第九章「自慰の代償」 |
「未央さん……オナニーしてるでしょ」 「へっ……」 祓魔師さんが、冷えた口調でそう言った。こういう口調のときは特に、未央のことをズバリズバリと言い当てるのだ。 家の事情から、未央の経歴、気持ちまでもズバリと言い当てられてしまう。 どうして分かるのか聞いたこともあるけれど、なんとなく分かるんですと言われた。やっぱり凄いんだなと感心するしかない。 普通なら不安なのだろうけど、祓魔師さんが自分を分かってくれているというのは、未央にとって、とてもいい気持ちだった。
この日は特に異変はなかったのだが、なんだか凄く未央が不安になって電話して来てもらったのだ。未央の不安すら見抜いているのか、祓魔師が来るのはまるで事前に準備していたようにあっという間だった。 「これから、自慰は絶対してはいけませんよ。バアル・ゼブルは、貴女の子宮に入り込むのが最終目的なんですから」 「子宮! ……そんな、そんなことになったらどうなるんですか」 「貴女は、バアル・ゼブルの子供を懐妊することになります」 「そんなあぁ……」 そんな逸話はたしかにあった、ほかならぬ祓魔師さんが言うのだから、ウソではあるまい。悪魔の子供を産むなんて。 「そうなったら、堕児なんてきかないですから。堕ろしても子宮の中にバアル・ゼブルが居る限り、何度でも受胎するんです」 「うああっ……どうしたら!」 「だから、結界を張るように私が努力してるんですよ。悪魔との勝負は、貴女が拒否するか受け入れるかどうかにかかっているんです」 「私が受け入れる……」 「そうです、貴女が自分で自慰をして軽くでも絶頂を迎えたら、それは悪魔に負けたということになります」 「あの……でも……その」 祓魔師さんに、清めてもらうときに、悪いとは分かっていても何度か肉体的絶頂を迎えたことがあるような気がする。 「私がしたときはいいんですよ、受け入れなさいと何度もいったでしょう。私を受け入れる分には、逆に悪魔を拒否して守りを強めることになります」 そうなんですかと、未央はようやく安心した。 この日は、口を胸のお清めだけだった。口を舌で清めながら、何度も胸ばかりを揉むのだ。心臓を間接的に強めているのだといわれたのだが。 「あの……乳首をそんなにするのは……」 「必要な処置です、わかるでしょう」 「はい……ごめんなさい」 そうして、未央が身体を震わせると、手に力を弱める。冷めてくると、握り締めるように強く揉む。その繰り返しで、未央は疲れきってしまった。 「じゃあ、今日はこんなところで……」 聖水は今日はなしかと、未央は思った。祓魔師さんがしなかったのだから、いらないのだろうとは分かっているのだが。 「ああ、お金! お礼持っていってくださいね!」 「はいはい」 ごそごそと、戸棚をあさって祓魔師さんは去っていく。 目隠しをはずす。 お礼のことじゃなくて、私が祓魔師さんを呼び止めたのは。 玄関までいってみたけれど、もうそこには誰も居ない。
悪魔の件があってから、ほとんど外出しなかったけれど、聞いたら別に外に出てもいいということだったので、外を歩く。 なんだか、家にいるとムズムズとした気持ちになってしまうから、たまには外の空気を吸ったほうがいい。 公園を回って、小さな川が流れている土手を散策する。 もう暗いから、ほとんど人は歩いていない。ウォーキングと犬の散歩の人がいるぐらいか。このあたりは、高級住宅街の一角なので治安の心配はほとんどない。 ふっと道を通りかかった男の人と視線があった。大柄な、冴えない男の人。未央より少し年上ぐらいだろうか。 未央と視線を合わせて、ニッコリと笑う。 そして、そのまま通り過ぎていく。何気ないことだ、ただ人とすれ違うだけ。 知らない人だ、だけど何か知っているような気もする。 向こうが立ち止まらない限り、そんなことを思っても知らない人に声をかけることなんて未央にはできない。 そうして、男の人は立ち止まらなかった。
コンビニで買い物をして買える。 引きこもってからは特に、声が出ない気がして、人と話すのが恐かったのだが、祓魔師さんと話すようになってから、いざとなれば会話ができるという安心感があった。 最近ほんとに、食が細くなったなあと未央は思う。 未央はジュースは嫌いだけど、乾いた甘いものが好きで、お菓子をけっこう食べていたのだが、最近はほとんど食欲を感じない。 悪魔に取り憑かれた影響で、食生活まで変わってしまうものだろうか。 結局、お茶とおにぎりだけを買って出た。
そうして、また家に戻る。 外に特に用事がないのだもの。 未央は、家にいるしかない。『禁書』を見る。結界の中にあるから大丈夫だけど、やっぱりあの黒い本はおぞましいものを未央に感じさせる。 未央に悪魔の子を産ませようとしているのだといっていた。恐い恐いと思う。 「子供を産むなんて……」 あの母親から、生まれたなんてことが実感として感じられない未央だから。子供を自分が産むとか、孕むなんてことは、想像を絶する事態である。 「なんだかなあ……」 ありえないような気がして、ここからと股間を手で触れようとして、ひゃっと手を放す。 「いけない……」 悪魔の誘惑なのかもしれない。信じられないことだけど、ほかならぬ祓魔師さんがいうのだから、それは本当なのだ。負けてはいけない。
余計なことを考えてはいけない。そうだ、オカルトの本でも読もう。ベルゼブブの周辺の逸話をもっと調べなければ。今日こそヒントがあるかもしれない。 読書をするときは、部屋の照明を暗くして本に集中する。 今日は、オレンジ色の明りが、妙に淫靡に見えた。オカルトの本というのは、挿絵の図版が陰影によって官能的に見えたりもする。本に集中できない。 未央はコンビニで買ってきたおにぎりを食べて、シャワーを浴びて横になった。まんじりともせず、寝付けないでいた。
