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E小説(中出し・孕ませ・時間停止・催眠・環境変化など)
エロ小説のサイトですので18歳未満の方はお帰りください。傾向はマニア向け、作品中のほぼ100%中だし妊娠描写、付属性として時間停止・催眠・環境変化などです。
「エレベーターガール」中篇
 あれは、浮浪者のような風体のあの男性客に、始めて犯されて、中で出された悲惨な日の二日後の出来事だった。
 大体、遭遇は一週間に一度だから、むしろ直後の勤務は大丈夫。
 そのときの私は、本当に馬鹿なことを考えていて、あれほどショックなことがあったのだから、しばらく休めばよかったのに、むしろ何かを吹っ切るようにシフトを、つめつめに入れていた。
 そして、一週間直前ぐらいで、ぐっと休みを取る予定にした。そうすれば、二週間ぐらい会わなくて済むかもしれない。本当は永遠に会いたくないのだが、これぐらいしか私には打つ手がなかったのだ。神様だって、酷いことばかりしないはずだ。
 自分を守る術すら持たない、ささやかな私の回避策は、上手くいくと思っていた。

 だから、二日後のまだ開店してすぐという時間なのに、オニギリの化け物みたいな男性客がにゅっと、顔を出したの見たときは営業スマイルもこわばり、腰がくだけそうになった。
 きっと、顔も青ざめていたに違いないのに。それに気がつかない振りで、男性客は声をかけてきた。
「よう、ゆかりちゃんお仕事がんばってる?」
「……今日は、美津屋百貨店にご来店くださいまして誠にありがとうございます。ご利用階数をお知らせください」
 営業スマイルすらできなかった。ちゃんと台詞が言えたのは訓練の賜物だろう。
 平日のまだ店が開いたばかりの時刻、ちょうど客がまだ来ていないのかそれとも男性客がいるからなのか、他に客はいない。
 箱のなかで、この危険な男と二人っきり。
 私は、もう覚悟した。酷い目にあうことを。
「そうだなあ、十階に行ってもらえるかな」
「へ……はい?」
「なにやってんのゆかりちゃん、十階だよ十階」
「はっ、はい十階、電気製品と雑貨のフロアです」
 エレベーターはスルスルとあがっていく。男性客と私二人を乗せて。そして、男性客は黙って降りていった。
 そうして、扉は閉まる……閉まってくれた!!

 今日は、私はついてる!
 ありえないと思いつつ、私は歓喜に包まれていた。あの男性客は信じられないことに、普通に買い物しに来ただけだったのだ。何を買うのかなんて、私の知ったことじゃない、貧乏そうだし、安物の電池でも買うのだろう。マンガンとか。
 そんなことはどうでもいい、あとは帰りに違うエレベーターに乗って帰ってくれればそれでいい。
 うちは、大きな百貨店だから、エレベーターは四基もある。
 確率は四分の一。たった25パーセント。
 そう、当たるものじゃないはずだ。

 理性では最悪の事態が避けられた、今日はついているから大丈夫だと思い込もうとしているのだが、私の女の勘はもうこの段階で警鐘を鳴らし始めていた。
 エレベーターは最上階まで上がり、そして下がる。客が一向に乗ってこないのだ。いくら平日といっても都心の大手デパートだ。こんなことはありえない。
 そうして、二回ほど上下したときに、ようやくお客さんが乗り込んできた。

 そう、思ったらあの男性客だった。
 すぐ気がつかなかったのは、電気コーナーの店員と一緒に入ってきたからだ。店員は、箱を三つも抱えている。
「ごめん、ちょっとエレベーター止めていて」
 そう年長の店員に言われたので、停止ボタンを押した。店員は、男性客にいろいろと説明しながら、脚立を取り出して設置し始めた。
 何かと思ったら、デジタルカメラだった。似たようなものを三台も設定した。
「いつもありがとうございます、基本的にはどれもボタン押すだけで録画できます。最新機種ですから、自動撮影ズームモードなんてのもありますよ。詳しいことは説明書に書いてありますが、あとからでもご説明させていただきます」
 そういって、きちんと組み立てて設定と設置を手早く終えると、電気コーナーの店員はペコペコと頭を下げながら退散した。
 あとは、立てられた三台のカメラと男性客と私だけが残った。なにこれ……。
「次は、家具売り場に行ってもらえるかな」
「はっ……はい、五階ですね。家具売り場がございます」
 いわれて、慌てて対応する。
 すぐに五階に着くと、何も言わずに男性は行ってしまった。
 ちょっと、カメラ立てっぱなしなんだけど……。

 どうしようと思ったが、私はとりあえずエレベーターを止めて待っていた。
 そしたら、男性客がすぐ来てくれて安心した。
「おー、言わないでもちゃんと止めて待っててくれたんだ。さすがに優秀なエレベーターガールだね。感心感心」
「このままで他のお客さん乗せるわけにいかないですし、あのこれいったい何のつもりなんですか……」
 私が事情を聞こうと思った矢先に、家具売り場の主任と、店員が二人がかりでやってきた。
 そして、なんとエレベーター内にベットを設置し始めたのだ。
 なにこれ……いったい何のつもりなの。
 定員二十五名の広めのエレベーターとはいえ、そのど真ん中にベットが設置されているというのはシュールな光景だ。
「おお、エレベーターの幅にぴったりじゃないか、これはすごい技術だ」
「最新型は、ここの伸縮アームに工夫がありまして、これはマットごと自動で伸縮するタイプですから、長さは自由に調整できますよ」
「すごいね、寝心地も申し分ないし、高い金だす価値はあるよ」
「お買い上げ、ありがとうございます。とりあえずここに設置させていただきましたが、どこかに移動するときは声をかけていただければ、どこでもお運びしますので」
 そういって、家具売り場の店員たちは去っていった。

「あの! これいったいなんなんですか説明してください」
 私は、もうわけがわからなくなってきた。
「わかった、とりあえず扉を閉めて適当なポイントで停止させてくれるかな、ゆっくりと説明するから」
 私は、指示に従うしかなくてそうした。
「ふう、これでよしと。とりあえず落ち着いたね」
「私は落ち着いてませんけど……あのそれでいったい」
「今日は、このエレベーターは貸しきる。君のセクションのチーフにはすでに話を取ってあるからね、君も今日は、ここで一日仕事になるから覚悟してね」
「そんな……」
「こんなに早く起きたの久しぶりだよ……眠い。時間はあるし、このまま少し寝ちゃおうかなあ。君はその間に、この台本を全て暗記しておいてね」
 そういって男に渡された汚らしい字で台本と殴り書きされたノートのタイトルにはこうあった。

