第十章「大同小異」 |
「小異を捨てて大同につく」
小さい恨みは忘れて、大きな目標に結束しようということだ。 この理想を高らかに謳って、少数政党をかき集めて大連立を組んだある国の政権は五日で壊滅したが、まあ安西マサキがこれからやろうということを言葉にするとこうなる。
「クラス 総妊娠 計画」
朝のホームルームで教師を退かせて教卓に立った、いじめられっこ安西マサキ改め学級王安西マサキ一世陛下は、このどうしようもない文字を黒板に明朝体で楷書して、こうのたまわれた。
まったく意味が分からない、突然の熱い主張に教室がざわめく。ツバメがぼそっと「最低」とつぶやいたが気にしない。 だいたい、イジメの恨みを晴らそうとかそういうことは小さい。男ならもっと大きくあるべきだ、というわけで(どういうわけだ)来るべき、鳥取ツバメ懐妊にあわせてクラスの女子全員を妊娠させてやるというのが、この計画の骨子である。もちろん、そんな都合よく全員妊娠するわけないが種付けはする。あとは状況しだいだ。
「だいたい、学校の女子で二割がどうしようもないクリーチャーだとすると、八割が普通の女子」 そして、大仰に振り上げた手を、おもむろに教卓の机を叩きつけながら叫ぶ。
「そして……二割が、ぼくの愛すべき美少女たちだ!」
大きな声で、どうしようもない宣言をするマサキ。その割合だと、合計して百二十パーセントになってしまうのだが、わざと言ってるのか本当にボケているのかまったく説明もないまま話は続く。
マサキ理論によると、三十人弱のこのクラスだと美少女は二人か三人ということになる。それにしても毎回、リアルにしろフィクションにしろ、この手の話で、なぜ標的がいつも美少女なのか不思議に感じるのだが、むりやり理由をつけてみれば、マサキたちキモオタは面食いが多いということがあげられる。 ごく普通の一般成人男子が自分の学生時代を思い起こせば、それは美人に目を奪われることもあっただろうが、そりゃ美人は大好きだが、美人にこしたことはないんだが、どう考えても美人が一番だが……失礼。 だからといって美人を好きになるわけではなくて、案外と身近に感じる普通の女子を何かのきっかけで好きになったりするものだ。 一度好きになれば、よい面が拡大されて見えてそれはそれで失敗したりもする。 それに比べてマサキたちキモオタという人種は、普段女子とコミュニケーションを取りたくても取れないので、身近に感じるということが少ない。つまり、女性への評価が極端に外見のみに偏ってしまっても仕方がないのではないだろうか。 いや、仕方がないのではないだろうかで犯される方もたまったものではないが。とりあえず、話を戻そう。
「グループ分けしてみたから、このチームでクラス総妊娠計画を発布する」
黒板にクラスメイトの名前を次々と書いていくマサキ、そこに円を書いたり線を引っ張る。 クラスに女子は十五名で、これを上中下の三グループに分ける。マサキが美少女と認定した、鳥取ツバメ、円藤希、佐藤理沙までの上位三名はマサキ直属として他の男には手出しさせない。
ほか、前章で出てきた伊藤真奈美以下八名の中位ランクは、マサキと同レベルだと思って親交もあったデブオタ四名(命名種付け隊)によって輪姦させて妊娠させる。 「個人的に娶りたいと思った女子ならば付き合っても良し」というマサキの声に、種付け隊の喜びの声がこだまする。 女子中学生で普通クラスなら、どこかしら魅力があるものだ。まして同級生を犯せるなど、中学生の夢といっていい。種付け隊に指名された四人は喜んで、マサキに永遠の忠誠を誓わんと、叫び声をあげた。餌を与え続ける限り、マサキがジークと叫べばハイルと叫ぶ下僕四人のできあがりだ。 それにたいして、女子からは口々に怒号と、嗚咽と、悲鳴があがった。 まさにデブオタ革命の瞬間であった。
問題は餌にもならない、下位グループの女子四名の始末である。阿東、仲島、空木、中沢。最後の中沢陽子は、顔が色黒なだけで多少はマシだが、残りは見事なクリーチャーぞろいである。 実は、マサキのクラスはハズレクラスと一部男子には言われていた。なぜならこの下位グループの四人は、マサキの学園でブス四天王と呼ばれている猛者ぞろいである。 「この四名は、特別にドキュン二人に下賜する」
