後日談10「栗原綾子の不妊治療」 |
三月、ホワイトデーを過ぎた辺りで茉莉香の懐妊が発覚したようです。 深谷家の第二子誕生は喜ばしいニュースですが、そこら辺はもう予定調和なので端折ります。 今回は茉莉香との『約束』の拘束が解かれたことによって、正志の悪戯が復活してしまったという話です。 さて我らが正志くんは、今日はマンション八階に来ています。ちょうど正志が住んでいる部屋の一つ上の部屋です。このマンションは八階が最上階で(屋上を除けばですが)この最上階は特別に広く贅沢な間取りになっています。 その八階の角部屋、栗原家の呼び鈴を正志は鳴らします。 「はい、どなたですか……」 この家の主婦、栗原綾子(くりはら あやこ)の細面な顔を見て、正志はホッとしました。 「ああよかった、居てくれたか」 綾子は、留守なことが多いのでラッキーでした。 綾子の旦那さんは、ベンチャーとは言え小さい会社を二つも経営しているバリバリの起業家です。つまり、綾子は主婦といっても優雅な生活を送っている社長夫人なのです。 部屋の清掃に通いの掃除婦を雇ってるぐらいの生活レベルなので、家事に追われることもなく、昼間は外を出歩いていることが多いのです。 「なんだ、貴方でしたか」 綾子は、正志の冴えない顔を一瞥してマズいものを口に含んでしまったような顔で、小さな唇をすぼめました。ふうっとため息をつきます。 こちらはどちらかといえばアンラッキーと思っているようです。
綾子の夫は経営者ですが、綾子の方の経歴もなかなかのものです。二十七歳の彼女は、今でこそ家庭に入って居ますが、三年前まで某航空会社でCAをやっていました。キャビンアテンダント、客室乗務員ですね。 スチュワーデスと呼ばれていた頃に比べると、実質はさほど優雅でもないそうですが、やはり花形と言われる仕事についていただけあって、肩までサラリと伸ばしたストレートの黒髪はしなやかで、容姿は楚々として淡麗で、立ち居振る舞いは優雅で、その落ち着いた物腰には嫌味のない気品が感じられます。いかにもセレブリティーな気位の高い女、正志を正面から睥睨するその涼やかな瞳には一点の曇りもありません。 今日も自宅にいるにも関わらず、隙のない装いです。カジュアルなブルーのジャケットに膝丈のスカートで簡素ながら清潔感のある服装をしています。もちろんブランドに詳しくない正志にも、縫製を見れば馬鹿高い洋服なんだろうなってことぐらいは判断がつきます。もしかしたら、出かける予定だったのかもしれませんね。 胸元を内側から押し上げる綾子の張りのあるバストは、程よい大きさでいきいきとした健康美を感じます。対照的にほっそりしたウエストは、強く抱けば折れてしまいそうなほどのスタイルの良さを誇っています。 緩やかな曲線を描くヒップラインは、意外にもふっくらと安産型で男の視線を集めます。その下へと伸びる黒ストッキングに包まれたふくらはぎのライン、キュッとしまった長くて細い足首も眺めているだけで感嘆のため息が出るほどです。 絶妙なバランス、一分の隙もない珠玉の美貌。綾子のまとう空気は、元から良い容姿をこの歳まで磨きあげてきた女性にしか出せないイイ女オーラがあります。
「今日は大丈夫かな」 正志は、ご機嫌を伺うように尋ねます。 「良くはないですけど、貴方が来るということは重要な要件なんですよね。はぁー、出来ればアポイントメントを取る習慣をつけていただきたいんですけど」 スッと線を引いたような形の良い眉をしている綾子は、美しい眉目を歪めてこれみよがしに眼を細めて、正志に軽侮の視線を送りました。当たり前といえば当たり前ですが、本来ならば正志のような下賤な男が口を聞けるような女ではないのです。 できれば視界に入るのも遠慮して欲しいぐらいです。 「いや、ごめんごめん」 「ほら入らないんですか」 綾子は心ない謝罪など聞くだけ時間の無駄と言いたげな素振りで、さっさと正志を部屋に招き入れました。綾子の態度も失礼なのですが、口先では謝っても絶対にアポを取らない気まぐれな正志も悪いのです。綾子としては不満を口にしても、いちいち実のない謝罪を真に受けるのは時間の無駄と言いたいところでしょうか。 気位の高い元CAのセレブ妻と、いっつもブラブラしていて近所でも評判の悪いズボラな男。あんまり相性がいい組み合わせとは言えません。 ところで綾子は、主婦とは言えまだ子供はいませんから、マンションの子ども会には参加していません。つまり、深谷茉莉香や岸辺佳寿美のような子供の居る奥様グループとは接点が薄いのです。 