短篇「マジシャンズヒプノシス」 |
暇を持て余している主婦、和泉亜抄子(いずみ あさこ)は、ふらりと街の公民館に立ち寄った。家にいるのも退屈なので、ボランティアでもやってみようかと思い立ったのだ。まだ子供に恵まれない亜抄子は出来れば、子供と接せるようなモノがあるといい。テレビでやっていたような図書館で子供たちを相手に絵本の読み聞かせボランティアなんかあれば最高なんだけれど。 「うーん、思っていたようなのが無いわね」 そんなに都合よく募集があるわけもない。当たり前かと亜沙子は苦笑した。町の公民館の入り口には、各種ボランティアの募集の他に公民館で開催されている定期講座などが貼り出されている。 「あら、こんなのもあるのね」 マジック講座初級編というのがある。 (手品かあ、懐かしいなあ) 学生時代にちょっと練習したことがある。掲示板を隅々まで見たのだけれど、マジック講座に初級編とあるのに、中級編とか上級編とかの募集は見当たらない。こんな市民公民館で、難しいマジックを覚えようという人がいないのかもしれない。もし受けられるなら、高度なマジックが学んでみたかったのだけど。 公民館の受付でマジック講座を受けてみたいのですがと尋ねると、受付の人が小さく苦笑いした。 「ああ、あれね。講師の人が、どうしても貼り出して欲しいって言うから出したんだけど、まさか本当に問い合わせがあるとは思ってなかったですよ」 「そうなんですか」 確かにいまどきマジックなんて流行らないのかもしれないけど、まさか問い合わせをしたのが亜沙子一人とは思わなかった。暇を持て余しているとは言え、すごく物好きなのかもしれない。 「お嬢さんの他に、受けようって人はいないんですけど……。どうされます?」 (まあ、お嬢さんなんて……) 既婚には見えないのだろうか。亜沙子は二十五歳でお嬢さんと呼ばれるには微妙な年齢だ、相手がオジサンならそう呼ばれるのも分かるけど、若い職員さんなのに。 (でもでもお世辞でもないんだから、謙遜するのもおかしいかも……) 「あのぉ……迷っていらっしゃるんでしたら考えてからでも」 亜沙子が思案しているのを見て、講座受けようか迷っていると思われたらしい。 「あっ、スイマセン。試しに受けてみようかなと思うんですけど」 「受けられるんですね。講師の方に連絡しておきますから、日曜日の午後二時に来てください。とりあえず一回だけと言うことにしておきますから」 一人でも、参加者が来れば講座は開設されるのだという。もし、講座を受けるのが亜抄子だけなら自分だけのために来てもらうのは申し訳ない気持ちになったけど、なんだかとても受けてみたい気持ちだった。 (どうしてなのかしらね) 受付のところにある『マジック講座初級編』って書いてある文字が、他とは一風変わった書体だったからかもしれない。なんとなく、亜沙子の興味を引くのだ。やっぱり自分は、物好きなのかもしれない。 今度の日曜日ってことを忘れないようにしなきゃと思いながら家路に付く頃には、最初に子供向けのボランティアをやりたいなんて考えていたことは、すっかり忘れている気まぐれな亜抄子だった。
日曜日の午後二時、時間通りに公民館の談話室までやってきた。入り口の黒板には、チョークで『マジック講座初級編』と書かれている。あの一風変わった独特な書体だ。どうやら、講師の手書きだったらしい。 講座の部屋に入ると、座ってくつろいでいたらしい、ずんぐりむっくりとしたオジサンが席を立った。手には、なにやらカードやハンカチを持っている。 ようこそと仰々しく手を広げるオジサン。確かに服装こそタキシードだが……イメージはマジシャンとはかけ離れている。親戚の結婚式の帰りのくたびれた中年オヤジと言ったところか。 マジシャンの講師というからにはさっそうとした紳士をイメージしていた亜抄子の想像は、甘かったようだ。亜抄子の浮かべている愛想笑いが乾いた。少し念入りに化粧してオシャレなんて無駄だったなあ。 この冴えないオジサンと一時間だかそこいら一緒にマジックをやらなければならないかと思うと、亜沙子はもうこのままユーターンして帰りたくなる。 