第一章「めまい」 |
数学の授業のときだった、文系志望なのに数学は比較的得意な幸助は、うちの担任でもある数学の如月先生があいかわらずの爆乳だなとか気を散らしながらも、なんとか授業についていっていたのだが。 急に、自分の周りにおかしな空気がまとわりついていることに気がついた。 「なんだ……」 予兆……これはまるで朝のあの目覚まし時計がなり始めるまえの前触れ。
ピキィ!
まるで、窓ガラスが割れるような音が響き渡った。思わず、耳を塞いで蹲る。 「あれ……どうかした……ちょっと大丈夫?」 隣の美世が、机に突っ伏している幸助に気がついて声をかけた。 幸助はそれどころではなかった。
キュィィィィィ!
まるで、耳元で戦闘機が離発着するような爆音……耳を抑えても駄目だ。この音は耳の中からしてる! 「あっ……あっ!」 耳を押さえながら、苦しみに悶える幸助。 あっ……これ……やばい。 何故か、頭にフラッシュバックしたのはあの朝の夢。 はっきりと思い出せる。それは一つの数式。 数式に表される一つの世界。 昨日から今日へ、今日から明日へ。 時間Tという前に進み続ける無限にも似た莫大なエネルギーは、無限大数回、割られ続けていく。 時間Tはその身をねじ伏せられ、永久に割られ続ける。世界は、時は、限りなく分割していく。 そして、その無限の除数の果てに、ついに時間Tは四肢を引き裂かれて断末魔の叫びをあげた。
T≒0
時間のエネルギーはついに無に等しく、それは止まる世界!
それは、時間の最後の抵抗だったのだろう。吹き上がる衝撃に吹き飛ばされて、幸助は激しい音を立てて椅子から転げ落ちた。 「いっ、いてぇ……」 頭を抑えながらも、立ち上がる。意識の混濁はもうない。 むしろ頭は爽やかに澄んでいる、そして幸いなことに、耳鳴りはもうしない。 両耳にはさっきの爆音の名残のように、チャンネルのあっていないラジオのようなジッーという耳鳴りが聞こえるだけ。 教室は、やけに静かだった。 如月先生は、目を細めてこちらを注視したまま、まるで彫刻になってしまったように止まっている。隣の席の斎藤美世も心配そうな顔を向けて、ペンを握ったままで止まっている。 「おいっ斎藤……」 なんだこれは。何かの冗談か。 「おいっおいって……みんな」 クラス全てが止まっている。クラスの壁掛けの時計も。 思わず自分の腕時計を見た、秒針が止まっている。 「ドッキリじゃないよな……」 隣の教室も覗いてみたが、やっぱりみんな止まっている。 だいたい、空に浮いている雲まで動いていない。 半開きの窓から吹き付けていた風すらも止まっている。 「ふぅ……ありえねぇー、そりゃ時が止まればいいとか妄想したこともあったけどさ」 実際、止まってしまった時間にどうすればいいかわからない。 自分のさっきの感覚が確かならば、確かに時間を止めたのは自分だった。 それなら、動かせることもできるはずだが。
「正直、どうして止められるようになったかすら分からないからなあ」 あの爆音は酷かったが、こうしてきつい授業の合間に休憩を取れるのはありがたい。 動かせるとしても、しばらく止まっているのはありがたいな。
「………………………………よし」
突然、時間が動き出さないとも限らないので少し時間を置いてみた。 よく、漫画とかで時間が止まってしまったのをいいことに、すぐエロいことを始めて、また急に時間が動き出して、怒られるとかいう主人公がいるが幸助にはその気持ちがわからない。 何か自分の分からない理由で止まった時間は、自分の分からない理由で突然動き出しても不思議はないではないか。 用心には、用心を重ねるべきであった。 そうして、そういう用心をするということはやっぱり幸助も少しエロいことをしてみたいという欲求がありありだったのである。
普段動いていない脳みその部分がものすごいフル回転をしているのが自分でも分かる。時間が動いているときには、動かしていないのに止まってから頭が働くというのは本当に皮肉な話だが、千載一遇のチャンスなのだ。
セックスとか……そう思考して幸助は音を立てて喉を鳴らす。 「何を考えてるんだ……俺は」 恥ずかしながら幸助はまだ女性とセックスまでいったことはないのですごくすごく興味がある。 ちなみに、女の子と付き合ったことがないとは言いたくない幸助だ。一応中学のときにガールフレンドっぽいのがいたし、学校変わって一瞬で消滅した関係でも、あれは付き合ったうちに入れておきたい繊細な男心を理解してほしい。 いや、でも脱がすのはアウトだろう。脱がしてて、急に時間が動き出したら、もういいわけのしようがない。結構好みの如月先生の授業のときに、学友に痴漢して緊急逮捕とか目も当てられない。 「でも、服の上からならどうだろう……」 ゴクリッと喉をならす。いつのまにか、喉がカラカラに渇いている。こんな緊張したのは久しぶりだ。少し迷ってから、購買の自販機まで行ってお茶を買って飲んだ。 時間が止まった世界でも、自販機が動くことには、知的好奇心がそそられる。 この世界の仕組みはいったいどうなっているのか。 でも、いまは別の好奇心を満たしたい気持ちではちきれそう、その気持ちを飲み込むようにゆっくりとお茶を飲み干す。 これぐらいで動き出す時間なら、残念だが動いてしまってもかまわない気がした。 調子に乗ったところで、罠に嵌るように痴漢で捕まるよりはそっちのほうがいい。 だから、わざとゆっくり歩いて教室に戻る。世界が音を失っているのが分かった。 「よし、これなら大丈夫」 服の上から恐る恐る。こうなったら教卓の上の名簿を確認しつつ、端から順番に。
服部奈香 林 多恵 藤原佳織 松本祐子 川出加奈 山本佐知 松井菜摘
水谷朱美 小川マコ 柏木 詩 大庭麻紀 本田 愛 辻中有香 磯辺由香里
クラスの全女子を、端から順番に、一人ずつ、ゆっくりと何かを確かめるようにクラスの女のこの胸を揉んでいく。 「やわらけえ……」 その揉み心地は、感動であった。 そうして、クラスの女子の名前とか、ほとんど記憶してない自分に気がついた。 ジロジロ見るわけにもいかなかったから、容姿とかもこの機会に確認しつつ揉む。 幸助のクラスは容姿レベルが高い。各自差はあれど、総じて揉みたくない女子はいないことは幸福に思うべきなのだろう。 これは幸助の偏見かもしれないが、頭がいい娘はそれに比例して可愛い。自分の容姿を生かす術を知っているからだ。 なんだか、とてもいけないようなことをしている気がした。いや、実際にいけないことをやっているのだ。 仄かな罪悪感と、それを吹き飛ばすような大きな征服感。マシュマロのような揉み心地の伸び盛りの乳は勝利である。 おっぱいはいい! おっぱいはいいぞ! そう、叫びたくなるようなハイテンションな気分。 ありえない奇跡を、いま幸助は手にしているのだ。
「さてとっ」 幸助は美味しいものは最後に取っておくタイプだ。 クラスの女子の発育を確認が前菜なら、やはり如月先生がメインディッシュだろう。 二十四か二十五歳ぐらいだっただろうか、独身で女ざかりの如月弥生先生の身体は、熟れた果実のような瑞々しい魅力を感じる。 若い幸助にとっては、同年代の少女よりも、強く女を感じるのだ。意地汚い話だが、股間にダイレクトに来る魅力がある。授業中も、先生を見ながら変な気分になる男子生徒も多く、幸助も実はその口だった。 自分の心臓の音が聞こえるような気がした。それは、同級生の乳を触ってみるのも興奮するが、目の前に聳え立つように広がるでかい乳は、幸助に圧倒的な熱さを感じさせるものだ。 「とっ、とりあえずこっちに向かせて」 ゆっくりと、抱きしめてみた。ここまで時間を長引かせてみて動き出さないということは何かスイッチを切らないと動かないということでもある。少し大胆にしてみてもいいような気がした。 「この程度なら多分、許容範囲……だよな」 自分におかしな言い訳をしつつ、先生のスーツの中に手を入れて中を触ってしまう。少し湿った地肌を感じて、ブラをはずすわけにはいかないが、ちょっと強めに揉む。 「これはたまらない……」 思わず汗ばんだ手に吸い付くような肌、指に絡みつく官能的な柔らかさ。指に引っかかるブラの感触もやけに心地いい。これが、大人の女なのだろうか。 いや、如月先生はやっぱり特別にいい女なのだ。 後ろに回って背中を抱くようにする。鼻腔をくすぐるのは甘い香り。香水なのか、それとももともとそんな香りがするのか。性欲を強く喚起する。如月弥生は、教師にしておくにはもったいないようないい身体をしている。 「服の上からとか、我慢しきれないよなあ」 興奮の余り、幸助はスカートの中にも手を入れて湿った内股をさするように触る。 「うあ、すげえな」 内股から興味の赴くままに、如月先生の大事な部分へ。シルクであろう下着の滑らかな感触。さするたびに、それは湿度を増していくようだった。服を脱がさずに、手だけ突っ込んで愛撫していると、まるで痴漢をしているような気分だった。 「気分じゃなくて……ほんとに痴漢だよな」 いつのまにか、こんなに大胆に。女の身体なんて、触るのは初めてなのに、どうしてこんなことができるのだろう。慎重で、臆病なのが自分だと思っていたのに。時が止まってから、幸助はまるで自分が自分ではないような気がしていた。 「いや、自分は自分だよな……いいわけだよな」 きっと、幸助はエロかったのだ。時が止まって、まるで夢みたいで、だからそういう自分が顔を出しただけなのだろう。 「あっ……おっぱいが」 ブラの中に手を押し込んでいるうちに、乳頭に触れていたらしく、調子に乗って触っているうちに乳首が立っているのが分かった。 「うわー、こういう風に立つんだ……」 ドキドキした。興奮がもうこれ以上はないぐらいだったのに、それよりももっと気持ちが膨れ上がっていくようで、身体中が熱かった。 「やべえっ……これはやべえ」 興奮で、心臓が爆発しそうだった。身体全体がドクドクして、はちきれそうだった。 下着の、如月先生の股の部分が明らかに濡れていたから。 時が止まっていて、人も身動きしなくて、それでも。 「濡れるんだ……」 本能的に分かった。この世界でも、やれてしまう。セックスできてしまうのだ。 「だけどそれは」 やばい、やれるからってそれじゃあって話じゃないだろう。 なんとか、自分を押しとどめて手を引いた。 理性が勝ったというわけでもないのだ。なんというか、如月先生はすごい魅力的だとは思うけど、初めては好きな相手とやりたいみたいなことを考えて、それでなんとか自分が止まった。 なるべく、元通りになるようにブラを戻す。少し濡れてしまった下着はもうどうしようもないよな。まあ、ばれないだろう。 「ふぅ……」 大きく息をつく、呼吸が止まるぐらい興奮していたのだ、少し疲れもする。股間の一物はすでに痛いほど勃起していて、その滾る血はまるで自分とは違う別の生き物みたいで押さえようもなかった。 「メインディッシュの後は、デザートだよなあ」 最初から考えていたことだ。だから、他の女子を触っててもあいつだけ除外したわけだし。 斎藤美世、その顔は心配そうに曇っている。 「一応、俺の心配をしてくれてたんだよな」 それを触るというのは、最低なんじゃないだろうか。そう思いながらも、恐る恐る美世の頬に手を伸ばす。 幸助は顔を近づけて、そっとキスをした。 美世のときだけに感じる、ものすごい罪悪感。それはきっと、心配してくれたのにとか,そういうことだけのものではない。 美世のぷっくらとした唇は、とても柔らかくて甘かった。 それは、胸の熱い塊がぐっと押し出されるような、満足。そう、満足だった。決して届かないものが、ちゃんと届く。満たされないものが、満ちるような素敵な感触。 「愛情と性欲って別なのかな」 唇を離した美世の顔は、やっぱり心配に曇っていて少し頭が冷えて、そんなことを考える。それでも、やっぱり身体は熱いままだ。 「頭と身体みたいなもんだな」 美世を抱き上げて、もう一度だけ、背中に手をまわして、ギュッと抱きしめた。 そうして、もう一度キスをする。回した手に、しっとりとした髪が絡みついた。 身体と心が震えて、ただそれだけで、どうしようもなく、気持ちがよかった。 自分の腕の中で見る美世は世界で一番、綺麗だった。 「うぁ……これって……うは!」 そして、抑えきれぬものが吐き出されていく。 ドクドクッと、自分の股間に熱いものが広がっていく。 恥ずかしい話が、幸助は自分の物を、美世の腰に押し付けただけで、パンツの中で射精してしまったのだ。 「うぁ……やっちまった」 なんという嫌悪感。朝に夢精してしまったのを確信したような、なさけなさ。これはちょっと、我ながらひどいだろ。 急速に、頭が冷えた。射精しきってパンツが汚れて、惨めな満足に浸る身体。そして頭に去来する。その思いを逆らわずに声に出してみる。 「かける……」 胸のうちから、世界に広がる力。これは、もしかすると。 「やべぇ」 美世を自分の席に放り出す。 「ぐぁぁ」 自分も自分の席に戻る。始まっている、乗算が。 無限に分割されていた時が、世界がかけ合わさる。 時間Tは、その力を少しずつ取り戻し、時は元の運行を取り戻す。 徐々に動き始めるその世界で、ただ自らの席に蹲ってやり過ごすしかなかった。 本来なら、時間の拡散するエネルギーを受け止めるなど人の身に過ぎることなのだ。 だが、幸助なら耐えられる。 そして、世界は動き出す。
「幸助、大丈夫!?」 教室はざわめきをとりもどした、頭を抱えているうちに時間は戻ったようだ。 「あれっ、私なんでこんな……じゃなかった幸助くん、大丈夫保健室いく?」 美世が呼びかけてくれている。 「あぁ……保健室いくわ」 「私ついていってあげようか」 そうやって、美世が声をかけてくれる。本気で心配してくれているのは分かる。 「いや、いい。俺一人で大丈夫」 如月先生の許可を取って、保健室に一人で向かう幸助には、考えないといけないことは山ほどあったのだが。とりあえず、濡れたパンツをどうしようかと考えていた。
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序章「ゆめ」 |
太古の昔、ギリシャの哲学者ゼノンは、奇妙な夢を見たという。 前を歩く亀と俊足の男アキレスが競争しても、アキレスは永遠に鈍足の亀を抜くことが出来ないというおかしな夢を。 どうして、そんなことがありえるだろうか。 アキレスは、後ろから亀を追いかける。その距離は十秒後半分に縮まった。 五秒後には、そのまた半分に。 二秒半で、そのまた半分。 一秒と四分の一で、そのまた半分。
ゼロコンマ六百二十五秒でまた半分……コンマ三千百二十五秒また半分……