二年前のハロウィンイベントにも参加しておらず、間食をする習慣のなかった綾子はハロウィン催眠『トリック・オア・トリート』に見事に引っかかりました。 普段の正志ならばハロウィンの作法に従って、単純に悪戯を仕掛けるところですが、綾子に対してちょっと変則的使い方をしてみたのです。 正志が綾子にかけたハロウィンの催眠は、正志の言うことを何でも本当のことだと信じこむというものでした。 もちろん正志の言うことはいい加減な嘘ばかりですから、それに綾子がまんまと騙されてしまうのが悪戯になっているというちょっと変わった趣向です。 この一年以上の間、度々関係を持った結果、正志はいつの間にか不妊治療のアドバイザーとして綾子を指導するということになっています。 妊娠のためのアドバイスとしてなら、綾子はどんな耐え難いことでもよく言うことを聴きました。すでに結婚して三年に入りそろそろ子作りの適齢期でもあり、綾子は夫や夫の両親から「早く跡取りを」と望まれています。 子供ができやすいようにと手狭な(といっても正志のような庶民からするとかなり広いですが)マンションで、夫婦水入らずの生活を続けているのですが、いまだに懐妊の兆しがないことに少し焦り始めていたからです。
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「なんで、毎回こんな格好をしなきゃいけないんですか」 綾子は、正志の指示でわざわざ衣装チェンジさせられています。 よりにもよって、かつて務めていた某航空会社の制服に着替えさせられているのです。 紺のスーツに下は青いブラウスに紫のスカーフを合わせた、華やかにして機能的な客室乗務員の戦闘服。見るも鮮やかな完全装備です。 「これも不妊治療の一貫なんですよ、何度も説明したでしょう」 「なんでよりにもよって……」 綾子にとってこの服装は単なるコスプレではありません。CA時代の制服に着替えさせられることで、当時の気持ちが蘇ってきます。キャビンアテンダントは適切な体型維持から身だしなみまで事細かい服務規定が定められているのですが、今の綾子でも前髪を整えて髪さえ結べばそのまま現役で勤務できるでしょう。 今でも当時の制服を取っている綾子ですから、過去の栄光を思い出させれてくれる服装をするのは別段、嫌なことではないのです。 問題はこの後の行いでした。 綾子は、思い出深いCAの服装のままで、自宅のトイレで検尿を命じられます。 ただの検尿ではなく、自宅の洋式トイレで制服の青いスカートをたくしあげて黒いストッキングとショーツを下ろし(ちなみに下着まで制服の基調色に合わせた、青いショーツに穿き替えさせられています)、お小水するその様子を目の前のハンディーカムカメラで撮影されているのです。 撮った映像は、その場で『現役キャビンアテンダントおトイレ盗撮動画』としてサイトにアップして正志のお小遣い稼ぎに利用されることになっています。 もちろん、身元を特定されないように顔は映さないようにして、映り込んでも荒いモザイクで消していますが、正志は茉莉香や佳寿美には絶対しないような酷い行為を綾子には行なっているのです。 なぜこんなことをするのか。もしかすると、気位の高い女をイジメて汚してやりたいってどこか卑屈な気持ちが、正志もあるのかもしれません。 綾子はあまりに隙のない美人過ぎて、そうやって正志がいるところまで引きずり落とさないことには抱けないと思ってしまうのかもしれませんね。 カメラの前でオシッコを紙コップで採取した綾子は、事務的な動作で排卵検査薬で検査しました。 「栗原さんどうですか」 「田中さんのおっしゃる通りですね、排卵日の印が色濃く出ています」 今日あたり排卵日じゃないかと予言した、正志の言葉に間違いはありませんでした。 一見、どうしようもないズボラなブ男ですが、どうしてかほぼ百パーセント綾子の生理周期を言い当てることができるのです。毎回のことながら不思議で仕方がありません。 こういうことがあるので、やはりこの人は不妊治療のプロなのだと、言うことを聞いて間違いはないのだと、綾子は確信を深めています。
