後日談14「栗原綾子の不妊治療3」 |
これまでのあらすじ――
なんて大した説明でもありませんが、栗原家の寝室で綾子と正常位中出しセックスを終えた田中正志は、その隙を突かれて後ろから深谷茉莉香に襲われることになったのでした。
こうあらすじ説明しても、いまいち訳の分からない話ですね。
こうして状況を俯瞰して見ても分からないのだから、アイマスクで目隠しをしていた正志が不意を突かれて困惑の極みに陥るのも仕方がないといったところでしょうか。 「綾子さん、正志さんの身体を絶対に離しちゃダメですからね」 茉莉香がなぜこんなところにいるのか。そんな正志の質問には一切答えない茉莉香は、綾子に拘束を命じると後ろから正志のお尻を舐め始めました。 しかも、舐める場所は、思いっきりお尻の割れ目のあたりです。肛門のシワの部分も、ペロペロと舐め回します。 あまりにも、いきなりな肛門攻めに正志は悲鳴をあげます。 「うわあああぁぁぁ、茉莉香ちょっと待って茉莉香ぁ!」 これには正志も慌てて、情けなく叫んでしまうのも仕方がないかもしれません。 綾子は、命令通りしっかりと正志を抱きしめています。 なにせ渾身の力を振り絞って中出しセックスをカマした直後ですから、正志も全身の力が抜けています。離れようと思っても、身体が重くて持ち上がりません。 しかも、肛門は男の急所でもありますから、刺激されると力が上手く入らなくなってしまうんですね。 茉莉香の細く長い舌はすでに正志の肛門の中にまで入り込んでいます。茉莉香にお尻の穴を舐めさせているなんて、正志は申し訳ないとも感じます。 しかし、アイマスクをして視野を奪われている正志は肌感覚が敏感になっています。つまりこの状態でお尻を責められると、凄く気持ちがいいんですね。 しかし、さすがに驚いて萎んだ陰茎が復活することはない……と思ったら綾子の中出しで緩んだ膣の中ですっかりカチカチに復活していました。 一度、熱々の放精を受けたというのに、まだ物足りないと陰茎を吸い上げる綾子の膣襞は蠕動しながら正志を暖かく包み込みます。 ただでさえ射精直後の陰茎は敏感なのです。棒でも穴でも気持ちいい、天国の状態に正志は無理やり叩きこまれました。 それだけ茉莉香の舌技が巧みだと、まあここはそう言うことにしておきましょう。
「いや、綾子……栗原さんも、なんで茉莉香の言うことを聞いてるんだよ」 茉莉香が正志のお尻の穴を責めるだけでまったく説明してくれないので、綾子の方に聞くことにしたようです。 「こうしたほうが、すぐ妊娠できるって深谷さんに教えてもらったんです」 それが茉莉香の命じるままに、正志とぴったり身体を合わせたまま抱きすくめている綾子の答えでした。 「いや、すぐ妊娠できるって、ウウッ!」 お尻の穴のいわゆる前立腺の部分を繊細な舌先で刺激されて、正志は綾子の膣に挿れたままでドピュルッと、二回目の射精をしてしまいました。 射精しようとおもってしたわけではないので、正志は顔を歪めて放精しながらも、信じられない気分でした。 暴発というのは、男はとても情けない気持ちになるのです。 しかし、茉莉香に後ろの穴を舐められて精液を絞り出されるこの感覚はなんと甘美なことか。 まさに天国と地獄が表裏一体になって交じり合う心地でした。 「正志さんは、綾子さんに遠慮してるんですよ」 正志のお尻から顔を上げた茉莉香は、突然そんな言いがかりとも取れることを言って来ました。 「いやいや、遠慮なんかしてないよ」 正志も、これには心外です。こうやってSM的な責めをかましてやって、綺麗な綾子を全力で汚し切ってやっているのに、どこに遠慮があるというのでしょう。 「じゃあなんで、綾子さんのその綺麗な乳首を噛みちぎるぐらいに責めてあげないんですか。私の時は、痛みがあったほうが排卵しやすいって言ってましたよね」 「それは……」 正志は(そんなこと俺、茉莉香に言ったっけ?)と思いますが、確かに綾子には乳首にローターをくくりつけたりはしても、茉莉香の時ほど強く刺激していないことも確かです。 いや、乳首やクリトリスを肥大化までさせた茉莉香の時と比べる方がオカシイのですが、茉莉香にそう指摘されて見れば、例えば岸辺佳寿美の時の責めに比べても、綾子への肉体的当たりは弱かったと気付かされます。 確かに正志は、まだ綾子に遠慮している。そう言えてしまえます。