これ以上書くとアラビア数字を使わないといけないので勘弁願いたいが、もうお分かりだろう。 こうやって、距離半分ずつ時を進めていけば後続のアキレスがどれほど早く走ろうとも亀に追いつくことはないのだ。
「そんなことはありえない?」
それはそうだ。普通に見ていれば、あっというまにアキレスは亀に追いつき、追い越すだろう。それが現実だ。 どんなに論理的に正しいと主張しても、このゼノンのパラドックスは、ボケた爺が見た朝の夢に過ぎない。 でも、本当に永久に時を半分ずつに分けられるとしたら。 瞬間をコンマの遥かかなたを越えて、永久に割り続けられる人間がいたら。 きっと、彼は時を止められる。
――――そう、きっと、ぼくは、時を――――
富阪幸助は、ふっと目を覚まして、枕元の時計を見つめた。
――止められる――
七時十五分ジャスト、ピッピッピッと不愉快な音を立てて目覚ましが鳴り出した。 「ふぅ……なんかまた変な夢を見たなあ」 そう呟いた途端に、その妙な夢とやらも霧散してしまって、思い出せなくなるのだ。 さっさと、ボタンを押して目覚まし時計の音を止める。 そして、若干の寝不足を振り切るように、伸びをしてカーテンと窓を開けて朝の光と共に爽やかな空気を吸い込む。 「今日もいい天気だなあ」 朝露を含む、朝の湿った空気は、不思議と頭をさっぱりとさせて覚醒を促す。 空はすでに朝焼けを超えて、青く染まりつつあった。
富阪幸助は、高校二年生であるので、これからさっさと朝食を取ってすばやく電車に乗って私立吾妻坂高校に向かわなければ成らない。 ほとんど味もなく、母親が適当に作った目玉焼きとベーコンをおかずに、トーストにジャムを塗って食べるだけだ。時間もないので、さっさと制服に着替えてカバンを抱えて電車に飛び乗る。学校の近くまで行けば、友達にあうだろうが、それまでは一人だった。 手持ちぶさたで、ついつい最近の朝の妙な習慣のことを考える。 「なんで、あんな変な癖がついたのかなあ」 幸助は、昔から寝起きがいいほうだったが、最近は異様に冴えているのだ。 目覚まし時計をかけていても、ほぼ確実に鳴り出す直前ぐらいには目が覚めている。 いや、そういう表現すら正しくない。 彼は『目覚まし時計がなる直前の空気を察する』ようにして起きるのだ。 時計の針が、七時十四分五十九秒から七時十五分になる前触れの空気を感じて覚醒する。いまの、幸助の気分を無理やり言葉にすれば、そういう感じになるだろう。
「あの感覚を研ぎ澄ませば、もっと鋭くなりそうなんだがなあ……」 そう呟いて、我ながら馬鹿なことをやってるなあと苦笑する。 目覚まし時計のなるギリギリに起きて、なんの得になるというのだ。 せいぜいが、あの耳障りな目覚ましの音を聞かずに時間ギリギリまで寝ていられるということだけだ。 どうせきちんと起きられるなら、目覚ましなんかかけなくてもいいのに。 かけないと明日ちゃんと起きられるかどうか不安になるのだ。 神経質なくせにだらしない。ちゃらんぽらんなようで細かい。 そういう中途半端さが、この富坂幸助という青年の特徴なのだ。
電車の窓に映る自分の姿を見る。 中肉中背、背は多少伸びたとはいえまだクラスでは低いほうかな。足も少し短いかも。顔は悪くないんだけどな。 そうやって、寝癖を撫で付けてから、ニッと笑ってみせる。 「よくもないけどな……」 情けない顔になる。ぼくはまったく、なにやってんだか。 「ぷっ……ふっ……プフッハハハハッ」 すぐ後ろから聞き覚えのある笑い声が聞こえてきて振り替える。 「斎藤……」 同じクラスの斎藤美世だった。身長は幸助と同じぐらいの彼女が、実は幸助が身長をもう少し伸ばしたい原因であったりする。高一から一緒のクラスで、今は席も隣同士、どっちかというとよく話すクラスメイトだ。友達といってしまってもいいかもしれない、それ以上の関係は、たぶんないのだが。 美世は、最近やや豊かになってきた胸を抱えるようにしてかがみこむ、どうやら笑いをこらえようとして失敗したみたいだった。 「はっ……はっ……ふっふっ……苦しい……お腹痛いブー」 美世は開き直って口を尖らせてブー太郎の真似をしてみたのだが、幸助には理解できなかったようで頭にハテナマークを浮かべている。美世のどこかに突き抜けて帰ってこないようなハイセンスなギャグは素人には難しい。幸助たち平成生まれだからね。 「ぼく……じゃない、俺なんかおかしいことやったか?」 「だってさー、なんか難しい顔して考え込んでると思ったら、急にまじめな顔してすぐにすっごい情けない顔するんだもん。ふっ、おかしいことはないよ。こうちゃんは相変わらず面白可愛いくてよろしいよ」 よろしいそうだ。じゃあ勝手にしていようと幸助は思った。美世の言葉尻を捕らえて反論すると、翻弄されるのが落ちなので言わない。美世に突っ込みができるほど、幸助は口が達者でもないのだ。 「おまえ見てたんなら……」 声かけてくれよと思うのだが。 「ほら、駅着いちゃったよ、ほらほら出た出た」 「押すなって」 手でホームに人の背中を押し出したくせに、それに呆然としている幸助をほったらかして行ってしまう。そういうやつなのだ。 美世の背中を追いながら、幸助は思う。どんな手入れをするとああいう髪になるんだろうと。無造作な撫で付けたようで、その実、艶やかな黒髪をなびかせるようにして、ズンズンと前を行く。この世に恐れるものなどないというかのように悠然とマイペースに。 「はぁ……」 トボトボと後ろから追いかけていく幸助の鼻腔を、美世の髪が振りまいていったシャンプーの香りがくすぐった。 後ろから待ってくれよと声をかけたい気持ちはあるんだが、知り合いとはいえなんか女の子にこっちから声をかけるのが気恥ずかしい。並んで二人で登校できるほど、幸助は女性慣れしていない。 男はみんな黒い学生服だが、女子の制服は学年によって色が違う。美世は二年生だから薄紅色のスカーフに淡いグレイを基調にした制服だ。 美世に押された背中が、今朝はなんか妙に熱い気がした。
大きな正門を通って、学内に入る。入り口近くには、普通科のおんぼろ校舎があり六年制でのんびりした教育を受けている生徒たちが、楽しげに入っていく。 あれを見るたびに、少し羨ましいなと思うのだ。 幸助や美世たち特進クラスの校舎は奥にある、全フロア冷暖房完備・教育施設も充実の立派な校舎で、だからこそ高校から優秀な生徒をかき集めてかろうじて昔は名門校だった吾妻坂高校の名残を残しておけるのだが。 あまり成績のかんばしくない幸助にとっては、先進的な授業もあんまり意味がない。たまたま、吾妻坂特進科の試験日程が早くて、しかもマークシートの出来がすごくよくて偶然合格してしまったのだ。 中学からあがってくる普通科や、幸助のような特進科の落ちこぼれは、十年ほど前に新設された吾妻坂大学にエスカレートで行けるから、そうわりきってしまえば受験勉強する意味もそんなにないのだ。 ただし、新設校の悲しい定め、吾妻坂大学はFランクなのが問題。 特進科の授業は厳しいし、赤点ギリギリだし、もういまからでも普通科に転入してしまおうかと悩みつつ、出来ないのが幸助の現状。 友達が多く、さっきからやたらめったら挨拶して愛想を振りまいてる軽い感じの美世だって、これで勉強は結構できるのだ。愛想がいいというか、八方美人というか。美世は社交的な性格だった。 そして、クラスで浮いているのは落ちこぼれの幸助のほうだろう。
まるでリゾートハウスのような白亜の校舎に入る。地中海風の白塗りの壁は落ち着いていて上品な造りだとは思う。だから、特進科の評判がいいのは頷けるのだが、幸助にとっては無駄にレベルの高い授業のことを思うと、まるで刑務所に足を踏み入れたような気になる。 「はぁ……」 教室を見回してみると、ほとんどの生徒が席についていた。うちのクラスは若干女子が多い。みんな真面目で、しかも教室の半分以上がメガネをかけている。 別にメガネかけてれば賢いということはないのだが、現実に賢いのだからしかたがない。特進クラスはメガネが多いとか、馬鹿みたいな感想を持ってるのは幸助ぐらいなのだろう。 もう高校に入って一年以上になるのに、いまだにお客さんのような気分が抜けないのだ。特進科の生徒は、近くの新興住宅地から通ってきている生徒が多い。そういえば、あそこも結構な高級住宅街なんだよなあ。地方都市のプチセレブ団地って感じだ。 金持ちの子弟が多く、優秀で、おまけに容姿のレベルも結構高いとくる。優等生だからといって、身だしなみが雑になるということはないわけだ。女子の容姿レベルが高いのは、男子にとってはけっこう重要なことではある。 ただこのクラスの子と自分が付き合えるとか、幸助はそんな大それたことは思ったこともないのでそれもあんまり関係ない。せいぜいが、授業についていけないときに、いい目の保養になるぐらいだろう。ちょうど夏服に切り替わった時期なので、前の席の女子が薄着のときに目をこらせば後ろからブラ紐が見えたりする。 特に自分がエロいほうではないといいわけしたいのだろうが、幸助も健全な男子なのだからそういうのに目が釘付けになってもしかたがない。でも、見てるのが回りにばれると恥ずかしいので気がつかれないように、チラッと見るという。 前からなんて絶対に見られない。見ても平気なのは、慣れてる美世ぐらいだろう。 せっかくわりといい環境にいるというのに、思春期の男子高校生の心はやっかいなものなのだ。
この日も普通に始まって、普通に面倒くさくて、普通に終わる。 そんな退屈な一日のはずだったのだが……。
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「おすそわけ」後編 |
上代ユイは、二十五歳の専業主婦である。築五年の賃貸マンションに住み、二歳年上の旦那と生後二ヶ月の娘に恵まれてそれなりに幸せに暮らしている。 最近になって、隣の家の大学生ユウジくんとよく話すようになってきた。彼とは様々なものを『おすそわけ』しあう関係である。彼は旦那がいない間に尋ねてきては、ユイのおっぱいを吸っている。ほとんど毎日のように。最初はちょっと抵抗があったのだが、おっぱいが張ったときに娘のいーちゃんが起きてるとは限らないし、無駄にしてしまうのがもったいないと思っていたので、有効に活用できるなら嬉しいことだ。 それにしても思うのは、ユウジくんは、毎日良くおっぱいを飲むということだ。ユイはすごくおっぱいが出るほうなので、いーちゃんの分がなくなるということはないのだが。よく毎日同じものを、そんなに飲めるものだといつも不思議。彼が旦那がいないときにいてくれると、ユイが苦手なゴキブリとかが出たときに退治してくれるし、手があかないときにいーちゃんの面倒は見てくれる。一人で会話もなく部屋にいると息が詰まってしまうので、無聊を慰める会話相手にもなってくれる。本当にいいことづくめだ。
だからユイはそのお礼もかねて、ユウジくんがいるときは、わざとご飯を大目に作ったりして『おすそわけ』している。たぶん、そのお返しのつもりなのだろうか彼は様々な『おすそわけ』を持ってくる。彼の田舎から送ってきた食品とか、あと精液とかだ。男の一人暮らしで、彼女もいないというのだからいろいろ余ってしまうのはしかたがないことだろう。それをもらえるのはユイにとっては嬉しいことだし、いい関係を築けている。 ただのマンションのお隣同士が『おすそわけ』しあえるなんて、今の殺伐とした時代にとても珍しくて嬉しいことだとユイは考えているのだ。
「こんにちわ」 「いらっしゃいユウジくん」 特に約束はしていないのだが、彼は来るときはいつも午前十時ぐらいにやってくる。朝の片付けが終わって、いーちゃんもお昼寝タイムに入って、ユイがほっと一息つく時間帯だ。 言わなくても、ちゃんとこっちの都合を考えて尋ねてきてくれる。なかなかどうして、気配りのできるいい子だとユイは思う。 「今日も、おっぱいを『おすそわけ』したほうがいいのかな」 「はい、お願いします」 もうほぼ毎日のことなので慣れてしまった。ユイは、上着を肌蹴るとブラをはずして、おっぱいをぽろんと出す。ユイは子供は自分のおっぱいで育てる主義なので、市販のミルクはほとんど使わない。だから、いーちゃんがお腹を空かせたときのためにいつでも授乳できる心構えはできているわけだ。 「ほんとに、ユウジくんおっぱい好きだよね」 「ユイさんのおっぱいが好きなんですよ、すごく甘くて美味しいですよ」 「うーん、朝方いーちゃんがちょっと飲んだけど、むずがってあんまり飲んでくれなかったんだよね。だからそうやって言ってもらえると安心できるよ、ありがとう」 ユウジは、ユイの胸をいとおしむように丁寧に飲んでくれる。最初は、飲み方がヘタクソで飛び散らせたりしたのだが、最近では本当にすっかりおっぱいが空になったようなすっきりした気分にさせてくれるから嬉しい。 それにやっぱり、ちょっと気持ちがいいとユイは頭の中で付け加える。 ユイのおっぱいタンクはすっかり空になってしまった。