***
それから、しばらくは落ち着いていた。本に集中できないから、散歩をしてなるべく余計なことを考えないことにする。 どうしても我慢できいないときは、祓魔師さんに電話をかける。話しているうちに、自分が不安がっているのか、悶々としているのか、わからなくなる。 「それじゃあ……行きましょうか」 「本当ですか、助かります」 祓魔師さんだって、いろいろと用事があるだろうに、自分のことを気にかけてくれているというのが嬉しい。 「未央さん、目隠し、忘れないで下さいね」 いつになくウキウキと気分が浮き立って、待ちきれないで居た。ほんの少しの待ち時間が、長く感じた。 目隠しをつけているから、暗闇のなかで待ちつくす時間は本当に長く感じる。 「やっぱり、いつもは悪魔の気配を感じてるのかな……今日は何もない日に無理矢理呼びつけてしまったから遅くて」 ようやくインターフォンがなって、祓魔師さんが来るのが分かる。 上がってくる間を待つのも、もどかしい。 (私は……どうしてしまったんだろう) 未央は、自分でもどうかしていると思う。 「来てくれてありがとうございます」 なんだか祓魔師さんが来てくれたというだけで、心がじわっと濡れた。 「いえいえ、これも仕事ですから」 祓魔師さんは、いつもよりそっけない様子だった。
それでも祓魔師さんは、今日も丁寧に未央の話を聞いてくれて、質問に答えてくれて、安心させてくれる。 口と、胸を、清めてくれるのだけれど、そこから下は触ろうとしない。 どうして、してくれないのかと思っているのだけど、そんなこと言うわけにいかない。 (そうだよね……何もないのに……触るなんておかしすぎるもん) 股が、凄く寂しい気がする。結局、優しく触られるだけでこの日も終わりそう。 「あの……今日は聖水は……」 「今日は、悪魔も動いてないですから、必要ないですね」 祓魔師さんがそういうのだからそうなのだろう。 「あの……お礼を」 少しでも引き伸ばしたくて、そう話を向けてみたのだが。 「今日は話だけでしたから、必要ありません。何か異変があったら、いつでも電話していいですから。それでは」 さっと、祓魔師さんは出て行ってしまう。思わず、目隠しを剥ぎ取ろうかと思ってしまった。 扉がバタンと閉まって、行ってしまったと思って。 しばらく、未央は玄関のドアに顔をつけていた。扉のひんやりとした感触。
***
なぜ急に、悪魔は動き出さなくなってしまったのだろう。 寝苦しい、夜が続いている。もしかすると、何もしないのが悪魔の誘いなのかもしれない。そうでなければ、これほど自分がおかしくなってしまうわけがない。 「私……こんなの……おかしいよね」 ギュッと、枕を抱き締めるように、身体の奥に溜まった熱を逃がすように。気持ちをやり過ごすように。 このところ続いた、一連の事件が未央の性感を刺激しているのか。 それとも、これも魔法めいた怪奇現象の一部なのだろうか。
幾度かの寝苦しい夜を乗り越えて、また未央は祓魔師さんを呼んだ。 来てくれるのは、嬉しいのだけど。決して祓魔師さんは、未央の下に触ろうとしない。中途半端に、胸と口付けだけ。その手つきはは、優しすぎて未央に物足りない。 必死に、必死に未央は祓魔師さんの舌を吸い上げるようにした。 もう、自分が限界なのがわかって欲しかった。 言葉でないと、伝わらないのだろうか。 また、あっという間に祓魔師さんとの時は終わる。 (どうして……) 祓魔師さんは帰っていってしまう。 それでも未央が自分から求めるなんて、絶対に無理だった。 だって、これは全部お清めで『そういう意味』なんて含んでいないのだ。 自分から頼んだら、断られるかもしれない。 ずっとこれまで受身に来たことが、裏目に出たのだ。
どうしよう、どうしようと、未央は悶々とする理由が増えて、さらに夜眠れなくなるのだった。 食欲も、睡眠時間も、どんどん減っていく。 いつか、限界が来るのは目に見えていた。それでも、どうしようもなく手をこまねいているうちに、ある日それは来た。
身体中がそそり立つような怖気。 自分が性欲の化け物になってしまったみたいに、身体中が熱くなる。 (欲しい……欲しいよう) こんなの私じゃないと、未央の理性は叫んでいる。 だが、欲の絶叫には遠く及ばない。未央の中の悪魔が、叫んでいる。 (そうだ、これは悪魔だ……私じゃない、悪魔が……悪魔が) 駄目と思ったときは、もう遅くて。 自分のいやらしい股に、指を押し込むようにして、必死にこすっていた。 「ああ駄目、気持ちいい……!」 声に出ていることも気がつかずに必死に貪って。 一人、暗いベットの中で身もだえして、自分の快楽に耽って、未央は溜まりに溜まった絶頂を迎えていた。 「ああああああああ!」 馬鹿みたいな、イヤラシイ、それは雌の泣き声で。 自分の中の悪魔の叫びを、酷く冷めた思いで、もう一人の未央が聞いていた。
未央は、ついに悪魔に負けてしまったのだ。
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第八章「孤独の独白」 |
