第五章「イシコロボウシ」 |
「ハッハッハ、まさか自己催眠を使うとは思わなかった」 この前の催眠の顛末を、ネットを通じてネット探偵に報告したら、かなり喜ばれた。 術氏が自分自身に催眠をかけるという技は、ポピュラーではないが催眠術の技法としてはあるらしい。ただ、大変危険な業で変にかかると術氏の制御を離れて、取り返しのつかないことになる。 「だから、素人には絶対やらせないんだが。結果的には、悪い結果はでなかったようだからよかったよ」 「そんなに、うまくもいかなかったんですけどね」 「催眠装置のデータを集めているこっちとしては、ありがたいことだ。しかし、マジで危険な行為だから、もうやるなよ。少しお前を追い詰めすぎた。あんまりツマランことばかり聴くからイライラしてな、それで突き放してみたらこんなトンでもないことをやるし、イジメを誘発する性格ってのは本当にあるもんなんだな……まー俺が大人気なかった、すまんすまん」 (イジメられる性格って……) 褒められているのかけなされているのかマサキにはよくわからないから、どう反応していいかわからない。 「フラストレーションの解消が必要だな。よし、お詫びにいい催眠術のかけ方を教えてやるよ。帽子かなにか、頭に被るようなものがあるか……」
スイムキャップ片手に、マサキは家を出た。スイムキャップは、小学校のときの水泳に使っていたものだ。防水性もあるし、頭にフィットするから取れにくいのが便利だ。こんなもの被っているのはとても恥ずかしいと思うのだが、これからマサキは”透明人間”になるのだから、恥ずかしがる必要もない。 それにしても、スイムキャップってプールの授業で強制的に被らされてるけど、何の必要があってのことなんだろうか。 そんなことを考えながら、鳥取家に来ると、というか隣の家なのだが、見慣れない車があることに気がついた。いかにも高級車だ。マサキは車には詳しくないので、車種はわからないがワインレッドの外装に鶴奈の趣味が反映されているのが鳥取家らしさだ。 「あ、そうか今日は休日だから」 鳥取家の大黒柱、鳥取鷹郷が在宅中なのだ。まあいい、催眠が使えるいまのマサキには恐れるものは何もない、おじゃましまーすとでかい声を出して飛び込んでいった。ちょうどいい感じに、リビングには鳥取家の全員がそろっていた。ちょうど飯時だ。 「あんた、またきたの……」 飛び込んできた、マサキを見て、ツバメのあきれた声が聞こえる。 「おにいちゃん、いらっしゃいー」 小学生の妹のヒナは今日も無邪気だ。 「え、こいつ誰……」 マサキの目の前に足を組んでソファーに座っているイケメンがいた、コーヒーを飲んでいるだけなのに、決まって見える。三十過ぎた親父じゃなかったのか、存外に若いとマサキは思う。 (こいつは敵だ) イケメン青年、鳥取鷹郷に対して、一瞬にして敵対認定を下すマサキ。 「鷹郷さん、マサキくんはツバメちゃんの彼氏ですよ」 台所で、食事の用意でもしていたのかエプロンを巻いたままで、いそいそと出てくる鶴奈。あー今日は珍しく、赤いエプロンじゃない。 「え……ツバメの彼氏って、こいつがぁ!!」 鷹郷は明らかに胡散臭げな表情でソファーから立ち上がり、怒りを押し隠してマサキを睨みつける。すらりとした長身。スリムな外見なのに、二の腕の筋肉はいい感じについている。マサキにはすごい大男に見えた。マサキと比べて、身長二倍は言いすぎかもしれないが、1.5倍はありそうだ。喧嘩したら確実にボコボコにされる自信があった。 明らかに風采のあがらない駄目オタのマサキとツバメでは、同い年といってもつりあいが取れなさ過ぎるから、鷹郷がマサキの突然の来訪を不審に思って当たり前なのだが、それにしたって睨みすぎだ。威嚇されたショックに震えて、思わず催眠タイムウオッチのボタンを押してしまうマサキ。