「おつかれさまー」 「いえ、ごちそうさまでした」 ユウジは、全部吸い終わってからも名残惜しそうに吸っていることが多いのだが、それが終わる時の見極めもつくようになってきた。何事も経験ということである。 「あの、それで今日はあっちの『おすそわけ』はするのかな」 「そうですねえ」 そういいながら、小さいリモコンのようなものをユウジはひっくり返す。矢印によって挿されている人間には、まったく気にならない動作である。 ユウジがおっぱいを吸ったあとは、ほぼ必ずといっていいほどユイがユウジくんの精液を吸うのがパターンになってきている。最初はすごく苦くて飲みづらかったのだが、最近では多少味がマシにはなってきている。あの濃厚で粘り気が多すぎる味だけはなれないけれど、それでも精液をもらえるというのはなぜかユイにはとても嬉しく感じるのだ。 「じゃあ、えっとチャック下ろせばいいかな」 「あっ、ちょっと待ってください」 「はい……うん」 ユウジは、ユイの目の前で気持ちを落ち着けるように身体を弛緩させると、おもむろに切り出してきた。 「今日は……ぜひ下のお口のほうで飲んで欲しいんですよ」 「えっと……その前にもいったけど」 下のお口で『おすそわけ』というのは、問題が多すぎる。中で、出されたら妊娠してしまうかもしれないし、旦那さんの子供じゃない子を妊娠というのは、ユイにとっては許されないことだ。 いくら、『おすそわけ』だから不倫じゃないといっても、望まない妊娠をして堕児しなければならなくなったり、ましてやそのまま産んでしまうなど旦那さんへの裏切り以外の何物でもない。 ユイは一人の身体じゃないのだ。その話は、前にもゆっくり話してお互いに納得した話じゃなかっただろうか。 「ええ、分かってますよ。ユイさんは妊娠を怖がってるんですよね」 「うん……えっと、そうかな前に道也さんがもう一人作ろうかといってたから、別に妊娠自体は困らないというか……えっと困るのかな」 ユイは、また考え込む癖を発動させていた。そんなユイの様子を観察するようにしながら、ユウジは言葉を選んで話し出す。 「調べたら、ぼくは旦那さんの血液型といっしょだったんですよ。だからもし、ぼくと子供ができても旦那さんには分からないですよ」 「それは……えっと、そうなのかな……でもいろいろと駄目な気がするよ」 ユウジは装置の矢印を裏返す。 「ユイさんの卵子を『おすそわけ』してほしいんですよ』 考え込んでいた、ユイがピタリと止まる。余りにも意外なことを言われたので、思考が停止したのだろうこれは。しばらく、止まっていたのだがユイもようやく言われたことを理解して動き始めた。 「私の卵子は……あまってないんじゃないかな?」 ユイにとって、卵子が『おすそわけ』できるものなのかすら、わからない。 「ユイさん、このまえ出産後初めての生理ありましたよね」 「うん、あったよ」 「人間の女性が、一生に持っている卵子細胞は約五百個だといわれています」 いきなり学術的なお話になって、目を白黒とさせるユイ。 「……はい」 基本的に素直な性格なので、きちんと聞いてしまう。 「そのほとんどは、一ヶ月に一回、月経と一緒に流れていってしまいます」 「そうだね……うん、そうそう」 頷くしかない。 「ユイさんの使われた卵子は、いーちゃんが生まれたときだけです」 「はい、はい」 「じゃあ……卵子は余ってますよね」 「はい……えっと……そうだねうん」 言い負かされてしまった。 「それじゃあ、それと同じように子供を作る子宮なども普段は余っているわけです」 「それは……うん」 「だったら、それらも『おすそわけ』してもらってもいいですよね」 ブルブルと身を震わせて考えるユイ。このままだと、なんとなくやばいことになると本能的に感じ取ったのだ。天然で危機管理のできていないユイに、神様はこういう動物的な察知能力を授けてバランスが取れているわけである。 「あのさー、ユウジくんがいうことはわかるんだけど。それでも、ユウジくんの子供を妊娠しちゃってもいいってことにならないよ」 ユイには珍しく断定口調でいう、理屈ではなくて直感で駄目だと分かるから。 「そうですか、どうして?」 「どうしてって、うーん……だって旦那さん以外の子供を妊娠して、旦那さんに嘘ついて産むってことでしょう。やっぱり、それってよく考えると裏切りになるんじゃないかなと思うの」 本当は、よく考えなくても裏切りになってしまうわけですが。一ヶ月の催眠浸りの生活の効果というのはなかなか馬鹿にできないものがある。それにユウジは、ここにいたるまで一ヶ月近く、ありとあらゆる可能性について思考しまくって来たので、この話も想定の範囲内。切り返しを開始した。 「嘘をついてじゃなくて、誤解されないように話さないだけですよ」 「え……でも、道也さん子供を欲しがってるから出来たらすごく喜ぶし、それで生まれてきてユウジくんの子供だったら、ユウジくんに返すわけでしょ。きっとすごく悲しんで大変なことになっちゃうよ」 ユウジの子供だったら、ユウジに返さないといけないわけですか。『おすそわけ』で産んであげるというのをユイはそう解釈するわけだ。まあこれはユイの脳内の問題なので、そこで解決を図らないといけない。 「あー、問題はそこか。じゃあこうしましょうよ。ぼくの子供だったら、ぼくは学生だから子供もらっても、育てられません」 そういって、また催眠装置の矢印を返す。 「だから、生まれた瞬間に『おすそわけ』しますよ」 また、問題はユイの処理の能力を超えて機能停止した。しばらく、ユイの再起動を待たないといけない。ユウジの予想では、『おすそわけ』されたものは、喜んで受けないといけない。つまり、ユウジの子供でも好んでもらわないといけないはずだ。 「うん、わかったような……頭がすごく混乱してきたよ」 「話をまとめると、旦那さんの子供を妊娠したらそれでいいし、旦那さんじゃなくてぼくの子供を妊娠しても、生まれた瞬間に『おすそわけ』してしまうので、旦那さんとの子供として育てていいってことですよ」 「そっ……そうなのかな」 そうやって、またユウジは矢印を裏返す。 「さあ、諸問題は解決したみたいだし、ぼくの精液の『おすそわけ』をあなたの子宮に受け入れてもらえますか」 「はい……よろこんで……いいのかなあ」 なし崩し的に、押されてしまったユイであった。本当はそんな簡単な話でもないのだが、たしかに血液型が一緒なら遺伝子検査でもしないかぎり、そうそう分かるものではない。日本では、犯罪でもやらないかぎり遺伝子検査なんかしないし。 そして、同時に中出しをしても、ユウジは週に五回である。仕事の忙しい旦那は週に一回あるかないかがせいぜい、そして精液の濃さや粘度、量は全て若いユウジが圧倒的に上回っていた。 どちらの子供ができてしまうかというのは、もう目に見えて明らか。
いいようにいいすくめられて、ユイは寝室のベットで裸に剥かれていた。 「やっぱり、ユウジくん……全部裸は浮気っぽいというか」 「なんで、精液を中に『おすそわけ』するにはそれなりに雰囲気がないとできないでしょう」 「それは、そういうものかもしれないけど」 「だからさ」 ユウジは、組み伏せてユイの胸に吸い付く。 「あっ……」 ユウジは、童貞だが乳を吸ったり弄んだりしまくっていたので、妙にこういうところだけ上手くなってしまっていた。 恐ろしいことに、ユイの胸はさっき全部吸い取ったというのに、早くも乳を生産していたようで、口の中に少し甘い母乳の味がした。 まさぐるようにして乳を攻める。いつもやっていることだ。 「いつもやっていることじゃん」 「そうなんだけど……なんだか違う風な感じなの……」 そういって、競りあがってくる気持ちに耐えかねて苦悶の表情を浮かべるユイはとても色っぽかった。 「ふーん」 「私が悪いのかな……なんでこんな……ただ『おすそわけ』してもらうだけなのに」 ユイも二十五歳の女ざかりだ、週一のセックスでその欲求の全てが満足させられるものでは到底なかったわけである。その心の隙に、いつのまにかユウジは入り込んでしまっていた。 だから、ユウジが触ったところが、すごく熱くなるのを感じていた。 セックスというのは、ただ肉体をぶつけ合わせるものではない。 心が通じ合っていなければ、本当のエクスタシーというものは得られないのだ。 昔は、ユイは旦那の道也と一緒に仕事をして、そのときの道也は少し落ち込んでいたけれども助けてあげて、助けられて、お互いに相手を思いあえる人だと直感的にわかったから迷わずに彼を選んだのだ。だから、愛した。そして、結婚した。ユイはただ、幸せになりたかった。 道也のために、家庭に入って、子供を産んで、旦那はどんどんと出世していった。そうして、いつのまにか二人で過ごす時間もどんどん減っていったのである。ユイは、いまでも道也を愛している。いまだって、夫婦として助け合って、お互いに幸せになっていく途上なのだと信じられる。 「ユイさん……すごい濡れてますよ。女性のあそこって始めてみたけどこんなになるんですね」 「ああっそんなところだめよ、舐めないで」 「これも『おすそわけ』してもらいます」 「うぅ……はぁい」 それでも、ユイは寂しかったのだ。娘と二人で家に居て、愛情を持って育てていても家事も終えたあとの無聊な時間をどうすることもできなくて。 ユウジは、男性としての魅力に欠ける田舎っぽいさえない大学生である。それでも、親しくなってしまえば、そういうことはあまり関係なくなってしまう。朴訥なユウジの素直な好意が、ユイの一番寂しいところに入ってきて、その隙間をすっかり埋めてしまっていた。それはとても満ち足りた幸せだった。 「すごいな……どんどん漏れてきてきりがないですよ」 「もう、入れても大丈夫だから」 そうして、あの毎日繰り返される授乳とフェラチオ。完全な満足を得られぬままに、それがどれほどユイの欲求を刺激し続けたことだろう。旦那との久しぶりの夜の生活が、より激しいものになったとしても仕方がない。 「じゃあ、入れますよ」 「ううっ……奥まで、入ってくる」 それは、待望のものだった。ユイがいけないと思う以上に、ユイはユウジにこうされることを望んでいた。だから、気持ちがいい。だから、叫んでしまう。ユイの膣はついに来てくれたユウジが逃げ出さないようにと、ギュッと吸い上げるように締まった。 「うあっ……気持ちよすぎる」 「あぁ!」 ぎゅっと、ユイはユウジを抱きしめていた。いけないとか、だめとか、もうそういう言葉が頭のどっかに吹き飛んでいって、ただ抱きしめたいと思った。 「ごめん、初めてだから激しすぎて……でちゃいそうだ」 腰を押し付けて必死にピストンするユウジだったが、彼には経験がない。ただAVで見た見よう見まねの行為など浅いものである。なんとか抜けないようにピストンできているのが上出来なぐらいだ。その浅はかで、稚拙な行為を、ユイは優しく抱きしめて、受け止めきっていた。快楽をただ貪っているユウジが動きやすいように身体を動かしてあげる。 自分が気持ちいいのまえに、相手を気持ちよくさせるように。これが経験の違いであり、ユイの心構えでもある。相手を十分に満たしてあげれば、自分も満たされる。そういうことが自然にできるのがユイだった。 「いつでも、出していいから……ね」 上目遣いに、抱きしめてユイは濡れた瞳でユウジを捕らえて離さなかった。そうして、その瞬間にユウジのものが限界を迎える。 「うっ……ユイさん、出ちゃう!」 精液というのは、これほど熱いものだったのだろうか。ユイの一番奥まで届いた、ユウジの棒状の肉が、中の精液を吐き出すようにして、たっぷりと射精した。 指でもつまめそうなほどの粘性をもった精液が、たっぷりとユイの子宮口に降り注いだ。 「お腹……熱い……」 まるで、熱湯を自分のお腹の中に注ぎこまれたような熱さだった。それは、ユウジが生み出した生命を運ぶ熱さなのだ。それが、ユイの赤ちゃん袋の入り口に隙間なく振りかけられて止まらない。 「気持ちいい……ユイさん気持ち良すぎて」 まるで、独立した生き物になったように、ユウジがユイにぴったりと抱きついたままで動きを止めても、ユイの中でユウジの息子はピクピクと動きをやめずに、壊れたように精液を吐き出し続けた。 もしかしたら、一回じゃなくて何回分も連続で射精してしまったのかもしれない。 次々と吐き出される精液の塊は、行き場を失い、細い子宮口を通って子宮の内部へと注ぎ込まれていく。 「まだ出てる……元気ね」 旦那には本当に悪いのだが、中に出されて感じるなんていうのはユイには始めての経験だった。ただの射精だが、中にはじけるような衝撃とお腹にずっしりとくる充実感はたまらない。 「こんなに気持ちがいい射精は生まれて初めてでした」 「私も、気持ちよかったよ……まだする?」 「今日はちょっと、もう玉の中のもの全部でてしまったみたいなんで」 「じゃあ、お口で綺麗にしてあげるから」 そういって、腰が立たないようなユウジを起こしてあげて、ユイはちゃんと舌で後処理もしてあげた。
それから、毎日のようにたった一時間ぐらいの時間だが、ユイとユウジは逢瀬を重ねるようになった。おっぱいを吸ったあとで、あるいは吸いながらすることもある、そして必ず何回かユウジは、ユイの子袋に遺伝子情報のつまったお玉じゃくしを吐き出していくのだ。 ユウジの『おすそわけ』が特に激しくなるのは、ユイが旦那に抱かれた次の日だった。言わなければいいのに、ユイは旦那に抱かれたことを必ずユウジにいうのだ。それがユウジの嫉妬の炎を燃え滾らせて、その日は長く、ひときわ乱暴に犯される。 「ぼくのほうが、ユイさんを満足させてるし、たくさんしてるからユイさんはぼくの子供を妊娠してくれますよね」 「うーん、それはどうかしら……」 どっちの子ができるかわからないというのは、ユイにとっては免罪符なのだ。 「しますよ、ぼくはもっと一杯出しますから」 「あっ、そんなに乱暴に」 もしかしたら、そうして力強く若いユウジに陵辱されることを、ユイの中に住む女という怖い生き物が望んでいるのかもしれない。 乱暴に胸を揉みしだきすぎて、ベットで乳が噴出してしまった。乳の甘ったるい匂いがベットについてしまうが、それもまあ旦那とのときもあることなので、問題はない。 ユウジは噴出した乳と共に、ユイの乳房全体を嘗め回してむしゃぶりついた。まるで自分のおっぱいが、食べられてしまいそうだとユイは思った。ユウジも回を重ねるごとにうまくなってきて、ユウジの腰の長物で自分の穴の深いところをグリグリ突かれてしまっては、もうおっぱいも食べられてしまってもいいかもしれないと思う。 一度火がついてしまえば、乳頭を齧られたような痛みだって、全部快楽に変換されてしまうのだった。 痛ければ痛いほど、苦しければ苦しいほどに、切ない快楽が自分の中で競りあがってくる。若いユウジのやりようというのは、ただ優しいだけのセックスではなったのだ。 それは、ユイにとってもユウジにとっても、汲めば汲むほどに噴出してくる快楽の泉のようなものだった。 たまらなくなって、ユウジは罪を吐き出すようについ口にしてしまう。
「ユイさん、好きです、愛しています」と。
