第三章「女性専用車両 顔射編」 |
今朝のあの不思議な出来事は、果たして本当に現実だったのだろうか。 あの身震いするようなオジサンへの怒り、後に残してきてしまった女性たちへの胸が突き刺すような罪悪感。そういう気持ちは、今もありありと残っているのに細かいディティールがよく思い出せない。 私は大学の小規模クラスに駆け込んで、英語の講義を受けながらも、私は車内の出来事を思い起こそうとする。忘れてはいけないと思ったからだ。 ちょうど携帯の時刻は十時十分を過ぎたところで、もう少ししたら一限目の必修の講義は終わる。 あの女性専用車両での出来事は、ついさっきのことなのに、なぜかとても遠い日にあった出来事のように感じられた。 あれだけ酷いことがあったのだから、本来なら鮮烈な印象を残すはずなのに一分経つごとに記憶が薄れていくのを感じる。ちょっと油断したら、大まかな印象を残して記憶が全て消えてしまいそうだった。 きっと人は、あまりにも荒唐無稽な出来事を記憶できないのだ。人が一睡の夢を簡単に忘れてしまうように非日常的すぎる出来事は、まるでそれが本当にあったのかなかったのかすらあやふやになってしまう。 私はそんな言い訳で、この忌まわしい記憶を片隅に追いやっていった。 完全な日常へと回帰したのだ。 そうして、その日から季節は移り変わり、半年以上の時が流れた。 その昔にあった電車での不思議な出来事など、今は思い出すことすらない。
※※※
「ふうっ、すっかり肌寒くなったわね」 早朝の道に立ち並ぶ街路樹はすっかりと赤く色づき初めて、秋の深まりと冬の始まりを暗示していた。雲ひとつ無い空は透き通るように青く、大気は澄んでいる。 私、立花アヤネは今日も大学への通学のために駅に向かう。いつも通りの通学路、いつも通りの駅のホーム。 列車はいつも通りの時間に一秒の狂いもなく到着した。 私は生まれつき体内時計が極めて正確な質で、そのせいか時計で列車の到着する時刻を確認するのが癖になっていた。 別に数秒の違いがあっても問題ないのだけど、まったく正確な時刻に列車がホームへと滑り込み、昨日と寸分の狂いもなくプシューと音を立てて開くと今日は何かいい事があるのではないかって気持ちになる。 「ふふっ」 だから、この日の私は機嫌が良かった。女性専用のその通学列車に乗り込むまでは。
多少の混雑はいつも通りなのだけれど、なんだか私は『違和感』を感じたのだ。なんだろうとよく観察すると、妊婦さんがやけに多いことに気づく。 確かにお腹の大きな妊婦さんが早朝の通学列車に乗っててもおかしくない。でも、私の周りに限ってお腹の大きな若い女性ばかりなのは少し異様といえよう。 ここまでは違和感といっても、偶然の偏りがあったにすぎないと思えた。自然に座席の方に目を向けてそこに『異変』を発見してしまうまではであるが……。 「やあ、アヤネちゃん久しぶり」 向かいの茶褐色の長椅子に、でっぷりと太ったオジサンが座っている。ヨレヨレの背広の中年サラリーマン風のオジサンは、たしかに私の名前を呼んだ。 (知り合いだろうか?) (ここは女性専用車両だというのになんで男が?) 私は思考をやや混乱気味に錯綜させながら、男の顔をジッと見つめて(こんな男と知り合いだっただろうか)と思い出そうとする。 「思い出した……」 私の記憶は、半年以上前の封印してしまった記憶を呼び覚ましていた。なぜあんな強烈な悪夢を忘れてしまえていたのか、自分でも不思議なぐらい鮮明に思い出せた。 (……すると、この周りにいる妊婦さんたちは) 例えば私のすぐとなりにいるメガネをかけた身体にぴっちりとした深紅のビジネススーツを着た女性。 妊娠しているのに大丈夫なのかなと思うほど、お腹がこんまりと盛り上がっている。前見た時とは変わり果てた姿ではあるけど、整った知的な顔立ちとメガネには見覚えがあった。 「やあ、久しぶりね……えっとハガネちゃん」 「アヤネです」 やっぱりこの人は、このオジサンに最初に犯された女性だ。小ぶりだった胸は妊娠のせいか、やや大きめになっている。 「あんたのせいで、私妊娠しちゃったわよ」 「ええっ、なんでそれが私のせいなんですか!」 不服そうな私の顔を睨みつけるように、目を細めて薄っすらとした笑いを浮かべていたメガネOLは、ふっと真顔になってオジサンを指さす。 「だってこの人を男だって思ってるんでしょ。貴女がそう思ったから、私は妊娠したのよ。男に犯されたんだもの、当たり前だわ」 「そんなこと言われたって……」
またこの問答かと、私は心底うんざりする。 やっぱり、これは現実ではなくて悪夢なのではないか。 むしろ夢であってくれと願うような気持ちだった。 「私はまあ、彼氏にうまいこといって責任取らせたからいいけどさ」 そうだったオジサンに犯された女性の中には、絶対に妊娠してはいけない人も居たはずだ。 例えば左隣を見ると、暗い顔で俯いている女性。綺麗に巻かれた栗色の長い髪を力なくだらりと垂らしている。 ゆったりとした紺のマタニティーウエアを着た女性は私を恨めしげに見つめてくる。 「エリナさん……」 半年前のことなのに、私は名前まで覚えていた。たしか二十四歳の人妻だったか。 「うううっ、私は夫以外の子供を妊娠してしまいました」 「ああっ」 私のせいだと責められるより、罪悪感でいっぱいになる。 「どうしたらいいんでしょう、わだじばどうじだらぁ……」 次第に涙声になり、そのままエリナさんは身重の身体を丸めるようにして泣き崩れてしまった。 どうしよう、どうしたらいいのか。 私のせいだと言われても、もうどうしようもないではないか。全ては過去のことだ。 「だから認めればいいのよ」 エリナさんの涙に動揺した私に、メガネOLが囁きかけてくる。 「何を、認めれば」 「だからあの人が女だって、アンタが認めれば全部なかったことになるのよ」 あのオジサンを、私が女だって認めたら全てはなかったことになる。 「そんな魔法みたいな話……」 そう呟きながらも、私は十分にありえることだと思っていた。泣き崩れている人妻を直視したくなくて、車窓に目をやるとやはり電車はすでに走り始めているのにとてもゆっくりとしか景色が動いていない。 時間の感覚が遅滞しているのだ。
夢なのか、現実なのかはともかく、この異次元空間では何だってありえるだろう。 (私が認めればいいのか、たった一言……) 気がつけば、私に泣いてすがりついているのはエリナさんだけではない。周りの妊婦たちは、あの日オジサンに中出しされた危険日の女たちが私にすがりついて懇願している。 「見てください、私なんて『変態露出狂』にされたんですよ」 私の目の前で、歳の頃は二十代後半あたりの髪の長いふくよかな女性がダウンコートを脱ぎ捨てた。なかは真っ裸で、丸々と膨れ上がったお腹の真ん中に『変態露出狂』と黒く縦書きに刻印されていた。 「こんな性癖を植え付けられたせいで、私はたくさんの男たちに犯されて、誰ともわからない子供を妊娠して仕事も失ってしまって、ううっ、うううぁぁ!」 「ごめんなさい……」 申し訳ないとは思う、けど怖いから近づかないで欲しい。 さっと眼を逸らしても、まだまだ妊婦はいる。 「そんなことを言ったら、あたしなんて『変態M女』だぜ。見せてやるよ」 二十代前半ぐらいのスリムで長身な女が、薄い唇を歪ませて笑うと、私の目の前でモコモコのマタニティーウエアを脱ぎ捨てた。 スリムな身体に不釣り合いなほど突き出した大きなお腹には、妊娠線がびっちりと走っていた。 背中に『変態M女』と書かれている以外は普通に綺麗に見えるが、ブラジャーを外すと異変に気がついた。 妊娠で褐色になった乳首の先に、大きなシルバーの輪っかがハマっていた。乳首ピアスにしてもそれは太くてとても大きい銀の輪っかだった。 「分かったか、こんなデカイピアスを乳首に嵌められて、この開いた穴は二度とふさがらねえらしいんだよ」 指先で乳首ピアスを弾いて、チリンと音を鳴らすとほっそりした女は自嘲の笑みを浮かべる。 「こんなんつけられて、赤ちゃんにオッパイやるときにどうしたらいいんだろうな」 そういう女の顔は、なぜか恍惚に頬を染めていた。心までもMになってしまったということなのだろうか。 私はもう何も言うことがない、あまりに突然に叩きつけられるように事実を見せつけられても絶句するだけだ。
