第三章「初めての男」 |
私は、唇を奪われていた。 ブチューって、オジサンに唇を奪われて、口中舐め回されておまけに口の中まで舐め回されていた。 「んっーんんっ!」 私は、抗議したけれど動かそうとした舌をベロンと口の中で絡ませられてディープキスまでされてしまった。 「アハハッ、ヨダレ出てたから舐めてあげようと思ってさ。フハハッ、おっぱいちゃんの舌は甘いねえ」 「あふっ、甘いねえじゃないですよ。私、ファーストキスだったんですよ!」 「おや、そんなに立派なのに彼氏もいないのか。俺もおっぱいちゃんに初めてキスしたんだから、初めて同士だからいいよね」 初めて同士……いいのか? そんなので交換成り立ってるのか。そんな考えに沈むうちも、ガンガンと体重を載せて腰をふるってくるし、私のおっぱいを握り締めながらオジサンはブチュブチュとキスをして来る。 また舌がベロンと口の中に入ってきた。唾液交換……交換だからなんだというのだ、私はなぜ自分がそんなに『交換』にこだわっているのかよく分からない。最初にオジサンが言い始めた気がする、交換だったら納得出来るのだ。スッキリと物事が割り切れないと気分が良くない私にとって『交換だから良い』という概念は分かりやすいものだから。だからって、オジサンに好き勝手されて良いのか? 「良くない! とにかく私の身体で遊ばないでくださいっ!」 オジサンに抱かれながら、私は胸をグネグネと弄ばれていた。変形するぐらい強く左右に押し開かれたり、乳搾りみたいなかんじで上にギュってされたり。身体が熱くなって、飽和状態だったから鈍い痛みしか感じないけれど、屈辱的であることには違いない。
「アハハッ、遊んでなんか居ないよ。オジサンは梢ちゃんと真面目にセックスしてるんだよ」 ようやく私の名前をきちんと呼んだか、ニヤニヤした顔が真面目そうにはとても見えなかったけど、言われれば確かにオジサンは真剣にハァハァと声を荒らげて私の身体の上で……。 「ちょっとセックスって、オジサンなにしてるんですか……」 私は何かとてもひんやりと恐ろしく感じて、そっと身体を起こす。 「何って、セックスだよ。オジサンのおチンチンを梢ちゃんのマンコに挿入してるだけだよ」 下腹部に見えたのは、オジサンと私が繋がっている――挿入されているという現実だった。なんで気がつかなかったのだろう! 「イヤァ! ほんとに入ってるじゃないですか。抜いてください!」 私は、気がつかないうちにオジサンの汚いものを自分の中に挿入されていたのだ。 「そういえば、梢ちゃんはセックスは初めて見たいだけどよく痛く無いね?」 初めてなのにどうしてこんな、初めては痛いという。目で確認して、初めて自分が下腹部にジンジンと抉られるような痛みを感じているのに気がついた。我ながら、鈍いにも程がある。 「イヤッ! 痛いです。いま痛みがジンジン来ましたから! 止めてッ!」 「止めてって言われてもなあ、オジサンも梢ちゃんに入れるのは初めてだから、初めて同士で何も問題ないよね?」 「えっ、ああっ。それはそうかもしれませんけど……」 初めて同士で問題ない? どうして私はこんな言葉に説得力を感じているのだろう。
「ウヒヒッ、人のセックスは笑うなと言ってね。梢ちゃんの記念すべき初めてなんだから、しっかりセックスしないとね。流石に俺も、ふざけて、られないっと!」 オジサンはふざけた調子で、腰を振って私の股にそそり立ったものと突き刺した。股からは破瓜の血が流れて、痛々しげな様子なのだがお構いなしだ。オジサンの勝手な腰つきは、自分の快楽だけをきっちり完遂するという気迫に満ちていた。 されても良い。むしろ、されるのが当然だと思う自分の考えがハッキリと感じられるのに、納得が行かない感情が私に文句を言わせる。 「やっぱりおかしいですよ、ああっ……愛している恋人同士でやるのがセックスでしょ? オジサンのやってることはレイプですよ、無理やりの強姦なんです分かってるんですか?」 私の初めての相手が、どうしてオジサンなのだ。さっきと一緒だ、納得しても憤りの感情だけは消えない。 「ハイハイレイプねーほのぼのレイプねー」 オジサンは、お尻にぎゅっと力を入れて腰を回転させた。私の膣襞の粘膜が激しく擦られるからジンジンした痛みを感じる。 「痛いッ、痛いんですよ! ほのぼのしてないです!」 だが、不思議とひどい痛みは感じなかった。私の膣が絶頂寸前まで感じさせられて、分泌液を多量に漏らしていたからだろうか。傷口を引き裂かれるような痛みがあると、友達同士でも話していて初めてに恐怖を募らせていたものだが、オジサンに訴えるほど痛みではなかった。 私とオジサンが繋がっているお股からは、グチュグチュと嫌らしい音が響いていた。身体に直接打ち付けられる響きとともに、私の身体が熱くなっていく。 