ドキュンといわれて、誰のことだろうときょろきょろ周りをみる田村、三沢の二名。 「毎回毎回、いい加減に気づけよ、お前らのことだ」とマサキに声をかけられた、田村、三沢の二人は恐ろしくなってそっとブス四天王のほうを向く。 ブス四天王の中でも特に、超巨大クリーチャーとしか言いようがないデブス阿東、メガネ出っ歯の仲島が、かもし出す異様な雰囲気も酷い。吐き気を催すブサイクというのはこの世に存在するのである。神は死んだ。 「特にマサキに対して態度の悪かった田村に罰として、阿東と仲島とつきあわせてどっちかと結婚させる」などといわれて、三沢は半ば自分の怒りも含めて、友達のために騒ぎ出した。 横で田村が何も言わないので、気になって三沢が振り向くと、その横で田村は音もなくぐったりと気を失っていた。真っ白に燃え尽きてしまっていた。 「田村……おいしっかりしろ!」 もう一度、三沢は振り返って阿東美香の方を見た。田村と三沢を見て、ポッと顔を赤くする美香の悪魔的なブサイクさに戦慄が走る。怒りではなく、気持ち悪さのほうで胸がムカつく。あの恐ろしく醜悪な顔を田村は見てしまったのだ。まして、あれと結婚させるとか言われた日にはいったいどこの野蛮な国の拷問なのだ。 (阿東美香にとっては、この事態よかったのかもな。こんな機会でもなければ、あの化け物は一生男と付き合うとか、抱き合うとかありえないもんな……) 友達の田村には悪いが阿東美香が、自分に割り当てられなくてよかった。 (ここで、マサキの心証を悪くして田村と交代とかいわれたら、オレは舌を噛んで死ぬしかなくなる) そう思いなおして、騒ぐのをやめた三沢だった。空木も、中沢は四天王と言うほどにはブサイクではないし、肉付きも悪くない。自分だって贅沢が言える顔ではないのだ。相手の容姿の悪さに、目を瞑れば楽しく抱けるだろう。 (すまん田村……) ドキュンB、三沢は田村を生贄にささげることを心に決めた。
それぞれの思惑から、騒然となるクラスに収拾をつけるために、マサキは催眠タイムウオッチのスイッチを入れた。脳髄の奥からの勝利の鼓動!
「残念ながら、どんなに騒いでもお前らには拒否権はないんだよ!」
絶対的な催眠の力があるかぎり、クラスは、マサキの支配下にあるのだ。全てはマサキの思惑通りに進む……。
――――
「クラス総妊娠計画」が発布された夕方。安西マサキは、グラウンドに姿を見せていた。この学校では運動部の活動はとても盛んだ。広い運動場からは、遠くから野球部の独特な掛け声や、運動部がジョギングしている靴音が響く。
目的は、鳥取ツバメに続いてクラスで第二標的に定めた円藤希。 希は、女子陸上部の秘密兵器と期待されている元気少女である。競争率の高い、百メートルの選手権には同じ部のエースと目されてる喜志一美に敗れて落ちたものの、二百メートルでは去年の県大会で上位の成績を残している。 百メートルではライバルの喜志の圧倒的な初速に負ける、希が勝っているのは中途半端な持久力と容姿である。そう、希は格段に顔が良かった。 健康的な小麦色の肌に、短く刈り上げれても潤いを失わないやや赤みがかった髪に手入れをまったくしていないくせに整った眉、右の目元に星のようなほくろが二つ並んでいるのがアクセントになって魅力を高めている。いわゆる泣きぼくろだ。 身体も他の部員が激しい練習で痩せているのに比べると、出るところは健康的にちゃんと出ている。むしろ出すぎているぐらいで、日に日に女らしくなっていく身体が逆に自分の足を引っ張っている弱点のように思えて、むしろ希にはコンプレックスだった。 だから、無理やりにでも男勝りの動作で、その負い目を隠そうとする。練習は誰よりも必死にやった。それでも、逆に女性らしさが強調されてしまうらしいのが希の悩みだ。 いまも、百メートルをちょうど走りきったところだったが、その陸上をするには豊かすぎる胸が左右に揺れまくり、胸から目をそむければ、尻から太もものラインも魅惑的だし、ちょっと少しはなれて一緒に練習している男子の理性がヤバイ状況だった。