私は逃げるように視線を彷徨わせて、ついに見かけてしまった。その小さな女の子は、哀願するように私を囲っている輪の中にはいない。 ただ遠目で私を見つめているだけだった。まだ十五にも満たないであろうと小さな女の子のお腹は、無残なほど大きく膨れ上がっていた。 彼女も妊娠してしまっていたのか、このオジサンの子を……。 絶句につぐまれていた私の口が、思わず開いた。 「あああ、あああぁ……」 呻き声を発しているのが自分だと気がついたときには、もう眼から涙が滝のように流れていた。 肩から力が抜けて、足元がふらついて視界がゆがむ。 現実感がない、最初から夢だったに違いない。 「もういい……」 認めてしまおう。 「オジサン」 認めてしまえばイイ。私は、座席でゆったりと舐るように悲嘆にくれる女たちを眺めて微笑んでいるオジサンに指を突きつけると叫んだ。 「認めます!」 「あっ、なんかいったアヤネちゃん?」 「貴女は女ですッ、貴女を女だと認めると言ったんです!」 私は、ありがとうありがとうと感謝の言葉を投げかけてくる妊婦たちの間を通ってオジサンの前に立つ。 できれば認めたくなかった、負けたような敗北感に下唇を噛み締めながら、それでも気持ちだけは曲げないようにオジサンを睨みつけて目の前で見下ろしてやる。 「ふーん、俺を女だと認めるんだ」 「そうですよだから、悪い夢ならさっさと覚まして下さい。この地獄のような光景を何とかして下さい!」 私の叫びが響き渡ると、シーンと車内が静かになった。 取り巻いていた妊婦たちも、端っこに追いやられている乗客たちも、私とオジサンのほうをじっと見つめている。
「わかったわかった、そんな恨みがましい目をしなくても望むようにしてやるよ」 オジサンはそう言うと、私の胸をおもいっきり掴んだ。 私は、グッと下唇を噛み締めて我慢した。 「ほおぉ、胸を触られてもなんとも思わないんだな」 「貴女が女性だと認めたから」 「なるほど、賢いね」 オジサンは感心したように頷くと、私の胸から手を離した。 「お願い早く何とかしてあげてよ」 妊婦たちは私をじっと哀願するように見つめているのだ。 「よしいいだろう、これで一件落着といこうか」 オジサンは、……いえオバサンは、パチンと合掌するとニッコリと笑った。そうするとすぐに電車が駅に到着するアナウンスが流れた。 時間の流れが、いつの間にか元に戻っている。 程なくして駅のホームに車両は滑り込みプシューと音を立てて扉を開く。ホームの慌ただし喧騒が聞こえる。 「おや、学校いかなくていいのかな」 オバサンがそう私を諭す。 「あの、あの人達は……」 「最後まで意地を張っていた君が、俺を女だと認めたんだ。明日になれば全部問題は解決してるよ。さあ、早く行きなさい」 私は後ろ髪引かれる思いで、車両から外に出た。 ホームはひどく凍てついていて外気は肌寒い、私はブルっと身を震わせると襟元をしっかりと閉じてから、彼女たちを載せた列車が駅を離れていくのを見つめていた。 明日になれば全部元通りになってるんだろうか。どちらにしろ、私にできることはもうない。 あのオバサンの言うことを信じるしかなかった。 車両から降りてしまって、いつもの改札を抜ける頃には私の記憶は酷く曖昧になってしまう。 私がこうして悪夢から覚め日常へと戻るように、あの人達も救われているといいのだけれど……。
※※※
私、立花アヤネは美容院が少し苦手だ。なんで美容師という人種はあんなにお喋りが好きなのだろう。まるでそれが義務であるかのように、髪を切りながらテレビの芸能人の話だの新しい流行の話だのどうでもいい話をずっとしている。 私だってもう大学生だし成人式も終えた大人だから昔とは違う。愛想笑いもできれば、話を合わせるぐらいはできるけど、やはり無駄話が苦手な性格はなかなか治らない。面倒くさいのだ。その癖、寝たふりしてやり過ごすほどの度胸もないのだから中途半端。 大学の講義を終えて、所属している児童文化研究会のサークル棟で気のおけない友達としばし歓談。 そこで「アヤネの髪ってきれいだよね、伸ばしてるの」と言われたのだ。もちろんそれを褒められているとは取らなかった。自分でもちょっと髪が伸びすぎてるんじゃないかなと思っていたところだ、友達の眼から見ても伸びているなら仕方がない。 あまり気が進まないのだが、大学の近くの美容院に予約の電話をした。幸い空きがあったのですぐ刈ってもらえたのは良かったのだけど。 「全体的にショートにしてもらえますか」 「お客様の髪は艶やかですからショートよりミディでどうですか」 「はぁ」 「今年のトレンドなんですけど、肩ぐらいまででレイヤーで軽さをだして、毛先はこうナチュラルに散らす感じで……」 「軽いなら、じゃあそれで」 ヘアカタログを見せられて、私はいつも短くしてくれと頼むのだけど、ここの美容師さんは必ず私の注文と違うものを薦めてくるのだ。 じゃあカタログ見せる必要ないじゃんと思うんだけど、これも一種の儀式のようなものなのだろう。 雑談を適当にやり過ごして、綺麗に整えてもらえば確かに自然で綺麗な感じの髪に仕上げてくれるのだから腕はいいのだと思う。 髪が艶やかだと褒められてもピンとこないけれど、美容室の鏡台に映った私はそれなりに可愛くなっていた。馬子にも衣装じゃなくて、ほんの少し癖っ毛のある野暮ったい私の黒髪にも流行の髪型といったところか。ショートよりミディアムスタイルのほうが似合っているってのもまんざら嘘ではないのだろう。 美容師さんが軽めでナチュラルにと言っていたのも本当だった。私は頭がとてもさっぱりとしたお陰で気分もよく、足取りも軽かった。 そうして、いつも通りの車両に乗り込んで帰宅する。
すでに時間は帰宅ラッシュ時でホームは混み合っているのだけど、この時間帯だからこそ女性専用車両が走っているのだ。 女性専用の車両にさえ乗ってしまえば、一般車両よりは混み合っていないことが多い。まあ、さすがに座席は座れないだろうけど。 そんなことを思いながら、私は何気なく滑りこんできた車両に乗り込んだ。 「あれ……」 乗り込んで少し不思議だった、いくらなんでも空いているなあと思ったのだ。ホームはあれだけ混み合っていたのだから、ズズッとお客さんが詰まるはずなのに私の周りだけポッカリとスペースが開いている。 その空間には、私と灰色の背広を着た中年のオバサンが立っているだけだ。 「やあアヤネちゃん、もしかしてと思って出迎えたんだけど帰りも逢えるなんて運命としか思えないね」 サラリーマン風のオバサンは、私の手を嬉しそうに握った。 「へっ、貴女誰ですか?」 こんな人は、私は知らない。どこかで知り合ったのを忘れているだけなのか。 「なんだ、もしかしてアヤネちゃん俺の名前忘れちゃったのかな。前に名刺渡したと思うんだけど、もう一度渡しておくね」 オバサンが差し出した名刺には『株式会社DLO 資材課長 中畑道和』と書かれている。オバサンなのに男っぽい名前だなと思った。 もちろん、オバサンだけど。 「ミチカズだよ、四十二歳独身。ミッちゃんと呼んでくれてもいい」 「ミッちゃんさんですか?」 ミッちゃんなら、女性らしい名前だとも言えた。年配者に対してちょっと親しげ過ぎる気もするがそうお呼びすることにした。 「うんまあ、それでいいよ」 含みを残す笑みを浮かべるミッちゃんさん。謎の女性だ。 「あの失礼ですけど、どこかでお会いしましたか?」 私はまだ二回生だから、本格的な就職活動は来年春からだ。株式会社の課長さんって名刺を貰ったのだから、もしかしたら就職ガイダンスに来てた人かなとも思ったのだけど、記憶をたどってみてもこんな女性には会ったことがない。 こんなまるで男みたいな体格のいかつい顔をした女性に出会っていれば、忘れているはずがないのだが……。