その日も、日がな一日ベルゼブブ関連の書物を紐解いて、未央の一日が終わろうとしていた。 中世ヨーロッパで、ベルゼブブの悪魔つきが発生して、悪魔の子供が生まれたという逸話。その血族は孫の代まで続き、記録や手記はたくさん残されているのだが。 未央の今の事態を打開できそうな情報は何一つない。 「やっぱり、祓魔師さんにお願いするしかないのかな」 部屋に一人で居る未央にとって、独白はもう癖みたいなものだ。心に思ったことをいつのまにか口に漏らしてしまって、それを自分で意識することもない。もちろん、秋人がそれを盗聴で全部聞いている事も知らない。 窓を見ると、日が高くなっていた。程よい気だるさが襲ってきたので、書物に集中できない。バタンとベットに倒れこむようにすると、枕に顔を伏せる。眠ろうかと思ったのだ。引きこもりの未央だから、もとから規則正しい生活などとは無縁だ。 「ん……」 無意識に、指が唇に触っていた。 (私、やっぱり祓魔師さんとキスをしたのかなあ) そう言えるのかなと。 それは清めるための行為であった。悪魔が襲ってきていたのだから、必死でそのときは気にならなかったとしても、後々やっぱり考えてしまう。 その行為に性的な意味はないはずだった。それは、悪魔が襲ってきたから仕方なくされたことで、愛情があったわけでも、まして恋人たちのまぐあいのようなものではない。 それでも。 男性に身体を触れられるのは、初めてだったのだ。 (こんな感じに……) 自然と、執拗に触られた胸を自分で触っていた。普段は、まったく意識しない胸が、あんな気持ちを自分にもたらすとは不思議だった。 男の人に触られたのに、それほど嫌な気持ちがしない。 高校は結局すぐ中退してしまったのだが、中学校、高校と未央は私立の女子校に通っていた。今思うと、露骨に男性を避けていた。 女子校でも、年頃の同級生は「彼氏ができた」とか言っているのだが、未央からすれば「そんな男のどこがいいの?」と聞きたくなった。 同世代の男の子に、全く興味がもてなかったのだ。みんな脂ぎたぎたして、汚いという感じしかなかった。声をかけられたこともあったが、嫌悪しかなかった。 汚いし、臭いし、あんなのいったい何がいいんだろう。 そんなことをずっと思い続けていた自分のほうが、きっとおかしいんだとも分かっている。 そんな口にできない違和感と疎外感は人を遠ざけて、未央を簡単に孤独にした。異性が嫌いだからといって、同性が好きなわけでもない。 未央は一人のほうが気楽だった、人間はみんな嫌い。 そんな自分だから、一生男性には縁がないと思ってきたのに。 経験の数に入れるべきだろうか、いややっぱり入らないのでは。 目隠しをいつもしているから、祓魔師さんがどんな人かもわからない。分かるのは声と身体の感触だけで、そう思い起こすだけで未央は顔を真っ赤にしてベットに転げまわりたい気持ちになる。 祓魔師さんは、男性って感じじゃない。たった一人の未央の世界の内側に来てくれている人だと漠然と感じる。 未央は、少しだけ触れた秋人の大きな背中に、不在である父親を感じていたのかもしれない。だが、それは表面上は両親を嫌っている未央が避ける思考であるので、意識にあがってくることはない。 漠然とした、なにか頼れる存在だという親しみ。 いつの間にか、未央の手は自分の股間へと伸びていき。 やがて、ごそごそとベットの中で布ずれの音をさせて、次第に音は小刻みに大きくなっていく。 荒い息遣い。何度かの寝返り。そして喘ぎ。 やがて、小さく呻き声がして音は停止した。 気をやったことで満足して、寝息をたてて眠る未央。 夢の中で、彼女は自分に向かって天から降り注いでくるたくさんの真っ黒い悪魔と、それから身を挺して守ってくれる白い天使の姿を仰ぎ見る。 *** 数日後、また異常な腹痛。 ゴリュウウッ……ゴリュウウッ…… お腹が絞り上げられるような、悲鳴を上げる。 突如に発生した下腹部の威圧感で、これが普通の事態ではないとわかる。 悪魔の仕業だ。 ゴスロリ服の内側では、未央の薄いお腹がこんもりと浮き上がっているに違いない。大腸に異物を押し込まれたような圧迫感。 お腹を押さえ、屈みこみ、呼吸が荒くなる。 どうしようかと迷った瞬間に、電話がなる。 這うようにして、出ると祓魔師さんの声。 地獄に仏とはこのことか。すぐに、指示された通りに目隠しして家を開ける。 インターフォンの前で、腸の圧迫が限界を向かえて。 「いやああぁぁーー」 肛門から、何か出てきている。目隠しがもどかしいが外すわけには。 とにかく、その場でパンツを脱ぎ捨て、出て行くに任せるしかない。 直腸から肛門にかけてのつよい圧迫。 ズリュズリュ……ズリュズリュ…… 音を立てて、太いソーセージのようなものが。思わず手で触ってその硬質の感触にびくりとする。 「芋虫……!?」 未央のお尻の穴から、芋虫のようなものが這い出てきているのだ。 バタバタと祓魔師が家の中に入ってきた。 「すぐに引き抜きますね」 後ろに回ったらしい、祓魔師さんが一気に引き抜いた。 ズリュ……ズリュ……。 「ああああぁ……」 腸が裏返されるような感触に、身体中を弾かせるようにして、思わず立っていられず壁に手をつくようにして、半ばしゃがみ込んだ。 その間にも、引っ張られているのかお尻から長大な何かが引き出されていくのが分かる。快楽なのか苦痛なのか、とにかく強い圧迫に身体を振るわせるだけ。 ズリュ……。 プツンと最後の一振りが、お尻から抜けて、ようやく肛門が介抱された。 「ああっ……!」 肛門から腸液とも、油ともつかない粘液を垂れ流す未央。 ばたりと、その場に倒れこんでしまう。 「おつかれさまでした、綺麗にしましょうね」 スカートを捲られ、肛門の辺りを拭かれるままにされている未央。 股を閉じることもなく、赤ん坊のように安らかな気持ちで任せている。やがて、祓魔師さんの湿った指が肛門の中まで、入ってきた。 確かめるようなに触るその指に嫌悪感はない。 「どうですか……私の肛門……」 「えっ……ああ、さすがに今日のは大きい悪魔でしたからね。それでもきちんと処置しますから安心してください」 突然聞かれて、慌てたように答える。祓魔師さんは、悪魔相手には自信を持って対応するのだが、とっさに普通の質問を未央に投げかけられると焦るようなこともあった。 難しい悪魔との戦いをしているのだから、あまり悩ませてはいけないとは思っても、未央も目隠しを外せないし、自分の身体がどうなっているのか不安でしかたがないということもある。 祓魔師さんの指が、ぐっと肛門を広げるようにする。どこまで伸びるか、確かめているようだ。 「あの……目隠しってずっとしないといけないんですよね」 「はい……絶対はずさないでくださいね。