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E小説(中出し・孕ませ・時間停止・催眠・環境変化など)
エロ小説のサイトですので18歳未満の方はお帰りください。傾向はマニア向け、作品中のほぼ100%中だし妊娠描写、付属性として時間停止・催眠・環境変化などです。
終章「終始憎愛」
 季節は冬の装い。
 サオリの黒いセーターを持ち上げている乳房のふくらみはその大きさを増している。
 そうして、それ以上に膨れ上がってしまった腹をかかえて。
 妊娠二十二週間、妊娠五ヶ月を越えると死産はあっても、流産はありえない。

「ああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
 たまに、サオリは悲惨な現実に耐え切れずに泣いているようだった。いや、もう激情を吐き出しきった叫びは、涙を通り越しての感極まったサオリの狂った戦慄きは、恍惚とした笑い顔にすら見えた。
 あるいは、それは鳴いているといったほうが適切かもしれない。一則は闇夜に彼女が啼いているのを見る。
 自分の家の庭で、冬の冷たい雨に打たれながら、両手両足を地面に投げ出して、泥水に塗れて、絶叫。絶叫。響き渡る絶叫。絶叫、絶叫絶叫絶叫。
 お腹を庇うなんてことは一切しない、それがサオリの絶望なのだから。
 サオリは、絶望を孕んでいる。
 そうして、絶望を生む。
 どうしようもない。彼女の絶望。

 そして、それが一則の希望だった。一則の望みは叶ったのだ。

 性格改善コンサルタント事務所に一則はまた訪れていた。紙袋の中に、成功報酬の百万を持参して。
「……というわけです。ありがとうございました」
 そういって、一則は深々と頭を下げる。
「たしかに……百万円いただきました。あなたの報告もなかなか面白いものでした。いい仕事でした」
 成功報酬の督促もまったくされなかったし、一則が失敗したと嘘をつけばこの金は払わなくてもよかったのかもしれない。
 もちろん一則は所長に心から感謝しているから報酬を誤魔化すことなんて絶対にしないけれど。
 所長は金にまったく執着していないというスタンスを見せているのに、きちんと札が百枚あるかどうかは、銀行員のような手つき丁寧に数えていた。
 この所長は、本当によく分からない人だ。性格が簡単に掴めるようでは、性格改善のコンサルタントなんてできないのかもしれないが。
「あの……これで終わりですか」
「そうですね。当事務所とは、もうこれ以上は係わらないほうがいい。それがあなたのためです」
「そうですね……そのほうがいいんでしょう」
 一則は立ち上がって、事務所を出ようとする。その一則の背中に所長は声をかけた。あるいは、それはただの独り言だったのかもしれない。
「誰かの願望は、誰かの絶望と常に等価ですからね」
「えっ?」
「いえ……なんでもありません」
 所長は、もらった百万を無造作に机の引き出しに投げ入れると、自分の仕事に戻ったようだった。

 会社では、お決まりの出来ちゃった婚の扱いを受けた。最近ではおめでた婚というらしい。
 お腹が大きくなっていくサオリの妊娠をいつまでも隠しておけるわけもない。
 人気があった新入女子社員の早崎サオリと、万年駄目中年社員の桑林一則の結婚。普通に考えたらありえないことだから、一則はもっと、大騒ぎになるかと思った。
 もしかすると会社を辞めなければいけないのではないかと思うほどに、その発覚は一則にとっては恐怖だったのだが。
 会社ではそれほど衝撃的には受け止められなかったようだ。むしろ、あっけないほどにすんなりと受けいれられた。
「男の趣味が悪いね」
 そうサオリは言われただろう。
「どうやって口説いたんだよ」
 そう一則は揶揄されもした。
 だが、一則の考えていたより現実はずっと強固なシステムだったようだ。現実に起こってしまったことなら、どんな奇異なことでも「世の中、そういうこともあるだろう」という受け取り方で流される。
 自分にかかわりのない他人の僥倖、悲惨、労苦、渇望、絶望。それがなんだというのか。そんなものはみんな受け流してしまう。それが人々の日常。会社という社会。無関心という愛情の欠如。そこに催眠など必要ないのだ。

 産休、出産、会社への復帰。

 サオリは、女児を抱いていた。
 まだ寒さの残る季節、陽だまりの縁側で、自分の子供を抱いていた。
 いつかの、自分の母親のように。
 幼いころの記憶はぼやけているけれど、ずっとこの家に住んでいたのだから。
 きっと、こんなこともあったのだろう。
 絶望も、悲惨も、もうどうでもよくなってしまってサオリの感情は磨耗していた。
 あれほど厳しく当たったのに、子供は安産で元気に生まれ来た。
 ちっちゃい手足にクリックリの大きな眼。
 生まれてきた子供は、恐ろしいことにとても可愛かったのだ。
 もうそうなってしまっては、殺せない。サオリは二重の辛さに呻いた。
 出産も辛かった、お乳が張るのも辛い。そうして家にあの豚男がずっといるのも嫌で嫌でしかたがないのだけど。
 だけど、諦めるしかないのだろう。だから諦めた。
 子供に情が移ってしまったあとは、どうでもよくなった。

 一則は、庭に新しい木の新芽を植えていた。
 ちょうど、サオリの糞尿で枯れてしまった庭木があったところに。
 この木と一緒に、自分の子供が育っていく。
 そういう記念のつもりで。
 最近、運動をしているので身体の調子はずいぶんといい。
 こういう庭仕事も苦もなく出来る男になった。
 ちょっとまえまで、汚らしいアパートで一人寝るだけの生活。
 それがいまでは、落ち着いた家で家族と暮らしている。
 愛する妻がいて子供が居て、庭仕事できる庭があって、そういう暖かいもの。
 暖かい家族というものに恵まれなかった一則のとって、これ以上の幸せはない。

 これで終わればハッピーエンドなのだろうが。

 季節は巡り、桜が舞い散る春がくる。
 また今年も一則の会社に新しい女子社員が入ってきた。その瞬間に、一則はまた新しい恋をした。しばらく迷って、いけないと思って。
 それでも押さえきれずに、性格改善コンサルタント事務所の門を叩いてしまう一則。
 話を聞いて、所長は憮然とした顔を隠さずに一則を諭した。
「こういっては失礼なのかもしれませんが、もう桑林さんには愛する妻がおられるわけでしょう。二人目というのは、ちょっと贅沢すぎるご依頼かと思います。ヘタをすると、今の生活も壊してしまいかねないんですよ」
「……変なことをいって、すいませんでした」
 やはり図々しすぎる申し出だったか。自分よりふた周り以上も若いであろう所長の大人の対応に、ぐうの音もでない。頭を下げてトボトボと帰ろうとする一則を、所長は思いついたように声をかけて呼び止めた。
 そうして、また挑むような鋭い眼でこう告げた。
「そうですねぇ、今度は前金で二百万、成功報酬二百万……用意できますか?」
 思わず笑いを誘われるような微笑を浮かべる。
 一則にとっては格別な、悪魔のささやきだった。
第四章「加速階段」
 最近、早崎サオリの顔が暗い。もちろん、理由はすでに一則には知られていた。なんで、この男は自分の生理周期まで知ってるのか。本当に口惜しい。
「生理来てないんでしょ、今日で予定日から二週間も遅れてるよね」
 あの危険日中出しから、何度も何度も似たような手口で中だしされている。
 あれだけ毎日中だしされては、妊娠してしまうのも無理はない。
 そう頭では理解しても、感情では拒絶する。
 妊娠検査キットを差し出して、一則はニヤニヤと笑う顔が悪魔に見える。

 気にはなっていた。それでも、少し遅れてるだけ。今日来るかも、明日来るかも、そう思って予定日から二週間。たった二週間だ。遅れることだってあるじゃない。それなのに。

 結果『陽性』

 二つセットで入っていたので、いまのは間違い……と思ってもう一度、おしっこを検査キットにひっかける。

 結果『陽性』

「どうだった?」
 一則がワクワクした子供みたいな、それでいて油で額をギラギラさせたウザイおっさん顔で聞いてきた。憎らしかった。あんたのせいなのに。関係なんてしたくないけど、あんたが間違ったのが悪いのに。
「…………陽性……だった」
「やった!! 一発で出来るなんて、ぼくらすごい相性がいいんだね!」
「…………!」

 とりあえずサオリは、一則の薄い頭をスリッパで一発叩いてから、居間で正座させて会議に入った。

「えーーー、堕ろすって、堕児するってこと!?」
「そうよ……私だって嫌だけど、怖いけど、そうするしかないじゃない!」
「どうして……」
 一則は唖然として、呆然とした顔。こっちのほうがどうしてって言いたいわ。
「だって、偶然……間違いで、できちゃった子なんて、産めるわけないじゃない。育てられるわけないじゃない、常識で考えてよ!」
「ぼく責任取るって言ってるのにぃ……」
 だから嫌なんだよ、お前みたいな大嫌いな男に、というか男としても見れない豚に責任なんかとって欲しくないんだよ。そうサオリは思ったが、言っても手遅れ……これはしかたがないことだった。
 もうこうなったら、傷が浅いうちに処理してしまうことだ。一則の意見なんか聞いてもしかたがない。この自分のお腹のなかに、一則の子供という異物がくっついて育っていると思っただけでも気持ち悪くて吐き気がするのだ。
 身体の内側から、この男の子種に栄養を吸われている。そんな悲惨。

「そんなの、ぼくが絶対に許さないよ」
 一則は、珍しくキッとした真面目な顔で宣言した。みたこともないような決意にあふれる、それでいてひどく醜悪な顔面だった。
「そんなのあなたが決めることじゃないでしょ!」
「違うね、この国の法律では堕児は相手の男の同意が居るってことになってるの、知らないの?」
「えっ……そうなの」
 そうだったのだろうか。そういえば、そういうことを聞いたことがあるような気がサオリはした。そうなのか……そういわれたら、サオリにはそう思える。それにはだから、納得するけれども。
「だいたい、君一人の子供みたいに言ってるけど、ぼくも父親として権利があるんだから、勝手に人の子供を殺さないでくれるかな」
「なっ……なによ! 私の気も知らないで!! 私は嫌なのよ! あなたの子なんて、愛していない人の子供なんて絶対産みたくないの!! お願い堕ろさせてよ。堕ろしていいっていってよ!」
 サオリは一則の腰にすがりついて、さげたくない頭をさげてまでお願いした。必死だった。
 それなのに、普段押しに弱いはずのこの中年男が、なんといっても聞いてくれない。自分には父親としての権利があるの一点張りだ。
 悪い男が、女に子供を堕ろせと迫ってというという話しは、よくTVドラマでみる。だが、逆は見たことがない。こんな酷いケースがありうるなんて、サオリは思いもしなかった。産みたくもない子供を無理やり産まされるなんて!
 こんな想像もしなかったような、残酷な運命があるだろうか。ありえないと、力いっぱい叫びたい。
 この憎たらしい男は、これ以上どうサオリを酷い目にあわせようというのだろうか。もう不幸でお腹が一杯だった。
 サオリは、もう酷く欝になって、何もやる気がなくなった。一則の馬鹿に文句をいう気力もない。またあのときの暗闇。目の前が暗くなる。何も考えられなくなる。
 こうなってしまうと、サオリは弱い。会社も休みがちになって、部屋に閉じこもって一人、泣いて泣いて泣いて泣いて呻いた。

 そうしている間にも、望まない子がお腹の中で大きくなっていく。

 そんなある日、一則に呼ばれた。「いい方法がある」といわれたのだ。
 ああ、そうかこの人も豚畜生ではあったが、鬼畜ではなかった。
 せめて、堕ろしてもいいと、産まなくてもいいと言ってくれると思ったのに。
「ようやく堕ろすのに同意してくれるんですね……」
 そう聞いたら、速攻でそれは駄目といわれた。
 じゃあいっそ私を殺して……。

 そんなサオリに、妊婦向けの雑誌を差し出された。ああ、こんな嫌味なものをとサオリは憎らしくて、顔をそむけたが、それでも開いたページを目の前に突きつけられる。
 その妊婦専門雑誌の一部に、赤線で大きく印がされてあった。
『妊娠初期の激しいセックスや強いストレスには、流産や早産の危険性があるから避けましょう』
「わかるかな、つまりぼくと激しくセックスすれば流産する可能性があるってこと」
「えっ……ええええ」
 流産……ああ、そういうこともあったかと。そういう希望。ほんの小さな希望。この豚とセックスなんて嫌悪以外の何物でもないが、それでも。
「ぼくの子供を産みたいのかな、もし産みたくないなら可能性にかけてみない」
「うっ……」
 改めてこんな男とセックスを、しかも合意でしなければいけないのだと考えればサオリはもう本当に嫌になる。ほんとの豚と獣姦するほうがマシだった。
「もちろん、ぼくはどっちでもいいんだよ。むしろ産んで欲しいって思ってる」
「わかった、なんとか堕ろしたいから」
 最悪の事態を避けるために、最低の手段を使わなければならない。運命はどこまでも残酷だった。
「流産したいならタイムリミットは、せいぜいが妊娠五ヶ月までだね。それ以降になったら、早産でも赤ん坊は生きていけるからね」
「じゃあ……もういいから早くしなさいよ」
「おっと、こっちがしてあげるんだからね。それを忘れないように」
「わかった……」
「あと、産婦人科にもぜんぜんいってないみたいだけど、ちゃんと検診を受けて体調管理もすること。それが交換条件ね」
「……わかった」
 こうして、サオリの更なる地獄の日々が幕を開けた。

「とりあえず、舐めてもらおうかな」
 そういって目の前の豚男は、ズボンを下ろして、サオリの目の前に一則の巨根を投げ出すようにして飛び出させる。
「何で私が!」
 怒るのは当然だろう。でも、サオリはもう一則の更なる罠に嵌っている。
「ほら、過度なストレスも流産の危険性があるんだって」
「……過度なストレス?」
「だから、嫌だと思えば思うほどに効果がある」
「そんな……」
「ぼくの子供を産みたいのなら」
「わかった、わかりました。舐めればいいんでしょ舐めるぐらい」
 そういって、舌を這わせるようにする。
「うぁ、いい。もっとサオも舐めるように、吸い付くように」
「ふるふぁい、あんふぁでふぁふぎるのふぉ」
 うるさい、あんたでかすぎるのよと言っているのだ。でかいというのは褒め言葉になってしまうのだろうか、気を良くしたらしい一則はさらに腰を押し出す。
「あぐっ……あごが外れそう」
 一則の容赦ない押し出しに思わず、サオリは吐き出してしまった。一則のものは、サオリの小さい口には大きすぎるのだ。
「ああ、ごめんごめん」
 そういって、一則はまたぐいぐいと口をあけているサオリのなかに押し込んでくる。大変むかつく行為であるが、嫌と思えば思うほどに効果があるという言葉を思い出して、ぐっとこらえる。私も我慢強くなったものだと、サオリは思う。あきらかに、毎日聞いているレコーダーのせいであって、あれにも副作用があるなとがっかりする。辞めるつもりは、何故かぜんぜん起きないけれど。
 そういえば、お茶の残りもほとんどない。一ヶ月以上経っているので当然なのだが、なくなってもレコーダーだけ聞き続ければいいのだろうか。サオリがそんなことを思考しているうちに、口の中に押し付けられていたすえた匂いのする生臭い棒の先っぽから、黄みドロの精液が流れ始めた。
「ぐぅはぁ……」
 ビトンッ! ビトンッ! ビトンッ!
 口の中にまず射精、それが気持ち悪くて、耐え切れなくて顔をそむけたら、こんどはサオリの顔をドロドロに汚していく。どんだけ射精するんだ。
 それを、もう抵抗する気もなくて、呆然とサオリは見ていた。長い射精。すごい量に、耐え難い匂い。こんなものを自分の身体に受けていたと思うと改めて吐き気がする。というか、いまの口の中にも出されたから、臭くて汚い精液で吐き気がしているのだ。
 口や顔を汚されるのも、これはこれで犯されるのとは別の嫌悪感がある。そうして、嫌だと思考するたびに、嫌なほど効果があるという言葉が浮かんでくる。我慢しないと……。
「いやあ、サオリちゃんから舐めてもらうの初めてだったから、すぐでちゃったよ」
「いつから……私のことを名前で呼んでいいといいましたか」
「じゃ、いまから」
「……我慢します」
 早く、子供が堕りてくれればいい。ストレスで身体を壊したって、そっちのほうがぜったいにいい。ああ、殺したい。この目の前の男も、この男との間に出来てしまった子供も。殺戮しつくしたい。夫や子供を、虐待する母親の気持ちが今は分かりすぎて自分が怖いサオリだった。

 …………

 用紙が二枚突きつけられていた。
 一枚目は、『婚姻届』
 二枚目は、なんだこれ『奴隷契約書』
 予想外だった、サオリの予想外だった。一枚目が最悪だと思ったら、二枚目がさらに最悪を通り越しての剥き出しの凶悪。
「さあ、サインして」
 有無を言わせぬ展開。さすがは、桑林一則。現在、サオリの殺したい男、世界ランキング一位。サオリが世界で一番大嫌いな男である。
 怒りで人が殺せたらいいのに……。
 怒りを通り越して気が遠くなりそうだ。クールに対処しないと自分を抑えきれない。
「申し訳ありません。展開が速すぎまして、まず一枚目から突っ込みを入れたいと思うんですが……なんで私があなたと結婚しないといけないんですか!!」
 絶叫した、サオリ絶叫。最近、叫ぶことでなんとか精神の均衡を保てているような気がする。
 どうせここは一軒家なので声が響くことは、計算に入れなくていい。右隣は自宅の庭、左隣は畑だから、たぶんヘビメタを大音量でかけても近所から苦情など来ないだろう。
「説明すると長くなるけどね」
「きっちり説明してください」
「子供の健全な育成には父親と母親が必要だと」
「却下です」
 言下の否定。シラっとした空気が流れる。流れてしまえ。