「希、同じクラスの子が尋ねてきてるよ」 そう喜志が声をかける。ちょうど身体が温まって練習が乗ってきたときだったので、舌打ちして円周の外に出る。そこで希を待っていたのは、クラスのデブオタ少年だった。希たちの練習をニヤニヤと笑いながら静かに見つめている。 三年の部長がぼそっと「希の彼氏?」と言う。
マサキにいわれて声をかけた喜志も、まさかそれはないだろうと出来の悪い冗談を聞いたように苦笑した。希は、陸上部の中でも一番の硬派だし、真面目な子だから。それに、希が付き合うにしても、デブオタ少年のマサキは一番嫌うタイプだろうからだ。釣り合いが取れないにも程がある。どうせクラスの用事かなにかだ。 そう思って、他のみんなはすぐ練習に戻った。
「何のようだよ」 マサキを容赦なく睨みつける希。 「まあまあ、とりあえず人気のないところにいこうよ」 練習を邪魔されたうえに、最悪の相手に最悪のセリフ。希はブチ切れ寸前であったが、催眠の効果が効いているのか、とりあえず死ぬほど嫌そうな顔で、引きずられて校舎の裏側に付いて行く。 「私、練習が忙しいんだけど……」 「円藤にも悪い話じゃないからさー」 校舎裏のブロックの段に座るマサキ。マサキは、希にも座るようにいったが、ふてくされたように立っている希。命令は一応聞くものの、素直に言いなりにはならないようだ。 (もともとが意志の強い女だからな) 鳥取家の面々もそうだったが、意志の強い人間は催眠にかかりにくいのだ。だが、マサキもこれまでのマサキではない、対処法はなんとなく習得している。 睨み付ける希の視線を避けずに押さえ込むように見つめながら、マサキは話す。 「円藤、最近また百メートルのタイムが伸び悩んでるらしいな。このままだとまた今年も喜志に、代表枠を取られるな」 希の目の色が変わった。不満の色を濃くする。 「お前、それ誰に聞いた!」 「誰だっていいだろう。あのさ、タイムを伸ばす方法があるっていったら、ぼくの話を聞くか」 希の目は、不満を通り越して怒りの色を濃くしている。可愛い顔して結構凶暴そうな目つきをする。それでも、マサキは目線を外さない。すでに催眠下に入っているという安心感があるから、不安はないのだ。マサキに危害を加えることはできない……はず。 見つめていると暇なので、マサキは希の目を見つめながら、希の中に入って逆に自分を見つめてるようなイメージを創る。 空気を静め、心を冷たくして、大局を読む。最近、なんとなく身についてきた心理掌握術だ。催眠マニュアルには玲瓏と書かれていた。磨かれた玉のように、澄んだ心で。 相手の心を動かすには、それこそ相手になったつもりでその全てを理解し、状況を見つめる。まるで、相手になったようにこの事態を見守るのだ。そうすれば、相手がどう動くかも見えてくる。 「……ちっ、話しだけでも聞くよ、私は忙しいからなるべく手短に頼む」 乗ってきた、そう思ってマサキはにやりと笑う。 「簡単な話だよ、ぼくの精液を身体に取り込めば取り込んだ分だけ、タイムが伸びるよ」 「なっ!」 精液とか、突然ありえない単語が出てきて、血相を変える希。「なんてことを、いいだすのか」か、あるいは単純に「なんなんだいったい」か。大体、希が言いたいのはそんなところだろうなと想定するマサキ。未経験だと思われる中学生にいきなり卑猥な言葉を投げつけるのはきつい、だからこその動揺を誘うマサキ得意の手だ。 動揺して、想像があらぬところにいけば、意志を固めて抵抗がしづらくなる。 「まあ聞けよ、君はぼくの言うことを疑えない」 動揺を振り切って、反抗的な目で見つめてくる円藤。その視線がいかに鋭くても、怖くはない。なにせ、毎日ツバメちゃんの攻撃にも耐え続けてるんだ。いいかげん、耐性というものがついてくる。 円藤は睨み続けていたが、ふっと気を抜いてため息をついた。 「……そうだな、そのマサキの精液を……取り込む。