前にも言ったように、悪魔に憑かれた状態で見られると、私も飲み込まれてしまいますから」 「はい、変なこと聞いて、ごめんなさい」 強い口調で注意する。死活問題なのだから、あたりまえだろうと未央は思った。私は何を言っているんだろう。 そうやって話している間にも、祓魔師さんの指は執拗に肛門の奥を探るように。ああ、そんな奥まで入るようになってしまったのかと。あんな太いものが出入りしたのだから、当たり前なのかもしれない。 自分の穴の驚くほどの柔軟さに、自分でも信じられないものを感じる。これが、普通なのだろうか。それとも、悪魔に憑かれてるせい。 「これから、お尻に性杭を打ち込みますから、少しきついかもしれないけれど我慢してくださいね」 「はい……」 緩んだ肛門の穴に当てられるのは、いつもの聖杭の感触ではなくて、この生暖かい感触はいつも前に当てられてる。 そう思考する間に、ジュルッとそれが入り込んでくる。潤滑油のようなものが塗られているらしい。少し冷たい感触を感じる。肛門の裏をえぐるように入ってくる。 「痛くないですか……」 「いえ……少し圧迫感はありますけど……大丈夫です」 浅く引き抜かれて、またぐっと押し込まれた。 ガンと、突かれる感触。お尻が熱くてしかたがない。そこに、密着するように祓魔師さんが圧し掛かってくる。 「少し後ろから体重をかけますけど、重すぎたら調整するので言ってくださいね」 「はい……これぐらいなら大丈夫」 祓魔師が後ろから抱き締めるように、服越しに体温を感じる。 胸をなんどか揉まれるようにされる、ゴワゴワのゴスロリ服ごしの感触が、今日はもどかしく感じた。 ううん、こんな感じ方をしてはいけないと未央は思うのだが。 圧し掛かって、聖杭を打ち込んでいる祓魔師さんは、とても体力を消費しているようで息は荒く、感じる肌は汗ばんでいる。その鼓動を服越しに感じると、どうしても未央も熱くなってしまうのだ。 「はあはあ……どうですか、苦しいですか、気持ちいいですか」 「はいっ……苦しくて気持ちいいです」 未央は自分でも何を言っているか分からず、しどろもどろに答える。お尻がまるで別の生き物になったように、ドクドクと鼓動して熱い。自分の肛門の内側で、聖杭が暴れている。 「お尻の中に、精水を出しますから、受け入れてくださいね」 「はい、ください」 その瞬間に耐え切れないというように、深く深く聖杭が差し込まれて、中にドクドクドクと熱い律動を感じた。前に後ろに前に後ろに、それは深く深く未央の中に入ってきて、やがて決壊したように、ドクドクッと生暖かい液体を吐き出す。 聖水なのだと、未央は思った。 ばったりと、床に祓魔師さんが倒れこむ音が聞こえた。 未央は、それにかまう余裕もなく呆然としていた。お尻からは、その拍子に聖杭が抜けて、プルッと楽になる。 ああ、ぽっかり空いた肛門の中に冷たい外気が入ってくる。 それが、火照った未央には、何にも増して気持ちがよかった。 やがて、体力を取り戻した祓魔師さんが起き上がって、肛門の様子を調べているのが分かる。未央が身体をもぞもぞ動かそうとするとじっとしているように言われた。 肛門を綺麗にまた拭かれる、汗ばんだお尻や股の隅々まで綺麗にしてくれる。 こうやって、祓魔師さんに全部任せて寝ていればいいのかと思うと、未央は凄く幸せな気持ちだった。余韻のような熱が、まだ未央の身体に残っていて、それを噛み締めていればいいのだから。 「口も、清めましょうね」 そういって、未央の横にどっさりと寝る祓魔師の存在を感じる。 「んんっ……」 返事をする間もなく、厚い舌が入り込んでくる。 未央が受け入れるのも、少しうまくなった。未央の口の中に、唾液がたっぷりと溜まっていたので、それが潤滑になってうまく舌を絡められる。 絡めれば、絡めるほどお清めになるのだから。 無心で、受け入れるのに専念した。やがて、冷えかかってきた身体の芯がまた熱を取り戻すのがわかった。 「私の身体を強く、抱き締めるようにしてください」 躊躇していた未央は、言われたとおり祓魔師さんを抱く。ためらう未央をリードするように、口を離して祓魔師さんも抱き返してくれた。 「大きな背中……」 なでさするように、祓魔師さんの背中を確かめる。今日は、祓魔師も服を着ている。指に滑る感触は、綿だろうか。その内側で、人の熱を感じる。 そうしているうちに、祓魔師さんも未央の背中に手を回して、もう一度口を清めてくれた。 するすると、祓魔師さんの手がごそごそとスカートを持ち上げていく。太ももの間に入っていって、股を押し開くようにする。ニュチュッと湿った音が聞こえた。 ああ、私いつのまにか濡れてるのかと未央は思うけど、もう恥ずかしがることはないのかもしれない。 未央は気にしないことにした、大丈夫っていってくれたから。 「これから、女性器を清めますからね、こすり付けるだけですから安心してください」 「はい……」 祓魔師が床を寝そべったまま少し上にあがっていって、未央の股間に暖かい聖杭の当たる感触がする。 「太ももで挟むようにしてください」 「はい……」 不思議なことに、聖杭は未央の股の間でむくむくと大きさを増していくようだった。悪魔がお腹から芋虫を出すぐらいなんだ、聖杭だって大きくなっても不思議はないだろう。とにかく、いまの未央は股の感触を感じるので必死だった。 なんどかこすり付けられると、聖杭の根元が未央のクリトリスにあたって、もどかしい快楽が身体をしたから、そそりあがってくるように震える。 快楽に震えるようだったが、股間がひゃっと冷える感触がして、チクッとした。股の奥の大事な部分に、聖杭がひっかかっているのだ。 そのまま進まれたら、奥が。 「そこは……恐いです」 「ああ、ちょっと当たってしまいましたか。無理に入れることはしませんから」 そういって、股間をはずしてくれる。 ああよかったと思って、また抱き締め返した。 