第三章「支倉由佳帆の叛意」 |
山小屋で奈々子がオナニーを終えた直後、奈々子付のメイドである支倉由佳帆は清掃のために山小屋を訪れていた。 「まったく……なんで自分があいつの後始末を」 山小屋をきちんと掃除するのは、少女には重労働だ。マットも持ち上げて洗浄して乾燥させなければならない。腰辺りまで伸びた艶やかな黒髪が、いまは邪魔になる。メイドの服は好き、機能的だから掃除で汚れても簡単に洗濯できる。でも、この無駄に長い髪は本当は嫌い。 亜麻色の長髪は奈々子のお気に入りだから変えられない。由佳帆は活発な性格で、昔は短髪にしていた。できれば切りたい、仕事の邪魔になる忌々しい髪、由佳帆にとっては隷属の証明のようなものだ。それでも、奈々子の趣味に合わせるしかない。 奈々子の秘密を守り、絶対服従するのはこの河相の家でも由佳帆一人しかいないから。大変でも、山小屋の掃除は一人で行わなければならない。なにか落ち度があれば、罰を受けるからいつも由佳帆は必死だった。
支倉の家は没落した家系だ。父親は由佳帆が高校に進学するころ事業に失敗し行方不明、心労が祟ったのかもともと身体が弱かったのか、病身の母親を抱えて由佳帆は途方にくれた。そこに救いの手を差し伸べたのが、河相の家である。もともと債権者であった河相は、借金を肩代わりし、由佳帆とその母親の面倒を見てくれることを約束した。 条件は、河相奈々子の付人として仕えること。近くの高校にも、そのまま通ってもいいという。破格の条件といえた。当然いい話には裏がある、母親を人質に取られている形になっている由佳帆は、奈々子が奴隷のように自分を扱うのにも耐えた。 同性の奈々子に、身体を弄られるのだって……苦しいけど耐えた。 だっていざとなれば、身体を売ってでも生きることを覚悟していたのだ。いまの境遇はそれに比べれば、だいぶマシだろう。それでも、S的な趣味を持つ奈々子にディルドーで無理やり始めてを奪われたときは、悔しくて眠れなかった。自分だって、好きな男ぐらいいたのだ。 泣きはらした朝に、顔をあわせたときに赤くはれた目を見て愉悦の表情を浮かべた奈々子への恨みを、由佳帆は忘れられなかった。 河相の家が、奈々子に付人をつけたのは帝王教育のためだ。河相の家に生きるものとしては、人を使うことを学ぶのは大事なことだ。だから河相の子女には、その教育の一環として弱みを握って逆らえない奴隷を一人つけて使役させる。 サディストの傾向もある奈々子は、喜んでそれをやった。それでも奈々子は、人を使うという意味が分かってない。人心は掌握するべきで、恨みを抱かせるのは危険なのだ。猫が子ネズミをいたぶり殺すようようなやり方は、もっとも避けるべきことだ。 ネズミだって、追い詰められれば牙を剥く。だから――
山小屋の倉庫に、汚らしいおっさんが寝そべっているのを見たとき、支倉由佳帆は排除すべき汚物ではなく、これを復讐のチャンスと捉えたのである。
「ぶひ……ひょ」 蛾歯が眠りから目を覚ますと、目の前に少女がいた。あのSM女とも違う、蛾歯が見たこともない長髪の女性。 「ああ……目を覚ましたのね。私は支倉由佳帆」 「ひ! ひぇ!」 「動くな」 そういわれて、壁の隅っこにうずくまる。狭い物置だから、仕方がない。 「ちなみに、ここは随所に警報装置があるわ。ボタン押したら、あんたはすぐ捕まるわよ。捕まったら殺されるわよ……私の言ってることわかる?」 よくわからなかったが、臆病な蛾歯豚男はブンブンと首を振る。 「よろしい……物分りが良くて助かったわ。暴れたら、すぐ殺すつもりだった」 「そんな……」 「あんた、ここをどこか知ってるの。河相の家の敷地内よ。警察の管轄外だから、ここで殺されても誰にも分からないわよ」 「河相……?」 「鉄条網とか、警備とかいろいろあったはずなんだけど……なんで何も知らないのに入り込んでたの」 「いや……ただ寝る場所を探してて」 「偶然うまく入り込めたと……信じがたいけど、あんたがここに居るからには信じるしかないわね。そういう奇跡もあるかも、私にとってはチャンスになるかもだし……」 「……」 「あんたの名前は」 「蛾歯……豚男」 「変な名前ね、まあいい蛾歯まずあんたが理解すべきことは、私の一存にあんたの生命が握られているということ。あんたはどう考えてたか知らないけど、ここにいることがわかったらあんたは最悪殺されるわよ。あんたがミスして捕まっても死、私が通報しても死、ここから逃げだそうとしても網にかかって死。つまり、あんたは私に絶対服従! 理解できたかしら」 蛾歯はうなずくしかなかった。汚らしい三十路過ぎた巨躯のおっさんを、小柄な女子高生が従わせている図は滑稽としかいいようがなかったが、由佳帆はいい気分だった。この河相の屋敷のなかで、自分が最下位の奴隷だったのだから。子供っぽいかもしれないが、自分よりも下ができるというだけでも楽しくてしかたがない。 「まず、ここに来て何を見たかを教えてもらえるかしら、私も説明してあげるから。なに、私の言うとおりにしたら悪いようにはしないわよ」 蛾歯と由佳帆は、お互いの情報を交換しあい。結局、由佳帆が蛾歯の生命の維持を保障するかわりに、蛾歯はここに潜んで由佳帆のいうことに何でも従うことになった。とりあえず、支倉由佳帆の思い通りにことは運んでいた。
「ふふ、私の可愛い由佳帆……お前の髪はなんでこんなにいい香りがするのかしら」 一ヶ月のうちに一回か二回。夜伽を命ぜられることがある。 まったく、どっかで男でも見つけて乳繰り合えばいいのに。 気品と高慢とがいりまじった奈々子の気高い肢体は、男の嗜虐をくすぐるはずだ。奈々子が自ら股を開けば、たいていの男は落ちるだろうに。それをしない。 レズの趣味などまったくないノーマルな由佳帆にとって、屈辱しか感じられない時間だ。従順そうに、俯いている由佳帆が何を考えているか奈々子は考慮したこともないのだろう。どこまでも、お嬢様なのだこの人は。そして、性行為はどこまでいってもやることが自慰の延長線上にしかない。自分が気持ちければいいのだろう。このSM趣味のナルシストめ。こんな人間に仕えているものの身にもなってほしい。 「さあ、ご奉仕なさい……あなたの、ご主人様に」 「はい……お嬢様」 舐めろといっているのだ。毎朝毎晩、玉のように磨き上げられている奈々子の身体はたしかに綺麗。それは認める。 だがそれでも、好きでもない人間の肛門まで舐めさせられるのは……やっぱり辛い。それでもそのように時間をかけて調教されてしまったから、舌は勝手に奈々子の一番感じるところを這うように動く。 「んっ……いい子ね、いいわよ」 一心不乱に奈々子の身体を舐めている由佳帆の頭をなでる。だからといってその愛情が由佳帆に本当に向けられるわけではない。あくまで、壁に備え付けられているバイブマシーンなどと変わらない。 そう自分は、奈々子のオナニーを助ける道具にしか過ぎない。だったら、お前を汚すための新しい道具を使ってやろう。従順に動きながら、由佳帆の心は嗜虐と反逆に暗く燃えていた。 その由佳帆の道具、蛾歯豚男はやはりいつものように物置から眺めていた。美しいお嬢様と、メイドの少女が全裸でまぐあう様を。オナニーは禁止されたからしない、打ち合わせどおりにことが運べば、オナニーよりもっと楽しめるはずだから今日は我慢。 「にしても……たまんねえなあ。ハァハァ」 触らなくても、カウパーがたらたらと蛾歯の意地汚い男根から零れ落ちていた。
「由佳帆、もう下がっていいわよ……後片付けのときまたお願いね」 いい気なものだ。気持ちよくさせたら、目隠しをつけてまたバイブ遊びか。 目線で、蛾歯に合図をする由佳帆。 そっと部屋に、汚らしい男が入り込んでいる。 ブーーーン 部屋には、まるでうるさいハードディスクのようなバイブマシーンの電子音が立ち込め細かい物音を消している。 もともと、内側の音を外に漏らさないためのウレタンが中の音も緩和しているのだからちょっと気をつけて動けば、目隠しをしている奈々子に蛾歯の行動が感づかれることなどはない。 汚らしい蛾歯の身体が、バイブマシーンの空いた隙間から近づいていく。 バイブの機械的動きは、奈々子を楽しませるために由佳帆が調整しているのだ。 由佳帆の唇が、こらえ切れぬ愉悦に歪む。 (計算どおり……) 気づかない、目隠しをしているだけの奈々子は絶望的に何も気づかない。 そして陵辱にあっても、綺麗な奈々子の身体に醜い豚が近づいていく。 汚らしい男根を挿入する、そして何回か腰を振っていくだけで……果てた。 (あははははははははははは) 喜悦が、由佳帆の胸のうちで爆発した。笑いが、こらえてもこらえても湧き出してくる。 当然のような中出し。あっけない! 本当にあっけない!
こんなに簡単にできるのだ復讐は
汚らしい豚の精液で孕ませられろ。 そんなに汚れたいなら、お前も豚になればいいんだ。 愚かな奈々子! 豚の子を孕め、奈々子! もう無理だ。可笑しさで自分が壊れてしまいそうだ。 そっと外にでて鍵をかけた。これで、蛾歯が発見されなければオールクリアー。 きっと、蛾歯は何度も何度も奈々子を汚すだろう。 いっそ蛾歯が発見されてもいい、私の落ち度はない。 むしろ妊娠したら、蛾歯を見せてやろうか。 こんな男の子供を妊娠したのだと、お前はもう穢れているのだと。 言ってやったら、あいつはどんな顔をするだろう。
見上げた星空は、空に浮かぶオレンジの満月が格別だった。 由佳帆を祝福してくれる夜の世界に。 帰り道を、暗い喜びに包まれて歩いた。
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幽体離脱体験2 |
注:エロ要素ほとんどなし(努力はしました、すいません)
昼ごろ、まだ用事までに一時間ほど時間があったので布団の暖かさに耐え切れず昼寝していると、左手にぼくは何かを持っている。怖くなって、いったん手を離したが、布団越しに何かが左手を掴んでくるような感じ。 どうも、左手に何か幽霊のようなものがいる気配を感じる。しかし、ぼくは幽霊とか信じていないので、恐怖はない。これは金縛りの世界に入ったのだと判断する。この体験のネタをとるチャンス。時間が一時間しかないから、急いで心を落ち着けて幽体離脱の態勢にはいる。 すると、身体が浮き上がった。ほんの少しだけ……。前のような、電気の走るような感じではなくて、両手両足をぞわぞわっとした波が駆け抜けていくような感覚。そのまま、幽体離脱の態勢に入ろうと思って、無理やり身体を浮かせて回転させてみると(この、浮いて回転の感覚が大事)なんと、そこに自分の身体がない!!
いや、普通身体があるほうがおかしいんだが、幽体離脱ではないのだということ。たぶん、幽体離脱よりも浅い明晰夢と呼ばれる状態に入ったのだと判断。壁を叩くと、深くなるという話だったので、壁を叩いてみるが効果なし。焦点をあわせた部分はきちっと見えるが、目の端っこのほうはぼやけている、たとえるなら視力がそんなに良くない世界のような見え方をする。 とりあえず、外に出てみようと思って窓をあけて……網戸に顔が引っかかる!