「あ、しまった」 押してしまったものは仕方がない。頭に電極を差し込まれたような衝撃はあいかわらずだが、すでに何度も繰り返して慣れているマサキはさほどでもない。むしろ今回は、頭がスッキリするように感じるのだ。痛いのも困るが、心地よすぎても中毒になってしまっては、それはそれで困る。 とにかく、催眠の光る目でぐるっと鳥取一家を睨みつけると、全員催眠状態に置いた。まあ、どうせ一家全員がまとまったところで催眠をかけるつもりだったのだから結果オーライだ。とりあえず、要注意人物の鷹郷にマサキを歓迎するように、五分ぐらいかけて徹底的に催眠を仕掛けておく。 残り五分で、鳥取家の面々にネット探偵に教えてもらった術を。 「いいですか、みなさんこのスイムキャップは魔法のスイムキャップです。これを被った人の姿はまったく見えなくなります。わかりましたか」 つまり、このスイムキャップをファクターにしてマサキが透明になる暗示をかけるのだ。当然、本当に透明になるわけもないのだが、そう暗示をかけられた人間にとってはそう見えるようになる、はずだ。
――催眠終了
さて、うまくいっただろうか。 「ツバメのボーイフレンドのマサキくんか……なかなかいい男じゃないか」 そういって、鷹郷に軽く肩をぶつけるようにタックルされた。鷹郷なりの親愛の情らしい。それだけで、吹き飛ばされそうになったんだが、マサキはぐっとこらえる。どこまでもマサキの苦手なタイプだ。 「どこがいい男なんだか……」 ツバメは、そういってブツブツと言っている。鷹郷にとっては、マサキはいい男ということになったらしい。これは鷹郷が、自分の妹の彼氏はいい男じゃないと認められないという思い込みがあったからだ。 経験の浅いマサキはそこまで分からないが、催眠のかかり方というのはかかる当人の思い込みや思想にも左右されがちなもので、当人にとって合理的な選択がなされる。結果、同じ暗示をかけてもツバメにとっては、マサキはやっぱり駄目でキモイオタに見えるし、鷹郷にとってはかっこいい男に見える。徐々に、客観と主観の齟齬が大きくなるのだ。
「じゃあ、ぼくは今日はこれで」 そういって、マサキはおもむろにスイムキャップを被る。 「消えた……ツバメ、お前の彼氏は忍者かなにかなのか」 そういって、鷹郷は立ち上がってマサキがいたところに手を伸ばす。触られたら嫌な感じなので、マサキは避ける。暗示はうまくいっているようだ。 「知らない」 ツバメは機嫌が悪くなってしまったみたいで、肩をいからせるようにズンズン、自分の部屋にもどっていったようだ。これは好都合かもしれん、ついていく。ものすごい勢いで、バタンと扉を閉める。衝撃で、空気と壁が震える。あんまり近づかないほうがいいみたいだ、万が一こんな勢いで扉に挟まれたら怖いことになる。 「こんなキャラだったかなあ、ツバメちゃん」 活発な女の子という印象は持っていたが、結局のところマサキはツバメを遠くから見ていただけで、話したことはあまりない。今日のツバメは活発すぎて、どっちかというと暴力的だ。あるいは、家で一人だと女の子ってこんなもんなんだろうか。鳥取家は、ツバメも、ヒナも贅沢に一人部屋を与えられている。まあ、鷹郷と鶴奈が仲良くダブルベットでご就寝だからなのだが。 ツバメは、ベットに腰掛けて足をだらんと放り出して、バタバタを動かす。埃が立つ、埃が。 