「なんてことないですよ」催眠短編 |
佐々木佐貴子は、頭だって容姿だって人並み以上なのに、優柔不断な性格でいつも損をしていた。 心が弱いから、気持ちが続かないから、いつも中途半端なことで納得してしまう。 大学も、あんなに入りたかったのに勉強が続かず、挫折して二次志望に。 就職だって、本当は教師になりたかったのに、学校事務員で妥協して。 付き合ってる彼氏だって二番目に好きな人、本当に付き合いたかった人は友達に先を越された。 「ああ、自分に強い意志があったらなあ」 そんなことを思いながら、二十三年間生きてきたのだ。
「これを使うと、どんなこともなんてことはないって思えるようになるんですよ」 ある雑居ビルの三階で、目の前の男が、佐貴子の目の前で調合した無色透明の水薬を掲げてそういった。
ある日家に来たダイレクトメール。そんな怪しげなモノ、賢明な佐貴子は見ないで捨ててしまうのだったが。 どうしても、そのメールだけはゴミ箱に捨てることが出来ず。 仕方が無いので、中身を見るだけと思って見る。 「どんなことでも乗り切れる強い気力がつく」という表紙が目に入った。 一種の自己暗示法なのだそうだ。試してみると、驚くほどの効果があった。 やりはじめてから少しずつだけど、そこから佐貴子の人生がいい風に変わりだしたように思えたのだ。 だから、半信半疑だけれども、「もっと効果を試したい方はこちらまで電話してください」と書かれてある通りに電話してしまった。 来いと指示されたのが、この雑居ビルだというわけだ。
病的に青白くやや太り気味なのが気にかかるが、ピリッとした白衣を着ている男は精神科医だと名乗った。 決して端整ではなく、むしろ不細工なほうなのだが、たしかに優しげな笑顔を張り付けた男の顔にはある種の職業的な説得力があった。 「どんな困難にも打ち勝つ強い心を持つことができるわけです」 そうして、満面の笑みを浮かべる。 「それは……すごいですね」 水薬を目の前にして、佐貴子は息を呑んだ。とても、美味しそうに見えたのだ。 でもそのまえに、いろいろ質問しなければ。 そう思った途端、男が先んじてこういった。 「ああ……そうですよね、さすがにご不審ですよね。まず、なんでも質問してください」 「そうですか。あの、なんでこんな場所に呼んだんですか。お医者さんなら、病院とかあるのでは」 たしかに、雑居ビルは古ぼけていて、ここもただの事務所みたいな場所だ。 安っぽい事務机が一つあって、その上に薬品の類がならんでいる。 そして、先生と佐貴子が座っている簡素な応接用のソファーと机。 清潔そうなベットが一つあるのが、病院らしいといえばらしいのだが まるで、空き部屋に「病院のセットをひとつ作ってくれ」と言われて手抜きで作ったような感じだ。 「その点から、ご説明しましょう」 男は、エヘンと喉をならしてからゆっくり説明しだした。 「まず、この事務所ですが病院ではない……ことは見たら分かりますね。今日、簡単につくってもらったものなんですよ。全部このビルの備品です。本当は、こんな形にする必要もないんですが、まあ職業的な気分というやつです」 そういって、笑った。 「ちゃんとした、医局を通さないでメールで希望者だけを募っているのはこの薬が未認可薬だからです」 未認可と聞いて、佐貴子が眉を顰める。 「いや、未認可といって誤解しないでください」 あわてて、医師は付け加えた。 「この薬には、副作用も常習性もありません。きわめて安全で、一回飲めばたちまち効果を発揮します」 「そんな薬が、なぜ未認可なんです」 「考えても見てください。良いほうへとはいえ、人間の性格を変える薬ですよ。しかも、健康な人間に投与するなんて認可がおりると思いますか」 佐貴子は少し考え込んだ。たしかに、性格を強くする薬があったとして、そんな薬の許可はおりにくいだろう。 「最近は精神医学も進歩しました。昔は、不治の病とされてきた精神病が瞬く間に薬で簡単に治る。あるいは改善する」 そういって、遠い目をする医者。 「そんな研究の副産物として、この薬は完成したんです」 自慢げに薬を持ち上げる。 