なるほど、ぼくの明晰夢の世界では壁抜けができないのか。少し浮遊感があるが、空を飛べない。家の道の前に女子高生が歩いているのが見えるが、ここは二階。下に落ちると死ぬような気がするのでやめる。ぽけーっと女子高生を眺めてると、女子高生は向こうのほうに歩いていってしまった。
だめだ、ネタが取れない。 こうなったら、無理やりにでもいってやるとおもって屋根伝いに移動を開始した。家の屋根に昇るなんて十年ぶりぐらいかもしれない。 うまく移動できるように屋根が通じているのは、やっぱり夢なんだろうな。何件目かで若い主婦が、洗濯物を干しているのを見つける。ぽっちゃり目のメガネかけた可愛らしい感じ。 前回、貧乳だったからなこっちのほうがぼくの好み、明晰夢グッジョブ! 窓枠の下に隠れているこっちには気がつかずに洗濯物を次々干している。いきなり襲いかかってもいいのだが、夢を長引かせようと壁を叩きながら(無駄な努力)様子を見ていると携帯電話がなって、電話を取り出した。主婦は、向こうを向いている! チャンスとおもって、おどりかかって「静かにしろ! 動くな!」と怒鳴って羽交い絞め。うわ、やわらけえ。感触リアル! 「あ! わ!」 とかいいながら、主婦は携帯電話を取り落とし、メガネをとってここは目隠しプレイだろう! とおもって、洗濯物から目隠しに使えそうなものを探しているうちに
……夢終了のお知らせ。
グッジョブ訂正、明晰夢のバカ野郎が! 世界の全てがぼやけて、光の回廊が現れてそこを歩いているうちに現実の世界へ。不思議なことに、夢の世界はエロ自由なのだが、そこに入るときと出るときは神秘的というか神聖なイメージが訪れることが多い。 だが、目を覚まして待っているのはフル勃起状態の股間であり、せめてこの高まった思いを抜きたいと思っても用事の時間が迫っており外出さえざるを得ないという現実。 それにしたって、こんなの生殺しだーー!
※ 本日の教訓、明晰夢は時間の余裕があるときに
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第二章「煌びやかな隷獄」 |
初夏の午前、聖上大学のキャンパスを差し込む強い日差しに目を細めながら、今日の講義を受けるために、河相奈々子は歩いていた。一応共学ということになっているのだが、聖上大学はつい最近まで女子大だったので、男性の影がない。 聖上といえば、この国でも随一のお嬢様学校だ。今の時代にあわせて、形だけ共学になっても、入試成績よりも、家柄や寄付金の額がものをいうというこの大学をわざわざ受けるような男子はほとんどいないのだ。 「まるで、豪華な檻のよう」 無駄にだだっ広い教室の一番前に座りながら、奈々子は考える。自分のあたりには、奈々子と同じ、優等生な学生が座っており。中ごろには、普通の生徒。そして、この広い教室でほとんど講義が聞こえないであろうに、あえて一番後ろの席に数人生徒が座っている。 ほとんどの学生が、女性しか居ない環境の気楽さからか、化粧すらしていないのに。その後方の数人の学生は、下着の線が見えそうな細いパンツを履いていたり、胸や尻がいまにも飛び出てしまいそうな薄い服を着ている。化粧も無駄に濃い。 いわゆる『不良』ってやつだ。 彼女らの蓮っ葉な態度を見て、その言葉が、自分の脳裏に去来してふっとため息をつく奈々子だった。 不良だって――私らはすでに成人なのに、馬鹿を言ってろとも思う。それでも、そう言うのが一番分かりやすいのも事実だ。 彼女らは私たちちゃんとした学生とは違う。奈々子は、授業にあわせて送迎されて、授業が終わるとやはり迎えがくる。万が一行方をくらませたら、大騒ぎになるだろう。まるで、囚人と同じだ。自分の周りに座っている学生も、似たり寄ったりだ。 不良である彼女たちは、好ましくないサークルを学内につくって、合コンして普通の学生みたいに大学生活をエンジョイしている。奈々子たちみたいな普通の学生を、飼われている豚だと思っているだろう。それに比べて、自分たちは自由なのだと。そういう態度を彼女らは取っているが、笑わせる。 どうせ合コンといっても、相手はおぼっちゃん大学か、名門大学の学生だ。 付き合ってる相手の素行も、何気に調査されてコントロールされていることを彼女らは知らない。考えもしないのだ。 自分たちが『不良』つまり、望ましくない学生を演じさせられていることが分かっていない。ただのガス抜きなのだ。彼女たちは、自分たちは自由だと思っているが、檻の中から一歩も出ていないのは、講義中この教室の外に居ないことからも分かる。 望ましい姿だけではなく、望ましくない姿すら規定される。これがこの学園、階級の壁の厚さというものなのだ。 一方で奈々子は、そんな不良ごっこに無駄な抵抗にエネルギーを使ったりしない。ちゃんと講義を受けて、無駄な力は使わず、無難な学生を演じるのが一番楽な道だと知っている。馬鹿なサークルにも入らず、講義が終わったらすぐ帰るのだ。 そうして、誰にも知られない――そうあの森の中で、自分だけの最高の時間を過ごす。所詮、飼われた鳥は外に出ても死ぬだけなのだ。自分の内側にこそ、本当の自由があると聡明な奈々子は理解していた。 今日も、昼までの講義が終われば、さっさとこんな場所から立ち去って、自分だけの気持ちいい世界を創るために家に戻るのだ。
午後の強い日差しが、差し込む豪奢な部屋で奈々子は一人食卓につき遅い昼食と取っている。腕のいい料理人が、厳選した素材で作った料理だが、食が細い奈々子に合わせて元々が大した量を出していない。 それなのに奈々子は、前菜もメインディッシュも半分も食べないで残してしまった。 奈々子付のメイド、支倉由佳帆が、デザートのメロンに一口手をつけただけで、手を止めてしまった奈々子を気遣わしげに見つめる。 「今日の料理、お口に合いませんでしたか、お嬢様」 「そうではないのだけれど……これも、下げてくださる」 今日のメインは、奈々子の好きな鱈だったから口に合わないということはないはず。それは分かっていて聞いてみたのだ。 「あの、お体の具合が悪いのでしたら……」 「そうじゃないから心配しなくていいわ」 訝しげに想いながら、無言で由佳帆はデザートのメロンを下げた。由佳帆は心配した振りをしただけで、心配したわけではない。自分の落ち度でなければいいと考えた。 さも憂鬱そうに、皿を片付ける由佳帆に目もくれず自室に去っていった。 「なんなのだろうこの得たいの知れない悪寒は……」 奈々子は暖かい季節なのに、少し肌寒く感じて肩を震わせた。
そのころ、屋敷の裏には由佳帆に捨てられた、奈々子の食べかけの料理を貪り食う蛾歯豚男がいた。 「うひょーメロンまであるよ、甘くてうめぇー」 ぶひぶひいいながら、まるで残飯をあさる豚そのもので楽しく食事をした。 「金持ちの家は、これだからいいなあ」 奇しくも、奈々子と蛾歯は一緒の料理を食べたことになる。 残飯処理を終えて、こんどは森の中の小川で水浴びを始めた蛾歯。 本当は、身体を洗うのは嫌いだが、昨日も奈々子が臭いのことを言っているのを気にしたのである。 山小屋のシャワーを使用したらばれるかもしれないと思って、水浴びだ。 近くに居ても、気付かれないためには汚れを落とすのは仕方が無い。初夏であるから、水浴びをしても寒いということはない。念入りに身体の汚れを落とし、蛾歯はまた廃屋へと戻ってぐうぐうと寝るのだった。夜に備えて。
夜の帳が空を覆うころ、こまごまとした用事を済ませた奈々子は自分の秘密の小屋へと足を運んだ。部屋からそっと出るため、家人や屋敷の使用人などには気付かれない。もう何年もやってきたので、手馴れたものだ。 部屋の明かりをつけると同時に、四方八方森全体に警戒網が広がる。 小屋の中を除いて、いわばこの小さな森は奈々子そのものであり、小屋はまったく安全な子宮に当たる。まさか、その子袋の中に汚らわしい精虫が一匹まじってるとは考えもしない奈々子であった。 あえて、通学につかう大人しい服を着て、自分の愛すべき小屋にやってきた奈々子。隠れて見ている蛾歯は、プンと鼻を突く香水の香りに気付く。 ぱっぱっぱっぱ、っと上着下着を脱ぎ捨てて真っ裸になる。すでに身体には、あえてメイドにコンビニで買ってこさせた安物の化粧品で下劣な言葉やマークを書き連ねた刻印が刻まれている。 「アハハハハ……」 奈々子は、端正な顔をゆがめて精一杯馬鹿笑いをしてみた。 安物の化粧品で、磨き上げられた柔肌を自らで汚していくことに、背筋がぞくぞくする快楽を覚える。 「卑しいメス豚、最低の性奴隷!」 そうやって、自分を罵る。 鏡の前でそっとオマンコを広げて見せる。 「便所穴が……男のチンポをほしがって濡れ始めてる。汚らわしい私」 バイブで奥底まで掘っているから、ぱっくりとオマンコは開く。本当は、クリトリス拡張もしてやりたいのだが、身体に目立った傷を残すことは許されていない。 河相の家格にあった相手と、結婚する運命なのだ。どうせ、家柄と財産だけの中身のない男だろう。そんな男の相手をして人生を送るという運命は、奈々子に人生の空虚さを感じさせる。 かといって、そこから飛び出して生きることができないというのも、すでに二十歳をこえた奈々子の達観でもある。自分の価値を良く知っている、自分は静かに令嬢然としてバックに河相の家の権限があって、初めて価値を持つのだ。 ただ一人の女になれば、ただ少し容姿がいいだけの女に過ぎない。それだけで世過ぎができるほど、甘いものではない。だからせいぜい、いま許された目の前の快楽をむさぼってやる。 本当の自由がほしいとかいわなければ、なんだってほしいものは手に入る。 「あっ……んっ……」 鏡の前で、自分の肉体を弄ってやるのは、まるで鏡の前のもう一人の自分を弄っているようなそんなSとMが入り混じった気持ち。道具も使わずに、ただ指でオマンコをまさぐっているだけで、気分はどんどん高まっていく。 これはただのオナニーじゃない、自分とのセックスのようなもの。 奈々子は、お嬢様然とした自分の外見が嫌いだった。楚々として壁の花を演じていれば無事。そうやって無為に過ごしている怠惰な自分が嫌いだった。 「だからそんなの壊してやる!」 汚して、汚して、鏡の前の自分を考えうる方法全てで汚しきってやって、そこで嫌いな自分は壊れて消える。 「うっ……ぁ」 大嫌いな仮面をはずして、一人の悦楽に耽ったときに沸きあがる陶然。濃い化粧のしたからでも、高揚した身体ははぜて、快楽に頬が染まる。そのときの自分は、本当の自分でだから奈々子はそんな自分が好きだった。 そんな愛憎に心震わせて。 「うっ……」 フルフルと肩を震わせて、逝ってしまう。たったひとりで、孤独で惨めだった。 鏡の前の自分が、惨めで小さくて孤独であればあるほど、こっち側の本当の奈々子の快楽は高まっていく。
一方、山小屋の物置の隙間から覗き込んでいた蛾歯は、奈々子の痴態をみて何度も壁に向かって射精していた。
ドピュドピュドピュドピュ!