「あのー、マジック講座と聞いてきたんですが」 もしかしたら勘違いだったらイイなと思いつつ、確認を取る亜抄子。 「和泉亜抄子さんですね、ようこそいらっしゃいました。講師の荻原 天(おぎわら たかし)と申します」 悠然と頷くオジサン、やっぱりこの人が講師だったか。ポーズだけは一人前なんだけどたるんだお腹が見苦しい。 「あの……。他の受講の方はいらっしゃるんですか?」 「いえ、亜抄子さん一人ですね」 あーやっぱりそうか。たとえ冴えないオジサンだったとしても、自分一人のために来てくださったのだから我慢しなければ。講義だって、せめて一回ぐらい受けて続けるか決めないと申し訳ない。 どうして、受講しようなんて思ってしまったのか。暇つぶしにしても、もっとマシな潰し方があるだろうに……。せいぜい一時間の我慢だと、亜抄子は我慢することにした。 「どうぞ、お楽になさってください」 お楽になさってくださいと言われても、談話室にはテーブルが一つと椅子が二つ並んでいるだけだ。 「えっと、貴方はマジシャンさんなんですよね?」 「ええ、私は確かにプロのマジシャンです」 自信有りそうに頷くオジサン。ふうん、そんなに言うなら見せてもらおうかな。相手は亜沙子をズブの素人だと思っているはずだ。この自信ありげなオジサンの鼻をあかしてやろうと、亜沙子はちょっと意地悪な笑みを浮かべた。
「では、まずコインを使ったマジックから見せますね」 オジサンは、太い指で机の上の五百円玉を掴んで亜抄子に掲げてみせた。 左手にコインがあることを示して見せてから、左手をギュッと握りしめる。 「魔法をかけると、このコインが右手に移ります」 左手をさっと開いて、コインがないことを示す。次に開いた左手を、ふって同じように握りしめた右手に魔法をかけるそぶりを見せる。 パッと、右手を開くと右手に五百円玉が移っている。 「どうです、なかなかのものでしょう」 オジサンは自慢気に笑う。私も、クスクスと笑う。 「それって、フィンガーパームってヤツですよね」 亜抄子がそう指摘すると、オジサンは笑みを強ばらせて顔色を変えた。まさか、初見で技の名前まで見抜かれるとは思っていなかったのだろう。 亜抄子は、学生時代簡単なマジックをかじったことがあるのだ。学芸会程度の知識に過ぎないが、コインマジックのトリックならあらかた覚えている。パームとは隠すという意味で、フィンガーパームとは中指の第二関節を曲げたあたりにコインを隠すことを言う。 確かにオジサンの手つきはなかなかのモノで、コインを持っていることを亜抄子に悟らせない技巧を持っていたが『魔法をかける』はいただけなかった。オジサンが魔法をかける動作で、左手に隠し持ったコインをズボンのポケットにさりげなく隠したのがよくわかったのだ。 もちろん、右手には握りしめたときに別の五百円玉を入れておくのである。何のことはない、コインが移動したわけではなくて最初から二つのコインがあっただけなのだ。 「まさか、初見で見抜かれてしまうとは……。フィンガーパームをご存知とは、お詳しいんですね」 「いえいえ、昔ちょこっと齧っただけでほとんど素人ですから」 オジサンは恥ずかしそうに頭をかいて恐縮した。簡単なトリックとはいえプロのマジシャンを出し抜いたのは、悪い気持ちではない。亜抄子はしてやった気分になってニンマリと笑った。 初級編だから、プロのマジシャンというオジサンも油断したのだろう。 「じゃあ、亜沙子さんはお詳しいみたいだから、今度はもっと別のやり方でコイン移動のマジックをお見せしましょう」 オジサンは、同じように左手でコインを掴んだ。