「大不況の傷跡で、この国の人々は多くの困難に見舞われている。打ちひしがれて、自殺を考える人。乗り越えられぬ壁に、夢を諦めてしまう人。そんな弱い人たちの心を救うため、私は未許可であろうとも一人の人間としてこの薬を希望者の方に処方することにしたんです」 そういう先生の顔は、善意と熱意にあふれているように見えた。 「そうなんですか……実は、私も意志が続かないことが多くて」 そうでしょう、そうでしょうと目の前の男は頷く。 「あのメールを読んで、来てくれる人はこういっては失礼だが、あなたのように意志の弱い人ばかりです」 そうずばりと言われると、佐貴子も答えようがない。 「これでも結構貴重な材料を使っています。必要としない人に飲んでもらっても、意味がないのです」 まだ、佐貴子は薬を目の前にしてただ悩んでいるようにみえた。 「あと飲む前に二、三、了解を頂かなくてはならないことがあります」 むしろ、その言葉に助けられたように「なんでしょう」と佐貴子は尋ねる。 「その薬を飲んでしまうと、変わってしまった性格は元に戻りません」 自分の性格がまったく変わってしまう。たとえ良いほうであったとしてもそれはとても怖い怖いことに思えた。 すこしでも、疑わしい点があれば断るつもりでいた。 佐貴子が見つめた先生の顔は、小太りで貧相であまり知的には見えない、でもそんなうらぶれた顔が医局に逆らってでも信念を貫いた結果なのかもしれない。 「その薬の効果は、どんなことでも、なんでもないと思えるようになるということ――どんな困難も、なんてことはないって思えるようになります。その人の能力や知識自体は変わらないのですが、そう思えるだけで人は驚くほど良くなっていく」 ちょっと、壁にぶつかると妥協してしまう自分。まあこれでいいかと思ってしまう自分。たしかに、ぶつかって失敗するときもあるかもしれない。でも、そういう風に思えたら、これまでどれほどのモノが得られただろうかと佐貴子は思った。 「みんな生まれもっての自分の性格を大事にしています。たとえ後ろ向きでネガティブであろうとも、それを変えてしまうのは間違いかもしれない。貴重な薬でもありますから、納得していただける人。心から必要とする人だけに飲んで欲しいのです。飲まないで帰っていただいても、もちろん結構です。それも人生でしょう」 このまま帰るのもあまりにもったいない。それでも、長い長い煩悶、苦悩の末だった。 「あの……最後に質問を」 「どうぞ」 「副作用は、ないんですよね」 「肉体的にはまったく無害です、各種の動物・人体実験をクリアして、すでにこの薬を使った人もたくさんいますから」 「あと、その……料金の方なんですけど……保険とか効かないだろうし」 男は、ああそんな心配でしたかと笑って金額を口にした。 そんなものかとあっけなく思った。たしかに、医者に通うよりは高額だが払えないことはない。普通に持ってきた財布から現金を取り出して 「じゃ……これ……お金です」 「ありがとうございます」 だが医師はそういって、机の上に置かれたお金には手をつけようとしなかった。 普段、直接お金をもらいなれてないからか、手をつけないのだろうか。 男は、まだ薬に手をつけない佐貴子に、飲むんだったらここで全部飲んでくださいねと小さく言って、佐貴子に飲むことを促すのだった。 それで、ああ持って帰るっていったら、なかったことにしてお金を返すつもりなんだと佐貴子は気がついた。 「じゃ、飲みます」 ようやく、意を決したように佐貴子は、あっけなくトクトクトク……と薬を飲み込んでいく。 一度飲み出すとビーカーに結構量があったのに、きれいさっぱりと飲み干してしまった。薬なのに、おいしくて飲みやすかったのだ。 「どうですか、薬の効果は感じられますか」 そう尋ねる男に、佐貴子は満面の笑みで。 「そうですね、なんてことはないって気持ちです」 その答えに男も笑った。 帰ろうとする佐貴子を呼び止めて、申し訳ないんですが効果を確かめる検査につきあってください。お時間大丈夫ですかと尋ねる男に。 「なんてことはないですよ、どうぞ検査してください」 そういって、佐貴子は笑う。