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E小説(中出し・孕ませ・時間停止・催眠・環境変化など)
エロ小説のサイトですので18歳未満の方はお帰りください。傾向はマニア向け、作品中のほぼ100%中だし妊娠描写、付属性として時間停止・催眠・環境変化などです。
第十八章「袋のネズミ」
「妖精さん、今日もいっぱい出したね……お股がドロドロ」
「もう、妊娠してるかもね」
「そういえば、生理こないなー」
 そういって、河田と美優が睦み合っている間にも破局は迫っていた。

「これが、磯の香りがした原因か。よくやったサクラ」
 隊員の水品サクラが、通路に巧妙に隠されている海水のパックを発見したのだ。種が割れれば簡単だった。何に使用されているか分からないが、この海水が鍵であることは一目瞭然。
 同じ方法で隠されていた海水は全て回収されて、そしてその配置からこの混乱の原因は四階の小家美優の部屋だということも分かった。
「あの小家の天然お嬢様の部屋か……問題ないだろうサクラ、梨香ついて来い一気に突入するぞ!」
「あの部屋に入るなら、声ぐらいかけた方が」
「馬鹿、侵入者が居たら逃げる隙を与えることになるだろう、行くぞ!」
 合図と共に、南雲梨香がマスターキーで扉を音もなく開けて一気に走りこむ。

 水品サクラは入り口から、南雲梨香は奥の浴室から調べるために走ったようだ。
 部下に探索を任せて、ゆっくりと美優の寝室へと近づいていく律子。
「お嬢様……失礼しますよ。実は賊が入った可能性がありましてね、お部屋を調べさせていただくだけです。すぐ済みますよ!」
 有無を言わせぬ口調だった。
 まさか、すぐに飛び込んでくるとは思ってなかった河田にとっては絶体絶命のピンチだった。
 お風呂場に一人走っていったから、河田が透明になるための海水は、片付けられたようだ。そして、もちろん河田の姿はいま透明ではない。
 河田は、なすすべもなく布団をかぶり美優の足元あたりに隠れる。
 もう無理だ、美優にすがり付いてガタガタと震える河田は、走馬灯の向こう側に死んだおばあちゃんを見ていた。
 河田のピンチを悟った美優は、すっくと半身を起こすと。
 静かに、近づいてくる律子に身体を向けた。

 ―― さ が れ ――

 そう美優は声を上げた。
 叫んだのではない。いつもと同じように小さい声で、しかし一語に力を込めてはっきりとお腹に力を込めて、下がれと命じたのだ。
 布団のなかでなさけなくも美優の脚にすがり、命の危険に震えている河田には、口調はともかくもいつもの優しい美優の声と変わりなく聞こえるのに。
 その声は律子の耳に、頭をハンマーで叩かれたように鋭く響いた。
 ベットに立ち寄ろうとした脚がぴたりと止まり、衝撃によろめく。
「……何だ、この威圧感は」
 美優から受けたたったひとつの言霊に、身体が総毛立ち……背筋をひやりとした汗がつたる。
 幾多の戦線を駆け抜け、千の敵を前にしても屈することのなかった律子の脚がよろめいているなど。
 信じがたいことだった。ありえない、あってはいけない!
「隊長、どうしたんですか」
 水品サクラは、何があったかも分からずとりあえず、大きく震えて倒れそうな律子を支えようと駆け寄るが、その手を振り払って前に進もうとする律子。
 敵がいれば打ち倒し、壁があれば打ち砕く……そうしなければ生きられなかった律子だからこそ進む。
 四肢に力を込め、くいしめすぎたのか律子の歯から血が流れた。
 だが手足が、まるで自分のものではないように重く震えた。

「聞こえなかったのか、枝川律子――私は、下がれと、言った」

 響き渡った静かな言葉に、ガクンっと律子の身体が落ちた。
 もう、律子の身体は動かない。
「馬鹿な……私は」
 枝川律子だ。生まれついての指導者、何者もさえぎることのできない力そのもの。
 祖にさかのぼれば、この国がまだ帝国といわれていたころの大戦の英雄、枝川陸軍中将に至り、代々指揮官であり続けた誉れ高き家系である。
 律子の父は、戦後の体制に飽き、国外に渡ってまでも戦士であり続けた。その血は彼女にも受け継がれ、常に場を支配する力の源になっている。
 身に染み付いた遺伝子レベルから、勝利し続けてきた絶対の指導者。

