四章下 |
ようやく放課後、美世に挨拶だけしてすぐさま帰宅する。今日は一緒に帰るとは言ってこなかったので、心配は昨日だけのことだったのだろう。少しほっとしたような、残念なような。校舎から出て、ふと視線を感じて屋上を見上げるとルシフィアが居るのが遠目に見えた。 「あいつは、あそこが所定位置なのかな……」 距離が遠いので表情までは見えないが、視線を感じたということは、やはりこっちを見ているのだろう。ためしに頭のなかで「バイバイ」と思考してみると、なんかものすごい勢いで両手を振っているのが見えた。 「なるほど、この距離でも相手の思考が分かるわけか」 どれぐらいの距離まで可能なのかは分からないが、この分では学校の中でのことなら彼女は全て分かるのだろう。やっぱり、学校の中では駄目だな。お楽しみは学校の外でということだ。
駅で電車を待っていると、女の子に声をかけられた。 ちょっと日に焼けて赤茶けた感じの焼けた髪に、健康的な小麦色の肌。やや胸は発展途上で残念な感じではあるが、スラッとしたタイプで顔も整ってるし、明るい活発な雰囲気。同じクラスの山本佐知だった。 「富坂くんじゃん、そういやさー君、お昼休みに希と話してたでしょ?」 「えっ……えっ、ああ、うん」 同級生が居るなとは思ってたんだが、美世以外の女子に声を駆けられるとは思ってもいなかった。時間停止の初めての日のあれがなければ、名前も記憶してなかったと思う。相手は、ちゃんと幸助の名前を覚えていたらしい。普通はクラスメイトの名前ぐらいは覚えているものなのかもしれない。 「私も陸上部なんだよね、部活の後輩だからさ。どういう関係なのかなと思って」 「ああっ……友達の知り合いって感じかな」 「そうなんだ、いやぁーあの娘、悪い子じゃないんだけど寡黙っていうか、余計なこと話さない子だし。それに、男にあの娘から話しかけてるの珍しいなと思って」 そういって、興味深げにこっちを見てくる。そうか、もしかしたら希の男友達じゃないかと思ったのかもしれない。 友達というのは含みをもった言葉で、本当の友達ならありえるが、ボーイフレンドとしてならあんな美人と凡庸な幸助は釣り合いが取れているとは言いがたい。だがそれが、逆に興味を引いたのかもしれない。 結局、佐知とは同じ方向の電車に乗ることになり、話していた手前一緒にいることになって手持ち無沙汰でもあるので幸助からも聞いてみた。 「今日は陸上の練習はないの?」 「あっ、うん部活も休みの日はあるよ。それでも、候補選手の希とかは自主練してるだろうけどね。私はスポーツ推薦使えるほどできないから……まあ勉強も頑張らないといけないわけでね」 そういって、小さく舌を出して笑う。特進科の授業についていきながら、運動部も両立するというのは口で言うほど簡単なことではないだろう。勉強する時間も限られてくるわけで、偉いなと思う。 今日も飯野駅で途中下車する幸助であったのだが、佐知も一緒に降りてきた。 「あっ……」 「あれ、富坂くんも飯野だっけ?」 「いやっ、俺はちょっと用事があって途中下車」 「ふーん、私の家ここのマンションだからさ」 まさか、飯野で降りるとは思わなかった。少し運命的なものを感じる。幸助は、しばらく飯野を自分のテリトリーにしようと考えていたのだから。 そうして、山本佐知がそこに住んでいるというのなら、それはもう幸助のテリトリーの中にいるということなのだ。 駅前で「じゃね」と別れる。警戒もなく、佐知は歩き出していく。少し距離を置いて、後ろからついていく幸助。まるでストーカーだ。 もちろん無理はするつもりはなかった、むしろちょっとした遊び。運試しをしてみたい気持ちといったらいいか。正直なところ同級生を襲う対象にするというのは幸助にとっても、多少の罪悪感もあったから。 マンションは駅前からすぐだった。入り口は透明の二重扉になっている、最近は警備が厳しいのだ、佐知が入り口に入ったところで時間を止める。郵便受けで確認したら、山本は一軒しかなかった。五階だ。そうして、そのまま回り込んで外の非常階段から五階に入れてしまう。 五階の通路の影で、時間を元に戻した。やがてエレベーターで佐知が自宅前にやってくる。