「それは……それは駄目よ、ユウジくん。私はちゃんと夫も子供も愛してるから」 だから、それを言ってしまってはどんなときでもユイは冷静になってしまう。それが分かったらユウジだって冷めてしまうのは分かっているのに、どうしても言ってしまうのはユウジの若さだろう。 どれほど、愛しぬいても、それは変わることがない。 ユウジは諦めたように、笑ってこういうしかない。 「じゃあ、愛の『おすそわけ』をくれませんか」 「うん、それならあげるわ……私はちゃんとユウジくんの分も……余らせているから」 そういって、ベットのうえで優しくキスしてくれた。 ユウジは、まるで始めてキスをしたというように、必死になってユイの唇に吸い付く。舌を絡め合わせて、唾液を交換しあった。そんな行為のひとつひとつが、気持ちを高ぶらせていくのがわかった。 肌と肌を触れ合わせているから、お互いの鼓動が高まっていくのが分かる。 「ユイさん、愛してます」 「わたしも……」 本当の快楽というのは、射精にはない。本当は、その前と後にあるのだということをユウジは初めて知る。自分の腕の中に抱きしめられる女と視線を絡めて、まるで溶け合ったようにまぐわう。 お互いに高まりあう気持ちは、ユウジを心地よく絶頂へと導いていく。 ユウジの下で、ブルンブルンとユイの形のよい巨胸が震える。その乳の隅々までも、ユウジは知っていた。毎日、ユウジが飲んでいる乳房なのだ。ユウジのものになっているおっぱいなのだ。 ユイの身体なら、ユウジは隅々まで知っていた。それに触れていること、その存在の暖かさがユウジにはたまらなく気持ちよかった。 「ああっ……」 「うぅ……」 ユイの膣は、子供を一人産んだとは思えないほどきっちりとユウジのものをくわえ込んで離さない。それは隙間なくぴっちりと吸い付くようで、ユウジのモノを掴んで離さない。もうユイの襞とユウジのカリが溶け合って、接合した性器を通してひとつの生き物になってしまったみたいだった。 腰を強く押し付けながら、お腹をさする。 ここには、ユイの子宮があって卵巣管が伸びていて、ユイが卵を吐き出す卵巣がある。ユイは、ここで旦那の精を受けて子供を育てたのだ。 「ユイさんは、ここでいーちゃんを育てたんですよね」 「そうよ……」 セックスしながら子供のことを言われて、ユイは子宮の奥がキュンとするのを感じた。おっぱいを含んで幸せそうにしているいーちゃんの顔も思い出す。可愛い、ほんとうにもうどうしようもなく可愛い。 男としての旦那への愛と、子供への愛情というのはまた次元が違うものだ。そうして、そのいーちゃんと一緒のように自分の乳を吸っていたユウジに生まれた愛情というのは、子供に対する愛に近かったんじゃないかとユイは思ったのだった。 それに、ユウジのたよんない顔は、なんかユイの母性を刺激してくるのだ。これは内緒だが、ユウジに吸われるようになってからさらに乳の出がよくなったりしている。 いーちゃんと一緒のようにユウジを育ててあげたいなんていったら、いくら年下でもきっと怒っちゃうだろうなと、快楽に気が遠くなりながらも、のんきなことを考えてるのはやはりユイらしい。 「ユイさんそろそろ排卵日ですよね」 「そうねー、そうだと思う」 毎日やっているから分かるのだが、ユウジが感じる今日のユイの膣はいつもよりも熱く感じて、愛液の滲み出し方も尋常ではなくて、絡みつく粘度も勝っていた。引き抜けばチュプと音を立てるほどの吸い付きである。 そういわれて、確かになんとなくユイにもそんな感じがすると気がついた。 「ぼくの番ですよね……」 「ん?」 「いーちゃんの次は、ぼくの子供を育ててくださいよね」 「……うん、いいよ。なんとなく、いま出してくれたら出来ちゃいそう」 よく分からない理屈だったのだが、ユイは納得した。喋らなくても、触り方や力の入れ方で相手の気持ちなんて、分かってしまうのだ。こうして溶け合ってしまえば。ユウジを育ててあげるかわりに、ユウジの精を受けてユウジの子供を育ててあげてもいいかもしれない。 頭で考えるとあんまりよろしくないのだが、ユイの子宮の奥はなんか熱くて「それでもいいよ」って言ってるみたいだった。子宮がいいといっているのだから、ユイがなんといっても卵は出ちゃうだろうし、妊娠しちゃうだろうし、いい子が育つだろう。 「それじゃ、タップリ出しちゃいますね……もういつでも出せます」 「うん……きてきて!」 そういって、ユウジの腰の動きはラストスパートに入っているのが分かる。 「精子出ます、お願いです……ユイさん孕んでください」 「んっ……ちゃんとユウジくんの孕むよっ!」 ユイの一番奥で、ユウジの肉棒のカリと肉襞が触れた合った音がしたような気がした。ユウジがドンと力強く押し込んで、ユイの膣壁がキュゥと隙間なく吸い付く。 ユウジのちんちんの出口の先とユイの子宮の入り口がチュとキスをした瞬間に、亀頭がドロッドロの精液をドピュドピュと吐き出し始めたのがわかった。 「あっ……ああっ……」 「出てる……精子いっぱい出てるね」 ユウジのモノが震えて、精液を噴出すたびに、ユイの子宮の中に洪水のように白い粘液が押し寄せてきて、ドロドロと汚されていくのが分かる、たぶん子宮を電子顕微鏡で見たら、部屋中が真っ白になっておたまじゃくしの水族館みたいになってるんじゃないだろうか。 ユウジは腰を押し付けて、精液を最後の一滴まで振り絞るとゆっくりと自分の一物を引き抜いた。 「ふぅ……」 満足の息を吐いて、ユイの下腹部をさする。 「ごくろうさま……今日もたっぷりと『おすそわけ』いただきました」 そういって笑う、ユイの表情はちょっとユイが目指す妖艶な人妻に近づいたかもしれなかった。 「なんか切ないな……」 そういって、おっぱいに残っている母乳をまた揉んで吸い尽くしているユウジ。 「どうしたの、何で切ないの?」 「だって、卵が出たとしてもぼくの子供ができるかどうかわからないもん、やれることやったし、あとはぼくの精子ががんばるしかないから……届いているかどうかが不安になる……」 そういって、抱きしめてくるユウジを、ユイは本当に可愛い奴だと思った。なんとか、この子を安心させてやりたい。 「大丈夫だよ……」 「そうかな」 「うん、ユウジくんの精子は濃くて強いもん……私は旦那がいるから、ユウジくんのモノにはなってあげられないけどね……きっと私の卵のところまでユウジくんの精子はすぐ泳いでいって、いまごろ口説かれて押し倒されてるよ……きっと」 ユイはユウジにまた口付けをした。ユイは、ユウジが自分を妊娠させたがっているのは独占欲だと思ったのだ。そうして、それは間違っていなかったからユウジは嬉しそうな顔をした。 「うん、ありがとう」 「お父さんはなさけないけどね、自分の子供ができたら、負けずにがんばんなよ」 そういって、ユイは大事な宝物を抱くようにして、ユウジの頭を撫でてあげた。
……六ヵ月後
月日がたつのは早いものだ、第二子誕生が分かってから、旦那の道也は幸せの絶頂だった。仕事のほうも、企画二課の課長に昇進してでかいプロジェクトを進行中である、年収もアップしてついにブラックカードを持てるようになったので、お祝いに愛車もプリウスに変えた。住居だって、もっといいマンションに変わってもいいんだぞと妻に言ったが、いまのままでも不満はないのだから、もっとお金をためていつか建てるマイホームの資金にしようといわれた。 やりくり上手の良い妻を得るのは、何千万円かの経済効果があるそうだ。道也は、妻のユイのおかげで上昇気流に乗って、どこまでもどこまでも飛んでいけそうだった。これで次の子供が男の子ならいうことない。
「こんにちわ」 「いらっしゃいユウジくん」 特に約束はしていないのだが、彼は来るときはいつも午前十時ぐらいにやってくる。朝の片付けが終わって、いーちゃんもお昼寝タイムに入って、ユイがほっと一息つく時間帯だ。 ご機嫌のユウジは、いーちゃんに挨拶する。 そうして、ユイのお腹の中にいる自分の子供にも挨拶する。 どちらが父親かは、調べなかった。ユウジは、自分の子供だと思っているし、ユイの旦那もやはり自分の子供だと考えている。それでいいのだろうと今は思える。 おっぱいを吸って今日も満足げなユウジに、ユイは語りかける 「それで、大学はちゃんといってる?」 「うん、前期にも思ったより単位とれたから、この分だと今年は留年しなくて済むかも」 「そう……それはよかった」 「大学を卒業できても、どうしたらいいかなんて分からないんだけどね」 「まあ、大丈夫だよ」 ユイは根拠もなしに、そういうことをいうのだが、なぜかユイの大丈夫だよはユウジの心に響くのだ。あんなに自堕落だったユウジが、曲がりなりにもちゃんと授業に出るようになってきたのは、そのおかげとしかいいようがない。 これじゃあ、どっちが催眠にかけられているのか分からないなとユウジは苦笑する。 「そうだね……うん、大丈夫だと思う」 「お腹の子供も、お父さんにはがんばってほしいってさ」 そういってユイに微笑まれたら、もうユウジはがんばるしかないではないか。
いまのユウジに考え付くのは、この催眠装置を利用して何かの仕事ができないかということだ。装置をくれたあの少女に会うことができたら一番いいのだが。きっと、それまでにユウジにはやることがたくさんあるのだろう。ユイの乳房を手で弄びながら、ユウジはそんなことを考えていた。
「おすそわけ」 完成 著作ヤラナイカー
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「おすそわけ」前編 |
浅生ユウジ、二十一歳の自堕落で引きこもりな大学生だ。本当なら今年で、三回生になってないとおかしいのだが、すでに一回留年しているので二回生のままだ。今年もほとんど講義に出てないので、きっと留年してしまうだろう。それでも半ば自暴自棄になっている彼にはそんなことは瑣末な問題だった。 幸いなことに、実家は名士の家柄だったので仕送りは潤沢にある。学生の分際で、家賃十二万のマンションに住んでいるのもそのため。つまり大学生とは仮の姿、都会で夢破れた彼は高等遊民、現代風にいえばプロニートの道を一直線に歩んでいるのだった。
「ふぅ……」
自分のため息が、男の一人暮らしの部屋に響く。パソコンの画面で傷めた目をこすり、マンションからの窓から見る空の色はどこまでも澄んでいた。田舎も都会も、空の色はかわらない。 あのバスが二時間に一本しかないド田舎から脱出して、さえない自分でも都会では薔薇色のキャンパスライフが待っているはずだった。とかく若者は夢を見がちであるが、彼も愚かだった。 さえない高校生が大学デビューしても、さえない大学生になるだけなのだ。 ああ、思考がまた自分の傷をえぐる方向に向かっている。空気を切り替えるため、パソコンでエロ動画を収拾して徹夜した重い腰をあげて、ベランダへと出る。
初夏の爽やかな風が吹き込んでくる。疲れた目を瞑り、ユウジは耳を澄ます。閑静な住宅街の午前十時。音はまったくしなかった。マンションから見える前の道にも誰も居ないことを確認。
「……」
別にユウジは、都会の喧騒を聞くために耳を澄ましているわけではない。マンションの隣のベランダを覗き込んで……干してある女性モノのパンツに手が届かないと知るや、手すりに足をひっかけるようにして乗り越えた。 火災などの非常時に対応するためベランダの壁は薄い……とはいえここは三階だ。なかなか大胆な行動である。その手際のよさには、これが初犯ではないということを示していた。 ユウジの隣の部屋には、一組の夫婦と赤ちゃんが一人住んでいる。奥さんの名前は上代ユイ、年齢は二十代半ばぐらいだろうか。すでに子持ちの主婦なのだが、そこらへんもユウジのストライクゾーンなのだろう。 紫に綺麗なレースが入ったパンティー、生地はシルクで薄い。さすがに人妻は妖艶なパンティーを穿いている。一緒に干してあるブラは、ビックサイズであり爆乳であることを思わせた。出産してまだ日がないということもあるので余計だろう。
すぐに下着に飛びつかず、室内の様子を伺う。テレビがあって、ソファーがあって普通のリビングである。赤ん坊のベットがある、そっと覗くとちゃんと寝ていた。赤ん坊は成人と生活サイクルが違うので、別にこんな日の高い時間に寝ていてもユウジのように生活が乱れているというわけではない。 カーテンも全開で網戸が開いているので、部屋に風を通しているのだろう。ユイの姿は見えない。 「ユイさんはいないのかな……」 とりあえず、洗濯物から紫のパンティーをはずして、鼻でくんかくんか匂いを嗅ぐと影に隠れるようにしながら手の中で弄ぶ。匂いは洗濯後なので、しなかったがそれに勝る妖艶なデザインである。 「ユイさんのパンツ……相変わらずすごいな」 あのムチムチの太ももで、このちっさい布を穿いたらどうなるのだろう。それを想像するだけでも、三回は出してしまえそうなユウジである。徹夜明けで、妙にハイテンションというのもあいまって、ユウジは勃起したものをすでにズボンのチャックから出している。 ユウジのものは、この二十一年間使用されることもなく、今後もソロ活動以外には使われないであろう息子にしては、なかなか黒々として立派なものであった。 その宝の持ち腐れを、器用に紫の布の股の部分に当たるところにこすりつけていく。ユウジの気分が高まってきた。
そのとき、音もなくリビングにユイが入ってきた。びっくりして身体をビクンッと反応させるが、さすがに物音を立てるほどユウジは馬鹿ではなかった。まさか、隣室の変態大学生がベランダに忍び込んでいるとも知らず、部屋の換気を終えて出てきたユイであった。 「赤ちゃんがいると……やっぱり気をつけないとだもんね」 なにが、だもんねなのか分からないが初めての子供なのでユイもいろいろと気を使うのだろう。ユイの鈴が鳴るような可愛らしい声を聞いて、また股間のものがムクムクと動き出してしまうユウジ。音を立てないように注意しながら、ユイのパンティーにこすり付ける。まったく元気なものだった。 ユイはそんなユウジに気がつかず、ベビーベットに眠る自分の子供を覗き込む。 「いーちゃんはやっぱ寝てるか……起こすわけにはいかないし、うーんどうしよう」 なにやら考え込んでいるみたいである。ユイは、結構おっとりとした性格でいちいち考え込んでから動作をするので、ユウジは安心して観察できる。いわゆる天然系という奴かもしれない。ユイに隙があるからこそ、ユウジにこんな大胆な侵入を許しているのかもしれない。 そんなユイの様子伺いながら、鼻息を荒くしていたユウジであったが。思わず、そのパンティーで来るんで息子を握っている右手の動きがとまる。 なぜか、ユイが急に上着を脱ぎ始めたのである。ゆったりとした動作で、するすると部屋着を脱ぎ取ると黒のブラだけになり、そのブラもゆっくりとはずしてしまう。まったくわけが分からなかったが、初めてユイのおっぱいを見て、ユウジは思わず見ただけで射精しそうになってしまった。 だが、ここまできたら手より目で焼き付けるべきだろう。カメラか何かを持ってこなかったことを後で後悔したのだが、このときはそんな余裕すらない。