狭い物置の中に精子の饐えた匂いが立ち込める。壁にはドップリと、黄みがかった精液が付着していた。何度出しても、目の前に繰り広げられる若い女性の痴態は蛾歯を勃起させる。 チンコがすでに痛くなっていたが、それでも蛾歯は射精をやめられなかった。 鏡で自分の痴態を楽しんでいた奈々子は、こんどは特製のバイブマシーンで自分を虐め始めた。何本ものペニスが、ランダムに奈々子の身体を弄っていく。 襲いたくてしかたがなかったが、それ以上に蛾歯は臆病で恐怖を感じる。襲うような勇気があれば、下着泥棒なんてやらなくて本当にレイプでもなんでもしている。蛾歯の人生はすでに終わっているんだから本当はなんだってできるはずだ。 それでも、怖くて動けなくて、だから自分の欲望を鎮めるためにオナニーを繰り返すしかない。 「ああ……あいつのオマンコに俺の精液を叩き込んでやれたらなあ」 そればかり考えていたが、いいアイディアは思い浮かばなかった。 何度か気をやって、今日は満足したのかわき目も振らず身体をさっとシャワーを浴び、タオルでふき取って、奈々子は山小屋から出て行った。 あとには、五回も射精してつかれきってクタクタに寝る蛾歯だけが横たわっていた。
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第一章「山小屋」 |
「ふむ……」 廃屋同然の山小屋のはずなのに、似つかわしくないほど厳重な鍵がかけられている。扉を打ち破ってなかにはいろうとおもったのだが、なぜか勘がそれを辞めるように諭すため一回りして窓を調べることにした。 廃屋に相応しいおんぼろのガラス窓を覗くと、物置にあたる部分なのか雑然と用具が並べられている。物置の側の入り口には、内側から申し訳ない程度のひっかけるだけの鍵がかかっていた。こんなものは、窓のしたに板を滑り込ませて力を込めて跳ね上げるだけで……外れた。 形跡をなるべく残さぬように、そっと中に侵入すると、林を管理するために、森番が使っていたと思われるような道具が雑然と並べられている。長らく放置されていたという証明のような堆い埃には、よくよく観察すると最近物色したと思われる形跡が残っていた。食料はなかったが、幌や毛布はある。寝床としては十分だろう……ここが無人の小屋であればの話だが。 扉の向こうからは人の気配はない、そっと扉をあけてみるとやはり無人だった。 「あっ」蛾歯は、驚いた。 まるでSMクラブの部屋のような道具が所せましと並べられ、ログハウス風であるはずの壁は防音処理加工に覆われ、中心に巨大なバイブマシーンが鎮座していたからだ。窓もつぶされていたから、外からは中の様子は分からない。さすがの、蛾歯も言葉を失う。いったいなにがここで行われているんだ。 最初に考え付いたのが金持ちおやじのSM趣味なのだろうということだ。外側からは廃屋に見せかけているのも趣味で。ここで、淫蕩にふけるのかもしれない。 だとすると、ここでじっと覗いていればいいものが見られるかもしれない。蛾歯は持ち前の手先の器用さで、物置の道具を使って小屋の物置から中が見えるように覗き穴を空けて、物置に寝床をしつらえて潜むことにした。
「卵の腐ったような匂いがするわね……」 頑丈な扉をあけて、河相奈々子は呟いた。その匂いは蛾歯の匂いだったのだが、隣の物置に居る蛾歯は睡眠中であったため、その気配に気付くことはなかった。奈々子は、近いうちに、掃除をやり直させなければならないとおもっただけだ。そして、蛾歯のほうは気がついて目を開けた。 「女の声だ……」 蛾歯の意識は急速に覚醒していく。気がつかれぬように、静かに静かに身を起すとそっと覗く。やはり女だ……女が一人で服を脱ぎ始めている所だった。無意識に蛾歯はオナニーの態勢にはいり、自分の粗末なものを握った。すでに勃起していた。
「うん……うんしょっと……」 すべてを脱ぎ捨てて全裸になると、奈々子は柔軟体操を始めた。全裸でジャンプする奈々子、そのたびにDカップの形のよいバストがゆれる。 ブリッジ、蛾歯のほうにオマンコを見せ付けるように体を極限にまでそらせる。その扇情的な光景に不覚にも蛾歯はドピュっと精液を発射してしまった。 「う……う……」 隣室でまるで豚のようにうめいている蛾歯に気がつかず、奈々子は完璧な運動を終えた。気持ちのよいSMオナニーにとって、体をやわらかくしておくことと適度な運動によって火照らせておくことは重要なことなのだ。 温かい季節なので、多少汗ばむが、やり始めればもっと汗をかくことになるので気にしないことにした。 「いずれシャワールームも作りたいわね」 奈々子は独り言を呟いてみる。独白は、一人っ子で家に閉じこもりがちだった深窓の令嬢たる奈々子の子供時代からの癖だ。 ここに、シャワールームを作るとなると、ことが大きくなるので、無理かもしれないが行水ぐらいなら何とか成るかもしれない。
「さて、運動はこれぐらいにして……」 頬を赤らめて奈々子は目の前の大きな鏡を見る。そこには、汗ばんで熟した体をもてあましている二十歳の哀れな女がいた。 「まるで雌豚ね……奈々子は」 自分自身にそう、被虐的な言葉をかけてみる。妖艶とは程遠いはずの清楚な印象の奈々子の横顔に、笑みがこぼれた。すこしだけ、妖艶な女になれたような気がした。 「雌豚には罰を与えなきゃね」 鏡の向こう側の自分に命ずるように、奈々子はいった。普段大人しい奈々子からは想像もできないような声色だ。鏡のこっち側の奈々子はS、鏡の向こう側の奈々子はそれに虐げられるMなのだった。 まず体中に、「おまんこしてください」だの「種付け中一回百円」だの卑猥なセリフを書き、太ももにチンコマークやオッパイ全体を使ってオメコマークなど、M女がよく書いているようなペイントを全身に施す。 「ふふ、豚め……」 こうして、身体に化粧を施すことで令嬢から、一匹の哀れなM女へと奈々子は変身を遂げるのだ。 次に「体を傷つけないやさしい拘束」が歌い文句の、NASAの開発した(嘘か本当かしらないけれど)特殊ゴムで作られた拘束具で、その形のいい胸を強調するように巻き付ける奈々子。 特殊ゴムの帯は、吸い付く様に奈々子の汗ばんだ巨乳を締め上げ、歪な形に屹立させていく。 「うふふ……いい形だわ」 まるで、乳を吹き出さんとするかのように拘束によって変形された胸の先端をしごく奈々子。それを隣室で見ている蛾歯は、次第に勃起していく乳頭に小さくうめきながら、たくさん放出したというのに、休むまもなく逸物が勃起していくのを感じていた。時間はすでに夜半をまわっている。 裸電球のオレンジ色の光に照らされた奈々子の体は、いやがおうにも蛾歯の欲望を掻き立てる。レイプしてやりたかったが、なにが起こるか分からない私有地で、そこまでの勇気はない蛾歯は、ただその美しくも妖艶なショーをみて、勃起したものをしこるしかなかった。 蛾歯がしこっている目の前で、さらに奈々子は鏡の前の自分自身に売女や醜女などと、月並みな汚い言葉を吐き掛けつつ次第に体を拘束していく。 実は、この森小屋の周りには素人作りながらセンサーが張り巡らされ、万一にも誰かが近づけばすぐわかる仕掛けになっていた。小さいながらも、まさに要塞。そのため、奈々子は安心してよがることができた。 そもそも、奈々子の邸宅には使用人しか住んでないし、森の方には年に数回庭師が手入れに入るだけだ。まさか、センサー起動前に隣室に汚い男が転がり込んでいるとは思いもしなかった。盲点だったのだ。 「あ……きつい……ふぅ……」 キュッと摩擦音を立てながら、器用に体を拘束していく。体の自由を奪うたびに、深い快楽を味わう奈々子。 まるで、体に装飾を施すようにゴムを巻き付けた後は、鏡の前でただひとつ自由に動かせる右手でオナニーを始める。 高ぶった体を焦らすように、最初は撫でるようにそして徐々にクリトリスを中心にゆっくりと膣全体を愛撫していく。まるで、右手だけが奈々子から独立して、自分の意志をもっているかのように自由に奈々子の体をまさぐり回り、じらじらし長い時間をかけて絶頂へと導いていく。 なにをやらせても、如才ない奈々子はオナニストとしても、この歳で高水準に達しているといっていいだろう。 「うっ……もう、堪え性のない雌ブタね……軽くいっちゃう……うぅ……」 それを見ながら、蛾歯もまた軽くいっちゃうのだった。 「ハッハッハ……フゥ。さて、次に行きましょうか」 一息ついて、快楽をかみ締めるようにすると手馴れた手つきで、手元のリモコンを操作する奈々子。一通り操作して、リモコンをほおるとあとは部屋の中心のバイブマシーンの台の上に寝そべり、目隠しをして唯一動いていた右手も拘束して力を抜く。 エロティックな芋虫になった奈々子は、ただ台の上で寝そべって大股を開く。ちょうど、それが蛾歯からは、股をひらいた部分がよく見えて、たまらないものがあった。 蛾歯が覗き穴から見る奈々子のオマンコは、たらたらといやらしい液を垂れ流していた。まるで中世の拷問道具のようなバイブマシーンは、その特徴的な嫌らしい音を立て始めた。 ここから先は、実にランダムな動きでこのエロマシーンは奈々子を陵辱する。まず上から手が伸びてきて、奈々子の首筋からそってそっと胸に至ったと思うと急に猛烈な勢いで乳頭をひねる。 「ひぐ!」 これは痛い、そのあとは激しくすると思ったら、実にソフトに乳房をもみあげる。 「あぁ……いぃ……」 奈々子は、マシンが動くたびに素直な快楽の声をあげる。身体は完全に弛緩しており、マシンの手の愛撫は胸に股に、身体全体へとランダムに時には強く、時には優しく甲乙織り交ぜて、奈々子をあきあせない。 やがて、股がネットリと濡れてきたというほどに、マシーンから黒々とした男のカリぶっとい男根を模したペニスが降りてきて、いきなり深く奈々子を貫いた。 「ふぐぅ……ふかぃ……いぃ」 このペニスも何種類かの多彩なペニスが大小取り混ぜていろいろ用意されておりランダム。つまり、誰か分からない男に犯される自分をイメージして喜んでるのだ。 時には嫌がってみせて、そういうレイプされプレイを楽しんだりもするのだが、この日は、素直に自分の快楽の波に身を任せるプレイにしてみた。 「いぃ……もっと深く突いて!」 そうやって、腰を深々と反応させる。そうやっていっても、マシンは強く突いてくれるとは限らない、じらして浅くしか来てくれなかったり、そうやってじれったさを感じている途端に急にピストンの具合をあげたりする。 「ふぁ……あぁ……あぁぁ」 だから、いつも新鮮で全身をマシンに任せて、オナニーを一人でしているような空しさを感じずに、一人SMプレイを存分に楽しむことができる。 急にマシンのペニスの根元の部分が収縮して、ドクンっと液が流れ出してきた。 「はぁ……来て! 中に来て!」 これが、まるで男が射精する瞬間のようにマシンもピストンをあげるのだ。本当によく出来ている。
ドピュドピュドピュドピュ!