それでも、どうしても綾子には納得がいかないことがあります。 「どうして、私のオシッ……お小水してるところを撮ってネットにアップする必要があるんですか」 大きな瞳に涙を溜めて、羞恥に声を震わせて綾子は抗議します。 「だから何度その説明をさせるのかな、栗原さんの懐妊の妨げになっているその高いプライドを打ち砕くためだと言ってるでしょう」 正志は普段、明らかに住む世界が違うランクの高い女である綾子に対して、おどおどして目も合わさないのです。 しかし、こうやって狭いトイレの中に二人で篭った途端、確信をもって強い口調で命じてきます。 正志にとって馴染み深いこの狭い世界ならば、自分は綾子の絶対的支配者だという自信が持てるからでしょう。 「撮ってもいいですから、せめてアップロードは止めてください」 顔は映してないからと言われても、万が一綾子だとバレたら身の破滅です。それを思うだけで、綾子は全身が凍りつくような恐怖を感じます。 「栗原さんがそういう生意気な口を聞くから、俺だってやりたくもないこんな卑劣な行為をやらなきゃいけないんですよ。むしろ喜んで受け入れてくれていれば『顔も映して綾子のおトイレしてる姿を世界中にさらしてください』なんて自ら言うようになってくれたらこんなことする必要ないんですよ」 「そんなの無理です、無茶苦茶ですよ」 確かに不妊治療を頼んだのは綾子です、そのためにプライドが邪魔だというのなら捨てる覚悟だってあります。でも、人生の破滅とは引換えにはできません。 「そうですよね、確かに今の栗原さんには無理だ。でも言うだけならできませんか。実際に顔を映したりしません、ただカメラの前で顔も映しても良いですって宣言するだけ」 「ごめんなさい、そんな恐ろしいこと……言うだけでもできません」 綾子は向けられたハンディーカムのカメラからさっと顔を背けて、嫌々と手を前に振り上げて振った。 万が一にでも動画に顔が映ってしまって、それがインターネットに流れてしまったらと思うだけで、綾子は恐怖のあまり寒さに凍えるようにブルブルと身を震わせました。
「頑なだなあ、栗原さんは。じゃあしょうがない。そのまま便座を上げて、便器の上にしゃがみこんでお尻をこっちに向けてください。それならできるでしょう?」 「それならなんとか……えっとこんな感じでいいんでしょうか」 綾子は、洋式トイレの便座を上げるとヘリに両足を乗せてしゃがみこみました。ちょうど和式便所にしゃがむような感じで、正志の前にCAの制服の青いスカートをペロリと捲り上げたお尻を突き出すことになります。 洋式トイレのヘリは、足の裏よりも細いので綾子は少しよろめきました。気をつけてしゃがまないと、滑って落ちてしまいそう。バランスを取るのに必死です。 「ところで、お尻の真ん中にホクロがあるのは知ってるかな」 綾子の右の臀部に小さなホクロが二つならんでいるのを見つけて、ツンと指で突っつきました。 「キャッ!」 いきなり触られたのにビックリして、綾子は足をふらつかせます。 「ハハハッ、気をつけてしゃがんでないと転げ落ちるぞ」 「冗談じゃありませんよ……」 怖い思いをさせられた綾子は低い声で呻くように言います。キリッと睨みつけてやったらきっと調子に乗っている正志なんて震え上がるでしょうに、今はじっと光が差し込むトイレの窓を睨んで、手を壁についてバランスを取るしかありません。 正志はハンディーカムのカメラを構えていますから、顔が映り込んだら一巻の終わりだと思えば振り向くわけにはいかないのです。 「綾子さん、結構お尻大きいよね。何センチぐらいの大きさなの」 「えっ、お尻は……八十七センチだったと思いますけど」 キュと後ろで何か音がしました。 (なにっ?) 綾子のお尻に何かの先っぽが触れていますが、指の感触ではありません。触れたところが、一瞬肌が濡れたような感じを受けます。
「あーいいや、スリーサイズを全部教えてよ」 「上から八十三、六十、八十七ですね。あの一体何をやってるんです」 綾子は振り向くわけにはいかないので、必死にお尻に触れる感触に集中します。触れた感触が文字を書いているのだと気が付きました。そういえば仄かに、マジックのインキの香りがします。 「バスト八十三センチ、ウエスト六十センチ、ヒップ八十七センチね。オッパイはDカップだったよね」 綾子のスリーサイズを呟きながら、その数字をマジックでお尻に書き込んで居るのが分かりました。 「何を書いてるんですか」 「プロフィールだよプロフィール」 楽しそうな正志の口調が癪に障ります。よりにもよって、綾子のエステで普段から磨き上げている肌に安物のマジックで落書きするなんて侮辱もいいところです。 (ふざけた真似をして……) 綾子は羞恥と怒りに震え上がりますが、ビデオカメラがあるので振り返ることさえできずこんな不安定な足場ではどうすることもできません。 ただトイレの壁を睨みつけているしかないのです。 「さ、お尻に化粧はこんなもんでいいかな。栗原さんは、これからカメラの前でうんこしてもらいます」 「えっ、なんですって?」 聞こえてはいました。その不穏な単語はきちんと綾子の耳に届いてはいたのですが、信じられない気持ちが聞き返させます。 「うんこだよ、う・ん・こ。オシッコ動画載せてたら、『ウンコもしてよー』って意見が結構あったでしょう」 「だからってなんで私がそんなことしなきゃいけないんですか!」 綾子はもう想像しただけで、見る見る目尻に涙が溜まっていきます。オシッコされるところを盗撮風に撮られて見られるだけでも屈辱なのに、そんな最低の動画を見ている連中の言いなりになって大便までしなければならないのかと思うと、気が遠くなりそうです。つま先立ちしている足首から力が抜けて、思わずよろっと転け倒れそうになります。