鍵を開けたところで、また時間を止めてみる。別に計ったわけでもないのに、見事なタイミングで、ちょうど扉を開けて入ろうとするところだった。 「これは、しょうがないよな」 運命なら、逆らうべきではないのだろう。幸助の自分勝手な言い分だが、佐知はそういう運命だった、ということなのだ。 ためらわずに、マンションの部屋の中に入っていく。 「もしかすると、佐知は一人暮らしなのか……」 一人では大きすぎる、家族で暮らすには少し小さすぎる3LDK。一階に、結構高級そうなソファーと、でかい薄型テレビが鎮座している。シンプルだが、柔らかい色彩の壁紙。高校生の女の子の部屋とは思えない、とても落ち着いた雰囲気だった。 二階は、ロフトになっており、でかいベット鎮座しているのでそこが佐知の寝室らしかった。 「うわ……けっこう意外」 一人で寝るには、大きすぎるダブルベットだが男と同棲でもしてるんじゃないかと疑う必要はないかもしれない。その約半分を熊やライオンなどのぬいぐるみの小山が占拠していたからだ。女の子の部屋にぬいぐるみがあるのはおかしいことではないが、大小あわせて百体近くあるのはちょっと買いすぎじゃないだろうか。なぜかぬいぐるみはそのほとんどが大きな猛獣系で、そこらへんが佐知らしさなのかもしれない。 そのぬいぐるみの間にすっぽりとはまり込むようにして隠れてみる。 「あー、けっこういい塩梅だなこれは」 ぬいぐるみが肌に触れる感覚は、けっこうサワサワして心地がいいものだった。もしかすると、こういう用途で造られてるのか抱き枕みたいな感じで。佐知もこうやって寝ているのかもしれない。そう思うとなんとなくいい香りがするような気がした。 「かける……」 時を戻す。 「あー疲れたなあ、もう」 そんなこと言いながら、何故かロフトに上がってきてベットの目の前まで来る。やばい気が付かれたかと一瞬思ったが、そうではないらしい。鼻歌を歌いながら、わざわざ幸助の目と鼻の先で着替えを始める。 薄紅色のスカーフに淡いグレイの制服、進学校だからしょうがないのだが、あまり女子にデザインの評判がよろしくないそれを、ぱっぱと脱いでベットに放り投げる。 下着姿になって、ベットに寝そべった。佐知の頭の位置が、もう思いっきり幸助の隣にある。佐知は、ただだるくて寝そべっただけなのだが、それに無言の圧力を感じて幸助は力を発動。 「……わる」 時間停止、止まったのを確認してからゴソゴソとぬいぐるみのなかから姿を現す幸助であった。 目の前には、下着姿の佐知。 「スポーツブラ……ってやつか」 幸助は目を疑った。高校にもなって、青いスポブラって。小学生がつけるものじゃないのか。 「まあ、おっぱいも小学生サイズだしな」 佐知は、辛うじてAカップであった。ある意味、希少価値といえた。ショーツも青いスプライトの入った軽くて子供っぽいものである。ただ焼けた小麦色の肌はテラテラと輝いていて、魅惑的過ぎた。ほとんど、意識せずに魅力のないブラとショーツを剥ぎ取っていく。 それは幸助にとってとても自然な行為のように思えた、幸運の女神に背中を押されるようにしてここまできたのだから。そうして、自分だけが許されている時の止まった世界の万能感が罪悪感や抵抗を完全にねじ伏せてしまい、幸助の欲望を加速する。 気がつくと、つい力を込めて佐知の身体を抱きしめてしまっていることに気がついた。慌てて、手を離す。あたりまえだが、佐知は大人しいものだった。痛みも感じないのだから。髪を撫でる、まるで太陽に触っているような、暖かく思ったよりもサラサラとした軽い頭髪。 「悪くはないな……いや、いい」 佐知の身体は幸助より、小柄で抱きやすい。その上で、適度に筋肉もついて引き締まっていて、ちゃんと女の子の柔らかさを十分に感じさせる。張り詰めた弓のような、しなやかな身体だった。 十七歳の少女の身体。砂糖を焦がしたような香りが、佐知から漂ってくる。カルメラ色に日焼けした肌はどこを触っても滑らかでそれが幸助を夢中にさせる。 気がつくと、小さい胸を揉みしだき、身体全体を嘗め回す勢いで舐めまくっていた。小さい胸に、申し訳ない程度に張り付いている乳輪も嘗め回す。 