「アハハッ、梢ちゃんがレイプだっていうなら、レイプでいいんだけど……悪い感じはしないんだろ?」 私の感触を確かめるように、ぐっと腰を押し付けて訪ねてくるオジサン。股の痛みはあったが、それよりオジサンの体重が腹に乗っていることのほうがよっぽど苦しい。 「悪くはないですけど……えっと、あれっ?」 レイプは悪いことなのに、私は確かに悪い感じはしなかった。オジサンに言われたからではなく、目の前の現実を私はスッキリと受け入れていたのだ。 「ふうっ、やっぱり初物は違うね。締め付けが厳しすぎる。俺のを必死に吸い上げてくれる嫌らしいオマンコちゃんだ」 「私はそんなことしてません……ひぐっ……もっ、もういい加減に終わってください」 オジサンのピストンが早くなる。ギュッとオッパイを揉みしだかれて、身体の触れている部分が火照っている。私が痛み以外に何も感じないといえば、それは嘘だった。 「言われなくても、終わりそうだよ。きっちり、中に出すからね」 「えっ! 中に?」 「ウウッ、出すよ……」 私が拒否する暇もなく、オジサンはさらにピストンを早め、絶頂を迎えた。入れられたことにすら気がつかなかったのに、この瞬間を私は強く覚えている。膣の中で、オジサンのものはギギッと大きく膨れ上がり、ドクドクッと欲望を吐き出して行く。初めて、自分の中に温かいものを注ぎ込まれた。その感覚に、陶然となってしまって声もでない。
静寂。感じられるのはドクドクと生殖器が脈打つ音だけ。
やがて世界に音が戻ってくる。扇風機の廻る音に、遠くに聞こえる蝉の鳴き声。窓から流れ込む夏の湿った空気、私の自宅のベットで私は初めてを終えた。
「……中に出しちゃったんですか!」 私はいまさらながら、抗議する。終わった後に、本当にいまさらながらだった。 「だって、梢ちゃんが盛んに愛液出すから、ちゃんと交代に俺も精液も出さないといけないでしょう」 そんな理屈が通るか! 「妊娠したらどうしてくれるんですか」 「まさか、一回中に出したぐらいで妊娠したらそっちのほうがビックリだよ。精子と卵子の遺伝子の交換で新しい命が誕生するんだから、素敵なことだよね。それって奇跡だよね」 オジサンは、そんな頭が腐りきったセリフをつぶやいている。奇跡かもしれないけど、最悪の奇跡だ。悪い奇跡は英語でなんていうんだったっけ。えっと……Bad luck(バットラック)? 「とにかく、どいてください。洗わないと……」
≒≒≒
お風呂場のシャワーで、股を洗って部屋に戻っていく。そういえば、お母さんは一体何処に言ったのだろう。今日は姿を見ない。これは真夏の悪い夢で、階段をあがって部屋に戻ったらオジサンなんて初めから居なかったんだ。 ――という展開を期待したが、ちゃんと私の机に笑顔のオジサンが座っていた。すでに服を着ているようだ。 「さてスッキリしたし、俺はそろそろ帰るね」 「さっさと帰ってください! というか最初から来るな!」 オジサンが消えてしまう前に、いろいろ聞かなきゃいけないことがあるような気がする。だいたいこのオジサンはなんなんだ。どうして、私の家に勝手に入ってきているのだ。そっからスタートで、とにかくいろいろ。
「俺は梢ちゃんのことをしばらく忘れるから、梢ちゃんもオジサンのことはしばらく忘れてくれるかな。さっきのはたいしたことでもなかったから、何もなかったように思ってくれると助かるよ」 そういって、オジサンは「あースッキリ」とか言いながら入ってきたのと同じように部屋から唐突に出て行って、戻って来なかった。
私はしばらく呆然としていた、蝉の鳴き声と扇風機の音だけだ。半ば無意識に、脱ぎ散らかされた下着とハーフパンツを穿く。
「あっ……なにやってるんだろう、夏休みの宿題やらないと」 今日は宿題を片付ける能率が悪い。いや問題を解くスピードはいつもと変わらないはずなのに、午後十時には今日のノルマを終えてしまうはずが、正午までかかっても終わらなかった。こんな日もあるか、英語の問題集にちょうど相応しい単語が載っていた。
――Bad-Luck Day.(ついてない日)
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第二章「くすぐる男」 |