亜抄子はしっかりと見据える。確かに掴んだ、いまコインはオジサンの左手にちゃんとある。あとは、そのコインをどこかに隠されなければ見抜くことができる。 左手にコインを握りしめたまま、ゆっくりと左右に振った。亜抄子の眼も、一緒のように左右に触れる。 オジサンは、パッと手を開く。まだ左手にコインはある。 何を思ったのか、握りしめるのをやめてコインをつまみ上げると、また亜抄子の前でコインをゆっくりと左右に振った。 おそらく、オジサンはリテンションパニッシュをやるつもりだと亜抄子は警戒した。眼の残像現象を利用して、コインを消失させたように見せる技法である。マジックは魔法ではない、コインが消えるわけがないのだ。コインから眼を離さなければ、絶対に消えることはない。 二十五、いや三十往復しただろうか。ずっと眼で追っている亜抄子に「眼が疲れませんか?」と聞いてきた。その手に乗るものか「いえ、ぜんぜん疲れません」と答える。本当は、少しフラフラとしてきた。頭を振らないようになるべく眼球だけで追うことにするか。少し楽になったので、左右に振られるコインを追う動作を続ける。 「疲れたでしょう、少し休憩しましょうか」 ピタっと、空中につまみ上げられたコインが止まる。亜抄子は休憩と言われても休まない。油断をするまいと、コインをジッと見つめて集中する。 「亜抄子さんは、なかなか集中力が高いですね」 また、オジサンはゆっくりとコインを左右に振り始めた。 「油断させて、コインを隠そうとしても、そうはいかないですからね」 コインの残像が、まるで一本の線のように見える。まだ大丈夫、まだ追える。 オジサンは三十往復ほどすると、またピタリとコインの動きを止めた。 「少し休憩」 亜抄子は、休憩せずにコインを見つめている。またコインが左右に振られる、亜抄子は次第にどうして自分がコインをムキになって追っているのか分からなくなった。ただ、コインを視線で追うという動作に執着し続ける――
――やがて、左右に振られるコインは一本の棒のように見えた。ピタリとコインの動きを止めても、亜抄子の眼はゆっくりと左右に動き続ける。さて、なんで眼球を左右に振っていたのか、それすらも亜抄子は分からない。眼球運動を続けながら、亜抄子の中で完全に行動の意味が崩壊していった――
「亜抄子さん、亜抄子さん?」 オジサンに肩を揺すられる。 「あっ、私……」 「大丈夫ですか? 急に倒れるからどうしたのかと思いましたよ」 「えっ、ええ……。えっと、なんでしたっけ」 どうしてここにいるのか、そもそも自分は誰なのか。亜抄子は、物凄く長く深い夢から覚めた後みたいに、呆然としてしまう。なんだか少し、物悲しい気持ちだ。 「本当に大丈夫ですか、私は誰か分かりますか?」 「えっと、マジックの先生」 「そうです。大丈夫みたいですね。じゃあ、マジックの続きをやりますよ」 マジックの先生は、ニコリと笑う。そうだった、マジック講座初級編の途中だった。先生は、左手にコインを握りしめると。パッと手のひらを開いた。 「あっ、消えた」 「ふふっ、不思議でしょう」 亜抄子にはコインがどう消えたのかまったく分からない。でも、動作は見えなくても察しはついた。 「先生、きっと上着の袖の隠しポケットに入れたんでしょう?」 「ほほう、さすが亜抄子さんは鋭いですね。では、これでどうです」 先生はタキシードの上着を脱いで中のシャツも脱ぎ捨てて、上半身裸になった。 (先生、胸毛がすごい。それにすごい太鼓腹……) 亜抄子がそんなことを考えている間に、また五百円玉を握りしめて消失させる先生。 「うーん、分からなかったけどズボンのポケットに入れたとか」 「じゃあ、みんな脱いでしまいますね」 先生は、ズボンも脱いでパンツも脱ぎ捨てて裸になった。 (たるんだ身体だけど、あそこは大きいのね……) 旦那のモノしか見たことがない亜抄子はちょっとドキドキしてしまう。亜抄子より二十歳近くも年上の旦那より、先生のものは元気で大きかった。 「先生、裸になって恥ずかしくないんですか」 「トリックがないことを示すのに、裸になるのは基本ですよ」 そう述べて先生は爽やかに笑う。なるほど、確かにこれでもう隠しようがない。