股間に聖杭が盛んに擦り付けられて、やがて限界を迎えるだろう。 「終わりそうですね……」 「えっ、ああ、精水を出しますから、受け入れてくださいね」 「はい……」 ドクドクと聖杭が振るえて、聖水をたっぷりと吐き出していくのが分かる。この聖杭の機能が、未央には段々分かってきた。 身体を振るわせるようにして、もう一度未央にチュッと口付けすると祓魔師さんは身体を放した。 「いつものように、股間に満遍なく塗りたくってください……そうですうまくなりましたね」 「こうでいいんですよね」 濡れている穴の奥まで、指で聖水をかきいれていく。 未央は不思議と、自分のそんな動作も陶然としたものに感じられた。 「さて、今日のお清めはこんなとこです。これでしばらくは悪魔も封じられていることでしょう」 満足げに腰をあげて、祓魔師さんが帰っていくのがわかった。 未央も火照った身体を冷ますのに、しばらく寝そべっていたが、やがてごそごそと気だるく起き上がって目隠しをはずす。 「ああ、祓魔師さんにお礼渡すの忘れた……次でまとめてでいいか」 もうパンツがなくても不思議がらない。未央が出したはずの、芋虫のような塊もなくなっていた。悪魔や祓魔師が関係しているのだから、不思議は不思議ではない。 汗ばんだ身体をシャワーで流してしまおうとお風呂場に向かった。 シャワーを浴びるまえに、ふと自分の股間に手をやった。そこにはさっき塗りたくった白い聖水が付着している。そっと指で救い上げて、口に運んだ。 「苦い……」 やっぱり苦くて生臭いけれど、嫌いではなかった。
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第七章「続く霊障」 |
秋人が、未央からもらった二百万で何をしたかといえば、未央のことをさらに徹底的に調べ上げたのだ。 まず気がつかれないように、室内に盗聴と盗撮の機械をしかけてみて、軽い調査では足りないと判断し、さらに家庭事情を洗いざらい興信所に調べさせた。 そこで、分かってきたのは汐崎未央の母親が、未央の生存を定期的に確認しているという事実である。直接会うことはないのだが、その厳格さは安否確認といっていいレベルだった。 それを知って、監視されて盗聴・盗撮がばれるのではないかと秋人は心配したが、それは杞憂であった。 未央の母親は、未央がきちんとそこにいて生きてさえいればよかったのだ。娘が何をしているのかまでは興味がない。考えればすぐ分かることだ、未央の父親から金を引き出すためには娘の未央が生きていることだけで十分なのだろう。 もし娘のことを肉親として気にかけているのなら、この未央の奇妙な引きこもり生活をなんとかするはず。それをしないということはつまりは興味がないということ。父親も、生活費を振り込むだけで冷淡といっていいほどの無関心さであり、未央は端的に言ってしまえば両親に既に捨てられている。 そう考えると秋人は少しだけ未央の境遇が不憫に思えた。 オカルト趣味の未央が何かの拍子に変な宗教にずっぽり嵌って、小金を貢ぐ程度ならまだしも、出家して消えてしまえば困るのは未央を出汁に生活している母親である。だから、未央の携帯の通話記録は母親が雇った探偵にチェックされていることは推察できた。 宗教系の勧誘が追い出されたという話は、未央が人嫌いの引きこもりということもあるが、ちゃんと調べられてしつこければガードが入るようになっているのだろう。 もし公衆電話からの電話でなければ、妖しげな電話の主として調べられてすぐに秋人にも足がつく。結果から言えば秋人の過剰すぎるほどの用心は、そう的外れなものでもなかったといえる。
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このように御影秋人の行動原理は、一貫して相手より情報的に優位に立とうという姿勢が貫かれている。彼の生まれつきの容姿や社会的地位・能力の低さがもたらす酷い劣等感が、執拗にそれをさせるのだ。 そう考えれば、透視(相手にわからないように相手を内側を探る)という能力、そして後に物質転送(相手に気がつかれないように相手に物理的刺激を与える)という能力を彼が持つに至ったのは、理由がないことではない。 つまり、この一連の不可思議な現象の原因――この世界に何か新しい力の場のようなものが現れたと仮定しても、それにこのような能力発現の形を与えたのは、偶然ではなく秋人自身であったのではないか。 後に――秋人の行動を全て観察し終えた『観察者』は、そのように結論付けた。秋人のケースは、極めて特殊な部類に属するもので、根源を探る『観察者』の役に立ったのだが――ここでは、此処までにして話を元に戻そう。
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前の『禁書』による呪いか霊障か分からないが、とにかくおぞましい事件が起こって数日後。また、恐ろしい目に汐崎未央は遭遇していた。 突然の腹痛、それはお腹を突き上げるような自然でない強烈なもので、嫌な予感がしながらトイレに駆け込んだ未央。 お尻に猛烈な違和感を感じる。プルプルと肛門から吐き出していく便が妙に硬い。 出し切ってしまってから、違和感を確かめるために恐る恐る便器の中を見た未央は小さな叫びをあげた。 それは便ではなくて、いくつもの白い卵だったのだ。種を明かしてしまえば、それはプラスチックの小さいボールと、馴染ませて排便させるための油の類だったのだが、それを浣腸液と一緒に、腸内に放り込まれて未央はそれを排泄したのである。 こんな悪戯をする犯人は、御影秋人をおいてほかにはあるまい。 慌てて、未央は「助けて」と自宅の電話から自分の携帯に電話をかけた。 こんなとき未央が縋る相手は、「祓魔師さん」しかいないのだ。 ワンコールで即座に電話に出た秋人は、とにかくすぐ行くので自分を待つ間に、落ち着いて目隠しだけを忘れずにかけるように指示をした。 もうかなりの信頼関係を築けていると思うのだが、それでも目隠しを指示する。臆病な秋人は、醜く肥え太った自分の姿を未央に晒す勇気がなかったのだ。