「アハハハッ、それじゃあ今度はオジサンがオマンコ舐めてあげようね」 「えっ、ちょっとなんで」 苦いお汁を飲まされて、ぐったりとなった私の股に、オジサンが顔を埋めようとするので私は驚いて手で押し戻そうとする。 「いやあ、面白いことを聞くなあおっぱいちゃんは。おチンチン舐めてもらったんだから、オマンコ舐めてあげるのは当たり前でしょ」 当たり前の理屈に、私の拒む力は緩む。すっと太ももを手で開いて、オジサンは私の股に顔を近づけていった。 「ちゃんとオマンコ中まで洗ってないでしょ。マンカスが溜まってそうだね、処女みたいだから仕方ないなあ……我慢して舐めるか。俺のチンカスも舐めてもらったしね」 「えっ、さっき私チンカス舐めちゃったんですか?」 また汚れてしまったとがっくり来る。ほんと私にはがっくりだ。オジサンはがっくりきている私の肉襞をぎゅっと開いて、舌を差し入れてきた。 「ひゃあっ……」 オジサンがすっと筋に沿って舌を這わせただけで、敏感になっていた私の腰はふわりと浮いてしまう。 「アハハハハッ、ほらみてごらん梢ちゃん。梢ちゃんのオマンコまだ何もしてないのに、中からドロッてエッチな液が一杯出てきたよ」 オジサンが指先で私の中から採取してきたそれは、確かに見覚えのある嫌らしい気持ちになったときに出る……液体だった。 「それはオジサンが刺激するから、生理的反応で仕方が無く……」 さっきから、おっぱいちゃんおっぱいちゃん言っておいて、こんな恥ずかしい話しの時だけちゃんと名前を呼ぶなんて意地悪すぎる。 「ウヒヒ、梢ちゃん生理的反応って言葉好きだね。オマンコ濡らしてるのは、エッチなことを考えたからでしょう。ちょっとおっぱい揉まれたぐらいで、こんなにぐっちょり濡れてる処女なんて訊いた事ないよ」 「ちょっとって、さっきアレほど揉んでおいて……あんなにされたら女の子なら誰だって……」 「フウンッ、まあいいや。じゃあおチンチン舐めてくれた時間ぐらいは舐めてあげるね。交換だから、構わないよね」 私は無言でそっぽを向くことで、構わないという合図とした。私が舐めてあげたのだから、その代わりに奉仕してもらうことぐらいは普通のはずだ……アレなんかおかしいな。 オジサンがオマンコの中に長い舌を這わせて舐め始めると、私はおかしいって違和感を考えるどころではなくなった。 「アッアッ! アッアッアアッ! イイヤアッアッ!」 耐え難い疼きそのものが、舌で搾り取られるように、私は頭を手で押さえて迫り来る快楽から身を守ろうとした。 「すごいなあ、舐めても舐めてもマン汁湧いてくるよ……」 「イイイッ……イヤなんですからねっ、私わあアッアッ! 仕方なくクゥツウウ!」 私の中をオジサンの舌が荒れ狂う。強い舌先で刺激されたり、周りをベロリと舐め回されたり、アクセントの強弱で焦らされるようにして、ジワリジワリと私の大事な部分の粘膜が熱くなっていくのがわかる。 「ちょっとほんとに……あっ、止めて下さいっ! 無理無理イヤァアァァ!」 オジサンの舌が、私の中のカリッとした部分に触れたのが分かった。そこは駄目だと思ったときには遅くて、もう思いっきり舌先で擦られてしまう。 「アアッ……ヤダッダメになるうぅ……」 腰がふわりと浮かんだように感じた。頭がホワッとする。さらにオジサンの舌が私の股を這いずり回っているが、それを気持ち悪いものと感じられなくなった私がいた。それどころか、駄目になった私は自ら腰をオジサンの口にグニュグニュとこすりつけるようにしていた。 「もうダメ……イクゥ……」 オジサンは何をやっているかと思えば、私のクリトリスのあたりをチュパチュパ吸っていた。皮を被っている小さな小さなお豆さんだが、ちゃんと感じるのだ。感じる神経が集まっている部分なのだ。 恥ずかしいことに私は、イクッという感覚を知っていた。男性経験はまだ無いけれど、自慰経験は豊富なのだ。脳内ではイケイケなのだ。何を言っているのかわからなくなってきて、もう何が恥ずかしいのか恥ずかしくないのかわからなくなって、そのまま気持ちよく『イクッ』という真白い感覚に流されてしまえばと思った瞬間――
「あひっ……なにっ?」 オジサンが、私の股から顔を離した。もう少しだったのにと思うまもなく、今度は何を考えたのか腋をくすぐり始めたのだ。腋だけではなく、オジサンの巧な指がお腹のくすぐったいところまでスウッと降りてきて、横腹をさらに指でこちょこちょとこそぐってくる。 「こちょこちょこちょ……」 「オジサンいきなり何をっ? アハッアハッ……うんぐうっ……アヒャヒャヒャヒャヒャ!」 性的な絶頂に達せられるかと思った瞬間、いきなりくすぐり攻撃を始めたオジサン。こそばゆいなんてモノじゃない。くすぐったい地獄だった。 あまりにも意表をついた行動で、誇張表現でもなんでもなく、私はぶっ壊れた。 「あひゃあひゃあはっ、あわわわわわやあわあわわああやだははっひひゃひゃひゃ!」 自分でも何を言っているのか分からない。爆笑、狂笑、引きつけを起こしたようなけたたましい泣き笑い。口から泡のように唾を飛ばして、留めなく鼻汁も出てきてもうグチョグチョに無茶苦茶にどうしようもなく爆笑し続けた。 「あひっ……あひっ……ひいっ……」 性的な高ぶりなら、気持ちで押さえることはできる。でも、こそばゆいとかくすぐったいって気持ちを気力でなんとか押さえるなんて人間の身体では無理なのだ。