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E小説(中出し・孕ませ・時間停止・催眠・環境変化など)
エロ小説のサイトですので18歳未満の方はお帰りください。傾向はマニア向け、作品中のほぼ100%中だし妊娠描写、付属性として時間停止・催眠・環境変化などです。
終章「最上階の少女」
 このマンションの最上階である十九階に住む、金髪で淡い碧眼の満十五歳の少女、アルジェ・ハイゼンベルク。たしか、国籍はフランス系アメリカ人だったか。当初の計画では、彼女を最後の標的にしようと考えていたのだ。あえて、製作者へ報告せずに突然来訪してみたのには、それなりに訳がある。チャイムも鳴らさずに、そっと扉を開けてみると、鍵も掛かっていなくてすっと開いてしまった。
「やっぱり……そうなのか」
 蛍子のところにいって、激しくやったことは不意打ちにすらならなかったようだ。ここまで来てしまったからには、覚悟を決めて古森正夫は薄暗い室内に入り込む。生活感のない殺風景な部屋。十九階は、本来二棟分のスペースをぶち抜いた、このマンションでもっとも豪奢な部屋のはずが、ただその広さだけを誇示されている薄暗い部屋は、廃墟となったオフィスを思わせた。部屋の一面をぶち抜きて作られている大きなテラスからは、満月の月明かりだけが差し込んでいる。そのだだっ広い部屋の真ん中にたった一つある机の前で、満月を背に少女が手を組んで座っていた。
「ようこそ、ゴールへ。古森正夫くん」
 美しい女性の声だが、この覚えのあるトーンはやはり製作者の声だった。
「やっぱり、始終監視されていたんですね」
「ほう、気がついていたか。無理もないだろうな。君が使ってるのは、私のシステムだよ。君が催眠をかけた女たち目は、私の目といってしまってもいい。ただレポートに意味が無かったわけではない。文章にこそ、その人物の知性と人間性が現れるわけだしね。君の書く報告には毎回楽しませてもらったから、ゲームが終わるのは残念だよ」
 そういって、ニヤリと笑った。燃えるような満月に照らされて、光り輝く少女の目の輝きは、美しくも気高い狼を思わせた。いや、それはもっと妖しげで、畏怖を感じさせるものだ。
「ぼくをどうするつもりなんですか」
「そうだね……RPGなら、私がラスボスで君と戦うところなのだが、残念なことに私の目的は別にある。ゲームというのも方便なので、残念なことに本当にゲームはここで終りだ」
「そうですか、ぼくも残念です」
「まあ、そこにかけたまえ」
 そういって、パイプ椅子を差し出してくれる。自分のビルの最上階がこんな使い方をされているなんて、不覚だった。なぜ早く気がつけなかったのか。この不自然な少女が越してきたのは、ちょうどこの「タワーマスター」が始まる直前。同じ建物内からなら、正夫のパソコンに直接的なアクセスできたのも納得がいく。最下層で、塔主を気取っていたのはなんと滑稽なことだったのだろう。本当のタワーマスターは最上階にいたのだから。
「一つ質問していいですか」
「なんだね」
「なぜ、ぼくだったんですか」
 これだけは、聞いておきたいことだった。この答えによっては、正夫は製作者と闘ってもいいとすら思った。たぶん勝ち目の無い闘いでもだ。
 その美しい頬に手を当てて、ほんの数瞬、考え込んでから製作者は答えた。
「難しい質問だな。ちょっと、長い話になるが聞いてくれるかね」
「はい」
「私は、アフリカのアルジェリアで生まれた。だからアルジェというんだ。孤児につける名前なんて、適当で笑えるだろ。フランス人と現地人のハーフだよ。もっとも、これは現地の孤児収容所で行われたDNA検査で分かったことなのだがね、その検査で分かったもう一つのことに私は百万人に一人といわれる脳の先天性異常があることが分かった」
「先天性異常……」
「ハイゼンベルク症候群というんだが、大脳新皮質の異常発達でそうならないケースもあるんだが、私の場合は天才として生まれたんだ。俗に言う進化した人類というやつだな。そうして、その能力を見込まれて幼いうちにアメリカのある地の研究所に移された。そこで、私は催眠システムの基礎理論の研究に携わっていた。才能を生かせる仕事ではあったし、そうするしか生きる術がなかったからな。能力の無いものには非情だったが、それなりの成果を示せば家族のように優しくも扱ってくれた。その研究は倫理的に、問題もあったが私はまだ十五にも満たない子供だ……情緒というものが育っていないのか、もともと壊れているのか、それは平気だった。何不自由なく、そこで研究を続けながら育って、それで満足していたんだ。」
 多分に、信じられない話だがその目に嘘は無いと正夫は思った。
「だが、私に新しい目標ができた。その研究所に、私のプライドを酷く傷つける男が居たんだ。何度も何度も、私が憎むに値するぐらいにな。そいつは……正夫、AC社という会社を知っているか」
 昔話から急に話を転じる製作者、たしかAC社は最近日本に進出してきた外資系の大企業ぐらいしか知らない。たしか、全世界規模で急成長を続けている。裏には黒い噂もあるみたいだが、ネット以外ではまるで報道規制がされているみたいにそんな話は出ないことで有名だった。