なんだろう、全身からなんでもこい。 なんでもOKという、そういう強い気持ちが広がってくる。 いまの佐貴子なら、どんな逆風が吹いたって前に進めそうだ。 北風さん、どんとこいと心の中で叫ぶ! 「じゃ、上半身裸になってください」 だから佐貴子はそういう先生に、先生は太陽のほうなんだなって心で思った。 佐貴子は、無駄に胸が大きい。だから、可愛いブラも数が少なくって、こんなことになるなんて思ってなかったから、今日はとんでもないおばさんくさいブラジャーだった。色は白。純白じゃなくて、洗濯くさい白だ。しかもレースがよれてる。 こんな状態、羞恥心の強い佐貴子なら、無理にでもすいませんまた来ますと泣きながら逃げ帰ったことだろう。 でも、今日は気分が高揚しててなんでもないと思った。 勢いよく、上着とシャツとブラを脱ぎとって、ソファーに投げた。まったく、なんでもないことだ。 「じゃ、診察しますからね」 そういって、べたべたと佐貴子のあまり自慢できない巨乳を触り始めた。彼氏の幹夫は、巨乳が好きらしく、しっつこくパイずりとかを要求してきて、すべすべでいい乳だっていつも褒めてくれるけど。 佐貴子の理想の体型はもっとシャープなできる女なのだ。ぽちゃっと垂れ気味の自分の乳も、大きい乳輪も本当は好きじゃない。 あと最近、気になってきたウエスト周り。 ダイエットしようとしたら、幹夫がいいよこのままでいいよというから、面倒だしいいやと思ってたけど、この薬の効果でがんばれるかな。 この乳も、幹夫も本当は好きじゃないのかもしれない。 「というか、先生乳ばっかりさわりすぎ、やっ舐め!」 診察というのは気まずいものだ。いつもの習慣に従い、その間は意識しないように別ごとを考えていた佐貴子をいいことに、先生は乳ばっかりいじくり倒したあげく、舐め出した。 「あれ、舐めてはいけせんか」 「いや、どうってことないですけど」 そうやって、口にした途端。佐貴子は、なんでこんな男に嬲られるのという不快感や、強烈な違和感をどうでもいいこととして気にならなくなった。 そんな佐貴子の顔を確認して、さらにチュパチュパを右の胸をを吸い、左の胸をいじくる。胸の先がぞわぞわして、佐貴子の乳頭が立ってくる。生理的反応。 「どんな感じがしますか、気持ちいいですか」 「いや、くすぐったいというか。気持ちいいまでは、まだ」 そうきいて、さらに嘗め回す男。 やがて覆いかぶさるように、佐貴子の全身を嘗め回した。初夏だから、ぞわっと佐貴子のなんともいえない体臭がただよってきて、男を興奮させる。 佐貴子は、佐貴子で別の意味でなんともいえない油ぎった男の体臭を感じて、本来なら不快感を感じるはずが、なんでもないと思えるようになっていた。 これが先生のいっていた、困難に打ち勝つ力だろうか。 男の汚い舌で、上半身を嘗め回されて、次第に本当に身体が火照っていくうちに、そんなことを感じていた。 「どうですか、気持ちいいですか」 先生は汗をかいている、すでに十五分以上執拗に愛撫しているから当然だが。 「はい……感じはします」 普段なら、こんな素直に言わないだろうに。羞恥心なんてどうでもいいと思えるようになっていた。自分の前向きな進歩が、嬉しい佐貴子だ。 「不快感は感じますか、普通だとぼくみたいな不細工な男にこうされると、女性は不快感を感じるらしいんですが」 「普段なら、そうですね。知らない男性に、こうされたら不快でしょうけど、いまはなんでもないって感じることができます」 「なるほど、それはいい。薬の効果がちゃんと出てるってことですよ」 男は、そういって先ほどとは打って変わって邪悪な笑みとしか形容ができない醜い笑い方をした。それを見ても、いまの佐貴子には、なんでもないことって思えるのだ。 さらに、念入りに十五分ほど愛撫されて、さすがに佐貴子の息も荒くなった。 「ハァ……アァ……」 「どうですか、イキそうですか」 「いや……気持ちいいのはありますけど、流石に胸の愛撫では」 下着も愛液で濡れ始めているみたいだが、上半身だけの愛撫でイクのは難しいみたいだ。 「そうか、さすがに無理ですよね。