オジサンにくすぐられるだけくすぐられて、私は身体を反り返らせてベットで悶絶した。本当に死ぬかと思った。 私が笑い死ぬギリギリのところで、オジサンはくすぐりを止めてくれたので、私の口はパクパクと酸素を求めながら、死にかけで水に戻してもらった金魚のように何とか息を吹き返した。 「あふうっ……あふう……」 私は眼から涙を流して、鼻からは鼻汁を垂らして、口からはヨダレがダダ漏れてで、いきなりくすぐり攻撃を仕掛けてきたオジサンを批難するどころではなかった。頭の中は笑いに吹き飛ばされて空っぽになって、身体の感覚は消失していた。ただ口から肺へと吸える夏の湿った空気が美味しいと思ったのだ。笑いの絶頂は、エクスタシーの絶頂に似ている。そんなことを、ぼんやりとした頭で思ったような気がする。
そうしてオジサンは、私のぐったりとした股を開いて、ドスンと上にかぶさってきた。唐突で呆気ないものだった。私は、ただぎゅっと抱きしめられたと感じた。オジサンの身体がクソ重いし、暑苦しいと。本当に間抜けなことに私は破瓜の痛みすら意識することはなく、このとき処女を奪われていたのだった。
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第一章「裸の男」 |
「good - better - best」 私が勉強しているノートをオジサンは覗き込んでくる。 「爆乳というか、おっぱいちゃんプルンプルンだね。肌が汗のせいか、蜂蜜みたいな光沢があるね」 ノートを見ているのかと思ったら、私の胸を見ていたようだ。我慢の限界が近づいているけれど、ここで反応すると負けだと思ったので、頑張って続ける。鉛筆の字が筆圧のせいでかなり濃くなっているけれども、どう仕様も無い。 「much - more - most」 「ベストでマストだね、おっぱいちゃんの梢は」 ボキッと、音を立てて鉛筆が折れた。同時に強く書きすぎたせいで問題用紙がびりっと破れる。 「勉強できるかぁー! 私と私のおっぱいの名前を交換するな!」 私はちゃぶ台返しの要領で、机の上の問題集をバサっと撥ね除けた。空に舞う問題用紙がやけに綺麗だった。 「アハハッ、なかなかいいリアクションするじゃないか……おっぱいちゃん」 「まだ言うか! リアクションじゃなくて真剣に怒ってるんですよ、私はあぁっ! オジサンは存在自体が勉強の邪魔すぎます!」 「ほうほう、アハハッ。おっぱいちゃんの胸触ってもいいかな。俺の胸も触らせてあげるからさ」 「人の話を聞け、きけえぇ! 勝手に人の胸を触るな。手なんか掴まれて誘導されてもオジサンの貧相な胸板なんか触りたくないですよ!」 オジサンは勝手に私の胸を揉み始めた。振り回していた私の細い腕を掴んで、その交換にというつもりなのだろう。オジサンの薄い胸板に手を押し当てられるのだが、嬉しくない。悲しくなるだけだ。 「うわっ、なんというか梢ちゃんの……あっ、いけない。アハハッ思わず名前で読んじゃったよ。おっぱいちゃんの梢はすごいねっ、この弾力はあり得ないよね」 私の胸の弾力を確かめるように、ゆっくりとオジサンの大きな指でも抱え切れないほどのボリュームの私の胸についた肉の塊を優しく揉みほぐしていく。まるで形を確かめるような手つきだった。
オッパイが大きくて友達には「梢ちゃんはセクシーでいいな」と言われることは多々あるが、夏は暑苦しくてしょうがないし(ちゃんと汗落とさないと、谷間に汗疹できるし)ブラジャーは値段が高くなる上にろくなものが無いし、邪魔以外の何ものでも無い。だいたい、オジサンに揉まれて嬉しいわけがない。邪魔なオジサンが邪魔な私の胸を揉んでいると考えると、なんかスッキリと収まりがつくような気もしたが、それにしたって納得が行かない。 「どうして意地でも、私とオッパイの名前を交換しようとするんですかっ!」 突っ込む部分はそこかよと言われそうだが、胸を揉まれるのは不思議とオジサンの笑い顔を見ていると許せるのだ。それよりも名前をイジられるのが許せない。 「アハハッ、やっぱ面白いね。梢ちゃん普段もツッコミキャラでしょ、そういう全部拾っていこという気持ちは大事にしないとねっ!」 ねっ!の表紙に、私のおっぱいをぎゅうううううっと握りしめた。 「イタタタタタッ、オジサン芯は痛いから止めてっ、イダイからっ止めてけれ!」 成長過程の(恐ろしいことに私の胸はまだ成長を続けている)胸を揉むと痛いというのをオジサンは知らないのだろうか。脂肪の部分はともかく、芯の部分に指の圧力が到達すると耐えられない。成長期のオッパイの芯……その存在のあまりの痛さに、私の語尾は何処の地方か分からない感じに訛った。恐るべし成長期の痛み。 「アハハハッ、おっぱいちゃんは痛がるリアクションも面白いねえ」 「悪魔かっ! イダッ痛いれす……止めて下さい、ゴメンナサイゴメンナサイ……」 人が痛がる姿を見て笑うって言うのは、どういう神経なのだろう。こんな鬼が居るから戦争がなくならないんだ。それなのに、おっぱいの芯をグリグリされただけで私の身体は椅子から転げ落ちるように床に転がって、オジサンに許しを乞うていた。 「アハハッ、ごめんごめん。痛がらせるつもりじゃなかったんだけど、おっぱいちゃんのリアクションがあまりにも面白いから」 「もう分かったから……堪忍してぇ……」 胸の痛みに耐えかねて、私のプライドは見事に砕けさり、昔の官能小説みたいなセリフで止めてもらうしかなかった。
