむき出しにされたこの子だ。 私は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「ほら、ちゃんと開通してるでしょ。少なくとも処女じゃないよね」 オジサンはその子の膣に指を突っ込んで出し入れしながら、クチュクチュとイヤラシい音を立てた。 私はもう直視できない。 「生理周期を測ってるってことは、定期的にセックスしてる相手が居るってことなんだよ。小さく見えるけど、マンコの具合はしっかりしてるし……」 オジサンは独りごちて、しばらくワレメを弄ると少女に声をかけた。 「おい、お前は十八歳以上だよな」 「……はい十八歳以上です」 オジサンがそう言うと、そのままオウム返しに答える少女。 「いやいや、おかしいでしょ。だってほら脱いだ服、学生服ですよ! 小学生じゃないにしろ中学生ぐらいじゃないんですか!?」 このままだと年端もいかない少女がオジサンに犯されてしまうので、私は必死に抗弁する。 オジサンはうるさそうに私に向かって掌を振る。 「本人が十八歳以上って言ってるんだから、そうなんだろ。学生服って……、まああれだ高三で十八歳なんだろうよ。条例的にはオッケーだよな」 「うそっ、絶対まだ十代の前半ですって、こんな十八歳ありえないでしょ。ちょっと貴女本当のことを言いなさい、このオジサンに犯されちゃうわよ」 私がせっかくそう言ってあげたのに。 「私は十八歳以上です」 女の子は、そうまるでロボットのようにそう言い張っている。 なんだか既視感を感じると思ったら、オジサンが『自分を女だ』と言ってるのと一緒なのだ。 頭がおかしくなりそうだった。 「ほれみろ、アヤネちゃんがおかしいんだよ。疑惑が晴れたところで、さっそく挿れさせてもらうからな」 オジサンはそう言うと、少女の応答も聞かずに腰を突き入れてさくっと挿入してしまった。 「はわぁっー!」 少女が、変わった嬌声を上げる。 オジサンが腰を振るうたびに、「はぁぁ」だの「はわわ~」だのと喘いでいる。 その喘ぎ声の奇妙さに、私は声をかけるのも忘れて固唾を呑んだ。
「ひいっ、ふうっ、ひゃぁ~」 数字でも数えるように、リズミカルにピストンの速度に合わせて変わった叫び声をあげる女の子。 「くうっ、さすがにロリマンコは狭いな。これならすぐいけそうだ」 「ひぐっ、ひゃぁ、はぁぁ」 オジサンがさらに腰の動きを早めて、女の子の身体を両手で持ち上げたかと思うとそのまま駅弁ファックの体勢に持ち込む。 しばらくシーソーにでも乗っているかのように、裸体の少女がオジサンの上を激しく昇降して―― 「はぁ、いっ、イクッ!」 「俺もイクぞッ」 オジサンが女の子の身体を突き上げるようにして、絶頂に達した。 女の子も小さく口元から涎を垂らして、全身を痙攣させるようにオーガズムに浸っているようだ。そのままその小さい裸体をオジサンがどかっと、電車の座席に横たえると四肢をびくびくと震わせる少女の膣からタラタラと白い精液の塊が流れだしていた。 小刻みに震えている女の子が心配で、私はしばらく彼女の様子を見ていたのだが、その間にもオジサンは腰を付き出して居並ぶ女の子たちを犯している。 次に犠牲になったのは、二十代後半のふくよかな女性だった。 目の前に脱いだ黒い上下のスーツから察するに、彼女も勤め人。通勤途中のOLかなにかだったのだろう。 「次はお前の番だ」 「はい、十分に濡らしてあります」 女は従順そうな声で腰を付き出した。
「ふふっ、お前は殊勝な態度でなかなかいいじゃないか。手早く済ませてやる」 オジサンが女の後ろから、股間を突き出した。 先ほど少女に射精したばかりだというのに、オジサンの股間は一向に萎える気配をみせない。 もしかすると、バイアグラでも飲んでいるのかもしれない。 程なくして、この女も甘い吐息を吐き出した。オジサンも我慢せずとにかく腰を奮って相手はちょっと太めの女なので、その分だけ大きなオッパイを思いっきり揉みしだいたりした。 ほどなく射精する。 「おい、どこに出して」 「あの、これって妊娠しないんですよね」 一瞬の躊躇のあと、オジサンは答える。 「もちろんだ、俺は女だしな」 「じゃあ、中でいいです」 やはり従順そうな女はまぶたを伏せると、そう答えた。 「中でいいですじゃないだろ、中に射精してくださいだバカッ」 思いっきり肉厚のお尻をペチンッとスパンキングされる女。 