「あーなんか、ムカムカするー」 ツバメは今日生理なんだろうか。それぐらいしか、マサキにはツバメがいらつく理由が思い浮かばない。 「お兄ちゃん、マサキのことなんか褒めてさ」 ツバメが、バタバタと手足を振りくるたびに、フワフワと髪が乱れ、部屋着にしている厚手のシャツの上からでもわかるほどの巨乳がプルンと揺れた。 あいかわらず、中学生でここまでデカイっていうのは反則だろう。 「怒ってるツバメちゃんもいいなあ……」 怒ってるツバメも、考えてみればレア顔だ。学校では活発で愛想がいい少女なので、こんなふてくされた顔を見せることはあまりない。いまのマサキは透明人間なので遠慮することはない、鼻息がかかるほど近づいて、ツバメの綺麗な顔を覗き込む。 匂いを嗅ぐ、嗅ぎまくる。 思春期特有の女の子の甘い香りが漂ってくる。
(そして、この乳が) 思わず、手を胸で触ってしまう。透明なんだから、少々ばれないだろうと思ったんだが。あくまでも、おとなしく下から支えるように胸を持ち上げてみる。ものすごい重み、こんな重たいものをぶら下げて生きているなんてすごい。 (うあ、ノーブラじゃん!) 「え」 かまうものか、マサキは両手で鷲づかみにして、揉みしだしてしまう。 「きゃー、いたー! こんのぉーーー!」 その豊満な感触を味わう暇もなく、マサキは壁の向こう側まで吹っ飛んだ。
ドーン! という、音と共に壁に身体をぶつけて崩れ落ちるマサキ。意味不明の叫びといっしょに勢いよく振り回されたツバメの裏拳によって、マサキは勢いよく吹き飛ばされたのだった。
「もーいったい、なんなのよーー」
ツバメは、暴れた勢いで立ち上がると、バタンと扉を開けて、さっそうと部屋から出て行ってしまった。 「ふう、姿が見えてなくても、駄目だったか」 マサキは、ちょっと疲れを感じてツバメの匂いが残るベットに包まれて少しまどろむことにした。 「ん……眠っていたのか」 浅い夢を見たような気がする。いつのまにか、窓から差し込む景色は夕暮れに近くなっている。少しは疲れが取れた気がした。頭に手をやると、まだスイムキャップを被っていた。透明人間になって遊んでいたんだったか。 「透明人間の特性を生かすとしたら、トイレか風呂場が定番だよな」 そんな独り言をつぶやきながら、マサキが一階に降りるとリビングから明かりが差し込み、たぶんヒナが騒いでるらしいバタバタという足音と共に、団欒の声が聞こえてくる。 「兄さんたちも、せっかくの休みなんだからどっか出かければいいのに」 「オレは出張が多いからね、鶴奈のいる家が一番だよ」 (ふん、惚気かよ……) リビングを覗き込んだマサキは、そう思った。その鷹郷のラブラブ家庭は、徐々にマサキによって崩されてると思えば悔しくもないが。 「お兄ちゃん、義姉さん好きだよねー、嫉妬しちゃうなー」 マサキの愛しいツバメも、お兄ちゃん子らしい。機嫌は直ったようでよかったが、やっぱ悔しい。いつか目にモノを見せてやろうとマサキは心に決める。 マサキがにゅっと、首を出した気配にリビングの三人が振り向くが、すぐにみんな目線を戻す。見えないことになっているからだ。 普通は、夫婦の世帯に義理の妹がいるとか、普通はもっとギクシャクするもんだと思うが、リビングでヒナと遊びながらツバメの相手をしている鷹郷はくつろいで見えた。うまくやっているのだ。 (まあいい、そっちのほうがこっちもやりやすいさ) とりあえず、トイレに入り込むことにした。 「ぼくもションベンでも済ますか」 おしっこをチョロチョロと出していたときに、突然トイレの扉が開いた。
――鶴奈だ!