私は体力をだいぶ消費し(真夏にギャーギャー騒いでるだけで相当疲れる)清潔なシーツの引かれたベットにゴロリと横になった。このような体勢でも、驚いたことにオジサンはまだ私のおっぱいから手を離していない。吸いついて離れなくなったみたいに。 「いやーすごいね、超高校生級の爆乳だよね」 「私は、まだピチピチの中学生ですから……」 優しく揉んでくれているのだが、いつ強く揉まれるかもしれないという恐怖から強い突っ込みを入れられない。さっきから、乳首ばかりを捏ねくり回しているのも、だから強く言えないのだ。 「フヒヒッ、梢ちゃんの乳首を吸ってもいいかな、俺のも吸わせてあげるからさ」 わざとなのか豚が鳴くような声で笑い、乳首を吸う許可を求めるオジサン。いいわけ無いのだが、吸ってれば変なこと言わなくなるかな。 「しょうがないですね」 「ウヒヒ、じゃあ寛大なおっぱいちゃんの、梢の先っぽを吸わせてもらおうかな」 許可を出してあげたのに、一言多いオジサン。梢とは、枝の先端を意味する言葉で「先っぽを吸わせてもらう」というのは、結構上手いこと言っている。だからこそムカつくのだが、梢は疲れはててベットに横たわっているので突っ込むような余裕はなかった(小声で「クソが黙れ死ね」とは悪態ついたが)。 乳首は、女の子が一番敏感な部位の一つ。 「ううっ……」 先っぽをチューチュー吸われたら、痛みとは違うキュンとした感覚が身体を貫く。左の胸は心臓に一番近い部位でもあるから、生理的反応で感じてしまうのは仕方が無いのだ。 「あっ、おっぱいちゃんの乳首が立ってきたよ」 だから、そういうデリカシーのないことを言われるのが一番ムカツクのだ。舌先で優しく突っつくようにしたかと思うと、今度はザラザラとした舌の腹を勃起した乳首の先にこすりつけるように刺激してくる。
「うんっ……うんっ……いやっ……」 ためらいがちに声がでてしまうのは仕方がないことだった。 オジサンは、私の乳を根元から掴んで乳首を吸い上げることに必死になっているらしい。黙りこくって、ただ直向きに私のおっぱいを弄繰り味わっていた。 ブンブンと回る荷台の扇風機の音と、チュパチュパと乳を吸いあげるオジサンの舌の音だけが響いている。なんだか腰がもぞもぞする。本格的に変な気分になってしまいそうなので、私は目をつぶって耐えた。 集中力が強い性格というか、一度そうやって感覚を遮断してしまおうとすると、割とうまく出来てしまうのが私の性格だ。自分の乳首が立っていることも、ジンジンとおっぱいの芯が痛むのも、オジサンが胸を舐めまわしている感触も、腰がゾワゾワする感覚も遠い世界の出来事のように感じる。
「ジージー」と染み渡るような蝉の鳴き声。
(あれ……) 本当に全く、胸を嬲られる感触がなくなってしまった。ちょっとしたショック状態で疲れていたので、夏のけだるい温度に身を任せて横になってしまえるのは気が楽なのだが、あまりにも静かなことにそっと眼を開けた。 眼を開けると、オジサンが私の足の間で手を合わせていた。穿いていたはずのハーフパンツも白いパンティーもない。私は、素っ裸になっていた。 「……なんで私の股を見て手を合わせてるんですかっ!」 「いや、あまりにも綺麗だったから」 「どうして、下まで裸になってるんですか。腰がゾワゾワすると思ったら脱がせましたね、オジサンが脱がせたんですねっ!」 「ほら、見てみて。ほらほら! 俺も下半身脱いでるでしょ。お互い様だよ」 「ギャア、そんなもの見たくないです! ああっ眼が汚れる、眼が汚れるぅ! エグイソーセージが目に焼き付いてしまったぁぁ!」 私はベットの上をズルズルと後ずさりして、端っこに縮こまる。いつの間にか真っ裸にされていたまではいいとしても、オジサンのおチンチンが凄い勢いで勃起しているのはちょっと淑女としては耐え難い光景。 「エグイソーセージなんて酷い表現だな……あれおっぱいちゃんにいわれたから酷いと思ったけど、そんなに酷くないか」 うちは母子家庭なので、お父さんのも記憶にないのだ。生々しすぎる。 「とにかく、その汚らわしいモノを近づけないで下さい ギャーーー!」 近づけないでといったら、とたんに嬉しそうに顔の前に持ってくるこの人は子供か! 