「おっと危ない、転けちゃったら顔が映っちゃうかもしれないよ」 そんな言い方で、綾子のお尻をペチペチと叩きながら正志は活を入れます。 「ううっ……」 また、悔しいことにこんな正志の脅しが効果的なのです。顔が映ってしまうと人生が終わってしまう。その恐怖と、正志ごときに小馬鹿にされた悔しさで、スッと綾子の胸の奥が冷たくなって頭はカッと熱くなって、不思議と手足に力がこもるのです。 「そうそう、そうやって気張って張り切ってウンコしてくれればいいんだよ」 「嫌ですよ、絶対やりません」 悔し涙をこらえて、綾子はそれだけ言いました。 「じゃあ、顔出しする?」 「それは……」 「出来ないでしょう、だから俺もこういうプログラムを考えてきたのになー。別にやりたくないならいいんだよ、その代わりこれまでのことは全部無駄になっちゃうけどね」 これまで子宝を授かるために必死に耐え忍んできた恥辱が無駄になる。そう聞くと、やらないとは言えません。 「無駄には……したくないです」 「でしょう、じゃあこれを朗読しながらウンコしてね。ちゃんと後ろから撮影してるからちゃんと演出するようにヨロシク!」 正志はシナリオを書いた紙を綾子に渡して、ニヤつきながらハンディーカムを構えます。 「……ッ!」 正志に手渡された紙を、さっと一読して形の良い口元を歪めました。下唇を血が出ばかりに噛み締めて、数秒の迷いのあと意を決してお尻を上げました。 大便した時に、きちんとブツが便所の中に落ちるように(万が一外に落としてしまったら、掃除するのは綾子しかいません)前のタンクを抱くように身体を前屈してプルプルと小さい唇を震わせながら、朗読を初めます。 「いつも、綾……いえ、わたしのおトイレ動画を見ていただいてありがとうございます。今日はご要望が多かったウンコをしてるところを見てもらおうと思います」 これではまるで、綾子が自ら動画を撮ってアップロードしているかのような言い振りでした。事実その通りなのです。
正志の設定したシナリオでは、この盗撮風の動画は綾子自らが自分の変態趣味でアップロードしてネット上の不特定多数の男性に見せつけているという設定になっているのです。 「ではいまから……、わたしがウンコしますのでどうかゆっくりみて興奮したら私がウンコする姿でオナニーしてくださいね」 何度もウンコウンコと連呼してしまっては、もはや言い逃れできません。 正志に無理やりやらされているのだと言っても、誰が信じてくれるでしょうか。一つ綾子にとって幸いなことがあるとすれば、カメラにお尻を向けていることです。 わなないて震える唇も、目尻から留めなく溢れでて溢れる悔し涙も、それで化粧が流れて情けないことになっているであろう隙だらけの酷い顔も、後ろを向いているからビデオには撮られないことが救いでした。 ああそれにしても、大便が出ません。段取りでは、ここでするはずだったのですが、綾子のピンク色の窄まった穴は、パクパクと息をしているように開いたり閉じたりするだけで一行に出すべきものを出せませんでした。 綾子がどれほど息んでも、肛門は硬く閉じて出てきてくれません。 「一旦カメラ止めたぞ、どうした栗原さん便秘か」 「すいません、緊張して出ないみたいで……」 やはりカメラを向けられている、人に見られていると思えば、出るものも出なくなってしまうようでした。 「安心しろよ、出るようにしてやるからな」 そう正志が言うが早いか、ニュルッとノズルが差し込まれて冷たい液体が綾子のお尻の穴の中に注ぎ込まれました。 「あぁ……」 浣腸されたのだとすぐに解ります。 すぐにお腹がゴロゴロと鳴り出しました。 「これで出るだろう、撮影を再開するから出るときはちゃんと出るって言うんだぞ」 正志にそう言われて、綾子も覚悟を決めました。