「ごめんなさい、中で出して下さい」 「そうやって素直に言えば、ウウッ……」 オジサンは腰を激しく打ち付けると、深々と生殖器を結合させて震えた。 「はぁーん」 情けない声を上げ震える女の危険日の子宮に、ドクドクとオジサンの遺伝子の塊が流し込まれる。 ズルっと引き抜くと、また接合部からはドロっと精液が溢れる。 その量たるや、オジサンが今日何回射精しているのか考えるに超人的な精力といえた。 「ふうっ、なかなかのマンコだったな。遠慮無く孕むといいぞ」 「えっ、だって妊娠しないんですよね?」 肉感的な女性は、太ももに精液を垂らしながら慌てて聞き返した。 オジサンは次の女性に行こうとしていたのに呼び止められて、フンッと不機嫌そうに鼻を鳴らすと、少し考えて自分の脱いだ服のポケットからまたマジックペンを取り出した。 「うるさいこと言う奴はこうだ」 オジサンはペンで、女の腹に大きく『変態露出狂』と書いた。 「えっ、これなんなのです?」 太めの女はなおもきょとんとした顔でオジサンに尋ねる。その聴き方が、オジサンの神経を逆撫でしたようで笑顔が怖い。 「書いてある通り、お前はこれから露出狂になるんだよ。永久に露出趣味に耽溺して、裸で街中を歩いて、男にでもレイプされろよ」 俺の子供を妊娠するのがそんなに嫌ならな、と男は吐き捨てるようにつぶやくと次の女を組み伏せにかかる。
次は二十代前半ぐらいの少し痩せぎみの女だった。そのほっそりした背中に、マジックペンでまた落書きを始めるオジサン。 「なんて書いたんですか」 背中に何か書かれたのは分かったのだろう、頬も痩せ気味で髪の長い少しつり目の女子は不安そうに尋ねる。 「お前には『変態M女』って書いたんだよ。お前は一生変態M女だから分かったな」 「はい……Mですか……変態M女」 女は複雑そうな表情でまぶたを伏せると、口元でオジサンの言葉を繰り返した。 「分かったら、さっさと股を開け」 「はい、ただいま」 オジサンに促されて、車両の窓ガラスに手を付くと大きく肉付きの薄いお尻を上げる女。足が長くて、中々スタイルがいいので様になっているがオジサンは不満そうだ。 「違う、M女らしくおねだりをしろよ」 「あっ、すいません。えっと、私のオマンコにオチンチンをぶち込んでくださいっ!」 「よし、なかなかM女らしいな。ご褒美をくれてやる」 オジサンは我が意を得たりと、嬉しそうに笑うとそのまま覆いかぶさるにしてバックから挿入した。 居並ぶ女子たちは、皆あらかじめオナニーさせて濡らしてあるから、抵抗なくオジサンのそそり立ったものを受け入れる。 「はっ、ありがとうございます。ありがとう……、ございますっ!」 変態M女にされた女は、パンパンと腰を打ち付けられながらお礼の叫び声をあげる。 「ふへへっ、なかなかいいね。マンコの具合もキュッキュと喜んで締め付けてくるじゃないか」 これだけ出してもまだ、女体を楽しむ余裕があるらしい。
男はゆっくりと腰を打ちつけながら、女の乳首を指で弄んでいる。 「あっ、あっ、最高です、ありがとうございますうぅ!」 すっかりM女らしい嬌声をあげて、女はオジサンの愛撫を受け入れる。 「ふうっ、ゆっくり楽しみたいところだがケツカッチンだからな。そろそろ出すぞ」 「あっ、あっ、中に、中に出して下さい」 当然M女なら、そう答える。 オジサンは嬉しそうに、「知らない男の子種で孕んでもいいのかよ」と女を詰った。 「いいんです、ダメだけどソッチの方が気持ちいいからぁ、お願いします遠慮無く中出しして」 「俺は知らないからな、勝手に孕んでどっかで産んでろよ」 オジサンは、嬉しそうに感極まった顔で腰を激しく打ち付けるとやがて動きを止めた。ドクドクと痩せ気味のM女の膣に欲望を吐き出しているのだろう。 ズルッと陰茎を引き抜くと、さすがに勃起はもうしていない。それでも、最後の射精も精液の量は十分だったようでしばらく経つと、ポタリポタリと車内の床に中出し精液が滴り落ちた。 自らの膣口から垂れた精液を、M女はうっとりとした表情で見下ろしている。 「ふうっ、なあいつまで続けるんだ。いい加減俺を女だと認めろよ。そうじゃないと、さすがにもう体力の限界だよ」 オジサンは、ぐったりしている少女を介抱している私のところにきてそう声をかけた。