『エレベーターガール芹川ゆかり、排卵日種付けセックス ~貴方の子供を孕ませて~』

「なにこれ……ちょっと寝ないでください!」
「もう……なんだよ、俺は君のために徹夜で台本書いてて睡眠が足りてないんだ」
「これ私の名前ですよね、事情がまったく読めないんですが、この本はいったい……」
「君は一度で指示を理解できない、本当に困った娘だよね。履歴書に東政大学卒業って書いてあったけど、名門大学出身なら、これぐらいはすぐ理解しろよ」
「すいません……でも、こんなのって」
 男性客が、ため息をついてベットから飛び下りると、三台のデジタルカメラの角度をベットに向けて、微妙に調節しながら説明を始めた。
「このカメラ一台いくらするか知ってるか?」
「え……その……十万円ぐらい?」
「三十万だよ、じゃあ君が腰掛けてるベットはいくらすると思う」
 ベットの相場なんてよく分からない。でも、すごく高そうなベットだから、私は少し考えてから答えた。
「……五十万ぐらい」
「百五十万だよ……自分のデパートの商品の値段ぐらい把握しとけ」
「すいません……」
 トイレがどこにあるか、どの売り場にどの商品があるかまではちゃんと頭に入っているが、まさか値段まで聞かれるとは思ってなかった。たしかに、そういうケースでもきちんと対応できるに越したことはない。
 これは男性客の指摘のほうが正しいと思った。
「まあ値段はどうでもいいんだよ」
「えー、そういう注意ではなかったんですか」
「そうじゃねえ、ここで大事なのは俺がこれを全部買ったってことだ。デジカメ三台に、ベットでしめて、二百四十万円だ。ゆかりちゃんよ、お前俺が金持ちに見えるか」
「正直なところ……見えないです」
「まあ、そうだよ。だが支払いはしなくてはならない」
「そうですね……」
「そこで俺は考えたんだよ、ものすげえAVを撮ったら、儲かるってな」
「AVってなんですか」
「アダルトビデオだよ、見たことあるだろ」
「ありませんよ!」
 見たことはないけど知っている、その女性のいやらしいところを撮影して売っている、その男性がそういうときに見るやつだ……。
「最近は、ビデオじゃなくてDVDだけどな。この業界は常に、新しいコンテンツが不足しているんだ。すげえヒット作を飛ばして、シリーズ化すれば、ものすげえ大金が手に入るって寸法よ」
 そんな、そんなのって……。
「もしかして、そのアダルトDVDに出演しろっていうんですか」
「おうよ、ようやく分かったか」
「嫌ですよ! そんなのネットとかで流失したら困っちゃいますよ」
 彼氏とか、友達とか、親に、万が一そんなものが見られたら、もうその瞬間に人生終了。多分その瞬間に、羞恥と罪悪感だけで死ねる自信がある。
「大丈夫だよ、通販だけの販売にするし、最近はタイトル数も多いから、そんなに分かるもんじゃないって。まあ、さすがに美津屋百貨店の名前は出せないが、現役エレベーターガールってのは、なかなかないからな。大ヒット間違いなしだよ」
「そんな……そんな……」
 私は絶望で目の前が真っ暗になった。
「もうカメラもベットも買っちゃったしな。やるしかないわけだ」
「そんなの、買わなければよかったじゃないですか!」
「だってカメラもベットも、新しいのが欲しかったんだもん」
「そんな理由で……私は」
「だから安心しろって。ちゃんと綺麗に撮れたら編集して一本贈ってやるからな、いい記念になるぞ」
「いらないですよ……」
「やっぱ、女は綺麗なうちに撮っとくべきだしな。ほら、最近記念にヌード撮るのも流行ってるジャン。あとから、子供に貴方はこうやって生まれてきたのよって、いい思い出映像になるんじゃないかな」
「考えうる最低の未来です……」
「素晴らしい未来を想像したら眠くなってきたな。三時間やるから台本を全部暗記して、頭のなかで何度も段取りをリハーサルしとけ。お前これは仕事だぞ、お金とってお客さんに見せるんだから完璧に台本覚えて、その通りにやれと厳命しておく」
「……はい」
 逆らえるわけもなかった。厳命とまでいわれては。
 男は、言うだけ言って私が理解したのを見届けると、高級ベットに寝転んで寝息をたて始めた。こんな密室の中で、高いびきがかけるなんて得な性格をしている。
 私はというと、あまりにも汚い文字と、それ以上に陰惨な内容の台本に、苦しめられながら、それでも完全に頭に叩き込むまで、読み続けなくては、ならなかったのである。

……アダルトビデオ撮影開始 三時間後

「ぐーぐー、…………げほげほ……はぁっくし!」
 急にいびきが止まったと思ったら、咳き込み、クシャミを併発させながらきっちり三時間後に起き上がった。
 なんて時間の正確さだろう、起きかたの最低さは置いておくとして。
「おはようございます、おめざめですか」
「おう、台本は読み込んだか」
 私としては、夜まで寝ていてほしかったのだが仕方がない。
「はい、全部暗記して段取りもリハーサルしました」
「ふん、ちゃんと言えばできるんだな」
 厳命されてしまっては仕方がない、私としてはもう辛い時間が一刻も早く終わることだけを祈りながら、心を殺すしかない。殺しきれないほど、心を揺さぶる酷い台本なのだ。まるで身体と一緒に心まで犯すような。
 こんなものを徹夜で書いたという、この男性客は悪魔だ。
「じゃあ、シーンのはじめからやりましょうか」
「ちょっとまて、俺は顔が割れないようにこれをかぶらないとな」
 そういって、パーティーグッツによくある変態的なピンクのメガネをかけた男性客。
 そんなものまで用意していたのか。なんか妙に似合っているけど。
 男性客の特異なオニギリフェイスでは、そんなメガネで目元だけ隠しても、ぜんぜん意味がないのではないかな。
 それにしても、そうやって顔を隠すということは顔にモザイクなどはかけてくれないということだ。
 私は顔を隠せない。もう、始まる前から痛みだす心を押さえつける。
「台本どおり、私のほうの準備も済んでますからいつでも始められます」
 男は、また気になるらしくカメラを覗き込んで微調整をしていた。撮影班がいないので、三つの映像を上手く編集してつなげて撮るつもりなのだと、台本には注意書きされていた。
「よーし、じゃあ撮影始めるぞ。スタート」
 そういって、三箇所のカメラの録画スイッチを押していく。
 私の最悪の時が、始まった。