じっと見つめ合っていると、なんだか不安な気持ちになってくる。何かを忘れているような、それでも私はこんなオバサン本当に見たことがない。 「ふふっ、本当に忘れてるみたいだな」 「ひっ、人違いですよ」 ミッちゃんは私の肩に手を這わせて、ニヤッと不気味な微笑を浮かべる。 「俺を本当に女だと思ってるんだな、だったらこんなコトしても平気だよね」 ミッちゃんは、そのまま這わせた手を私の胸に置いてそのままおもいっきり揉みしだいた。 「きゃぁああーっ」 私は手を振り払って、床に尻もちをついてしまう。あわわと唇が震える。 「どうしたんだい、女同士だろう」 「えっ、あっ……、うううっ」 たしかにミッちゃんの言うとおりだ。女同士だから、身体に触られてもそれほど大したことではないはずなんだけど。 「まるで俺が痴漢したみたいじゃないか、女同士だったら痴漢にならないだろ」 「そっ、そうです。あのですね、いきなり触られたからビックリしただけでして……」 「ふうん、じゃあ身体に触られることはなんともないと」 そう言いながら、ミッちゃんは私の胸やお尻をさわさわと軽くもんだ。その触り方が、怖気が走る気持ちの悪さで私は震え上がって、悲鳴を上げそうなところを何とか口を手で押さえて堪えた。 「ううっ、ぐぎゅうっ……」 「ふふふっ、頑張るねえ。この前とは全然違うなあ」 「あのっ、それよりおかしくないですか」 私はこの女性専用車両のもう一つの異変に気がついていた。 「何が?」 「だって、何時まで経っても電車が出ないじゃないですか。扉も閉まらないし」 私は、開いているドアに向かってほらほらと指さした。そうやってごまかしてしまいたい気持ちもあったが、本当に不思議なことだ。
「ああ、なんだそんなことも忘れたのか。時間がゆっくり進んでるんだよ」 「はあぁ?」 ミッちゃんさんは、私の手を引っ張ると扉の前に連れて行く。 「ほら見てみな、少しずつだけど扉は締まりつつあるだろう」 本当だった、まるで亀の歩みのようにゆっくりと扉がしまろうとしているところだったのだ。 これは一体どうなっているというのだろう。 「なんだ、つまり俺を自分の中で女性化した段階で全部忘れたんだな」 「ミッちゃんさんがおっしゃってる意味がよくわかりません」 ミッちゃんはドカッと奥の座席に座ると、私を手招きした。嫌だなあと思いながら、私も横に座る。 「時間がゆっくり進んでるのは時計を見れば、ああもう面倒だな。とにかくここから君の降りる駅まで時間はたーっぷりとあるってことだけわかればいいよ」 「はぁ……」 時間がゆっくりと進むことついては、なんとか分かったけれど他のことはこれっぽっちもわからない。 そもそも普段の私なら、時間がゆっくりと進むことすら絶対納得しないだろう。それなのになぜこんなにも腑に落ちるのだ。 まるで前にそんな経験を何度もしたかのようだ。 そんな違和感を引っかかりに、ぼんやりと浮かぶ過去の記憶のイメージを呼び覚ましてみようとしたけれど、なんだかとても薄ぼんやりとしていてモヤモヤする。 視界がふらふらと揺れていると思ったら、どうやら揺れているのは私の頭の方のようだ。 「おや、大丈夫アヤネちゃん。あんまり無理しないほうがいい。知恵熱出るよ」 「うううーん、馬鹿なこと言わないでください」 私はミッちゃんに抱かれて、そのまま四肢から力が抜けていくのを感じた。世界がクラクラと揺れる。 まるで貧血に倒れる時みたいだ。いっそこのまま眠ってしまいたいぐらいだったけど、ミッちゃんさん、支えてくれるのは嬉しいけど私の身体をやたら嫌らしい触り方で嬲るのは止めて欲しい。 お陰で、何とか意識を保つことが出来たけど感謝する気にはなれない。
「アヤネちゃんの髪、甘い匂いがするな。花の香みたいだ、なんかつけてるの」 「ああ、いえ……今日美容院行ったんで」 同じ女性だというのに、髪の匂いを嗅がれただけで怖気が走るのはどうしてだろう。列車はようやく扉が閉まりゆっくりと発車するところだった。 ミッちゃんの言った、亀の歩みって例えは正しいように思える。この分だと、私が降りる駅にたどり着くまでどれだけかかることやら。 「気分良くないなら、とりあえず脱ぎなよ」 「はい……」 車内は暖房がしっかりかかっていて暑いぐらい。ミッちゃんの言う通りだと思い、私はモコモコのブラウンのロングコートを脱ぎ捨てた。 「ほら、これも脱いで」 「ええちょっと」 ミッちゃんは私の上にのしかかると、無理やりセーターに手をかけて一気に引きぬいた。抵抗も虚しく、ガバっと脱がされてしまう。 「気分の悪い時は胸元を楽にしないとね」 「楽にってレベルじゃないじゃないですかーっ」 ミッちゃんは言葉通り胸元のボタンを外して、ブラウスを脱がしにかかる。手で止めようとするのにさっと避けられてプツンプツンとボタンを外されていって、そのままガバっとブラウスの前を開かされてしまう。 (やだ、この人ぬがしなれてる) さすがは同じ女性といったところか。あっとうまに私の不格好に大きい胸がボロンと飛び出した。 「やっぱり隠れ巨乳だったんだな、俺が目をつけた通りだ」 「やめてくださいよ」 私は恥ずかしくて目を背けた。 「でもブラきつくないか、外すともっと楽になるぜ」 ブラウスの中に手を突っ込まれてプツッとホックを外されて、そのままシュルっと引きぬかれてしまう。
「きゃぁ」 胸の締め付けがなくなって、ボロンボロンと弾むバスケットボールのように私のオッパイが飛び出した。 私の胸は不格好に形だけ大きくて垂れ気味だ。乳輪も乳首も大きくて色も綺麗じゃないし、かなりコンプレックスなのだ。 恥ずかしい所を人に見られていると思うだけで頬が熱くなる。 「これはすげえ」 恍惚とした表情で、私の乳を下から掴むとぐいっと上に引っ張りあげた。 「イタタタタタッ」 何ということだろう、無理やり根本をひっつかむと私の乳はお餅みたいにぎゅにゅうと伸びたのだ。 我ながら弾力性がありすぎて、お化けみたいな胸だなと悲しくなる。 「すげえロケットオッパイじゃん」 「ロケットって何ですか。痛いから引っ張らないで、千切れちゃいますよ」 嫌だって言ってるのに、ミッちゃんは私のオッパイを左右上下に引っ張ってその弾力を楽しんでいる。 いくらなんでも好き勝手し過ぎる、なんで私は怒鳴ってその手を振り払わないのか自分でも不思議だった。 「だっていいだろ、女同士なんだから。俺は男じゃないから、痴漢にはならないんだろう」 「でもっ、同性同士だからって……」 言われてハッキリと気がついた。『男じゃないから』ってセリフがまるで喉に突き刺さった魚の骨みたいに引っかかって、私の抵抗力を奪っているのだ。 「ミッちゃんさん、男じゃないですよね?」 たしか中畑道和だったか。目の前の中年女性は、男みたいな名前を持って男みたいな顔をして男みたいな体格をしている。 本当に男だったら、こんな痴漢行為絶対に許さないのだけど、相手は男ではないって私の思い込みが相手の無遠慮な行動を許しているのだ、 「アハハッ。見れば分かるだろ、俺は男だよ」 私の頭の中の鐘がガーンと鳴り響いた、危険信号だ。