普段は便秘などしていませんから、浣腸の薬効はものすごいものがあります。 胃腸がギュルギュルと音を立てて蠕動しているのが分かるぐらいで、いますぐにでもお腹の中の物が全部出てしまいそうでした。 「いまからわたし、ウンコします……」 綾子は、お尻の穴を開いてポロッと茶色の硬めの塊を二つ落としました。そうして浣腸の薬効のせいか、それより柔らかい便もすぐにズルズルっと落としていきます。 恥ずかしいことに、かなり大量で匂いもします。美人でもやっぱり臭いものは臭いのです。 (ああァァ……) 人間としての尊厳をまたひとつ失ったような気がして、綾子は心のなかで呻いて声も立てずに啜り泣きました。 しかし、これで終わりではありません。 「わたしは、ウンコするところを皆さんに見られて興奮してしまいました。どうか便所で……わたしを見かけたら遠慮無く犯してくださいね」 前傾姿勢で、顔を前に出して顎を水洗タンクに乗せるようにして股を開き気味にお尻を突き出して、後ろ手に自分の女性器の外陰唇を広げて中を見せつけるようにしました。 ここまでやって、終わりなのです。 「お疲れ様、いい映像が撮れたよ」 「はい……もう流してもいいですよね」 綾子は、トイレに漂っている自分の悪臭が気になって仕方がありませんでした。おトイレを汚すハメにならなかったことだけが幸い。 「ああいいよ、俺は気にならないんだけど消臭スプレーも一応振っとくか」 綾子がお尻を拭いてノズルを倒して水を流す間に、邪魔にならないように壁際まで下がっていた正志はスプレーまで振ってくれました。いつになく協力的でありがたいのですが、なんだか怖い気がします。 「ところで、私のお尻になんて書いたんですか」 「気になるなら、撮った映像を見せてあげるよ」 ハンディーカムをちまちま弄っていた正志は、ビデオカメラのモニターを開いて綾子に見せつけました。
そこには、綾子の大きな桃のような形の良い臀部がドアップで映っています。 「ちょっと、名前書いてあるじゃないですか!」 スリーサイズが書かれたのはもう覚悟していたのです、しかし『あやこ 二十七歳 既婚』とまで描かれていますのが読み取れます。 「大丈夫だろ、あやこなんてどこにでもある平凡な名前じゃないか」 「ででっ、でも制服着てますし」 現役時代のCAの制服を着てるんですから、そこから年齢と名前が合致すれば割り出される危険だってあります。 「お前がネットでなんて言われてるか知ってるか、スチュワーデスのコスプレしてる変態女だろって意見がほとんどじゃないか」 動画のコメント欄には、そういう綾子を馬鹿にしたコメントが並んでます。たまに本物の制服じゃないかと言う意見があっても、そういう成りきりの変態女だろって見解が大半を占めています。 「スチュワーデスじゃなくてキャビンアテンダントです」 綾子は憮然とした顔で言いました。 どちらにしろ、もう三年も前に辞めているんだから今更着たところでコスプレとなんの違いもないのですが、そのような罵倒も気位の高い綾子のプライドを傷つけるのでしょう。 「はいはい、キャビンアテンダントの綾子さんね。俺がウンコしながら読めって渡した紙に『あやこ』って書いてあったのに、『わたし』に言い換えただろ」 「だって、撮られているってわかってるのに名前なんて言えませんよ……」 でも治療の一貫なのに、勝手に言い換えたのはやっぱりマズかったのかと綾子はしょんぼりします。 「そういう非協力的な姿勢だから、何時まで経っても懐妊できないんだよ。わかってるだろう自分でも」 「はい……」 これには素直に頷いてしまいます。綾子も、もう三年も妊娠できないことでかなり焦り始めているのです。 たまに耳に挟む不妊治療をしても全然懐妊できないなんて悲惨な話が段々現実問題として感じられて来てそれも恐ろしい。 それに比べたら、カメラの前で名前を言うぐらいまだマシなのかもしれないと綾子は思い始めています。
「ほら、今すごい便利になってるんだよな。カメラのここのボタン押せば、アップロードできるようにしておいたから、自分で押してネットにあげなさい」 「自分でやれっていうんですか」 人に勝手にやられるのと、自らアップロードするのは全然違うことです。 「俺が書いたのはそういうシナリオで、そういう治療法なんだよ。キッチリできたら、その高いプライドも崩れて、きっと懐妊の確率も上がるから」 「わかりました」 綾子は、自らのおトイレ動画、しかもお尻に名前を含めたプロフィールまで記載されて、臀部の右側には『公衆便器です、誰でもファックミー』なんて馬鹿げたセリフまで書かれた映像を、アップロードしました。 (やってしまったああぁ……) 完全に一線を超えてしまいました。 これでもう綾子は、元CAの勝ち組のセレブ妻ではありません。言い逃れできないほど、ただの欲求不満の変態女に成り下がってしまったのです。 