「正志さん……。綾子さんは、妊娠するためならどんな責めにも耐える覚悟をしてるんですよ。責めなきゃいけない貴方が、そんなことでどうするんですか」 茉莉香にそう怒られると、正志はもうどうしようもなくなってしまいます。 「ああっ……ごめん」 正志は謝るしかありません。それにしてもさっきまで責めてたはずなのに、相変わらず責められると弱いものです。 いや、それ以前に正志の立場としては、思いっきり綾子とやっているところを見られたことに引け目があるのかもしれませんね。 こうして綾子と共謀して正志を責めている段階で、茉莉香としてはもう割り切っているのでしょうけれど。 正志としては、茉莉香に申し訳ない気持ちがあります。 「謝るなら、綾子さんにしてあげてください。反省したら、今回こそ彼女を本気で孕ませてあげてくださいね」 「ああ、綾子もすまない」 もう茉莉香に言われるままに、正志は力なく謝りました。不意打ちされたあげく、連続で二回も精を抜かれた直後で、気持ちが弱っているってこともあるのかもしれません。 「いえ、私は本当になんでもいたします。だから田中さんどうか……、どうか私にも早く赤ちゃんを授けてください。お願いします」 綾子は『私にも』と言いました。 実は、茉莉香との事前の話し合いで、綾子が茉莉香がもう二人目を授かっていることを知っているのです。 綾子は、茉莉香も自分と同じように正志の不妊治療を受けていると勘違いしていますから(ある意味で、懐妊させられるという意味ではそれは全く正しいのですが)こうやって3Pで正志に本気を出させたほうが懐妊の確率が上がると教えられて、茉莉香の言いなりに動いているのです。 いかに茉莉香が、正志の駆使するハロウィンの魔術に最も詳しい女性であるとはいえ、これは催眠術で言うところの逆洗脳利用に当たります。会話しただけで、正志が綾子にかけた暗示の内容を察して、横からリプログラミングして支配下に置いたのは特筆に値します。 まあ、正志のやることが単純で見え透いているからとも言えるのですが、それを差し引いても茉莉香は凄い女性です。 ハロウィンの力が無ければただの引きこもりのオッサンに過ぎない正志が、簡単に手玉に取られてしまうのは当たり前かもしれませんね。
「さあ、正志さん。今日はまだ時間がたっぷりあるんですから、精液の最後の一滴を絞りとるまで終わりませんからね」 休んでないで、もっと綾子を責めてくださいと文字通り尻を叩かれて、正志は綾子の乳首を歯型がつくぐらい噛み締めました。 「スマンな、痛いぐらい噛んだほうが、妊娠しやすいんだ」 まったく茉莉香の誘導どおりの行動を取ってしまう正志。 「いいんです、もっと強く後が残るぐらいしてください」 あの高飛車だった綾子にそう言わせて、正志の方も興奮してしまいます。 その後ろでは、正志のお尻の穴の急所をゴリゴリと茉莉香の舌先で刺激されているわけですから、正志がまた呆気なくもドピュルと三発目の射精をしてしまっても致し方ないと言ったところでしょうか。 「ウッ、またいったぞぉ……」 もう睾丸が空になったと思うぐらい、三発目もたっぷりと綾子の中に射精してしまいました。 「さあ、ドンドンいきますよ」 正志のお尻を撫でながら茉莉香が、正志を励まして声をかけます。 「茉莉香、もうこれ以上は出ないよ……」 一度に三発の射精を終えたせいか、それとも脅かされて極度の興奮状態にあったせいか、まだ綾子の膣の中にめり込んだ陰茎はまだ勃起していますが、これ以上の陰茎への刺激は鈍い痛みを感じます。 睾丸の中の精液はもうあらかた絞り出したという合図です。 「ダメですよ、正志さんはまだイケます」 それ茉莉香が決めることかとも思いますが、彼女に言われると股間に熱い力が宿るような気がしました。 「ううん。わかった……頑張るぞ」 イクのは正志なのに、後ろから聞こえる茉莉香の声は、ギブアップを許してくれません。もう限界なのに、茉莉香に肛門を舐められながら射精管理されて無理強いされるが意外にも嫌でなく。 そのことで、余計に興奮してしまうのもまた事実。正志はMの気質もあるのかもしれませんね。 それでも、まだこれ以上の精液を絞りだすのには刺激がたりません。