「始めまして、画面の前の皆さん。私は、芹川ゆかりといいます。歳は二十三歳で、職業はこのデパートのエレベーターガールをやってます」
 そういって、きちっと立って斜め四十五度の綺麗な礼をする。顔は、笑顔しか許されていない。
「すいませんね、仕事の合間に撮影に付き合ってもらって」
 そういって、男性客が入ってくる。顔にマスクをつけているだけで、もう素っ裸になっている。
 さすがに自分の書いた台本なので、台詞は完璧のようだ。
「いえいえ、今日は楽しみにしてきたんですよ。エレベーターガールの仕事にも、息抜きは必要ですから。アハハ、まさか本当にエレベーターの中で撮影とは思ってませんでしたけど」
 そういって、なるだけ可愛く見えるように小首を傾げてニッコリと笑う。
「職場だとやっぱり気がゆるめられませんか、とりあえずもっと楽な格好をなさっていいですよ」
「ええ、いいんですか。それじゃあ、失礼して」
 そういって、私は制服のボタンを上からはずして、中のシャツのボタンもはずして胸をむき出しにする。ブラジャーは事前にはずしておいた。
「おわ、でっかい胸ですね。ブラジャーはつけてないんですか」
 白々しくいう男性客。
「ブラジャーはきついから、つけてないときもあるんですよ」
「そうなんですか、ぴっちりとした制服だけど大丈夫なんですか」
「うふっ……身動きすると、乳頭がすれてちょっと気持ちいいぐらいですね」
 大嘘だ。ブラをしないで仕事なんかできるわけがない。
「それにしても、でかいおっぱいですね」
 そういって、男は私の胸を掴んでくる。
「そうなんです。ありがとうございます、自慢のおっぱいなんですよ。感度もいいんで、遠慮せずにもっともっと触ってください。ああ気持ちいい……この前計ってみたら、ブラがKカップのアンダー六十五センチでしたね」
「ええっ、えっとH、J……Kカップってことはトップバストは百センチ超えてるのか! なるほど言われてみると重量感があるはずだ」
 男は指折り数えて、スケベそうな笑いを浮かべる。
「でもここまでいくと大きすぎて揉み辛いですよね、ゴメンナサイ」
 男はもっと強く左右の胸を弄ぶ、右へ左へ。画面にむかって見せ付けるように。
 私は自分の胸の大きさに少しコンプレックスがある、こうやって弄ばれても、本当は嫌悪感しかないのだが、台本どおりに気持ちよさそうに馬鹿げた嬌声をあげ、熱い吐息を吐きかける。

「ゆかりちゃん、ただでさえ爆乳なのに、妊娠しちゃったら、もっと大きくなっちゃうかな。大体二カップぐらい大きくなるらしいですよ」
「うあー、うれしいな! えっといまKだから、L……Mカップになるんですね」
「ははっ、ゆかりちゃんは、文字通りマーベラスなオッパイになるわけだね」
 寒いギャグだ……ここ自分の台詞じゃなくてよかった。
「もう、おじさんギャグですよー」
「ごめんごめん、おじさんだからね」
 本当だよ。
「でも、ゆかりもおじさん大好物だから、おあいこです!」
「そうなんだ、じゃあちょっと最初に質問していいかな」
「何でも聞いてください」
 そういって、自分のおっぱいをなるべく淫らに両腕で支えて揺らしながら営業スマイル。これは、質問の間ずっと続けなくてはならない。淫らっていうのが、よく分からないがとにかく激しく揺らせばいいだろうか。

「じゃあ、えっと初体験はいつですか」
 これは、お決まりのセオリーらしい。ハキハキと答えろと書いてあった。早く答えて終わりにしたい。
「十七歳のときに、最初に付き合っていた彼氏の家でしました」
「そうなんだ、高校生のときだね。気持ちよかった」
「もちろん、とっても気持ちよかったです」
 これも、嘘。気持ちよくはなかったかな、むしろなれるまでは痛かった。最初の彼氏は幼馴染みたいな関係だったのだが、あまりセックスは上手くはなかったのだ。お互い初めて同士だったし、ぎこちなかったとしても愛があればいいんだとそのときは思っていた。
「そうなんだ、セックス大好きなんだね」
「はい……大好きです!」
 これは定型句。大好きと答えるしかない。
「これまでの彼氏の数と、セックスした人の数は」
「えっと、彼氏が三人でした人は三人かな」
「あれ、ちょっとまって、数があわないな。二日前に俺としたよね」
 ここは自由解答で本当のことを答えろとの指示。
 そして、アドリブで質問が混じることがあると書いてあったから。素直に答える。
「そうですね、おじさんで三人目なんですよ。二人目の彼氏とは、ちょっとしか付き合わなかったのでそこまでいかなかったんです」
「セックス大好きなわりには、経験数は少ないんだね」
「学生のころは勉強が結構大変だったのと、結構、引っ込み思案なもので。あと、一度彼氏が決まるとその人ばっかりになるタイプなんで」
「そうなんだ、彼氏には尽くすタイプなんだね」
「はい、そうなんですよ」
「それなら、いまの彼氏がいるのに、俺みたいな男とセックスしてしまってよかったのかな」
 ここから、また台本に戻る。私は、その合図に胸を自分で揺らすのを止める。この話のつなげ方は、さすがに男性客がうまい。自由解答のときに、できたら話の流れを台無しにしてやろうかと思っていたんだけど。