そうやって自らを貶めることが懐妊に繋がるならと、綾子は歯を食いしばってでも、そのエベレストのように高い気位を折り曲げる決心をことにしたのです。 「さてと、栗原さんには誰でもファックしていいそうだから、俺もやらせてもらおうかな」 正志は、綾子の艶やかなお尻を撫でながら誂うようにそう言いました。 「これも治療の一貫……なんですよね?」 綾子は確認するように言いました。そうでもなければ、こんな男に犯されるなんてとても認められることではなかったからです。 何度でも犯されるたび、自分を納得させるためにそう確認しなければなりません。 「そりゃそうだけどさ、栗原さんもウンコするところ撮られただけでマンコ濡らしてる癖によくそういうこと言うよね。本当は期待してるんだろ」 「そんなことないですよ」 馬鹿なことを言ってはいけません、綾子は嫌々とやられているだけなのです。自ら期待してるなんて、それこそ絶対に認められないことでした。 「そんなことあるだろ、嘘だと思うなら自分でマンコ広げてる動画見て見なよ」 「……うそっ」 ビデオの動画をもう一度確認して、よくよく見ると綾子の自分で押し広げた膣は、内側の肉襞がピンク色に光っていました。
「ほら見ろ、ビデオの映像は嘘を付かないよなあ」 「これはオシッコで濡れてただけで……ああんっ」 正志が綾子のマンコに指を入れて、出しました。それだけで濡れた膣襞はグジュ、ジュチュと音を立てます。 「これがオシッコなわけないだろ、いやらしくヌメってるじゃないか」 サーモンピンクの綾子の膣穴は、正志が指を挿入してかき回すたびにグジュジュチュといやらしい音を立てます。 「ああんっ、そんな、バカなこと……」 濡れている、まだ何も刺激されていなかったのに排泄行為をしただけで、自分は濡れてしまっている。そう否応なく自覚させられて、綾子はあまりの羞恥に頭がカッと熱くなって頬が紅潮しました。 「まあしょうがないさ、いくらセレブとか言ったってただのメス豚なんだから、こういうシュチュエーションでセックスしてれば、条件反射で濡れるんだろ。しかも今日は排卵日だし、久しぶりだし綾子のマンコも期待してるんだよなあ」 指でオマンコを弄られながら、こんな男に慰められるように言われるのが返って綾子のプライドをズタズタに引き裂きます。 「こんなのうそです、うそぉ……」 現実は残酷です。濡れたマンコを弄られただけで、膣襞は自分でも怖いほどに収縮して喜んで男の指に吸い付いています。 「そういうあんたの気位の高いところ俺は好きだけどさ、いい加減諦めて俺のものを喜んで迎えたほうが早く妊娠できるだろうよ」 指で弄るのをやめて、ズボンとパンツをさっと下ろした正志はその貧相な容姿に不釣り合いなほど立派なイチモツを、綾子の膣に擦りつけてきました。 直接生殖器を生殖器で刺激されて、綾子は怖いほど気持ちが高ぶってきます。 「あのっ、また生でやるんですか。私怖いんですけど」 せめてゴムを付けて欲しい。 万が一、夫以外の子供を妊娠してしまっては困るのです。いや、綾子は夫以外の子供というより正志の子供を孕まされるのが一番イヤなのです。 それも綾子にとっては、人生の破滅に繋がります。なんでそんな危険ばかり冒さなければならないのか、どうしても納得がいきません。
「それも説明しただろ、いくら中出ししたって俺の下賤な精子じゃ気位の高いお前の卵子は受け付けないから妊娠しないって」 「それは分かりますけど……」 確かに夫とはこれまで毎月のように仲良しをしているのに、三年も懐妊していないのはなにか強烈なガードがあるとしか思えないことでした。 綾子の高すぎるプライドが自ら男の精子を拒絶しているという説明にも、納得がいくところです。 「むしろお前が軽蔑している俺の精子で受精して妊娠したいと自ら望むぐらいで、ちょうどお前の旦那さんのが妊娠できるぐらいなんだよ」 「そんなになんですか……」 夫の子を妊娠するために、そこまでしなければならないのか。綾子は落胆しますが、今だけの辛抱だと思えば耐えられると思いました。 正志の精子では絶対に妊娠しないと保証されているのですから、今この瞬間だけやり過ごせばいいだけです。 「俺の精液でその頑なに閉じてる子宮を開いてやって、妊娠させてやるんだからむしろ旦那さんにも感謝して欲しいぐらいだよ」 「それは言わないでください……」 不妊治療のためとはいえ、妻が犯されていると聞いたら夫は激怒するはずです。そんなことを吹聴されては困るので、後でこの軽率な男をしっかりと口止めをしておかなければならないと綾子は思いました。 「それじゃあ入れるぞ」 綾子がそんなことを考えていた矢先、いきなり深々と正志の反り返る肉棒が挿入されました。 「ああンッ!」 思わず、そんな嬌声を漏らしてしまいます。 「どうだ久しぶりの俺のチンチンは気持いいかっ」 「そんなこと言われたって……ううっ」 男を迎え入れるための柔らかい穴を、そのために硬くそそり立った肉棒で何度も突き上げて刺激されれば、綾子の心はともかくとしてその熟れた肉体は、肉体的な反応を返すしかありません。 つまり、突かれるたびに綾子の肉襞はおののきながら収縮し、粘膜は熱を帯び、甘酸っぱい愛液を分泌するのです。