オジサンの顔を見ると、目のくまが酷くて少しやつれているように見える。超人的な精力を誇る男だったが、疲れているというのは嘘ではないようだった。 「貴方さっき、そこの女性に自分は男だみたいなことイイましたよね」 私がそういうと、オジサンはグッと身をのけぞらせた。いちいちオーバーリアクションだなあ。 「なかなか痛い所をついてくるじゃないか、あれはあれだよ言葉の綾ってやつでな」 その方が気分が出るだろと言うオジサン、そんなこと私の知ったことじゃない。 オジサンが何度女性に中出しをかましても、私のセリフは決まっているのだ。 「何をどうしようと、あんたは男よ!」 どうしてか居並ぶ女性には、みんなオジサンが女の人に見えるらしい。けれどそんなことで『男を女だ』なんて認めるなら最初から頷いている。 筋の通ってないことは、私は絶対に認められない。 「ハァ、みろよ。すっかりクリトリスが萎えてしまった。これでも俺は男か?」 オジサンが、私を言う。一体、何度目の質問だろう。きっと私が認めるまで同じ事を聞きつづけてくる。 そういう手口なのだと、私は本能的に気がついていた。
オジサンも疲れているようだけど、私だって心身ともに疲弊している。大きく深呼吸するけど、車内は息苦しい。 辺りは、愛液と精液の入り交じった澱んだむせ返る匂いで満ちているのだから当たり前だ。 そこには、精力絶倫のオジサンに中出しされてぐったりする真っ裸の女性がぐったりと幾人も転がっていて、他の乗客はまるで無関心を装うように、この輪姦ショーを遠巻きに見つめていた。 「だって、何をどう言われてもオジサンはオジサンでしょう」 オジサンは、私のその返答を聞くと、やれやれと私の近くの座席に腰を下ろした。 「アヤネちゃんは頑固だな……、そして残酷だ」 「なんで私が残酷なんですか?」 たくさんの女性を犯して回ったオジサンではなく、なぜ私が非難されなければならないのだろう。 そんな言われはこれっぽっちもないはずだ。私は何も悪くない。 「そりゃ、十月十日後にわかるんじゃない。俺に中出しされた女たちが妊娠するかどうかは、しばらく経たないとわかんないもんね。おや、そろそろ駅に付くね」 電車は、いつの間にかゆっくりとホームに滑り込んでいた。無限に続くかと思われた惨劇は幕を閉じるのか。 確かに私が降りる停車駅だ、しかし座席でいまだ倒れている少女や、この車内の惨状を放って一人で逃げていいものだろうか。 私が迷っていると、列車はホームに到着してプシューと音を立てながら、ゆっくりと扉が開いた。 ふわっと、澱んだ車内の空気が晴れて、外の風が流れてくると私は悪夢から目醒めた心地がした。開いた扉からは、朝日が差し込んでくる。 外は明るいと思った。 「どうした、早く降りなきゃ大学の講義に遅れてしまうんじゃないかな」 オジサンにそう言われて、ハッと時計を見る。 今日は基礎教育科目だから、どうしても出なければいけない講義なのだ。 こんな現場に遭遇して、講義も何もないものだが、後から考えればそのような理由で私はこの場から一刻も早く立ち去りたかったのかもしれない。
私はすべてをなおざりにして去る罪悪感を感じながら、後ろ髪引かれる思いでホームへと降り立つ。 後ろから、オジサンの「アヤネちゃん、また会おうなー」という声が追いかけてきた。もう会いたくない。 私は耳をふさいで、階段を駆け下りた。 何も聞こえない、聞きたくない。私は、全てを振り切るように走り続けた。 自分の安全で安心な、日常に向かって。
|
第一章「女性専用車両 主婦編」 |
「なんだ、アヤネちゃんは、まだ俺が女だって信じてないのか」 ぐったりと座席に座り込んでいるOLの股間から、ドロドロとオジサンが中出しした精液が流れ出しているのだ。何を信じろというのか訳がわからない。 私の不満げな顔を見て「じゃあしょうがねえな」とオジサンは、急に周りに呼びかけ始めた。 「えー、女性専用車両にお乗りの乗客のなかで、超危険日の方はいらっしゃいますかー」 車内を歩きながら、オジサンは叫び声をあげる。 「いらっしゃいましたらーこちらに至急集まれーこの野郎ッ!」 そのようにして、女性客をかき集め始めた。 とんでもない申し出にも関わらず、不思議とオジサンが回った後にぞろぞろと女性客がついてまわっている。