前に、胸だけでイッた人がいたんですけど」 「ハァ……そういう人もいるんですね」 なんか感度が悪いっていわれているようで、ちょっと佐貴子はムッとした。 「じゃ、これぐらいにしておきましょうか」 「はい、検査は終りですね。ありがとうございました」 そういって、頭をさげて服を着ようとする佐貴子を押し止めて男はいう。 「いや、まだ終わってないですよ。スカートと下着も脱いでください」 「え、そうなんですか……でも薬が効いてるかの検査だから十分だと」 やれやれという口調で、男は確かめる。 「まだ検査は続きます、私が帰っていいというまでは検査を受け続けてもらうことになります。大丈夫ですか」 「ええ、なんてことはないですよ」 そういったとたんに、不安も不満も吹き飛ばして笑顔になる佐貴子だ。 さっき指示されたとおりに、スカートを剥ぎ取ってソファーにかけて、下着もベージュで最悪の柄だったが、気にせず脱いでしまう。股のところが、やはりさっきの刺激があって少し濡れていた。 「じゃ、ベットにこしかけてください」 女の子すわりで、足をそろえて胸も手で隠して座る。 「ああ、そうじゃなくて足を力いっぱい開いて、オマンコを見せてください」 「オマ……検査に、そんな必要があるんですか」 不審げな顔に戻る佐貴子。怒っても不審に思っても帰ることはできないのだから、男のほうは会話を楽しむ余裕すらある。 「胸をもうちょっと触らしてくださいね」 「どうぞ」 そういって、胸から手を離して男のされるがままに気持ち良さそうにしている佐貴子。離した手は、股の部分に当ててしっかりガード気持ち良さそうにしている。 胸と、オマンコ。どういう違いがあるのだろう。不思議に思って男が尋ねてみると。 「先生は精神科医なんでしょ、おかしいですよ。その股やその……」 「その、なんですか」 「……女性器とか、見るのは産婦人科の仕事です」 そんな、理屈が返ってきたかと男はほくそ笑む。胸と上半身に限っては、もうなんてことはないのだが、オマンコのほうは確認してないので、まだなのだ。 薬の効果の範囲が限定されることに改めて気がつかされる。 でもまあ、そういうのも趣があっていいなと薬の改良は必要ないと男は思った。 「検査は、私の身体全体で佐貴子さんの身体全体を調べる必要があるのですよ。もうしわけありませんが、そのために私も失礼して服を脱がせていただきますし、貴方のオマンコも調べさせてもらいますが、それについても大丈夫ですよね」 「もちろん、それは、なんてことないですけど」 そういって、不審も消えて改めて笑顔の佐貴子。男が白衣を脱いでしまって、股間の逸物が屹立していても、なにも驚かない。 何もかも言うことを聞く人形では面白くないだろう、股間の息子が反逆しそうにいきりたっていても、こうしてゆっくりとした手順を踏むのも、男の余裕。ワビサビというものだ。 「いっそ、大またを開いてベットに寝そべってください」 先ほどからの足の強張りは嘘のように、まるで赤ん坊のように自然に寝そべる佐貴子。 ベットは、安物のようでスプリングが硬い。佐貴子が座ってみると、それだけでギシギシと軋んだ。ただ、しいてあるシーツは清潔なもののようで、さわり心地も悪くないことに佐貴子は安心した。 男に誘われるようにして、素直に佐貴子は股を開いた。男の目の前には、佐貴子のすこし濡れたオマンコが見える。 毛もそんなに濃くはないし、ビラビラも奇麗なピンク色で、奇麗なものだ。 「味も検査しないとなあ」 そういって、男は股ぐらに頭を突っ込んで無造作にオマンコを舐め始めた。 「いい味です、彼氏に褒められるでしょう」 「ハッ……褒められたことなんて……フゥ……ありません」 こんなことをされるとは思ってもない佐貴子であるから準備はない。 人によっては、発酵した臭いすらある。この検査をすでにけっこうこなしている男は、だから覚悟してむしゃぶりついたんだが、臭いの薄いほうだったようであっさり味だった。 もちろん、ただようメスの臭いはちゃんとある。その味も不快なものではなく、おいしいとまではいわないが、味わい深いものだった。 しっかりと嘗め尽くしてから、こんどは指で激しく責める。 