当然、便器にまたがっていたマサキは見えないことになっているので、何事もなかったようにまたがる。 (ぐあああ) 狭いトイレの中だ。オシッコを無理やり止めて、壁に張り付くように避ける。間一髪だった。 「ふう……」 ため息をついて、洋式の便器に座り込む。一呼吸置いて、スルスルとショーツを下して静かに用を足す鶴奈。 (そういえば、今日はパンツ汚してなかったな) こんなときに、そんなことを考えるマサキ。 (うう……尿意が) さっき途中で止めたから、オシッコしたくてしかたがなくなるマサキ。それをよそに、うつむきながら、静かに尿を出す鶴奈。狭いトイレの中で二人、静かに尿が流れていく音だけが響いていた。 (限界だ、しょうがない) 陰毛が覗いている鶴奈の股と洋式便器との隙間に痛々しいほど勃起したマサキの逸物を差し込んで、静かに放尿する。鶴奈の尿とマサキの尿が交じり合う、クロス放尿だ。これはこれで、変態プレイみたいで興奮するマサキ。 (どうやら……放尿したものも見えないみたいだな) うつむき加減だから、空中から尿が出るのが見えたら驚くはずだもんな。おしっこは、ほぼ同時に終わった。それでも、パンツをあげることもなく、さらに深い息をついて視線を宙に泳がせる鶴奈。まるで、マサキと見詰め合うように見えた。 リビングでは、明るい家族が待っているけれども。一人でいるときは、妻でもなく、母でもなく、一人の人間としての顔があるのだ。 (これは、うんこだな) 小さく息を吐き、鶴奈の端正な眉がひそまる。明らかに力んでいるのが、マサキにはわかった。思わず、ションベンを吐き出しても勃起が収まらない逸物をピストンさせる。左手で、便器のタンクを支えにして右手でこする。 鶴奈の目の前で、鼻息で髪が揺れるぐらいの近くで。 (ハァハァハァハァ) 「?」 射精感覚がせりあがってきた。フルフルっと鶴奈の身体は震えて、糞をひねり出す体勢にはいっている。出している間は、身動きできないだろう。 (これはいい、ハァハァ、これはいける) 右手で逸物をこする速度を速める、突き出したチンカスまみれの亀頭が、鶴奈の陰毛に触れんばかりの距離に近づく。鶴奈がフッといきんで、肛門を収縮させて……。 (出る……) 「んっ……」 音もなく、柔らかいうんこを鶴奈の肛門が押し出した瞬間、鶴奈の前面の粘膜に”何かが”密着するのを感じた。その瞬間、生暖かいものが吐き出されるのを感じた。 「ひゃ……んん!!」 叫びだそうとする鶴奈の口を自分の唇で塞ぐ。
ドピュドピュドピュドピュドピュ!
舌を入れるほどの甲斐性はまだないが、マサキも大胆になったものだ。濡れてもいなかったから、そんなに奥まで入らなかったけれど、外陰唇にピンクの亀頭をめり込ませるようにして射精したから、しっかりと精液は鶴奈の中に流れ込んでいる。一応、これレイプになるんじゃないだろうか。 マサキが鶴奈を押さえつけていたのは、三十秒にも満たない時間だった、洋式の便器に前からしゃがみこんで押し付けて射精なんて、本当に無理な体勢だったので中の奥にまで差し込んで射精できなかったのは、無理もなかった。マサキにとっては、チンコとマンコがはじめて触れ合ったのだから、十分満足ではあった。 極度の興奮状態だったとはいえ、こんな無理な体勢で射精できるマサキはすごい。これが若さということなのか。 後ろに倒れこむようにして、マサキは地に腰をつけた。鶴奈は、口を押さえられなくてもなぜか叫ぶことはなくて放心状態で。気がついたように、立ち上がろうとして、肛門から一本筋のうんこがぶら下がっているのに気がついて、まだあわてて座って完全に排便し終わってから、股を入念に洗ってさっさとトイレを出ていった。 鶴奈は、股から陰毛にまで白濁液がこびりついて、自分がしたうんこにドロドロと垂れ下がっていたというのに、それを夢でも見たようになかったもののように考えてしまったようだった。やられたときによく考えればよかったのに、ビデで精液を洗い流してしまえばなんの痕跡も残らない。 どうやら鶴奈は、なんども催眠にかけられている結果、催眠にかかりやすい体質に変化しつつあったのだった。そしてそれは、マサキの催眠術師としての着実なレベルアップを意味するのである。
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