絶対にこの人の言葉を認めてはいけない。認めたら、何かが壊れてしまう。 「馬鹿なこと言わないで下さい、ミチカズさんのどこが男なんですか」 声を荒げる私に、ミッちゃんはウプッと吹き出すように笑う。 「むしろ、俺のどこが男じゃないていうのさ。この前とアベコベだなこりゃ」 「この前って……」 また私の頭に靄がかかった。思い出せないし、思い出してはいけない。 「ああいいよ、深く考えなくて。俺が男じゃないって言うならこれはどう説明する」 そう言うとミッちゃんは私の目の前でズボンのベルトを緩めて、ズボンとパンツを脱ぎす下ろして、私の目の前に黒ぐろとした亀頭を突きつけた。 「……ッ」 私は絶句した、硬直したまま叫び声すら上げられない。目の前に巨大な肉棒を突きつけられたのだ。銃を向けられる方がナンボかマシだった。 私の額に浮かんだ冷や汗がすぐ粒になって、首筋までたらっと流れた。蛇に睨みつけられた蛙みたいなものだ。 「ほら、これが男のチンチン以外のなんだっていうんだ」 「くっ……」 私のほっぺたに突きつけられた肉棒の温度を感じながら、私は呻くように答える。 「ク?」 「クリトリスです、大きいけど女性のクリトリスですよそれは」 私が普段なら絶対に口にしない隠語が飛び出した。自分でも驚いた、どうしてこれをクリトリスだと言えたのかは分からない―― (なぜなら、私は自分のクリトリスを見たことがないし、そんな器官があるって意識せずに生活してるから) ――けど、そう説明するしか無い。これが正しい、ミッちゃんは女性なのだから。 「ふうん、面白いことをいうなあ。じゃあこれがクリトリスなら、オマンコはどこにあるの」
「あっ、えっと……」 私は棒状の下を探す。そこには女性特有の割れ目が――ない。 大きな玉袋がぶら下がっている。まるでオチンチンみたいに――という思いを即座に否定する。 もっと下だ。私はケツ毛に覆われた、ミッちゃんのすぼまった穴を指さした。 「ここです、ここがオマ……ヴァギナです!」 「おいおい、そこは肛門だよ」 私はそう言われて困惑する。でも他にない、指で触れて触っても肛門とクリトリスの間のいわゆる、蟻の門渡りの部分に穴はない。 「やっぱりここがヴァギナです、普通の女性とは形状がちょっと異なっていますが」 こんな言い方、失礼だと思ったが聞かれたのでそう答えざる得ないのだ。 「ふうん、じゃあ俺のヴァギナに指を突っ込んで、そうその指の匂いを嗅いでみなよ」 「くさっ!」 プンと指先から強烈な匂いがした。 「うんこの臭いだろ、肛門なんだから当たり前だけどさ」 「ちが、違います。そんな匂いしません、これは貴方のヴァギナです」 自分でもなんでこんなに必死になっているのか、私は絶対に譲れないものを感じた。 「これがヴァギナだって言うなら愛液で濡れるはずだよな、刺激して濡らしてみてよ」 「くっ、仕方がありませんね」 私は何としてもこれが女性器であること、ミッちゃんが女性であることを証明しなければならない。 すぼまった彼女のヴァギナに指を突き入れると、ゆっくりと中を指で刺激した。 ああそうだ、臭いからまず綺麗にしないと。私はウェットティッシュを取り出して指を拭くと、肛門――ではなく彼女のヴァギナを拭いて綺麗にした。 匂いはマシになった、あとはこれを濡らすだけだ。私は思い切って指に唾液をつけて湿らせると彼女の穴に指を出し入れした。 こうしてジュポジュポと刺激していれば、それにしても狭い穴だけど、絶対に濡れてくるはずだった。 女性の膣は、刺激すれば濡れるようになっているのだから。
ハァハァと息を荒げながら、指を使って穴を広げて奥まで出し入れしているとようやく少し湿り気が出てきたような気がする。 「ほら、見てください濡れてきましたよ。濡れてくるんです当たり前ですから」 「たしかにな、少し濡れてきたよ。腸液だけどな」 私の眼前にある勃起したクリトリスはさらに怒張してビクンビクン震えている、どうやらヴァギナを刺激するとこっちも大きくなるようだった。 「腸液じゃありませんよ、愛液なんですっ!」 私はもう躍起になって指で思いっきり穴を広げると、奥深くまで突っ込んでクリっと指の腹で中を刺激した。 私を本気にさせるからいけないんだ、きっとここまでやれば嫌でもオーガズムに達するはず。 「ううっ!」 怒張した陰茎――ではなくクリトリスががグイッと持ち上がると私に向かっていきなり白濁した液を降り掛からせた。 「きゃぁあああああっ!」 私は思わず、後ろに吹き飛んだ。電車の長椅子が私の身を受け止めてくれる。だがそのおかげで、私は避けることもできるその熱い飛沫を顔や髪で受け止めることになった。その射精の量たるやものすごいもので、私の胸までべっとりと汚すほどだった。 「あんまりアナルイジルから、出ちまったよ」 「あっ、ううっ、なんてことするんですか」 あまりのことに、私は臭い指で顔を拭こうとしてその臭さに気がついて、慌ててウェットティッシュで指を拭うと、顔も拭うが拭いきれるものではない。 本当にタップリと、ドロドロの樹液が私の顔に降り注いだのだ。 「お前がいけないんだろ、そんなに前立腺刺激したら射精するに決まってるだろ」 「射精って、なんのことです。クリトリスが射精するわけないです」 私がそう言うと、得も言われぬ顔で唇を歪めた。ミッちゃんはおそらく笑ったつもりだったのだろうけど、まるで顔を歪めて怒っているような意地の悪い顔だった。
「面白いことを言うな、じゃあアヤネちゃんがタップリ顔に浴びたそれはなんなんだよ」 「なっ、なんのことです。私は何も浴びたりしてませんよ」 目の前のオバサンが何を言っているのかは私には分からなかった。 「さっきしっかり見てただろう、俺の亀頭の鈴口から精液が飛び出るのを」 「クリトリスに鈴口なんてありません」 私がそう言うとミッちゃんの笑みが深まった。 「ふうん、どうしても現実を認めたくないらしいな。じゃあ、これでどうだ」 ミッちゃんは、私の胸を掴むとその谷間に下から太いクリトリスを差し込んできた。 「あの、なんのつもなんですか」 そのまま腰を上下させて、私の胸の谷間でクリトリスをこすりあげる。カリ首の部分が私の胸を刺激して、くすぐったいような変な気持ちになる。 「パイズリだよ、チンコを胸の谷間で擦るんだ。すげえなアヤネちゃんの乳は。いろんな女の乳を見てきたけど、こんなにパイズリ向きの包み込むようなオッパイは初めてだよ」 息を荒げながら、腰を上下させる。ミッちゃんは気持ちいいのだろうか、苦しげでどこか恍惚とした表情で一心不乱に腰を振るっている。 胸を柔らかいとか褒められても嬉しくもなんともない。だいたい、自分で胸を都合よく左右から押さえつけて、クリトリスを刺激する穴を成形しているのだから気持ちよくて当たり前じゃないだろうか。 「それはチンコじゃなくて、クリトリスなんですからそのパイズリというやつにはなりませんよ」 「言ってろよ、すぐに射精して俺が男だってやるからな」 さらに腰の動きを早めると、ああっと情けない声を上げてミッちゃんは腰の動きを止めた。 私の顔にまで白い飛沫が飛び、ドロっとした生暖かい感覚が胸の谷間に感じられた。 「ほれみろ、アヤネちゃんのオッパイが気持ちいいから、タップリとザーメンが出たぞ。これで男だって分かっただろう?」 「分かりません」 私は何のことかサッパリだ。ただミッちゃんさんが私の胸を掴んで、そこでクリトリスをこすって気持ちよくなったところで、それがなんで男性の証明になるというのか。