まるで、カーメルンの笛吹きのようだ。笛を吹いて、街中の子供を連れ去ったという怪しげで不気味な男の伝説だが、実際のハンドパイパーもこのオジサンのように拍子抜けするほどただのオッサンだったのかもしれない。 童話の世界が目の前に現れた、そんな違和感と共に鋭い頭痛に眉根を顰める。 「はいはい、そこに整列してね。うーん、オバサンはいらないから向こうに行って……。君とアンタもブサイクだから、帰ってイイよ」 集まった女性の中から、容姿に優れた女性だけを寄り分けていく。そうして、六人の女性が残された。 列車の一両に満載された女性から排卵日の女性をさらに容姿でより分けて、この人数。多いのだろうか、少ないのだろうか。 オジサンの言う超危険日って二十四分の一なのか、三なのだろうか。一車両の乗員定員数が一六二名で、分母が分母を仮に百六十と考えると二十四で割れば、6,67だから抽出された六人という数に意味があるようにも見える。 こんなとき、そんな暗算してる場合じゃないんだが、少し落ち着いた。深呼吸して、額に浮かんだ汗をハンカチで拭きとる。私までもが、非日常に飲み込まれないように。
「ふうん、まあ数はこんなもんか……。しかも、妙齢の女ばっかりだ。おばさんは要らないが、女子高生とか居ないのかねえ」 オジサンも、私と一緒の感想を持ったらしい。鈍重な顔をしてるけど、オジサンもその程度の計算は出来るわけか。 「あのうー、若い子は危険日とか計算してないんじゃないでしょうか」 おずおずと、整列されられている中の一人、綺麗に巻かれた栗色の長い髪のちょっとお嬢様風な女性が手を上げてそう答える。 「ふんっ、君の名前と年齢と……。あと職業」 オジサンが腕を組んで偉そうに尋ねる。何様のつもりだと私は少しむかつく。 「中藤エリナ、二十四歳……主婦です」 赤いスーツに派手なスカーフ、高そうなバックを持って白い帽子をかぶっているエリナは、家庭的な主婦にはとても見えない、どっちかといえば人のよさそうなお嬢様。人妻というのなら、いかにもセレブって感じ。 「ふーん若いな。人妻とは思わなかった。主婦って言うより、セレブって感じだな」 やだ、またオジサンと一緒のことを考えていたみたい。 「そんな、セレブなんて……。ただの主婦です」 「まあ、それはいいや。それで若奥さん、あんたはなんで自分が排卵日だと自覚してるのかな?」 「あの、私はきちんと基礎体温つけてますので。今日は確実に……」 エリナさんは口をつぐんだ。続く言葉は、『危険日』あるいは『排卵日』か。上品そうな女性だから恥ずかしがっているのだろう。 「排卵日ってことか」 オジサンがそう聞き返すと、エリナさんはコクンと頷いた。 「そういう事か、よくわかった。教えてくれてありがとうな。それじゃあ奥さん、ちょっと服を脱いで裸になってくれるか」 「こんな場所で、裸になるんですか?」 電車の中なのだ。一応、公共の場所だから躊躇するのは当然だろう。 「別に良いだろう、俺だってあそこの女だって裸になっている」 オジサンは中出しされて座席にぐったりといているメガネOLを指差す。 精液と愛液の据えた臭いが鼻につく、ちょっと淫蕩な雰囲気に押されたように「分かりました」とエリナさんは血の気の引いた蒼白な顔を歪めながら、スカーフに手をかけた。 赤いスカーフをしゅるりと下ろして、赤いスーツを脱ぐと綺麗に座席の上に畳む。こういうところに性格がでるよね。エリナさんはその上に白い帽子をちょこんと乗せてオジサンを振り返った。 「下着も脱ぐんだよ」 「分かりました……」 エリナさんは、レースのついた淡紅色のブラジャーを剥ぎ取ると、大きめのおっぱいを晒した。なかなか立派なオッパイ。人妻だというのに、乳首はピンク色で大人しい。胸の大きさは、私と一緒ぐらいだけどエリナさんのほうが前にポンと突き出てる感じでカッコイイ。大人しいお嬢様風だったのに、女は脱いでみないと分からない。 スッとブラとおそろいの赤いショーツも脱ぎ捨てると、青白い肌を晒した。胸と腰とお尻のあたりだけ、少し肌がピンク色になっている。もしかするとこんな場所で裸にされて、高揚しているのだろうか、エリナさんは苦しげに少しハァハァと息も荒い。 「力抜けよ」 オジサンはエリナさんの肩に手を置くと、優しくさすった。エリナは少し落ち着いたのか、ぎこちない笑顔を見せた。 