たっぷりと、中に擬似精液を注がれて、満足の声をあげる奈々子だった。中出しのバージョンだけではなくて、全身にぶっかけられたり、フェラチオで口内にそそがれたりといろんなバージョンがある。 擬似精液は、たんぱく質と多糖類で作られてるので人体に害はないし、飲んでも美容にも優れた栄養食品といってもいい。だから、二発目のオマンコしたのとは違う小さめのペニスが口をイマラチオして、ドプドピュと精液を発した時は、ドクドクの飲み干してしまった。 「ふぅ……おいしい」 味はおいしいものではない。あくまで擬似精液なので、それこそ苦味もそれなりに似せて作ってある。だから、まだ本当の男の精液を飲んだことがない奈々子は、こういうものなのかと思うのだった。 結局、また違う形のバイブと中出しセックスを終えて、マシンの一連の陵辱は終了した。これもランダムで、一発で終わったり五発終えてもまだやられたりする。ここらへんの自分でさじ加減をしないあたりが、リアルでいいと奈々子は思う。 「ハァ……ハァ……」 動きを止めたマシンの上で、口と股から精液を垂れ流しながら、恍惚とした表情で目隠しをした奈々子の形のよい口は、喜びに歪むのだった。 身体の火照りが収まり、冷静な判断力を取り戻したころ。そっと時間をかけて、右手から奈々子は拘束を解き、目隠しを外して手馴れた手つきで次々と拘束を解いていく。そうして、十分後には完全な後片付けを終えて、その場を後にする。 出る前に、装置のボタンさえ押しておけば、室内洗浄器が全ての痕跡を洗い流してくれる。擬似精液も、毎回変えているので今日も全部放出させて、その放出っぷりを目で楽しんで笑った。 そうして、奈々子が去った暗闇の中で、蛾歯は考える。 「また、明日も彼女は来るだろうか」 きっと、来るだろう。そんな予感がした。そのとき、自分にできることを考えながら蛾歯はまた、ゆっくりと眠りについたのだった。
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序章「蛾歯豚男の侵入」 |
なに不自由なく育てられた河相家のお嬢様、河相奈々子二十一歳。河相財閥の資産に広大な邸宅、恵まれた容姿、お嬢様大学の現在三回生という最善の環境にありながら、彼女にはやっかいな性癖が一つあった。それはSMオナニー好きだということ。彼女自身は処女なのだが、すでにその穴はバイブによって打ち破られていた。 天性のSM女である彼女は、自分が虐げられれば虐げられるほど快楽に酔いしれるという困った性癖であったのだ。 もちろん、彼女にも常識は人一倍あったので、彼女は自分の性癖をもてあましつつ成長していく。金持ちであっても、自らのプライバシーを守り通すということは難しいことだ。 そこで、邸宅を離れ自らの広大な敷地の隅っこの廃屋になっている森の山小屋を利用して、奈々子は自分の城をつくることにした。誰にも気がねせず、ただ淫蕩な快楽に耽るためだけの城である。 そこで彼女は、夜な夜な激しいSMオナニーを繰り返して、その程度はどんどん過激さを増していった。 そうして最終形態である「セルフ目隠し拘束伝動バイブオナニー」の開発に成功したのであった。 原理は簡単である、自ら全裸になり目隠しして完璧な拘束をかけ股をぬらしてねっころがる。そして壁に付属されているオナニー兵器が、伸びてきて完璧な愛撫を施す。ほどよく(時間にして二十分ほど)愛撫が完了したら、壁よりまた伸びてくる人間の男根にもっともよく似せた人肌バイブが、奈々子の子宮へとどけとばかりに突き上げられる。 予測ができないように、乱雑に様々な角度でつきあげられたあと、バイブからはこれまた人肌に暖められた擬似精液がドバドバー!と発射され、奈々子は恍惚としながら 「うう!」といってしまうのだ。これを3セット、続けたぐらいで彼女は幸せな眠りについてしまい、夜が白けるころに起き上がって家路に就くという寸法である。 誰にも迷惑をかけずに、奈々子も気持ちいいはずであった。だが、ある予測不可能のことから彼女の人生は転落していく。 一方、こちらは蛾歯豚男という芸名だか本名だかもわからんような、中卒デブオタヒッキー三十五歳。蛾歯は、昔エロ漫画書きや似非イラストレーターのような仕事をしていたが、いい加減な仕事ぶりからその仕事もこなくなり、こうしてぶらぶらと町をさ迷い歩くだけの半ばホームレスのような生活を始めた。 もともと、風呂嫌いだから、風呂に入れないで悪臭が漂うのも気にならないし、腐りかけた残飯を漁るのだってこれまでと似たような食事だからたいしたことはない。 「なんだ、働かなくてもかわんないじゃないか」 これが、蛾歯のホームレス入門の感想であった。 こうして暇を持て余せてしまえば食い物を捜し歩くついでに、街を練り歩くしか暇を潰すすべがなくなる、警察につかまって牢屋にほおりこまれたところで生活がかわりもしない蛾歯のことなので、大胆な下着泥棒をしてみたりして、居られない場所を増やしていく。 ついに、寝床をもとめてこんな林の中にまで来てしまった。途中に塀を乗り越えたりもしたので、漠然と誰かの私有地なのかともおもったりもしたが、とりあえず今日の寝床を探さないことには眠りにもつけない、そんなことを考えながらとぼとぼとあるいていると、偶然にも小さな森の中にお誂え向きの山小屋を発見したのだった。
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幽体離脱体験その1 |
BBSで、幽体離脱の話をしてたんですが、そのついでに、幽体離脱のWEBや仕方などを見ていました。 すると昨晩、生まれて多分はじめて幽体離脱体験をしました。自分でも影響のされやすさに呆れます。 最近、更新が滞ってることもあり、なにか書かないと思うので体験の雑記を書いてみたいと思います。 物の本によると、一度すると何度もするようになるそうですので続くかもしれません。
ちょっと、いつもより朝早く起きる必要があったんで早めに寝たんですよね。 思えばこの段階からおかしかったです、小説がよく書けるときにある霊感というかインスピレーションというか今夜はそういう張り詰めた空気が自分の周りに張り詰めてるのがわかりました。 「あー、いま小説書きたいなあ」と思いました、けど時間がないので寝ます。 司馬遼太郎の「竜馬が行く」の影響で、早く寝たいときは足の裏で呼吸するとかそういうことをやっていつも無理やり寝てます。その、無理やり寝るのが悪かったのか手足がぐんぐん重たくなってきてしまいました。 「あーこれ、金縛り来るな」と思ってました。 まさに、身体が寝て頭がおきてる状態ですね。辛かったので、寝返り打ったらその瞬間にピリッと身体に電気が走りました。 でも、頭が妙に覚醒してるので、そのときに昨晩読んだ幽体離脱の話を思い出したんですね。 どういう感じだったかなと、やってるうちに身体と意識がずれ始めまして、宙にくるっと身体が一回転するように浮いてしまいました。 自分の寝ている顔を見下ろして、もうこれは、どうしようもなく幽体離脱しているとしか。 いい機会なので、壁を通り抜けて隣の家に行ってみることにしました。 窓からすり抜けるときに、ぐっと抵抗があってそれでも抜けると二階だったのでストンと下に落ちました。 それで、庭を通って隣の家の勝手口から入りました。普通に雑然とした、台所です。 まだ、朝方というか深夜の時間帯です。このときは気がつきませんでしたが、普通に真っ暗のはずなので明かりがついているように見えたのはおかしいですね。 とりあえず、ここにいても仕方がないので、二階にあがりました。 二回に女の子が寝てました。結構、物が多くて机とかもあって手狭な部屋にお布団をじかに敷いて寝てます。女の子らしくない部屋だなあと思いました。 寝ている女の子の様子を見てると、背が高めの十代後半ぐらいの女の子ですね。 隣の家には女の子いますが、こんな子じゃないです。つまり、ここでぼくが夢遊病などではなく百パーセント夢ということは確定っと。 まあ、当然いたずらしますよね。 「寝てるところを襲うのは主義に反しますが、これも小説の参考にするため……」 布団を跳ね除けてみると、普通に触れました。 「ああ、小説の参考のため、辛いなあ」 などといいながら、笑顔で剥いてきます。 派手な柄のスプライトが入った、下着つけてます。安物で子供っぽいなあ。 ブラは寝るときはずす人多いらしいですが、この子はつけてるみたいですね。ソフトブラみたいだけどね。 ああ、貧乳だ……。もうブラはずす前からわかってたんですが、恐ろしいほどに貧乳です。 「うっす……」 スリムな身体に、申し訳ない程度に乳首がついてる感じ。 うちの小説読んでると分かると思いますが、ぼくの趣味はどっちかといえば巨乳派のほうです。夢も気が利かないなと思いつつも、ぼくは貧乳の子とは付き合ったことなかったので、興味はありました。本当に小説の参考になりそうです。 乳頭舐めてみると、ちゃんと乳頭は感じるみたいです。後から考えるとほかは微妙にぼやけているんですが、乳頭だけはものすごいリアリティーです。なんというか濡れ具合が……うーん、なるほど反応がよりダイレクトなので、これはこれで可愛いかもしれないな。 とりあえず、下も降ろしてみると薄毛です。とりあえず触ってみると、微妙に濡れてるような。 ……っとっここら辺で時間が来たようです。魂が引っ張られるみたいに、自室に戻されて覚醒しました。
こっから先、エロ要素なし。金縛り状態は続いています、ここでさらにもう一回幽体離脱は無理っぽかったです。覚醒レベルが高すぎたのだと思う。 というか、トイレに行きたくなったんですよね。それで、トイレに行こうと起き上がってトイレに入ったんですが。 この段階で察知できてます……この身体の重さは、これはトイレの夢です。 トイレに行く夢を何度も見る人は、もう幽体離脱してるのかもしれません。 とりあえず、漏らすわけにもいかないので、必死に覚醒しようと繰り返してたぶん一度意識が切れて深く眠ったと思います。 それで、ようやく起き上がってトイレにいけました。 もうすでに、薄っすらと外が明るかったんですが、このときのトイレの鮮やかなこと。ぼくの右脳が鍛えられていないのか、それとも夢の世界はもともとぼやけているのか、おんなじトイレに入るというシチュエーションで夢と現実を比べると、やっぱり現実の世界の鮮やかさが目立ちます。というか、夢をみて現実の世界の鮮やかさに気がついたという感じ。きっと、幽体離脱して見た夢の世界もこんな感じで現実よりはぼやけていたんだとあとあと思います。女の子の乳首だけは、すごくリアルでしたが。
文献を読むと、幽体離脱と信仰を結びつけたりしている人も居ますが、ぼくは無神論者なので人が意識的に左右できる夢であるという推論をします。どういう理屈でなるか分かっていれば、結構面白いものです。寝るときに暇があるかたは、一度やってみると面白いと思いますよ。
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終章「飛び出した空」 |
ベットのなかで、河田がすがりついた美優の足も震えていた。 どうやったのかは河田には分からないが、追い払ってくれたらしい。 「妖精さん……私がんばったよ……なんとか妖精さんを守ったよ」 怖さなのか嬉しさなのか、美優はポロポロと涙をこぼしていた。 「だから、妖精さん……今度は妖精さんが私を守ってよ」 そうお願いされて、握られた小さな手の暖かさに、河田は覚悟を決めた。 「分かったよ、やれるところまでやる」 美優が助けてくれなければ、さっき捕まって殺されていたかもしれない。 だったら、美優のために命を賭けてもいい。 もしかしたら、失敗するかもしれないけど。 「いっしょにいこう、いけるところまで!」 もはや、この握られた手を二度と離すつもりはなかった。