「ふん、どうしても認めないつもりだな。だったらフェラチオで口内射精してやる」 「嫌ですよそんなの、ンンッ!」 ミッちゃんは何の断りもなく私の口の中に、無理やり肌色の肉塊を突っ込んできた。私は座席に腰掛けているから、クリトリスを舐めさせるにはちょうどいい位置なのだろう。もちろん、舐めるのはチンコではないのでこれはフェラチオにはならない。 「フェラチオっていうより、イラマチオだな」 ミッちゃんは、強引に私の髪をひっつかむと私の口内を乱暴に蹂躙する。 (イラマ、なに?) フェラチオはなぜか知っているけれど、イラマチオというのは初めて聞いた。どうせエロい用語なのだからそんなこと知りたくもないけれど。 「ンンッ、はぁ、ふぇろっ、んぐっ、はっ、あっ、んんんんっ!」 無理やりお口いっぱいに太いものを挿れたり出したりさせられて、呼吸をするだけで精一杯だった。 「はっ、たまんねえな。アヤネの口ん中、良い感じのあったかさだ」 「ほえっ、んぐっ、オェ、はぁ、んぐっ!」 口内に無理やり異物感を押し込まれる苦しみから、私が舌で押し返そうとしたり吐き気を催してえずくことすら、無理やり肉棒を舐めさせてるミッちゃんには気持ちいいようだった。 なるほど、こうやって無理やり舐めさせるのがイラマチオか。苦しくて涙を浮かべながらも、私の頭のどこか冷静な部分がそう考えている。 永遠に続くかと思われたこの虐待行為は、突然終わった。 私の喉の奥に肉棒を深々と差し込んだまま、ミッちゃんの腰の動きが止まったのだ。 「よっし、今からお前の口内にタップリと射精してやるからな」 「んんんん!」 (やめて) そう思っても、口の中に余るほどの肉を詰め込まれて呻くことしかできない。 「さすがに口内で射精されて、口からザー汁垂らしながら精液なんて知りませんとはいえないだろ。なにせ、口の中に精液があるんだからなあ」 「んんんんんんんっ!!」 (いやぁー) 喉の奥で、亀頭がむくんと膨らんだのを感じた。
あっ、これはもうダメかもしれない。 そう思った瞬間、ドピュルルルッと喉に熱い飛沫を感じる。 ドピュドピュドピュドピュッ、私の口の中に一気に大量の生暖かい粘液が撒き散らかされて、ほっぺたがプクッと膨らむ。 「ふうっ、やっぱイマラチオは興奮するからたくさん出るわ」 「んぐっ!」 私は、瞳に涙をいっぱいに溜めて、この口内に溜まった汚い液体をどうすべきか必死に考えた。 ヌルンと、唇から肉棒が抜けているときに何とか吐き出さずに済んだのは僥倖だったといえる。 しかしこのまま、口内にこの気持ち悪い生臭い液体を溜めていては程なくして限界を迎えてしまう。 (これは、もう……) それ以上は考えたくなかった、とにかく覚悟を決めるしか無い。 「ほら、お口からドロっと吐き出してみろよ。その瞬間に、俺が男だって証明されるよなあ」 ミッちゃんの嬉しそうな顔。そんなことはさせるものかという怒りが、私の背中を押してくれたから出来たと言っていい。 口内に溜まっている生臭い液体をゴクリッ、ゴクリッと飲み干したのだ。 「んぐっん」 水を飲み干すような簡単なものではない。なにせ口内に溜まっているそれは、ドロっとしていて喉に引っかかるほどの粘性を持っている。 完全に飲むまで、二回ほど吐き出してしまうんじゃないかと思う危機がきて、その波を何とか耐え切った。 そのたびに、吐き出す代わりに私は瞳から涙を垂らした。 「ゴクンっ……」 喉を鳴らして精液を飲み干すのは、一秒足らずの時間だったに違いない。それが十分にも一時間にも感じられたのは、あまりに苦しかったからか。それとも、この異様に時間の間延びした車内の時間間隔の狂いのせいだったのだろうか。
「ほら、口を開けて中の精液を見せてみろよ」 「……何のことですか。お口の中には何もありませんよ」 私は腕で涙を拭いて、口を大きく開けてみせた。なるべく唾液を出して、舌で口内を綺麗に舐めとったから白濁した液体は一滴も残ってはいないはずだ。 「ほおぅ、全部飲んだのか。やっぱりアヤネちゃんは根性あるな」 少し感心したような声を出すミッちゃん。 「ぐすっ……、根性とかわかりませんね。何のことですか」 私はほんの少しだけ、仕返ししてやれたと胸を張れた。 「ふふふっ、何もなかったってことか。じゃあもう一回フェラチオしても飲めるかな」 「もう勘弁してください……」 私はその苦しさを想像しただけでまた涙が出た。 ああっ、なんかトラウマになるかも。これ辛い。 「じゃあ、俺が男だって認めるか。認めるならもうやめてやるぞ」 「…………何を言ってるんですか。貴方は女性ですよ。それは変わりません」 そうなのだ、この人は女性でしかあり得ない。 それだけは絶対に決まっているんだと、どこから湧いてくるのかわからないけど私の中に強い決意があった。 「じゃあ、もう一回そのお口で試させてもらうがいいか?」 「どうぞ、何度でも……」 私は自ら口を開けて肉棒を迎え入れた。嫌悪感とか、震えとかは肉棒を舐めているうちに止まった。 そうだ、慣れてしまえばどうってことはない――とはとても言えない苦行だけれど、我慢できないほどではない。 さっき苦しくて吐き出しそうになったのは抵抗したから。 「ほおぅ、今度はやけに素直に舐めてくれるじゃねーか」 「んぎゅ、べろっべろっ、んはっ、ぺろぉ」 オバサンを気持ちよくさせれば、向こうだってむちゃくちゃはしてこない。
快楽には逆らえないのだ。だから、嫌悪感を押し殺してチンコ――ではなくクリトリスの先を舌でゴシゴシ刺激してあげれば、相手はこっちの動きに合わせてくれるから、息継ぎのタイミングも合わせてくれる。 最初からこうすればよかったのだと、私は気がついていた。 「従順なフェラってのも悪くない、よしっそろそろ出るぞ」 「んんっ」 私はきっちりと咥え込んで口の中で肉棒が震える瞬間を感じた。喉の奥に熱い飛沫が飛び散るけれど、今度は逆らわずに思いっきり飲み込む。 「んぐっ」 苦しい、苦しいけど我慢できないほどじゃない。 生臭い味も最低だけど、匂いも最悪に臭いけれど、でもお口からこの液体をこぼしてしまってこの人を男性だと認めざるを得なくなるところに追い込まれるよりはずっといい。 そう、素直に従ったほうがずっとマシ、賢明な判断。 「ふうっ、本当に綺麗に飲んだな。うまいもんだ、フェラチオ経験とかあるのか?」 私の口内が綺麗になっているのを見て、ミッちゃんは感心したように頷いた。 「私に男性経験なんてありません、それにこれはフェラチオじゃありませんよ」 そうなのだ、女性の少し大きなクリトリスを舐めただけなのだ。クリトリスだからフェラチオではないし、射精などあるわけもない。 「やっぱ頭いい大学にかよってる女子大生だから、エロ事も上手いのかねえ」 (このオッサン、じゃないオバサン。私の言うこと全然聞いてないな……) 「はぁ……」 私は深々とため息をつく。嘔吐感がさっきからこみ上げてきているのを我慢しているのだ。 まさかここで吐き出すわけにもいかない。 「それとも、俺を男と認めたくないという強い思い込みのせいかねえ」 私の胸を玩具のようにもみくちゃにしながら、そんな独り言をいっている。 「もういいですか。これで貴方が男性じゃないって証明できたと思えますが」 「なんだか、胸揉んでたら勃ってきちゃった。もう一回いいかな」 「ふーっ」 (何回だすのよ……、) 「んっ、なんかいった?」 「いえっ、ため息をついただけです。お口でよければどうぞ」 私は口を開けてそこにミッちゃんのまた硬くなったクリトリスを受け入れる。 ジュブジュブと舐めまわすうちに、またお口の中でむくっと大きくなってドピュっと吐き出した。 さすがに私も一連の動作に慣れた感があった。