「すいません、緊張してしまって……」 「いや、無理はないだろうよ。こんな経験は初めてなんだろう?」 オジサンはニヤリと笑って親しげに声をかける。 「はい、他の人に裸を見られるのは久しぶりです……」 「子作りしてるんだろ。旦那さんに、可愛がってもらってるんじゃねーのか」 オジサンは肩を抱いたまま中年男らしいねちっこさで、エリナの柔和な顔を覗き込むと真っ白いほっぺたを長い舌でベロリと舐めあげた。性欲に猛り狂ったオッサンの表情は化物じみている。 エリナは、激しい嫌悪に顔を背けたようだった。 「ちょっと、いい加減にしなさいよっ!」 私は、エリナさんの嫌がってる様子を見て、オジサンとエリナさんの間に分け入った。関わりたくなかったし、私はこの場では場違いな存在だということをビンビンと感じるけど、もう黙って見ていられない。 オジサンの胸をドンと押し返す。そんなこと気にしてる場合じゃないけど、オジサンの肌はヌメッとして気持ち悪かった。後で手を洗わないといけない。
「なんだよ、アヤネちゃん。お前には関係ないだろ」 「だってこの人、嫌がってるじゃないっ!」 私の胸の中で、カーッと義憤が燃え上がった。エレナさんに近づかせないように立ちふさがって私は続けて叫ぶ。 「嫌がってる女の人の身体を触るのは痴漢行為よ」 私は、叫びながらだんだんと意識がハッキリしてくるのを感じだ。そうだ、こんな場所で裸にさせられてる段階で、止めないといけなかったんだ。どうして、雰囲気に飲まれてしまったんだろう。 「『痴漢行為よ』だってさ、アヤネちゃんは面白れぇことを言うなあ」 オジサンはひるむどころか、声色を真似をしてからかってくる。私が激昂するのを楽しんでいるようだった。一発平手でも食らわしてやろうか。 「止めないと、ぶつわよ!」 私はこれでも、手が早い方なのだ。男なんかにビビらない。今にも殴りかかってきそうな私の勢いに押されたのか、オジサンも両手を前に突き出して押しとどめた。 「おいおいマジかよ、こんな公共の場所で暴力はダメだよ」 「公共の場所でやっちゃいけないことをやっているのはどっちよっ!」 足を踏み鳴らして、怒り狂う私を押しとどめてから、オジサンはエレナさんに慌てて聞いた。 「おいっ、若奥さん。俺がお前の身体を触るのは痴漢行為か?」 「えっ、いえ……」 オジサンは変な説得力で丸め込もうとしている。そうはさせるものか。 「ねっ、あなた。本当は嫌なんでしょ、嫌なら止めてって言っていいのよ」 「えっ、あっ……」 エレナさんは、私とオジサンの両方の顔色を伺ってキョロキョロし始めた。 まったく年上で人妻だっていうのに、小娘みたいな人だなあ。普段はそれで可愛らしいのかもしれないけど、いまは非常時なのよ。 「ねえっ、エレナさん。あなたこのままいくと、この男に犯されるわよ。それでもいいの?」 私が必死になってエレナさんの肩を掴んで説得しようとしているのを、オジサンは横目でニヤニヤと笑って押しとどめた。 「おいおい、待てよ。アヤネ、お前は前提から間違ってる」 「何がよ!」 私は、間違っていると言われるのが一番嫌いだ。 「まず、なぜかお前は俺のことを男だと思っているらしいが、ここに居るお前以外の人間はみんな俺のことを女性だと正しく理解している」 なあそうだろうと、オジサンが周りの女性客に呼びかけるとみんな「うんうん」と頷いた。私は、一人だけ自分が間違っている立場に置かれて、極度の怒りと不安でスーと音を立てるようにして頭から血の気が引いていくのを感じた。 気絶するかもと思うほどの落胆を、下唇を血が出るほどに噛み締めてなんとか耐える。 「みんな、おかしくなってるのよ」 自分だけは、何とか正気を保とうと努力した。