これは、気持ちいいと綾子の下の口が喋っているようなものでした。それなのに綾子は上の口ではそれを否定するのですから、亀頭に張り付いた肉襞の蠢きを楽しんでいる正志は苦笑するしかありません。 「マンコ突かれたら素直に気持ちいいって言えばいいんだよ、それが妊娠に繋がるんだから気持ちいいって言ってみろホラッ!」 「きっ、きもちいい……」 綾子は妊娠するため、妊娠するためと自分の心に言い聞かせて、絞り出すように声を出しました。 「よしよく言った、マンコ気持いいか」 「いいっ……、気持ちいい。ああっ……、マンコ気持ちいいのぉ!」 自分でそう言っているうちにそれが半ば暗示のようになったのかもしれません。本当に気持ちいいって気分がどんどん高まって来ました。 「なんだ素直に言えるじゃないか、それでいいんだよ。よしもっと気持ちよくしてやるからな」 正志は綾子のプリっとしたお尻を手でおさえながら、じょじょに抜き差しのスピードを早めてきます。 粗野な男の獣のような腰使い、おトイレでしゃがんだままでこんな酷い態勢で犯されている。そんなシチュエーションが綾子を興奮させて、陶然とさせます。 「きもちいいっ、いやっいやあっ、イクッイグウウッ」 ドンドンッとひときわ強い衝撃が綾子の子宮口を襲います。一番奥をエラの張った亀頭でこするように激しくかき回されて、綾子はたまらずに気をやりました。 硬くたくましいモノで赤ちゃん袋の入口を激しくノックされた振動で、下腹部から頭の先までぴーんと張り詰めたような快楽の波動が駆け登ってきます。 綾子の中で何かが破裂しそうです。心臓はドクンドクンと高鳴り、四肢を震わせて、膣穴は接合部からジュワーッとヨダレのように愛液を垂れ流して、独立した生き物みたいに、正志の肉棒を食いちぎらんばかりに締め付けます。 綾子は便座の上から落ちてしまわないように水洗タンクに必死にしがみつきながら、うわ言のように「イクッイクッ」と叫び続けています。
女の喘ぎ声というものは、どうしてこうも男を興奮させるのでしょうか。 綾子のエクスタシーが、繊細な襞を持った膣の収縮を通して正志の陰茎にもダイレクトに伝わってくるようです。 ヌチュ、ヌチュっとイヤラシい音をたてて粘膜と粘膜を擦り合わせるうちに、狭いトイレの中は綾子の全身から香るエッチな匂いで充満しています。 これは久しぶりにいい射精ができそうだ、そんな予感が正志を喜ばせます。 「絶対妊娠させてやるからな安心しろよ」 「ああっ、ありがとうございます」 綾子は妊娠するためにやっているのです。だから、正志に突き上げられながらそう言われて嬉しそうにお礼を言いました。 「いい返事だ、綾子は妊娠したいんだよな」 「ああーっ、早く妊娠したいですうううーっ」 妊娠したがってる女の膣に精液を注いでやる。なんと素晴らしい慈善事業でしょうか。正志はそんなことを思いながら、綾子との出会いに感謝しました。 こんないい女が都合よく同じマンションに居てくれて、本当はこっちがお礼を言いたいぐらいです。 「よし、俺の子種で孕ませてやるからな。お礼を言えっ!」 「はいっ、ありがとうございます。子種くださいっ」 綾子のお尻は本当に形が良くてセクシーです。白くて張りがあって艶やかで触れると桃色に火照って熱を帯びています。 その最高のケツに指がめり込むぐらい思いっきり掴んで、陰茎をピンク色にヌメるヴァギナに叩きこんでやるのです。 後背位で射精すると中出しした精液は子宮に溜りますから、図らずしもこの体位は妊娠しやすいものとなっています。 ほどなく綾子にとっても正志にとっても嬉しい瞬間がやってきます。 「くうっ、たまらん綾子ぉ、中に出すぞぉ!」 「あああっ、ありがとうございますうぅ!」 正志は叫びながら最後の激しいピストンを繰り返しました。 綾子は吹き飛ばされそうに快楽の嵐を水洗タンクに齧り付くようにして耐えていると、綾子の膣奥に深々と差し込まれた亀頭がドクンと膨れ上がり、鈴口から濃厚な精液を吐き出しました。 ドピューッ!