「彼氏は……ヒロユキくんっていうんですけど、好きって感じですね。でも、おじさんは一目見た時から、愛してるって感じです」
 そういって、愛しげに男性客を見つめる。心の中でため息をつきながら。
「そうなんだ、惚れられちゃったかなあ」
「おじさんみたいな人、私ものすごいタイプなんですよ。みていると子宮が疼くんです。この人の子供が欲しいって、これって愛してるってことですよね!」
「そうかもしれないね、俺もゆかりちゃんに子供を産ませたいって思ったからね」
「彼氏とは、ゴムつきでは週一ぐらいでやってますけど、もう四年も付き合ったから惰性って感じで。この人と結婚したいとか、子供が欲しいとかまったく思わないんですよね」 これは、台本どおりの台詞だったのだが、私は本当に彼氏のことをどう考えていたんだろう。好きかと聞かれたら、好きだと答えていた。愛しているかと言われれば、心から愛していた。
 それでも、私たちはまだ社会人としても未熟で、結婚とか出産とか、本当に蜃気楼の先にあるように感じていた。
 答えを出すのが怖かったのかもしれない。そうやって出し渋っているうちにこういう悲劇が起こってしまって、一生その答えが出せないままで終わってしまうことになったのだ。こういう辛いことは、生きているとたまにある。
「でもいいのかなあ、君は俺の名前も知らないのに、俺は金ないから養育も認知もできないんだけど」
「大丈夫ですよ、この仕事すごく給料がいいし、福利厚生もばっちりですから、おじさんとの子供一人ぐらい私一人で十分育てられますよ」
「そうなんだ、あとで困ったとかいってもおじさん知らないよ」
 私はこのタイミングで、下着とストッキングを一緒に脱ぎ去ってしまう。
 そうして、スカートをたくし上げて股をいっぱいに開くと。
 自分の手で、自分の小陰唇を全開にして、こう言い放つ。
「もう、じれったいな。さっさと、私のオマンコに、その立派なおちんちんをねじ込んで、ズポズポして気持ちよくなって、赤ちゃんの卵がでる入り口に向かってピューピューおチンポミルクを射精してください。そうしたら、私は勝手に受精して、お腹に赤ちゃんを孕んで、ひねり出して立派に育ててあげますから」
 勢いをつけないと言えないぐらいの、あまりにも馬鹿げた台詞。言い切って笑ったあとに、ちょっと心が苦しくて目が潤んだ。

「ちょっとちょっと、落ち着いてゆかりちゃん。これAVだから、撮影してるんだから手順があるからね」
「ハァハァ……ごめんなさい。そうですよね、画面の向こうで見てくれてる人もいるのに……私ったら、今日は排卵日で興奮してる、ただのメス豚の馬鹿女なんです。おじさんの子種をいただいて妊娠できるって思っただけで、もう下の口から涎を垂らしてるんですぅ」
 よく、次から次へとこんな馬鹿な台詞を考え付いたものだ。こっからさきは、もう自分で言ってて悲しいやら、情けないやら、酷いやら、という台詞のオンパレード。こんな台本を一日で仕上げたという男性客は頭がおかしい。
「そうだ、アナルの開発はちゃんとやってるかな」
「はい! もちろんですよ二日前におじさんにローションとアナルバイブをもらってから、毎朝毎晩かかさず、アナルオナニーやってます!」
 正確には、やらされてるなんだけど……。
「そうなんだ、感心だね。おじさんはアナルも好きだから、開発してくれるとうれしいよ」
「そうなんですよね、ごめんなさい。私はアナルは未経験ですから、ちょっと時間がかかるんですけど、きっとアナルでも感じられるようになりますからね」
 そういいつつ、私はローションとペンシル型のアナルバイブを取り出して、お尻をこねくり回す。ここ二日ぐらいやってて、ようやく慣れた動きになってきた、自分でも何をやっているのかという感じ。
 必死にやれという指示だったので、うう……怖いけど肛門に指を一本二本と増やしてどんどん潤滑油を入れて、そしてペンシルバイブを思いっきり突っ込む。
「はぎゃぁあ!」
「あー、そんなに無理して入れたら駄目だろう。ゆかりちゃんのアナルが傷ついたらおじさんが困っちゃうよ」
 お前が、やらせてるんだろうという涙目。それでもきちんと笑顔を貼り付けてしまっている自分が憎すぎる。
「ごめんなさい……ほら、妊娠しちゃったら安定期に入るまで前の穴で出来ないことがあるって聞いたから、早く後ろの穴でも出来るようになっておじさんに入れてもらおうとがんばってるんだけど」
「大丈夫、焦らなくてもゆっくりでいいからね」
 そういって、男性客は愛しげに私の尻をなでる。
 もちろん、必死に入れているように見せかけただけで本当に肛門が傷つくほどには突き入れていない。
 それでも、結構奥まで入ってしまうということは、たった二日朝晩やっただけなのに、自分のお尻の穴は思ったよりも広がってしまっているのだなということに、言いようのない悲しみを感じる。
「うん、赤ちゃん孕んで用済みのオマンコの変わりに、こんどはケツマンコでがんばりますので、ボテバラになってもいっぱいセックスしてくださいね」
「あーゆかりちゃん、足閉じないでね、そのままそのまま」
「はい?」
 せっかく恥ずかしい台詞をまた言い終えたのに、こんな展開は台本になかった。
「ほら、これなんだ!」
「ああっ、それは」
 男性客が取り出したのは私の愛用している基礎体温計。
 淑女のたしなみとして、私が毎朝はかってるものだ。
 それはどうでもいいけど、問題はどうして私の部屋の枕元においてあるはずの体温計を、この人がいま持っているのかってことだ!
「そう、ゆかりちゃんご愛用の基礎体温計だね。じゃあ、お熱はかりまちょーね」
「ええぇ、ああっ!」
 そういって、私の体温計を私の大事な部分に突っ込む男性客。私は、台本にもない行動だったから、本当に驚いて声を上げる。
「いいから、そのままじっとしてて」
「はい……」
 というか、基礎体温は普通に測るんであって、そんな場所で測るものじゃないんだけどなあ。それでも、悲しいかな体温は測れてしまうのだ。
 ピーという音を立てて、真っ赤なランプが点滅する。
「これはつまり、危険日っていうことだよね」
「そうですね、排卵日がもう間近に迫ってるってことです」
 ニュプっと、引き抜くと男性客はまた体温計をしまいこんでしまう。
 私のものなのに……。
 それにしても、どうしてあの男性客が持ってるんだろう。
 基礎体温計は毎日のデータを集積して測るものなので、同じものを買いなおせばいいというものではない。
 返してもらえないと、明日から本当に困るんだけど。
 ああもしかすると、今日の行為で、基礎体温測る必要なくなるとか……男性客の台本にまったくない突然の行動に不意を突かれて、心が揺れてしまったのか。どんどん暗い想念が浮かんできて、笑顔がこわばって来て、維持できなくなっちゃう。
 心が酷い現実に、引き戻される。
「危険日の証明も終わったところで、まずフェラチオしてもらおうかな」
「はい、ほんとは子種は全部オマンコにほしいですけど、私ばっかりしてもらっては駄目なので、おじさんに気持ちよくなってもらうためにがんばります!」
 また台本の台詞に入ったので、私は心を振り切ってまた流れに戻った。
「じゃあ、こっちのカメラの近くにきてチンコ舐めてね」
「はーい、おいふぃいです」
 ジュポっと咥えて、まるでアイスクリームを舐めとるように男性客のあそこを舐める。たぶんこの男は、こうやってAVの撮影もうまくやりながら、身体と一緒に私の心も弄んで楽しんでいるのだ。
 それへの私のできるせめてもの抵抗といえば、台本に乗って必死に心のない馬鹿女を演じ続けるだけだ。
 だから、舌技の限りを尽くして必死に舐めてやった。男性客の汚らしいタマタマまでも舐めとる。
「おお、気持ちいいな。すぐ出しちゃいそうなぐらいだよ」
「きもちふぃいですふぁ」
 台本にはフェラチオをするとしか書いてなかったので、最初からここまで必死にやるとは、思ってなかったんだろう。少しだけ、出し抜いてやれた気がして楽しかった。これも情けなくて、悲しい楽しさだけど。
 それでも、舌を休めることなく、今度は必死になって尿道口に吸い付いた。
「おおっそんなに強く吸うか!」
「ふぁやく! だふぃて」
 ほんの少し、男性客が台本と違う台詞になってる。男性客に一糸報いてやれたか。
 私が間違えることは禁止されているが、男性客は別に自分で間違えるのは自由なのだろう。だから私ができることっていうのは相手の予想を超えて、驚かしてやることぐらいだった。
「うおおお、出ちゃう! すぐ飲んじゃだめだよ口の中に溜めて」
「ふぁい!」