「じゃあ、ぼくと結婚するのは嫌なんだね」
「死ぬほど嫌ですね」
「じゃあ、いいんだね」
「えっ……」
「ほら、極度なストレス」
 そういって、いつぞやに示した妊婦雑誌の記事を見せる。
「あっ……わかりました」
 流産させるのが、最優先課題。そのためなら、結婚なんて子供が堕りてしまえば離婚してしまえばいい。サオリはそこまでの極論で考えた。
「じゃあ、二枚目の方もサインして印鑑おしてね」
「ちょっとまってください、さらりと流さないで」
「だって、どっちも一緒のようなものだから」
「違いますよ、すっごい違う」
「だってほら、結婚は恋の奴隷とかいったり」
「いい加減にしないと……庭に埋めますよ」
 もちろん息の根を止めて、身体をバラバラに切断してだ。庭木を手入れするための鉈があったはずだ、松の木を切ってもらったときに使ったチェーンソーも納屋に残ったまま。
 祖父から続いた家を汚すのは、気が引けるが緊急事態につき許してもらえるだろう。ここらへんは、通行人も通りかからない一軒家ばっかりだから。事件が起きても、埋めてしまえば発覚しない。
 殺人計画を一瞬で頭に立てたのが、一則にもサオリの表情を通して伝わったのだろうか。
「いや……遊びすぎたごめん」
「謝って済むなら警察はいりません……ほんと、警察なんていりませんよね。ここらへんはどうせ警察なんて来ませんからね。あはははっ」
 そうやって妖しく笑ってやる。あはははっ、一則の顔が蒼白に染まった。一則は押しの弱いおっさんに過ぎない。会社でみんなに馬鹿にされて、それでもじっと黙っているような。私相手に、調子に乗っていたようだが、追い落としてやったほうがいいのかも。これは、せめてものシカエシだ。
 そういえば、警察がここらへんのパトロールを増やすとかいってたけど、ぜんぜん来てもくれない。本署まで行ったのだから、一度ぐらい顔を見せたっていいだろうに。ここらへんの家はみんな小金もちの地主だから、みんな個別で警備会社と契約してる。だから事件なんて起きたこともないから、余計に警察もよりつかないのだろう。
 冗談のつもりだったけど、本当に殺して埋めても分からないかもしれない。ストーカーも、一則が居るようになってから来なくなったから警備なんてどうでもいい話だが。

「いや……サオリさん怖いな」
「誰がここまで追い詰めたんですか」
 そういって睨んでやる。
「この状況は、こう自然にというかいろいろと間違いでというか」
「あなたに責任がないのは知ってますよ、でも責任とってくださるんでしょう」
 そういってやる、これはただの八つ当たりかもしれない。でも桑林課長は八つ当たりしていいキャラだし、私は優しすぎたかもしれない。だいたい今の状況、この目の前に醜い男の子供を妊娠させられているというこの悲惨な状況。
 八つ当たりぐらい余裕で許される。
「話を元に戻そう、あの奴隷契約についても過度のストレスだよ」
「それにしても、過度すぎますね。あと契約だとあとあとまで尾を引きます。私としては、流産させてくれるというから、協力しているだけなんですよ」
「じゃあ、妊娠五ヶ月までに流産したら、その場で契約は破棄ということにしよう。目的を達することが大事でしょう」
「…………わかりました。では了解します」
 婚姻届は、これはこれで感慨深いものがあった。それにしても酷いのは奴隷契約書だ。一生奴隷として仕えますとか、桑林一則の子供を毎年孕みますとか、命令はなんでも聞きますとか、愛をもってお仕えしますなど、ありとあらゆる難事が書いてある。七難八苦とはこのことだろう。一則を心から愛するというのが、一番の艱難辛苦だ。
 でも、流してしまえばいい。いまから五ヶ月……四ヵ月半弱の間にお腹の子供を殺してしまえば、流産させてしまえば、この奴隷契約も婚姻も全て破棄できる。
 やりぬくと、サオリは覚悟を決めた。

 …………

 実際に自由にセックスしてみると、運動不足で動きの悪い一則に代わるようにして、サオリは上で腰を振っている。
「ああっ……サオリちゃんすごいよぉ」
 いってろ、とサオリは思った。とにかく、必死で射精に導く。ただそれだけ。奴隷として命じられたから、そうしているだけ。体力はないくせに、一則の一物はとても立派で、前に付き合っていた彼氏なんかよりも、すごくいい感じでサオリの中をゴリゴリしていく。
 下でよがっている一則なんかよりほんとはもっと気持ちがいいのだ。
「はぁぁ……あっあっあっいっ……イィ」
 一則が調子に乗ると嫌なので、あまり喘がないようにはしているけど、肉体的快楽ばかりはどうしようもない。本当に、女の身体というのは嫌になる。誰のものでも、豚のものでも、なじませて突っ込まれれば、気持ちよくなってしまうのだから。自分の意志も、気持ちも関係なくギュッギュと締め付けてしまうのだから。
 そして、それが全てまた自分の快楽にと跳ね返ってきてしまうのだから。
 妊娠してからというもの、もともと淡白なほうだったサオリの性的欲求はむしろ高まりつつあった。それを、こんな嫌いな男で満たさなければならないというのは恥辱だ。気持ちいいと思ってしまうのは害悪だ。酷い錯覚。
 その歪んだ臭い匂いのする汚らしい顔を見てみる。女は萎えないけど、気持ち悪くなる。どうしたらいい、気持ちはいいのだ。でも気持ちが悪い。まるで耐えられない空腹を毒々しいカップラーメンで満たし続けているような、口を真っ赤にして着色料のたっぷりついた駄菓子をむさぼっているような、そんな自分を汚す満腹。
「中にください」
「出すよ!」
 ドピュドピュドピュ!
 それは半ば機械的に、脈打つように、サオリの奥に奥底に響く。
「ああ、私……汚されている」
「ううっ……気持ちいい」
 ドピュドピュドピュ!
 自ら、膣を絞めてぐっと搾り出してやる。腰をもっと振る。もっと汚せ、もっと汚せと。
「ああっ……その毒みたいな精液で、中の赤ちゃん殺してください」
「酷い、いいようだな」
「そしてあなたも死んでください」
「もっと酷いや」
 そういって、荒い息をついて一則は顔を歪ませる。この豚を休ませるつもりはない。
「もう一回! もう一回!」
「あぁ、もうでないって」
 騎乗位を緩めない、手でぐっと根元を絞り上げるようにもちあげて立たせて、またうえで腰を振る。もともとサオリは身軽で俊敏なほうだ、身体は軽い、こっちが上になれば二回ぐらいサオリは連続でも平気。
 少なくとも、このデブ男に乗られて犯されるよりはよっぽどましだった。
「はっ、はっ……出しちゃいなさい!」
「ああっ、また出るよ、チンコ痛い……あっ出る!」
 ドクドクとお腹に弾ける、熱い飛まつを感じながら、この汚らしい粘液で、お腹の子が死ねばいいとサオリは祈る。下の豚も体力使い切って死ねばいい。私に酷い命令ばかりするのだから。強いストレス、過度なストレス。それをいまサオリは感じている。我慢して、生きている。

 …………

 家での、排尿排便は許可制になった。
「ここが、これからサオリさんのトイレですから、この木の根元にしてください」
「……うっあああ!」
 庭で、ニヤニヤする一則に見つめられて、野糞をした。立ちしょんべんをした。涙も零れた。浣腸もされて、我慢しきれなかったからしかたがないのだ。全部しかたがない。
 数日で、酷い匂いがしてブンブンとハエがたかるようになった。
 しかたがないので、排便排尿のあとはスコップで土をかけて埋めた。
 一則は木の肥料になっていいといっていたのに、なぜかサオリの便所にされた庭木だけが、枯れ始めた。大自然の神秘を前にして、サオリはとても物悲しい気持ちになった。こんな姿、死んだ両親が見たらなんというだろう。
 深く考えないことにした。

 …………

「……あっ!」
「だめだよ、サオリさん声あげたらやばいって」
 サオリは会社の倉庫でも犯されていた。誰が来るか分からない酷い場所で。もうお互いの感じるところが分かっているのに、いきなりきつい場所ついてくるから悪いのだ。一則のチンポは本当に長くてでかくて、いろんなところに突き刺さってくるから怖い。
「うっ……あっ……」
 そしてやっぱり中に出される。
「バイブとかもつかって、弄ろうかと思ったけど。万が一にも、他の男にサオリさんの痴態見られると嫌だからやめときますね」
「うぅ……」
「優しいでしょうぼくは、愛してますは?」
「愛してます……」
 サオリは、嫌々そういうしかない。身体が痙攣したみたいに、ブルッっと震えた。怒りでも、ストレスでも、心は震える。

 …………

「近所の産婦人科にいったら、すでに妊娠十週に入ってるそうです。お腹の子供はすくすくと育ってますだそうです」
「それはよかったじゃないか」
「よかないです、もうすでに二ヵ月半! あと半分ぐらいしか猶予がないんです」
 サオリは焦っていた。流産とか、流れるとか、やはりイメージとしては妊娠初期ということになる。いまのまま、ただ言われるままにセックスに応じているだけではぜんぜん決め手にかけるのではないか。
「それじゃあ、考えてたことがあるんだけど」
「SMプレイですか、いっそのこと腹を蹴ってもらってもかまいませんよ」
 この目の前の男の子供を産むぐらいなら、死に掛けたほうがましぐらいまでに思いつめていた。このころになると、サオリは寝るたびにこの男の子供を産んで抱き上げる悪夢をよく見るようになった。抱き上げた赤ちゃんの顔は、なんと一則と瓜二つの化け物。サオリは病院で恐怖と絶望に泣き叫ぶ。
 そんな朝の目覚め、びっしょりと寝汗をかいていた。正夢になりそうで恐ろしい。
 隣で寝ている一則を憎々しげに見てから、自分のお腹も見る。まだそんなに目立ってもないけど、このお腹の中に一則の子供が入っていると思うと。そう思った回数だけ、死にたくなる。そんな絶望に比べたら、腹を蹴られるぐらいがなんだろうか。蹴り殺されたい。

「クリトリス拡張とか……」
「……それはすさまじい恥辱ですね」
 すでに産婦人科の定期診断があるので、当然のことながら医療行為として陰部を見られる。幸いのことに女医の医院だったのだが、同性だからこそ見られるのが恥ずかしいということもある。
 そこに細工されれば、恥とかもうそういうレベルを超えて正気を疑われるだろう。
「いや、やるつもりはないよ。ほんとにやるならお薬とかも使わないといけないから、胎児に深刻な悪影響があるかもしれない」
「やりましょう!」
 胎児に深刻な悪影響を与える。胎児を退治したいサオリにとってそれは望むところ。
 即答できた。もう猶予はなかった、恥を忍んでいる暇もない。
 やれる方法があるなら、なんだって。身を削る覚悟もできている。
 できているのだ。
「じゃあ、ぼくはやりたいからやっちゃうよ」
「おねがいします」
 あまりクリトリスを刺激したことのないサオリには、自分の陰核をむき出しにするだけでも辛い。
 どこからでてくるのだろう、陰核を吸い上げる掃除機のようなものを出してきて、キュィィンというモーター音と共に、激しく吸い上げられるサオリの突起。
「かっぁ……」
 思ったよりも、ずっときつい。ズキズキと根元が傷む。それでも、それはムズムズとした快楽を伴って、ただの痛みなら耐えられるのに、それは気持ちよくもあるから、それが自分をもっと惨めな気分にして死にたくなる。
 どこまで、この豚は自分を汚せば気が済むのだ。
 そのような殺気で睨みつけても、豚はブヒブヒと喜ぶだけ。
 サオリの陰毛は、常に剃刀で剃られていた。一則がずっとやっているが、自分でも気をつけて身体中の毛を常に剃り続けなければならないという奴隷契約。
 毛ならまた生える、こんな風にクリトリスを大きくされてしまったら、もう二度と自分は男に抱いてもらえないのではないか。
 二十三歳にして、こんな女としての終わり。
 自分で、掃除機のホースを持たされて、自分で自分を終わらされて、そんな終わりに涙する。
「今ならまだ、元に戻せるけどこの薬打っちゃうと取り返しつかないよ」
 クリトリスにいまからする注射器を持って、一則は聞いてくる。
「あのこれって、飛び出たらもう戻らないんですよね」
「戻らないね、一生このままだね」
「……しょうがないですね」
「まあ、ぼくが一生愛してあげるからね」
「その注射、あなたの睾丸にも打ったら睾丸も大きくなりますかね」
「それは……ちょっと勘弁してくれるかな」
 ふぅとため息をつくと、サオリは「打ってください」という。そして、薬を打つと、淡いピンクだったサオリの陰茎は浅黒く充血していく。
 ああっ、もどらない。

 …………

 クリトリスの拡張中は、ヴァギナを使ってのセックスはまずいということだった。おどろおどろしげな拡張器具を股間につけながら、仕事をするのは本当に嫌だったけど、豚に犯されないということだったので、それだけはありがたいと思っていたのに。
「なんでこんなことになっているのですか」
 ブンブンッ唸るバイブで、サオリはアナルをほじくられていた。
「まだ初心者向けだから大丈夫、いきなり挿入したら壊れちゃうかもしれないから」
「そういうことではなくて……拡張中はセックスできないのでは」
「アナルは関係ない、アナルの自由というものだよ」
「……」
「いやあ、どっちにしろ不安定な時期はオマンコ避けないといけないから、アナル使えるのは助かるよ」
 二カッと笑われた。そんな油テッカテカな顔で朗らかに笑われても、サオリは首を絞めたくなるだけだ。

 …………

 もう、あっという間だった。
 アナルは深々と拡張されて、太々とした一則のものを受け入れるようになってきた。
「あっ……あぁ!」
「アナルで感じてくれるようになったんだね、嬉しいよ」
 そういって、指でピンと拡張されたクリトリスを弾く。
「いっ! やぁあ!」
「遊びがいがあるなあ」
「いっ……いぃ」
「じゃあ、お尻の中に出すからね」
「えっ、だめぇ」
「もう慣れて、お腹の調子悪くなるってこともないんでしょ」
「そういうことじゃなくて……いっ!」
 指で、オマンコのほうをグッチョグチョに弄られる。指技まで、この豚はうまくなりやがっているのだ。サオリは自分の身体で、練習されたと思うとそれも悲しかった。
「もう止まらないから」
「あっ……」
 ドクドク!
 直腸への射精は、オマンコの中に出されるのとはまた違ったダイレクトに来る感覚だった。もう、これが気持ちよくなっているというのが、自分が人間として終わっているのだという快楽。苦痛が快楽なのだ。
 ドロッと引きぬけられると、サオリのお尻はもう回復不可能なほどに、ぽっかりと穴が開いていた。ビックサイズの一則のモノを受け入れるというのは、こういうことなのだ。前だけじゃなくて、後ろもサオリは取り返しがつかなくなっていた。

 …………

 サオリは焦っていた。
 妊娠十五週、つわりも普通にあって肉体的に辛い時期のピーク。
 それでも、精神的な辛さのほうが遥かに勝っているから、身体が辛いのはむしろ嬉しいぐらいだった。
 過度なストレス、過度なストレス。それが、自分の中の絶望を殺してくれるなら。
 それほど望ましいことはない。

「いったい、これ以上何をすればいいの!」
「ぼくの精子が毒だっていうなら、いつも入れっぱなしにしておくとかね」
「そっ……そうしましょうか」
 サオリにとって、一則の汚らしい精液は害毒だった。
 毒は毒をもって制すという。
 すでにそれが人間の形をしている子が孕んでいる子宮に、ばい菌がいっぱいの一則の精液を流し込めばどうだろう。
 死ぬ、私だったら死ぬ。
 認めたくないことだが、お腹の子の半分は自分。
 たぶん、死ぬ。

 またサオリが上に乗っている。
 最近、少しは体重も減ったと主張しているデブ男の一則とセックスするのには、やはりこの騎乗位の姿勢が一番楽だ。
 何も考えることなく、ただ射精させることだけを目指して腰を振る。
 最近、考えるのが嫌になってきたからちょうどいい。こうやってセックスに溺れていれば先の暗雲を見ることもない。
 目の前の醜い男も見たくないけれど、眼を瞑ってしまえばそれも。
「ふっ……ふっ……」
「ああっ、サオリちゃんいいようぅ」
 いってろと思う。
 いやらしい音が響く、ジュッジュッジュっと。
 サオリは考えたくないのに、思い出していた。