「綾子は妊娠したら母乳で赤ちゃんを育てるんだよな」 正志は、綾子のちょうど手の平で揉みしだける大きさの乳房を掴みながら、そのような話を振ります。どうやら綾子が自分の子供を産んで育ててくれている姿を想像して、イチモツと気持ちを奮い立たせて、がんばろうと思ったようです。 「えっ……私はミルクで育てようかと思ってるんですけど」 綾子の言うミルクとは、母乳のことではないようです。つまり、粉ミルクで育てると言っているのです。 「なんでだよー」 正志は不服そうに声を上げます。それだけでなく乳房をあまりに強く揉みしだくので、綾子はマスクの下の顔をしかめました。 「だって、母乳を吸わせると乳房の形が崩れるっていうじゃありませんか」 綾子がそう言うのを聞いて、正志の肛門を責め続けていた茉莉香がプッと吹き出してしまいました。 別に母乳がどうとかではなくて、まだ妊娠もしていないのに育児の仕方で揉めている綾子と正志のやり取りが、あまりに滑稽で笑ってしまったのです。 受精もまだなのに、すでに産んだ後の話とは、きっと鬼だって笑うでしょう。 「ダメだよ赤ちゃんは母乳で育てないと、子種やらないぞ」 「あっ、それはダメです」 こんなつまらないことで不妊治療をやめられては、綾子だって困ります。 「じゃあ赤ん坊に乳首吸いまくられて変な形になっても、乳房が萎んでも、母乳でちゃんと育てると誓え」 正志は綾子が本気で困っているのを喜んで、わざとなじるようにそんな言い方をしました。 「はい、ちゃんと赤ちゃんは母乳で育てますから、お願いします」 「産まれたら、ちゃんと母乳で育ててるか確認するからな。というか、俺のお陰でオッパイも出るんだから、俺にもたっぷり飲ませてくれよ」 「ええっ~! 田中さんにも飲ませないといけないんですか」 これはさすがに綾子は考えてもいなかったらしく、驚いた声を上げました。
「なんだ、嫌なのか?」 「いえ、そんなことは……じゃあ母乳が出るようになったらですけど、差し上げます」 綾子は、渋々と了承しました。 実は綾子はこの期に及んでも、妊娠さえしてしまえば、正志との関係は切れると思っていたようです。 それは同時に、綾子がまだ正志の子供ではなくて夫の子供を妊娠できると信じているという現れでもあるのでしょう。 普段は鈍いはずの正志なのに、綾子の声のトーンからそんな気持ちだけは、敏感に察するのです。 「じゃあ罰として、今週の夫とのセックスは禁止な」 正志がそう言うのは、綾子の夫への嫉妬を剥き出しにしたからです。 「えっ、罰って何の罰なんですか。それじゃあ不妊治療の意味が……」 さすがにこれには綾子も不服そうな声をあげました。正志が執拗に中出しを繰り返している今週こそ、綾子の排卵日をまたいだ危険日に当たるのです。 正志の精液を子宮に入れることで、夫の子供を妊娠しやすくすると教えられている綾子は、当然のことですが、夫とも同時進行で種付けセックスをしています。 綾子は、正志ではなく旦那との子供を妊娠するつもりなのですから、当たり前のことです。 もしかすると、これまで懐妊しなかったのは、夫と精子と正志の精子が、綾子の子宮の中で喧嘩してしまって妊娠の妨げになっていたのかもしれません。 「旦那への言い訳はなんとでもなるだろ、『急に生理が来たので』とでも言っておけば断れるじゃないか」 「でも夫としなかったら、この不妊治療の意味って何なんですか?」 さすがに、これでは綾子は納得しません。