「はあっ……」 立ち上がった乳頭に噛み付くように吸い付くと、佐知は小さく声をあげた。 面白いようにピクッ!っと震えて、幸助の身体がこわばる。 暫しの沈黙、裸の佐知を抱いたままで、固まる。 「怖いなっ……ふぅ……」 時間は止まったままだ。安心する。前にもこれぐらいの声がでることはあったじゃないか。きっと、声ぐらいは出るのだろう。佐知は、意識を取り戻したわけではない。こちらを認識しているわけではない。落ち着け幸助。 少し頭が冷えた幸助は、自分も制服を脱いで裸になる。自分の全身で、佐知を感じる。佐知の身体を確かめるように、全身に触れていく。 痛いほどに勃起したものを佐知の身体に、こすり付ける。 「どうなんだろうな」 佐知は性経験があるのだろうか。あるとないとでは、大変さが全然違うはずだ。 さっき乱暴にはずした青いスポブラが目に入る。 「これはないよなあ……どう考えても」 ベットに身体を押し上げて、股を開くようにして佐知のオマンコを覗き込む。産毛のような薄い陰毛に、ほとんど縦スジを押し開いていくと、薄いピンクの肉襞が覗く。そうして、その奥。 指で触るのも可哀想なぐらい儚いものであったので、そっと舌で押し開いていく。ちょっと苦い味がする。口当たりは悪くない。まるで、バターを舐め取る犬のように一心不乱に舌でなめまわして押し開いていく。 処女を知らない幸助にも分かるぐらいに、それは未通であった。本当に自分の屹立したものを受け入れられるのか不安になるぐらいに。 それでも、やっぱり高校二年生だ。舐めて舐めて、むき出しになったクリトリスを舌で弄んでいるうちに、佐知の穴は少しずつ開き始めてくる。少しずつ、奥まで舌を入れられるようになってきた。 最初苦かった味は、次第に甘酸っぱい独特な味が染み出してくる。舌に、肉襞を絡めるようにして、さらに奥へ奥へと挿し開いていく。 「これだけ濡れれば……いいかなあ」 血が出るかも知れないと思った幸助は、佐知のお尻の下にバスタオルを引いて準備完了だ。幸助のものも準備完了しすぎて、もうすぐに射精してしまいそうだ。 腰を押し付けて、強引に押し込んでいく。 佐知の処女膜は、メリメリと音を立てるように押し開かれる。 「いっ……」 佐知の目から、涙が一粒こぼれた。苦悶の表情を浮かべて呻く、余りにも締め付けがきつすぎて、それに幸助が気づくことはなかった。 「これはっ……なんというかきついな」 気持ちよくはあった、むしろこなれたオマンコよりも締め付けは厳しくまるで隙間なくぴったりと幸助のモノの形に広がっていく。 「ふぅ……」 ようやく、一番奥まで挿し入れることができた。ここまで入れるので、一汗である。 スッと、接合部から血が一筋流れる。破瓜の血というものだ。 痛みに顔が歪んでいるだけで、少し痛みに呻くだけで、積極的な反応はなにもないので、処女に対する配慮もなにもない。 処女のこなれていない膣をえぐるように、押して引いて押して引く。ただ、自分の快楽のために、腰を振るだけのことだ。 「うっ……そろそろ出る」 ドロドロと、なんの容赦もためらいもなく、同級生の膣の中にたっぷりと白濁液を吐き出して、汚し回ったのだ。本能の趣くままの暴挙だった、乱暴だった、乱暴すぎた。 幸助はいささかの興奮状態にあるとはいえ、いくらなんでも昨日まで童貞だったような男が出来る所業ではない。 ドクドクと、自分の遺伝子を佐知の中に吐き出してしまってすっきりしたあとで、少し頭が冷静になる。 自分でも、なぜここまでひどいことがやれてしまうのか不思議だった。しかも相手は行きずりの女じゃないのだ、同級生なのだ。俺は良心が傷つかないのかと自問する。答えはない。 しいてある、タオルを取って、接合部から流れてくる自分の精液と処女の鮮血と愛液が交じり合ったピンク色の粘液をふき取っていく。 「これは、ちょっと後始末しないといけないかな」 とりあえず、痕跡がなるべく残らないようにオマンコの中を部屋にあった麺棒などで掃除する。とりあえず、当面わからなければいいやって程度に。 濡れタオルで、一応汗もぬぐってやると、佐知に下着を着せる。自分も服を着てまたぬいぐるみの山の中に隠れる。 「かける……」 どうなるか、観察しようと思ったのだ。