 胎動がすでに少しあったので医者に、赤ちゃんを見てみますかと言われたのだ。
 断れない空気だった、相手の言葉をなぜか拒絶できない。
 嫌々なのに、愛想笑いを浮かべて、サオリはお願いしますという。
 サオリのお腹にぬるぬるの液を塗りつけて、カメラのようなものを当ててくる。
 スキャンしたモニターを見せてくる。
 そこには、白黒の画面ながらきちんと人の形をした子供が映っていた。
 私の子供、この醜い男との子供がきちんと人間の形をして映っていた。
「ああっ」と思った。
 なにも考えたくないのに、「ああっ」と思った。
 笑顔を崩さずに、医者から帰ってきた。
 家でじっと自分のお腹を見ていた兆候はそれほどまだ見えないのにちゃんと入っているのか。この中で、生きているのか。
 あの豚の異物が。

 いやらしい音が響く、ジュッジュッジュ。
 私のお腹の赤ちゃんも聞いているだろうか。
 当たり前だ、この男のでかいマラは、子宮の入り口あたりをグリグリと叩き込んできてるのだ。その中に住んでいる赤ちゃんに聞えないわけがない。
「出して、早く出して!」
「あっ、いく! サオリちゃんの中に出すよ」
 ドピュドピュ!
 あの汚らしい黄色がかった精液がドクドク身体の中に入り込んでくる。
 逃げ場はない、子宮の中にドロドロと入り込む。羊水に毒が混ざる。
「うっ……中に出てるのね」
「サオリちゃんの中にだしたよ!」
 一則は、サオリの乳房を弄びながら満面の笑みで言う。
「これで、赤ちゃん死ねばいいわね」
「ぼくは生きればいいと思うけどね」
 一則はやりきれない顔で困惑する。少しだけいい気味。でもやりきった満足感もあるらしく、気持ちよさそうにはしている。それがサオリには嫌だ。
「お腹の赤ちゃんも、きっと聞いてるわよ」
「そうだね、ぼくたちの声は聞えてるよね」
 サオリは笑う、楽しい。赤ちゃんを言葉で弄れば、一緒に一則も弄れるから。
「私は、あなたが生まれても育てられないの!」
 そうお腹をさすり赤ちゃんに呼びかけた。目の前の憎い男の赤ん坊に。
 萎えかけた一則の陰茎を、手で擦るようにしてまた起たせる。
 そうして、その上に乗ってまた腰をふる。力の限り腰を振り続ける。気持ちいい。
「辛いの、苦しくてしかたがないの!」
 気持ちがいい。一則はサオリに乗られて、腰をあわせて粗い息を吐くだけ。
「お母さんを苦しめないで!」
 仄かな胎動を感じるお腹、もうすでにそこに子供は生きている。
 意志だってあるに違いない。
「お願いだから、死んで!」
 それはもはや、呪いではなく祈りだった。
 一則がまた中で射精した。
 あとで、蓋をして子宮から漏れないようにしてやろう。
 そうして、毒に撒かれて死ぬといい。
 毒から生まれた赤ちゃん、死んで。死んで。死んで。
 サオリは呪い続ける。自分のお腹に汚い呪いの言葉を浴びせ続ける。

 だが、産まれた命は呪詛では死なない。
第三章「妊娠遊戯」
 なぜかその夜、一則はサオリに攻め立てられて強制的に腕立て伏せをさせられていた。催眠の副作用で、サオリが鬼教官みたいな人格になってしまったのかと一瞬いぶかしんだが、どうやらこの前の一則が起き上がれないって理由でセックスしたのが尾を引いているらしい。
 これから、一則はサオリと一緒になって幸せになるつもりなので、一家の大黒柱として体力をつけなければならないと思っていたところだから、渡りに船といえるのだ。サオリに叱咤激励してもらえると、運動もやる気になる。それもこれも、二人の幸せのためと一則は汗をたらたらたらしながら、がんばる。
 それにしても、最近のサオリの対応は、親しくなったというより、キツクなった。あるいは優しさがなくなったという感じだ。身体のつながりができたら、すぐ心もつながると思ったのは、童貞の勝手な妄想というもので。一回や二回やったぐらいでは、親しくなるどころか、逆に男と意識されて余計に嫌悪されてしまう羽目になったというところか。ここで諦めるぐらいなら、最初からやらない。一則にはちゃんと次の作戦もある。楽しみながら、やり切れる覚悟がある。覚悟が一則の歪んだ愛情が更なる残酷を産む。

「寝る前に、今日排卵日の早崎さんにすこし注意事項があるんだけど」
「なんですって!」
 一緒のベットの中で相変わらず裸になって醜い裸体を見せ付けていた一則を、嫌そうに見ているサオリに一則は声をかけた。それで、サオリの今日も入眠儀式をしようと催眠レコーダーに伸ばした手を止める。
 なぜ自分の排卵予定日を一則が知っているのかという怒りを含んだ、鋭い形相だ。
「実は、ぼくは寝るときにダッチワイフと一緒に寝る癖があるんだ」
「聞きたくもなかった報告ですね。ダッチワイフって、たしか大きなお人形みたいなその……男性が性欲処理に使う、ああ、それで抱き癖があるといってたんですね、桑林課長はあいかわらず気持ち悪い……それとその私の……危険日と何の関係があるんですか!」
 ちかごろサオリは、素直に一則の繊細な神経を傷つけるような感想を述べるようになってきた。これを親しくなったと見るべきか、さらに嫌悪されたと見るべきかは考えてしまうところだ。多分両方だろうというのが一則の見方で、それはおそらく正しい。
 いまはラブドールというのだが、少々古い名称のダッチワイフを使ったほうが女性のサオリには分かりやすいだろうというのが一則の心遣いだった。それにしても、ダッチワイフ(オランダ妻)とは、歴史的名称とはいえオランダ人船員に対する偏見を感じさせる名称である。ラブドール(愛人形)のほうが素敵でいいと一則は思う。
「そのダッチワイフはサオリっていう名前なんだけど」
「最悪です……なんでわざわざそんな名前をつけて……いやっ、そんなことじゃなくて私の質問に答えてくださいよ」
 なぜ自分の生理周期を一則が知っているのか。詰問しようとしたサオリを無視するように、一則は一方的に言葉を続ける。
「寝ぼけて、サオリと勘違いして、その早崎さんに変なことをするかもしれないから気をつけてほしいなと。ぼくが君をサオリって言ったときは寝ぼけてるからね」
 変なことという言葉の部分で、嫌な思い出を思い出したのか、サオリの顔がさっと青ざめて、また怒りに赤く染まる。
「そんなこといわれても……少々ひどい起し方になるかもしれませんが、万が一寝ぼけて私に変なことしてきたら、思いっきり殴って蹴って起しますからいいです」
 そう鋭く警告だけして、ようやく息を吐いて満足したのか。それともこれ以上この馬鹿に何を言っても無駄と思ったのか。サオリはレコーダーをかけてさっさと眠ってしまった。あれだけやられて、殴って蹴ってで済ませるというサオリはまだ優しいのかもしれない。そうして、その優しさに付け込もうというあいかわらずな最低人間が一則だ。
 サオリが寝入ったのを確認すると、一則は寝たふりをやめて、部屋の電気をつけて憎らしげに「抵抗できたらいいんだけどね」とほくそ笑む。醜悪を通り越して、それは邪悪な微笑みだった。

 疲れきった子供ぐらいぐっすり眠っているサオリ。こうなってしまえば、赤ん坊ほどの抵抗もできない。サテン生地のピンクの寝巻を脱がして、黒地に白のレースをあしらった下着をゆっくりと剥ぎ取っていく。
 結構面倒臭い作業でもあるが、この時間が一則は結構好きだ。
 また、例の高級拘束具をきっちりと装着し、万が一全力で暴れられても外れないように気をつける。まあ、ベットの柱にくくりつけておけば、そのベットの上に寝ている人間がどんなに力を込めて暴れてもベットが動くだけのことなのだ。それは、人間が自分の身体を持ち上げて浮き上がれないぐらい確実に、サオリが拘束されたということ。
 一則は、この扇情的な光景が大好きだ。涎が出る。
 きちんと、カメラとマイクをセットして、『緊急開錠キーワード』と書いた紙も用意しておく。サオリがちゃんと気づいてくれるとより楽しいセックスになるだろう。
「さて、可愛い可愛い眠り姫ちゃんは、中々起きてくれないからな」
 それはサオリの寝起きが悪いのではなくて催眠のせいなのだが。
 とりあえず、目の前のオマンコをこねくり回してみる。ローションも買ってあるのだが、なんとなくまだ使う気にならない。前戯を楽しみたいという一則の気持ち。あとまだ、行為に至るまでの過程を楽しみたい気持ちが強い。心も顔も醜い男だが、それと同時に一則はロマンティストでもあるつもりなのだ。そうでなければ、こうも面倒な犯し方もしないというのはたしかにいえるかもしれない。
「ふふふっ……」
 一心不乱にオマンコを指でかき回して、弄ぶ。そのたびに、息が荒くなったり何らかの反応を示す。楽しい、心地いい。
 一則にとって、憧れだった恋焦がれていた女性。いまも愛している女性。それが本人の意思はともかく、自分の好きなように弄くれるこの喜びは至福。全てを捨てても惜しくないほどの喜び、これで二百万円は安い。激安バーゲンセールだ。
 今度は口に涎をためて、舌に絡めてからオマンコを外側から嘗め回した。ビラビラを舐める、そのまだむけてないクリトリスを上からちゅっと吸う。すこし、すえた味のする尿道の周りに舌の先を押し付けてほじくる。そして、タップリと舌が届くギリギリまで、サオリの奥底を味わう。
 濃厚な、サオリの味に溺れてしまいそうだった。ギンギンに興奮する。果てしなく興奮する。
「ふふっ……あははっ!」
 すぐ入れて犯して射精してしまえば、気がつかないまま妊娠するかもなあサオリちゃん。そういう自由もあり、もっと別の犯し方もできる自由もある。
「あぁ、人生ってこんなに楽しかったんだな!」
 そう一則は少し感極まって、うれし泣きをこらえるように醜悪な顔を憎々しげにゆがめた。
「そうだ、サオリちゃんが寝ている間に、アナル攻めを試してみるか」
 拘束具と一緒に、アナル攻略グッツも攻略したのだった。さっそく、アナルバイブとアナルビーズを持ってきた、一則はローションをたっぷり、サオリの小さな菊の門に塗りたくって、細い鉛筆ほどのバイブを挿入した。
 あくまで、これは初心者用のものだ。挿入しやすいペンシルバイブは、ゆっくりと刺激が強くなりすぎないように、サオリのアナルの中で回転して少しずつ下地を成らして行く。
「こっちも徐々に開発しておかないと、妊娠してから困るもんね」
 妊娠中も夫を楽しませてこそ、大和なでしこのたしなみといえるだろう。一則がこんなこと言ってると知ったら、サオリは激怒するだろうが。悲しいかな眠っているままで気がつかない。
「それにしても、深い眠りだな。催眠の効果は着々ということか」
 普通アナルをほじくりまわされてたら、起きるものだけど。だからこその催眠なのであろう。一則の手つきは、大雑把で大胆である。いま起きたとしても、催眠に染まったサオリ相手にどうとでも言い逃れて見せようという腹なのだ。
「じゃあ、アナルビーズも試してみようか」
 これも初心者用、ほとんど紐みたいなものだし、ビーズも柔らかい素材で作られていて、それほど大きくない。その代わりにビーズの数が二十個ほどもあって、これが直腸の中に溜まったら、それなりにお腹に圧迫感があるだろう。
 一則は、ゆっくりとビーズにもローションをなじませて、ひとつひとつ入れていく。
「ぬぅん……うぅん……」
 苦悶の表情で呻くサオリ。そりゃあそうだ、サオリの身体は慣れてない。普段排泄物を吐き出すだけの器官に、ソフトプラッチックのボールが逆に押し込まれているのだから苦しい。
 なんとか、サオリが起きるまでに全てのボールを直腸の中に押し込むことができた。最後は指で押し込むようにして、思わず「ぐんっ!」と力を込めた。
「……うぁん……あっ……苦しいっ……なにっ!?」
 サオリはアナルの圧迫感と衝撃で、ようやくお目覚めになられたようだ。間一髪だったな。起きたら起きたときのこと、一則は慌てもしない。
 ゆっくりとウエットティッシュでサオリの直腸液とローションで汚れた手をふき取ってから、サオリににじり寄って行く。
「ううぅん……サオリ」
「私を名前で呼ぶなと! あっこれって、寝ぼけてとかいってたやつかな……思いっきり殴ってやるからっ! ああっ、嘘! また裸で縛られてる!」
 サオリは現状を認識したようだった。眠りが深い上に、目覚めたらしっかりと覚醒するのがこの催眠の特徴。覚醒したからといって、現状認識できるかどうかはサオリ次第なのだが、彼女の聡明さは一度経験した状況をすぐ理解できるようだった。それは、一則にとっても好都合。
 自分が寝ぼけているという”催眠設定”も、すぐ理解できるということだから。
「サオリ、可愛いよ。おっぱい大きいよ」
 そういって、サオリの豊かなおっぱいを一則は乱暴に左右にかき回す。
「あっ、動けない。くそっ、うっうっ、起きて、桑林課長! 起きて、起きてぇ!」
 ちゅーと、まだ勃起していない乳頭に吸い付いた。右の乳頭はそうやって、すぐに一則の口のなかで大きくムクムクと成長していく。左の乳頭は、弄繰り回されているうちに立った。乳房に比例して、なかなかに自己主張の激しい乳頭である。
 一則のとっては、理想的なサイズ。それをちゅちゅと、執拗に吸いつく楽しさ。
「吸うな! 起きろ馬鹿ぁ……起きろぉ!!」
「おっぱい出して、サオリのおっぱい飲みたい」
「出るわけないだろ、馬鹿ぁああ」
 身体をガクガクと左右に震わす。そのたびに、それに繋がっている古いベットの柱もぎしぎしと鳴るのだが、古い割りに頑丈な木材で作られているベットは、びくともしない。そうして、両手両足を縛られているサオリの革と鎖の拘束もびくともしないのだ。無駄なことを、そう一則は心の中で嘲笑する。
「サオリぃ、愛してるよ」
 そういって、べろんとサオリの顔を舐めた。サオリはせめてもの抵抗で、顔をブルンブルンと振りまくった。それをちょっと引いて避ける一則。頭突きは、たぶんサオリの唯一といっていい抵抗方法だろう。だが、仰向けに拘束されているいまの状況を思えば、無駄に頭を持ち上げて暴れることは、サオリの体力がどんどん奪われるだけなのになと一則は呆れた。案の定しばらくいやいやと頭を振ってるうちに、サオリはぐったりとしてきた。当たり前だ。
 それでも口は動き続けて、一則を叱責して覚醒を促している。女性であるサオリは、体力がさほどない、サオリがそれでも声を張り続けられるのは持ち前の気の強さだろう。気概というものだ。
「いいかげん起きて! はぁはぁ……桑林!! どけ! どいて!」
「サオリ、そろそろサオリのオマンコにぶちこむよ」
 だから、無駄なんだって。一則は早く緊急開錠キーワードに気がついてくれればいいのにと思いながら、すでに準備が整っているサオリのあそこにあてがう。
「やっ、入れるな馬鹿! 入るわけないから!」
「んっ、サオリのここはお待ちかねみたいだね」
 にゅるんと一気に挿入した。ゆるゆると、一則のものを受け止めていくサオリの膣壁は喜びの蠕動で震えた。
「どうして! なんで私の、濡れてるのぉぉ?」
 あまりにもすんなり入ったのが疑問だったのだろう。そのショックかどうか、お尻に入っている異物感にはさすがに気がつかないようだった。まあ慣れてないから、便秘の感覚とそうかわりないはずだ。それに前の穴に挿入されてそれどころじゃない状態なのだから気がつかないのはしかたがない。
「ああぁ、サオリのなかぐちょぐちょの濡れ濡れだよ、サオリはエッチだなあ」
「ぎゃああぁぁ、うぅぅ、うるさい! 私はお前の人形じゃない!」
 自分がぬれているのを自覚して、サオリは真っ赤になって怒る。
「サオリ、ハァハァ……すぐサオリのオマンコにチンポミルク中に飲ませてあげるからね、ぼくの可愛いサオリ」
「だめぇ、今日はほんとに駄目だから、お願いだから! 起きてください桑林課長ぉぉお!!」
 ガタガタと鎖を震わせて暴れるサオリ。その小柄で筋肉なんてほとんどないような柔らかい身体で、まだそんなことができる体力が残っていたのだろうか。
「サオリ、ぼくのサオリぃ!」
「ああっぁぁ、駄目だぁ、どうしよううぅっうううっ」
 左右を、キョロキョロと見回して部屋を見るサオリ。ようやく紙とマイクとカメラに気がついたみたいだ。気がつきたくなかったのかもしれない。しかし、挿入されたとなっては別なのだろう。
「ああぁ……嘘! また音声なの……いやぁぁああああああああ!!!」
 ほとんど絶叫、しかも今日のセリフなかなかハードだ。そりゃ嫌だろう。
「緊急開錠キーワード! 緊急開錠キーワード!!」
 なるほど、この極限の状態で、それ自体が開錠の言葉かと思考したわけか。やっぱり、サオリちゃんは賢くて面白い。愛すべき女の子だ。だからこそ、開錠の言葉なんて本当はないという真実は最悪なのだが。疑うことが出来ない暗示は残酷である。
「うぅぅ、ああぁぁあ!」
「ああ、締め付けてくる気持ちいいよサオリ」
 それにしても、女の子のオマンコというのは一則にとっては不思議だ。こんなに嫌がっているのに、濡れたサオリのマンコは、優しく一則の亀頭を包み込んでくれる。ぐっと押し込めば、ぐぐっと締め付けてくる。ぎっと押し返せば、離すまいとして肉を絡めつかせてくるのだ。
 それは、本当は一則が好きということなのだろうか。一則もどこか好かれているということなのだろうか。そんな勝手なことを思う。
 一則はそんな自分勝手な望みを持つ。最低の男なのだ。
「うるせえぇええ!!」
「うっ……いま、ちょっと精子出ちゃったかも」