「これは、アヤネちゃんのせいでもあるんだぜ」 「何がっ、何が私のせいよ!」 誰のせいかと言えば、女性専用車両に乗り込んできたオジサンのせいに決まっているのに、なんで自分ばかり非難されなければならないのか。 「だからぁ、チッ……分からねえ女だな。お前に向けて俺が女だと言うことを証明するために、この若奥さんにもご協力いただいてるわけじゃねーか」 まったく言ってる意味がわからない。 「いいか、アヤネちゃん。これをよく見ろ」 オジサンは勃起したイチモツを私に突きつけるように見せつけた。それはまあ、ピンク色の鎌首を持ち上げた蛇みたいで化物じみた生殖器だ。 「そんな汚らわしいものを、私に近づけないでよっ!」 「おい、これはなんだアヤネちゃん。言ってみろよ」 ほれほれとオチンチンを上下させるオジサン。 「男の、薄汚いオチンチンに決まってるじゃない」 チンコをピンコ勃ちさせながら、オジサンはアメリカ人のように手を広げてやれやれと呆れたジェスチャーをした。 あまりのムカつきに、私は吐き気がした。 「若奥さん、これはなんだと思う?」 今度は私にしたのと同じ質問を、エレナさんにするオジサン。 「女の人の……ちょっと大きなクリトリスです」 真っ赤な顔で俯きながらも、確かにエレナさんはそう確かに言った。私は、あまりのことに絶句して二の句も接げない。 「よし奥さん、じゃあ俺のクリトリス舐めてくれるか?」 「えっ、それはちょっと」 オジサンはさすがに断られている。当たり前だけどちょっと小気味よかった。 「なんだよ、クリトリスなんだから舐めてもいいだろうがっ!」 そう詰られるとエレナさんはちょっと躊躇を見せたが、言われたとおりに跪いて小さな舌を出して、精液と愛液がこびりついている勃起した男性器をペロペロ舐め始めた。 「ちょっとアンタ何をやらしてんのよ!」 私が慌てて止めに入るが、手を前に出してオジサンは押し留めた。 「お前はちょっと黙って見てろ。これはアヤネちゃんのためにやってる証明なんだから」
なんで私のためにこの人が口淫されないといけないのか、しかし黙って見てろと言われると私も口出しし難く、悔しくて下唇を噛み締めた。 「若奥さん、アンタもフェラチオへったくそだなぁ」 「ふみまふぇん……」 エレナさんは陰茎を咥えこみながらも、オジサンに怒られてシュンとうなだれている。しばらくエレナさんは眉根をしかめながら、嫌そうにオジサンのチンチンを舐め回していたが、オジサンがストップをかけた。 「まあフェラチオはいいや。こんな刺激じゃイケねえ。奥さんはまだ若いから、これから旦那のために精進しておけよ」 オジサンは勝手なことをほざいて笑っている。下手くそというわりに、エレナさんに舐められてガチガチに硬くしてるくせに。 「あの、出来ましたらその……。若奥さんっていうの止めていただけませんか」 知らないオジサンの前で裸になってるのだから無理は無いけど、奥さんと呼ばれるたびにエレナさんは暗い顔をしている。 もしかすると、罪悪感を刺激されるのかもしれない。夫がいるのに、他の男の陰茎を舐めされられたのだから当然だ。 「ふうんっ、別に呼び名なんてどうだっていいけど、アンタが嫌ならエレナって呼ぶわ。エレナは、もし俺が男でさっき舐め回したこれがクリトリスじゃなくて、チンチンだったらどうする」 カチカチに勃起したチンコを、ベチベチとエレナさんのホッペタに押し付けて、オジサンは尋ねる。 「死にます……。主人に申し訳ないから、舌を噛んで死にます」 エレナさんは悲壮な顔でハッキリとそう言い切った。 いやいや、舌噛んで死ぬってのは小説の中だけの話で、実際にはそんな死に方できるものじゃないと私は思うのだが、ツッコむ空気ではない。 「ほら、聞いたかアヤネちゃん。エレナは偉いよね、いまどきそんな貞淑な妻っているんだね。旦那に申し訳ないから死ぬとまで言ってるんだぜ?」 「そりゃ、偉いとは思いますけど……」 「じゃあいい加減、俺を女だって認めたかな」 「いや、それとこれとは全然関係ないでしょっ!」 そんなこと言われたって、私はオジサンが男性にしか見えないのだから、答えが変わるわけがない。
「ひでえなぁ、おいエレナさん。この娘、あんたに死ねって言ってるぜ」 エレナさんのブラウンの瞳から、耐え切れないとばかりにツーと涙がこぼれた。ええっ、どういう展開? 「ちょっと、私は彼女に死ねなんて言ってません! ただ私からはオジサンが男にしか見えないって言ってるだけで……」 なんか私が泣かせたみたいだったので、慌てて申し添える。なんで私が悪者にされないといけないのかという怒りが沸々と湧いてくる。 さっきからこんなのばっかりだ。 「じゃあさアヤネちゃん。そもそも、男と女の違いってなんだろう。クリトリスとチンチンの違いってなんだよ」 オジサンは私に真面目な顔で聞いてくる。ちょっと、その汚いものを近づけないでほしいのだけれど…… 「……それは、えっと」 クリトリスは、発達未良の男性器の名残だったと習った覚えがある。