「我慢しないで、感じてくださいね。愛液を出すためにやってるんですから」 「はい……あっ、もう少し浅いとこのほうが……感じると思います」 検査への羞恥心はすでになくなっている。 指を数本出し入れして、ゆっくりと回転させたりする男に細かい指示をだしてくれる佐貴子。検査に協力しようというのだろう。 それも、本当に感じ始めるまでだった、腰が浮き始めて日本語がしゃべれなくなる。「感じてますか」 「ハゥ……ヒィ……ハァハァ……あっ、そぁ」 機械的に、指を出し入れして陰核を開き、クリトリスをむき出しにしてさらに愛撫を重ねる男に、もはや息も絶え絶えの佐貴子。 「アッ……!」 タンタンっというかんじで、腰を振っていってしまったようだ。どくっと、膣から愛液がとどめなく流れ出し、男の指を締め付けまとわりつく。 「もういいみたいですね」 佐貴子は息も絶え絶えで、男が何をいっているのかあまり聞いていない。 「それじゃ、そろそろ入れちゃいましょうかチンコ」 「……へ?」 その言葉に、軽く飛んだ意識の底から慌てて覚醒する。 気分を出すためだろうか、男はすでにベットにあがってきて汗ばんだ佐貴子の身体を抱きしめたりしている。 挿入は――まだされていない。 「ちょ、ちょっとまってください。入れるってなにを」 「チンコですよ」 「だ……だめぇ」 「なんで」 不思議そうに聞く男。 「駄目に決まってるじゃないですか、何言ってんですか!」 さっきの雰囲気を振り捨てて怒る、わりに逃げたり抱きしめられたりすることは止めようとはしないのだが。 佐貴子にとってすでにそういうことをされるのは、どうでもいいんだが。貞操の危機だけは別だったようだ。 雰囲気にながされてやっちゃうなんて――思い出してみると、何度かあったかもしれないけど、とにかくこんな医者とはいえこんな不細工男は大きく佐貴子の趣味を外れているし、それに万が一間違いがあったとしても、避妊もきっちりしているし。彼氏がいる期間は不倫なんか絶対にしない。 そういうことは、きちっとしてるんですよ私は、そういいたい佐貴子だ。 「いやあ、一週間ほどしてなくて、溜まってるんですよ」 「溜まってるって……あなた」 もう、何言ってるのか理解できない佐貴子。そういえば、検査検査でなんでこんなところまで来てしまったのだろう、その過程を思い出そうとすると、頭に霧がかかったように思考が鈍る。 佐貴子は、長い髪を振りしだいて。 「とにかく、セックスは駄目」 それだけはいいきった。意識をなるべくはっきりさせるようにして、見開いてみると先生と呼んでいた男はいかにも、青白いブヨブヨ三段腹の醜い男である。本当に、なんでこんなことになってるのだか。 こんな男とセックス、冗談じゃない。佐貴子は、その目の前の男に自由にオマンコをこすられて、また快楽の波が訪れるのはどうでもいいと思ったが、頭のそれとは別の部分で明確に男とのセックスは拒否をした。 身体で身体を調べることはすでに了承しているはずなのに、なんでセックスだけ避けるのかなあと、薬の効果範囲を怪しんでいる男。精神に作用する薬というのは、デリケートだ。 「キスしていいですか」 「はい、どうぞ」 そういって、目をつぶる。佐貴子。彼女のキスのイメージというのはこういうことかと男は思う。 気分を出しながら、軽くキスしてこんどはディープキス。口内を嘗め回すようにすると、佐貴子はなれているのかしっかりと舌で応酬してくる。 素直によがってくれるときの佐貴子はとても奇麗に見える。 別に恋人のようなシチュエーションがだめということではまったくないらしい。 豊かな胸をもみしだきながら、チンコをオマンコにこすりつけてやる。 ここまでは、文句をいわない。 「あの……」 「はい」 「万が一、その先生のモノが私のところに入っちゃいそうで心配なので、コンドームをつけてくれませんか。カバンに……その、万が一突然こういうことになったときのために、いつも入れてはいるんです」 ああ、そういうことかと男は気がついた。 「いやあ、なんかこのままでも射精できそうなんで、佐貴子さんのオマンコにぶっかけてもいいですか」 「いゃ……やめてください!」 