 そんな一則の思い込みはひどい、一則はひどい男だ。
 そして、サオリはひどい男にひどいことを思われてひどいことをされている。そして、中に出されて妊娠するかもしれない。まったく、ひどい現実。ひどい地獄。
「ぎゃゃあぁあああ!! やめぇて止めっ!!」
「ううっ、大丈夫……こらえた。まだ射精しないよっ、サオリがいくまではがんばるからね」
 顔と上半身を真っ赤にしている。サオリは頭をむちゃくちゃに振っていたからか、髪をかきみだすように、心も身体もぐちょぐちょになって気も狂わんばかりの様子。いや、気が狂えてしまえれば、むしろ幸せなのかもしれない。
 すでに涙は流れっぱなしで、鼻水もたれ流しで、ぐちょぐちょのひどい顔になっていた。吹き出る汗が、はらりとかき乱れたサオリの髪をべっとりと肌に張り付かせる。その狂気を孕んだ乱れた姿が、また歪な妖艶さとなって一則をよけいに興奮させているから世話がない。
 サオリは泣いて真っ赤に充血した眼でキィィとセリフを書いた紙を睨むように見つめて、息を吸った。ついに読む覚悟を決めたようだ。
「サオリ今日、排卵日なのお!! だから、なんでこんなこと知ってんだ馬鹿野郎っ!!」
「嬉しいようサオリちゃん!!」
 そうなのだ、今日から明日未明にかけて一則の綿密な測定が正しければ、サオリは排卵日。超危険日ど真ん中。サオリ本人も、それを知らないわけがない。
 ベロベロと、一則がサオリのお腹のへこみに溜まった汗を舐めた。
「ひゃぃ……くっ、やめてやめて!」
 ベロベロ、ベロベロ。それは、ある意味、犯されるよりもひどく嫌がられている。
 一則がそうやってセリフを続けるのを邪魔していると、それを含めて楽しんでいると気がついたのか気がつかなかったのか。サオリはセリフを続けるつもりだ、すでに恥も棄て、意も決しているという壮絶な表情。
 その瞬間のサオリは美しかった、見事な芯の強さ。普段の可愛さではなくて、桑林一則のような醜い男に犯されて、なお自分を見失わない早崎サオリの鋭い毅然さ。そして、その彼女を汚して汚して汚しつくして、命を刻み込める一則の絶対的優位は――
「サオリちゃん、最高だよう! 最高に気持ちいいようぅ!」
 ――酔いつぶれるほどの征服感。
 口を半開きにして快楽にゆがめて涎と涙を、ビッチョビッチョとサオリの腹にこぼしながら、一則は両方の手で、サオリのおっぱいを乱暴に握りつぶしながら腰を振る。
 ドンドンドンドン!
 ゴッゴッゴッゴッ!
 グッチュグッチュグッチュ!
 ベットがなく、腰がなく、オマンコがなく。それは、眼がつぶれそうなほどの眩い快楽。いまの一則に、射精欲はなかった。一則は自分の股間が何倍にもはれ上がったような、ただ自分の強度と深いオーガニズムを感じていた。それを、優しく受け止めてくれるサオリの女の襞を感じていた。
「サオリと子作りしましょう!!」
「うんしようしよう!」
 ガチャガチャを手を引っ張って次にいく。サオリはもう余計な悪態はつかない。そんな余裕もない。
「サオリの超危険日なオマンコにピュッピュ!って本気汁ぶっかけて」
「まっててね、サオリちゃんもうすぐもうすぐだよ」
 ガチャガチャ、次。
「一則さんの赤ちゃん欲しい! ぐぅ……、赤ちゃん孕ませてちょうだい!!」
「赤ちゃん作ろう!!」
 ガチャ、鎖を両手両足であげて、降ろすたびにサオリの顔が絶望に蒼く染まる。でも下半身からの熱で、身体は桃色に染まっている。絶望と快楽、そのコントラストがたまらない。
 おっぱいを根元から揉みしだかれて、すこしだけ声に詰まる。でもサオリは続ける。絶望に抗いながら。そんな思いも、一則は全て舐め取るようにして味わい、ねっとりと腰を振る。最高で最悪の射精のときに向けてひた走る。
「いくぅ! 一則さん好き! 大好き! 愛してる!! 出して! 一滴残らず全部中にちょうだい!!」
 ガチャガチャガチャガチャガチャ!!
 セリフは最後まで終わった、でも外れないサオリの絶望。外れるわけがないのだ、音声認識なんて最初からないのだから。マイクはただサオリの痴態を録音して、カメラはただ、サオリの受胎の瞬間を映しているだけなのだから。
「ああぁ、出る!! サオリの中に全部ぅぅ出すよぉぉ!」
「だめ!! ストップ! 待って! だめ!! やめてはずして!!!」
 すでにサオリは一則のチンポが射精の準備段階に入ったことを察知していた
 もうなりふり構わず、ぐるんぐるん回れるぐらいに、両手両足が縛られたところを振り回すように暴れるサオリ。なんとか、この密着している生殖器が外れないかと必死なのだ。
 外れるわけがない、構造的に外れない。そのうえ、少しでも射精時の入射角度が深くなるように、一則は腰を強く抱いている。
「イク! イク! サオリ、オレノ、コドモヲ、ハラメェエエ!!」
「ぎぃいやあああああああああああ!!」
 腰を抱くようにして、精子をせき止めている一則のタンクはついに決壊した。
 最初に、ドピュ!
 サオリの中に熱い熱い、飛まつが一筋、飛び散った。
 それが分かったのか、サオリは小さく「あっ」と息を吐いた。
 すぐに続けて、爆発!
 ビクゥビクゥビクゥゥゥ! ビキュブキュドピュドピュ!
 まるで、それ自体が別の生き物のように一則の巨根がサオリの中で暴れる。
 激しく爆ぜる、飛び散る、白く染め上げていく。
 肉棒からの振動は、ぴったりと張り付いた肉襞が全て感じて受け止めていく。
 ピュッピュドピュ! ピュ! ピュ! ピュル!
 弾けるような勢いで、飛び込んでいく元気な精液。その精子の最後の一滴までも、余さずサオリの中へと放出されていった。
 サオリを妊娠させる、一則のデブキモ中年遺伝子の流星群。
 それを最後の合図に、サオリの震えていた両手両足がガクンと力なく落ちた。
 無抵抗になった、サオリのオマンコの一番奥底を貪るように。排卵が近くて、半開きになった子宮口へと押し込むように、何度も何度も駄目押しの射精。
 サオリの膣は子宮は、黄みドロの精液でいっぱいいっぱいになり、溢れだした。
 一則とサオリをつなげている腰はぴったりと密着し、足は上に向いているので、重力にしたがってその粘液は落ちるしかない。
 ドプドプドプと、粘り気があるので滲みこむように、子宮口から子宮の中へとオタマジャクシ満載の黄みドロ精液が落ち込んでいく。サオリの中へ、中へとしみこんでいく。いや、サオリ自身の子宮が膣が自ら美味そうに飲み込まんとしているのだ。

 口を半開きにして、力尽きているサオリはまるで気持ちよくイッっているようなアクメ顔にも見えた。ひどい有様だが、それはそれでいやらしい。そんな涎を垂らしている口を舐め取るように、一則は口づけていって、舌を絡めた。
 すでに、サオリの舌も抵抗を失いだらんとしている。唾液を味わうも、口内を嘗め回すも一則の思いのままだった。
 そして、その間もドクゥドピュドクドピュ! 長い射精は続いていた。
 やがて、最後の一滴までもを出し切るように、腰をガクガクと震わせると、一則はぎゅううとサオリの身体を抱きしめた。
 普段一則が仕事では見せることがない、一仕事終えた男の顔をしていた。爽やかだが、すごくブッ細工だった。
 そのブッ細工に思いっきり種付けされてしまったサオリは。どんな気持ちなのだろう。ただ、いまは性も根も尽き果てて、ボロボロになっていただけだった。頭は真っ白になって正常な思考は失われていた。

 お互いに、ハァハァと息をついてどれぐらいのときが起っただろう。
「はやく……どいて……」
「ああ、早崎さんごめんぼく寝ぼけててさ。ダッチワイフだと勘違いして」
「いいから……とにかく、はやく、どいて、はずしてぇ……」
 ニュプっと引き抜いて一則は起き上がった。
 ドロリと、一則のチンポの先から精液が垂れ下がり、ツーとサオリのマンコと線を引くようにネチョる。引き抜いた衝撃で、入り口のほうにかかった精液が筋を引いて垂れていったが、一則が出した大量の精液のほとんどは中に……。
 早崎サオリの女性器は、いったいどれほどの量を飲み込んでしまったというのだろう、お尻が持ち上げ気味に縛られているせいで、サオリのマンコからほとんど精液は漏れださないのだ。
「あの、ぼくちょっとトイレにいってくるね」
「あっ! まって!」
 そういって、ドスドスと一則は巨体をふりくるようにして出て行った。
 そのまま、一則はトイレではなくバスルームへ。
「あぁっ! そんな場合じゃないの! 早くかきださないと! ほんとに妊娠しちゃうから! いやぁ!!」
 サオリの叫びはむなしく部屋に響く。
「桑林課長!! 早くもどってきて、中を洗わなきゃ!!! 中を洗わせてお願いよぉ!!」
 家中に、サオリの叫びは延々と響いていたが、一則はそんなサオリの叫びを無視するように一人でバスルームに入り、シャワーのノズルを回した。シャワーの激しい水音が、サオリの心からの叫びをかき消した。
 いまごろ、サオリの最奥に出された自分の分身たちが、子宮にたっぷりと注ぎ込まれてゆっくりと卵管まで泳いでいって、そこから飛び出たサオリの卵と一緒になって受精していると考えると、一則はあれほど出したのにまた腰の熱いものがムクムクと屹立するのを感じていた。
 さっぱり汗を流して出てくると、勝手にサオリのタオルを使って身体を拭く。
 古い一軒家にあれほど響いていた叫び声は、ほとんど聞えないほど小さくなっていた。階段から、声を枯らしたかすれた叫びをあげるサオリの声がかすかに聞える。たまにドンドン音が鳴るのは、きっと気がついて欲しくてベットの上で飛び跳ねているのだろう。
 妊娠をより確実なものにするため、寝そべった姿勢。つまり、いまサオリが縛られている姿勢だ。その姿勢で、三十分は放置しておくのがいいという。すでに三十分は経っているような感じだが、念には念をという。
「さっさと受精してしまえ」
 そう呪いの言葉を二階のサオリに投げつけると、一則はそのまま一階の座敷で座布団を枕に寝転んで、高いびきをかき始めた。悲痛の叫びをあげるサオリを放置して、眠ってしまったのだ。

 早朝、カーテンから差し込む光で一則は目を覚まして起き上がった。窓の外では、庭で小鳥がチュンチュン囀っている。畳の間でごろ寝したとは思えないほど、頭も身体も充実していてスッキリとしたいい目覚めだった。
 まるで、新しく生まれ変わったような若さが身体に満ち満ちているようだ。
 ゆっくりと畳の上で寝たので少し堅くなっている身体を解きほぐすようにして伸びをすると、階段を登っていく。もうサオリの叫びも、音も聞えない。一晩も騒ぎ続けられるわけがないのだ。
 がちゃっとサオリの部屋の扉を開けると、電気が付けっぱなしだった。
「ごめん、早崎さん電気つけっぱなしでもったいないよね」
「…………そう……ぃう……」
 ああ、たぶんずっとこの体勢で疲れたんだろうなと一則は少し可愛そうになった。好きな女の子にこんな仕打ちができる自分は思ったよりもずっと残酷だなと一則は少し自分でも驚く。陵辱の限りを尽くしたあとに、そんな感慨など意味を持たない。
 もしかすると、一則はこれまでひどい容姿で女性から受けてきた扱いの復讐を、サオリに向かって発散しているのかもしれない。そうとでも解釈しないと、罪悪感が沸きあがってきそうだった。それを押さえつけて、心にもない謝罪の言葉を口にする一則は自らの意思を邪悪に染めている。
「ごめんね、あのあと拘束を解くのを忘れて寝ちゃってて」
「……はやく……といて」
 そこで、一則はサオリのオマンコからほとんど出ていない精液を確認すると、お尻から紐が伸びているのに気がついた。あれ、これってなんだっけかなと。
 引っ張ってみる。
「くっ! なにっ! あっあっ……」
 息も絶え絶えだったサオリが一瞬元気になったようだった。あっ、またガクッとした。
「あー、これアナルビーズだ」
 入れたのをすっかり忘れていた。また力を込めて引っ張ると、ぽこっとアナルの中からビーズが飛び出した。潤滑が足りないから、肛門を傷つけてしまうかと少し心配になったが、よく見ると腸液でドロドロになっている。
「あっ……なんでそんなものいれてんっ! あっ! いっあ!」
 ぼこっ、ぽこっ、結構ソフト素材なので簡単に抜ける。あと少し、うんこの匂いが漂う。やっぱり、長く入れすぎるとよくないものなのだろう。
「自分にいれようとして、間違えて早崎さんに入れちゃったんだね、暗かったから」
 そういいつつも、どんどんポコポコ出していく。まるでカエルの産卵みたいだった。
「いっ! うっ! いっ! あっ!」
 何かの発生練習みたいに、抜くたびに声を出してくれるので面白い。楽器みたいだった。ニュルッと、最後の一つを抜き出す。
 その途端に、線が切れたようにガクンと身体を震わせて力を抜いた。
 その瞬間、プーーと軽い音を立ててサオリのお尻から屁がでた。
「あはっ、屁がでた」
「…………ううっ」
 サオリは、もう何かフォローを入れる気力もない様子だった。さすがに、罪悪感を感じるのかお尻を綺麗に拭いてやってから、さっさと拘束を解く。手足に少し赤みが差していたが、痣になるほどではないようで安心する。
 むしろ、こんな姿勢で一晩過ごしたことのほうが体力を奪われるだろう。意識を保っていられたのは、サオリの我慢強さなのか、催眠の副作用なのか。考えてもそれはわからない。
 とにかく、拘束を解くと、だらりとベットで横倒れになって動かなくなった。身体を洗わなくていいのかなと思ったが、それも別に一則にとっては大事なことではないのでほおって置く。
 マンコもむき出しに倒れていて、その接合部から少しずつ糸を引くように、ドロドロというよりトロリトロリという感じで、一則の精液と愛液の混合物が流れ出しているのが見えた。
 サオリのマンコから零れ落ちた大量の精液は、多少黄みがかっているだけで、ほとんど透明になってしまっている。愛液も精液も、時間がたつとその粘り気を失い色も透明に近づく。
 残酷なことだが、それだけの時間が経ってしまったということ。一則の精子たちは、サオリの最奥を犯し尽くして、その役割を終えている。
 きっと、もういまから洗っても結果は一緒。それは一則だけではなく、サオリにも痛いほど分かっていた。それなのに、被虐心豊かな一則は、サオリを言葉の刃で切り刻むようにあえて確認する。耳元でささやく。
「早崎さん、オマンコ洗わなくてもいいの?」
「…………」
 その一則の声に、フルッと一度だけサオリは震えた。
「ああ、もう一晩たっちゃったから、排卵してたら確実に受精してるから洗っても無駄だよね」
「…………」
 口を小さくあけただけで、声も出ないサオリ。精神的ショックと、肉体的な疲労で、本当に虫の息だった。
「このまえ医者で調べてもらったんだけど、ぼくの精子すごい元気なんだって、二十代並の運動量だって褒められたんだよ。だから確実に届いてるから、サオリちゃんのほうが排卵きちんとしてたら受精しちゃうね」
「……ぃぁ」
 たぶん嫌といいたかったのだろう。サオリが反射的に叫ぼうとして、声を振り絞ろうとしても、耳元でささやいている一則の耳に届くほどの声にもならなかった。
「受精しても、着床するとは限らないからまだわからないけどね。こんなことになっちゃったけど、もし妊娠してたらぼくは男としてちゃんと責任とるから安心して可愛い赤ちゃん産んでね」
「……死ね」
 今度はちゃんと聞えた。
「ところで、早崎さんは今日は会社休む?」
「…………総務に連絡しておいて……く……」
 そういって、サオリは一則が了解の合図を送るのも聞かずに、力尽きて死んだように意識を失うと、その身体は寝息を立て始めた。身体は汚されたままで。
 安らかではない苦悶の表情の眠り。それは辛い眠りできっと、夢も見る余裕すらないだろう。だがそれだけが、唯一サオリにとっては安らぎなのかもしれない。こんな状態で夢など見ても、きっと酷い悪夢にしかならないはずだからだ。
 一則はそんなサオリの最悪の様子を眺めて満足の笑みを浮かべると、途中でコンビニによって、朝食と昼食を買って出社した。
 資材課に行く前に、総務に寄り道して、総務係長にサオリが休むことを伝えると「なんでおまえが連絡?」と言いたげな怪しむ眼で見られた。
 まあ、いつものことだからあまり気にしない。いまの一則は、何だって許せてしまう。ヘタクソな口笛を吹きながら、いつもの雑務にとりかかった。最高の気分、今日は仕事がはかどりそうだった。
第二章「拒否拒絶」
「いい加減、起きてくれますか」
 裸の一則に抱きつかれたまま、朝から身動きがとれずにサオリは困っていた。体格差がかなりあるせいか、抱きすくめられるとサオリの力ではなかなかはずしようがない。
「あ……ううん、ごめん」
 ようやく起きてくれたようだった。あのレコーダーの暗示のおかげでサオリは最近特に寝起きがいい。なんだか、腰の辺りに少し重い違和感があるが、一則に強く抱かれていたせいだろうと思った。それを除けばまったくに爽やかな目覚めだといえる。
 それに比べて一則は、なぜか寝不足気味のようだった。
「なんで抱きついてくるんですか……」
「寝ると抱き癖があるんだよ」
「なるほど、それならしょうがないですね」
 相手に悪気がないなら、しかたがないと簡単にサオリは納得してしまう。