河田に覚悟が決まったとしても、絶対絶命の状況が変わることはない。 幸いといえば、律子が自分たちがどう警備しているかをご丁寧に説明してくれたこと。 律子が、美優が敵対行動をしていると判断しているなら、それは言うべきではなかった。美優の突然の威圧に、動揺して犯したプロらしくないミス。 そこに、つけこんで屋上まではいけた。 とりあえず、透明になるための海水を手に入れるためである。 通路に配置しておいた海水が全て廃棄されていたのは痛かったが、部屋の海水が捨てられた時点で、気づかれているのは想定の範囲内だった。 だが、屋上の海水だけは無事だと信じていた。 一人のほうが逃げやすい、だけどちゃんと美優と二人で屋上まで駆け上がった河田が向かったのは、屋上にある立派な給水塔だった。 どんなマンションでも、いったん屋上に水を貯めてから下に流すために、必ず貯水タンクが設けられている。給水塔の影にも、粉末状にした海水を隠していたのだが、完全にマンションを探索したらしい警備員の手によって廃棄されていた。 しかし、そっちはダミーでさらに奥の手が用意されているのだ。 「ちょっと待っててね美優ちゃん」 そうして、給水塔のハシゴをあがりタンクの中へとザバンっと、身を投じる。 タンクのそこから、透明な容器を持ち上げて外にでる河田。 容器には、海水がたっぷりと二リットルは入っている。 木を隠すには森の中。海水は……そう、水のなかに隠せば見つからない。 当然、勤勉で優秀な警備員たちはタンクの中も覗いて調べたことだろう。 しかし、水の中の透明の容器と中身の海水は上から見るだけでは分からない。 透明になる海水がばれるかもしれないというタイミングに、さらに奥の手を考え出して準備しておいた河田は、やはり並みの犯罪者ではないといえる。
海水をざぶりとかぶり、瞬く間に透明になる河田。 「あれ、それ透明になるお薬? じゃ、私も」 そういって、美優も一緒に海水をかぶる。 「いや、美優ちゃんは……!?」 そうすると、美優の身体もゆっくりとだが透明になっていき、消えた。 服を脱ぎ去れば、河田と同じ透明人間だ。 「いったい……どうして……なぜ」 透明になった美優は、クルクルと踊る。 「あは、これ透明になるお薬なんでしょ。だから、私も透明になったよ」 なぜ、こんな現象が起こったのか。 そのときの河田には考える余裕すらなかった。 ここ一番というときに、更なる奇跡を起こしてくれた神に感謝するしかない。 それでも楽な仕事ではなかったが、二人とも透明になった好機をいかしてフェルリラントを脱出することは難しくなかった。 そして、その足で国外に脱走することも、この日のために準備を整えていた河田たちには容易なことだった。 それにしても、なぜ美優まで、透明になれたのか。 これは、あとで河田が考えた仮説だが、あのマンションの屋上に到達したとき。すでに美優は懐妊していたのではないか。 つまり、透明になれる河田の身体の一部をすでに身に宿していたから、美優は透明になることが出来たと……だとしたら、そう望んでくれた美優が起こしてくれた奇跡といえないこともない。 美優の不在に、警備が気づいたのは河田たちが脱出してから半日も経ってからだった。すぐに警察に連絡するとともに、律子たちも追ったが半日の遅れは、致命的だった。美優の実家である小家の家も動いてくれたようだが、そっちは極秘調査でいち警備会社の経営者であるだけの律子には知らされなかった。ただ、国外へ逃亡したのではないかという説が有力だという話だ。
その後、マンションに部外者の侵入を許したことに加え、美優の誘拐事件、さらにマンションの住人二人の妊娠事件があり、その全ての責任を問われた枝川律子はフェルリラント管理の任を解かれる。 フェルリラントは、違う警備会社が警備を担当することになり、表舞台から締め出された枝川律子は会社を畳み、別の手段での出直しを余儀なくされる。 全てが遅きに失したことを歯噛みして、屋上に残されていた唯一の遺留品、透明のペットボトルと美優の脱ぎ捨てられた衣服だけを握り締め、律子は結局見つけることができなかった侵入者への復讐を心に誓った。 放逐された獣は、また野に放たれたのである。 フェルリラントを落城させた河田の足跡は、アングラサイトに残り。 伝説の変態として、長らくその功績を称えられることになるのだが。 そのころ河田は……。
どこまでも広がる青空を見上げて、河田は視界に広がる砂浜の美しさにしばし目を奪われていた。 「そういえば、こんな海から始まったんだったな」 自分たちの国のあの騒がしい海と比べて、この国はまだ開発が進んでいないせいか空気が綺麗で、海も澄み渡っている。 たしかに、国の経済レベルは比べ物にならないほど不便で貧しいけれど、ここにはそれ以上に豊かな自然がある。 そんな感想を持てたのも、自分が変わったからかもしれない。まあ、ここが金持ち向けのリゾートだからそんなのんきなことが言えるのであって市街地であれば、また違った感想を抱くのかもしれない。 「でも、落ち着いたらこの国の町も見に行ってもいいかもな……」 誰も居ない砂浜を散歩した帰り道、河田は道端に咲いている綺麗な花を見つけて摘んで帰ることにした。自分の国にはない、綺麗な紫色の花だった。
「美優、帰ったよ……」 窓際で、やはり空と海を見ていたらしい美優が振り返った。 「あ、綺麗なお花」 そういう美優のお腹はすでに目立つほどの大きさになっている。 安定期に入っているとはいえ、この国の日差しは少し強すぎるから、日中は無理をさせないようにホテルに居てもらうことが多い。 子供のころから一人で過ごすことが多かった美優だから、取り寄せた好きな本でもあれば、一日でも静かに過ごしている。 それでも、やはり河田と話しているときが楽しそうに見える。 河田は、もう美優の唯一の家族なのだから。 そして、あと何ヶ月かすればもう家族が一人できることになるだろう。 花瓶に水を入れて、花を一輪挿しにして振り返ると、美優が上着を脱いでいた。 「えへへ……あのね、実はね」 妙に嬉しそうだ。 「おっぱいが出るようになったんだよ、飲みたがってたでしょ」 そういって、さらに豊かになった胸をそっと河田にさし出して、美優はほころぶように笑う。 美優がはじめて出した母乳の甘い味は、もちろんたまらなくおいしかったのだが。 「おいしい?」 「うん」 「……よかったね」 そういって河田を喜ばせたと喜ぶ、美優の笑顔がもっと嬉しかった。 愛しさにたまらなくなって、美優を抱きしめた。
たとえどんなに河田が美優を愛していたとしても。 あいかわらず河田が、優しい彼女を騙し続けていることに違いはないのだ。 そして警察も、政財界に権力を持っている小家の実家も、あの警備員たちも、この瞬間も、自分たちを追い続けていることだろう。
それでもどうか、この奇跡を起こしてくれた神様が本当にいるのなら。 どうか、どうか、あとひとつだけ、無理なお願いを聞いてください。
美優とずっと一緒に、この世界で生きていけますように。
世界で一番大事なものを抱きしめて、河田は澄んだ空の向こう側に深く祈った。
「女の城」完結 著作ヤラナイカー
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第十八章「袋のネズミ」 |
「妖精さん、今日もいっぱい出したね……お股がドロドロ」 「もう、妊娠してるかもね」 「そういえば、生理こないなー」 そういって、河田と美優が睦み合っている間にも破局は迫っていた。
「これが、磯の香りがした原因か。よくやったサクラ」 隊員の水品サクラが、通路に巧妙に隠されている海水のパックを発見したのだ。種が割れれば簡単だった。何に使用されているか分からないが、この海水が鍵であることは一目瞭然。 同じ方法で隠されていた海水は全て回収されて、そしてその配置からこの混乱の原因は四階の小家美優の部屋だということも分かった。 「あの小家の天然お嬢様の部屋か……問題ないだろうサクラ、梨香ついて来い一気に突入するぞ!」 「あの部屋に入るなら、声ぐらいかけた方が」 「馬鹿、侵入者が居たら逃げる隙を与えることになるだろう、行くぞ!」 合図と共に、南雲梨香がマスターキーで扉を音もなく開けて一気に走りこむ。
水品サクラは入り口から、南雲梨香は奥の浴室から調べるために走ったようだ。 部下に探索を任せて、ゆっくりと美優の寝室へと近づいていく律子。 「お嬢様……失礼しますよ。実は賊が入った可能性がありましてね、お部屋を調べさせていただくだけです。すぐ済みますよ!」 有無を言わせぬ口調だった。 まさか、すぐに飛び込んでくるとは思ってなかった河田にとっては絶体絶命のピンチだった。 お風呂場に一人走っていったから、河田が透明になるための海水は、片付けられたようだ。そして、もちろん河田の姿はいま透明ではない。 河田は、なすすべもなく布団をかぶり美優の足元あたりに隠れる。 もう無理だ、美優にすがり付いてガタガタと震える河田は、走馬灯の向こう側に死んだおばあちゃんを見ていた。 河田のピンチを悟った美優は、すっくと半身を起こすと。 静かに、近づいてくる律子に身体を向けた。
―― さ が れ ――
そう美優は声を上げた。 叫んだのではない。いつもと同じように小さい声で、しかし一語に力を込めてはっきりとお腹に力を込めて、下がれと命じたのだ。 布団のなかでなさけなくも美優の脚にすがり、命の危険に震えている河田には、口調はともかくもいつもの優しい美優の声と変わりなく聞こえるのに。 その声は律子の耳に、頭をハンマーで叩かれたように鋭く響いた。 ベットに立ち寄ろうとした脚がぴたりと止まり、衝撃によろめく。 「……何だ、この威圧感は」 美優から受けたたったひとつの言霊に、身体が総毛立ち……背筋をひやりとした汗がつたる。 幾多の戦線を駆け抜け、千の敵を前にしても屈することのなかった律子の脚がよろめいているなど。 信じがたいことだった。ありえない、あってはいけない! 「隊長、どうしたんですか」 水品サクラは、何があったかも分からずとりあえず、大きく震えて倒れそうな律子を支えようと駆け寄るが、その手を振り払って前に進もうとする律子。 敵がいれば打ち倒し、壁があれば打ち砕く……そうしなければ生きられなかった律子だからこそ進む。 四肢に力を込め、くいしめすぎたのか律子の歯から血が流れた。 だが手足が、まるで自分のものではないように重く震えた。
「聞こえなかったのか、枝川律子――私は、下がれと、言った」
響き渡った静かな言葉に、ガクンっと律子の身体が落ちた。 もう、律子の身体は動かない。 「馬鹿な……私は」 枝川律子だ。生まれついての指導者、何者もさえぎることのできない力そのもの。 祖にさかのぼれば、この国がまだ帝国といわれていたころの大戦の英雄、枝川陸軍中将に至り、代々指揮官であり続けた誉れ高き家系である。 律子の父は、戦後の体制に飽き、国外に渡ってまでも戦士であり続けた。その血は彼女にも受け継がれ、常に場を支配する力の源になっている。 身に染み付いた遺伝子レベルから、勝利し続けてきた絶対の指導者。
しかし、生まれつきという意味でいえば。 その律子の目の前に居る柔和な少女が背負っているものは――さらに上だった。 小家美優は、祖をさかのぼればこの国を支配した近衛二十三家のうちのひとつであり、それよりもさかのぼってしまうと、恐れ多くもこの国のもっとも古い……あのロイヤルな血筋に突き当たってしまう。 それは絶対の不可侵を意味する系譜である。
「しかし、一応調べさせ、て……」 ゆるりと贅を尽くしたベットに横たわる少女の冷然とした目に、なおも抗弁しようとした律子の声が凍りつく。 それはいつも見慣れた、目下の者を親しげに名前で呼び、ねぎらうことを忘れない優しげな少女の瞳とまったく変わらないはずなのに。
動物にたとえるなら律子は、食物連鎖の頂点に立つ雌豹であろう。 だが、その律子の目の前にある優しげな少女を動物にたとえれば。 「ムツゴロウさん……?」 なぜか、水品サクラは美優にちょっと昔に、日曜日のほのぼの動物番組に出てきた動物王国の国王のオーラを感じていた。 彼がひとたび優しげに頭を差し出しただけで、荒れ狂う巨象もうやうやしく跨いで通り、猛り狂った雌豹も尻尾を振って甘え、その無防備な喉に牙を突き立てることはない。 地球上のどのような猛獣も、彼の命を奪うことはできない。 それはなぜか。 動物的勘。いや、それ以前に動物の本能が告げるからだ。
このものに従えと!