そうすると性別の違いはあっても同じものってことになるのかな、えっとえっと……その両者の違いはどこで見分ければいいんだろう。 「それは、やっぱり男についてるか女についてるかで……」 期待した答えを返さない私に、オジサンは呆れたように反論した。 「それじゃあ堂々巡りじゃねーか。そうじゃないだろ、単純な違いは精液を出して女を妊娠させられるかどうかだろ」 そうだ生殖機能の有無。なんでこんなオジサンに指摘されないといけないのだろうという悔しさがあって、私は悔しくて臍を噛んだ。いくら嫌な男の言葉だと言っても、オジサンの方の的確な答えであることを認めないほど、私は狭量ではない。 「それは、オジサンの言うとおりです」 「だろう、だったら確かめるのは簡単。アヤネちゃんはチンチンって主張しているこの俺のクリトリスで、この若奥さんとセックスしまくって妊娠するかどうか確かめるのが一番簡単じゃないか」 若奥さんと言われて、俯き加減で涙をこらえていたエレナさんがビクリと肩を震わせた。そうは呼ばないって約束してたのに、本当にデリカシーが無い男だ。
「というわけだから、エレナ。ちょっと人妻マンコ貸してもらえるかな」 「だからあの、本当に妊娠したら困るんです!」 さすがに貸してくれといって、じゃあどうぞとは行かないらしく強く拒絶するエレナさん。妊娠の危険があるなら、フェラチオとはわけが違う。 そんな困惑の様子もお構いなしに、抱きついて股間をすりつけているオジサン。 「なんで困るんだよ。妊娠したいから、基礎体温をつけてるんだろう?」 「それは、旦那様の赤ちゃんだからです。他の男の胤で妊娠なんかしたら離婚されちゃいますよ」 ふーんと、オジサンは何がツボに入ったのか、また小憎たらしいニンマリ笑いを浮かべた。 「いまどき胤なんて言い方、時代劇みたいじゃねーか。やっぱりお嬢様育ちっぽいな」 「そんなこと……。ありません」 否定の仕方が上品で、やっぱり育ちのよさを感じさせる。 「ハハハッ、そんなお嬢様にプレゼントだ」 オジサンは、エレナさんの手にゴムの蓋のようなモノを手に握らせる。 「これなんですか……」 初めて見たらしく、物珍しそうに手で摘まんで眺めているエレナさん。ちなみに、私も初見だった。一体なんだろう。 「ペッサリーという避妊具だ。子宮口にかぶせて使うんだ」 エレナさんの顔がパッと明るくなる。避妊してくれるのだと思ったのだろう。しかし、その笑顔はすぐに曇ることになる。 「こんど旦那とセックスするときにそれを使え」 「えっ……今使うんじゃないんですか」 当惑した顔をするエレナさん。こっちを向かれても困る、オジサンの言うことは全くワケが分からない。 「何を馬鹿なことを言ってるんだ、俺とのセックスに避妊具を使ったら子供ができるかどうか確かめることができないじゃないか」 「えっ、それはそうですけど?」 エレナさんは、眼を泳がせて口ごもる。 「いいか、万が一にも俺の種と旦那の種が混ざって、どっちの子供か分からないなんてことになったら困るだろう?」 「それは、もちろん困ります」 当たり前だ。 「だから、今回の排卵日は旦那とのセックスの時にそれを使って、旦那の精液が子宮に入らないようにするんだ」 オジサンはとんでもない要求をさらりと口にした。私も、当事者のエレナさんも唖然としている。
「ええっ、それじゃあ……あべこべじゃないですか」 そう気を取り直したエレナさんに当然の如く反発するのを聞いて、オジサンはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。 「そうだ、あべこべをやるんだ。あべこべでイイんだよ」 エレナさんは混乱したように、目を白黒させている。オジサンはそんなエレナさんの混乱に乗じて、畳み掛けるように叫ぶ。 「お前は、旦那以外の男に中出しされるような淫乱女なのか?」 「いいえ、違いますぅ!」 「じゃあ、あべこべだ。今から中出しされるお前はあべこべでないといけないんだ」 「あべこべ……あべこべですか?」 エレナさんは口の中で、確かめるようにあべこべと呟いた。 「いいかよく聞け、俺は女だからお前は妊娠しない。だが、そもそもお前は貞淑な人妻なんだろうから、元々が夫以外の誰ともセックスするわけがないんだ」 「そうです、そうですよ、こんなのおかしいです!」 