 ドピュドピュドピュドピュドピュドピュ!

 私の喉に突き刺さるような濃い粘液を吐きだす、男性客のチンポ。私の口のなかは、精液で一杯になっているはずだ。
「ふぅ……たくさんでた。ちゃんとお口に溜めて見せて」
「ふぁい、あーん」
 口をあけて、私は台本どおりカメラの前に舌をだす。自分の舌の上に真っ白な精液が乗っているのが、カメラの横のモニター画面で見えてしまった。
 自分で見たくない光景だった、心のそこから吐き気がする。
 私は楽しげに、口の中の精液を私は指で弄くって遊び、画面に向かって、見せ付けるようにする。全ては台本どおり。
 口の中で、精液はどんどん苦味を増していく。酷い味だ。
「よし、十分楽しんだら、もう飲んでもいいよ」
 ゴキュゴキュと、私は口の中の精液を飲み干す。
「ふぅ……濃くておいしかったです」
「どうだった、俺の精液は」
「濃すぎて、口マンコも妊娠してしまいそうでしたぁ!」
 そういって、満面の笑みを浮かべる。馬鹿女になっている私。

「じゃあ、次はいよいよゆかりちゃんのオマンコズポズポしてあげようかな」
「わーい! 私オマンコ、ズポズポ大好き!」
 もうやけっぱちだ。
「その前に、オマンコをよく濡らそうね」
「はーい!」
 こんなキャラだと男性客に思われてるんだろうか、私は。
 男性客はカメラの一つを動かし、私のあそこにズームさせる。
「綺麗なオマンコだね」
「ありがとうございます」
「クリちゃんも皮をかぶってるし、あんまりここでは遊ばないのかな」
「そうですね、あんまり触らないかも……あぁ」
「ここもね、よく剥いて拡張してあげると、大きくなるんだよ。今度してあげるね」
「そうなんだ、楽しみにしてますね」
 私は、またひとつ後戻りできない道を歩かされるらしい。
 舐められたり、指でこねくりまわされたり、一通りのことはされた。
 悲しいかな、物理的刺激があれば、私は感じるし濡れもする。
「もう、ここも、大丈夫みたいだね」
「ええ、もう十分です。ありがとうございます」
「ちゃんと、お礼の言える娘は好きだよ」
 そういって、笑って男性客は頭をなでる。馬鹿にされているとしか思えない。
「早く、中に出して欲しくて待ちきれないです」
 私の前に、ぬっとカメラを持ってくる男性客。正確にいうと、舐められやすいように大きく股を開いた私の股のところにカメラを持ってくるわけだ。
 ズーと、私の女性器の奥までが見える位置に自動ズームされたのが分かった。ああ
私は撮られてはいけないところを一番奥まで撮られているんだなと感じる。
 深い諦めと絶望、もちろん顔は微笑んだまま。