 そういえば、桑林課長、「通りすがり」「通りすがり」と、結局家に帰らなかったみたいだけど、朝食とか着替えとかどうするつもりなんだろう。そう考えて、まあ他人ごとなので「どうでもいいや」とすぐに思い直した。
 サオリは、最近すっかりさっぱりと細かいことは気にしないことにしている。そうしていれば、日々悩みもないから、健やかに余裕をもって生きていくことができる。ストーカー対策のおかげで、自分の神経質なところも治せて不幸中の幸いとはこのことだと、朝から楽しい気分で軽い朝食を作って食べる。
 サオリがトイレに行くと、下腹部の調子がやはりおかしかったうえに、陰毛が全部なくなっていたのだが、それも「まあいいや」で終わり。気にしなければたいしたことではない。おしっこしたら、不調はほとんど消えた。毛だってまたすぐ生えてくるだろう。見られて困るような彼氏も、いまはいないのだから。

 またいつものように始まって、いつものように終わり、家に帰って一人でご飯を食べてお風呂に入る。最近の違いは、一則が一緒に入るようになったということだけ。
「桑林課長……もうちょっとそっちにいってくれませんか」
「狭いからなあ……」
 浴槽のなかで、一則はもう調子に乗って身体を弄るようになっていた。浴槽は狭い、そして私たちは二人。それは、まったくもって満員電車で偶然身体が触れてしまうような、そんなどうしようもないことだとサオリは理解していたのだけど。
 一則に悪気はなくても、それに嫌悪する感情と感覚はきちんと持ってしまっているのだった。隣の人の匂いが気になるように、顔を近づけられると一則の肥え太った身体からは、中年特有の鼻を突く加齢臭がする。さらに、なんのつもりか舌を伸ばしてきて、嫌がるサオリの顔を口を嘗め回してくるのだ。
 本当に歯を磨いているのかと疑いたくなるほどの匂い、そして舌が自分の口の中を蹂躙するように、入り込んでくる。歯を食いしばってなんとか押さえるのが、サオリの唯一できる抵抗だった。
 古く慣れ親しんだ自宅の湯船というのは、命の洗濯、サオリにとって一日で一番リラックスできる空間であったはずなのに、ここで身体が綺麗になるどころか、汚されてしまうような気がして、早々に湯船からあがるのだった。

 念入りに身体を洗っているときも、一則の悪乗りは続く。シャンプーを終えてほっと一息ついたサオリの目の前に、一則の巨大なチンコがあって、叫び声をあげる暇もなく顔に思いっきり射精されたこともあった。眼も鼻も口も、ドロドロの黄色が混じる精液に汚されて「これは何かの病気になるんじゃないか」と不安に思うこともしばしばだった。
 身体を洗っていると、たまに前から抱きついてくることもある。どうもいつも身体を洗うのに使っているタオルとサオリが似ているらしく、間違えて身体をこすりつけてしまうそうなのだった。
 そうなると、そのたびに「私はタオルじゃありませんよ」と注意するしかない。押しのけたら素直にどいてくれるのだが、その数秒後また間違えて私の身体にすりついてくる。悪気はないと思っても、いい気はしないものだ。
 そうこうしているうちに、その行為はどんどん激しくなってくるし、なぜか一則の息もハァハァと激しくなってくる。もう、その勢いは一則の全身でもってして、サオリの全身にぶち当たってくるというもので、押しのける行動を取るどころか、なんとか自分が身体を洗っているという状態を保つので精一杯だった。
「ちょっと、桑林か……ぎゃあああ! だめぇ! 入ってます! 入ってますから! 早くどいて」
 そこで、初めて気がついたのだ。一則の巨大なものが、亀頭が隠れるぐらい、すでに半分も自分の大きく開かれた股の間にめり込んでいることに。
 最近、サオリは危機感が鈍っている。いくら一則の出っ張った腹や自分の出っ張った胸で見えないからといって、挿入されていて気がつかなかったなんて。
「もうすこし、もうすこしだから!」
 押しかえすのを諦めて逃げようとするサオリを、逃がさないように腰を掴まれてぐぐっと一則のほうにおしこまれた。すでに、一則のものはサオリの一番奥に当たっている。さすがにこうなると、サオリも挿入された感覚を味あわないわけにはいかない。
「あっ……あっ! だめぇ」
 逃がそうとおもって腰を引くと、そのたびに一則のエラの張った張りが、いつのまにかなじんでいた自分の膣壁にこすり付けられて、ググッと自分の中が裏返されるような快楽に打ち震える。
 そういえば、最近ごぶさただったからな、もう一年以上などと冷静に思考する余裕があるからこそ、このままだとやばいということが男の生理を知るサオリには分かっていた。一則は「もうすこし」といったのだ。もう少しで、破局が訪れる。
 ドンと手をついて、一則を前に押し返すように、自分を後ろの床に倒れこませるようにして、その一度食いついたら離さないという勢いの一則の凶悪な一物を、なんとかニュルンと抜くことができた。
 その瞬間に、目の前でプクッっと膨れ上がったかと思うと、盛大に一則は射精した。ドピュドピュドピュ!
 ビチビチビチッ! まるで顔に叩きつけられたような、熱を皮膚に感じる激しい勢いで、サオリの顔に胸に身体にと精液が振りかけられていく。ただ、しばらくサオリはどこまで射精するのかと。
 壊れてしまったように一則の亀頭の先から、粘液が止めなく飛び出す光景を、呆然と見つめていた。
「ああっ……もう少しだったのに」
「なっ……なにがもう少しなんですか、もう少しでたいへんなことになってたんですよ。女の子の中で出したらどうなるかわかってるんですか、桑林課長は! レイプするつもりだったんですか!!」
 これは、さすがに怒ってもいいだろうとサオリは思った。
「うーんタオルと間違えて」
「タオルに射精するんですか!」
「そうなんだよ……ぼくはいつも身体を洗ったあとにタオルで自分の股間を巻きつけるようにしてタオルの中で射精するんだよ」
「えっ……そうなんですか」
 そういわれたら、しかたがないような気がしてくるサオリである。なんだか怒る気も失せてしまった。それでも、それでも、間違いが起こらないように釘を刺しておかなければならない。
「だとしても、気をつけてくださいね……取り返しがつかないんですから」
「そのときは、男としてぼくも責任を」
「気をつけてくださいね」
「はい」
 その約束は当然のように、守られることはなかった。

 もうレコーダーを聞き始めてから半月以上になる、事前に貰ったお茶を飲むのだが、それも半分以上も残っている。すでに、入眠の儀式となっているこの行為は、するたびに気持ちが良くて次も絶対やらなくちゃと感じる。まあ、あたりまえだろう。それは、いつもサオリに最良の安眠をもたらしてくれているのだから。
 だが、そんな安眠も、隣に眠っている醜い男の行動によって妨げられることになる。

「うっ……うっ……」
 下腹部に強烈な、これはなんだろう痛み……違う。のしかかるような強烈な圧迫感、それは身体全体に感じる。股間には、熱に冒されたような……を感じてサオリは眼を覚ました。まだ夜だ。場所は自宅の自分のベットのなか、それは消したはずの煌々とついた明かりで分かる。
「なに……これ」
 予想外だったのは、自分が真っ裸であるということ。しかも、強烈にひどい格好をさせられている。足を大また開きにして両手両足が引きつったように上に吊り上げられている。手足がまったく動かない。頭を、ぐっと後ろにもたげて見てわかったのは、自分が黒い革で完全に縛られているということ。まるでSMプレイのような拘束具だった。
「桑林課長……やめ、て」
 思考が、事態に追いつくまえに本能的に拒絶の声が出た。のしかかっている圧迫感は、一則が自分に覆いかぶさっているからだ。巨漢デブの一則がのしかかっているのだから、いくら相手が手で自分の体重を逃がしているといっても、強烈な圧迫感があって当然だ。そうして、まるでセックスしているようなこの体勢は。
 予想通りセックスしていた。いや、相手の意志に反してする性行為は強姦と呼ぶはずだ。サオリは、レイプされていた。
「ハァハァ……いや、違うんだよ」
「なにが、違うんですか! 私を縛って裸にしておいてっ!!」
 息を荒げていて、そんなに腰を振っていて彼は何をしているのだろう。ここからは、自分の胸と、憎らしい一則のでっぱった腹に隠れて見えないが、確実にこの男のあの凶悪なあの蛇みたいな肉棒が、自分の大事なところに突き刺さっているのは、明らかだった。誤解も減ったくれもないはずだ。だんだん頭がはっきりしてきた。
 拘束されて、無理やりセックスされているのを、レイプ以外のなんというのだ。暴行? 陵辱? 強姦? 相手の意識がないときにするのは準強姦罪だったか。とにも、かくにも、サオリは一則を男としては最大限に嫌悪しているのだから、これが合意の上の行為というのは自分が薬物で理性を奪われたと仮定してもありえないことだった。
「ぼくは、夜たまに自分を拘束して遊ぶことがあるんだけど、暗かったから自分と間違って早崎さんを裸にして、拘束しちゃったんだよ」
 そういわれると、そういうこともあるかもしれないと納得した。でも、汗をかきながらハァハァしながら、私に全力で圧し掛かっている理由にはならないと気を取り直す。
「そっ……そうなんですか、でも明らかにいま、あなたは私にのしかかってますよね。ちょっとっ……あっ……話してるのに、腰を動かさないで! あのつまり、そのこんな体勢では見えないんですけど、あなたは私に……挿入してますよね」
 言葉がでてこなくて、挿入なんていってしまった、サオリも焦り混乱している。
「それが、何とかしようと思ってこうなっちゃったの」
「どうして、こうなるんですか!」
 本当は理由なんて聞いている場合ではないのに、話かけられると逆らえない。
「間違って縛ってることに気がついて、電気をつけて拘束を外そうとしたんだよ。そうしたら、蹴躓いて、たまたま、偶然、ニュルッとぼくのチンコが早崎さんのオマンコに入っちゃったんだよ」
「あっ……だから、腰を押し付けないで、どいて!」
「だから、退こうとして手をついたんだけど、運動不足で手に力が入らなくて」
 そういって、一則は顔の横に手をついて起き上がろうとして、プルプルと手を震わせてまたサオリに、圧し掛かる。重たいし、それ以上に股間にやばい感覚がせりあがってくる。引かれるときすら、カリが膣の肉を削りだすようにやばい感覚なのだ。こんなことを、寝ている間になんどもされていたなら、いまの自分の身体の熱さも理解できる。
「わかった、わかりましたから、もう腰を動かさないでください!」
 快楽と苦痛に、ガンガンする頭で考える。これをどうすべきか。一則は体力がないからどけないという、だったら自分がどくべきだ。
「ううっ……私がどきますから、この拘束を解いてくださいよ」
 ガチャガチャと、力を込めて動かしても手首と足首がキュッと締まるだけでまったく身動きができない。あがけばあがくほど、きつく締まるみたい。
 少なくとも、引っ張ってなんとかなるような、ちゃちな拘束じゃないみたいだった。
「ううっ……気持ちいい」
 サオリが動くたびに、手と連動している足が動いて、腰までもが動いてしまうようで、それがサオリの中に深々と突き刺さっている一則の大きなペニスに快楽を与えているようだった。
 ムクムクと、まるで自分の中で芋虫がうごめいてるみたいに、大きなカリ首をもった肉棒がうごめいているのが分かる。それを自分の膣は、単純に肉体的に反応してキュンキュン吸っているのだ。
 男のモノを息子といったりするが、それは自分の意志に関係なく動くからだ。そういう言い方をしたら、サオリの膣も娘みたいなもので、快楽を刺激されると自分の意志とは関係ないところで、蠢いてしまうのはしかたがないことだった。
「はっ……だめっ……出したら駄目ですからね!」
 サオリは賢い女性だった。自分の吐息すら、一則を射精に導いてしまうとわかっているので、なるべく息を潜めて刺激しないようにしながら、懇願する。
「わかりました……でも」
「動かないでください、なんとか拘束を開ける鍵みたいなのはないんですか」
「ああ、そうだ。緊急時のために、早崎さんの声の音声認識で、鍵が開くようになってますよ」
「音声認識?」
「ほら、顔の右のところに紙が書いてあるでしょう。そのセリフを、マイクに向かって叫べば開錠する仕掛けになってます」
 気がつかなかった、サオリの右側に確かにでっかく紙で文字が書いてある。マイクもちゃんと出ていて……あっちにあるのはカメラ。
「ちょっと、あのカメラ」
「あれは機能してません、マイクだけです」
「なら……いいんですけど、このセリフなんですかっ! まるで官能小説みたいな」
「ぼくの趣味だったんです、まさかこうなるとは思っても見なかったので」
 緊急時に使うシステムだという、たしかにこうなるとは思ってなかったのだろう。それにしたって、よりにもよってこんなセリフにしなくていいのに、サオリは少し一則を恨むがしかたがない。
「ううっ……こんなセリフ」
「やっぱり、ぼくが」
 そうやって、一則はまた腰をゴソゴソと動き出そうとする。その微細な動きも、ぴっちりと挟まっている堅く張った一則の亀頭のエラが、サオリの股をえぐられるような、ゾワゾワとした感覚をもたらす。きゅっとあげて、ドンと腰を下ろすだけで、サオリの奥まったところがジュリ!っと巻き取られて、たまらない。
「あっ……だめ! まって! いいから桑林課長は落ち着いて、出さないようにとにかくこらえてください、動かないでください」
「はい、ぼくは早崎さんの指示にしたがいます!」
「これ結構ながい……ほんとにこれ全部読まないと外れないんですか?」
「そのうちのどこかが、キーワードになってるはずなんですよ」
「うう、それじゃ……どっちにしても全部読まないとわからない」
「そうだね、お願いします」
「うっ……うっ……一則さん……私のおっぱ……吸っ……ください」
 サオリは真っ赤になりながら、ほとんど聞えるか聞えないかの音量で、まるでエッチな詩のようなセリフを読み上げる。
「ああぅぅ、愛してる、愛してる、もっと私の……ぉ……ん、ごりごりして、ああ……きもち……お……い……一則さん、一緒に……私の中で……ぉ……ん……たくさん……て。私を…………させて」
 頭の中でセリフを知覚するだけで辛いというのに、とぎれとぎれで極力意味をもたさないようにサオリは読んでみた。ニマニマと、いやらしい笑いをしながら、サオリに圧し掛かりながら目の前のデブ男は、その様子を舐め取るように観察している。
 小さく、あまり大きく動いてしまうと、また刺激になってしまうから、本当に小さく動かしてみたけど、ガチャリと音がして拘束は全然解かれていない。
「解けてないぃーー」
「声が小さすぎたんですよ、早崎さんがなにいってるか聞えなかったもん」
 サオリは目の前でニマついている一則をキッと睨みつけた。サオリのなかで、何かがブチ切れた。サオリは頭で、ここは田舎の一軒家だから声が響いても誰にも聞えないという計算をして。そうして顔から上半身にかけて、りんごみたいに真っ赤に高揚させて、踏ん切りをつけた大声で言い放った。
「うぁぁぁあ! 一則さん! 私のおっぱい吸って! 愛してる! 愛してる! もっと私のオマンコごりごりして! ああオマンコ気持ちいい! オマンコいっちゃう! 一則さん一緒にいって! 私の中でオチンポミルクたくさん出して! 私を妊娠させて!」
「うっぉぉお!」
 ものすごい大声と早口。一則は驚いて肛門をすぼめて、中で一物を少し小さくさせた。普段大人しい、サオリがこう出たのはびっくりしたらしい。
 サオリは、ガチャガギャガチャといらだたしげに鎖を鳴らす、引っ張るたびにビチィと革はまとわりついて、締りが強くなるようだった。
「なんで! なんで外れないの!」
「早口すぎたんでは……」
「なんで、私のおっぱい吸ってるんですかぁ!」
 いつのまにか、覆いかぶさっている一則がおっぱいに吸い付いている。
「だって、吸ってっていったじゃないですか」
「それは解除のためのセリフでしょ!」
「ああ、すいません頼まれたんだと思って勘違いを」
 そういって、ニヤつく。勘違いならしかたがない。すでに挿入されているのに、いまはそんなことを気にしている場合ではなかった。とにかく、解除を。大丈夫近所には聞えない、もう恥ずかしがっている場合でもない。早すぎたんなら、かつぜつよくはっきりと叫べば。
「一則さん!」
 キーワードはどれかが反応するはずだ、一言喋るたびにサオリはガチャリと鍵のついた鎖を引っ張る。そのたびに、手足が繋がっているのでサオリの身体全体が揺れて、サオリのでかいおっぱいもプルンと揺れる。
 その揺れを心地よさそうに感じる、というか圧し掛かっている一則。
「私のおっぱい吸って! 違うだから違うから!」
 一則は、右のおっぱいを持ち上げるようにして、殴りながら左のおっぱいに口をつける。二十三歳のまだぴちぴちのおっぱいであるので、自慢の張りのある胸はこんなときでも重力に逆らって上に向いている。だから、一則も吸いやすいし弄りやすい。なにが災いするか分かったものではない。
「愛してる! 愛してる!」
「ぼくも愛してますよ」
「違う、セリフだっていってるでしょう、雰囲気つくらないでぇ!」
 また、鍵をガチャリと動かす。これも違う。
「もっと私のオマンコごりごりして! 違う……あぁぁあぁああ違うから!」
「気持ちいいですよ」
「なんで起き上がれないのに、腰は動かせるのぉ!」
「ああっ……出ちゃいそうだ」
「やぁは! ストップ! ストップとまって!」
 手足は縛られているので、サオリは口で止めるしかない。
「ああオマンコ気持ちいい! いやゃああ、もうやだ!」
「気持ちいいんだね」
「だから、違うっ! オマンコいっちゃう!
 手足を振り回すようにして、ベットの柱に繋がっている鎖を鳴らす。その力は、もうなりふり構わない勢いで、ベットがぎしぎしとゆれた。当然手足だけではなくて、太ももも腰も足も身体中が全てゆれて、当然のように腰が繋がっている一則の快楽へと還元される。なかで一則の男根がはじけるように、ニュプニュプとゆさぶられて、ピクピクと生物的に震えながら、その強度を増していく。
 その数瞬、射精にもう一刻の猶予すらないことをサオリは悟る。危機感は極限に達していた。それが皮肉な結果として、一則とサオリの気持ちを高めてしまう。
「一則さん一緒にいって!」
 もう腰を振っているに等しい勢いで、手足を動かす。これも違う。
「ああっ……一緒にいこう!」
「だからぁああ、私の中でオチンポォォミルクたくさん出してぇぇ!」
「だすよぉ! サオリのなかで射精するよぉ!!」
 サオリは、もう自分が手足を振っているのか、腰を振っているのかすら分からない。子宮からせりあがってくる感覚に、サオリの頭がぽぉっとしてきた、わかる知覚するまえに、わかる、からだでかんじる。ガンガンと勢いを込めて、一則が腰を振っているのを感じる。ドンドンという、自分の一番奥を叩かれるような痛いような悦楽――迫り来る限界――。
「私を妊娠させて!」
「ああっ、サオリ! 出すよぉぉ!!」
 最後のセリフ、サオリは気が狂いそうな気持ちで、それでも最後までいいきった。やりきった。ガクンと身体を振るわせるように、鎖を引っ張る。外れない。
 目の前では、豚みたいな醜悪な顔を気持ちよさに歪ませて涎と鼻水をたらしている。びちょと、一則の半開きの口から垂れた涎がサオリの顔を汚した。笑ってしまうような、醜さ。びとんと、腰を振るうたびに一則の垂れ下がった腹の脂肪の塊が、サオリのほっそりとした腹に叩きつけられる。
 その勢いで、いまサオリの中に――この豚の不釣合いなほどでかいチンポも、深々と突き刺さっている。
 なぜ外れない、なぜ外れない。マイクの集音のせいだろうか、こんなに大きな声で叫んだのに、まだ音量が足りなかったのか。
「私を妊娠させて!! 私を妊娠させて!!! いやぁー外れて、外れてぇぇええ!」
「うん、サオリちゃんいま妊娠させてあげる!!」
 もう限界、サオリは限界。でも、案外一則は持った。まだ出されてない。一則はぐっとおっぱいを持ってもちあげて、腰をグンッ!、グンッ! 突いてくる。もう、精嚢から精液が流れ出してきているのかもしれない。
 余りにも叫ばされたのでサオリの口も、泡と涎で汚れてひどい顔だった。それはサオリの自覚していない、自覚したくない、密やかなアクメの影響もある。このひどい状況でひどい状況だからこそ、サオリの女は感じてしまっていたのだ。
 いま鍵が開けば、いまの瞬間に、ちょっと腰をはずせば、外にぃ! 外にぃ!
 手足と腰を震わせながら、闇夜に響き渡るほどのサオリの絶叫!
「いやぁぁあああ、やめてぇえええ!! 私を妊娠させてぇぇえ!!!」
「出す! 出す! 出す! サオリちゃん孕んで!!」
 サオリは力尽きて、最後に体重をかけて落とした手足も、強い力で引っかかってる鎖によってガチャリと音を立てただけだった。