そこで、茉莉香がすかさず口を挟みました。 「綾子さん、正志さんの言うことを信じて受け入れてあげて」 「えっ、深谷さん。でも……」 「私は正志さんを心の奥底から信じたから二回も妊娠したのよ。正志さんが本気を出して妊娠させようとしても、受け入れる貴方の方がそれじゃまだダメね」 「でも、夫としないと意味が無くなっちゃうから……」 綾子の疑念は、少し揺らぎます。綾子よりも先んじて二回も懐妊した茉莉香にそう言われると説得力を感じるからです。 茉莉香は抱きしめあってる二人の前に回って、綾子の革のフェイスマスクを外してやりました。暑苦しいマスクを外されて、ふうーっと綾子は息を楽にします。 整った綾子の顔はマスクで蒸れて、火照った肌に玉の汗が浮かび、普段は綺麗に整えられている髪もボサボサになっています。 茉莉香は、それでも不思議と今の綾子を見て美しいと感じました。 何度も女としての絶頂を味わった、それがために乱れた淫蕩な顔だからでしょうか。 綾子の濡れた瞳を上から見つめながら、綾子は説得します。 「綾子さんいいこと、懐妊するためには夫の子供じゃなくて正志さんの子供を妊娠するって、心から思わないといけないの。そう言われたんでしょう」 「はい、そうでした……そうですよね……」 茉莉香の言葉に、綾子は呟きます。 綾子がふっと視線を前に向ければ、大きなアイマスクをつけたブサイクな男の顔が、目の前にはあります。正常位で種付けセックスして、何度も何度も絶頂を感じられたのは、余計なノイズ……つまり、正志の顔が見えなかったからなのかもしれません。 「いいですか。綾子さん、危険日の間の一週間『正志さんとだけ』セックスすれば、確実に正志さんの赤ちゃんを妊娠できるんですよ」 「はい、分かってます……」 綾子は震えるような声で答えます。
もう何度も正志に中出しされているのに、今更そんな反応なのかと茉莉香は少し呆れました。 何度も正志さんにこんなにも可愛がってもらって、気持よくさせてもらったというのにと茉莉香は、ほんの少しだけ嫉妬したのかもしれません。 「いいえ、分かってません。ちゃんと正志さんの顔を見てください。この人の子供を妊娠して一生育てていくんだってここで誓ってください」 だから責めるように言ってしまいました。 「はい、誓います。私は、田中さんの子供を妊娠して……」 茉莉香の勢いに押されたように、綾子はそう言いかけます。 「本気じゃないですね、心からそう思わないといけないって分かってますか」 茉莉香の言葉責めは続きます。独り善がりに綾子の心を都合よく勘違いして満足した正志と違って、それは同じ女性だからこそできる、逃げ道を塞ぐ執拗な責めです。 「うっ、分かってます。だから私は、夫じゃなくて田中さんの子供を、妊娠します。誓いますよ。これでいいでしょうか」 綾子は苦しそうに、それでもそう言い切りました。もしかすると、初めて本気で言ったかもしれません。 夫ではなく、本当に正志の赤ちゃんがお腹にできてしまうかもしれないのだと、そう確認してしまったからこそ、綾子は苦しそうな声にもなるし、目尻にも苦い涙が溜まるのです。
茉莉香は、ようやく決心を固めたような綾子の表情を見てニッコリを微笑むと…… 「ダメですよ」 と言いました。
そうして、絶句する綾子の耳元に、しっかりと子供に言い聞かせるように呟きます。 「いいですか綾子さん、貴方の赤ちゃんを作る子袋の中には、今眼の前で抱き合ってる男の精液がいっぱいいっぱい入ってるんです。分かりますか」 綾子は、言葉もなくコクンと頷くしかありません。 「貴女の子宮には、元気に正志さんの精子が泳ぎまわっているんです。その子宮に排卵しちゃったら、どうなりますか」 綾子が答えを渋ったら許さない。茉莉香は、そんな鋭い目付きで上から眺めています。 「その精子で、受精します……」 震える唇で、綾子はそう答えます。 「そうですね受精して、着床したら正志さんの赤ちゃんができちゃいますよね。