「じゃあ、ちゃんと開いてカメラの前で懇願してごらん」
 そういって、男性客はいやらしげに笑う。
 私は、それを合図に、自ら腰を上げて、子宮口が見えんばかりの勢いで自分の女性器を開き、こう懇願する。
「はい、当店でエレベーターガールをしている芹川ゆかり二十三歳です。私は、今日はちょうど排卵日で、ザーメンを卵にかけてもらって妊娠したくてたまらない、いけない変態メス豚です。いまから、欲しくて欲しくてたまらなかったおチンポミルクを注いで妊娠しちゃいます。画面の前の皆さんも、どうぞ私のオマンコに射精して妊娠させてるような気持ちで、私が赤ん坊を孕むところを見てくださいね。この後、私のお腹が大きくなってくるいくところから、出産までちゃんと作品にして撮ってくださるそうなので、そちらも楽しみにして待っててください」
 台詞の一つを言うたびに、人間としての何かを一つ失っていくような気持ち。
「よく出来たね、じゃあせっかく職場なんだからエレベーターガールっぽく迎え入れてもらおうかな」
 そういって、男性客は私にのしかかってくる。
「はい、本日は私のオマンコにいらっしゃいまして、誠にありがとうございます。ご利用回数をおっしゃってください」
「じゃあ、とりあえず一回で」
「もう、そんな意地悪いわないで、二回でも三回でも私の中でイッってください!」
 そういって、腰に手を添えて可愛らしい仕草をする。
「こらこら、エレベーターガールはお客さんに言われた回数にイクものでしょ」
「ごめんなさい、私はいやらしいエレベーターガールなんです。それじゃあ、代わりにお客様が一回に行く間に、私は五回にも十回にも行ってしまいます」
「じゃあ、いまからオマンコするから。そのサービスがよければ二回でも三回でも利用してやるよ」
「よろしくおねがいしますぅ!」
「さってと、吸い付くようなオマンコだな」
 男性客は汚らしい男根の先っぽを私のあそこにと這わせた。男の粘膜と私の粘膜が触れ合ったときに、私の身体はビクンと震えた。
「いまからでも、ゴムつけてやってもいいんだぜ。別に気持ちよくなりたいだけなら、子供まで孕まないでもいいじゃないか」
 そういって、腰を押し付けたり引いたりする。
「違うんです、妊娠したいんです。赤ちゃんは早くつくったほうがいいっていうし、二十三歳で適齢期だから、おじさんみたいな素敵な人の赤ちゃんを産みたいんです。お願いだから、意地悪しないで入れてください」
 ゴムなんかつける気がないくせに、私から誘惑してしたという言い訳が欲しいために、こういう過程を取るんだろうな。
 こうして映像に残されてしまえば、どんな結果が起きても、見てる人は私が誘惑したせいだと思うに違いなかった。
 台本どおりの酷い台詞をしゃべらされている自分に絶望しながら、頭のどっかの冷静な部分がそんなことを考えていた。
「しょうがない変態娘だなあ、たっぷり中で出してやるから、がんばって孕みな」
 そういって男性客は、腰を抱え込むようにして、私の奥深くに一気に挿入した。ニュプッっと音を立てて、私の大事なところに彼のものが突き刺さる。
「ああああぁぁ」
 私は叫び声をあげながら、最後に残った理性が音を立てて消えていくのを感じていた。
 ああ、汚らしい指で触られたときだって嫌悪感はあった。でもいままさに、私の中に突き入れられようとしているこの暖かい肉棒は、私を妊娠させようという生殖器なのだ。
 ニュプっと、あの男の生殖器が私の深いところにえぐったとき。
 粘膜と粘膜が擦り付けあう感触を、私は生々しく感じていた。
「おらおら、どうだ」
「いいですぅー、ああぁー、気持ちいい!」
 彼氏との慣れていて、しかも愛のあるセックスであればこんな強烈な感じ方はしない。 名前も、住んでいる場所もしらない、年齢すら分からない汚らしいおっさんの生殖器が私の中に入ってくる強烈な異物感。
 なんという口惜しさだろう。
 それなのに、認めたくないけれど、私はこのとき台本には書かれていない本当のメスの叫びを上げていた。
 私の生殖器は、私の意志に反して男の生殖器を喜んで迎え入れていたのだ。
 彼が腰をつけば、私の肉襞の一枚一枚が歓喜の声をあげて彼を向かえ入れた。
 彼が腰をひけば、私の肉襞の一枚一枚が亀頭のそりを行かないでと掴んで中々離さなかった。
 なんで……この男根は、ヒロユキのものじゃないのよ。
 どこの誰ともしらない、汚いおっさんのやつなのよ。
 何で分からないの、それとも分かって……私のあそこは吸い付いてるの。
「らめぇー、もう死んじゃう!」
 私は、台本どおりに何度も何度もオーガズムを迎えた振りをする。
 あくまで、これはイッた振り……。

「今何回いったの」
「五回です、五回でございますぅーー!」

 最初は振りだったはずなのに、快楽の波が何度も襲ってきて、振りなのか本当に自分が感じているのか分からなくなってきた。
 違う、私は本当に感じて嬌声をあげているのだ。
「ふう、うめえ」
「ああ、またきちゃう……」
 男性客の愛撫はあまりにも強引で執拗だった。
 やさしい私の彼氏の愛撫とは、比べ物にならない。
 もちろん、彼氏のほうがよかった。こんなおっさんなんかの手がいいわけがない。
 それなのに、私の身体中が感じていた。
 彼氏なら、私の身体に触れるときは常にやさしく振れる。この男は、ゴツゴツした手で、私の胸を根元から力いっぱいしごきあげるのだ。そして、その刺激で起きたった乳頭に噛み付くように力いっぱい吸い付く。
「あああああぁぁぁ」
 そんなことをされたら、後が残ってしまう。痛いはずだった、苦しいはずだった。それなのに、このときはどんな酷いことをされても、全て快楽に変換されてしまう。
 私の身体が……おかしい!
 私は自分の変化に気がついた、男性客の腐った味がする舌を、加齢臭がぷんぷんと匂いような身体を、私は少し好きになりかけているのだ。
 このAVの台本の儀式は、私のプライドを粉々に打ち砕いただけではなくて、丁寧に私の心の門を押し開いていく効果があったのだ。
 そうとしか、そう考えでもしなければ、私の心は壊れてしまいそう。
 何でこんなにも気持ちがいい。

 最後の矜持は守るつもりだったのに。

「いやぁあああ」
「今何回だ」
「十回……十回……」
 本当に数回連続でいかされた、私の身体は馬鹿みたいに何をされても、気持ちがよかった。
 男はもうただ技巧もなく、私にチンチンを押し込んでこすり付けて、ぐちょぐちょにして、ただ腰を振るだけだ。その腕は、私の胸を乱暴に掴んでしごくようにこすりあげる。 あるいは、手で私のお尻を持ち上げて、真っ赤になるまで叩く。
 痛みが、快楽に変わっていた。
 嫌悪感が、快楽に変わっていた。
 悲しみが、苦しみが、怒りが、その全ての絶望が、みんなみんな快楽に変わっていた。そこにいる私は、もう私ではなかった。
 私は、AVに出演している馬鹿女。
 こんなおっさんの精液を欲しがって、自分から腰を振って、中に出されて妊娠するメス豚。みんな私が悪い……私が気持ちいいのが悪い!
「そろそろ、限界だ。中に出していいのか」
「出して! 中に出してお願い!」
 私は腰を振ってお願いしていた。
「くそ、出るぞ……ゆかり、孕めよ!」
「孕む……孕む!!」
 私のぎゅうぎゅうに締め付ける膣の中で、男のモノはブクッ!
 そう、音を立てたように膨れ上がった瞬間に、男は私の骨に響くぐらいガツンと私の一番奥に差し込んだ。
 まるで、子宮の中に入ってしまったような、そんな一突きだった。
 そして、その瞬間に男は私の一番奥で限界を迎えた。

 ドピュドピュドピュドピュドピュドピュ!

