第八章「きぼう」 |
もう、学校でどんなエロいことをしてもルシフィアに感知されることはない。結局のところ、幸助の箍をはずさせたのはそれぐらいのことなのだろう。真面目に授業を受けている振りをしながら、幸助は消費しきった自分の精子タンクを回復させるように努めるのだった。 出席番号一番の服部奈香から、順番どおりに何も知らない少女たちは次々と犯されていく。そうして、終わった少女の身体には、赤いアクセサリーが輝くのだった。
昼休みに、ルシフィアに誘われたので屋上で一緒に食事をする。特進科の屋上はあまり使われないといってもお昼休みだ、誰かはいるだろうと思ったのに彼女意外は誰も居なかった。たぶんルシフィアが何かしたのだ。 幸助が、購買で飲み物とパンを買ってきて食べていたら、サンドイッチを少し分けてくれた。うまくもなく、まずくもなくといったら彼女が可哀想だが、なんでも完璧にこなす彼女のわりに、料理が得意というわけではないらしい。ハムにレタスを挟んだり、卵を挟んだりしただけの簡単なものは、誰が作っても似たような味になる。 料理上手の彼女を抱えているマサキに昼食を分けてもらうことが多かったから、舌が肥えてしまったのかもしれない。幸助に料理を作ってくれるような彼女ができたら、苦労するかもしれない。 「なにか嬉しそうですね」 そう幸助に声をかける。 「そうか」 そう答える声にも余裕がある幸助。ああ……心を読み取られないというのは、なんと素晴らしいことなのだろう。そう、ほくそ笑む。 「特に何もないというのは、思考を読み取ればわかるのですが……それでも何か嬉しそうですよ。私と一緒にいるのが嬉しいというわけではないのが残念ですけど」 そういって、少し寂しそうに笑うルシフィア。今日の控えめで大人しい彼女が、幸助の癇に障ることはない。普段、相手の理想を思考で読み取って演技するらしい彼女のしぐさというのは、どこまでが本当でどこまでが演技なのか幸助にはまったく分からない。 ただ、話しているとすでに封鬼の守りとやらで、幸助の意図が読み取れなくなっているのが分かる。それに逆にルシフィアに感づかれないように注意をしつつ、彼女が本当は何を考えているのか読み取ろうと幸助なりに努力して会話している。 「なあ、心が読み取れるのは鬼の力なのか?」 「鬼ですか」 意外な話を聞いたという風に、ちょっと驚くルシフィア。平賀芽衣子がいっていたことを鵜呑みにしていたので、幸助のほうがむしろ慌ててしまう。 「いや……違うのか」 「違わないかもしれませんですね、時代錯誤な蔑称だとは思いますが、人を超える力を持った人間がそう呼ばれて忌み嫌われた歴史というのは、どこの国にでもありますです。吸血鬼とか、ヨーロッパの話だけどやっぱり鬼扱いですから」 西洋の血が混じっているらしいルシフィアは、やはりそっちのほうが気になるみたいだった。 「俺も鬼なのかな……」 「だから……うーん、私なりに調べてみましたけど古代に滅んだ血筋の一つなんですよ。人間には、特異体質というものがあるですよ。お酒がまったく飲めないとか、肌の色素が極端に薄いとか、子供のままで成長が止まっているとかです」 「いいたいことは分かるが、ただの体質と、この異常な能力は違うだろう」 幸助は平賀芽衣子のことを思い出していた。その理屈だと、小学生のまま成長が止まっている芽衣子も、鬼ということになってしまうからな。 「潜在的に人間の遺伝子の中に隠れていて、時々何かのきっかけで発現した人が生まれてくるという意味では何も変わらないです。昔の記録を調べると、けっこうあちらこちらでそういう人が出てたみたいなんですけど、近代に入ってからはまったくといっていいほど出てきてませんです」 「俺たちが居るけどな」 「だから……こんなところで、仲間に会えるなんてありえない偶然なんですよ。もしかしたら、発現率が急に上がっているのかも。遺伝子の解明の研究は現在も進行中ですから、たぶん機能していない部分と呼ばれているところに、私たちの血筋は隠れていて、見つかりそうなので慌てて顔を出してきたのかもなんて推測しているんですけど」 「たぶんとか、かもとか……確かなことはわからないんだな」 「ええ、でも鬼っていうのは止めてくださいね。なんか嫌です。