子供でも分かりますよね、貴方の夫ではなく、正志さんと貴女の赤ちゃんですよ」 「はい……」 「じゃあ聞きますよ? なんで貴女は、赤ちゃんのできる日に夫とじゃなくて、正志さんと子作りセックスをしてるんですか」 「それは不妊治療だから仕方なく……」 「そうじゃないですよね。夫との赤ちゃんができるならそうですけど、正志さんとセックスして赤ちゃんを作ってるんですから、これは不倫セックスですよね」 「違いますよ、これは不妊治療だから……」 綾子は、声も震えて泣きそうです。というか、もう目尻から大粒の涙がこぼれてポロポロと溢れだしています。 「もう一度聴きますよ、綾子さんは誰の赤ちゃんが欲しかったんですか」 「それは夫の……、いえ田中さんの……」 震える綾子の声は、本音と建前どちらを言えばいいのか迷っているようです。
「どっちですか、いま綾子さんは誰とセックスしてるか考えてから、ハッキリと答えてください」 「田中さんと赤ちゃんを作ろうとしています」 「旦那さんじゃなくて、正志さんと子作りしてるんですよね。じゃあ、これは不倫にはならないんですか」 「ゴメンナサイ、不倫に……なります」 「そうですよね。じゃあ、なんで綾子さんは正志さんと不倫してまで赤ちゃんを作ってるんですか」 「えっと……。だって、私は夫と赤ちゃんができないから、不妊治療だから……」 「正志さんのことを愛しているからですよね」 「えっ、深谷さん。なんで、そんな、いきなり……」 思ってもみないことを言われて、綾子は泣きはらした瞳を大きく見開きます。 「なんでそんなに驚くんですか。綾子さんは好きでもない男の子供を自ら望んで妊娠するんですか」 「それは、だって……違うじゃないですか」 そうなのです、違うのです。綾子は正志のことなんて好きではありません。でもそれをハッキリと言えない流れに持っていかれています。 「正志さんのこと、嫌いなんですか」 「いえ、嫌いじゃないですよ。田中さんには色々としてもらって、不愉快な時もありますけど、でも……」 これには黙って聞いていた正志が驚いています。きっと綾子にはずっと嫌われているって思っていたからでしょう。 嫌いではないで御の字ですよね。 「じゃあ正志さんのことが好きなんですよ。よく考えて答えてください。セックスしてるときに、一瞬でも本当に正志さんの赤ちゃんができてもいいって、思いませんでしたか?」
「それは……思いました」 嘘は付けないので、綾子は素直にそう言うしかありませんでした。正志のような男の子供を産むなんて本当は嫌だと普段は思っていた綾子ですが、今日マスクに顔を覆われて暗闇のなかで睦み合うセックスを経験して、激しい絶頂を何度も味わって、その瞬間には最初から今までずっと抱いていた正志への嫌悪感が溶けてなくなってしまったのに気がついてしまったのです。 逆に言えば、正志をブ男と嫌うのは綾子の世間的な建前で、本音はこうして正志と抱き合っていても、身体をしっかりと抱きしめて離さない程度には、もう嫌いではないとは言えるのです。 だって綾子の女が、正志の男で腰が抜けるほど感じさせられたのも、事実なのですから。
「じゃあ、あとは簡単ですよね。今回で孕んだら確実に正志さんの赤ちゃんですから出来たら綾子さんどうしますか」 「赤ちゃんが出来たらちゃんと産みます……」 綾子はそう答えて、慌てて付け加えます。 「……ちゃんと産んでから母乳で育てます」 さっき正志にそう約束したんでしたね。綾子を追い詰めるような怖い笑みだった茉莉香は、それでふっと頬が緩んでしまいました。 何とか本当に笑ってしまわないように堪えながらもう一度だけ聴きます。 「綾子さんは正志さんのことをどう思ってますか」 「はい、田中さんのことは……好きです」 茉莉香はそう聞いて、ふぅーと安堵の息を吐きました。 「正志さん、長々とスイマセンでした。もう一回射精できるぐらい回復しましたか」 「おお、ありがとう。