「さあ、どうです」 先生がコインを握りしめて、左手を離すとやっぱりコインは消えた。 「すごい……」 ハッと息を飲む亜抄子。先生が、握りしめていた右手を開くと、さっき消えた三枚の五百円玉がジャラリと音を立ててテーブルに転がり落ちた。 亜抄子は、感嘆の叫びをあげて思わず手をパチパチと拍手していた。 「ハハッ、亜抄子さん大げさですよ」 「どうやったんですか。ねえっ、先生どうやったんです?」 すっかり興奮している亜抄子を手で押しとどめて、次は透視をやりますよと笑う。 「透視ですか」 「ふふっ、奥さんの下着はピンクですね。ブラもパンティーも、ピンク色で花の模様がレースであしらってある上品なものだ」 亜抄子は思わず胸を手で押さえる。スカートの中はちらりと見えたのかもしれないけど、ブラジャーまで一緒の柄だと当てるなんて。 「どっ、どうしてわかったんですか」 今日は上着を二枚重ね着して、その上にカーディガンまで羽織っているのだ。 「ふふっ、どうしてでしょうねえ」 「早くトリックを教えてください」 不思議な現象の連続で、亜抄子は種明かしをねだるように媚びた。 「種を明かせば簡単なんですよ、だって見たままですから」 先生は、亜抄子のピンク色のブラジャーをパンティーをさっとテーブルの下から取り出した。 「あっ、いつのまに……」 なるほど、下着を直接見たなら色を当てるなんて当たり前のこと。マジックは種が分かれば拍子抜けするぐらい単純なことだ。 さっきからスカートの中がスースーするとは思っていたのだけど、なんでパンティーを脱がされたことに気がつかなかったのだろう。上着の裾から手をたくし入れて調べると、ブラジャーもちゃんと無くなっている。 すり替えではない。服を着せたままで、肩紐までちゃんと通っていたブラジャーを抜き取る。ほとんど、不可能に思えた。
「これはテレポーテーションってことになるんですかね」 先生は分厚い唇を歪めて、自慢気な笑みを浮かべた。さっきは気持ち悪い顔だと思えたが、こうして奇跡を目の当たりにするとニヒルな笑みに見えてくるから不思議だ。亜抄子の心境の変化すら、マジックの一部なのだろうか。 「先生、テレポーテーションの種も教えてくださいよ」 「基本的には、コインの移動と変りないんですが、では今度は液体のテレポーテーションをやってみましょう」 先生はテーブルをどけると、自分の勃起したイチモツを示した。 「亜抄子さん、いまからこれを擦って射精させてみてください」 「先生のそれをですか……」 恐る恐る手を伸ばす。 「ただのマジックですから、汚くないですよ。普段の旦那さんのものをシゴイてるみたいにおもいっきりやってみましょう」 旦那様のものをシゴくなんて、そんなに機会なかったんだけどと思いつつ、その太い肉棒を手でシコシコと擦る亜抄子。 (太いわねえ……、先生のピクピクしてたくましい) 旦那様のそれとは、生命力と温かさが違うように思えた。まるで、動物の心臓に直接触れているような熱と脈動。 (そう言えば、もう半月もしてないなあ) 旦那様と結婚してからもう三年になる。夫婦生活は、半月か一月に一回程度だった。夫婦仲が冷めているわけではないのだけど、跡取りを作るためだけのセックス。しかも、その子どもが中々出来ないとなると盛り上がりに欠けてしまう。 「どうしました、手が止まってますよ」 「あっ、すいません先生。ちょっと考え事をしていたもので」 マジックの途中に夫婦生活のことを考えるなんて、亜抄子はハシタナイ自分が恥ずかしくて頬を染めた。
「そうだ、亜抄子さんちょっと胸をはだけてくれませんか」 「えっ、こうでしょうか」 カーディガンを脱いで上着をたくし上げてオッパイを出す亜抄子。 「うん、いいですね。亜抄子さんの手だけではちょっと刺激が足りなくて射精に至らないもので……」 「すいません、私の手が下手くそなんですよね」 セックスは結婚した時から旦那様任せで、自分から積極的に手でシゴくなんて、亜抄子は経験したことがないのだ。 「いえいえ、不慣れなのはそれはそれで、初々しくて良いものですよ」 亜抄子にしごかせたまま、胸を揉みしだく先生。 (変な気持ちになっちゃダメ、これはただマジックをするために……) 見慣れない男性器を見せられて、胸を揉まれては、亜抄子も次第に椅子から腰が浮くような変な気分になっていた。ただでさえ若く、セックスの機会に恵まれない若奥様なのだ。貞淑を気取っていても、我慢しきれるものではない。 