それが本当だとは認める」 「マサキじゃなくて、マサキ様だろ」 「…………教室の中だけだろ」 「周りに誰もいなければ、そう呼べと教えただろう」 「………………マサキ様」 「よし」 スポーツ少女、円藤希も、鳥取ツバメに負けず劣らず、マサキいつか犯してやりたいと思っていた少女だ。その性格もちゃんと把握している。希は、上下関係に妙にこだわるところがある。下級生に対してはキツイし、同級生にも結構冷淡だ。その一方で、自分が信頼しているいまの陸上部の部長や尊敬しているらしい顧問の先生に対しては積極的で、言うことには絶対に逆らわない。 こういうのを権威的な性格というのだろうか。マサキが見るにただ犬っぽいという感じだ。自分より目上で、尊敬している相手には尻尾を振るが、それ以外には懐かない。円藤希に言うことを聞かせるのに、大事なのは上下関係をはっきりさせること。 「じゃあ、さっそく」 「そんなものを出すな! ここは外だぞ!」 上着を脱ぎ、ズボンのファスナーを下して、ちんこを出すマサキ。ここでフェラチオをさせようというのだ。 「どうせ、だれも見てないって」 「んーんー」 ちょっと強めに力を込めてかがませて、顔に勃起したものを押し付けてやる。やっぱり抵抗は少ない。顔を背けているが、多少いやがってくれたほうがマサキは興奮するタイプなのだ。 「ほら、大人しく口をあけろ」 「……」 いわれたまま、口を空けてくれたのでそこに突っ込んでみる。校舎裏の人気がない場所というシチュエーションであるので、興奮はするのだが生暖かい口に突っ込んで反応がないので、このままだとイマラチオになってしまう。 マサキは、オタの類にもれず体力がない。嫌がる相手や、無抵抗な相手の口内をこの結構無理な体勢で無理やり犯すというのは、思いのほか疲れる。腰を振って、口内を蹂躙してみたのだが、やはりイクまで無反応というのはつまらない。 「円藤、もっと舐めるようにしてみてくれ」 恐る恐るという感じで舌をチロチロと這わせてくれる希。顔は嫌がって身体は硬直気味だ。やっぱり口が使えないでいるので鼻息がマサキの逸物に降りかかってるのが気持ちがいい感じだ。マサキは、腰を動かすのをやめて希の拙い舌技を楽しむ。 「あー、じれったい感じが溜まらんが、もうちょっと激しくやらないといつまでも終わらないぞ」 希は、キッと睨みつけると振り切ったように舌を全力で這わせてくれる。 「うあ、それはちょっと激しすぎる」 止めろとはいわれてない、怒りの発散口を見つけたように希は必死になって舌をごりごりと這わせてくる。この反応は読めなかった、舌技はつたないものの、純粋に強烈な刺激を加えられ続けて、今日は一回も出していないこともあって、絶頂を迎えてしまった。 「だめだ、出る……全部ちゃんと飲めよ円藤!」
ドピュドピュドピュドピュドピュ!!
たっぷりと出やがった。希は、突然口の中に放出された粘液に目を白黒させながらも、なんとかゴクゴクと飲み下していった。 「…………気持ち……悪い」 「ぼくは気持ちよかったよ。ごくろうさま」 毎度のことながら、飲ませると征服感があるとマサキはいい気分になる。 「これでいいんだろ……マサキ様」 希は、口を拭いて上目遣いに睨みつける。もちろん、マサキはこれで終わるつもりなど毛頭なかった。なかったのだが。
「おいおい、何これカップル?」 「そんなわけねーよ、こんなブ男と……レイプかなんかじゃね」 「そんなやつ相手にしてないで、俺らとやろうぜ」 「お前もいいよな、彼女借りるぜ?」 男が四人、フラフラと校舎裏の影からやってくる。しまった、どっからか見られてたのか。しかも、相手は悪いことに四人とも体格のいい不良だ。たぶん三年生だろう、マサキのクラスの中途半端なドキュンなど問題にならない、本当の悪。 リーダー格の十字のチョーカーをつけた金髪の男が、先頭を切って近づいてくる。なんかヤバメの薬でも決めた感じの危ない目をして、乾いた笑いを貼り付けてる。こいつが一番やばそうだ。マサキの身長と比べると子供と大人の体格差だ。本当に中学生だろうか。微妙にイケメンなのもムカつくが、そんなこといってる場合じゃない。やば過ぎる空気だ。
(しょうがない、あれを使うか)