こうしてミッちゃんがもう良いと許可するまで責められまくったあげく、ようやく電車は私が降りる駅のホームへとたどり着いた。 ブラウスのボタンをとめてセーターを着て、ロングコートを身にまとうと私は何事もなかったように車両から駅へと降り立つ。 何事もなかったはずなのに、なんだか身体がベトつくのは気のせいのはずだ。 なぜなら、私が乗ったのは女性専用車両。そこにいる人はみんな女性で、私が今日出会ったミッちゃんも、もちろん女性なのだから。 そう思っているうちに、車両の中の出来事は終わった夢のように掻き消えていく。 そうなると残るのは……。
※※※
(なんか、口の中がずっとネチャネチャして気持ち悪い) 私は駅のトイレに駆け込むと冬なのに汗でべっとりと濡れた顔を洗面台で洗う。綺麗に整えられたはずの髪はボサボサで、頬は青白くてひどい顔だった。 喉の奥からイガイガがせり上がってくる。 「う……」 私は突然の嘔吐感に口を押さえると、個室に駆け込んで便座に思いっきり胃の中の物を吐き出した。 「ぐええぇぇ」 女の子としては最低な呻き声を上げながら、お腹の中のものを全部吐き出してしまう。便座の中には、白いドロっとした塊が溜まっている。 「うぐっ、なにこれ……」 私のお腹の中から出てきたものだ。 (とろろ? それともしらこ?) そう思ったが、そんなもの食べた覚えはない。それに磯の香りのような匂いと、生臭い匂いが入り混じったような何とも形容しがたい悪臭が漂う。 考えているとなんだか怖くなって、水を流してしまった。 もう一度洗面台で顔を洗う。綺麗になったはずなのに髪がべとついていてさっきの悪臭が身から離れてくれない。 「もういいわ」 さっさと家に帰ってシャワーを浴びることにした。 きっと髪も体も全部洗い流せば、この匂いも最悪の気分も、何もかも元通りになるはずだった。 それが新しい悪夢の始まりだとは、私は思ってもいなかった。
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第二章「女性専用車両 連続中出し」 |
「順番にやるからお前たちも、裸になって濡らしておけ」 居並ぶ女性たちも、服を脱いでオナニーし始めた。異様な光景、なんで乗客の女性たちはオジサンの言うとおりになるのだろう。
オジサンのさもあたりまえのような口調を聞いていると、それが当然みたいな雰囲気が醸しだされているのは、私にも感じる。だが、それにしたって限界というものがあるだろう。 私は、自分が大掛かりなドッキリに引っかかってるのじゃないかと疑った。そんな疑いを持つ方がオカシイのだけど。アダルトビデオの撮影じゃあるまいし、女性客が電車で裸になってオナニーするなんて放送できるものではない。あるいは、新種のアダルトのドッキリカメラみたいなのがあるんだろうか。 念の為に、辺りを見回すが当然テレビカメラもなかった。念入りに辺りの人を観察してみるとオカシナ点もないではない。こんな異変が起こったら普通は、あそこ辺りにいる活発そうな女子高生の集団が騒いで携帯で写メを撮ったりするんじゃないかな。 誰も騒ぎなんか起こっていないって感じで、我関せずといった表情で電車に揺られている。オジサンの周りだけが異様な雰囲気で、裸の女たちがワイワイキャーキャー嬌声を上げながら、異常な興奮の中でオナニーに興じている。他の乗客は、その邪魔にならないように端っこに追いやられているのだ。 こんな異常な光景を目の前にして、車掌が飛んでくる気配もない。 そう言えば、この列車はいつになったら駅につくのだろう。さっきから外の景色が無限にループしている。いつまでもいつまでも、まるでドラマのセットのように見慣れた景色が続く。 こういうの何かの漫画で読んだような、集団催眠……。 バカげている。集団心理を操る催眠術というのは存在するにはするが、こんなオカルトめいた現象を起こすものではない。ファンタジーじゃあるまいし、これが催眠か何かだと認めてしまったら、それこそ私の頭がオカシクなったということだ。 私は精神異常者ではない、だから言い知れぬ恐怖に心臓がバクバクと高鳴っても、オジサンが女だなどと認めるわけにはいかなかった。 「ああ、そうかこれは夢」 「なんだ、現実逃避か。ホッペタでもつねってみろよ」 私のつぶやきを聞いていたのか、オジサンはそんなことを言ってくる。 古典的な方法だが、確かに試してみる価値はある。 夢が覚めないかとおもって、私は思いっきりホッペタをつねった。 「痛い……」 「なあっ、当たり前だよ」 「でもさっきからもう一時間ぐらい時間が経ってるし、おかしいです」 私の大学までの通学時間は、三十分ちょっとだ。 「時計見てみろよ」 「えっ……」 携帯の時刻を確認すると、電車に乗ってからまだ二十分程度しか経過していない。私は、起きるのに目覚ましがいらないぐらい体内時計には自信があるほうなのに。 (私の気のせいってこと?) 「アヤネちゃんだけじゃなくて、この車両全員の体感時間を遅らせてるんだよ」 「そんなバカなこと……」 確かに強い集中力によって時間感覚の操作は可能だとは、私も知っている。だけど、こんな広範囲にわたって他人を巻き込んでの遅延などありえない。 「女たちの準備が終わったみたいなんだけど、もう質疑応答はいいかアヤネちゃん?」 「ちょ、ちょっと待ってください」 本当に合点のいかないことばかり、私はオジサンの肩を掴んで引き止める。こういう不合理がどうしても許せない質なのだ。 「なんだよ、しつこいな。おいお前ら壁に手をついて腰を突き出せよ」 私が呼び止めているのに、オジサンは居並ぶ女の子たちに指示を出している。 「やっぱり、どう考えてもこんなのありえないです」 きちんと痛みを感じるけれど、でも私は目の前の現実をどうしても飲み込めない。 「夢だと思ってるならさ、一言『俺は女だ』って認めてしまえばいいじゃん」 「嫌ですよ、仮に夢でも自分でそう思ってないことを口にするなんて」 我ながら損な性分、愚かなこだわりだと思うのだけど。私は嘘をつくのが我慢ならないのだ。 オジサンは、さかんに自分を女だと私に認めさせようとしてくる。 もしかして、これが悪夢だったら『貴方は女です』と言った途端に目が醒めるかもしれない。 そんなことを思ってみても、それでも言えないのだ。 明らかに男を、女なんて認められるわけがない。
「強情だなあアヤネちゃん、しょうがないね。じゃあ俺はもうひと頑張りして自分が女だって認めさせるしかないね」 「どうするつもりですか」 私がそう尋ねると、オジサンは可笑しそうに腹を抱えて笑った。身体をくの字に曲げて、そのまま転がってしまいそうなぐらい抱腹絶倒した。 「フハハハッ、まさかこの期に及んでも分かんないとかありえないでしょ」 「その……」 わからないわけではないのだ、でも口にするとこの酷い現実を認めてしまうように思えて私は口ごもった。 「そこの危険日の女たちに次々中出ししていくからね、それで妊娠しなければ女だと完全に証明できるでしょ」 ニカッと暑苦しい顔に爽やかな笑みを浮かべるオジサン。 「そんなあ……」 あーやっぱり、そうなってしまうのか。 「まずはこの子かな」 オジサンは、適当に一番近くに居た女の子の後ろに陣取る。背が低い子で、よく見ると胸はつるぺたでまだ十代の前半に見える顔立ち。 ツインテールにしてる髪が、幼さを強調している。 「ちょっと、オジサン待って下さい。この子まだ子供じゃないですかッ!」 「えっ……、あーん小さく見えるけど違うでしょ。