ほら、私もあなたも角なんか生えてないですよ」 「わかった、わかった……」 断ったのに、頭を幸助のほうに髪を掻き分けて見せつけてくる。笑えない冗談だったが、どこまでも綺麗な地肌だった。たぶん彼女のどこを掻き分けてみても、汚い場所など見つからないのだろう。そんなに息を呑むほど美しくても、美世と一緒で女性を感じなくて幸助には逆に付き合いやすい。たぶん最初の出会いが最悪だったからだな。 「私たちは、特別な人間なんです。あなたと私の二人だけは……」 そうやって、熱を帯びた視線で見つめられると幸助も背筋がゾクりと来る感覚を抑えることはできない。もしかしたら、演技かもしれないと思っていても、磨き上げられた宝石のような瞳には引き寄せる魔力があって。その澄んだ響きに、心が震えてしまうこともある。 「ああ……」 「魔王もいなくなって、邪魔もなくなりましたですから」 そう付け加えてくるルシフィアの言葉で、頭が冷めた。たぶん、マサキという友達がいなければ、経験の少ない幸助はいとも簡単に彼女に心を揺さぶられて、蕩けさせられて、落とされて、あとはいいように操られて、どうなっていたかはわからない。それは感謝であり、友達のために抗うという決意を新たにさせる。 ルシフィアは、自分たち二人だけだという。でも、幸助はマサキという大事な友達がいて、そしてそれでも、人間は本当のところ孤独な一匹の獣だ。もう、心は読まれていない。だから無理やり、一方的な心の接続がされてはいない今は……。 きっと今度は、幸助がルシフィアの心を読み取る番なのだろう。マサキは、支配といったが幸助は違うように感じていた。 ルシフィアは、気位の高い佐上のお嬢様で、文句がつけようのない金髪美少女で、人の心を読む能力も利用して周りから圧倒的に慕われて羨望されてはいるが、この少女にもどこか影のようなものがある。 幸助の立ち位置だからこそ、見えるのだ。親しく付き合ってみると、どこかみんなこの娘を誤解している。いや、誤解させられているといったほうがいい。 だから、支配ではなくて理解したらいい。これはそういう戦いなのだと、幸助は密やかに肝に銘じた。引きずられそうな思いを、軽く断ち切って、昼食を分けてもらった礼だけをいって、足早に教室にもどっていった。
そんな幸助を呼び止める言葉を、ルシフィアは飲み込む。無駄なことはしなくていいし、焦らなくてもいいと思っているからでもあった。期待を裏切られること、諦めることに彼女は慣れきっている。そうして、ひどく乾いた心になっても、ルシフィアはまた何度でも期待する。いつかは満たされることを。 彼女は強いのだ。そして強く求めている。
高校生の想像力と性欲は無限大、といってもさすがに幸助も午後の授業が終了するころには疲れきっていた。ただでさえ時間停止に体力がいるうえに、今日は同級生を三人犯したのだ。さすがに真面目な特進科のクラスだけあって、三人とも始めてであった。処女をうまく犯すというのにも、また楽しくはあるが体力を使う行為である。 催眠アクセサリーだけつければ、後始末は本当はしなくてもいいのだが、精液と愛液が入り混じったところはいいにしても、処女膜を破った血を流している太ももをみているとなぜだか、胸が締め付けられるような罪悪感を覚えて、きちんと拭いてやって後始末もしてやっているのが幸助なのだ。 しょうがない、もともとそういう神経質な性分なのだから。どれほど犯すのに慣れてもつけ焼刃、鬼畜に成りきることなどできそうにない。帰りに山本姉妹のマンションにでも寄ろうか、そう考えて佐知を見ていると、向こうもいつしか振り返ってこっちを見ていた。ふっと笑ってくれる。ちょっとだけ鼓動は早くなるけど、いまの幸助は逃げ出したりはしない。強くなっている、心が。でも「今日は体力的に無理だよ」と佐知に心の中で言い訳して、カバンを持って帰宅することにした。 そうだ、マサキがしばらく円藤希の家にいるっていっていたから、訪ねることにしようか。催眠アクセサリーの機能がとても上手く働いてることも報告したほうがいいだろう。そうしよう。 そうして、足早に希の家に向かった。街の外れにあたるけど、学校からなら結構近いのだ。希の家の横には、まだ切り開かれていない山があって、小規模ながらも鬱蒼とした森になっている。たしか、この向こう側に平賀神社もあったのだった。 