 ドクンッ! ドピュ! ドピュ!

 熱い飛まつを中に感じた。第一射!

 あっ、出されたと思ってサオリは頭が可笑しく成りそうだった。いやらしい笑いの醜い豚の顔が近づいてくる、叫び追った力尽きたサオリの無抵抗な口の中に唾液をタップリと絡ませて長い舌を差し込んでくる。
 臭い――臭い臭い、頭が真っ白。認識したくない。分かりたくない。

 ドピュ! ドピュ! ドジュルドジュルドピュウ!

 腰を浮き気味にして、腰と唇を密着させて、流し込んでくる。汚い唾液と精液を、孕めと、サオリの中に。サオリの奥に。

 ドピュドプドプドプピュピュ……

 マヨネーズの中のチューブを全部押し出してしまったように、巨大な亀頭がその鉄のような圧力を失ってしぼんでいくのが分かった。サオリのお腹の中に、その代わりにタップリと精液が放出させている。
 キスされた――この獣みたいな吸いつきをキスと呼べばだが――キスされた口はべろんべろん、サオリが力尽きているのをいいことに、舌の奥底まで、嘗め回されて味あわれている。一則が上なので、吸っても吸っても落ちてくる、一則のばい菌交じりの臭い唾液が、ドロドロと絡み合っている舌を伝って、サオリの中に落ちてくる。
 上から下から、汚されている。

 しばらくそうやって、動かなかった。サオリは動く気力すらなかったから、一則は人生で最高の射精の余韻に浸っていたから。

 ここらへんで、サオリの記憶はあいまいになる。あいまいになることが許された。

 気がついたときには、部屋の中に醜悪な、セックスが終わったあとのすえた匂いが漂っていた。好きな男に抱かれた後なら、甘美なものにも感じるそれは、いまのサオリにとって地獄の匂いだった。自分は、落ちた。そして汚れた。
 鍵は取り外されて拘束もはずされた。
 マイクがなんで音声を拾わなかったかと聞いたら、マイクの調子が悪かったといわれた。サオリは、ボロボロで文句をいう気力すらない。役立たずのマイクをサオリが睨むと、カメラのレンズがキラリと光った。

 とりあえず、二人は身体中をティッシュで拭いた。サオリもようやく、頭がはっきりして理性を取り戻してきた。とりあえず、何はともあれ身体を綺麗にしないといけない。勘違い、間違いならサオリに、一則を非難するつもりはない。
 あれは、事故だ。しかたがない状況だったのだから。

「ぼくも男だから、責任取ります!」
 その瞬間サオリに怖気が走った。この男は何をいいだしたのだ!
 ぞっとした。サオリはぞっとしたのだ!!
 責任ってなに、付き合おうとか、婚約しようとか、結婚しようとか。人間同士の男女の間ではそのような話だ。それをこの豚が言ったのか!?

 一則の青白くデブデブと太った、悪臭のする顔を冷たく見つめる。その透けそうな薄い髪を眺める、不健康な肌を否応なく自覚する。サオリは容姿で人を差別するつもりはない。そんな差別主義者じゃないと、自分は優しい人間だと、善人だと、無邪気に信じていたから、これまで会社でも意味嫌われている一則に普通に接していた。
 しかし、こうして裸で向かい合っていると、眼を合わせて直視するだけで、心理的な抵抗を感じないわけにはいかない。自分にも明確に醜い男性に対する差別心があることを知った。いくら容姿にこだわらないといっても、ここまでなら大丈夫。ちょっとここからはいくらなんでも、私にも無理という限度があることを知った。そして、一則はその限度を遥か彼方に越えている。いまのサオリには、一則が豚に見えた。豚を愛することは出来ない。豚と人間は交配できない。
 その嫌悪感は、レッドラインを遥かに超えて、デットラインに到達していた。この男の精液が自分の中に入っている。その現実の醜悪さに吐き気がした、その嫌悪は悪意を孕むに十分だ。そうして自分の良心が、首を絞められて窒息死したのを知る。

「…………それは無理です」

 一則への拒絶を断定。完全な断定、完璧な断定、終わり。

 一則がこれからどんなに頑張ろうと、出世しようと、お金持ちになろうと、立派な業績をあげようと。命を懸けて車に轢かれようとする子犬を助けようと、線路に落ちた老婆を身を挺して上に担ぎ上げようと、医師として戦地に赴き、硝煙に塗れながら傷ついた多くの命を救わんとしても。死して英雄として讃えられても。

 それは形容上の問題ではなく物理上の問題として一則を男性として見るのは『死んでも無理』だった。

 人間としての尊厳とか、名誉の回復とか、汚名の挽回とか、そういうものの意味が壊れるデットラインを超えている。だって桑林一則は、サオリには人間に見えないもの。下等生物の虫けらだもの。

 たぶん、危険日じゃないはずだ。まったく安全というわけでもないけど、出来たら降ろそう。できてしまったら、何の罪もない赤ん坊の命を殺そう。誰にも愛されない命なら、それは地に這う虫けらと変わらない。自分は何の感情もなく、ただ虫けらをひねり潰すように、私は殺人者になろう。そう一瞬で決意できてしまった。

「それは無理です」

 それが、サオリの絶対的な拒絶だった。取り付く島もない、地獄のような空気。
「でも……中でだしちゃったから妊娠するかも」
「黙れ……一回ぐらいなら、大丈夫。すぐ身体洗ってきます」
 本来なら中で出しても大丈夫なんて、男が言うセリフなのだろうが。サオリの心は、もう冷え切って死んでいた。年長者への配慮も、会社の一応上役に対する配慮もない。嫌いな男が目の前にいる、いまはそれだけ。
「いま、黙れって……」
「忘れろ…………忘れてください」
「ううっ……サオリさんっ」
「なれなれしい! 名前で私を呼ぶな!」
「早崎……さんっ……」
「何の因果か、男女が同じベットに寝てるんだから天文学的確率で間違いがあることは、もうしょうがないです。諦めました。でも忘れてください、二度とないようにしてください、そして死ね!」
「そんなっ」
「わかりましたね!!!」
 そういって、早々にサオリは風呂に入りなおして身体と中を全力で綺麗に洗浄した。ドロドロと自分の中から流れ出てくる精液が止まらなくて。気がつくと、シャワーを浴びながらワンワンと泣いていた。自分が哀れで可哀想だった。サオリがもどってくると、疲れたのかいびきをかいて大の字になって一則が寝ていた。湧き上がってくる殺意を非合理的なものとして無視した。
 サオリは、何も考えない。
 サオリは、何も考えないで、ベットの下の端のほうに眠った。眠れるものなら、永遠に眠り続けていたかった。それでも、残酷なあのレコーダーの催眠効果ですっきりと朝早くに目が覚めてしまうのだ。
 それは、肉体的にはすっきりと最高の目覚め。精神的には最悪の目覚めだ。
第一章「眠姫残酷」
 桑林一則。四十二歳独身、食品会社で資材課長を務めている。
 見事に禿げ上がったバーコードヘヤー親父である。若くもないので、若禿げというべきではない。ただの禿だ。あと短所をあげれば、アブラギッシュなデブで短足で加齢臭がする。しかも、生来の口下手のうえに、あまり親しくない人と話すと緊張してドモってしまうという会話のハンディキャップまで抱えている。
 別に統計を取ったわけではないが、社内の不人気男性職員ランキングを決めればダントツ一位に輝くだろうことは自他共に認めるところだ。
 本来なら、役立たずの社会不適合者一直線であり、リストラされて無職になったうえで「生きているのが嫌になった」と、放火をしたり山手線に飛び込んだりするところだが、社内で生き残っているのにはわけがある。彼には、たった一つ特技があった。
 それは、無駄に記憶力がいいという点である。いまより二十年前、普通に入社したものの深刻なコミュニケーション不全であることがすぐ発覚した彼は、まだ景気がいい時代ということもあり、すぐに首にならずに各課をたらい回しにされた。そうして、どうしようもない社員を押し込めておく、資材課で彼の才能は花開いた。
 特別なサイズの蛍光灯から、すでに資料保存期間を終えて、ほったらかしになっている過去の決算書類の一枚に至るまで。彼は、会社の倉庫の資料と資材の配置と場所を全て把握する記憶力を持っていたのである。
 何か入用なときは、彼に聞けばすぐに取り出してくれた。これは便利ということで、不景気になって資材課の仲間が、一人去り二人去りするリストラの嵐の中で、彼だけが生き残ってこれたのである。
 そうして、気がつくと資材課に一人ぼっちになっていた。それでも、彼がいれば仕事には支障がない。毎年たった一回、棚卸の時期だけが彼が地味に活躍するときであり、あとは決算時期に古参の事務員から見つからない書類を尋ねられたりする以外は、社内では空気として扱われている。
 そんな彼だが、なぜか社長からは縁の下の力持ちとして一目を置かれており、たった一人の部署なのに課長待遇で最低限とはいえ、管理職級の給料を貰っていた。一人身で金の使い道もないので、小銭も溜まっている。会社がもう少し大きくて、ちゃんとした資材管理システムが導入されていれば、彼の仕事はなくなって失業していただろうというのが彼に対する周りの評価であった。古い会社で、OA化が進まないおかげで辛うじて生きている、それが時代遅れのコンピュータ人間、桑林一則なのである。

 話は、そんな一則が新入社員だった総務部の早崎サオリに恋をしたことに端を発する。総務は、雑事的な仕事もあるので一番若いのサオリは、資材課にもよく訪れていた。会話も何度もしたことがある。全て「あれはどこにありますか」という仕事の会話だったが。他の女性社員が、必要なときにだけ明らかに嫌悪の感情むき出しで、必要最低限の会話を心がけているのに、サオリは新入社員ということもあったが、一則にも分け隔てなく話しかけてもくれる、会ったら名前を呼んで挨拶もしてくれた。
 若い女子社員というだけでも、小さな会社でサオリが歓迎される理由としては十分なのだが、少し小柄で目鼻立ちの整った可愛いタイプで、柔和で朗らか。相手を立てる、控えめで親しみやすい性格の彼女はとても人気があった。
 一則にとっては、彼が持つ女性への憧れを凝縮したような女の子に見えた。艶やかな黒髪を肩当たりまでさらりと伸ばして薄化粧、清楚でさっぱりとした面持ちの大人しい娘というのが一則の第一印象。しかも、話してみるときちんとした自分の考えを持っている芯の強い部分もある。きつい性格かと思えば、時折見せる優しげな笑顔が愛らしい。そして、一番のチャームポイントは、クリクリとしていて黒目勝ちな大きな瞳だろう。眉が若干太めなのもバランスが取れていて、サオリの容姿を引き立てている。一則は彼女を見つめていると、引き込まれそうな気持ちがした。
 そんな、サオリに一則が恋をするのは、まったくもって仕方がないことかもしれない。つりあいがとりようもないから、玉砕するに決まっているにしても、口説いてみたらいいじゃないかと普通は思うだろう。だが考えてみて欲しい、そんな勇気がないからこそ、彼は彼女いない暦四十二年なのだ。
 他の男性社員がサオリを口説いたと聞けばあたふたし、諦めきれずウジウジと彼女に付きまとい、鬱屈した性欲をストーカーという犯罪的な行為へと代えて、悪い方向に自分を駆り立てていく彼の姿はどこまでいっても浅ましかった。
 性格上の欠陥が招いた結果とはいえ、一則もストーカーに成り果てるとは自分でも情けなかった。このようにして、一則の密やかな悲恋は、どんどん悪いほうに転がり落ちていって、最後には何らかのちんけな性犯罪で会社を首になった上に逮捕という悲しい結末に終わってしまうかに見えた。