おかげで、元気がでたよ」 アイマスクをつけてますから、正志には二人の会話しか聞こえませんでしたが、じっと聞いているだけで後一回分の射精をこなすぐらいのパワーがわきました。 茉莉香が綾子を誘ってくれるなんて、望んでもないような嬉しいシチュエーションで、正志は深く興奮したのです。 「田中さん、私……夫のじゃなくて田中さんの赤ちゃんを孕みますから、どうかまた中出しをお願いします」 綾子は自ら、そうおねだりしました。それに安心して、茉莉香はさっと身を引きました。邪魔にならないようにです。 たぶん最後の一回は、茉莉香が前立腺を刺激したりしなくても、できるだろうと分かっていたのです。 「田中さん愛してます……」 元気が湧いてきたところで、激しいピストンでもかましてやろうとしていた正志を抱きしめると、綾子はそう言いました。 正志も、もう腰を打ち付けるピストンはやめて、綾子に深々と身を沈めるようにして抱きしめたまま気持ちを高めます。 「綾子、綾子、綾子……」 何度も名前を呼んで、正志は綾子と愛情深く唇を重ねました。
いくら無神経な正志でも、綾子に(……愛している)とは、茉莉香がいる所では言えないので、心のなかで付け加えました。 本当は射精するのに、ピストン運動なんていらないのです。それでなくても綾子の膣襞は、上の唇と同じぐらいの強さでキュウウッと正志の陰茎から吸い付いて、絡み付いて、離れないのですから。 綾子とたっぷり舌をからめて唾液を交換しながら、正志は静かに最後の射精を行いました。例えるならそれは厳かな射精でした。 静かで、それでいて力強い迸りです。 ビュルルッと最後の一滴まで絞りだすような、それでも意外と結構な量と勢いで精液が亀頭から飛び出して、もう正志の精液で溢れそうになっている綾子の子宮口に叩きこまれて行きました。 もうこれ以上は打ち止め、もう本当に赤玉が出てしまいます。 ぐったりした正志が、茉莉香に支えられるようにして腰を引いて綾子の身体の上からどいた後で、綾子の正志の陰茎の形にぽっかりあいた膣口から面白いぐらいに中出しした精液が逆流してきます。 アイマスクを取って、起き上がった正志は、流れ出てシーツを濡らす精液の川を見て力なく微笑しました。 中出しを確認するのは、男の本能なのでしょうか。 茉莉香は「中出しした後も、撮っておくんですか?」なんて正志のハンディーカムを持ち上げて聞くので、正志も苦笑して頷きました。 そして正志は可笑しくて、笑い出してしまいました。 「なんで笑うんですか」 茉莉香がちょっと不思議そうに、疲れきって目にくまができている正志の顔を覗き込みます。 「ごめんごめん……」 正志は心地よい疲労襲われて、ドサッとベットに横たわります。今日は長丁場だったとはいえ、まだ日暮れにも早い時刻なのですが、このまま百年でも寝てしまえそうです。
「きっと、今週で綾子さん妊娠しますよ」 ちゃっかりと、中出しされてぐったりとした綾子の(映像が使えるように、またフェイスマスクをかぶせて撮る配慮までしてます)映像をたっぷり撮り終えた茉莉香は、そんなことを言いました。 「本当か? 茉莉香の予言はバカにならないからな……」 茉莉香の言う妊娠するとかしたって予感は、不思議と外れないのです。どういう理屈なのか正志には見当もつかないことですが、女の勘というモノはあるのでしょうか。 「大丈夫です、この勢いでいけば今週は絶対ですから、正志さんもがんばってくださいね」 「ああっ、分かった。おかげでヤル気がでたよ」 茉莉香が手伝ってくれるなら、正志もやれるような気がしてきました。 「いつまでも綾子さんばっかりズルイですから、ちゃっちゃと孕ませてしまいましょうね」 茉莉香はそう付け加えると正志の手を握って、お風呂は私の家で入りましょうと耳元で囁きます。 命の水(ユンケル)が欲しいと、正志は切実に思いました。
綾子の妊娠が確認されるのは、これから一ヶ月ほど後のことです。
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