「あそこが、うちの研究所の経済的な母胎だ。組織は、最近になって権力争いが激化して四分五裂していて、私はACの日本支社のトップをつぶすためにアメリカの本社から送り込まれたんだ。なぜ、そんな仕事を引き受けたかというと、そのトップの裏に私のプライドを傷つけたあの男が居たからだ。奴を倒すのが私の新しい目標になった」
「それと、ぼくの何の関係が……」
「奴も催眠を使って、組織を動かしている。私にも、組織が必要だ。そのためには催眠で動くような単純な兵士だけでは到底勝てない。催眠で操る兵隊を動かせるだけの力を持った仲間が居る。君にその適正があった」
 そんなことをいきなり言われても困る。その変な企業間の争いもアメリカの研究所も、製作者の個人的な怨恨も、自分とはまったく関係のないことではないか。
「そして、君はテストを潜り抜けた。これまで才能がありそうなものを何十人と試したが、君だけがここまでたどり着く能力と意志の力を見せた。君は、自分のことをだめなデブオタだと思っていただろうが、そうではなかったのだよ。外見はともかく、君の中身は私と同じ獣だよ。牙さえ与えられれば、それをどこまでも冷酷に使える」
 そういって、製作者は獣の目を向けた。まるでその姿は、牙を剥いた美しい獣のようだった。群れから離れて、たった一匹で生きている獣が、仲間になれと誘っているのだ。その姿に、理解しがたい衝動を感じた。それを理不尽に感じて、抑えつつ正夫はいった。
「だから協力しろって、おかしいですよ」
「そうだな、おかしいな。もちろん、君に拒否権はある。無理に従わせる兵隊なら、この私の催眠システムを使えば、いくらでも手に入る。私にいま必要なのは、あくまでも自由意志で協力してくれる有能な仲間だけだからね」
「ぼくが、拒否したらどうします」
「何もしない、いまの催眠システムもその力もそのままにしておく。この建物に限った話だが、君はいまと一緒のようにここで一生戯れて楽しく生きていけばいい。闘いには危険もあるし、拒否されてもかまわない。力は、私を楽しませてくれるほど立派な獣になった君への褒美としてもいい」
 まるで、断れといっているようだ。危険のある闘いと、手に入れた安楽な生活。誰がどう選んでも、決まっているだろうに。
「君の質問への答えがまだだったな。君は、よく似ていたんだよ。目的もなく、ただ安逸に研究だけやっていたころの自分に。まさに、ゲームだったよ。自分のうまくできる世界に閉じこもって、ただそこで満足を得ていた。ただ……」
「ただ?」
「きっと、私は孤独だった。闘うべき相手を得て、初めてその孤独に気づいた。私は、いま何故か敵を得て、充実している。だから、きっと君もいつかその孤独に気づくときがくるんじゃないかと思うんだ。だから、拒否されてもかまわない。君がその気になるまでいつまでも待つ」
「待つ必要はないですよ、あなたと一緒に闘います」
 とても愚かな選択といえるかもしれない。古森正夫は恵まれた人生を送ってきた、楽な道が常に用意されて来たから、そっちへそっちへと流れていた。だが、ここ何ヶ月か「タワーマスター」としての生き方が彼を変えたのだった。危険? 結構じゃないか。なにかもっと、もっと自分の力を生かせるところがあるはずだと思っていた。むしろ、場合によってはこの少女を倒すつもりで最上階まで駆け上がってきたんだ。外にもっと大きな闘いの世界があると言われたとき、ふっと正夫の世界が無限に広がる気がしていた。いや、広がっていくに違いない。
 製作者は、目をすっと細めると正夫の前までいって手を差し出した。
「これで、君は仲間だ。歓迎するよ、古森正夫」
 正夫は、手を握り返す。製作者に持っていた冷たいイメージよりも、それは、とても暖かい手だった。
「あの一つだけお願いしていいですか」
「なんだね、出来る限りのことはなんでもするが」
「仲間というのは、まだ早いと思うので、師匠と呼んでもいいですか」
「師匠か……それも悪い気持ちはしない」
 そういって、製作者は初めて、フフっと鼻で笑うと笑顔を見せた。意外なことに、笑うと年齢相応に可愛らしかった。確かに、まだ中学生ぐらいの女の子に高齢ニートの正夫が弟子入りするのはたしかに滑稽かもしれない。
「弟子入り歓迎する。ただ、私は厳しいよ」
「望むところですよ、師匠」
「では、まず覚えておくがいい弟子よ。安逸に流れて生きることは、誰かの催眠の下で生きているのと変わりない。自分の意志で、いま、君がしたような決断をできることが催眠術師として、支配者としての資格なんだ。君はそういう意味では、この瞬間に操られる側から操る側に渡ったんだよ」
 そうか、思えばいまの選択が古森正夫が生まれて初めてした決断だった。
 そうしてその瞬間、稀代の天才少女アルジェ・ハイゼンベルクと、その弟子古森正夫の闘いが始まりを迎えたのだった。

タワーマスター 完結(著作 ヤラナイカー)


プロフィール

ヤラナイカー

Author:ヤラナイカー
おかげさまでプロ作家になって五年目です。
ボツボツと頑張っていきますので、今後ともよろしくお願いします。
(プロフの画像、ヤキソバパンツさんに提供してもらいました)



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