 そんなある日、一則はこんな小さな広告を見つけた。

『あなたの恋愛を必ず成就させます――性格改善コンサルタント事務所』

 この自分の鬱屈した性格と状況を変えたい、そういう一心で思い切って事務所の門を叩いたのだが返答は意外なものだった。

「あなたではなく、相手の性格を改善するのです」
 所長だという革張りの豪奢な椅子に腰掛けているまだ若い男は、そんなとんでもない話をしてきた。とても信じられない話だが、一則のような醜いおっさんにも、ちゃんと目を見て優しく話しかけてくれるこの人に任せてみようと思った。
「前金で百万、成功報酬としてもう百万です。払えますか」
 そういって、不敵に男は笑う。いきなり大金を要求されて普通なら怯むところだろうが、この日の一則には覚悟があった。本当にサオリが手に入るならその三倍出しても、いや自分の貯金を全部はたいても惜しくはないと、そこまで一則は思いつめていたのだ。ストーカーの執念というのは時にものすごい力を発揮する。
 前金の百万を払うと、男はすぐに動き出したみたいで、どうやったのかサオリの個人情報を調べあげてきてくれていた。
「あのでかい家に一人住まいです、結構な資産家ですね」
 そんなことは一則には関係ない。金が欲しいんじゃなくて、彼女が欲しいのだから。
「学生時代は、付き合ったことがあったみたいですよ二回だそうで、性交渉までいってますね」
 そうだよな、あんな可愛い娘だからと一則は落胆する。
「でも、いまはフリーみたいですね。おそらく両親が死んだ時期に前の彼氏と別れたので、そのことを引きずってしばらくは恋愛をする気がないのでしょう」
 おおーと、俄然意気が上がる一則。
「これから、彼女の精神は徐々に催眠に汚染されて現実から浮き上がっていきますからね。その状況をうまく利用できるかどうかはあなたしだいです」
 電話帳ぐらい分厚い大量の資料を受け取り、こんな面倒くさいことをしなくても、催眠術が使えるなら「ぼくを好きになる」とかけてくれればいいのにと、ぼやく。
「あなたが思っているほど……簡単なことじゃないんですよ、その資料ちゃんと読めばわかります」
 一則は、資料を丹念に三度も読み返し、できることとできないことを知った。
「仕事とはいえ、あなたみたいな人を手助けするの嫌いじゃないですよ。偽善の慈善よりはいくらか楽しい……土産話と一緒に成功報酬の百万を持ってきてくださるのをお待ちしてます」
 そういって、若い所長はやけに人懐っこい笑みを浮かべるのだった。

 催眠の効果があって、ガードがとても甘くなったサオリ相手に、下着に悪戯したり風呂場を覗いたりして楽しんだ、一則。とがめられないために、行動はドンドン大胆になっていって、ついには家に侵入して脱衣所で使用済み下着(青いレースの布パン)を一物に撒きつけて、しごいているところで、風呂上りのサオリに発見されてしまうのであった。
 まだ暖かさの残ったパンツに気を取られたのが敗因であった。絶体絶命のピンチといえたが、風呂上りで水気を含んでテラテラしているサオリの裸体をこんなに前でみるのは始めての経験で、極度の緊張もあいまって被せてあるパンツのクロッチの中で、さらに亀頭が膨れ上がるようにしてビクビクッとする一則。
 そのせいなのか、緊張なのか、すぐ弁明しようとしてやはりつっかえてしまう。
「桑林課長……」
「やっ……やあ」
 誰何の声に、なんとか挨拶するのが精一杯。
「ストーカーって、桑林課長だったんですか」
「ちが……違う! これは違うんだ……」
 すでに、催眠が始まってから一週間以上が経過している。マニュアルによれば、室内で出会ったとしてもちゃんと言い訳できれば錯誤させられるほどに進行しているはず。理屈では分かっても、本番で多少テンパってしまうのはしかたがないのだが。
「えっ……違うんですか、でもここは私の自宅ですから」
「そうなんだ、帰宅する途中にたまたま通りかかっただけなんだよ」
 ひどい言い訳もあったものだ。ふむぅと考え込むようにサオリは一則を見つめる。
「その、下半身を露出しているのはどういう」
「ああっ、ちょっと尿意を覚えて……おしっこをしようかと」
「……その、撒きつけている下着は私のですよね?」
「えっと、たまたま風で吹き飛んできたんだな」
「風ですか……」
 もうすこし、まともな言い訳を用意していたのだが、とっさにトンでもないことを口走ってしまった一則である。やはり、口下手が災いしている。
「そうそう……偶然」
 もう、半ば観念して頷くしかない。
「そういうことも、あるかもしれませんね。すいません、勘違いしてしまいました。最近、悪質な被害を受けているもので。会社の人を疑うなんて、私もどうかしてました」
 そうして、申し訳ありませんと裸のままで深々と頭をさげる。その拍子に、大き目のサオリの乳房がプルンと震えて、一則も股間を振るわせた。着やせするタイプだなと興奮する。ブラのサイズはEの六十五だった。普段大きめのサイズの服で目立たないようにはしているようだが、こうして裸を見ればマスクメロンのような手に余るほどの隠れ巨乳。
「いやっ、こっちも申し訳なかった」
 下半身むき出しでなにをいっているのか、一則もいつもの恐縮のポーズ。まあ、サオリも素っ裸なのでおあいこだが。
「あの、拾っていただいてありがたいのですが、その下着は私のですので返していただけませんでしょうか」
「あっ……気がつかなくて、ごめんごめん。はい」
 下着を一物から取り出して、裸のサオリに渡す。自分の下着をしげしげと確認してから、洗濯槽にほうりこんだ。勃起しすぎた股間を、隠すようにしゃがみこんでいたのだが、特にサオリはそれを気にしていないようであった。
「あと、ズボンをお上げになったほうがいいと思いますよ。ああ、そうだトイレでしたら、お貸ししますので使ってください」
 そういいながら、一則を気にせずにバスタオルで身体を拭き出すサオリに、お礼をいってトイレに入って、そこでトイレットペーパーで射精する一則だった。極度の興奮のため、一度抜いても中々勃起が収まらずに苦労した。

 これで、室内に入っても大丈夫と確信した一則はさらに大胆な行動にでる。退社の時間は、一般事務のサオリも倉庫番の一則もそう変わらない。慌てて倉庫を閉めてから、サオリの後を追いかける。いつもは、物陰に隠れて気づかれないように、歩いていくのだが今日は堂々と横を歩いていた。これなら、逆にストーカーあつかいされまい。
「あら……桑林課長」
「ああ、奇遇だね」
「あれ、おうちってこちらでしたっけ」
 小さい会社のことだ。サオリは総務で人事管理もやっているはずだ。保険の手続きか何かで、一則の住所を覚えてていたらどうしよう。訝しげな目をしてサオリは、一則を見つめる。その数秒がまるで、自分の嘘をとがめられているようで、一則は心の中で怖気づく。
「……そうなんだよ」
 怯える心を抑えて、そうなんとか一則は言いきってしまった。あとはサオリの様子をつぶさに観察。少し考え込んで歩いていたが、途中で何かを吹っ切ったように、納得してくれたみたいだった。
 だが、鍵を開けて家に入ると、そこまで一緒に入ってきたのにはサオリもまた少し驚いたようだ。
「あの……ここまで一緒なんですか」
「ほら、前にも早崎さんの家であったじゃない。ここが通り道なんですよ」
「あっ……そういえば、そうでしたね」
 そういうと、サオリは納得する。やれやれと、一則はなんとかうまくいったとほっとした。サオリはカバンを自室に置いてから居間に降りてくる。一則も、居間にいることにした。サオリは一則を監視するようにそこにいる、そこに座って二人とも無言。一度、納得してしまったのでサオリは一則がいることを気にもしてない様子だが、まともな神経を保っている一則のほうは、なかなか慣れない。
「あの……いつも、こんな感じなの」
「そうですね、いまはすることないですからね。そうだ、せっかくだからお茶でもお出ししましょうか」
「ありがとう、いただきます」
 お茶を入れてもらって、二人で啜る。サオリは気にしていないのだから、一則のほうもこの空気に慣れないといけない。サオリは、しばらくして無言で立ち上がると台所にたって夕食の準備を始めた。なるべく、栄養は偏らないように品目は多く作るが、一人で食べる分だけなのでたいしたことはない。
 それでも、一応食器に盛り付けて、居間で食べる。一則がじっといてみていたが、ご飯も食べますかとは聞かない。元来が小食なほうなので、余ってしまうがそれも持ちそうなものは朝食にまわして、駄目なものは捨ててしまった。
 サオリにとって一則は、お客様ではなくてあくまでもただ通りかかった会社の人なのだ。だから、お茶は出しても食事までは出さないという、サオリにとっては当たり前の対応であったが、距離が縮まっていると勘違いしていた一則は少しがっかりした。

 だが、こうしてじっと居間に座っているのに気にせずに普通の生活をしているというのは、逆に「暗示がうまく浸透している」とも考えることができる。これは、次の段階に入るいい機会と捕らえた。
 サオリが立ち上がったので、その後をつけるようにして、一則はついていく。
「あの……私、お風呂なんですけど」
 もちろん、いつも一緒の時刻に入るので当然知っている。
「ぼくは、通りかかっただけだから気にしないで」
「でも、その……なんで服をお脱ぎになって裸になっていらっしゃるんですか」
 そういって、不思議そうにサオリは聞く。一則はいまさら、裸が恥ずかしい歳でもないが、別に醜く肥え太った一則の裸体を見ても露骨に嫌悪を催している様子はなくて、やはり安心する。
「なんでって、脱衣所で服を脱ぐのはあたりまえでしょう。早崎さんも脱ぐでしょ」
「あっ……なるほど。そうですね気がつきませんでした」
 納得したらしく、サオリもさっさと普段着のトレーナーとジーンズを脱いで、下着も脱ぐ。真っ白い飾り気のないブラに、ピンクのパンティー。色が上下で違うのを間に合わせにしているのが、なんとなくサオリらしい。
 ジロジロと脱ぐのを観察しながら、一則は右手で勃起したチンコをさすっているのだが、サオリは特に気にした様子はなかった。そのまま、タオルも持たずにお風呂場へと入っていく。閉められた浴槽の戸を、ガラリと開けて一則も入る。家が広い割りに、浴槽はそんなに大きくない。後から改築したもののようで、タイルや浴槽はまだ新しいが。
「あっ……なんで入って」
「通りかかっただけ」
「その、なんで脱いで」
「お風呂で脱ぐのは当たり前でしょ。早崎さんも裸じゃん」
「あっ……そのとおりですね」
 この会話は、場所が変わるたびにやらないといけないのだろうか。一度納得してしまうと、サオリは気にしなくなるのでいいのだが。
 サオリがざっとかけ湯して、浴槽に入ったので一則もざぶんと入り込む。そのとたんに、浴槽のお湯が三分の一ぐらい流れ出てしまった。小さい浴槽に二人が入るには結構無理があるのだ。
「あのぉ……」
 またか「通りかかっただけ……」と、一則は言いかけたが。
「かけ湯しないで、浴槽に入るのはマナー違反だと思います」
「あっ……ごめん気をつけるね」
 いい大人なのに、二周りも下の娘に注意されてしまった。
 二人で入るには小さな浴槽の中で、一則は身長が高めで歪な肉団子のようなデブデブの身体つき。サオリは小柄だけど結構胸やお尻がでっぱっている。つまり、どうしても身体が触れ合ってしまうのだ。
 そうでなくても、熱いお湯のなかで桃色に染まるサオリの身体を見ていると、必要以上に身体をすり合わせたくなるのが一則だ。最初は、腕で偶然を装っておっぱいを触れる程度だったのが、だんだん手で太ももをこすりつけるように撫で始める。
「あの……」
「ああ、浴槽狭いから偶然当たってしまうのはしょうがないよね」
「それも、そうですね……」
 そういうと、サオリは一則に背中を向けて押し黙ってしまった。背中をスリスリと触っても、何も言わなくなったので後ろからおっぱいを鷲づかみにする。さすがは、片手では押さえきれないほどのボリュームサイズ。お湯に浮かぶだけのことはある。
 こんどは、外側から揉むのではなく、乳頭の先を弄るようにして揉みしごいていく。女性のおっぱいに触れるのも、一則はこれが始めてなのですこし乱暴気味だ。
「あっ……うっうっ……ん」
 時折、身をくねらせるようにして嫌悪感をあらわにするサオリ。でも文句はいわない。さらに、モミモミするとぴょこんと乳頭が立ったのを手で確認した。
「あっ……早崎さん乳頭立っちゃったね」
「…………桑林課長も、あそこ立ってるじゃないですか」
 恥ずかしかったのか、なんなのか。妙なことを言い返してくる。そりゃあ、一則のものは勃起しっぱなしだ。お腹の厚い脂肪に隠れてはいるものの、完全勃起状態になると一則のものはかなり立派で、黒々としていて堅くしかも亀頭の返しが広い、カリデカというタイプだ。
 もちろん、オナニーにしか使われたことがないので、こんな宝の持ち腐れは珍しいといえるだろう。
 一則は、浴槽をいったん出てサオリの前に回りこむと、首筋に口付けをした。いや、それは口付けなんて可愛いものではなくて、舌で舐め取るような感じだ。こんどは、ほっぺに。それでも、サオリが何も言わないので最後になめかましい桃色の口元にブチューという感じで、分厚い唇を押し付けた。
「んっん! ……いまのは」
 これにはさすがに、抗議の声をあげるようだ。
「偶然当たっただけだって」
「偶然だったんですね……分かりました。それならノーカウントですね」
 身体をジロジロと見られて触られているのが気にならなくて、キスで気になるなんてやっぱりウブなところがある娘だなと、一則は嬉しくなる。さらに、相手の口の中に舌を入れるようにして嘗め回す。ちなみに、これが一則のファーストキスである。
 歯を食いしばって一則の舌の侵入をこばんでいるので、ディープはできないが、それでも歯茎の周りの唾液と口の内側の粘膜を丹念に舐め取っていく。すでに、納得しているのでサオリは、なるべく口をそむけるようにして気にしないようにするだけだった。
 今度は、お湯に浮いている右乳を持ち上げるようにして、乳頭に吸いついた。コリコリとする乳頭の感触を楽しむようにすると、こんどは左乳。同じようで、少し違いがあるような気もする乳全体を口に含んで楽しむと、最後にカリッと軽く噛んだ。
「いっ……」
 乱暴な一則の行動にも文句は言わない。そうすると、一則は極度に興奮してこんどはサオリのオマンコに手を伸ばす。もちろん、濡れてなどいない。でも太ももから、薄い毛の生え揃っている股をさするようにして触れると。
「どいてください……」
 そういって、サオリが押しのけるようにして湯船から上がった。
「どうしたの、早坂さん」
 焦って一則が声をかける。
「頭と身体を洗うだけですよ」
 そういって、ゴシゴシとシャンプーをし始めた。別に大事なところに一則が触れたから逃げたというわけではないらしく、それにほっとする。
 気を取り直して、一則も湯船からあがった。シャンプーをしている、サオリに覆いかぶさるようにして、チンコを背中に押し付けてみる。
「あの……髪を洗ってるんでよくわからないんですけど、背中になにかあたるんです」
「ああ、それぼくのチンコ」
「チンコ……ああ、なるほど。……って、ちょっと!」
「いや、偶然だよ。偶然」
「そんな偶然ってあるんですか」
 聞き返してきた。
「ぼく、浴槽ではいつも床オナニーをするのが習慣なんだ」
「なんですか、その床おな……って」
 なかなかにサオリは冷静である。背中に凶器を押し付けられて、こすりあげられているのに、平気で髪を洗っている。
「床にチンコをこすり付けて、オナることだよ」
「男の人ってそんなことするんですか」
「で、床に当てようとしてるんだけど狭いから偶然、早崎さんの身体に当たってしまうんだよ」
「ああ、そういうことですか。なら、しかたないですね」
 お許しが出たので、背中を中心に擦りあげる。ドンドン下へ下へと降ろしていって、お尻の間に挟んでしまう。すでに先走り液ドロドロだから、すべりのいいこと。
 本当は挿入してしまいたいのだが、普通の浴槽の椅子に座ってるし、太ももをぴったりと閉じているので無理っぽい。尻の間の感触を楽しむようにして、なるべく桃色の肛門辺りをグリグリとしながら、一則は感極まってピュルピュルと射精し始めた。
「あっ……あっ、出る……いい!」
 いつもの習慣で、出すときに声を出してしまう一則。お尻から弾け飛ぶように、上に振りあがった一則の立派なチンポは、背中にも振り掛けるようにタップリとドッピュドッピュと白濁させて大満足。
「あっ……間違って、私のお尻にこすり付けて出しちゃったんですか。しょうがないですね、とりあえず後ろからお湯かけておいてください。後でどうせ身体を洗いますから」
 精液のたんぱく質は、お湯をかけると固まるのだ。それを一則も指示をだしたサオリも知らなかったわけで、プルプルに固まった精液が、サオリのお尻の付け根と背中にかけてドロドロニュルニュルと付着していた。