だって生理周期がわかる娘だけなんだから、ほらマンコ見てみてよ」 オジサンはなんのためらいもなく、その子のピンク色の肉のワレメを指で開いてみる。思わず私も膣中を覗きこんでしまって、自分で何をやっているのかと恥ずかしくなった。「ちょ、見ちゃったじゃないですか」 いや、私のことはこの際どうでもいい。恥ずかしさに耐えているのは秘所をむき出しにされたこの子だ。 私は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「ほら、ちゃんと開通してるでしょ。少なくとも処女じゃないよね」 オジサンはその子の膣に指を突っ込んで出し入れしながら、クチュクチュとイヤラシい音を立てた。 私はもう直視できない。 「生理周期を測ってるってことは、定期的にセックスしてる相手が居るってことなんだよ。小さく見えるけど、マンコの具合はしっかりしてるし……」 オジサンは独りごちて、しばらくワレメを弄ると少女に声をかけた。 「おい、お前は十八歳以上だよな」 「……はい十八歳以上です」 オジサンがそう言うと、そのままオウム返しに答える少女。 「いやいや、おかしいでしょ。だってほら脱いだ服、学生服ですよ! 小学生じゃないにしろ中学生ぐらいじゃないんですか!?」 このままだと年端もいかない少女がオジサンに犯されてしまうので、私は必死に抗弁する。 オジサンはうるさそうに私に向かって掌を振る。 「本人が十八歳以上って言ってるんだから、そうなんだろ。学生服って……、まああれだ高三で十八歳なんだろうよ。条例的にはオッケーだよな」 「うそっ、絶対まだ十代の前半ですって、こんな十八歳ありえないでしょ。ちょっと貴女本当のことを言いなさい、このオジサンに犯されちゃうわよ」 私がせっかくそう言ってあげたのに。 「私は十八歳以上です」 女の子は、そうまるでロボットのようにそう言い張っている。 なんだか既視感を感じると思ったら、オジサンが『自分を女だ』と言ってるのと一緒なのだ。 頭がおかしくなりそうだった。 「ほれみろ、アヤネちゃんがおかしいんだよ。疑惑が晴れたところで、さっそく挿れさせてもらうからな」 オジサンはそう言うと、少女の応答も聞かずに腰を突き入れてさくっと挿入してしまった。 「はわぁっー!」 少女が、変わった嬌声を上げる。 オジサンが腰を振るうたびに、「はぁぁ」だの「はわわ~」だのと喘いでいる。 その喘ぎ声の奇妙さに、私は声をかけるのも忘れて固唾を呑んだ。
「ひいっ、ふうっ、ひゃぁ~」 数字でも数えるように、リズミカルにピストンの速度に合わせて変わった叫び声をあげる女の子。 「くうっ、さすがにロリマンコは狭いな。これならすぐいけそうだ」 「ひぐっ、ひゃぁ、はぁぁ」 オジサンがさらに腰の動きを早めて、女の子の身体を両手で持ち上げたかと思うとそのまま駅弁ファックの体勢に持ち込む。 しばらくシーソーにでも乗っているかのように、裸体の少女がオジサンの上を激しく昇降して―― 「はぁ、いっ、イクッ!」 「俺もイクぞッ」 オジサンが女の子の身体を突き上げるようにして、絶頂に達した。 女の子も小さく口元から涎を垂らして、全身を痙攣させるようにオーガズムに浸っているようだ。そのままその小さい裸体をオジサンがどかっと、電車の座席に横たえると四肢をびくびくと震わせる少女の膣からタラタラと白い精液の塊が流れだしていた。 小刻みに震えている女の子が心配で、私はしばらく彼女の様子を見ていたのだが、その間にもオジサンは腰を付き出して居並ぶ女の子たちを犯している。 次に犠牲になったのは、二十代後半のふくよかな女性だった。 目の前に脱いだ黒い上下のスーツから察するに、彼女も勤め人。通勤途中のOLかなにかだったのだろう。 「次はお前の番だ」 「はい、十分に濡らしてあります」 女は従順そうな声で腰を付き出した。
「ふふっ、お前は殊勝な態度でなかなかいいじゃないか。手早く済ませてやる」 オジサンが女の後ろから、股間を突き出した。 先ほど少女に射精したばかりだというのに、オジサンの股間は一向に萎える気配をみせない。 もしかすると、バイアグラでも飲んでいるのかもしれない。 程なくして、この女も甘い吐息を吐き出した。オジサンも我慢せずとにかく腰を奮って相手はちょっと太めの女なので、その分だけ大きなオッパイを思いっきり揉みしだいたりした。 ほどなく射精する。 「おい、どこに出して」 「あの、これって妊娠しないんですよね」 一瞬の躊躇のあと、オジサンは答える。 「もちろんだ、俺は女だしな」 「じゃあ、中でいいです」 やはり従順そうな女はまぶたを伏せると、そう答えた。 「中でいいですじゃないだろ、中に射精してくださいだバカッ」 思いっきり肉厚のお尻をペチンッとスパンキングされる女。 「ごめんなさい、中で出して下さい」 「そうやって素直に言えば、ウウッ……」 オジサンは腰を激しく打ち付けると、深々と生殖器を結合させて震えた。 「はぁーん」 情けない声を上げ震える女の危険日の子宮に、ドクドクとオジサンの遺伝子の塊が流し込まれる。 ズルっと引き抜くと、また接合部からはドロっと精液が溢れる。 その量たるや、オジサンが今日何回射精しているのか考えるに超人的な精力といえた。 「ふうっ、なかなかのマンコだったな。遠慮無く孕むといいぞ」 「えっ、だって妊娠しないんですよね?」 肉感的な女性は、太ももに精液を垂らしながら慌てて聞き返した。 オジサンは次の女性に行こうとしていたのに呼び止められて、フンッと不機嫌そうに鼻を鳴らすと、少し考えて自分の脱いだ服のポケットからまたマジックペンを取り出した。 「うるさいこと言う奴はこうだ」 オジサンはペンで、女の腹に大きく『変態露出狂』と書いた。 「えっ、これなんなのです?」 太めの女はなおもきょとんとした顔でオジサンに尋ねる。その聴き方が、オジサンの神経を逆撫でしたようで笑顔が怖い。 「書いてある通り、お前はこれから露出狂になるんだよ。永久に露出趣味に耽溺して、裸で街中を歩いて、男にでもレイプされろよ」 俺の子供を妊娠するのがそんなに嫌ならな、と男は吐き捨てるようにつぶやくと次の女を組み伏せにかかる。
次は二十代前半ぐらいの少し痩せぎみの女だった。そのほっそりした背中に、マジックペンでまた落書きを始めるオジサン。 「なんて書いたんですか」 背中に何か書かれたのは分かったのだろう、頬も痩せ気味で髪の長い少しつり目の女子は不安そうに尋ねる。 「お前には『変態M女』って書いたんだよ。お前は一生変態M女だから分かったな」 「はい……Mですか……変態M女」 女は複雑そうな表情でまぶたを伏せると、口元でオジサンの言葉を繰り返した。 「分かったら、さっさと股を開け」 「はい、ただいま」 オジサンに促されて、車両の窓ガラスに手を付くと大きく肉付きの薄いお尻を上げる女。足が長くて、中々スタイルがいいので様になっているがオジサンは不満そうだ。 「違う、M女らしくおねだりをしろよ」 「あっ、すいません。えっと、私のオマンコにオチンチンをぶち込んでくださいっ!」 「よし、なかなかM女らしいな。ご褒美をくれてやる」 オジサンは我が意を得たりと、嬉しそうに笑うとそのまま覆いかぶさるにしてバックから挿入した。 居並ぶ女子たちは、皆あらかじめオナニーさせて濡らしてあるから、抵抗なくオジサンのそそり立ったものを受け入れる。 「はっ、ありがとうございます。ありがとう……、ございますっ!」 変態M女にされた女は、パンパンと腰を打ち付けられながらお礼の叫び声をあげる。 「ふへへっ、なかなかいいね。マンコの具合もキュッキュと喜んで締め付けてくるじゃないか」 これだけ出してもまだ、女体を楽しむ余裕があるらしい。