「卵の……卵のようなものがお尻から……」 「分かっています。バアル・ゼブルの仕業ですね。とにかく、患部を見るためにお風呂場に行きましょう、服を脱いでください」 そういって、慣れた手つきで誘導しながらも、笑いを堪えていた。プラスチックのボールを予想通り卵と誤認してくれたのが嬉しかったのだ。ばれないように、あとで全て回収しておかなければ。 トイレに手を突っ込んでということになるが、未央の身体から出たものは、秋人にとってては汚いものだと思わないようになっていた。
「うむ……卵はもう全部出てしまっているようですね」 お尻にお湯をかけて、肛門をいじって確かめるようにする秋人。もちろん、秋人も服を脱いでいる。その気配を未央は感じているのかもしれないが、もう秋人の処置を受けるのは三度目だ、たいていのことなら何か意味があるのだろうと何も言わなくなっていた。 「それにしても……祓魔師さんは来てくださるのが早かったですね」 「邪悪な気配を感じたので、もう向かっていたんですよ」 未央はそう聞いて「凄いですね」と感嘆するように呻いた。秋人がしかけた悪戯なのだから、準備していて当たり前なのだがと秋人は苦笑せざる得ない。 そうやって会話しながら、秋人は未央の内臓を透視でチェックしているのだ。 大腸に放り込んだ潤滑油とボールは、全て抜けてしまったようだ。 秋人がスカトロに抵抗感が少ないのは、こうやって人の内臓を見慣れているかもしれない。最初はグロいと思っても、秋人にとっては子供のころからのことだから、すっかりなれてしまっているのだ。 ピンク色の内臓も、美しい女のものなら、可愛いとすら思う。その感覚は、いささか倒錯気味といったところか。
「そうだ、四つんばいになってください」 「えっ……こうですか」 そんな要求にも素直に従う未央。風呂の床に四つんばいにさせた未央の後ろに回って、肛門を指で探る秋人。指を突っ込むと、中には排出した潤滑油の滑りが残っている。ここから、あのプラスチックのボールをいくつも吐き出したのだ。それなら……。 秋人の手には、いつの間にか太いペンぐらいの大きさのディルドーが握られている。 「いまから、お尻の穴に性杭を打ち込みます」 「えっ……せいこう? 打ち込むって」 聞きなれない単語に、訝しげに尋ねる未央。実感させるほうが早いと、それほど太くないゴムに覆われたディルドーを肛門に押し当てる。 「せいなるくいと書いて、性抗です。お尻の力を抜けば大丈夫ですから安心して」 「でも……あっ……ちょっとまって」 杭というイメージは、太く大きいものを感じさせる。それだけに、戸惑った未央だが、もう入れてしまえばいいと、ぐいぐいと肛門にディルドーを押し込む。カリがある節くれだったが入れるときは、緩んだ肛門にすんなりと入っていく。 やはり潤滑油の力が大きい。 「入りましたね」 「お尻が……きついです」 さすがに、お尻の穴に入れっぱなしだと強い圧迫を感じるのだろう。強い違和感に、気持ち悪がったり不安がる未央に、だからこそ効くのだと言い含めて安心させる。 別に秋人がすっかりアナルが、好きになってしまったわけではない。いや、ほんの少しはそういう性癖が出てきたのかもしれないが、お尻の穴にディルドーを突っ込んだのはそれなりに理由があった。
挿入に慣れさせること。
秋人の最終目的は、未央を自分の男根で犯すことである。男性経験がなくて、分からないからといって、いきなり処女を貫かれて破瓜の激痛を受けて納得するような女は居ない。ただ単に恥辱や快楽を与えているだけならともかく、そこまでやったら絶対に異常に気がつくに違いない。 だから、先に抵抗の少ないアナルで慣れさせてやろうというのだ。
深々とアナルに差し込んでやって、それが抜けないのを確認してほっと一息ついた。未央は素直なもので、こうまでされてもじっとしている。ふと、尿意を感じたので、未央を苛めたい気持ちになっていた秋人は、テレポートゲートを未央の喉に開けて、中でおしっこをした。 黄色い液体が、未央の喉を焼くようにシュワシュワと叩きつけられていく。突然のことに、ごほごほと咳き込む。食堂から、口に突き上げるような形だから、飲み込むか吐き出すかしか未央にしようがない。 「げほっ……げほあっ……がっ……」 苦しげに喉を押さえて未央はのた打ち回る。 喉の奥から湧き出してくる苦い液体を、未央は半ば吐き出して最後は飲み込んでしまった。口の中に、辛いような苦いような毒々しい味が広がる。 「大丈夫ですか」 倒れた未央を介抱する秋人。自分でやっておいて白々しいものだ。 「何か喉の奥から……苦い液体が出てきて」 「バアル・ゼブルの仕業ですね。お尻を封じられたから、今度は口にあがってきたのでしょう」 そう、秋人の悪戯はみんな悪魔の仕業なのだ。酷いものだ。 「どうしよう……どうしたら」 未央はまた泣きそうになっている。訳のわからない事態が次々と起こる。助けてくれる祓魔師が居なければ、きっと泣いていただろう。 元凶そのものの秋人が、心の支えとは残酷なものだ。 「打つ手はあります。まず口をすすいでください」 そういって、お湯を未央の口に振り掛けてやる。未央は口の中の苦いものを全部吐き出すようにすすいで、喉の奥も綺麗にしたくて少しお湯を飲み込んだ。 「すすぎました」 「それでは、これから貴女の口に私の口を重ねます。舌も入れますから、噛まないでくださいね」 「えっ……」 それは口付けされるということで、未央が思ってもいないことだった。 「私は祓魔師ですから、舌で貴女の口を清めることができます。