「なんでです」 「妊娠の可能性は低いかもしれないですけど、ここ拭くものもないし、怖いですよ。困るでしょ」 やっぱりそういうことなのだ。 「佐貴子さん、もしかして危険日近いですか」 「そうですね、危険すぎる日なんですよ今日は」 佐貴子は妊娠を怖がってるのだ。たぶんフェラチオをさせようとしても拒否しなかっただろう。 ゴムさえつけていれば検査を理由に、少し強めにいえば、セックスまで押し切れてしまえるだろう。この段階の暗示で。 もちろん、ここまできてゴム付きなどありえないので、男は新しい暗示を与える。 「いやあ、それにしても精子が溜まってしまって、佐貴子さんには分からないでしょうけど男って苦しいものなんですよ。申し訳ないですけど、佐貴子さんの膣内を貸していただいて、チンコを擦って中で射精させてもらっても大丈夫ですか」 「ええ、なんてことないことですよ」 とたんに、佐貴子の最後の抵抗がゆるんだので、その隙にズブっといれてしまう。 「アッ……」 佐貴子の意志はともかくとして、佐貴子のオマンコはまってましたとばかりに、男性器を深々と受け入れた。 「ああ、いいものをお持ちだ。佐貴子さん気持ちいいです」 「なんてことないですから、どうぞ使ってください」 先ほどとはうって変わって、男の趣くままに男性器を受け入れる佐貴子。素直すぎるのも面白くないなあとか、思いながらも佐貴子の豊かなバストをもてあそび、オマンコの肉の感触をえぐるように楽しむ。 「硬いし……熱いです……んっ」 そんなことをいう佐貴子の口を吸う男。 ピストンは続けながらも、佐貴子を嬲るように妊娠の話をしてやる。 「それにしても、先ほど妊娠を心配されてたようですが、膣出ししてしまってもいいんですか」 「ハッ……それについては、おかしい……アッ、さきほどまで心配だったようなき駕したんですけど、どうでもよくなっちゃったみたいで。一回ぐらいで、妊娠したりしないですよきっと」 「でも、危険日なんでしょ」 「ハッ……ん、そうですけど、イッ……いいんです大丈夫」 「そうかー、でもさっきの薬、排卵誘発の効果がありまして、私も一週間溜めてる濃いのを出しますからね、たぶん一発妊娠してしまうと思いますよ」 その言葉を聞いて、佐貴子は青ざめる。快楽の波もすっと引いてしまったようだ。でも男はピストンは続けるし、膣は意志とは別もので、喜びの収縮を繰り返す。 「どうしよう……」 抜いてとか、止めてとかはすでに考えることができない佐貴子だ。彼女は、望まぬ子供を妊娠してしまったらどうするかしか考えられない。 「私は、溜まってるものを佐貴子さんの膣を借りて出してしまうだけですから、オナニーと一緒ですよこんなの、子供ができても責任とか取れないですしね」 「……」 そう酷いことをいって、荒々しくピストンをしてやる。 不思議なもので顔は青ざめて、動きも緩慢になってきているのにオマンコの中はむしろ温度があがって熱くなってきている。 排卵誘発の効果があるというのは本当だ、別に薬に必要じゃなくてむりやり混ぜ込んだだけなのだが。飲んだ直後に速攻の効果だし、危険日にもピンポイントだそうだから、中出しをきめてやれば、確実に妊娠する。 佐貴子の身体はそれが分かって、むしろ妊娠を喜んでいるのかもしれない。 相反する心と身体、男は行為に酔いしれながらも、佐貴子の顔をじっと観察する。 佐貴子の顔は、困惑と快楽の狭間で揺れていた。頭では、恋人の顔とか、望まれない妊娠とか、出産したらとか、中絶とか、いろんな想いが去来しては過ぎ去っていく。その顔を見ていると、男はたまらなくて絶頂に達してしまった。 佐貴子の目が覚めるように強く腰を押し付けて、胸を握り締めて。 「ああ、もう我慢できないからいきますね。出ますよ! 妊娠してください」 「いゃーー!」
ドピュドピュドピュドプドピュドピュププ……。
ほとばしる飛沫が、出終わった後もピュルピュルの噴出すような、そんな気持ちのいい射精だった。男の赤ら顔は、満足に微笑み、佐貴子の顔はどこまでも絶望のエメラルドグリーン。 そんな佐貴子の意志に逆らうように、佐貴子の下半身は熱く燃えたぎり、膣は収縮をくりかえして、さも美味しそうに子宮へと精子を飲み込んでいく。