 女性が髪を洗い終わるのには時間がかかる、ようやく髪を洗い終えて、射精された自分の背中やお尻に手をやって「あぁー汚された」と落胆したような鈍い声をあげているサオリ。糊のように張り付いてしまった一則のたんぱく質を手で丹念に剥ぎ取るようにしている。一則もついでだとばかりに、シャンプーを取って手早く髪を洗い上げた。
 まえにもいったが、一則の髪は悲惨なほど薄い。しかも脳天は完全なツルッパゲ。だからほんの何分で完璧に洗えてしまう。能率的悲劇といっていい。いや悲劇的能率の良さというべきか。
 身体にボディーソープをつけて擦り始めたサオリを見て、一則は声をかけた。
「身体洗うのに、タオルつかわないんだ」
「手で洗うと、肌がつやつやになるんですよ」
 なるほど、色んな美容の方法があるものだ。一則なんかワニのような肌なので、タワシで洗ってもいいぐらいだが。
 一則は、サオリのそのつやつやの肌の上で泡立っているソープを擦り取って、自分の身体に擦り始めた。
「あのなにを」
 ああ、これがいつもの洗い方なんだよと一則が説明すると、すぐ納得する。一人では到底できない洗い方なのだが、そこまで疑わないのだろう。
 泡を取るというより、やっぱり胸や太ももを揉んでいるに等しい。当然身体を洗っているのだから、太ももの付け根の大事な部分も開いて、そこからも念入りに泡を取る一則だった。なんかまた、興奮してきたようだ。
 突然立ち上がると、サオリの前に仁王立ちになって立ち上がって、股間のものもまた立派に立ち上げさせる。
「ちょ……どうしたんですか」
「調子がいいときは、二回目のオナニーをするんだ。ちょうどこうやって、部屋の端から真ん中にゆっくりと歩いていって」
 そういいながら、一則はさっきサオリの股間からとった泡を自分の股間にこすりつけるようにして、どんどん顔に近づけていく。
「あっ……やっ……」
 黒光りした勃起チンコが、ピトンとサオリの顔に引っ付いた。というか唇の辺りに、強引にグリグリと押し付けているといったほうがいい。
「ああっ……気持ちいい」
「もうっ!」
 そういって、軽く振り払ったサオリの手がぐにゅっと一則の勃起チンポに当たって、擦りあげるような形になった。
 それで、「出る!!」とサオリの顔に向かって、黄みばしった精液をドッピュドッピュ! 吐き出し始めた。
「きゃっ……わっ」
 変な悲鳴をあげて、手で止めようとするが顔にもべったり手にもべったり、二回目だというのに、さっき出したのと増さず劣らずの射精時間と勢いとすさまじい量、四十二という年齢を考えれば、かなり立派なものだ。
 何度も言うようだが、宝の持ち腐れとしかいいようがない。
「ふぅ……ごめんね、偶然当たっちゃって」
 たっぷりと、射精して、萎えたチンポをやっぱりサオリの髪にこすりつけるようにしている。顔はともかく、髪にまじってしまうと後が大変だろうに、かわいそうなサオリは「偶然……偶然だからしかたがない」とか、ぶつぶつと呟いて顔を再度ボディーソープで念入りに洗っていた。
 二回出して満足したのか、一則はそれで風呂からあがって家に帰っていった。なぜか偶然間違って、サオリの今日穿いていたピンクのパンティーを装着してしてから帰るあたりが一則らしかった。
 それにしても、あれだけ出してまた自宅で、盗んだパンツをネタにやるつもりだとしたら一則は異常性欲の域に達しているのではないか。それとも、不惑の歳を過ぎて、晩年に燃え盛った恋が、彼の性欲に力を与えているのだろうか。そう考えれば理解も出来る。彼が子孫を残せるかどうかは、いわばここがラストチャンスとはいえた。

 次の日、またいつものようは平日。会社の倉庫の片隅で、雑事を整理しながら一則はワクワクしてしかたがなかった。昨日の風呂場でのことを思えば、もうこれは完璧にやってしまっても大丈夫ってことだった。
 今日という日に、サオリが備品を取りにきたのにも、天の配剤を感じる。コピー用紙を渡しながら、サオリにとっては普通の日でも、今日は一則にとって運命の日になるという確信があった。地味な黒い事務服を着て、お礼をいって帰っていく彼女の背中に。
「今日は、ぼくたちが結ばれる日なんだよ」
 そう、小さな声で声をかけた。
「なにかいいましたか?」
 聞こえたらしく、サオリが振り返ったが、なんでもないといってニヤける一則を不気味なものを見るような目でちょっと見て、サオリは去っていった。

 仕事が終わると、一則はサオリと一緒には帰らず、ひっそりと駅前の裏口にあるアダルト専門ショップへと入った。品揃えが豊富で、一人エッチ用のオナホールも上級者用が取り揃えられていて、よく一則はこの店を利用していた。この男は、実はラブドール(高級ダッチワイフ)すら所有しているのだ。今日の目的は、二人で使うためのSM用品であった。
(こんなものこのデブ中年が、誰と使うんだろう)
 そんな訝しげな目で店長が観察していたが、時折来ては、大人買いをしてくれる一則は大のお得意様なのでもちろんそんなそぶりは見せない。拘束具や特殊なアナルバイブなど、それを収納するカバンまで一緒に購入していった。ありがたい客だった。
 奇しくも、この表の店がサオリがこのまえ下着を新着した激安下着専門店で、実は経営者は一緒であったりする。別に関係ないといえばないかもしれないが、それは面白い偶然で、運命があるという一則の言い分も間違ってはいないのかもしれない。

 重たい荷物を抱えて「ハァハァ」と息をしながらようやくサオリの家へとやってきた。閑静なのはいいのだが、街中からちょっと歩いてかかるのがやっかいだ。一則は車の免許をもっていないから、だけどタクシーを使うほどの距離でもないのだ。
「まあ、これからぼくも少し体力をつけなきゃいけないからな」
 若い彼女を作るのだ、肥え太った身体はすぐにはどうにもならないだろうが、せめて運動不足ぐらいは解消していかなければならない。やれやれと、重たいカバンを置いてとりあえず軒先に隠しておいた。サオリの家は広いから、あとで押入れにでも隠しておけばそうそう見つかるものでもないだろう。
 すっかり暗くなってしまった。合鍵で玄関を開けて、居間に入るとちょうど食事中であった。お茶はもらえるが、食事はもらえないのが一則の立場であるから、ちゃんと抜かりなく途中のコンビニで夕食は買ってきてある。
 サオリは、一則が居ることは納得しているので声もかけない。特に会話もなく「通りすがり」の一則とサオリは食事を終えた。

 一則は常にサオリのあとをついてまわる。サオリがトイレの扉に手をかけると、中に入ったが一則の巨体が扉に挟まっていてしまらない。
「あのっ……私トイレに入りたいんで」
「ぼくもトイレに入ろうと思いまして」
「じゃっ、じゃあ、お先にどうぞ」
 当然といえば当然の反応だ。一則はしばし無言で、やはりサオリさんどうぞと後ろに下がったので、サオリは安心して扉を閉めて、洋式便器のまたがりジーンズと青いパンティーを降ろして「ほっ」と息を吐く。もちろん、ノブを回して水を流しながら音消しをする。扉の前に一則がいるかもしれないのだ。
 水の流れる音にまぎれるようにして、下腹部に力を込めておしっこをした瞬間、ガチャリと鍵をかけたはずの扉が空いて一則が入ってきた。
「あっ……ぎゃあああ」
「ああ、これは失礼」
「やっ、やだ」
 女性のおしっこというのは途中で止まらないのだ。シャアァァァと堂々と大また開きで一則の前で放尿する嵌めになってしまう。どうしようもないので、サオリは真っ赤になった顔を手で覆った。
「鍵が空いてたんですな、不幸な事故というものです」
 そんなわけもなく、本当は古いトイレの鍵だったので爪でひっかけて強引に開けたのだ。
「それならしょうがないですけど、見ないで……」
「このまま、おしっこしますね」
 そういって、一則もポロンとズボンとパンツを下ろして、おしっこを噴出しているサオリのオマンコにめがけて放尿した。
「いやっ……なんてことを」
「トイレだからおしっこするのは、あたりまえですよ」
「そっ……そうなんですか」
「ほら、早崎さんのおしっことぼくのが交じり合ってますよ」
「最悪ですね」
 先に、サオリの小水が終わった。サオリは、トイレットペーパーを千切って自分の股間を拭く。その様子を見ながら、一則は自分のチンポを右手で擦り始めた。小水を終えて、ズボンをあげようとしたが、パンツごと体重をかけて一則が踏んでいるので上がらない。そうして、はっとサオリは目をあげて、一則がオナニーを始めているのに気がついた。
「なにしてるんですか!」
「おしっこのついでに、オナニーするときもありまして」
「ちょっと、どいてくれますか」
「ああ、足で踏んでましたね。すぐ終わりますから、そのままそのまま」
「あっ……なに私の胸を揉んでるんですか」
 右手でチンポをさすりながら「ハァハァ」とTシャツごしに左手で、サオリの胸を揉み始めた。
「ああ、水を流そうとしたらノブと間違えてしまいました」
「間違えたんならしょうがないですけど……」
 そういっている間に、一則は興奮して絶頂に達してすぐに射精した。ドピューーと尾を引くようにサオリの股間めがけて、黄色がかった精液が飛んでいく。どろっと、股と太ももあたりに付着して、ピンッと上にチンコが跳ねて、サオリの顔や服にも少し飛んだ。
「すいません、便器に出そうとしたら当たってしまいましたね」
「しかたないですけど……」
 そうやって、もう諦めたという表情で、トイレットペーパーを大量にとって顔や股間を拭いていた。念入りにビデで股間を洗っている様子を、一則はずっと見守っていた。パンツとズボンをはいて、後始末をするともう普通の表情に戻っていた。最後に、トイレットペーパーをきちんと三角折りにするサオリは、意外と冷静だなと一則は考える。あるいは、催眠の効果で結局は深く考えないようになっているのか。

 その日もお風呂には一緒に入ったが、射精はしなかった。夜のお楽しみが待っているからだ。雑事を済まして歯も磨きあとは寝るだけ。サオリは最近は特に早寝になっている。サオリは、二階の自室にある少々古いが大きめのベットに寝る。
「私の部屋にまで入ってくるんですか」
 そういう、サオリにいつもの「通りすがり」問答で回答する一則。それで納得したのか、催眠用のお茶を飲んで、就眠儀式に移ろうとしているサオリだった。ピンクを基調にした、簡素だが女の子らしい部屋だった。サオリの年齢にしては、調度品の趣味が少し幼いぐらいだろう。それは両親が生きていたころと、なるべく一緒のままにしてあるからなのだが一則はそこまでの事情は知らない。

「なんで私のベットの中に入るんですか」
「だって、ベットがあったら普通寝るでしょう」
 サオリのベットは大きいから、デブの一則が入っても十分二人は眠れるだろう。ただ、若干スプリングが古いので、一則が乗ったときにミシミシと激しく音を立てた。
「それはまあいいですが……、なんで裸になるんですか」
 服を脱ぎ捨てて裸になって、ベットにおいでおいでしている一則。
「ぼくはいつも寝るときはノーパン健康法が習慣なんだよ」
「なるほど、それじゃあしょうがないですね。私はもう休ませてもらいますから」
 納得した、サオリは自分も部屋の電気を消してベットに入った。心を落ち着かせるとレコーダーのスイッチを押す。あっいけないと、一則は慌てて布団の中にもぐりこんで耳を塞いだ。一則まで、催眠にかかってしまっては眼も当てられない。とりあえず、今日は五分間そうやってしのいだが今後は、耳栓を買っておこうと一則はおもった。
 レコーダーが終わると、死んだようにぐっすりとサオリは眠っていた。ものすごい安眠効果というより、ほとんど精神麻酔に近いのでこうやって寝ると、震度六の地震でも来ない限りは起きないだろう。
 一則は、消していた部屋の電気をつけると、ゆっくりとサオリの薄い寝巻を脱がし始めた。下着姿になる、胸の豊かなサオリは感心なことにちゃんと寝るときもブラジャーを着けている。こういう小まめな心遣いが、おっぱいの垂れを防止するのだ。
 上下とも、薄手の黒い下着であった。細かくレースが刻まれていて、サオリが持っているなかでは、高いほうだろう。自分と初セックスするために、勝負ブラをつけてくれたのだなと嬉しくなって、しばらく眺めるように観察してから、ダブルホックをはずして、豊かなおっぱいをぶるんを出す。そして、下もゆっくりと脱がしていく。脱がした衣服は、勉強机の上においておいた。
 サオリの身体を「よっこいしょ」ともちあげてベットの真ん中に置く。ここからが大仕事だ。一階に隠してあった、拘束具を取ってくる。ベットの下の柱と手をつなぎ、そこからさらに足をつなぐという、簡易式ながら本格的な拘束具だ。
 両手を束ねた皮手錠をぐっと上におしあげて引っ張ることによって、それに連結した足も上に引っ張られて、「さあ挿入して!」といわんばかりのM字開脚になって、大事なところを開いたままに、身動きが取れなくなる。
 業務用で高かったのだが、安物をつかってサオリちゃんの身体を傷つけても困る。それに、四十二年間守り続けた童貞を切る、一則の初セックスのお祝いでもあるから奮発してみた。
 一則は童貞なのに、サオリのお股を見るとやっぱり、経験は済んでいるらしくビロビロは外にでた、大人のオマンコだ。色素が薄いほうで、あまり遊んでないようには見えるのだが、サオリが始めてでないのだけが一則の残念であった。
「さあ、子供マンコにしようね」
 そこで、せめてもの慰めとして、サオリの剃刀で丹念に陰毛をジョリジョリと剃っていく。もともと体毛が薄いほうでもあって、あっというまに綺麗なツルツルマンコになってしまった。
 日本人は陰毛を剃る習慣がないが、洋物AVを見ているとみんな剃っているので、ここは西洋風を取り入れるべきだと、一則は前から思っていたのだ。
「オマンコの和魂洋才というわけだな」
 綺麗に剃りあがったのを喜んで、一則はわけのわからないことを呟いて満足げに頷いている。怖くて風俗にもいけなかった一則は、ここで始めて女性のオマンコを見たわけである。しげしげと観察する。
「これがクリトリスか……わかりにくいんだな」
 あまり使っていないサオリのクリちゃんは、ぐにぐにと刺激しても皮に覆われていて引っ張ると辛うじて剥けるか、という感じだった。ぐっと剥いてみると、サオリの身体がビクッと震えたが、まだ眠りの中にいるようだった。
「刺激にはなるんだな」
 今度は味だと、舌で舐めるようにしてサオリのオマンコを濡らしていく。下の大きな穴がチンコを入れるところで、上がおしっこの穴だというのはさすがに一則にも分かる。サオリの小柄の身体に比例して、穴も小さめで本当に一則の大きいチンポが入るのかどうか、すこし不安になる。
「まあ、未経験ってわけじゃないんだから」
 オナホールが大丈夫なんだから、本物も大丈夫だろうというトンでもない理屈で、自分を納得させる一則。とるもとりあえず、よく濡らすべきだと、買ってきたピンクローターという道具を、サオリのオマンコに挿入する。
 細長い卵みたいな、物体でそれを奥までにゅるりと挿入すると、スイッチをいれて振動。ブーンという音と共に、サオリの中でローターが震えているのがわかる。しばらく見ていると、膣圧で外にニョロっと押し出されてきたので、また中に押し返す。
 そんなことを続けていると、だんだんローターに白い液体が付着するようになってきた。
「これが愛液というやつか……」
 精液とはまったく違うが、一則が夢想していた甘い香りがするようなのとも違う。すえたような、すこし鼻に残るような匂いだった。すこしとろみがあって、思わず一則が舐めてみると、なんだか股間がすごく熱くなる淫靡な味がした。
 一心不乱に舐め続けていると、次第に匂いや味は感じなくなっていって、ただサオリの身体の中から分泌される粘液に舌がまみれるようで、とにかく興奮した。すでに、一則のものはカウパーを大量に垂れ流して、ドロドロとベットのシーツを汚している。感慨もなにもなく、本能の趣くままにサオリのオマンコに押し当てると、ニュブッと押し込むようにして入れてしまった。
「あっ……なんだこれ……いぅ!」
 抱きしめるようにして、挿入して一番奥まで差し込むと、小さいサオリのオマンコは一則の巨大な亀頭をギチギチと締め上げて刺激して、初めて感じた女性の膣の感触に興奮状態だった一則の琴線はぷちんと切れてしまった。
 そうして、気がついたときには玉からグルグルと精液が駆け上ってきて、一気に一番奥で射精。ドピュードピュー! そう自分でも吐き出しているのが分かるぐらいに、ドックドックと眠っているサオリの膣の中を汚していく。
「あぁ、出てる中にでてる……出した」
 こうして、情けなくも気持ちよく、四十二年守り通した一則の童貞はこの夜に破られてしまったのだった。
 にゅっぷと引き抜くと、オマンコからはドロドロと愛液と精液の交じり合った混合液が止めなく出てくる。
「やっぱり、中にだしたら妊娠するかな」
 お腹を押さえたり、オマンコを刺激したりして、とりあえず中の液をなるべくだして、オナニーのあとにティッシュで拭くみたいにあらかた液はとっておいた。サオリはその間も口を尖らせるようにして、間抜けな顔で寝ている。
「寝てる間に、ぼくの子供を妊娠しちゃったかもね」
 寝たままは少しつまらない気もするが、説明しなくていいから面倒くさくなくていい気もする。そっと拘束具をはずして、服を着せてからサオリを抱きしめるようにして、サオリの髪からするシャンプーの花の香りに包まれながら、ぐったりといい気持ちで一則も寝るのだった。


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ヤラナイカー

Author:ヤラナイカー
おかげさまでプロ作家になって五年目です。
ボツボツと頑張っていきますので、今後ともよろしくお願いします。
(プロフの画像、ヤキソバパンツさんに提供してもらいました)



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