清めるにはそれしか……喉の奥まで性抗で貫いてもいいのですが、それはきつすぎるでしょう」 未央の心を決めさせるために、あえて選択させる。効果的な方法だった。お尻に突っ込まれているような長い節くれだった棒を入れられることを思えば、まだ口を許すほうがマシかと未央は思ったのかどうなのか。 「わかりました、すいませんけど……お願いします」 そういって、未央は意を決したように口を開けた。秋人にとっても、これは始めてのファーストキスだった。舌を舐めるように、チュッと口をつけていく。厚い唇が、未央の唇に張り付き、やがて未央の口の中に、厚い舌が伸びていく。 初めてで、舌を絡めたディープキスまでしようなどというのは、秋人も不遜なものだった。当然、その舌使いは下手糞なもので、ベロベロと未央の口の中を忙しげに回って嘗め回していくだけ。 最初のキスに、感動したものの、秋人もなんとなく自分がやり方がおかしいのではないかとわかるのだろう。いったん口を外した。 「すいません、舌を清めたいのでからめるように……協力してくれますか」 そういってから、未央の口の中にまた舌を投げ入れて、今度は多少動きをゆったりとなるべく奥のほうに。 未央も言われたので、舌をもちあげて秋人の舌に絡めるようにする。それはこわごわとしたもので、触れた瞬間に身体が揺れた。本当は秋人も内心、衝撃を感じているのだがいまは祓魔師を演じなければならないという思いで、我慢してとにかく無心で舌をからめていく。 不思議なもので、時間をかければ未経験同士でも、うまくディープキスできるようにはなっている。それは官能とは程遠いものではあったが、少なくとも秋人の股間を強烈に勃起させるほどの興奮はもたらせた。 未央の唾液は甘いと、秋人は味わうことに夢中で。舌の根が疲れて痺れてしまうまで、延々と口を貪っていた。 「ぷふぁ……これで口の清めは終わりました」 「……ありがとうございます」 少し未央は嫌悪まではいかないけれど、呆然と意気消沈といった風情だった。 やはり、男性と口付けしたのが未央にとっては嬉しい出来事ではなかったのだろうかと秋人は推察した。 いまは秋人を祓魔師として信頼しきっているけれど、未央がほんとに拒絶して徹底的な手段に出たら、秋人は変質者としてあっという間に逮捕なのだ。未央の動向が気にかかるのは当たり前というもの。
「疲れたでしょう、少しあお向けに寝そべっていただけますか」 「はい……」 言われたままに、未央は仰向けに寝そべった。ユニットバスの床は、溝が深く掘られていて汚れにくいものだ。しかも定期的な清掃サービスつきなので、寝そべってもぜんぜん汚くはない。 ただ、さすがに小柄な未央でも寝転がるには、足を風呂桶のほうに少し浮かせなければならない。 いろいろとあって疲れたのだろう、洗い息を吐いて胸を上下させて、恥ずかしがっている余裕もないほどに未央はぐったりとしている。 「口とお尻は清められましたが、あなたの身体の中にまだ悪魔が残っています」 だから、身体中を清めていかなければならないと手足から順番に揉み始めていく。手の先から腋に至ると、指でさわさわと生えている腋毛を手で確認する。 剃る習慣がないらしい未央の毛は、自然で黒々としていなければ産毛といってもいいぐらい柔らかい感触。鼻を近づけて匂いをかぐと、少し強い未央の体臭がした。汗の匂いだろうか、未央の匂いだと思ってそれだけで興奮してしまい、気がついたら秋人は舌で一心不乱に舐めていた。 「あの……」 「此処に強い邪気を感じます、そういう場所は入念にしないといけないので」 そうやって舐め取ってしまうと、またお腹を触ったり太ももを揉んだり、滑々するお尻を撫でてみたり、そのたびに未央は身体をくねらせて敏感に反応する。 そうして、ようやく胸にいたる。いきなりおっぱいにいかなかったのは、別に秋人が冷静だからではなくて、臆病な性格だからだ。執拗に揉みまくって未央の反応を見る。 身体は敏感に反応する、足の先までピクピクと震えていたが、息を荒くしたぐらいで文句は言ってこない。大丈夫だろうと思っておっぱいを弄る作業に戻る。 両手で、未央のおっぱいをもみあげたり回したりして楽しむ。片方の乳が、片手に少し余るぐらいの巨乳で、秋人には理想のおっぱいに思えた。 もちろん透視能力者の秋人だから、女のおっぱいは腐るほど見てきている。 その中でも、未央は一級品だと判断したのだ。それはもしかすると、こうして自由に自分の手に納まる秋人のためのおっぱいだという贔屓目があったのかもしれないが。 ああ、これが俺のものだと思うと、秋人は震えるような興奮があった。そうして、張りのいいおっぱいを強くも見上げると、乳頭がこんもりと立ち上がってくる。 そのおっぱいに吸い付いた。 「あっ……吸うんですか!」 さすがに未央も、少し非難げな声になってしまう。我慢の限界というものだ。 「こういう場所に、強く現れているんですよ」 そういって興奮の極致に達している秋人は自分も鼻息を荒くして、胸を執拗に攻め続けるのだった。少しの抵抗なら、揉み解してしまえ。 未央は顔を真っ赤にして、頭を振るのだが、それでもかまわずに揉み続ける。 手が疲れて重くなってしまうまで、揉み続けたのだった。