また、道場のほうで激しい稽古を繰り広げているあの武道集団も、山篭りとかするのかもしれない。若い男が道場から、庭に吹き飛ばされて転がり落ちてきた。 「絶対……あいつら山篭りとかやってるな」 なぜか、そういう確信があった、巻き込まれたら怖いので早く呼び鈴を鳴らして入ってしまおうと思ったら、入り口に中学校の体操服姿の女の子が立っていた。 「ああ、えっと望ちゃんだよね」 姉と同じ、「のぞみ」なので呼びにくい。円藤家の両親も、妙な名前をつけたものである。体操服なので、望ちゃんも学校から帰ってきたばかりなのだろうか。 「あっ……えっと、富坂さんだったよね」 「おー、なんで名前知ってんの」 たしか、こっちから自己紹介した覚えはなかったような気がしたが。 「マサキお兄ちゃんが、来るかもしれないって言ってたからなんとなく気にはしていたんだよ。マサキお兄ちゃんに用事なんでしょ」 「うん、とりついでくれるかな」 「ちょっとまって……うーん、私についてきてくれるかな」 そういうと、望は道場とは別の側の庭に歩いていく、ついてこいといわれたので素直な性格の幸助はしかたなくついていく。中学生の女の子に誘われて、勝手に人の庭に……なんか妙な感じだ。さっきの道場の人たちに発見されると、曲者! とか言われて退治されそうで怖いんだが。 「ちょ……望ちゃん?」 「しー、静かにしてね」 そういって、窓のカーテンの隙間から何かを覗いている望。なぜか「あちゃー」とか小さく呟く。「見てみる?」といわれて、少し躊躇した幸助も好奇心がムクムクと沸きあがって覗いてしまった。 マサキと希が、絶賛セックス中であった。望が近くにいるというのが分かっているのに、もう目が離せない幸助である。人のプレイを見るのは、自分がやっているのとは、また違った興奮と面白さがある……希は着やせするタイプだったようだ。結構出るとこ出ているんだな。うあー、あんな体位があるのか。すげえ……。 「お姉ちゃん、あれでやり始めると周りが見えなくなるからね……やっぱり、私がついてないとだめだね、うんうん」 そんなことをいって、一人でうなずいている望である。姉が、まぐ合っているのを見ても動じないのは、マサキのファミリーだからなのだろう。動揺してしまった幸助は、まだまだということだ。 「とにかく、しばらくはお姉ちゃんもお兄ちゃんも無理みたいだから、客間で待ってることにしようか」 そういって、客間に通してもらった。この前の奥座敷とは違って、洋風の客間である。結構、部屋数多いんだな。それにしても、窓から覗く意味ってなにかあったのかと考え込んでしまう幸助であった。いいもの見せてもらったからよかったけど。
お盆に紅茶を載せて持ってくる望、この家は抹茶しかでないのかと思ったらそうでもないらしい。抹茶はマサキの趣味なのかもしれない。 「えっと、お紅茶になにかいれる?」 「ミルクティーだとうれしいかな」 コーヒーにも紅茶にも、とりあえずミルクを入れておくというのが胃が少し弱めの幸助のいつもの飲み方である。 「砂糖はあるけど、ミルクはなかったかな」 「じゃあ、なくても大丈夫だよ」 紅茶の一杯ぐらいなら、胃が荒れるということもあるまい。飲もうとする幸助を望が押しとどめる。 「いいこと考えたから、ちょっとまってね」 そういって、ごそごそと何をやっているのかとおもったら、いきなり服をめくりあげてブラを下げて、片乳を出してきた。 「うぁっ、いきなりなにを!」 そういいながらも、しっかり観察している幸助。姉ほどではないが、この年齢ならけっこう大きいほうではないだろうか。乳頭が仄かに黒ずんでいるのは、たぶん。そう思考した直後、幸助の頭脳は機能を停止する。 幸助の紅茶めがけて、乳を搾りだしたからだ。ブシューという感じで、綺麗に一筋のおっぱいが紅茶に噴出されていく。 「これでいいよね」 幸助は停止している。 「えっと……マサキお兄ちゃんが、富坂さんなら大丈夫だっていってたんだけど?」 幸助は停止している。 「えっと、大丈夫……?」 幸助は、動き出した。思考は停止したままであったが。 目の前に差し出された、ミルクティーを静かにすする。仄かに甘い味がした。 「……って、俺はなんで飲んでいるのだ!」 そう自分で自分につっこむ。もう、マサキのファミリーに常識をいってもしょうがないし、何をつっこんでも無駄だと思ったからだ。 