「あああぁああああ!」

 私の中に、余すところなく、大量の精液が、絶望的なまでに、降り注いだ。
 その瞬間に、私の心はどこかに吹き飛んでしまったようだった。
 世界が真っ白にそまって、私は死ぬほどの女の幸せを味わった。

 それは永遠に続く、地獄の喜び。

 私は、あとにこの自分の人生最大の汚点を、DVDで何度も繰り返しみてそのたびに絶望を深くする。
 私はその瞬間、誰にも見せられないような、本当に醜い顔をしていた、涙を流して顔をくしゃくしゃにして鼻水をたらして、口を半開きにして、身体はピクピクと痙攣するように震えていた。
 男性客にぐっと抱きしめられて、足を空に突き上げて、腰は余韻に震えて、さらに男の精液を膣で味わって飲み込もうとしているみたいだった。
 まるで野蛮な獣みたいに、機械仕掛けの人形みたいに、こんなのみんな嘘だと思いたかった。映像さえ残っていなければ、こんなに苦しむこともなかったのに。

 男は、私の股からニュプっと半萎えのチンコを引き抜いた。
 高性能カメラのズームは、いやらしいことに私の中だしされたマンコへとズームする。そして、ドロリと流れ落ちる精子と愛液の塊。
 どれほど、大量に出されたというのだろうか。その精液は確実に私の子宮の奥底まで吐き出されていたのだ。
「あぁ……もったいない…………」
 私はここで、もったいない精子が流れちゃうとかき集めるしぐさをする予定だった。そういう台本だったのに、身体がもういうことをきかなくて、身動きすらできなかったのだ。ただ、情けなく股を開いて精液を垂らしたオマンコをカメラのまえにさらすだけ。惨めな姿だった。
 男性客も、さすがに全力を使い果たしたのか、荒い息を吐いて苦しそうにしていた。

 男性客は、ちゃんとオマンコから精子が流れ出したところが写っていることだけ確認すると台詞間違えのミスを犯した私を、非難することはしなかった。
 私はようやく息を整えると台詞を言い直した。
「ああ、もったいない、せっかく中に出してもらった精子が出ちゃいましたね」
「大丈夫だよ、もう一回中で出して今度はもっと奥に押し込んであげるからね」
 そういって、男性客がまた私にのしかかってきて二ラウンド目に突入。
 ここで、台本は終了のはずだった。
 あとは、しっかり妊娠しますの宣言だけ編集でつないで終わりのはずだった。

 それなのに、なんでまた本気で二ラウンド目をしているんだろう。
 今度は、私に甘いキスをして男性客は雰囲気を出してくれた。
 しばらく、下でつながりながら私はたっぷりと舌を絡み合わせていた。
 臭いはずの男性客の唾液が、このときだけまるで甘い物のように感じたのは、もう私は頭がおかしくなっていたからだろう。
「おら、おら、おら」
「あん、あん、あん」
 あとは、もう技巧もへったくれもなかった。
 ただ、お互いに寡黙に腰をぶつけ合うだけ。
 一度火のついた私の快感は止まらなくて、また新しい波が押し寄せてくる。
 さっきもうあれほど死ぬと思ったのに、またさらにそれより大きくて深い波。
「ああぁぁぁああああああ」
 私は、何かもう別の生き物になってしまった。

 男は、ふっと息をつくと腰を止める。私の膣は、馬鹿になってしまったみたいに、男のいちもつをぐっと握り締めるように吸い付く。
 こんなの現象は初めてだった、自分でも動かしたつもりがないから、止めようがない。まるで。膣でフェラチオしているようだ。
「はは、お前のオマンコ吸い付いてきてるぜ」
「いわないで……いや、なにこれぇいやぁああ」
 男が腰を動かしていないのに、私は勝手に腰を自分で動かしていたのだ。そして、膣はまるで別の生き物みたいに、キューキューと男のおちんちんを引きちぎらんばかりに締め付ける。
「こりゃー、いいや」
「いやー止まらない、いああぁあ」
 さっきから、まるでおしっこするみたいな勢いで愛液が噴出してきている。
 男は、そんな私の腰の動きに合わせて、胸を弄んで、握りつぶさんばかりに何度も絞って、絞れるだけ絞って。
 そして、私の引っ張りあげられた右の乳頭にカリっと音を立てて噛み付いた。

 その瞬間だった。
 ジューと音を立てたようにして、何かが私のお腹の中から飛び出した。
 愛液が出たんじゃない……なにこれ、なにこれ、まさか。
「私……うそ」
「ゆかりちゃんのおっぱい最高!」
「私、排卵しちゃったかも」
「おー卵でたか!」
 そんなの、排卵が分かるとか、ありえないのに。このときは私は本当にそんな感じがしていた。
「どうしよう、どうしよう、私排卵しちゃった」
 そういいながらも、私の膣はぎゅーぎゅー男のいちもつを締め付ける。
「ははは、こりゃ妊娠確定だな」
「いやぁあ」
 男はそれに触発されたのか、また腰を降り始めた。
「ほら、もう大人しくしろよ」
「いやぁああ」
「ゆかりちゃんの、卵に精子ぶっかけるよ」
「駄目ええぇぇえ」
 駄目だといったのに、止めてくれるわけもなく、また私の一番奥で駄目押しの射精をする男性客。

 ドピュドピュドピュドピュドピュドピュ!

 熱い精液が、もう何発だしたかも分からないというのにたっぷりと、私の子宮口から注ぎ込まれ子宮壁に、叩きつけられる。逃げ場のない精液は、そのままドロリと排卵してしまったかもしれない、私の卵管へと流れていく。
「あはは、今頃俺のおたまじゃくしがゆかりちゃんの卵に向かって泳いでるよ」
「駄目っていったのに……ほんとにできちゃう」
 男は精液が流れ出さないように、腰を浮かせて私のお尻に枕を載せた。
 子宮の奥の奥まで、真っ白に精液に多い尽くされ、膣の入り口までたっぷりと私の膣は精液を溜める袋みたいになっている。
 その様子までカメラにとって、ぐちょぐちょと弄って遊ぶ男性客。
「ちゃんと妊娠できるように、しばらくこのままでいようね」
 私は、何か文句をいいたいのをぐっと堪えて口をつぐんだ。
 台本の台詞に入っていたからだ。
 すぐに、口が笑顔の形になる。どうしようもないことなのだ。
「芹川ゆかりです! たっぷり、排卵日の子宮におチンポミルクを出してもらいました! 本当にありがとうございます」
「いやいや、俺も気持ちよかったから満足だよ」
 そういって、私にちゅっとキスをする男性客。
「これから排卵して、注いでもらった精子でこのおじさんとの赤ちゃんを妊娠しますので、皆さんも私の妊娠出産を楽しみにまっていてくださいね」
 そういって、私は膣の中にたっぷりと精液を溜めたまま、ニッコリとピースサイン。