ぷっくりと勃起した乳首を、つまみ上げて引っ張る先生。 「先生、乳首は弄っちゃダメですっ!」 「気持いいんでしょう。良いんですよ、亜抄子さんも気持よくなっても」 「そんな、ただのマジックで気持よくなるなんていけませんわ」 チンチンをしごきながら、そんな白々しいことを言って見せるのだから大したものだった。亜抄子は呼吸も荒くなり、明らかに興奮しているのは傍目に居る先生にもよく分かっているというのに。 乳首の根元を摘まんで、ギュウウッと引っ張り上げられるのを、亜抄子は奥歯を噛み締めて目を瞑って耐えた。 「亜抄子さん、そろそろ射精しますから眼を開けて見ていないといけませんよ」 「えっ、はい」 亜抄子は、眼を開けてジッと自分がこすり続けている肉棒の先っぽを見つめた。 あの鈴口から、精液が飛び出てくる。それが男の射精だ。 「亜抄子さん。このまま射精したら、どうなると思います?」 「私のオッパイに飛び出ちゃいますね」 「なるほど、じゃあそうなるかやってみましょう。出ます!」 亜抄子がギュッと股間を握りしめると、生き物のようにビクビクと痙攣した。肉棒がブクっと膨れ上がると、射精の瞬間を向かえる。
ドピューッ! どぴゅ! どぴゅ!
「あっ、くる……。あれっ?」 ドクドクと肉棒は痙攣しているにも関わらず、いっこうに鈴口から精液は飛び出してこない。 「出てきませんね……?」 思わず亀頭の先の鈴口を覗き込んだが、パクパクと口を開くだけで白い精液は飛び出してこなかった。それどころか、射精を終えたように満足気に手の中で収縮していく。 「射精しないでちっちゃくなっちゃったのかな……」 小さくなった手のひらで遊ばせるように、小首を傾げる亜抄子。 「さあ、どうでしょう」 突然、亜抄子が叫び声をあげて腰を浮かせた。 「ああっ!」
ドピューッ! どぴゅ! どぴゅ!
「はあんっ! なに、どうしたのぉ?」 熱い飛沫を身体に感じる。どこかで、射精している。自分の身体の目の見えないところで……。お腹が凄く熱くじわりと濡れるのを感じた。 「まさか……」 オッパイをむき出しにしたまま、お腹をさする亜抄子。確かにここだ。正確には、膣奥に生中出しの熱い飛沫を感じた。でも、先生のオチンコは目の前にあるから、膣の中に出されたわけもない。 スカートを捲ってみると、なぜか自分の割れ目は濡れていてぱっくりと口を開けていた。まるで、さっきまでそこにチンチンが挿し込まれていたとでも言うかのように。 そうして、ドロリッと白いものが自分の膣口から零れ落ちてくる。 「あああっ……すごい」 膣口から零れ落ちてきた白い粘液を手ですくいとって、臭いを嗅ぐ亜抄子。栗の花の香りだった。精液の匂いだ。 「空中に出したはずの精液が、テレポーテーションして膣内に移動するというマジックでした。いかがでしたか」 「素晴らしいです先生、こんな不思議なマジック見たことがありません」 今でも信じられないというように、亜抄子はドンドン自分の膣口から零れてくる精液を手ですくいとって確かめている。 「あの、でも先生ちょっと質問してもいいですか?」 気になったのか、精液がついたままの手をハーイとあげる亜抄子。どこか子供っぽい仕草を見せるときもある。 「なんでしょう、亜抄子さん」 「あの、精液が膣内に入っちゃってるんですけど。マジックと言っても、これは大丈夫なんですか?」 妊娠の危険はないのかと聞いているのだ。いまさらそんなことに気がつくとは、もっと最初に慌てるべきだろうと先生は苦笑する。 「大丈夫ですよ。マジックなんですから、種はちゃんとあります」 先生は安心してくださいと笑う。ほっとしたのか、誘われるように亜紗子も強張った頬の緊張を緩めて微笑を見せた。 「そうなんですか、先生のマジックを信用してないわけじゃないんですが、私ちょっとだけ心配しちゃいました」 先生の言う種があるとは、子種があるという意味なのだが、それを安全と誤解したのは亜紗子のミスであった。
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