嫌がる女の子に虫を投げつけてくるガキなのか! 「アハハッ、おっぱいちゃんのオマンコを見せてもらったんだから、俺のチンチンも見せるのが道理だろう。ほらオマンチンオマンチン!」 嫌なのに目をそむけることが出来ず。見てしまった。 「それは通りかもしれないけど、だいたい私のオマンコだって……ううっ、オマンコなんていっちゃった。股だって見てくれって頼んだわけじゃないのにー、そんなもの見たくないです!」 「フフンッ、これは見たくないっていうなら。これはどーかな」 「あっ、私のパンツ……」 何の変哲もない私の白いパンティーだが、股の布の厚いクロッチの部分を見せつけるようにしてくる。そこには縦筋にそって……濡れていた。 「あひゃひゃ、この濡れてる液体はなんだろうなー」 「汗です……汗っ!」 「汗なら匂いを嗅いでもいいよね……クンカクンカ。あれっ、なんだか汗じゃないっぽいな。ネチョネチョするし」 嫌味なオジサンの口調に、怒りが迸る。私は髪の毛が長いからいいものの、短髪だったら怒りと静電気で逆立っているに違いない。そう考えたとき、ふっと嫌な予感がした。このパターンは前にやったようなデジャビュを感じる。止めなくてはいけない。
「…………あっ、わかりましたから止めて」 「舐めて調べてみよう……ペロリと。おや、塩っぱくないぞ。美味しいメスの味がするぞ。これは汗じゃなくて、おっぱいちゃんがおっぱい揉まれて気持ちよくなって漏らしたマンコ汁、愛液ってやつじゃないのか?」 私は遅かったようだ。パンティーを奪おうと手を伸ばしたのだが、すっと避けられてクロッチの部分を舐めまくられた。 「……畜生め。そうですよ、生理的反応ですもん。恥ずかしくなんかないですよ。しょうがないんですよ女の子はそういう身体の構造になってるんですよ。それをあからさまに咎め立てるオジサンのほうが恥ずかしいです!」 「フフフッ、別に咎め立てるわけではないんだけどな……まあ、俺がおっぱいちゃんの愛液舐めたんだから、おっぱいちゃんには俺の精液舐めてもらおうかな」 オジサンはそう笑って、ニュッと汚らわしいものを突きつけてくる。 「えっ、あっ……そうなるのですか。精液舐めるって、つまりこれをナメないといけないってことですか」 「フフフッ、そうなんだよねー。さあ、可愛いお口でペロペロしてごらん」 「ううっ、しょうがないですね」 パクっと咥えた。嫌がっても、どうせ舐めさせられるし、女は度胸である。想像していたような気持ち悪さとか、想像を絶するマズい味というわけではなかった。初めて舐めたおチンチンは磯臭い味がした。汗の味ってわけでもないんだけど、男のおチンチンは海産物関係なのだ。 「いやあ、おっぱいちゃんにおチンチン舐めてもらえるとはね。もっと亀頭に舌を這わせるようにしないと、精液は出ないよー。おっぱいちゃんは、髪も良い香りがするね。シャンプーは何を使っているの?」 私の長い髪をすくいあげて、オジサンは匂いを嗅ぐようにした。髪フェチなのか、気持ち悪い。いまさらそんなことを気持ち悪がってもしょうがない気がするけど。シャンプーは何を使ってるかって…… 「ふごふぐっ……」 おチンチンを舐めたままで私に答えられるわけもない。私のリアクションを見て、またフフンを鼻で笑った。私は睨みつけるしか手がない、いつまで私はおチンチンを舐めていなければならないのだろう……オジサンが射精するまでか。 オジサンは私の頭を掴むようにして、まるでお口を性器に見立ててピストンするようにした。私の目の前にはちょうどオジサンの腰が近づき。でっぷりと太った腹が鼻先につきそうな感じで不快だ。 そうやって、口内を自由に蹂躙されても、なかなかオジサンの口淫は終わりそうにない。私のお口が唾液とオジサンの先走り汁で湿り気をまして、ジュプジュプと嫌らしい音を立て始めた。不快感よりなにより、息が詰まりそう。
「俺はオジサンだから、遅漏気味なんだよな。早く終わらせるためだから、おっぱいもませてね」 あっ、おっぱいを梢と呼ぶのは止めたのかとチラリと思った。暑さで頭がぼんやりとしているから、まともな発想が浮かんでこないけど。さっきまで私は、夏休みの宿題をやっていただけなのに、一体何がどうなってオジサンのおチンチンを舐めさせられる羽目になったのだろうか。 「うん……ううっ……」 おチンチンを喉の奥に突っ込まれてえずきながら、今の私は、残念なことに胸を強く揉みしだかれることすら、気持ちよくなってしまっていることに気がついてしまった。さっきまで痛みに感じていたというのに。こうなってくるとジュプジュプというエッチな音が心地よく感じられて、マズイと感じていたオジサンのおチンチンの味ですら何か艶めかしいものに感じられる。自分が自分で無くなるような感じが、怖かった。 「ほら、舌を這わせる動きがお留守になってるよ」 私は言われて気がついた。