「えっと……冷凍しても大丈夫なんだったよね」 何を言っているのだろう。上半身裸になって、その巨乳に少し黒ずんだ乳輪をむき出しにして、台所からボールを取ってきたユイだ。 裸になってクッキングだろうか、ユイが天然だとしてもそれはありえないだろう。もはや、固唾を呑んで見守るしかない。 ユイは、ボールに向かって片方のおっぱいを差し出すと両手で根元を掴んで、思いっきり絞った。ユイの勃起した乳頭から、乳が四方八方に広がる。 「搾乳だ……」 思わず、ユウジは呟いていた。口を押さえるのも忘れて。小さい声だったので、聞こえなかったのだろう。ユウジにまるで乳を差し出すように、こうやって搾乳するんですよといわんばかりに、ピューピューミルクを噴出している。 「はっ……おっぱいって、けっこう張っちゃうもんなんだね」 誰かいるわけでもないのに、自分に言い聞かせているのかそんなことをいいながら、もう片方のおっぱいも搾り出す。ボールにおっぱいが溜まった。あんなに出るものなのかとユウジは思った瞬間。ユウジの腰にドクン!と衝撃が走った。 それは余りにも、激しい射精だった。あまりにも、激しすぎてユイの小さいパンティーではカバーしきれずに、ベランダにポタポタと零れてしまった。ドンだけ溜めてたんだよといえば、これでも昨晩オナニーしたというから驚きである。 ユウジにとって、それだけ目の前で搾乳されたのが衝撃だったということもあるのだろう。ミルクを出すのを見て、ユウジもミルクを出してしまったと。そんな下らない思考を振り切って、とりあえずこの場から脱出しなければならないと思った。 「えーと、容器はどうしたら」 ユイはおっぱいをむき出しにしたままで、自分の搾乳した乳を生まれて初めて冷凍する作業に取り掛かっていたが、後ろ髪引かれる思いで自分の部屋へと帰るユウジ。 床に落ちた精液は乾燥してしまうだろうし、パンティーもそのまま取ると犯人がモロばれなので乾燥させて返すのだ。あんまり汚れが酷いときは、手洗いしてしまうが、ちょこっとついたぐらいならそのまま返してしまう。 ユイは、そういう変化に鈍いことをユウジはよく知っていた。それにしたって、今日のあの衝撃的な出来事は、若いユウジを搾乳マニアにしてしまうほどの威力を持っていたのであった。
……それから数日
ユウジは悶々としていた。あの数日前の隣のユイさんのおっぱいと搾乳シーンを見てから、普通にパンツを盗んで射精するだけでは我慢できなくなってたのだ。忍び込んでパンツ盗むだけでも十分に危険だとおもうのだが、ユイは相変わらずユウジが忍び込んできても気がつかない鈍さである。 「このまま閉じこもってると、欲求不満でユイさん襲っちゃうよ」 このマンションはベランダの警備はゆるゆるだが、さすがに外はちゃんとガードしてある。マンションの中でユイが襲われたら、怪しい引きこもり大学生のユウジは余裕で第一容疑者であり、即刻に逮捕であろう。 ユウジはどっかに行って気晴らしでもしようと少し考えて、他に行く場所も思い浮かばないので大学に行くことにした。普段引きこもっていて、気晴らしに大学に行く学生ってどうなってるんだろうと自分でも思うユウジである。
校門に入ると、いつにない人出だ。白いテントがあちこちに立って模擬店がでてるのが見える。 「あー学祭やってるなあ」 自分の大学で学祭やってるのを知らないっていうのはどうなんだろうが、引きこもり学生なんてそんなものなのかもしれない。 「せっかくだし、見てくるかな」 どうせ授業など最初から出るつもりはなかったのだ、お店を冷やかしていくのもいいかもしれない。入り口で、とりあえずコーヒーを買ったユウジはどんどん人気のないところに歩いていく。 さすがは引きこもりの習性。こんなときでも、人のないところを選んで歩くとは。そんな歩きかたをしているとすぐ壁にぶち当たってしまう。しょうがないので、くるりとユーターンしてまた歩き始めようとした、ユウジにまた壁がぶち当たった。 「オウフッ!」 壁ではなくて、ユウジがぶつかったのは人だったようだ。かわいそうに、ユウジのちょっと弾力がありすぎる身体にぶつかって、金髪の女の子が跳ね飛ばされていた。飛びながらも、空中で身を翻して、見事に着地したのには拍手を送りたいが、少女が手に持っていたらしい飲み物は床に飛び散ってしまったようだった。 「だっ……大丈夫!?」 目の前に座り込んでいるのは、目も金色で、高校生ぐらいの女の子である。すっきりとした体つきに淡い紺のワンピースを纏っている。これで麦わら帽子でもかぶっていれば、まんま避暑地のお嬢様という格好だ。若い女の子のうえ、外人でしかも美少女ときているので、対人恐怖症気味の普段のユウジには話しかけるのは不可能なのだが、そんなことを言っている場合でもなかった。 「痛っ――天才たる私が、よろめくとはなんたる不覚か!」 幸い日本語が喋れるらしいのはよかったのだが、発言の意味がわからない。 「あっ……あのさ」 「おい、お前!」 立ち上がったその小柄な少女にギロリッと睨まれた瞬間、周囲の重力が重くなったように感じた。その目に絡みとられたように身動きが取れない。爛々と輝きを放っている瞳は、まるで本当に星が飛び出しているのかと思うほどだ。 「はっ、はい!」 「天才たる私に土をつけるとはできるな。何か特別なことをやったか?」 「いえっ……歩いていただけです、すいません」 「ふむ、偶然というわけか。私がぶつかって倒れるなど、ありえない現実でも、目の前にしては認めるのが科学者の――あっ!!」 「どっ、どうしました?」 少女は、もうユウジを無視して下に散らばってしまった飲み物のカップを、悲しみと怒りに小さい身体をわなわなと震わせて、悲しげな表情で見下している。 「私の、私のプレミアムローストコーヒーが! 私の可愛いカフェインたちが!」 模擬店の百円のコーヒーに、かなり大げさなリアクションである。 「あっ、あのこれあげます! また口つけてないですから」 ちょうど、同じコーヒーを買っていたのでユウジは自分のを差し出すことにした。 「んっ、そうか。実はくれないかと、目をつけていたんだ。いやぁ悪いね」 すぐに表情を和らげて、少女はそれをすぐに受け取る。 プレミアムローストコーヒーは、うちの大学の模擬店ではたいていの店が入れている。匂いは芳醇にして、粉っぽい香りがし、味はインスタントコーヒーを思わせるというか、ただのインスタントコーヒーである。 「飲み物ぐらい、また買えばいいですから」 少女は、蓋を開けて鼻をつけてコーヒーの匂いを嗅ぐと一口飲み干した。すぐに機嫌が直ったらしい。いちいち大げさで偉そうなわりに、案外満足させると可愛らしい顔で笑う。ユウジはほっとして身が軽くなったように感じた、さっきのはコーヒーが欲しいための演技だったのだろうか。 「ふぅ、やっぱりこれがないとね。生き返ったよ」 楽しげにコーヒーを両手で抱えてちびりちびり飲んでいる。百円のコーヒーで、それだけ喜んでもらえればよかったとユウジは思った。
そこに、でっかいダンボールを抱えて、白衣の男がやってきた。さえない容姿で三十ぐらいの男だった。大学の講師かなにかだろうか。 「師匠探しましたよ、ここでなにやってんですか」 「ああっ、すまんコーヒーが切れていたので補給だ」 少女はさっさとコーヒーを飲み干してしまうと、片手で容器を放り投げて、綺麗にゴミ箱に向かってシュートを決めた。そして、男性がもっていたダンボールの中におもむろに手をつっこむとごそごそと何かを取り出す。 「少年」 「えっ……ぼくのこと?」 高校生ぐらいの年下の女の子に、なんで少年呼ばわりされないといけないのだろうか。一応、二十歳超えてるんだけどなとユウジは思うが、反論の余地を許さない声の響き方である。 「私は、ありえない偶然が二度続いた場合は注意することにしているのだ」 「はあ」 相変わらず少女のいうことはわからない。 「この場合は、私が人にぶつかる不覚、そしてたまたま同じコーヒーを持っていて私にくれたことだな」 そうやって、先生口調で話を進める。白衣のおっさんに師匠って呼ばれていたので、若く見えるけど何かの先生なのだろうか。 「そこで、君にこれを授けよう」 そういって、少女はユウジにダンボールから小さい箱を取り出した、なんかの機械だろうか。断れる雰囲気ではなかったので「ありがとうございます」と受け取ってしまうユウジ。彼は、道で配られるティッシュも断れないタイプなのだ。 「あー、師匠そんな危ない機械を勝手に知らない人に!」 白衣のおっさんが困惑した声をあげた。 「私が設計したものだ、たくさんあるんだからひとつぐらい、かまわないだろ」 少女はそういって、ユウジのほうに向きなおし楽しげな笑顔を浮かべる。 「説明書はちゃんと付属しているから、うまく使いたまえ。それを使えばここらの店で飲み物ぐらいわけてもらえるだろう。飲み物のお礼としてはちょうどいい。これが、私の『おすそわけ』というわけだな」 そうして何が楽しいのか悪戯をした子供のようにクックッと笑い、手を振って白衣の男と去っていった。
小さい箱ひとつもって、建物の影で途方にくれるユウジ。 「いったいなんだったんだ……」 さっきの金髪美少女と白衣のおっさんは、まるで最初から存在しなかったように去ってしまった。現実で起こった出来事であるという証拠はもらった小さな箱だけである。 すぐそこでは模擬店の喧騒が聞こえる。ユウジは建物の側壁を椅子にして座り込んで、とりあえず箱を開けて見ることにした。 「これが説明書?」 なぜか和紙に毛筆で書いてある。楷書文字だろうか、達筆すぎて逆に読みにくい。 「えっと……日本には古来より『おすそわけ』の精神があるそうだ。余っているものを人に分けることで、みんなが幸せになろうということらしい。美風といえるね。感動したので、今回はこんな催眠装置を作ってみました。この装置の先端を人に向けながら話すと、余っているものを何でも分けてもらえます。逆に、先端を自分に向けて話すと、自分が余っているものをなんでも貰ってもらえるわけです。会話にはキーワードとして必ず『おすそわけ』という言葉を入れて説得するのがコツだよ。説明終わり」 最後に署名が入っていた、アルジェ・ハイゼンベルクと読める……さっきの外人の女の子の名前かな。アルファベットを毛筆で書くというのは、どういう神経なのだろう。それに。 「催眠装置?」 そんなものが、あるとも思えないんだが。ユウジの手元には小さいリモコンのような機械が一つあることは確かだ。 まあいいやと、ユウジは立ち上がる。もともと彼は、深く物事を考え込まないたちなのだ。 とりあえず近くの模擬店で試してみることにした。駄目ならお金を払えばいいだけのことだ。 店員のお兄さんに矢印を向けて、こういってみた。 「飲み物を『おすそわけ』してくれませんか」 「あー、そうだねえ……コーヒーなら粉があまってるからあげるよ」 「うぁ……」 カップに注いでコーヒーをもらえた。ほんとにもらえるとは思わなかった。模擬店で試してみたところ、食べ物でも使用できた。ただ、説明書どおり余っているものにしか使えないみたいだった。数が不足しているものは指定しても、断られる。 これなら飲食には困らない。ただ、もらえるのはいいのだが、相手に貰ってもらうという機能はよくわからない。いい使い方があるのだろうか。 「まあ、とにかく便利なものを手に入れたな」 喜んで家に帰ることにした。もしかしたら、隣のユイさんに使えるかもしれない。
とりあえず、気持ちを落ち着けて、次の日に綿密な計画を立てて望むことにした。 そうして、迎えた次の日の午前十時。すでに旦那は、朝方出勤したことを窓から確認している。 今部屋にいるのは、ユイと赤ん坊だけのはずだ。初めて隣の部屋にチャイムを鳴らして入ろうとしているのだ。マンションの外からの客は、入り口のインターフォンを通すわけで、マンション内に他に知り合いのいないユイに警戒されないだろうかと一瞬、心配になる。 ガチャリと音を立てて、ユイは扉を開けた。 全開であった、おいおいユイちゃん、普通チェーンぐらいかけるもんだろ。 「無用心な人でよかった……」 「えっと……」 「いえっ、こっちの話です。ぼくは隣に住んでる浅生ユウジと申します」 「あっー、お隣の学生さんですね」 顔は知っていてもらっていたようだ。警戒も少しは解いてもらった。実はユウジのほうは緊張でガチガチになっている。一方的に知っているのだが、向こうにとってユウジは見知らぬ男性。そういう相手と話すのは、もう百年ぶりぐらいに思えた。グルグルと鳴るお腹に気合を入れて、何とか話す。 「えっと……その、ちょっと話したいことがあるんですが中に入れてもらえませんか」 「えっ……ああ、ここではだめですか。お隣さんとはいえさすがに知らない人をあげるのはちょっと」 催眠装置の矢印はすでにユイに向けている。それだけがユウジを支えている。 「普段、ユイさんところは家族で三人ぐらしなんですよね」 「そう……ですね」 「それで、いま、旦那さんはいないから二人ですよね」 「えっ……はい」 ユウジもこんな警戒させるような言い方をしなくてもいいのに、なんか微妙な空気が漂ってきた。 「部屋に場所が余っていると思うんですが、『おすそわけ』してぼくを入れてくれませんか」 「あっー、そうですね余ってますから、いいですよ」 おすそわけという単語を聞いて、納得したらしいユイは、部屋の中へとユウジを招き入れた。ユウジは冷静を装っているが、冷や汗をかいている。それでも、なんとかうまくいった。 ソファーに通されて、居間に座っている。ベランダから、覗いていただけのここに自分がゆっくりと座る日がくるとは信じられない思いであった。 「ふぅ……喉が渇いたな。すいませんけど、なにか飲み物を『おすそわけ』してくれませんか」 「はい、お茶でよければ余ってますから」 こうやって、細かくかけていくのはいい方法だ。ユウジは無意識的に、かかるかどうか確かめてやっているのだが、一つ暗示を受けるたびにユイの判断能力は低下していく。そうして、新しい常識を受け入れる素地ができあがるのだ。 冷たい麦茶を、喉を鳴らして飲み干していくユウジ。渇いた喉が潤うと、気持ちも落ち着いてきた。 「旦那さんは何時ごろ帰られるんですか」 「そうですね、早くても午後の七時ぐらいですね、平日は」 「そうか、少なくともそれまでには帰りますね。部屋を『おすそわけ』してもらってるだけですからね」 「そうですよー、『おすそわけ』してるだけですからおかしいことはないんですけど、夫が居ない間に知らない男性をあげてしまったと思われると変な誤解を招いちゃうかもしれないですからね」 そういって笑う、ユイの笑顔は可愛らしくてユウジは鼓動を早める。とても年上とは思えない可愛らしさに欲情が高まってくる。 「あの、ユイさん下着を『おすそわけ』してくれませんか」 「えっ、下着ってブラやパンツのことですか」 「そうです、そうです」 ユイの下着がほしいというのがとりあえずの目的であった。 「申し訳ないですけど、余ってないからあげられません」 そういって、ユイはユウジの無理な注文に、本当に申し訳なさそうにする。 「いやっ……いいですよ」 最初から、無理をするつもりはない。 「最近まで妊娠しててマタニティーのものが多かったし。あと、結構高いんですよね、だからあんまりたくさんは買ってないんですよ」 そうやって、干してある下着を見つめるので、ユウジもついそっちを見てしまった。綺麗なレースが入った、それはユイにはあまり似つかわしくない大人なデザインのものが多い。 「そのっ、ユイさんはけっこう派手な下着つけてますね」 「あっ……ええそうですね。なんかこう、妖艶な人妻って良くないですか。そういうのに憧れてまして」 そういって、恥ずかしそうにするユイは一児の母にはとても見えない可愛らしさだ。 下着は手に入らなかったが、こういう会話ができる雰囲気になれただけで満足のユウジであった。