「うぅ……」 佐貴子は、もう呻くしかなかった。 「いやぁ気持ちいい、最高ですよ中だしはやっぱ」 そういいながらも、スパンスパン、ピストンを止めない男の尿道から最後の一滴まで精液を注がれても、佐貴子はそれ自体に感慨とか嫌悪は感じない。 ただ、その結果の妊娠だけが気がかりなのだ。 「たっぷり……出しちゃったわね」 「ええ、たっぷりと注がせてもらいました。ありがとうございます。すいませんけど、一週間溜めてたんでまだ出せそうなんで、もう一発出しておきますね」 「いいわよ、別に」 もう出されてしまったんだ。一発だされたのだから、何発だされても同じだと感じた。佐貴子はもうどうでもよかった、それより心配なのは、妊娠のこと。 無心で、オッパイを吸っている目の前のデブオタを見て。 この男の子供なんて生みたくないと、心から思う。 いまごろ、子宮内を泳いでいるこの男の精虫と卵子が合体して。 自分の、胎盤にへばりついて少しずつ大きくなる姿は悪夢だ。 いや、それは現実なのだと、さらに佐貴子は暗くなる。 「いやあ、佐貴子さんおっぱいも大きくて彼氏がうらやましい」
そういいながら、ドピュドピュと断りもなくまた射精する男。
佐貴子は、その行為自体はどうでもよくなっているので、何発出すつもりなんだろう、しまりのないチンコだなと思うだけだ。 「はは、でも最初に妊娠させておっぱいを出させるのは彼氏じゃなくて私でしたね」 そうやって、嫌な顔で笑う。 それを見て、佐貴子は決心してしまった。 「いや、もし子供が出来たら中絶します。あの……そういえば、中だしされた直後なら、後付で効く避妊薬もあったんじゃないかしら。先生、そういうの紹介してもらえませんか」 アフターモーニングピルのことをいってるのか、興ざめなこといってくれるなあと男は笑う。自分がそんなことさせるわけがないじゃないかと。 「もし、妊娠したら彼氏の子供だって言えばいいじゃないですか、いるんでしょ彼氏」 そういって、男は笑う。 彼氏とは――彼氏とはゴム付きでしかしたことがない。避妊にはいつも注意している佐貴子だ。どういいわけしても、無理だし。それに、彼氏が騙されたとしてもそんなことで彼氏を偽る自分が耐えられない。 避妊薬が効かなかったとしても、騙すのと堕児の苦痛を天秤にかけて、騙すのほうが重い。堕児の苦痛は一瞬だが、騙すのは永遠に騙し続けなければいけないのだ。だからと佐貴子はいう。 「しょうがないなあ」 そういって、男はもう一本薬を出した。 「妊娠が分かったら、これを彼氏に飲ませてくださいよ。効果は一緒です、誰の子かなんてどうでもよくなりますから。佐貴子さん、あなたも誰の子かなんてどうでもいいですよね」 「そう……なんてことないです」 そうやって、佐貴子は顔をほころばせた。 男は、ニヤリと笑って佐貴子の大きな胸を抱き上げるようにして、最後の一発を佐貴子の子宮に叩き込んだ。
ドピュドピュ……ドクドクドクドクドク……。
佐貴子の膣と子宮は、あふれんばかりの精液を飲み込んでいった。どろっと、あふれださんとする膣口にバイブで蓋をして男は笑う。そして、佐貴子にバイブで蓋をしたまま今日一日過ごすように命じた。 もちろん、佐貴子にとってはどうってことないことだった。
「あ、言い忘れてました」 服を着て、身なりを整えて帰ろうとする佐貴子に男は声をかける。 「なんですか」 「この薬の効果、今日一日だけなんです。先に言っておかなくて、すいませんでした」 佐貴子は、ああそんなことかと満面の笑みを浮かべた。 「あと、最初の話はみんな嘘で私は……いや、ぼくは医師でもなんでもなくて、ただの引きこもりのニートです。ごめんね佐貴子ちゃん」 そういって嫌な顔で男がニヤついても、佐貴子は、笑顔のままだ。 「みんな、なんてことないですよ!」 そういって笑顔のまま、颯爽と部屋を出て行く佐貴子だった。
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