慌てて、舌で口内いっぱいに突っ込まれてる逞しい肉棒をぐりぐりする。自分でも喉を鳴らして、ジュプジュプとピストンするようにした。こんなんで、男は気持ちよくなるものなのだろうか。 私の胸ですら、こんな乱暴なやり方で刺激されて気持ちよくなってしまうのだから、きっと男の人も刺激されれば気持ちよくなってしまうのだろうと思えた。その証拠に、オジサンのチンチンは口の中でピクピクと脈打ち始めた。ドクドクと激しい脈動、血流がおチンチンに集まっている感じを舌先に感じる。 オジサンは気持がいいのか、胸を揉むスピードもぐんぐんと上がって、私は咥えている生臭い肉の塊を吐き出さないように必死だった。 「よし、射精するから全部飲み干してね」 ドリュドヂュドプドピュ、私の口の中を襲った嵐を音にするとそんな感じだろうか。 ドクドクドクッと、口の中に飛び込んでくる。それは私にとって、飛び込むなんて生易しいものじゃなくて、喉に激しい激流となって降り注ぎ熱く焼いた。あまりにも苦くマズく粘り気のある液体がいきなり喉に流し込まれたから、私の眼から悲しくも無いのにドバドバと涙がこぼれた。 それでも言われた通り何とか飲み干してしまうと、私は口の中から柔らかくなった肉棒を吐き出し、口の周りに付いていた白濁液を拭き取る。ああっ、男のお汁を飲んでしまった。フェラチオをこんな形で、経験することになるとは夢にも思わなかった。
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序章「笑う男」 |
私は、夏休みの宿題を机に向かって片付けていた。 夏の暑い盛りだが、暑いのには慣れている。体質的にクーラーが苦手なのもあって、窓を開けて二つ扇風機を回して机に向かう。窓からは朝がた降って止んだ雨のおかげか、雲間から虹が出ていた。 夕方にさっと降る雨は夕立だけど、朝方にさっと降って通り過ぎて行く雨はなんと呼ぶのだろう。 (朝立ち……?) 馬鹿なことを考えていてはいけない、頭を振るって雑念を追い出し宿題に集中する。出来れば、八月の頭ぐらいまでに全部終わらせてしまいたい。別にそんなに急ぐ必要もないのだけど。 友達の芽衣に言わせると 「夏休みにダレないように勉強させるのが夏休みの宿題なのに、梢みたいにささっと終わらせたら宿題の意味がないじゃない」 なんて言われるんだけど。やってしまわなければいけないことが残ったまま、別のことをするというのが私はどうも苦手な性格なのだ。八月には、夏祭りやお盆や家族旅行なんてイベントが目白押しなので、先に宿題を終わらせてすっきりして楽しみたい。すっかり集中していた私は、だから後ろに人が立っていてのぞき込んでいるのに気がつかなかった。
いや、気がついてはいたのだと思う。扉が開く音も後で思い出すと耳に入っていた。集中していると、些細な音は意識しなくなるということがある。だいたいここは自室なのだ、後ろから私の勉強の様子を覗き込むのはお母さんぐらいしか考えられない。 「ウフフ……」 耳元で笑い声が、聞こえたような気がした。いや、聞こえた。男性の笑い声だ、私の意識はまだ勉強に集中している。 「ウフフフ……ウハハハハハハハハハハハハッ」 堪えきれないというように、私の耳元で笑いが爆笑した。振り向くと、私の身体にピッタリと張り付くような近い距離で、オジサンが腹を抱えて笑っていた。 「…………だっ、誰なんですか」 あまりの出来事に私は硬直した。当然の疑問を口に出すのも、ようやく搾り出すようにと言った感じ。驚いているのに、全身の血は冷えて固まってしまったみたい。ただ身体が振り向いた姿勢のままで金縛りにあったように固まっている。その間も、男は目に涙を溜めていまにも私に指差して、嘲笑するかのように笑っていた。極度の驚きを通り越して冷静になった頭で、私はちょっと失礼だなとムッとした。 「オジサンは……お母さんの友達ですか?」 「ウフウフフフ……いやあいやあ、友達と言えば友達かな。さっき会ったばっかりなんだけどね」 「えっ……」 意味不明なオジサンの言葉に、私が詰まったのを見ると安心させるように笑いかけて肩に手をおいた。 「泥棒とかじゃないから安心するといいよ。フフフそういう意味では、私は極めてセーフティーセーフティーボーイと言ってもいいかな」 「ボーイって、年齢でもないですよね」 笑われてムッとしたのも手伝って、結構辛辣なことを言ってしまえる私。オジサンはどう好意的に見ても、三十路か下手すると四十路。少なくともお母さんよりも年上であることは確かだ。 「フフンッ、なかなか言うね。オーケー、セーフティーマンってところにしておこう。英語は良いね。オジサンとか、ジジイとかって下品な言葉がなくて。男はおしなべてジェントルマンだよ」 「いやぁ……」 英語にも、オジサンとかジジイって言葉はあると思うのだが中学二年生の私の学力では「senior(シニア)」ぐらいしか単語が思い浮かばないので(シニアに侮蔑的な意味はない)ツッコメないのがもどかしい。