「そうか……望ちゃんも妊娠してたんだよね」 だから、幸助はもうしみじみとそう言うしかない。 催眠アクセサリーの効果は、それを知っていても作動しているので外見上そのようには見えない。というか、そのように知覚できないのだろう。 「そうだよ、マサキお兄ちゃんの子供です。私は始めての子供なんだよね」 そういうとえっへんという感じでお腹を突き出している。ふと、興味を覚えて幸助は聞いてみた。 「お腹触ってみてもいいかな」 「いいよ、どうぞ」 そういって、お腹を出してくれたので触るとちゃんと大きい。中に赤ん坊が入っているとちゃんと分かるような熱さだ。すでに胎動も少しある。本当に不思議な感じがした、幸助の知覚にはぺったんこのお腹なのに、触るとちゃんと大きい。騙し絵を見せられたように、矛盾している感覚を自然なものとして感じているのだ。こうして考えると、催眠ってすごい。 ただのエロ目的なら、催眠のほうが使いやすいだろうと少し羨ましい。ただ、幸助の力だって何か意味があるから存在しているわけで、いい使い方を思いつけばいいのかもしれない。 そんなことを考えつつ、なんて言っていいかも分からずに母乳入りの紅茶を飲み干した。正直、母乳入りというのは抵抗がないわけではないのだが、望は好感の持てる女の子だし、その娘が出したものだから別に汚いとは思えないのだ。 「あっ、お茶が切れましたね。もう一杯いれますから」 そうやって湯煎を通して、ポットからもう一杯紅茶を注いでくれる。 そこに、当然のようにプシューと乳を注いでくれる。もう何のプレイか分からない、さっきとは違う側の乳というのは、やっぱり中学生だからたくさんは出ないのだろうか。そんな下らないことを考えながらも、止めることも出来ずに、なんて声をかけていいか分からない。 (だって中学生ぐらいの子がピューピュー目の前でおっぱい出してるんだぞ、しかも自分の紅茶のカップに) 普通の女の子に話しかけるのも、躊躇する幸助なのに。これはもう、幸助がどうしていいか分からないのもしょうがない気がする。女の子が目の前で母乳を出してるときに、どう話しかけたらいいかなんて、冷静に考えれば考えるほど対処法なんて浮かばない。 「えっと量ってこのぐらいでいいのかな……多すぎたかなあ」 急に口数が少なくなったので、気を利かせて話しかけてくれているのだろう。 「いや、ぜんぜん。うん……そのぐらいで」 「そう……」 こっちからも、何か話さないといけないと思って聞いてみる。 「あのさ……もしかすると、マサキくんもこうやって飲んでるのかな」 「お兄ちゃんは、紅茶あんまり飲まないから」 「そ、そうなんだ……」 マサキがやってるから、同じようにしてくれてるんだと思ったんだが。なに自主的? 望ちゃんが、自主的に考えたの? だいたいマニアックなプレイだとしても、これ上級者プレイ過ぎるだろ。もしかしたら、突っ込みぐらいは入れていいのかもしれないぞ幸助。 「お兄ちゃんも、直接は飲みますから、吸いますっていったほうがいいのかな……いつも濃厚で甘いって褒められるんで、紅茶に入れてもいいかと思ったんだけど……まずかったかなあ?」 そうきかれて、まずいっていえるわけがないだろう。 「美味しいよ、たしかに甘い」 一口啜ると、濃厚に甘い味がする。ほんとに甘いな……クリームを舐めているような舌に残る甘さだ。表面にたっぷりと母乳が浮いて、ほとんど分離してる。これじゃあ、ほとんど母乳を飲んでいるのと変わらない。 母乳って、紅茶に混ぜるのには向いてないのじゃないだろうか。表面に浮かんだ白い乳を飲みきってしまうと、あとは紅茶の渋みが口に広がった。 「もう一杯飲む……?」 「いやもういいから、ありがとう、ごちそうさま。だからその……」 「その?」 不思議そうに聞き返してくる。 「いい加減、胸をしまったほうがいいんじゃないかな……」 「紅茶に飽きたなら、直接飲んでも美味しいですよ」 そういって幸助に悪戯っぽくニマーと笑いかけてにじり寄ってくる、目の前に望の大きめの乳が……乳が……ちょっと母乳が垂れてたりして。 故意犯だ……絶対に、わざとやってる。
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