無数のぬいぐるみにまぎれて、疲労感に少しぐったりとしながら、観察する。 「あっ……わたし」 なるべく元の位置にもどしたつもりだったのだが、まるで気を取り戻したように声をあげて身を起こそうとする佐知であったが。 「……いいっ、いいっ!!」 もはや痛いという声もまともにあげられないほどの激痛を感じて、お腹を押さえて蹲った。 「なにっ……お腹いたい、私……病気……かな……」 佐知はかぼそく呻く。生まれて初めて味わう痛みに深い恐怖を味わう。ポロポロと泣き出していた、痛くて痛くて、それでも、それはなにかそれだけではないような。自分が何かとても可哀想なような女の子になってしまったような。そんな「自分が可哀想」という気持ちで、深い自己憐憫に包まれていた。 「どうしたんだろ……痛いし……わた……し」 あとはもう、声にならないか細いうめき声をあげて、弱々しくのたうつだけだった。
助けることもなく、こうやって苦しむ姿をただぬいぐるみの中に潜みながら見ている幸助はいったいなんなのだろう。 罪悪感なのだろうか、それともどういう結果が訪れるのかという好奇心に過ぎないのか。そのどれとも着かない複雑な感情を抱えながら、ただ確かに分かっている自分の心は、快楽の果ての心地より疲労と、腰に漂う余韻を感じているということだけだった。 佐知の体臭が仄かに匂う、ぬいぐるみに包まれながら、ただ苦しむ佐知にひっそりと寄り添うだけで幸助は残酷にも満足を感じていた。 自分でもやりすぎだとわかっていたのだが、悪魔的な快楽は自分を塗りこめて行く。
そのとき、鍵を開ける音が聞こえて、マンションの扉が開いた。 「ただいま……佐知かえってきてんのー」 玄関から聞こえて来たのは若い女性の声だった。 ドタドタと、ロフトを昇ってくる。 その姿を見て、幸助は思わず叫び声をあげてしまいそうになり、手で口を押さえて声を押し殺した。 やってきたその娘は、昨日スーパー銭湯で抱いた風船おっぱい女だったからだ。 「お姉ちゃん……」 お腹を押さえながら、苦しげに佐知は小さく呟いた。 「どうしたの佐知……下着で」 「私、お腹が急に痛くなって……身体も変だし……私……」 「うあー、大丈夫具合悪いの、とりあえず服を着なさい。 佐知の姉らしい風船おっぱい女は、さっさとTシャツと短めのパンツをクローゼットから取り出して佐知に着せる。それが佐知の部屋着なのだろう。 「うう、ありがとうお姉ちゃん」 「私が、早く仕事あがってきてよかったわー、病院行く? 救急車呼ぼうか?」 「んっ……そこまでじゃないから、少し痛みも収まってきたみたい」 「お腹痛いのは……悪いものでも食べた?」 「いや、そんなことはない……」 「じゃあ、急な生理痛かなにかかしらー」 「それも、まだ先のはずなんだけどね」 巨乳と貧乳、正反対でもどこか似通った面影の姉妹は、そんな会話を続けている。幸助は、耐え切れなくなって、時間を停止させた。
「ハッ……ハハッハハハハハハハハハ!」 ぬいぐるみの山から飛び出して嘲笑をあげる。佐知は寝そべり、昨日幸助が抱いたその姉は心配そうに佐知を見つめていた。なにか、面白くてとてもおかしかったのだ。 ゆっくりと、風船おっぱい女の胸を掴む。昨日といっしょで、やけに柔らかくて優しい胸だった。それを乱暴に揉みしだくかきむしるように乱暴に。 ふと、女が横においたカバンに気がついた。無言で、カバンに手を突っ込むと。鍵が出てきた。きっと、さっき鍵を開けてすぐカバンにつっこんだのだろう。 「これ、マスターキーだよな」 マークが入っている鍵が、マスターキーだと聞いたことがある。とりあえず、外に出ると表札を見る、姉の名前は麻美だった。 「ふぬ」 止まった世界を幸助は歩く。マスターキーならスペアーキーを造ってもらえると聞いたことがある。駅前のビルには、たしか鍵屋もあったはずだ。 やはり、運命なのか。そうであれば、このまま突き進んでみよう。そう考えた幸助にそうだと返事をするように、夕日に反射して鍵はオレンジ色に光を放つのだった。
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