正志の放出した精液が綾子の瑞々しい膣道を駆け上り、準備万端になっていたピンク色の子宮口に殺到します。 ドクッドクッと、正志が陰茎を震わせるようにしながら自分の遺伝子を注ぎ込みます。綾子の膣もせわしない収縮でそれに答えました。 何度かの精液のほとばしりを綾子の子宮口は貪欲に飲み干していき、ピュルーッと最後の絞り出すような射精まで余さずに飲み込みました。 「ふうっ、これできっと妊娠するからな」 「ああ……ありがとうございます」 射精を受け止めた衝撃に綾子は大きく反り返らせていた背中を緩めながら、子宮の中に暖かいモノが流れこんでくる余韻に満足そうにため息をつきました。 ヌルッと引きぬかれた膣口はポッカリと正志のペニスの形に開いています。それぐらい激しい挿入を受け止めたのです。 綾子の下腹部には確かな充実感があって、確かにこれは妊娠しそうだと思いました。 もちろん綾子は正志の子供ではなく、夫の子供を妊娠するつもりです。 これらは全てそのための準備なのだと信じ込んでいるのです。 「よしじゃあ、撮影を再開しようか」 「えっ、まだ撮るんですか」 もう終わったと思っていた綾子は、さすがに不服そうな声をあげました。バックから犯していた正志も少し疲れていますが、それ以上にバランスの悪い態勢で犯され続けていた綾子は疲弊しているのです。 「最後にちょっとだけだから、さっさと終わらせてしまおう」 「ええ……」 乗り気がしなさそうな綾子にこれを読めと、無理やりシナリオを書いた紙を握らせます。
「ほら、終わりまでやらないと効果が期待できないんだよ」 「これはまた……、もうしょうがないですね。やればいいんでしょう!」 綾子は、渡された紙が読めるように水洗タンクの上に置きました。そうして正志が構えるハンディーカムのカメラに向かってお尻を突き上げて、また先ほどと同じように陰唇を指で広げました。 正志は仕上げとばかりに、綾子の大きなお尻の余白部分に『種付け済!』と書き足して録画を開始します。 さきほどとは違う部分があるとすれば、綾子の膣口だけです。激しいピストンを受けた綾子のマンコは、ぽっかりと穴が開いています。 そして、外陰唇を指で開いていますから、やがて開いた穴からとろ~んと綾子の愛液と正志の中出しした精液の塊が逆流して溢れだしてきました。 「おトイレで遊んでいたら知らない男の人に犯されてしまいました」 なんでこんなこと言ってるんだろうなと思いつつ、綾子は紙に書かれている文字を読み始めます。 「今日はちょうど排卵日なのに、たっぷりと生で中出しされてしまいました酷いです」 綾子の膣からは、太ももを伝うようにしてドロっと中出しされた精液が便座の中に零れ落ちているので、見ただけで中出しされたことは分かります。 それにしたって酷いセリフだと読みながら、綾子は眉根を顰めます。 「このままでは知らない男の人の赤ちゃんを妊娠してしまうかもしれません」 正志が言うにはレイプの方が妊娠の確率が高まるそうなのです。こういうシチュエーションが懐妊率を高めると説明されていますから、綾子だって従うのはやぶさかではないのですが、犯されたなんて言うだけでも結構キツいです。 心理的にキツければキツいほど、妊娠の確率は上がるはずだと綾子は覚悟を決めます。なにせ正志の言うことに間違いはないのですから。 「でも心配は入りません、わた……綾子は、既婚者なので妊娠してもぜんぜん平気なのです」 先ほど名前を言わないで怒られたのを思い出して、ちゃんと自分の名前を言うことにしました。どうせセリフを『わたし』と言い換えても、お尻にしっかりと『あやこ』としっかり書かれてしまっているので一緒のことです。 「あやこは皆様の公衆便所ですので、どうぞ……このお尻を見かけたら遠慮無く生で中出ししてください」 綾子はこんなセリフを言っているだけで、思わず声が震えてしまいます。本当に怖いセリフだなと思います。 誰かが、この動画の『あやこ』が私だと気がついて知らない男の人に本当に犯されたらなんて思うとゾクゾクとしてきます。 「どなたの子種で孕んでも、元気な赤ちゃんを産みますので、どうぞ誰でも気兼ねなく綾子のマンコを性処理にご利用ください」 綾子はこんなセリフを独白しながら、たぶん自分はもう二度と、公衆便所の類は利用できないだろうなと思いました。男女兼用の便器は特に二度と使わないでしょう。 そうしてほんの数秒の沈黙……。 綾子の膣から、ひときわ大きな精液の塊がドロっと溢れだしてぽちゃりと音をたてて水洗便所の中に落ちました。
「はい、お疲れ様でした。中出しされた膣は洗わないでタンポンでもハメて子宮の中に精液を溜めておいてね」 ようやく正志のオーケーが出て撮影は終了です。 「……了解しました」 綾子は、ようやく今日の辛い不妊治療が終わったと深々とため息をつきました。 忌まわしきトイレから一刻も早く出ようとする綾子に、正志は声をかけます。 「おっと、ちょっと待った」 「なんですか、まだ何かあるんですか……」 もう勘弁してと、綾子はちょっと涙声になってしまいます。 「ほら、さっき撮った動画を確認してから、インターネットへのアップロードのボタンを自分で押してね」 映像を無言で確認して、自分の情けない姿を見るだけで目尻から涙が溢れます。もう終わったと思ってしまったから、決めていた覚悟が揺らいでしまっていたのです。 こんな不意打ちみたいなやり方酷いと思いながら、震える指先で綾子はハンディーカムのカメラのボタンを押しました。 「……はい、これでいいですね」 正志が来る日は、いつもこんな感じでぐったりと疲れてしまうのです。彼が来る前は出かけようと思っていた予定も、キャンセルすることにしました。 そして今日もボロボロになった心身を引きずるようにシャワーだけ浴びて、ベットでふて寝してしまうことでしょう。 不妊治療と言う名の恥辱調教は、綾子が懐妊するまで、いえもしかすると懐妊してからも延々と続くことになるのです。
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