エレナさんは細い首がちぎれてしまうんじゃないかと言うほど、怖いほどブンブンと上下に振っている。頭を激しく振り乱すから長い髪が乱れる。 「だから、今だけは、あべこべになってるんだ」 「今だけあべこべ?」 首の動きがピタリと止まって、だらんと髪が垂れる。暴れる身体を後ろから抱きすくめながらその耳元に、オジサンはあらぬことを囁く。 「エレナ、普段のお前とは真逆になるんだ。貞淑は淫乱、貞節は裏切り、拒絶は歓待に変わる。さあ、その濡れそぼった穴を開け!」 「えっ? ああーッ」 エレナさんは強引に、後ろから挿入されたようだった。ガッツリとハメられて、身動きが取れなくなる。 「ちゃんと濡れてるじゃないか、マンコはもうすでにあべこべになってきてるな」 「違います、抜いてください……」
後ろからエレナさんの形の良い乳房を激しく揉みしだくと、ゆっくりと力強く腰を叩きつけてオジサンは叫ぶ。 「そうじゃないだろ、いつもと逆って言ってるだろッ!」 「えっ、逆。ああっ、挿れてください……」 そう聞いてオジサンは嬉しそうに叫んだ。 「そうだよ、それでいいんだ。普段とはあべこべだからな」 ゆっくりと腰を蠢めかせるように動かし始めた。傍目から見てる私が見ても赤面してしまうぐらいのイヤラシい動き方。 「あべこべっー あああっ でもこんなのって」 やがて腰の蠢きは早くなる。オジサンはパンパンと腰を打ち付けるようにして、人妻の具合を愉しんでいるようだった。 「いいんだよ、ハァハァ、普段が人間なら今のお前は盛りのついた猫だ」 「猫、猫ですか……、にゃぁー?」 なぶられるまま、オジサンの言葉に翻弄されてエレナさんは狂乱している。まるで操り人形のようにされるがままに身体を自由にされて、その度に長い軽そうな髪が、フワッフワッと私の鼻先で揺れた。 「ほら、もっと盛れッ! もっと求めろおッ!」 「あああああ――ッ!」 エレナさんは叫び声を上げると、自ら求めるように腰を使い始めた。ジュプジュプと厭らしい音が響く。雌の匂いが、汗と共にエレナの身体から立ち上って充満していく。 「ああっ、いい具合だぞエレナ。気持ちいいか」 「気持ちイイにゃあああ!」 獣のように腰を打ち付ける。 私は、目の前に展開される光景に目を疑った。 さっきまで、貞淑だったはずのエレナさんが淫乱女になってにゃあにゃあ喘いでいる。 後から思えば、私は止めるべきだったのかもしれない。 それでも、予測不能意味不明の現象を目の前にして、人は硬直する。 起きた現象を理解しようと考えてしまう。 それは、やや早漏気味らしいオジサンが人妻の媚肉を味わい尽くすのに十分な時間だった。
「くそ、もうイクぞ。どこに出して欲しいんだ」 「中に、中に下さいにゃああああ!」 私がハッと気がついたときにはすべてが遅い。 「おっし、俺の子供を妊娠しやがれメス猫!」 「ふにゃあああ!」 オジサンがガクガクと腰を振るうと、満足気に鼻息をすぅーと吐き出して動きを止めた。男が感極まった気持ちよさそうな、とても気持ち悪い顔をしている。 これはつまり、オジサンがエレナさんの中に射精してしまったってことなのだろうか。あまりに唐突な展開すぎて、私は理解がついていけない。 「これは……」 もう言葉にならなかった。なぜ、オジサンの言われるままにエレナさんは発情してしまったのか。 なぜ急に身体を許してしまったのか。 「ウフフッ、私夫以外の人に中に出されちゃった……にゃあ」 まだ猫が残っているのか、エレナさんは猫の鳴き声を上げると、ぐたっと電車の床の上に転げた。 オジサンが腰を引くと、ポッカリと穴の開いたマンコからドロっと白い精液が床に零れた。 「さて、アヤネちゃん。これで俺が女だってわかったかな」 「何を言ってるんですか、わかりません……」 オジサンは私の答えに、芝居がかった仕草で嘆息すると手を広げるジェスチャーをして後ろの女たちに叫んだ。 「しょーがねーな、次はお前らの出番だぞ!」 嘘でしょうまだ続くの? どうしようと思ったけど、私にはどうしようもないことにすぐ気がつく。オジサンをもう女っだと認めてしまえばいいのかな。そうすれば、止まるのかな。 でも嘘を付くなんて……、そう迷っているうちに新しい宴が始まってしまった。
|
|
|
|