このものこそが、万物の霊長であるのだと!
血塗られた獣ですら、譲らざる得ない何かがそこにある。 「いや……それ、では……くっ、下がらせて、もらいます」 まるで、自分の口が自分のものではないような違和感を律子は感じていた。 それでも、警備員で付近の通路とマンションの入り口をぴっちりと固めているということ、何かあったらすぐ人を呼ぶようにとは確認しておいた。 その間も、美優は静かな瞳で律子を凝視し抑え続けることをやめない。 「ちょ……え、なんで。本当に下がるんですか」 「馬鹿……行くぞ、サクラ、梨香」 限界を悟った律子は、最後の自尊心を振り絞って震える足を隠し、部下を連れて早々に部屋を退出する。 出たとたんに手足の動きが自由を取り戻したことにすら、強い屈辱を感じる。 律子は、失礼にあたらないように配慮して引いたのだと自分に言い聞かせた。 管理権限からいえば、ベットをひっぺがして調べても問題なかったのだ。 それを、小娘ごときに引いたなど律子のプライドが許さない! だが、マンションの入り口さえ押さえておけば、美優が守っているらしい”なにか”が居たとしても逃げ出せるわけがない。 袋にねずみが入ったなら、捕まえたも同然だ。 そして虱潰しに追い詰めて賊を確保した、そのときは――
「あの小娘の目の前で、なぶり殺しにしてやる」
そのための力が、権限が、律子にはある。 あの小娘は、そのときどうするだろう。泣き叫ぶか、地に跪いて許しを請うか。 しかし、律子の残酷さはそれを受け入れることなどない。 そして、あの小生意気な娘は、自分の無力さを思い知ることになるのだ。 それを思えば機嫌も直ったのか、笑みを取り戻しマンションの入り口に自ら立った。 いかに小娘が逆らおうと、外なる敵から守り、内なる敵をひねり潰す自分の警備システムが敗れるはずがない。 すでに警備員はフル稼働で、四方八方に散っている。 「私の心を傷つけたものは、みんな死ぬんだよ……」 律子の小さな黒い呟きを、周りの警備員たちは聞くことはなかった。 美優の助けで窮地は切り抜けたものの、河田の絶対絶命の状況に違いはなかった。
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第十七章「包囲の輪」 |
カーテンが開け放たれ、昼前の強い日差しが河田の目を覚まさせた。 すでに季節は夏の盛りを迎えている、空調が効いた室内といえど強い日差しまでは遮断することはできない。 エリカのベットでそのまま眠ってしまったのか。 最近はエリカの生活のペースや、睡眠薬の効き方などもすっかり把握してペースを掴んだために油断して、そのまま近くで寝てしまうこともよくある。 エリカの身体は、とてもうまいのだが、興奮しすぎて体力の限界まで陵辱してしまうから河田も疲れるのだ。 透明とは言え、生身なのだから美優の部屋以外の場所では気をつけないとなあ。 そんなことを寝ぼけた頭で考えて、それでもうだうだとベットでゴロゴロしていた河田の顔スレスレを、何かが通り過ぎていった。 (え……)
ズサ!
何の音かと思えば、顔の前ギラギラと光るものが通り過ぎていき。 思考が追いつく間もなく、根元まで深々とベットに呑み込まれて行くそれは。 刃物だ! さらに速度を上げてベットのなかを執拗に突き続けている。 そのたびに、グサ! グサ! っと妙に乾いた音が響く。 河田が恐怖に凍りついた目を上げた先には、刃先を河田の目の前に向けて佇んでいる当マンションの管理統括者、枝川律子の厳しい顔があった。 (な……!) 河田が思わず驚きの声をあげるまえに、後ろで物置を探っていたらしい警備隊員の水品サクラが先に驚きの声をあげてくれた。 「なっ、隊長! 勝手にベット壊しちゃっていいんですか」 無言で、ベットをくまなく突き続ける律子。その剣戟の音は、意外に小さくて身動きすると音でばれてしまいそうで河田は、そのままの体勢で凍りついた。 河田が助かったのは、律子がベットのなかに標的が居ると考えて効率的に突いたからだ。無駄な動きがない律子の動作が、結果として河田の命をからくも救った。 「ベットのひとつやふたつ……また買えばいいのよ」 警備としては、安全が第一。安全にもっとも経費がかけられるべきである。 だいたい、ここの部屋のものはほとんどが予備が用意されており。たとえ部屋中を破壊しつくしたとしても、十二時間後にはもとの状態に戻るようになっているのだ。 半分は自分が設計したとはいえ、贅沢なものだと律子は思う。 「ベットに何かの気配があったんだけど、私の感覚も鈍ったかしら」 持ち前の動物的勘で、敵性反応を見抜いた律子は手ごたえのなさに頭を振った。 どうも、最近……感覚がおかしい。 「だいたい、各種の警報装置はなんの反応もありませんし、侵入者なんて考えすぎなんじゃ……ないでしょうか」 尊敬する隊長の真面目な顔に、反論の矛先が弱るサクラだがいうべきことは言った。 「そうでもない、私は隊長のいう勘というのは分からないが。なにか、ここ一ヶ月ぐらい違和感を感じることはたしかだ」 風呂場を見回って戻ってきた南雲梨香も律子を弁護する。 そして、そーっと室内から出ようとしていた河田の頭をかすめるように、梨香は獲物である矛のようなもので壁を貫く……ザクっと。 「ここは構造的にねずみ一匹進入できないはずだよな水品」 「そ、そうです。そのはずですけど」 「微かに生き物の生活音がする。害虫等の可能性もあるから探索より、業者でも呼んで徹底駆除でもやったほうがいいのかもしれない」 別の可能性を提示するのも、補佐の自分の役割なので梨香はそう提案してみる。 さらにザクザクと壁を突かれ、そのたびに河田は血の気が引く。 身動きするのはあきらめた。 (このまま、いたら死んでしまう) 河田は、脱出計画を早めることを余儀なくされるのであった。
ほうほうの体で、美優の部屋に帰り。ひとっ風呂浴びて、透明状態を解く。 「あー、安全圏はここだけだよなあ」 そうして、冷や汗も落としてさっぱりした河田の目の前に。 枕を抱えてジトっとした目で見上げる、珍しく不機嫌そうな美優がいた。 「最近……妖精さん、あんまり一緒に寝てくれないですよねー」 そういえば最近、エリカの攻略に時間をかけすぎておざなりになっていたか。 しかし、エリカの身体はあれはあれで美味しいし、普段の生活の様子も視姦しておくと夜の楽しみが増えるんだよなあ。 そんなすぐ妄想状態に入ってしまう河田を、見上げる美優の目がさらに厳しくなった。 「もしかして、妖精さん他の女の子と寝てませんか……」 ぶっと吹く。 「そ、そんなことないよ」 声が完全にうわずっている。 「本当ですか……今日の妖精さんは、なんか信用できません」 それにつけても美優の勘の鋭さ。 ぼくの考えていることが読めるのかと戦慄する河田。 美優の言う「寝る」というのは、性的な意味ではないのだが。 男はたいてい、こういうとき焦って墓穴を掘ってしまう。 ここで深く追求されたら、河田だってゲロしてしまったに違いない。 美優には、そういうことに具体的なイメージがないことが幸いだった。 「いや……だからそんなことないって」 だから、怒っていても結局は許してしまう。 せっかくお風呂に入ってすっきりしてきたのに、冷や汗がまた出てしまう。 「そうですか……じゃあ、今日は一緒に寝てくれますよね」 「も、もちろんだよ」 さっきの様子だとエリカの部屋は、警備が厳しくなっただろうし、美優と一緒に寝るのも嬉しい。エリカの身体は飽きないが、一通り楽しみ尽くしたともいえる。 河田の本命は、やっぱり美優なのだ。 抱えている枕ごと、お姫様抱っこでベットまで運ぶ。 ひ弱な河田にも、可愛らしい美優はなんとか運べる。 重い部分があるとしたら、ほとんど胸の重量だよな……。 上目遣いに見つめられると、そんな河田の想いも全部見透かされるような気がする。 本当に不思議な子だ。 まるで、大きな人形を抱きかかえるように河田の全身にべっとりと抱きつく美優。 最近は、こういう抱き方がお気に入りらしい。 河田よりも一回り以上に身体が小さい美優だが、包み込んで抱きしめてあげているつもりらしい。 そんな美優を見ていて、いい言い訳を思いついた。 「実はね、このマンションから脱出しようと思ってるんだ」 「ええ……妖精さん妖精の国に帰っちゃうんですか」 抱きしめていた手も離して、飛び起きる美優。 「帰っちゃうとはちょっと違うな……ほら、ぼくは不法侵入者だから。このマンション部外者は絶対入っちゃいけないことは美優ちゃんも知ってるでしょ」 「そういえば……そうですよね」 でもそれは、魔法でなんとかしているのではないか。美優はたずねる。 「最近は透明でも、ほらここの警備員って鋭いじゃん。特に管理人の律子さん、透明でも匂いとかで気がついて、最近は……あやうく殺されそうになったんだよ」 普段は温厚だが、何かことがあったときの律子を始めとした警備員たちの凶暴性は、美優もたまにみるので良く知っている。 いくらマンションの敷地内だけとはいえ、刀や銃を堂々と振り回してるのはいろんな法律に違反してるのではないかと思うのだが。 「そんなあ……それじゃあ妖精さんいなくなっちゃうんですか」 うう……そんな上目遣いに目を潤ませて見上げないでよ。 「そうだねえ、そのうち逃げないと……命が危ないし」 「そんな……」 またぎゅっと抱きしめて、河田のでかい腹に顔を押し付ける美優。 「妖精さんがいっちゃ嫌だし……殺されちゃうはもっと嫌だし……わたしどうしよう」 途方にくれたように、くたっとなる美優。 ぼくもそれで途方にくれてるんだよといいたくなる河田。 「それでね、美優ちゃんがよければ一緒に逃げてくれないかなと」 了解が取れれば、それにこしたことはない。 取れなければ……そのとき、それに耐えられる自信が正直河田にはない。 だから、この質問をいうのは怖かったのだ。 「一緒に……妖精の国?」 首を小さく傾けて、目をきらきらさせて言う。 そうじゃないんだ……そう騙せてしまえば、簡単なんだろうけど。 そこまでの嘘をついて、美優を悲しませることは河田にも耐えられなかった。 だから、そこは正直に言う。 「違うよ……逃げる先は、外国なんだ。スーパーもコンビニもないから多少不便だけど、海が近くで、自然が豊かで、ホテルも行楽地も病院もあるから、住むには心配いらない場所だよ」 「うーん、外国の国……どっちのほう?」 河田の胸の中で、きょろきょろと見回す。 「そうだね、この国からだと南のほうだね」 ちょうど、あっちのほうと南向きの窓を指す河田。 採光のために、広く取られた窓からは、大きな入道雲が浮かんでいるのが見えた。 「あの、雲の向こう側にある国だね」 休日の青い空に、大きな入道雲はゆっくりと広がっていく。雲から目を戻して。 「うん、わかった。妖精さんとだったら行ってもいいよ」 あまりにも、あっけなく美優がうなずくので、逆に河田は怖くなった。 