「フフンッ、どうやら勉強の邪魔をしてしまったみたいで申し訳ないね、どうぞ続けて続けて」 「えっ……ああっ、はい」 私は、釈然としないままに言われたとおりに英文法(グラマー)に戻る。本当になんなんだこのオジサンは。 「おや……あれ、英語中二コース? 君は……えっと山田 梢(やまだ こずえ)ちゃんは中学二年生なのかな?」 「そうですけど……」 オジサンは私がやっている宿題の参考書を見たのだろう、私の名前もちゃんと書いてある。 「いや、フフフッ……アハハハッ、これは驚いた。失敬失敬、君の身体つきを見るに高校生か下手すると、大学生かと思ったのになあ」 そう言って、オジサンはにやりと笑いやがった。気分を害した私は、勉強をやる気が失せたので、鉛筆をパタンと机に置いた。消しゴムがどっかに転がっていく。 「私そんなに老けて見えますか?」 大人びて見られることは、一部の友達に羨ましがられるが私自身は決して嬉しいことではない。十四歳なのに身長が大きすぎるって、可愛くないのだ。だからいまだに私は彼氏も出来ない。 「いや、ゴメンゴメン。フフンッ、もちろん若々しくて可愛いらしいよ。ただほら、梢ちゃんオッパイがすごくバカでかいから……ウハハハッ、グラマー(肉感的な女性)がグラマー(英文法)を勉強してるなんてこりゃ笑えるね」 ようやく褒めたと思ったら、馬鹿にされて貶された。 「喧嘩売ってるんですかっ、コノヤロウ!」 手に持ってた鉛筆で刺してやろうかと一瞬思ったが、流石に大人気ないので(こんなことを考えてるから、老けて見られるんだろうか)胸を隠すように押さえてジロリと睨んだ。そういや、今頃気がついたけど私とんでもない格好だ。 薄手のTシャツに、かろうじてハーフパンツを穿いてて良かったけどブラジャーすらつけてない。とにかく暑くて暑くてしょうがないから……だって、ここは私の部屋なんだし、誰か入ってくるなんて思わないじゃない。 私は、オジサンにジロジロと身体を見られているのが急に恥ずかしくなった。ステテコに半袖の白いシャツという、夏のおっさんルックである(どこが紳士だ)しかもお腹がポッコリと出ている。
「アハハッ、どうしたんだい化物みたいに大きなおっぱいちゃんを急に手で隠して」 「それ以上言うと鉛筆で突き刺してホクロを増やしますよ? ……こんな格好で居るのが恥ずかしくなっただけです」 薄手のシャツに汗がにじんでいるから、乳輪が薄く見えていた。自分が人様にとてもお見せ出来ない格好だと初めて気がついたわけである。たぶん私の頬が赤く染まっているのは恥ずかしいより、怒りが優っているけれども。 「あーなるほど、汗でにじんじゃってるね。暑いもんねしょうがないよね、そーだいっそのことそんな恥ずかしいTシャツは取り払ってしまったらどうかな」 「バカなこと言わないで下さい!」 恥ずかしさを増大させてどうするんだ。 「ハハハッ、そんな事言わないでさ。ほらオジサンも上着脱いじゃうよ。ねっ、だからおっぱいちゃんも付き合うと思って、汗だらけのシャツを脱ぎ脱ぎしようよ」 笑顔いっぱいで、オジサンは白シャツを脱ぎとってたるんだ身体を見せてくる。意外と白い肌なのだが、ぴろんちょと生えている情けない胸毛がいかにもうだつの上がらない感じである。 ジト目で見つめる私の目の前で、オジサンは笑い続けていた。 「ハッ……なんで私、シャツを脱いでるんですか!」 「はい、シャツはこっちに渡してね。うわぅ、凄い甘酸っぱい匂い。癖になりそう……女子中学生の汗の匂いはちょっとした麻薬だね。クンカクンカクンカクンカ、スーハースーハースーハースーハー」 ほんとに、口で匂いを嗅ぐ擬音を叫びながらオジサンは恍惚とした表情で、私のシャツの匂いを嗅ぎ続けている。変態警察犬みたいだった。 「ちょっと、やめて下さい。私の汗の匂いなんて嗅がないでっ! わっ、腋の部分は特に駄目っ!」 「ほら、代わりにオジサンのシャツの匂いも嗅いでいいからさ」 「だれが、オジサンの加齢臭まみれのシャツの匂いを嗅ぐかっ!」 渡されたシャツを投げ捨てる私、いっそ窓から投げ捨ててやればよかったのに、そこまでひどいことが出来ないのが私の弱いところだ。 「暑いんだから、裸になったっていいじゃん。ほら勢い良く脱いだら恥ずかしくなくなったでしょ。おっぱいちゃんは勉強の続きをしなさいよ」 (よくないよ!) そう思いながらも、机の英文問題に戻り鉛筆をカリカリと走らせる。もう、うるさいオジサンは無視だ。私は鉛筆を走らせる機械になるのだ……。
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