「はぁはぁ……はぁ……」 「ふぅーふぅー」 揉まれているのが胸でよかったというものだ。他の部分をこの勢いで揉まれたら、きっと次の日に揉みかえしが来て大変だった。 「こんなもんですかね」 「ようやく終わりましたか……」 寝そべっているだけとはいえ、もう未央の気力も限界である。これだけ身体を弄くられては、感じないほうが無理だというものだし、それは気持ちがいい部分があったにしても、酷く疲れるのだ。 「最後は、ここです」 そっと股に手を当てる。 「あっ……そこもなんですか!」 未央だって、この前もされているからされるとはわかっていたのだが、いまは。 「おや、濡れてますね」 「やだ……だめです……」 股に差し当てた秋人の指に、にゅちょっとした粘液がつく。いくら処女だろうがなんだろうが、あんだけされたら濡れてきて当たり前というものだ。 未央を濡らせたという実感は、秋人には初めてだったから、感動に近いものを覚えて、指にからませた未央の粘液を指で遊ばせて、それを吸った。 そういう恥ずかしい動作は、未央からは見えていないにしても、股に視線が刺さっている感覚はわかるもので、手で股を被ってしまう。恥ずかしすぎて耐え難い。 「濡れていたっていいんですよ、当然の生理的反応ですから」 「駄目ですよ! だって……ううっ……」 股を閉じて、手で隠して拒否された。恥ずかしさが耐え難い。ただ見せるのと、自分が感じているとわかってしまったことが未央にはどうしても耐え難い。 「隠してはいけません、そこも清めないと終わりません」 「だって、こんなところまで……」 「そんなところだからこそ、悪魔は狙ってくるんですよ」 「でも……」
コツンとテレポートゲートを子宮にあけて、こついてやる。 「あっ!」 「早く清めなくては、お尻の穴のようにそこに卵を産み付けられるかもしれません」 さっき自分が肛門から吐き出した小さい卵のイメージ。 それが、未央に迷いを許さない。 「分かりました……お願いします」 未央は諦めたように、手を離して股を開いた。身体からぐったりと力を抜く。ただでさえ、心身共に疲れきっているのだ。身を任せてしまえば、こうなってしまう。 「終わるまで動かないでくださいね」 秋人の厚い舌が、いきなり陰唇の間を深々とえぐった。 「あああっ……だめ!」 手を舐めている秋人の頭について、それで躊躇したのか戻したのだが手の置き場に困って、自分のお腹に手をやってもそれでも秋人が舐めるのを止めないので、額を手で押さえて身体を震わせて耐えているうちに、身体に電気が走った。 キュッと、秋人がまだ皮に包まれたクリトリスを吸う。 ひっと息を吸って、身体をくねらせる。ビクビクと身体を痙攣させた。 (ふふん……もしかすると、イッたってことなのか) 未央の絶頂を目の前にして、逆に秋人はわりと冷静に様子を見ている。透視できても、未央の内心まで見通せるわけではないし、未央がクリトリスの刺激に弱いなどと意識してやった行為でもなかったのだ。 たまたま、秋人の本能がクリティカルヒットしただけのこと。 「ああああっ……」 とりあえずの波をのりこえて、未央がそう呻いて口から涎れを一筋垂らした。 こんなものかという判断。さっきから、ビクビクと自分の股間も射精したくてたまらないわけで。
「これから、性杭を女性器にこすり付けて、精水を出しますから」 「……えっ」 未央がいいとも言わずに、勃起したものをこすり付けてしまう。床に手をついて、未央に体重を預けるわけにもいかず、けっこう疲れる体勢だがそれでも、未央の足を浮かせるようにしてこすり付ける。 亀頭がぴたりと、外陰唇の唇に当たった。 「ちょっとやりにくいな、前みたいにオマンコを開いてもらえますか」 「はい……これでいいんですよね」 未央が自ら開いてくれたので、カウパーを垂れ流している亀頭が未央の膣口にキスをした。ああ、このまま体重を乗せて押したらズブズブと挿入できてしまうなという欲望に襲われる。 「出ますから、手でいっぱいに開いてください」 「はいっ」 分かっているのか分かっていないのか、今日は顔を真っ赤に染めて、未央が秋人を受け入れる。 ドクドクと、自分の精液がこぼれて落ちていくのを感じる。膣口になすくって全て射精し終えてしまうと。 「それでは、いつものように満遍なく精水を馴染ませてください」 「わかりました」 また未央に自分の精液を、生殖器に擦り付けさせるのだ。 こんなことをして、本当に妊娠してしまうかもしれない。処女膜といっても、膣口が完全に閉じているわけではなく、二十歳ぐらいの女性になれば指一本分ぐらいの隙間は空いているものだ。 そこから、精液が流れ込めばどうなることだろう。 その危険な遺伝子を、未央は自らの指で生殖器に為すくり、奥へ奥へと導いていく。まるで、未央が秋人の子供を欲しがっているという風に。その錯覚が、秋人を興奮させるのだ。
最後に、また口にも精水を飲ませてやって今日の悪魔祓いは終了した。 「おつかれさまでした」 秋人がお尻から、ディルドー。いや、性杭を引き抜くと、未央は息も絶え絶えに力を抜いた。秋人だって疲れているのだが、身体は強い充実感を感じていて、なんでもできそうだった。 力なく倒れている未央の身体を満遍なくシャワーで洗ってやり、タオルで頭と身体を拭いてやった。防水性とはいえ、目隠しだけは取れないのだが、そこは自分でやってもらわなければならない。未央が秋人を見たら、悪魔に取り憑かれると言い含めてあるのだから、少し気持ち悪くても秋人の前では取らないだろう。
最後に、またお礼をといわれたので秋人が戸棚を開けると。 やはりそこには、札束が二つ置かれていた。 「あの……毎回こんな大金をいただいて大丈夫なんですか」 秋人だって心配になるというものだ。 「いいんですよ……お金なんて。毎月、父親が生活費を入れてくるんですが、余ってしまってどんどん溜まっているんです。だから、これぐらいのはどうってことないんです」 手探りで、床に脱いだ服を着ながら、未央はつまらなそうにいった。 そういわれたら、そうですかと返すしかない。
秋人が帰ったあとで、未央は目隠しを外して、顔をもう一度綺麗に洗った。目隠しはおいておけば乾きそうだった。 妙にスカートの中がスースーする。 ああ、お気に入りのグレイのインナーがなくなっている。 それに気がついても、未央は信頼する祓魔師さんの仕業ではなくて、悪魔の仕業だと思うだけなのだった。 秋人が、祓魔師と悪魔を一人二役でやっているとも知らずに。
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