「そんなに、簡単な問題じゃないんだよ」 「そうかな?」 美優には、本当に分かっているんだろうか。 「外国に行ったら、二度とこの国に戻ってこれないかもしれない。美優ちゃんを連れて行ったら、ぼくは誘拐犯になるから。美優ちゃんも、学校も行けなくなるし、両親にも二度と会えなくなるかもしれないよ……」 まるで断ってくれというような。 それでも、美優のためを思っていった言葉というだけでもない。 河田は、本当はいっしょにいってもいいと肯定されるのも怖いのだ。 できれば、答えは引き伸ばしにし続けて今を永遠に楽しみたかった。 警備の包囲が狭まりつつある今でなければ、きっとそうしていたに違いない。 それでもいつも楽しい時間は早く過ぎて、期限は決断を迫り、未来はいつも怖い。 もし美優を騙して拉致して、そうして遠い異国で彼女が泣いたなら。 そのとき、河田は生きていける気がしない。 そういう気持ちを、拙い言葉にして河田は何度も聞いた。 「もう、何度も聞かなくていいよ」 手をいっぱいに広げて、ぎゅっと河田を抱きしめて美優は言う。 「わかってるから、もう二度と戻れなくていいから、連れて行っていいから。それで、私はずっと妖精さんと一緒にいるんでしょ。だから、いいよ」 河田の吐き出した不安を、美優は全て飲み込んで安心にしてしまえる。 本当に魔法があるのなら、それを持っているのは自分じゃなくて美優だと思う。 とうの昔にズタボロに壊れたはずの河田の勇気を、どうして一言で美優は奮い立たせることができるのだろう。 「私を、お嫁さんにしてくれるってことでしょう」 「うん……そういうことだね」 どうしようもないと思っていたことが、パッと目の前が広がってできる気がした。 方法はある! 美優の笑顔を力に変えて、河田の脳みそは、また動き始めた。 「最近、忙しかったのは美優ちゃんと一緒に逃げる方法を考えていたんだよ」 「そうだったんだー」 まあ、嘘ではない。美優はそう聞くと本当に嬉しげに身を起こして、河田が大好きな微笑を浮かべて、キスをした。 強く抱きしめて、軽くではなくちゃんと深い口付けを。 「大好きだよ、妖精さん」 その日は昼間から邪魔も入らず、美優はいつになく激しかった。
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第十六章「エリカの匂い」 |
美優との完璧な関係を築き上げた河田は、先送りにしてきた次のターゲットの攻略に着手する。美優があまりにも良すぎて、時間を掛けすぎてしまったかもしれない。 このまえ律子にあやうく殺されかけたし、警備に手を出すのは危険すぎる。 とりあえず、一息つきたかった。 それに、このマンションからも脱出することは決めているので、もう一人ぐらい楽しませてもらいたいとも考えてのことだ。 ターゲットは九階に住む西川エリカである。 そもそも河田が、このフェルリラントを攻めようと思ったきっかけが、西川エリカのストーカーだったことを懐かしく思い出す。 美優と同じセントイノセント学園の学生で、普通科の高校二年生十七歳である。当然このマンションに入れる子女である。関西の老舗企業、西川電鉄グループの社長令嬢にあたる。 エリカという西洋風の名前が、最近流行のDQNネームっぽいが、彼女の場合は仕方がないのだ。スコットランド人の母親が名づけ親だからだ。北欧の血が混じったエリカは、白皙の美貌の持ち主であり。日本人にはありえない深く青の瞳が相貌に神秘的な印象を与えている。 細身の身体に、ウエーブがかかった淡い金髪をさらりとなびかせている彼女は、美優とはまた違った意味で、深窓のお嬢様の極致といえる。河田が、襲わない手なかった。 だが残念なことに、エリカは美優と違って電波系ではない普通のお嬢様である。騙すといった手口は使えない。そこで、今回外にいってようやく手に入った非合法な睡眠薬を使うことにした。 毒性も少ないわりに、飲めば三時間はぐっすりと眠れるという薬である。エリカの体質がわからないので、どこまで深く効くかは確証はないがこっちは透明である。万が一起きてしまったとしても、どうとでも逃げる手が打てるというものだ。
部屋で張っていると、やや遅めの時間にエリカが帰宅した。 「あー、今日も、うけたわー」 英国で生まれ、関西の下町で育っているエリカは、黙っていれば完璧なお嬢様なのに、口を開けば関西弁が飛び出す。 何がおかしいのか、思い出し笑いなのかケタケタと笑っている。 せっかくの儚げな北欧美少女な印象が、台無しになってしまうという意見もあるだろうが、賑やかで楽しげな女の子もいいではないか。こっちのほうが河田の好みだ。 ギャップ萌えってやつもあるかもしれない。 それ以前に、女の子は元気なほうが見ていても可愛いと河田は思うのだ。 「テレビなにやってるやろか」 そういってスイッチをつけてテレビを見る。 百インチ以上の大きさのモニターである以外は、普通にテレビである。 それにしても、たかがバラエティー番組を見るのにこの重低音は無駄以外になにものでもない。 テレビをちらちら見ながら、荷物を整理したり食事を取ったりしていた。 誰にメールをしているのか、携帯をいじったり、なんか想像していたより普通だ。 外見はともかく中身は庶民的なのがエリカの特徴だということは分かっていたが。 あるいは、他のお嬢様方も家に帰れば存外こんなものなのかもしれない。 やがてバラエティー番組を集中して見出したがその番組も終わり退屈をもてあます。 「そんなら、お風呂でもはいろうかな」 なにが「そんなら」なのかよくわからなかったが、とにかくエリカが風呂場に移動したのはチャンス。 こんな広い部屋に一人で住んでいると、ついつい独り言が多くなってしまうのかもしれない。 慌てて追いかけたが、河田が脱衣所に入ったときは、ポンポンポンと脱ぎ捨ててしまって、エリカが青いパンツに手をかけたところだった。 すぐさまそのパンツをぽーんと脱衣箱に投げ捨てて、お風呂場に直行。 威勢のいい脱ぎっぷりだ。 形のよい美乳が小さく揺れるのを確認して、思わず風呂場まで追いかけてしまう。 風呂場をのぞいたら、大きさだけは美優のところと一緒だったが、壁面に見事な夕富士が描かれている。まるで絵に描いたような昭和の香りがする銭湯空間が広がっていた。 よく見ると、側面には多数の洗面台が並び、生産が中止され現在では入手困難になったケロヨンのマークが入った小さな風呂桶がたくさん積んである。 ある意味、これはとんでもない贅沢だ。 エリカはさっとケロヨンをひとつとって、かけ湯すると浴槽に飛び込む。 「かー! きくー」 黙って座っていれば英国淑女のようなエリカが、お湯の心地よさに肩を震わせて銭湯でおっさんのようなことを言っている風情に、河田は笑いをこらえた。 きっと、湯船の温度は極端に高く、お湯を水で薄めようとすると怒り出すに違いないと頭にタオルをのせて鼻歌を歌っているエリカを見て思う。 趣味はいろいろで、風呂場まで個人の嗜好に合わせて作られてるわけだ。このマンションにいると贅沢というものの意味を考えさせられる河田である。
お湯をまともに浴びると透明化が解ける。そのままのぞき続けるのも危険だったので脱衣所にもどる。 エリカが風呂に入っている間に下着をあさったら、エリカは今日は青いレースが入ったパンツをはいていたようだ。クンクンと匂いを嗅ぐと、これが結構強烈な匂いをはなっている。やっぱりヨーロッパ人の血が混じってるから体臭が少しきついのかもしれない。 それでも、若いエリカの体臭は、不思議と悪い匂いとは思わなかった。 メスの匂いが強いといってしまえばいいのだろうか、股間にガツンと来る匂いである。 去年ストーカーして調査した結果としては、とりあえず彼氏らしい相手はいないという結論だったのだが、一年経ってエリカも十七歳だ。 この匂いがメスとしての成熟を物語っているとするなら。 すでに、付き合ってる男ぐらいもういるのかもしれないな。 あまりパンツにいたずらして、つまらないことで気づかれてもいけない。 ああしかしこの香りは……たまらない。どれだけ嗅いでも、気持ちが治まらない。 しかし、エリカもさすがにもう出てきてしまう。 パンツが宙に浮いてたら、さすがのエリカもなにか不都合な行動を起こすだろう。 まるで媚薬のような香りを放つエリカの脱ぎたてパンツから、断腸の想いで手を離す。 前なら、ここでオナニーしてしまうのだろうが、のちの陵辱を思いここは亀頭からカウパーを垂れ流しながらも、ぐっと我慢して部屋にもどって息を潜める。 それでも、河田の鼻には、いつまでもエリカの匂いが残っていた。
夜、エリカの枕元にある水差しに睡眠薬を混ぜる。 飲むかどうかは運任せ。 友達とのメールが盛り上がってるのか、風呂から上がっても、深夜までなかなか寝ないのに少しいらついたが、女子高生なんてこんなもんなんだろう。 何もないと早めに寝てしまう美優に、しばらく生活をあわせていたので、こんな時間まで起きているのは河田も久しぶりだ。 「ふぁー、そろそろ寝よかな」 誰にいうとでもなく、そうつぶやいてエリカお嬢様は床に就く。 歯を磨いて、ちょっと口がいがらっぽかったのでエリカは水差しの水を……飲んだ。 市販の弱い薬とは違うのだ、少量でも入眠の効果は絶大。 それを見た河田は、とたんに眠気など吹き飛んでしまう。 エリカは、枕元にある置物をポンっと叩くと部屋のライトが全て消えた。 そうして、バタンと倒れて五秒後には寝息を立てていた。 何も知らなかったエリカは、日ごろより格段に早い寝つきに気づくはずもなかった。
「さてと……」 ポンっと、河田が置物を叩くと電気がつく。 念のために、もうすこし睡眠薬を飲ませておく。 水差しを口に差し込まれたエリカの喉が、コク……コク……となる。 エリカの寝息は、さらに音を増した。 「こうして、眠っている姿をみるとまるで白雪姫なんだけどなあ」 どうして、起きて動いていると背景に大阪の道頓堀が見えるのか。 育った環境と生まれどっちが人間の成長に影響を与えるのだろうか。 そんなことを考えながら、眠れる森のお姫様を見て笑う河田。 コーカソイドの血が入っているエリカの肌は、恐ろしいほどに白い。 陶器のような白さは、若いエリカのきめ細やかさとあいまって、犯し難いほどの美しさに、河田は思わず息を呑んだ。 すると、花のような香りが鼻腔をつく。お風呂上りだからシャンプーの香りだろうか。 そう思って、エリカの淡いブロンドの髪を一房もちあげて、匂いをかいで見る。 「これは、いい匂いだ」 仄かに甘い香りが広がる。 さらに河田は匂いに吸い寄せられるように、スースーと寝息を立てているエリカの頭皮にまで鼻を密着させて、深呼吸してみる。 なりは銭湯のようだが、当然エリカもいいシャンプーを使っているのだろうが。 それにしても、この甘い香りのなかに仄かに含まれるひきつけられる匂いは。 エリカ自体の体臭なのだろうか、そういえば、さっきエリカの脱ぎたてのパンツを嗅いだときも、これと同じ胸が熱くなるような興奮があった。 その香りを、確かめるようにクンクンと息を荒げて河田は嗅ぎ続ける。 「これは……たまらないな」 次に確かめるようにエリカの唇に、口をつけて吸ってみる。 「ん……」 息苦しそうにするエリカだがそれにかまわずに、口内を嘗め回し舌を絡めて河田はジュルジュルと音をたてて、唾液を啜った。 「うまい……」 軟らかいエリカの唇の感触とともに、心が蕩けてしまうような、エリカの唾液の味。 エリカが苦しげにしているにもかかわらず、河田は何かに憑かれたようにエリカの唇を味わう。起きてしまうかもしれないとか、そういう配慮が河田には欠けていた。 幸い睡眠薬はエリカに合ったようで、苦しげな息を吐きつつもエリカの眠りは薬の強引な力でねじ伏せられ覚醒に至ることはなかった。