「そういえば、お子さんいらっしゃるんですよね」 そういって、ベビーベットを覗き込むと可愛らしい赤子がスヤスヤと寝ていた。 「いーちゃんです。女の子なんですよー、今の時間は、大人しく寝てくれてるんですけどね。ユウジさんのところも隣だから、やっぱり音が響くでしょう。ご迷惑をおかけしますね」 そういって頭を下げるユイ、いい人なのだ。 「いえ、ぜんぜん。たしかに音が聞こえることもあるけど、お互い様ですから」 このマンションの壁は別に薄くないが、やはりベランダや通路が繋がっていることもあって赤ん坊が夜鳴きしたりすれば、音が聞こえることもある。 ユイと旦那の夜の生活の音も実は聞こえていた。聞こえていたというよりは、注意深く聞き分けていたといったほうがいい。大学に入った当初は、それで夜な夜な悶々としたものだった。ユイの夫妻と、ユウジが隣り合って住むようになってもう三年近い。 考えたら、ユイの夫妻がいまのこの子供を種付けしてユイが妊娠して、出産にいたる過程をずっとユウジは隣の部屋で聞いていたことになる。 目の前でスヤスヤと眠る赤ん坊を見ていると、なぜかとても感慨深い気持ちに襲われた。その空気が、なぜかユウジに勇気を与えた。
「そうだ、ユイさんおっぱいを『おすそわけ』してくれませんか」 「ええっ!」 「前、おっぱいが張ってるっていっていましたよね。それって余ってるってことではないですか」 「なんでそれを……たしかにいーちゃんが寝ちゃうと、飲んでくれないから……」 「でしょうでしょう、余ってるものを『おすそわけ』してもらうだけですからね」 「前に絞ったのが、冷凍庫に……」 そういって立ち上がろうとするユイを押さえた。 「待ってください、いまユイさんのおっぱいに余っているのを直接いただきたいのです」「えーー、直接……それってちょっとまずいような」 そういって、ユイは困ったような顔をして左右を見る。もちろん、部屋には二人と赤ん坊しかいないのだ。 「まずくないですよ、鍵はかけてあるし、誰も見てませんから」 「でも……でも、直接って直接飲むって……」 「おっぱいは赤ん坊が吸うものですよ。それが、いまいーちゃんが寝てて吸ってもらえないから、ぼくに『おすそわけ』してもらって吸うだけなんですから何もおかしいことはありません」 「見られたら、それって変な光景じゃありませんか」 そうやって、心配げに上目遣いに見てくる。たしかに、とても変な光景です。 「大丈夫ですよ、ここはぼくらしかいませんから誤解される心配はありません」 「んー、うーん」 ユイは癖である考え込む体勢に入った。 「何も変なことじゃないですよ、『おすそわけ』してもらうだけなんですから」 そうやって、耳元で『おすそわけ』を連呼されて、ついに押し切られたようだ。 「わかりました……そうですよね、別に変なことじゃないし誤解されないようにだけしたら大丈夫ですもんね」 「わかっていただけて、ありがたいです。ちょっと先にトイレを借りてきますから、おっぱい出して待っててくださいね」 「……はい」 そういうと、トイレを通り越して脱衣所に走った。洗面台を調べると、ユイが昨日穿いていたらしい紫のパンティーがあった。すぐに下半身裸になり、それを匂いをかぎながら股間に装着して上からジーパンを穿いて戻る。 股間への食い込みがたまらなくいい、この感触だけで、すでにズボンの中でユウジのものは勃起していて紫の布の股間を部分を持ち上げている。 もどると、すでに上着を脱いで前を肌蹴て、ユイが待っていた。授乳の体勢だ。完全な上半身裸にならずに胸だけ出しているのは、ここがユイの譲歩のラインなのだろう。 たしかに、おっぱいをあげるだけなら裸になる必要はない。 「おー、やっぱり乳頭も黒くなるんですね」 前にも一度見たが、遠目から網戸ごしに見ただけなので細かい乳頭の形状などわかるわけもない。授乳の体勢になっているのか、見ただけで感じているのか、黒々として少し出っ張った乳頭は爆乳の先っぽで、ぷっくらと膨らんでいていまにも乳を噴出しそうだった。 「あんまり……見ないでくださいね」 恥ずかしいからという言葉をユイは飲み込んだが、恥ずかしいのは良く伝わってくる。人妻だというのに、なかなかウブなことだ。 「じゃあ、右から吸いますね」 そういって、おもむろに口をつけるとチューと吸い付く。おっぱいの吸い方など、ユウジはしらない。そりゃ、赤ん坊のときは吸っていたのかもしれないが、そんな記憶はもうすでにない。女性経験もないユウジにとっては未知の領域というわけだ。 「はぁ……ん」 女性は授乳中感じることもあるという。ユウジの吸い方が、赤子が効率的に乳を搾り出そうという吸い方ではなくて、もっといやらしい吸い方であったからかもしれない。 ユウジが先っぽを口に含んで、吸い付くたびにジューと音を立てて母乳が染み出してくる。初めて飲んだ母乳の味はとても甘かった。 「はぁ……おいしいな。甘いものなんですね」 「私は……自分では飲んだことないからわかりません」 「もっと、もっと飲みたい……」 興奮した、ユウジは思わずユイの爆乳を根元から掴んで思いっきりひねりあげた。 「あっ、そんなに強く絞ったら駄目!」 ユイの忠告は遅かったようだ、ユイの乳房から幾筋もの白い線を引いて、爆発するように大量の母乳が飛び出た。 まるでユウジが顔射されてしまったみたいに、乳白色の液体がユウジの顔や服に飛び散った。絞られた母乳は、ちろちろと乳頭から垂れ下がるように流れている。そのミルクの川をユウジは丁寧に舐め取っていった。 「たくさんでましたね」 「ごめんなさい……服が汚れてしまったわね、いま拭くものを」 強引に絞ったのはユウジなのに、自分の母乳でユウジを汚してしまったことをユイは悪く思っているようだった。 「いいから、もうちょっと座っていてください」 いま、すごくいいところだからという言葉を飲み込んで、ユウジは名残惜しそうに右の乳頭に吸い付き、絞り上げて中の母乳を全部吐き出させてしまう。乳腺のすみからすみまで吸い上げ垂れた右のおっぱいは、満足げに見えた。 「ふぅ……」 おっぱいの持ち主であるユイも満足げである。やはり、溜まっていたものが抜かれるというのは気持ちがいいのだろう。 「じゃあ、次は左のほうをいただきますね」 そういって、左のほうに吸い付く。こっちにも、たっぷりと中に乳を溜め込んでいるようだった。こんどは、ゆっくりとこぼさないようにすする。全部を飲み干すつもりだった。 左乳を吸われながらも、次第にユイは冷静な判断力を取り戻しつつあるようだ。 「よく飲みますね……あの前に出したとき、ボールに結構な量が出たんですけど、これ全部飲み干すってすごいと思いますよ。いーちゃんも全部は飲んでくれないですからね」 「こんな美味しいもの、残したらもったいないですよ」 「そうなんだ、美味しいんだ……私も今度飲んでみようかな」 ユウジが本当に美味しそうに飲んでいるので、ユイもなんだか美味しいもののように思えてきた。まあ、ユイが自分で出した乳を飲むというのは、なんだか共食いみたいな話だが。 「あの……もう全部出たとおもうんですけどおっぱい」 「まだです、まだいってません」 「えっ……イクってなにが」 「ごめん、もうちょっとだけ」 ユウジはすでにおっぱいを出し切った左の乳を吸い上げている。中にユイのパンツを穿いた股間を、ユイの足にこすりつけながら。乳頭はその刺激で痛いほど勃起して、それでもなお空っぽになった乳を強烈な勢いで吸いつけられるのだ。 「あのあんまり吸われると……変な気分になってくるんですけど」 そういって、ユイは恥ずかしいことをいってしまったというふうに頬を赤らめる。 妊娠してから旦那とのセックスの頻度は下がる一方で、出産してからもそれは回復の傾向を見せない。不倫はないとおもうのだが、単純に今の時期仕事が忙しいのだろう。 つまり、ユイは欲求不満ぎみではあったのだ。 「はぁはぁ……変な気分に……なってしまえばいいじゃないですか」 「そんなのはー、困りますよ、もういいでしょう」 「だめです、イクまで……じゃなかった最後の一滴を搾り取るまで終わりません」 そういって、ユイは自分の胸に吸い付いている若い男をみて困惑する。なんかこれって、ほんとにそういうまずいことをやっているような雰囲気だなあと。胸を強烈に揉みしだかれて、乳頭を力強く吸われてこねくられて。 それで感じないほど、不感症でもなかったのだ。 乳を吸うという名目があるので、子供に授乳しているようなものなので、抵抗の術を持たないユイは、もう恥ずかしそうに俯いて唸っているしかなかった。 「うっ……うぅ……」 「はぁはぁ、ユイさん気持ちいいですか」 「そりゃ、あのね女の子はちょっとは感じるんですよ、授乳だから変な気持ちにはならないですけどね……うぅ」 授乳だから変な気持ちではないけど、ちょっとは感じるらしい。正直なのか、どうなのか分からない反応だった。 「おぉ……そろそろイク!」 「えっ!? 何が、なにがですか」 腰をガクガクと震わせて、ぎゅっとユウジが抱きついてくる。 「ああっ、イタ! 乳首を噛んじゃ駄目です!」 「ユイさん……ああっ」 股間のなかの、ユイが昨日穿いていたパンツに精液をたっぷりと吐き出したユウジである。またたっぷりと出したのだろう、ユウジはもともと精液の多いタイプなのかもしれない。よく股間をみれば、紫のパンツが吸いきれずに、ジーパンの先の部分も精液が染み出してきて濡れているのがわかる。それを、ユイの足になす繰りつけているわけである。 「あのっ……急にがくっとしちゃって大丈夫ですか……あと噛んだら痛いですよ」 心配そうに、ユイは自分の胸の中でぐったりとしたユウジを見つめる。何があったんだろうということだ。既婚者とは思えない鈍さである。
「ふぅ……」 ぎゅーと抱きしめて、頭をユイの膝の上に乗せて、しばらくユウジはだらりとしていた。ユウジはなんとなく、満足はこれにきわまっていた。 なんとなく弛緩した空気。 ユイもさっきまで、自分の胸に吸い付いていたものを憎らしくは思えなくて、ユウジの頭を撫でていたりしていた。気分が悪いのかもしれないし。吸うのは別に構わないけれど、あとで噛まないようにだけ注意はしておこうと思っていた。
「全部飲んだので、もう胸はしまっていいですよ」 「あっ、はい」 今日は青いおわんみたいなカップのブラをつけるユイ。 「じゃあ、ちょっとまたトイレを借りますね」 そういって、洗面台にいって、パンツを脱いだ。本当にユイのパンツにたっぷりと吐き出していた。軽く水洗いして、あとは洗濯機に放り込んでおく。ユイのことだから、これでごまかされてしまうだろう。
あとはユイがお昼を作るというので、『おすそわけ』してもらって、起き出してむづがっているいーちゃんに挨拶したりしていた。これから、長い付き合いになりそうだから、赤ちゃんのご機嫌を取っておくのは悪いことではない。とりあえず、一回出したことでもあるし、ユウジはその日はお暇することにした。
……次の日
やはり、きっかりと午前十時にユウジが訪れた。ちょうどこの時間は、子供が寝ているので着てくれるならたしかにお互いに、都合がいい。 「どうして、こんな風になっちゃってるのかな……?」 ユイは、飲み物を出しながらそう嘆息しているが、その答えは『おすそわけ』としかいいようがない。余っているものを人にあげるのは当然なのだ。 催眠の効果もあったのだが、ユイもあんまり深いことは考えない性格だった。 「じゃあ、今日もおっぱいを『おすそわけ』してもらいますね」 そういって、ユイに前を肌蹴るように即して、胸を吸う。 「ひゃっ……ふぅう……分かってますか、昨日も言いましたけど、吸ってもいいですけど噛んじゃだめですからね……」 やっぱり、胸を吸われるのは慣れそうにないとユイは思う。自分の子供に吸わせているのとは、感覚が全然違うのだ。違って当然なのだが、ユイはこれを授乳だと感じさせられているので余計である。 やっぱり、チューチューと深い吸い方をされると、腰にくるものがある。自分の赤子が掴むのと、胸の掴み方も違ってしっかりとしたものだし、まるで旦那としているような、そんな思いを深く抑えて沈み込ませるユイである。 その思考は、抑えられただけで働かないわけではない。 今日はユウジは、パンツ弄りはしなかった。別のやり方を考えて、試してみようと思ったのだ。 それは、この『おすそわけ』装置の、もう一つの使い方である。
「もういいですか……」 むき出しになった胸を押さえて、頬を赤らめるユイ。 「そうですね、今日もたっぷりご馳走になってお腹たぷたぷですよ」 「よくそんなに飲めますよね、私は人に言うことでもないんですけど……ちょっと乳の出がよすぎるほうみたいで……困ってたんで、その吸って欲しいってわけでもないんですけど……」 ユイの百センチを超える巨乳は、その大きさに比例して大量の乳を製造していた。小さい赤ちゃんが飲める量など限られている、たしかに毎日乳が張って、旦那が飲んでくれるわけでもないので、無駄に洗面器に乳を捨てているのは残念なことだったのだろう。 知らない隣の男に乳を吸われているというのは、とても妙な気分だったが『おすそわけ』に慣れたユイにとって、少なくとも自分のおっぱいが無駄に捨てられるよりは、好ましいことにも思えるようになっていた。