 しかし、生まれつきという意味でいえば。
 その律子の目の前に居る柔和な少女が背負っているものは――さらに上だった。
 小家美優は、祖をさかのぼればこの国を支配した近衛二十三家のうちのひとつであり、それよりもさかのぼってしまうと、恐れ多くもこの国のもっとも古い……あのロイヤルな血筋に突き当たってしまう。
 それは絶対の不可侵を意味する系譜である。

「しかし、一応調べさせ、て……」
 ゆるりと贅を尽くしたベットに横たわる少女の冷然とした目に、なおも抗弁しようとした律子の声が凍りつく。
 それはいつも見慣れた、目下の者を親しげに名前で呼び、ねぎらうことを忘れない優しげな少女の瞳とまったく変わらないはずなのに。

 動物にたとえるなら律子は、食物連鎖の頂点に立つ雌豹であろう。
 だが、その律子の目の前にある優しげな少女を動物にたとえれば。
「ムツゴロウさん……?」
 なぜか、水品サクラは美優にちょっと昔に、日曜日のほのぼの動物番組に出てきた動物王国の国王のオーラを感じていた。
 彼がひとたび優しげに頭を差し出しただけで、荒れ狂う巨象もうやうやしく跨いで通り、猛り狂った雌豹も尻尾を振って甘え、その無防備な喉に牙を突き立てることはない。
 地球上のどのような猛獣も、彼の命を奪うことはできない。
 それはなぜか。
 動物的勘。いや、それ以前に動物の本能が告げるからだ。

 このものに従えと!

 このものこそが、万物の霊長であるのだと!

 血塗られた獣ですら、譲らざる得ない何かがそこにある。
「いや……それ、では……くっ、下がらせて、もらいます」
 まるで、自分の口が自分のものではないような違和感を律子は感じていた。
 それでも、警備員で付近の通路とマンションの入り口をぴっちりと固めているということ、何かあったらすぐ人を呼ぶようにとは確認しておいた。
 その間も、美優は静かな瞳で律子を凝視し抑え続けることをやめない。
「ちょ……え、なんで。本当に下がるんですか」
「馬鹿……行くぞ、サクラ、梨香」
 限界を悟った律子は、最後の自尊心を振り絞って震える足を隠し、部下を連れて早々に部屋を退出する。
 出たとたんに手足の動きが自由を取り戻したことにすら、強い屈辱を感じる。
 律子は、失礼にあたらないように配慮して引いたのだと自分に言い聞かせた。
 管理権限からいえば、ベットをひっぺがして調べても問題なかったのだ。
 それを、小娘ごときに引いたなど律子のプライドが許さない!
 だが、マンションの入り口さえ押さえておけば、美優が守っているらしい”なにか”が居たとしても逃げ出せるわけがない。
 袋にねずみが入ったなら、捕まえたも同然だ。
 そして虱潰しに追い詰めて賊を確保した、そのときは――

「あの小娘の目の前で、なぶり殺しにしてやる」

 そのための力が、権限が、律子にはある。
 あの小娘は、そのときどうするだろう。泣き叫ぶか、地に跪いて許しを請うか。
 しかし、律子の残酷さはそれを受け入れることなどない。
 そして、あの小生意気な娘は、自分の無力さを思い知ることになるのだ。
 それを思えば機嫌も直ったのか、笑みを取り戻しマンションの入り口に自ら立った。
 いかに小娘が逆らおうと、外なる敵から守り、内なる敵をひねり潰す自分の警備システムが敗れるはずがない。
 すでに警備員はフル稼働で、四方八方に散っている。
「私の心を傷つけたものは、みんな死ぬんだよ……」
 律子の小さな黒い呟きを、周りの警備員たちは聞くことはなかった。
 美優の助けで窮地は切り抜けたものの、河田の絶対絶命の状況に違いはなかった。


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ヤラナイカー

Author:ヤラナイカー
おかげさまでプロ作家になって五年目です。
ボツボツと頑張っていきますので、今後ともよろしくお願いします。
(プロフの画像、ヤキソバパンツさんに提供してもらいました)



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