十八世紀初頭に、フランスの天才的香水職人が探求のすえに『最高の香水』を作り出したという逸話が残っている。その香水は、すこし振りかけただけで男を狂わせるような媚薬としての効果すら発揮したという。 その『最高の香水』に使われていた材料というのが、通常香水に使われる材料である、花や香料ではなく、ある村娘の身体から発した体臭を抽出したものであったというのだ。 生化学的にはフェロモンといわれる異性を誘引する匂い。人間にそのようなものがあるとは、科学的にはいまだ実証されえていないが、媚薬的効果すら持つ、特別な体臭を持った女性が存在することは各国の歴史に残っている。 たとえば、中国の古史に傾国の美女と称えられた楊貴妃も、そのような体臭の持ち主であったと伝えられている。唐の玄宗皇帝は、彼女のその匂いに夢中になり、政治をおろそかにして国を滅ぼしたのである。 エリカも、そんな数少ない特別な匂いを持った女性だった。
エリカの汗も唾液も、そして愛液も……身体のありとあらゆる分泌液が、男を引き付けてやまないのだ。 河田が夢中にならないわけはない。 去年のほぼ一年間、河田はずっとエリカを追っていた。手堅いガードを潜り抜け、西川エリカの情報は、全て手に入れたつもりだった。 しかし、そう……匂いだけは、寄り添うほどに近づいて初めて分かるもの。 西川エリカの容姿や、それにそぐわぬ庶民的な雰囲気が好きでストーキングしていた河田だが、こんな隠された魅力があるとは気づきもしなかった。 やはり、情報だけで個人を理解することはできないのだ。 なにかに取り憑かれたように、エリカに抱きついてその白い首筋を嘗め回して、味わう河田は、去年自分がやっていたストーカー行為の空しさを知った。 「だが、いまぼくは」 そう、無防備に眠るエリカを存分に味わうこともできるのだ。 興奮に震える手を押さえ、そっと掛け布団を剥ぎ取る。夏も盛りに近いので、風邪を引くことはあるまい。 上質な手触りのネグリジェも、いまの河田にとっては邪魔なものに過ぎない。さっさと脱がせてしまう。 寝る前はブラをしないらしいエリカの形のよい胸が白日の下にさらされる。 決して大きくはない、カップでいえばBぐらいだろう。 日焼けというものが微塵も感じられない滑らかで白い膨らみの頂点には、可愛らしい真紅の乳頭がついている。 興奮を抑えきれず、その真っ赤なボタンを連打し、舐めとろうとする河田。 乳房を掴んだ瞬間に、またエリカの身体がビクンと震えた。 片手に収まってしまう小ぶりな胸を、好きなように弄り続けた結果。 乳頭は、生物的反応で勃起してしまう。 乳房の大きさに比例して、可愛らしい大きさだ。 立った乳頭にさらに、手で口で刺激を加える河田。 それに反応して、さらに乳頭はピクピクと反応する。 「感度は良好のようだが」 エリカは乳頭の味も絶品で、すでに河田の逸物がエレクトしすぎて、タラタラとカウパー液をエリカの腹あたりに垂れ流しているのだ。 「このままだと入れる前に、こっちが射精しちゃうな」 ここ一ヶ月の間に、女体には慣れてそれなりに責めかたも知って、射精を堪えることもできるようになったと思っていたのに。 まだパンツも脱がしていないというのに、ちょっと限界に近い。すでに発射しそうで、腰を引いて河田は堪えているのだ。 先に、お口でしてもらうとするか。 そうきめると何も知らずスヤスヤと眠り続けているエリカの顔の前で両手をあわせ。 「エリカお嬢様の口マンコいただきます!」 そう宣言して鼻をつまんで、エリカの口内を犯し始めた。 「ケホ……ケホ……」 河田の亀頭を喉奥まで飲み込んでエリカは、とても苦しそうにむせている。 喉や、頬のいろんな内側をチンコで弄るたびに、エリカの顔は歪む。 整った顔だちだからこそ、こうやってチンコで攻めてやると面白い。 すでに限界に近かった河田は、玉の収縮を感じ取ると、我慢せずに喉の奥底に自分の亀頭を押し入れて射精することにした。
ドッピュドッピュドドピュドピュ!
「ゴフ!?…………ドクドクドク」 いったんはむせて反発したエリカだったが、意識のない状態で喉の奥に射精されてはどうしようもない。 ドクドクと、喉の置くから食道に流れ込み。河田の汚液を余すことなく飲み込まされてしまう。 「ふあ……気持ちよかった」 とりあえず一発抜いて、落ち着いた河田は、エリカの顔になすくりつけて綺麗にすると次はパンツにかかった。 青系統の色が好きなのか、水色で淡いレースがかかったシンプルなデザインのパンツである。寝巻きはくだけのものなので薄っすらとエリカの繊毛が見えるぐらいの薄絹のパンティーだ。 あえて、パンツの上からオマンコに口をつけるようにして匂いを嗅ぐ。 「ああ……この匂いだな」 薄い下着越しからでも分かる濃厚な女の香りに、エリカの唾液でテラテラと光っている河田の逸物はまたムクムクと起き上がる。 するりと、薄絹のパンティーを脱がせて見ればそのしもの毛は、やはりエリカの髪と同じブロンドである。 外人は陰毛も金髪なのかという、河田が長年抱き続けた疑問が解けた気がした。 「つまり、髪が天然の色かどうかは陰毛を調べればわかるわけだ」 くだらないことをいいながら、綺麗に手入れされたエリカのオマンコに口付けする。 エリカのアソコの色は、乳頭と同じ真紅だった。 まだ、そんなに使われた形跡はないが……処女でもなかった。 「やっぱり彼氏とかできたんだな……がっかりだなあ」 エリカも高校二年生なのだから、彼氏がいてやっていてもおかしくはないだろうとは理屈ではわかる。 それでも、思い入れがあるだけにやっぱり河田は残念に思った。 ゆっくりと、オマンコを舐めとる。 さっきの刺激で、多少の湿り気はあったため河田の指や舌に逆らわず、エリカのオマンコはゆっくりと口をあけた。 その濃厚なエリカの味に、河田のがっかりの心はともかくとして逸物はビンビンになっている。 「お仕置きだなあ、エリカちゃん」 何がお仕置きなのか知らないが、半濡れのエリカのアソコに強引にビンビンの逸物を押し込めて行く河田。 エリカの唾液の湿り気もあって、そこまで抵抗もなくズッズっと入りこんでいく。 「おお……これは」 エリカの膣壁は男根の侵入に、蕩けるようなざらつきをもって河田を迎える。 「すげえ……これは……ちょ……好意に値するよエリカ」 いっているセリフがよくわからないが、河田はエリカのオマンコの軟らかさと暖かさに感動を覚えたようだ。 美優もがんばってくれるが、やはり河田の欲望を受け入れるときは少し苦しげだ。それに比べてエリカのオマンコは、河田の全力の突きをものの見事に飲み込んで包み込んでしまう。 完全に男を知っている膣なのだな。それが、自分のモノでないことに嫉妬を感じるが、それがさらに河田の欲望を燃え上がらせることにもなる。 「あっ……あっあっ……んっ」 寝ていても身体は感じるらしく、河田が突き入れるたびにエリカも声を上げる。 河田は、エリカの身体を抱えるようにして正常位で突きまくった。 エリカの膣は、まるで生き物のように河田のモノを受け入れる。浅く、深く、突くたびに高まる快楽に、夢中になった河田は身体を振るわせるようにエリカ身体を貪る。 ほどなく、エリカの膣は接合部からドロドロと愛液を排出した。 分泌は激しいほうらしい。 眠っているエリカの意識はともかくとして、エリカの膣壁はきめ細やかな蠕動を持って、男根の侵入を喜ぶように迎えているようだ。 「男好きするオマンコなんだなあ……エリカは」 そういって小さい胸を弄りながら、さらに腰を強く押し付ける。 そのたびに、身体を小さく震わせていい声でなくエリカ。肌が白いから、顔の高揚が良く分かる。興奮して赤くそまった頬も可愛らしかった。 こんな少女が、こんないやらしいオマンコを持っている。 「ああぁぁ……うぅ……ふっ」 けしからん、けしからんと腰を振り続ける。 「はっ……」 フルフルと身体をを痙攣させて、エリカはイッてしまったようだ。いきかたも、可愛らしいものだ。 キュッキュっと そんな可愛いエリカを見ていると、彼氏がうらやましくて……先にエリカの始めてを取られてたまらない気持ちになってきた。 「もうちょっと、待ってくれたらよかったのに」 そしたら、エリカの初めても河田が頂けたというのだ。ずうずうしいものだ。 それでも自分が始めてをもらえるものもあると河田は思う。 「このまま、中で出すけどいいエリカちゃん」 エリカは意識がないので、いいともわるいとも言えるわけがない。 「セックスは彼氏のほうが先だったかもしれないけど、妊娠させるのはぼくのほうが先だよね……」 エリカはお嬢様だから馬鹿な高校生みたいに生を許しているわけもない。やっぱり避妊もきっちりとしているだろうと思う。 そしたら、エリカのオマンコに初めて生で入れて粘膜を直接こすりあわせて、そして中出しを決めて妊娠させるのは、やっぱり河田が始めてだということになる。 そう思うと、喜びにピストンが早くなる。 エリカの息がまた荒くなる。エリカの意思とはかかわりなく、身体は的確に河田の無作法な陵辱に答えてしまうのだ。 そろそろ、出そうだ。腰を全力で押し付け、子宮に届けとばかりに 「あぁ、エリカちゃん中に出すよ!」
ドピュドピュドピュドピュドピュ!
身体をプルプルと痙攣させながら、たっぷりとエリカの膣内にドロドロの精液を吐き出した。同時に、エリカのオマンコは始めてのザーメンの到来に、歓喜の収縮を繰り返し最後の一滴まで、河田の精液を吸い取っていく。 こうして、エリカは自分の意思に関係なく河田に陵辱を繰り返され、ついには望まぬ子供を孕まされることになる。 河田は、そのまま三発目に向けて動き出した。 エリカの身体を味わえば、何発だしても飽きることがない。 すっかりはまってしまった河田は、たっぷり中出ししたエリカの真っ白いお腹を愛しげにさすりながら、睡眠薬が切れるギリギリの時間まで、エリカを弄り続けることをやめなかった。
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