ユウジは『おすそわけ』装置の矢印を逆方向に向ける。 「そういえば昨日田舎から佃煮を送ってきたので、これは『おすそわけ』です」 「うあー、その箱なにかとおもってたら佃煮だったんですね、ありがとうございます」 装置を逆向きに向ければ、ユイはユウジから余っているものを受け取ることになる。 「それでその……もう一つ『おすそわけ』として、受け取ってほしいものがあるんですが」 そういって、股間のものを指差す。 ジャージの上からも分かるほどに、ユイのおっぱいを吸い続けたユウジの股間はパンパンに膨れ上がっていた。 「えっと、まさか……おしっこですか」 「いや、ユイさんなんでおしっこなんですか」 「そうですよね。あんだけ呑んだら出ますよね。おしっこなら、トイレにどうぞ」 ボケているのか、本気でいっているのかわからないがまあこういうユイさんである。 「いやそうじゃなくて……精液ですよ」 「えっ! あっあ、そうですかごめんなさい私分からなくて」 そういって、頬を赤らめるユイ。 「そうなんですよ、ぼく彼女もいないから余ってまして『おすそわけ』として受け取ってもらえますかね」 喜んで受け取らなくてはならないのである。 「あっ、あのもらえるものでしたらもちろん。それじゃあ、ちょっと待っててくださいね」 バタバタと台所にいって、何かとって戻ってくるユイ。胸を出したままなので、プルンプルン生乳が振るえている。とりあえず、そっちなんとかしたほうがいいのだが。 「えっとこれは」 ユウジの目の前に置かれているのは、半円形の入れ物であり……。 「ボールです、中にどうぞ出してください」 「えっ……いや」 ボールに出させてどうするつもりなのだろう。もしかしたら、自分の母乳と一緒に冷凍するつもりなのだろうか。ユウジもこれで言っていて恥ずかしいのだがしかたがない。あいかわらず、ユイの考えはぶっとんでいるのだ。空気を読んでもらうという思考は放棄したほうがよさそうだった。 「えっと、私なにか間違いましたか」 そういって、笑いかけるユイ。どうでもいいが立派なおっぱいが出っ放しである。 「そうじゃなくてですね……普段たとえば旦那さんが射精されるときに、どこに精液を出してますか」 「えっと、お口の中とか私の中とかにですかね」 そんな発言を、恥ずかしげもなくしてしまったりする。 「あっ……やっぱそうなんだ、外には出さないんですね」 「ええ、出したことないですね」 徹底している旦那さんである。男として尊敬できるかもしれない。 「じゃあ常識的に、そういうところに出したりするんじゃないですかね『おすそわけ』させていただくなら」 「ああっ……そうかごめんなさいね。私、ボールとか持ってきて何考えてるだろ。じゃあ私に出してもらえばいいから……って。あれ。えっと……ええぇーーー!」 真っ赤になってしゃがみ込んでしまう。 「大丈夫ですか、ユイさん」 「えっと、えっーやっぱりそういうことになるわけですか」 ユウジの股間を見て、そう言った。 「ええなります」 ようやく理解してもらえたようだ。 「でもそれって、その他の人から見られたら浮気してるみたいに見えるっていうか」 「この部屋は誰も居ないし、鍵もかかってるから大丈夫ですよ」 ユウジとしたとしても『おすそわけ』であるかぎりユイは浮気とは思わないけれども、他の人から見られたら浮気と思われて困る。つまり、この催眠装置の構造は相手の理性を完全に狂わせるわけではなくて、相手の常識とか箍を狂わせて誤認させてしまうタイプのものなのだ。 だからきちんと説明しなければならないし、ユイの天然ボケもあいかわらず。そのかわり理性がきっちりとしているから、周りにばれ難いという利点もあった。 「じゃあその……えっといただきます」 なぜか、ユイからチャックを開いてパンツの隙間からユウジの一物を出してくれた。ぴょこんと、可愛らしくというかたくましくというか飛び出してくるユウジの一物。 「いやっ……そんないきなりというか下、脱ぎますよ!」 「いいって、このままでもらうから、いいから大丈夫だから」 よく分からない押し問答である。つまり、ユイはおっぱいと一緒で必要最低限の露出でことを行いたいということなのだ。 ユイにとっては、これはいやらしい行為や浮気なのではなくて、ただ余っている精液を『おすそわけ』としていただくだけのことなのだから。 上の口か下の口でいただくか、一応ユイに聞いてみたところ即答で上の口でもらうということだった。あたりまえといえばあたりまえである、下のほうはいろいろと他の問題が絡むのだから。 やると決めたら、さすがに妖艶な人妻(自称)のユイちゃんである。イカくさいユウジの一物をためらうことなく、一思いにくわえ込んでいった。 ジュブジュブ……といやらしい音を立てながら舐め始める。口の中になるべく唾液を溜めるようにして、それを潤滑にして上手く舐め取るのがユイのやりかたである。中だししないときは、いっつもお口で飲まされていたというユイのフェラチオは、なかなかどうして胴の据わった見事なものであった。 その見事なおっぱいは、むき出しのままである。もう乳飲んだから、隠してもいいような気もするのだが、せっかく出してくれているのでユウジは調子に乗ってもんでみる。 早く精液を出す作業にかかりきりになっているユイは、そういう行動に文句をつけずに必死に舐めているので、ユウジはやりたい放題だった。 「うぅ……ユイさん、そろそろ出そうです」 「ふぉむから」 飲むからといっているようだ。ユウジはしっとりとした、髪を撫でるようにしてかがみこんでいるユイの頭を持ちながら、溜まった精液をユイの口の中にたっぷりと吐き出した。 「うぅ……ああっ」 「……ゴキュゴキュ……グウッ……プファ……ユウジくんの濃いね」 グルグルと喉を鳴らして飲み込んでいく。濃くて粘っこい精液なので、飲み干すにも一苦労だった。明らかに旦那よりも量が多くて濃い。若いって素晴らしいことなのである。それでユイは、唾液で薄めたりして苦労しながらもなんとか飲み干した。 出されたものは、残さずいただく。主婦の鑑であった。 綺麗に舐めとっていくと、またユウジのものが大きくなっていく。 「すいません、ユイさんまだ余ってるみたいなんで」 「うん……ありがとう。いただきます」 それが『おすそわけ』であるかぎり、ありがたく頂戴しなければならないという、催眠であるわけで、ふっきれればユイはむしろ積極的に舐めて飲んでいく。 結局、その日はユイの口のなかに三発射精して、ユウジは腰が抜けたようになって帰宅するのだった。
……その日の夜『家族の食卓』
「んっ今日の飯は珍しい佃煮がついてるんだな」 「ええ、隣の学生さんが田舎からたくさん送ってきたからって、くださったんですよ」 「ふーん、おすそわけってやつか。いまどき珍しいな」 少し塩辛い佃煮をつまみながら、旦那の道也は少し嫉妬した。なんだ、ユイのやつ隣の大学生なんかと親しくしているのかと少し不満に思う。 それでも、ユイは、これで昔から一途な奴で、抜けてるようでも肝心なところではしっかりしている。信じられる女なのだ、旦那の道也だから何も文句は言わずにユイと出会ったころを思い出していた。
一流の大学を卒業して、大手総合商社に就職したまでは良かったが、それからがケチのつけはじめだった。優秀な人材ばかり集まった企画二課で、実務経験の少ない道也は才能を発揮できなかったのだ。出すアイディアは軒並み不採用、評価も同僚の中では最悪。この仕事に自分は向いてないんじゃないか、いっそのこと転職しようかと思った矢先に、道也の事務補助で一緒になったのがユイだった。 ユイの仕事ぶりは正直にいって出来るほうではなく、可もなく不可もなくといった程度。ただ、ユイは女子社員の中で抜きん出て可愛かった。容姿がだけではない。美人というだけならいくらでもいるのが大企業だ。ただ一流商社の女性社員は、受付嬢から派遣社員までもが上昇志向の高い可愛げのない女ばかりだった。 そんな中で可愛らしくて少しおっとりしていて、ちょっと抜けている。男心をくすぐる女の子だったユイは、社内でダントツの人気者だった。まさに引く手あまた、色んな男に誘惑されたはずだ。なかには重役の息子もいたという。それなのに、なぜかユイは他の誘いを全部断って、企画二課でもさえない成績の道也の誘いを受けて彼女になってくれたのだった。 ベットのなかで、道也はユイに悩みを打ち明けていた。ユイは、ただ静かに黙って聴いてくれてた。そうして行為が終わった後は、いつも優しく抱きしめてから「大丈夫、貴方は出来るよ」と、まるでおまじないのようにいうのだった。 ユイのおまじないが効いたのだろうかどうかはわからないが、それから道也の仕事振りはぐんぐんとよくなっていった。結婚して、第一子をユイが懐妊するころには課長の補佐を任されるまでになった。 道也の仕事が忙しくなったから文句もいわずに、家庭に入ってくれたのもユイだ。心身両面で道也の生活を支えてくれているのだ。専業主婦で家に居るからといって、万が一にも妻のユイを疑えるわけがない。 ただ、最近刺激のなかった夫婦生活にはこういう嫉妬みたいなのもいいかもしれないと旦那は思い返す。ユイと結婚してからここに越してきてもう長いが、隣の大学生も何度か見かけることがあった。 なんか顔色の悪い、さえない小太りの若造で、男性としての魅力はゼロ以下のマイナスに振り切っている。万が一にもユイとどうこうとかは心配しなくていいだろう。 別に道也も浮気しているわけではないのだが、娘も生まれてからは特に、このところ夜の生活が縁遠くなってしまっていた。最近、仕事が忙しくなってきていたからだ。もう一息だった、いまのプロジェクトが上手くいけば上司の昇進に合わせて、自分も二課の課長になれる内諾が出ていた。管理職も大変だが、部下を持てば自分の仕事もある程度下に任せられるようになる。 あいかわらず、ゆったりとした動作で、自分のおかわりをもってきてくれているユイを見ると安心できる。今日は、久しぶりにねっとりとやってやるかと道也は考えていた。仕事は順調だし、ユイがちゃんと家計をやっているおかげで、貯金も結構溜まってきていると思えば。 「もう一人ぐらい……子供居てもいいなあ」 「やだ、あなた。ご飯のときに、いきなりなに言ってるんですかー」 そういってユイは頬を染める。一時の母になっても、魅力的な女だと思う。 「あのさ、今日あたりな……」 「……はい」 あとは無言で会話を終えた。久しぶりに道也が抱いた妻の身体は、まったくもって満足のいくもので、久しぶりでもしっかりと受け止めていた。そうやって自分の妻に満足していたから、ユイの欲求不満を知ることがなかったのだった。 その隙に入り込んでいる男がいることにも、注意を払わなかった。
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第二章「乙橋中学集団妊娠事件」 |
今日も、長椅子の上に横たわると物凄いスピードで、夢の地球から月のアポロ跡地まで一直線。アルジェ師匠は、なにやら月の壁面に月の石を使って数式を一心不乱に書いていた。 「なにしてるんですか、師匠」 「ああ、お前この数式は読めるか」 「いや、そこまでの超高等な数学はちょっと」 理系適性があるはずの誠人でも、まったく読めない。たぶん圧縮数学か、一つの変数が多重に意味を持つというのは辛うじて分かるのだが。 「じゃあ、おまじないだと思っておけ」 ほどなくして、そのおまじないは終わったようだ。 月の表面の数式が光り輝く。 「数学は、もっとも単純に世界を表現する方法だ」 静かに、アルジェの続きを待つ誠人。 「統一理論さえ分かれば、宇宙さえ再構成できるそうだが、夢の世界の統一理論の方程式が分かったらどうなると思う」 「これが、そうなんですか」 「まさか、いくら私でも統一理論まではな。だが、この月はお前の夢を軸にした集合無意識の象徴。世界全体範囲に及ぼすなど、到底無理にしても場所を限定すれば夢の共有化は可能、さらにこのルールを使えば部分的な夢の再構成だって可能になる――」 さらに数式から湧き出る光はまして、月全体を包み込む。 「――のはずだ」 「たしかじゃないんですか、師匠!」 「私を信じろ」 「うあぁー」 やけに自信たっぷりに小さい胸を剃り返させるアルジェ。その瞬間、地割れした地面の亀裂が二人を飲み込んだ。 悲鳴をあげる暇もなく、誠人は落ちていく。
暗転――次に眼を開けたとき、二人は初夏の日差しが差し込む学校の教室に居た。 見覚えのある制服に、代わり映えのしない教卓の前には、数学教師らしい線の細い教師が、生徒のほうを見ずに必死に公式を黒板に書き綴っている。 生徒たちは、やはり気だるそうにノートを書き込む振りをして、友達にメモを書いてなげたり、携帯をちらりとチェックしたりしているのはまだいいほう。 クラスの半数以上の生徒は、寝ていた。公式だけを延々と大書している数学教師は注意もしない。これが、今の学校教育の現実なのか。 「あれここ……やっぱり、乙橋中学じゃないですか」 「そうだな、日本の関東地方にある中学校で、たしかそういう名前みたいだな。とりあえずは成功ということか」 なにやら、近くの女子中学生の頭を手で掴みながらアルジェがいう。 「ここ、ぼくの母校なんですよ、わざとですか」 「たまたまもっとも居眠り率が高い学校で選んだんだが、お前の母校だったのか」 たしかに、誠人の通っていた母校は程度が低いことで有名だ。自分もプログラムばかり書いていて、まったく学校で勉強しなかったからなあと懐かしく思い出す。 「それにしても、母校とはいえ中学校は懐かしくて良いですね」 こうして、女生徒たちを前にしても、アルジェのいう「夢の中の世界」にいるのだから、向こうからは意識されないし、リアルで中学校なんかにいったら、当時の暗い思い出が沢山思い出され、キョどって狼狽したあげく、逃げ帰って引きこもるのが落ちだろう。 「やけに、のんきだな。まあこれからの実験には、リラックスしてもらったほうがいいんだがな」 「いったいなにをやるんですか」 それには、答えずフフンっと笑うと、教室の裏にある黒板の文字を消して、今度は誠人にも分かるレベルの説明をするつもりで、小気味いい音を立てながらチョークで書き出すアルジェ。 「――というわけだ」 カッカっと音を立てながら、黒板の裏の小さいスペースに簡素な数式と英文字の羅列が並ぶ。どうだという自慢げな顔のアルジェ。それにたいして、誠人は申し訳なさそうに。 「……あの、師匠。ぼく英語も読めないっす」 「そうだったのか? それはすまない私のミスだ」 「勉強不足ですいません師匠……」 誠人も、プログラマーだから英語の日常会話ぐらいまでなら分かる。だが、これは専門用語が理解できないから、読めないのだろう。情けなく頭を掻く誠人を見つめて、アルジェは静かに額を押さえて苦い顔をした。 難しいことを難しいままに言うだけなら秀才だってできる。凡俗にも分かりやすく説明してやれてこその天才だとアルジェは自分を律しているつもりなのだが。見極めが甘かったようだ。 アルジェだってまだ若い、こういう簡単な計算違いをやらかすこともある。 「日本語に書き直してやってもいいんだが、もう面倒なので口頭で説明する。数式のほうは分かるだろ。つまり、さっき月を割って入ってきたのだが、あれが集合的無意識であることは説明した。つまり、いまこの教室にいる人間全ての夢を、お前の見ている夢を軸にしてつなげてみたのが現状だ」 「この夢は、この教室にいる皆が見ているってことですか」 「そうだ、あとお前と私だな」 そういわれて、誠人は改めて教室を見渡す。数学教師が一人に、女生徒と男子生徒が半数ぐらいづつ。