「はい、撮影終了! ゆかりちゃんご苦労様」
「もう……ようやく……終わったんですね」
 私は心身ともに疲労していた、もう何も考えたくない。身体を元に戻そうとすると、すぐに止められた。
「こらこら、そのまま三十分はじっとしてないと。よく子宮の奥底まで精液を流し込んでおかないといけないからね」
「そんなあ……」
「ちゃんと妊娠しないと、今後の撮影にも差し支えるからしばらくこのままね」
 そういって、また男性客は私にキスをした。
「もう……撮影は終わったんでしょ」
「パパがママにキスしただけだよ、もう他人の身体じゃないんだからな」
 そうやって、いやらしく笑う男性客……こいつは最後の最後まで。
「はい、もうどうにでもしてください」
 もう、悪態をつく元気もなかったのだった。
 こうして、長い長い地獄のAV撮影は終わった。
 それでも、私の地獄の日々のまだ入り口にすぎなかった。

……芹川ゆかりのマンション 一ヵ月後

 これまでずっと考えないようにしてきたが、生理が前の予定日から来なくて、二週間もたってしまった。ただの生理不順なんてレベルではなく、あの男性客にも会うたびに急き立てられるので、ついに自分を誤魔化し続けることも出来なくなって、デパートのトイレで妊娠検査薬を使ってみた。

 結果は「陽性」

 できてしまっているってことだ。

 できてしまったってことだ。

 そんな……。

 手が震えて、私は検査薬を取り落とした。落ちた検査薬が立てる乾いた音が、どこか遠くの世界の出来事のようだった。

 誰の顔を見たくなくて、ましてやあの男性客の顔なんか見たら、もう辛くて死んでしまいそうで、すぐさま早退を申し出た。チーフは何か察してくれていたみたいで、すぐに帰っていいと慰めの言葉をかけてくれた。
 今の私には何の救いにもならないけど。

 気がついたら、自宅の前に立っていた。どう帰ってきたのかも覚えていない。
「あれ……鍵が開いてる」
 私は、何も考えることなく部屋の中に入っていった。
 恋人のヒロユキがいた。彼は私のマンションの合鍵を持っているのだから、彼が鍵を開けて部屋にいてもまったく不思議はない。
 ただ、本当に私の胸をついたのは、彼の顔が私を哀れむような、とても悲しげな顔だったということ。
 それを見てしまって、もうたまらなくなって涙がどっと零れた。
 言うつもりもなかったのに、口をついて出た言葉。

「ヒロユキ……私、妊娠してるの」

「ああ、俺の子供……じゃないんだよな」

 張り詰めた静寂。永遠とも思える瞬間が私とヒロユキの間を流れていた。

 それでも、時は止まらない。私は、答える。

「……………そう……よ」

「悪いと思ったんだけどさ、このDVDが剥き出しで郵便受けに入ってたから、つい……見てしまったんだよ」

 彼は、プレイヤーからDVDを取り出して、机の上に置いた。そのDVDには、あの男の汚らしい文字でこう書かれていた。

『エレベーターガール芹川ゆかり、排卵日種付けセックス ~貴方の子供を孕ませて~』
「あああ……」

 私はそれを見て、呻くことしか出来なかった。

 私は世界は、この瞬間に冷え固まって死んだ。
 もう、悲しいとすら思えない私の心。
 終わったのだと分かった。

「あのさ、ゆかり。俺はどうしたらいい、俺にしてほしいことあるか?」
「いますぐに、私と別れて。もう終わりにしましょう」
「……わかった」

 彼は、合鍵を置いて出て行った。
 部屋を出て行くときの彼の顔がどうしても思い出せない。
 このときのことを思い出すと、いつも浮かぶのは部屋を入ったときに見せた、私への悲しい哀れみの視線だけ。
 どうして、私は彼に別れてくれなんて言ったんだろう。彼を巻き込みたくなかったから、それともこれ以上自分が惨めになるのが嫌だったからか。
 本当は彼に罵って欲しかった、できれば裏切りを怒って欲しかった。
 それでも、やさしい彼にはできなかったのだろう。
 きっと、彼はこのAVが無理やり撮られたものであることを分かっていたのだ。
 あとで私も、この忌まわしいDVDを見た。
 そこに映っている私は、心にもない台詞を喋り、偽りの笑みを浮かべながら、ずっと泣いていたのだから。
 大学で付き合いだしてから四年間以上になる彼に、私の偽りの表情と本当の顔の見分けがつかないわけもない。
 ヒロユキはこれまで私が付き合ってきた男の中でも、最高の彼氏だった。
 やさしくて、頼りがいがあって、私をしっかりと愛してくれた。
 そして、それも全ては過去のことだ。
 この日、全てが終わってしまったのだから。

……デパート地下三階 二ヵ月後

 休憩室で待機していたら、美幸チーフが来た。
 まだ、ゆったりした服を着るのを拒否している彼女のお腹は、ぴっちりした制服のせいで逆に目立つようになってきている。
 見るたびに、あのかっこよくてプロポーションのよかったチーフの下っ腹がと、私はため息をついている。
 もう妊娠が分かっている私にしても、それは他人事ではないから。
 そんな私の視線にかまわず、チーフはテキパキと交代の指示を下した。
「あと三十分ぐらいしたら、交代に行って頂戴。場所は、地下三階よ」
 そのとき、私は嫌な予感がした。

 地下二階までは使われているが、地下三階は現在改装中で使われていないフロアだ。そこにエレベーターを向かわせるっていうのは通常考えられない。

 だから、三十分後といわれていたけど、早めに向かったのだ。
 よせばよかった。私には何も出来なかったのに。
 エレベーターを使うわけにもいかないから、地下三階へは関係者以外立ち入り禁止のサクを乗り越えて、階段で降りていく。
 改装中の地下三階は、昼間なのに薄暗くてちょっと気持ちが悪かった。
 エレベーターのほうに向かうと、何かの声が聞こえてきた。
「なにこれ……」
 まるで、獣が身を引き裂かれるような絶叫に近い叫び声。
 足が震えた……それでも近づいていくと分かった。
 これは獣じゃない、人の苦しみの声だ。断末魔のような叫びが断続的に続いている。
「何かの事件……事故?」
 背中を押されるようにして歩を進める私の前に、目の前に明かりが見えた。
 地下三階に止まる、エレベーターからの光だ。
 本来ないはずの場所にあるものは、なんと異様に見えることだろう。
 私は、そっと箱の中を覗き込んだ。

 そこには、私の想像を超える光景が広がっていた。

――後編に続く


プロフィール

ヤラナイカー

Author:ヤラナイカー
おかげさまでプロ作家になって五年目です。
ボツボツと頑張っていきますので、今後ともよろしくお願いします。
(プロフの画像、ヤキソバパンツさんに提供してもらいました)



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