ちょっと無理な連続使用になるが、このままやられるままになるわけにはいかない。マサキは催眠タイムウオッチを使おうと、上着のポケットを弄り……。 (しまった!) 上着を脱ぎっぱなしにしていた。あわてて、脱いだ上着に手を伸ばしている間にもすっと近づいてくる不良。一瞬にして間合いを詰められた。間に合わない。殴られる。そう思って、マサキは身を竦めると。 次の瞬間、抱きつくように円藤希がリーダー格に飛び込んでいって、抱きつかれた男はニヤけた笑いを顔に貼り付けたまま……ゆっくりと倒れた。 「おまえ、なにしや、ガァ!」 そう叫び声を上げた二人目の男の側頭部を、希は無言で殴りつける。男はセリフをいいかけたままで、あっけなく倒れた。一気に、前の二人が倒されて囲むようにしていた残り二人は動揺する。 そのまま、希は三人目のピアスの男の股の間に蹴りを放つ。的確に股間を狙っての一撃が見事に決まり。マサキは、泡を吹いて痙攣しながら倒れる男を始めてみた。最後の男は、後ろに飛びのいて逃げようとする。希のリーチが届かない安全圏まで逃れると、クルッと回転して全力疾走で離脱する。他の三人よりは賢明だったようだ。 「ふうん。逃げるのか、なかなかいい判断」
希はそれを見送るようにして、追わない。マサキが追わないのかと思ったら、距離が少し離れたところで、ものすごいダッシュで追っていく。さすが陸上部だ。不良の走りなどものともしない。そのままダッシュの勢いで、飛び込んでいって背中に足蹴りを食らわせる。 「どう、陸上用のスパイクの味は?」 そりゃー超痛いだろうよ。蹴られた男は、ピクピクと身体を震わせながら、虫の息だ。それでも生きていたらしく這うようにしてまだ逃げようとする。そこにさらにさっき蹴った部分に、かかと落としを食らわせた。希の足は長く、頂点から振り下ろされる足が綺麗だとマサキは思った。 綺麗にきまったかかと落としに、一度で呻くようにして動かなくなったのだが、念のためにもう一度、同じ場所にかかとを叩きつける希。もう蹴りつけても、男には反応がない。容赦がない処断だった。
「お前なあ……」 マサキが恐る恐るといった表情で声をかける。 「一人目は金的をひざで当てた、二人目は脳の運動中枢をやった。三人目も金的で、四人目は少し遊んでみた。内蔵への打撲とせいぜい肋骨が折れてる程度だと思う」 凄絶な笑みを浮かべて、マサキを睨みつける。 「少し……すっきりしたよ」
後片付けが大変だった。保健室に連絡したら、アルジェ師匠がなんとかしてくれるというので種付け隊に連絡して、気絶した不良四人を保健室まで運ばせた。目立った外傷はないし、相手は悪なので、職員室を通しても正当防衛でも通るかもしれないが、校舎裏でマサキと希の二人で何をしていたのかばれるとやっかいだ。穏便に処理できるなら、そっちのほうがいい。 この学校は、やっぱり荒れている。不良とか邪魔にならないうちに処理したほうがいいかもしれないとマサキは心に決めておいた。それまで、あんまり危険な場所でプレイしないことも大事だが。
このあと、あれだけ暴れた円藤希を相手に、その場でまたズボンのファスナーをさげて再プレイを挑むマサキも相当に精神が強くなったと思う。 「ありゃ……立たないね」 やっぱりマサキのチンポは恐怖に縮み上がって反応しなかった。むしろめり込んでる勢いだった。それを見て嬉しそうに笑う希。抵抗しないと思ったら、どうやら立たないのを予測していたらしい。マサキはとても敗北した気分だった。 仕方がないので、少し話しをしたら希は陸上をやる前は護身術をやってて、いまでも週一で道場に通っているとか。理論上は十三人までなら、一人で殺せるとか怖いことをたくさん言われた。どういう護身術だ。 そうやって、マサキを萎縮させる作戦なのだろう。だが、マサキにとってはそういう女を屈服させられる喜びを深くしただけだ。今日はもうチンポが役立ちそうになかったので、大人しく帰ることにしたが。 やはり、荒事に慣れてないマサキには今日の出来事はちょっとショッキングだったのだ。
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