ごく当たり前の、一年B組の教室。 「これが、本当に夢で繋がってるんですか」 「そうだ、前回の実験では伊藤イズミの夢が繋がってるだけで、周りの社内とかそこに居る人間は伊藤イズミが見ている夢に過ぎなかった。あるいは、伊藤イズミが見ているのと一緒の現実の光景であったとしても、あくまでもイズミの脳が現実をフォーマットしているものにすぎない――つまり、現実に影響を与えないんだ」 「この夢も繋がってるだけで、同じじゃないんですか。あくまで夢は夢ですよね」 いまいち、アルジェの言いたいことがよくわからない。 「そうだな、夢は夢だ。前回の実験で伊藤イズミの精神に影響を与えることには成功したが、物質的になにかできるわけではなかった。だから、お前は現実世界に行ってイズミを犯したんだ」 「そうですよね」 誠人は大きく頷く、夢は夢だ。 「話が変わるが、霊魂が抜け出てセックスして子供を妊娠したという事例が昔から世界各国にあるんだが、どう思う。遺伝子鑑定などない時代だが、あまりにリアルだったし現実に子供も出来たので結婚してしまったという話があるんだが」 「え……」 「大きな意味で取ると、たとえばマリアの処女受胎とか、象が入ってきて妊娠したという釈尊の逸話もそういう意味なのだろうが、性的交渉がないとされている状態でも、夢のお告げのようなアクションで妊娠したという民話や神話は山ほどある。なにかの宗教的象徴と捉えれていたことが実は現実に起こっていたとしたらどうだ」 「それは……」 たしか日本昔話でも、男が穴を開けてオナニーした株を食べて妊娠した女の子の昔話があったなあと思い出したが、それは実際にどっかで隠れてセックスをやってて、それを誤魔化したために出来た話じゃないのかと誠人は思った。 「実際にセックスやったのを誤魔化すための、ただの逸話だと思ってるんだな。たしかに、今までの科学的に考えるとそうとしか考えられない。だが、人々の精神が脳の奥底で繋がってることが前回の実験で実証されたのだぞ。そして、精神は物質を造り、物質は現実に作用する」 そういって、誠人の反応を見るアルジェ。 「つまり……」 「そう、精神的にだけではなくて、夢の共有化によって実際に肉体的影響を与えられる可能性があるということになる、その実験をするために選んだ空間がここだ」 「この教室が」 「いまから、お前はこの教室で寝ている女生徒だけを選んで、犯すんだ。そうすれば、誰か一人ぐらい当たるだろう。もし、妊娠させることができれば、この仮説が正しいという証明になる」 「そんな……」 青ざめた顔でアルジェを見る誠人。 「なんだ、気になるのか。罪のない女生徒を傷つけるのが怖いか。だがな、殺したり傷をつけたりしたところで、それが精神的ショックで引き起こされているという批判を受けたら科学的立証にならないんだ。性交渉が一番いいんだよ、女が――できれば未通の女がいいな――そいつが自力で子宮内に精子を合成できるわけがない。だから妊娠させれば、確実に肉体に影響を与えているという証明になるんだ」 「……数学教師や、男子生徒がいるところで立ちません」 「そっちか……まったく男の生理というやつは繊細で扱いにくい、じゃあこれでいいか」 アルジェは額を指で押さえながら、左手の指をパチンとならすと、教室から教師と男子生徒の姿が消えた。こういう接続の調整にも労力がかかるのだが、立たないと言われてはしょうがない。 「それじゃ……えっと、どの子からしたらいいんでしょう」 誠人は、別にロリコン趣味ではないが、母校の女子中学生を抱けるというのなら抱きたい気持ちは当然あった。しかも、向こうはこっちを意識できないから恥かしがる必要もない。 「どの子じゃなくて全員だ」 「全員って、体力がもちませんよ」 「それについても、良い方法がある。もう説明が面倒だから」 パチンと、またアルジェが指を鳴らすと、誠人の股間がもぞもぞし始めた。 「うああ……なんですかこれ……これ!!」 なにか蛇のようなものがのた打ち回ったとおもうと、いきなり股間を中心にパンツが破れて、股間から大量の触手が飛び出してきた。まるで、オロチの化け物みたいだ。 「うあー、師匠! ぼくの股間どうなってしまったんです」 「びっくりさせて悪いな。男の射精は、一発で一億匹の精子を吐き出すといわれている。つまり、射精は一回だがそれをエネルギー換算すると、一億回の受精へのアタックができるという、この莫大なエネルギーをだな。象徴的に換算したのが、今のお前の股間だ。その触手でなら、全員やっても体力が持つだろう」 股間で、爆発したように膨れ上がった触手は十本はあるだろうか。まるでチンコが細長くなったようなもので、誠人の意思に一応反応して動いているようにも感じるのだが、コントロールが完全に効いているわけでもない。 「触手なんて、師匠! これどうやって動かせばいいんですか!」 自然に、近くの席に座っていた微妙に田舎っぽい茶髪のギャル系の子に何本か絡みついていく。そのたびに触手の表面は滑り気を増し、粘性の液を吐き出しているように見える。単純に気持ち良いとか、気持ち悪いとかを通り越した自分のチンコがまるで違う生物になってしまったような、それは不思議な感覚だった。 「まあ、せっかくの夢世界だからな、いろいろ試してみると――って、なに私にまで触手を伸ばしてんだ馬鹿!」 「すっ、すいません」 誠人の欲望に突き動かされているのか、アルジェにまで何本か触手が延びてきている。慌てて触手から離れて、必死に腕で振り払う。腕にまとわりつく粘液を情けなく見つめるアルジェ。腕が、男の先走りのような液でドロドロになってしまった。 程なくして何か防御壁を張ったのか、アルジェの周りには触手が近づけなくなった。 「触手というやつは、やられるほうはベトベトで気持ち悪いな」 アルジェは近くの女生徒のスカートで、必死に腕を拭いている。 「こっちは、もうほんとに微妙な感覚です」 「自分でやらせておいてなんだが、感想は別に聞きたくないからいうな。私は終わるまで外に出てるからな」 そういうと、巻き込まれてはゴメンとそそくさと教室の廊下に出てしまうアルジェ。教室には、一年B組の女生徒十数人と股間から触手を爆発させている誠人だけが残った。触手がうねるだけでも股間に快楽が走る。それで誠人は、アーとかウーとか感極まった様子で叫んでいる。 寝そべっていた茶髪のギャル子は三本の触手に、同時に顔と胸と股間を嬲られて、制服がオイルをぶっかけられたようにドロドロのビショビショになっている。 茶髪ギャル子は居眠りをしたそのままで、抵抗できないのか抵抗する術を持たないのか、眠ったままで触手がどんどん体内に入り込みすでに五本の触手に嬲られつつある。 「うぅ……あぅ……」 そういう気持ち悪いんだか感じてるんだか、茶髪ギャル子は呻きをあげている。こんな状況で、よく寝ているなあと思うが、机に突っ伏して無理やり眠るという状況を崩せないのかもしれない。 彼女にとっては、自分の悪夢か夢魔に襲われて、寝汗かいてるぐらいにしかおもってないかもしれないし。 ギャル子の制服が完全に脱げて、形のよいおっぱいが飛び出した。海にでもいったのか、日焼けサロンで焼いたのか、奇麗に焼けた褐色の肌にぬめりのある触手が縦横無尽に駆け巡る。 一方、下腹部ではあえてパンツを脱がさず横からひねりこむという長さのある触手の長所を完全に生かして、マニアックなプレイに及んでいる。誠人としては、そんな細かい注文までコントロールしているつもりはない。 彼にとっては、ただギャル子の褐色の胸の柔らかさと顔の温かさと、ギャル子の若い膣壁のもたらす密度の濃いウネリがただただ気持ちいいだけだ。 「あぁ……いぁ……」 机につっぷして寝ているという体勢を崩さないで、ギャル子は処女ではなかったようで膣の奥底まで触手に突かれまくって感嘆の声を上げている。 ほどなくして、堪えることもなく。 「あぁ!」
ドプドプドプドプピュ!
ドピュというよりドプドプという感じで、ギャル子の口内に胸に、そして何よりもイッって準備の整ったギャル子の膣内の奥底へと触手の白い毒液が降り注いだ。褐色の肌全体に撒き散らかされた精液でドロドロになっている。
一方、誠人の性感は忙しい。そうやってギャル子を攻略している間にも、他の触手たちは別の女の子に襲い掛かっているのだから。不幸にもギャル子と机一つ空けたところに位置していた、これも肌の白い奇麗系のメガネ子が襲われてしまう。 彼女は、たぶん図書委員長で級長なんだろうなと誠人は勝手なことを妄想している。当然のように、彼女は起きてノートに黒板の公式を写したりしているのだが、触手はそんなことはお構いなしに顔から頭から、粘液でドロドロにしてしまう。 委員長は必死に嫌悪感に形のよい眉をすぼめながら、粘液で艶やかになりすぎてしまった黒髪をかきあげ、ドロドロと粘液が垂れるノートに公式を書き入れようとするが、ぬるっと袖口から入り込んだ触手に驚いて 「きゃ!」 とかなんとか、声を上げてペンを机の下に取り落としてしまう。制服のなかで荒れ狂う二本の触手に翻弄されて、ペンを拾う暇もない。ずり落ちるメガネを何とか両手で支える、間にも下腹部にも入り込んだ触手の違和感に泣き出してしまう。 「うぅ……あぁー」 そんなゆがんだ委員長の顔に、顔に張り付いた触手がドピュドピュと早漏な精液の飛沫を吹き上げる。 どっぷりと、白い液と透明の粘液をドロつかせた顔から、力尽きたようにポロリとメガネが落ちた。 「……もう嫌ぁ」 そう小さくつぶやいたのが、誠人に聞こえた。リアルで彼女は起きてるはずなんだけど、そっちでは教室どうなってるのか気になる。そんな、誠人の思いとは関係なく触手は委員長の膣口に食らいつき、一気に貫いた。 「――いぃ……いだぁ……うぅ……うぅ……うぅ」 初めてだったのだろう、下着からは処女の鮮血が流れ出す。粘液によって物凄い潤滑があったにしても、むちゃくちゃ強引だ。 委員長は、今度は涙も流れ出しもうぐちょぐちょ、すそで拭くがそのすそも粘液にまみれているので、意味がない。 そうこうしているうちに、茶髪ギャル子をやりおわった触手も委員長に殺到してドロドロのドピュドピュにされてしまう。 「うぅ……ぁ!」 どくっと、腰をのけぞらせて机に突っ伏して痙攣する委員長。その瞬間、腹の中に食い込んだ触手がはじけた。
ドピュドピュドピュ!
終わったと半ば安らいだように全身を弛緩させて、疲れ切った様子で委員長はバタンと倒れた。 アルジェの事前の制御で、一人一回の射精に限定されていたことが、彼女にとってはラッキーだった。
委員長が、死んだように倒れたころ、その隣のぽっちゃり系の子の陵辱も佳境に入っていた。やせたら多分凄く可愛いだろうという感じだ、中学生だからいまのぽっちゃりでも子供らしくて可愛いのだが、ある意味、巨乳だといえる。 「はっ……はっ……」 とにかく、処女ではあったらしく腰を貫かれて、そのぽっちゃりした体全身を痙攣させている。中学一年生ですでにDは誇っているカップでは、二本の触手が楽しげに拘束パイずりを楽しんでおり、パイずりによって射精された精液が服の中から、プシューと飛び出しているのが見えた。 そのたびに、深い快楽に落ちて腰を振るさせる誠人。まるで、自分がそれこそ多数の触手に分裂してしまったような、快楽だった。そして、その腰の快楽が認識できるかできないかの多くの快楽を集約して、一種独特の爆発的な快楽を生み出している。 快楽は共振して、それをさらに高いレベルへと持っていく。あくまで夢の中のことだが、この大きなオーガニズムのウエーブは腰に触手を多数生やした誠人にしかわからないだろう。 男性的な感覚でいえば、射精したにもかかわらずその衝撃で思わず二回目の射精をしてしまった中学生ような。それが無数に連鎖して続く快楽だ。 本体の誠人が快楽にのたうち回っているうちに、触手によるぽっちゃり子の陵辱が終了したようだ。腰に深々と突き刺さった触手は、大きく振るえて誠人の先からプクっとした塊がグアーと流れ込むのが感じられ。 「ぁ……ぁあ!」
ドピュドピュドピュドピュ!
お腹の中への初めてであろう男の飛沫を、声にならぬ声をあげてぽっちゃり子は、感じ取るのだった。 こんなことをクラスの十数人の女子中学生、いくらなんでも十三歳だ。そのほとんどが処女だった。残酷なことであるが、触手によって陵辱した誠人は最後のほうはもう、快楽の波に襲い掛かられて、正常な判断を失っていた。 そして、誠人の理性のコントロールが聞かなくなって、さらに触手が縦横無尽に暴れまわることになり、終わったころには人間として駄目になる寸前でった。
ガラガラと音を立てて、アルジェが入ってくる。ほんの少し眉を顰める。彼女が見た光景はちょっとした地獄だった。白濁地獄とでもタイトルを付けたいそれは、教室にばらばらに座った女子に向けて四方八方に触手を伸ばした誠人が、真ん中に倒れている図であった。 「おい、大丈夫か」 「ぁ……ぁぃ、ししょー」 口調があまり大丈夫ではないと思ったが、会話はできるようだ。問題ない。 「しっかりしろよ、体力的には四、五回射精しただけのはずなんだぞ。自分から生えた触手ぐらいコントロールできなくてどうする」 そういいつつ、触手を収拾するように戻してやるアルジェ。彼女は男性の生理に詳しくないので、男が四、五回射精するという体力の消耗を理解できないのだ。 「申し訳ありません師匠、快楽が大きすぎて……触手って凄い」 「ああそうか、だが慣れてもらわなければならんよ」 「わ……わかりました」 「これを毎日やることになるんだからな」 「え……」 それは誠人にとって、恐ろしい快楽の日々の始まりだった。 「まあいい、後片付けは私がしておいてやるから今日はゆっくり休め」 そういって、指をパチンと鳴らすと世界が暗転して、誠人は現実の世界へと引き戻されていった。 誠人が暗いメンテナンスルームで眼を覚ますと、夢の中と同じようにパンツが激しく破れていた。そうして、腰の周りにたっぷりとまるで何回も射精したらしい、精液がべっとりと付着していた。 掃除が大変だったのだが、夢を見て夢精しただけではない現実の事象がここにもあったことになる。アルジェに明日にでも報告してやれば喜ぶかななどと思いながら、午後の仕事にもどった。
三ヵ月後、神奈川県の乙橋中学で女子の集団妊娠事件が起こり、地域で大きな問題に発展することになる。事件性はないと判断されて、警察は入らなかったのだがこういう事情があったことを、アルジェと誠人以外は誰も知らない。
(嘘から出たマコト 終わり)
続きが思いついたら、続けるかも。ヤラナイカー
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