男はゆっくりと腰を打ちつけながら、女の乳首を指で弄んでいる。 「あっ、あっ、最高です、ありがとうございますうぅ!」 すっかりM女らしい嬌声をあげて、女はオジサンの愛撫を受け入れる。 「ふうっ、ゆっくり楽しみたいところだがケツカッチンだからな。そろそろ出すぞ」 「あっ、あっ、中に、中に出して下さい」 当然M女なら、そう答える。 オジサンは嬉しそうに、「知らない男の子種で孕んでもいいのかよ」と女を詰った。 「いいんです、ダメだけどソッチの方が気持ちいいからぁ、お願いします遠慮無く中出しして」 「俺は知らないからな、勝手に孕んでどっかで産んでろよ」 オジサンは、嬉しそうに感極まった顔で腰を激しく打ち付けるとやがて動きを止めた。ドクドクと痩せ気味のM女の膣に欲望を吐き出しているのだろう。 ズルッと陰茎を引き抜くと、さすがに勃起はもうしていない。それでも、最後の射精も精液の量は十分だったようでしばらく経つと、ポタリポタリと車内の床に中出し精液が滴り落ちた。 自らの膣口から垂れた精液を、M女はうっとりとした表情で見下ろしている。 「ふうっ、なあいつまで続けるんだ。いい加減俺を女だと認めろよ。そうじゃないと、さすがにもう体力の限界だよ」 オジサンは、ぐったりしている少女を介抱している私のところにきてそう声をかけた。オジサンの顔を見ると、目のくまが酷くて少しやつれているように見える。超人的な精力を誇る男だったが、疲れているというのは嘘ではないようだった。 「貴方さっき、そこの女性に自分は男だみたいなことイイましたよね」 私がそういうと、オジサンはグッと身をのけぞらせた。いちいちオーバーリアクションだなあ。 「なかなか痛い所をついてくるじゃないか、あれはあれだよ言葉の綾ってやつでな」 その方が気分が出るだろと言うオジサン、そんなこと私の知ったことじゃない。 オジサンが何度女性に中出しをかましても、私のセリフは決まっているのだ。 「何をどうしようと、あんたは男よ!」 どうしてか居並ぶ女性には、みんなオジサンが女の人に見えるらしい。けれどそんなことで『男を女だ』なんて認めるなら最初から頷いている。 筋の通ってないことは、私は絶対に認められない。 「ハァ、みろよ。すっかりクリトリスが萎えてしまった。これでも俺は男か?」 オジサンが、私を言う。一体、何度目の質問だろう。きっと私が認めるまで同じ事を聞きつづけてくる。 そういう手口なのだと、私は本能的に気がついていた。
オジサンも疲れているようだけど、私だって心身ともに疲弊している。大きく深呼吸するけど、車内は息苦しい。 辺りは、愛液と精液の入り交じった澱んだむせ返る匂いで満ちているのだから当たり前だ。 そこには、精力絶倫のオジサンに中出しされてぐったりする真っ裸の女性がぐったりと幾人も転がっていて、他の乗客はまるで無関心を装うように、この輪姦ショーを遠巻きに見つめていた。 「だって、何をどう言われてもオジサンはオジサンでしょう」 オジサンは、私のその返答を聞くと、やれやれと私の近くの座席に腰を下ろした。 「アヤネちゃんは頑固だな……、そして残酷だ」 「なんで私が残酷なんですか?」 たくさんの女性を犯して回ったオジサンではなく、なぜ私が非難されなければならないのだろう。 そんな言われはこれっぽっちもないはずだ。私は何も悪くない。 「そりゃ、十月十日後にわかるんじゃない。俺に中出しされた女たちが妊娠するかどうかは、しばらく経たないとわかんないもんね。おや、そろそろ駅に付くね」 電車は、いつの間にかゆっくりとホームに滑り込んでいた。無限に続くかと思われた惨劇は幕を閉じるのか。 確かに私が降りる停車駅だ、しかし座席でいまだ倒れている少女や、この車内の惨状を放って一人で逃げていいものだろうか。 私が迷っていると、列車はホームに到着してプシューと音を立てながら、ゆっくりと扉が開いた。 ふわっと、澱んだ車内の空気が晴れて、外の風が流れてくると私は悪夢から目醒めた心地がした。開いた扉からは、朝日が差し込んでくる。 外は明るいと思った。 「どうした、早く降りなきゃ大学の講義に遅れてしまうんじゃないかな」 オジサンにそう言われて、ハッと時計を見る。 今日は基礎教育科目だから、どうしても出なければいけない講義なのだ。 こんな現場に遭遇して、講義も何もないものだが、後から考えればそのような理由で私はこの場から一刻も早く立ち去りたかったのかもしれない。
私はすべてをなおざりにして去る罪悪感を感じながら、後ろ髪引かれる思いでホームへと降り立つ。 後ろから、オジサンの「アヤネちゃん、また会おうなー」という声が追いかけてきた。もう会いたくない。 私は耳をふさいで、階段を駆け下りた。 何も聞こえない、聞きたくない。私は、全てを振り切るように走り続けた。 自分の安全で安心な、日常に向かって。
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第一章「女性専用車両 主婦編」 |
「なんだ、アヤネちゃんは、まだ俺が女だって信じてないのか」 ぐったりと座席に座り込んでいるOLの股間から、ドロドロとオジサンが中出しした精液が流れ出しているのだ。何を信じろというのか訳がわからない。 私の不満げな顔を見て「じゃあしょうがねえな」とオジサンは、急に周りに呼びかけ始めた。 「えー、女性専用車両にお乗りの乗客のなかで、超危険日の方はいらっしゃいますかー」 車内を歩きながら、オジサンは叫び声をあげる。 「いらっしゃいましたらーこちらに至急集まれーこの野郎ッ!」 そのようにして、女性客をかき集め始めた。 とんでもない申し出にも関わらず、不思議とオジサンが回った後にぞろぞろと女性客がついてまわっている。まるで、カーメルンの笛吹きのようだ。笛を吹いて、街中の子供を連れ去ったという怪しげで不気味な男の伝説だが、実際のハンドパイパーもこのオジサンのように拍子抜けするほどただのオッサンだったのかもしれない。 童話の世界が目の前に現れた、そんな違和感と共に鋭い頭痛に眉根を顰める。 「はいはい、そこに整列してね。うーん、オバサンはいらないから向こうに行って……。君とアンタもブサイクだから、帰ってイイよ」 集まった女性の中から、容姿に優れた女性だけを寄り分けていく。そうして、六人の女性が残された。 列車の一両に満載された女性から排卵日の女性をさらに容姿でより分けて、この人数。多いのだろうか、少ないのだろうか。 オジサンの言う超危険日って二十四分の一なのか、三なのだろうか。一車両の乗員定員数が一六二名で、分母が分母を仮に百六十と考えると二十四で割れば、6,67だから抽出された六人という数に意味があるようにも見える。 こんなとき、そんな暗算してる場合じゃないんだが、少し落ち着いた。深呼吸して、額に浮かんだ汗をハンカチで拭きとる。私までもが、非日常に飲み込まれないように。
「ふうん、まあ数はこんなもんか……。しかも、妙齢の女ばっかりだ。おばさんは要らないが、女子高生とか居ないのかねえ」 オジサンも、私と一緒の感想を持ったらしい。鈍重な顔をしてるけど、オジサンもその程度の計算は出来るわけか。 「あのうー、若い子は危険日とか計算してないんじゃないでしょうか」 おずおずと、整列されられている中の一人、綺麗に巻かれた栗色の長い髪のちょっとお嬢様風な女性が手を上げてそう答える。 「ふんっ、君の名前と年齢と……。あと職業」 オジサンが腕を組んで偉そうに尋ねる。何様のつもりだと私は少しむかつく。 「中藤エリナ、二十四歳……主婦です」 赤いスーツに派手なスカーフ、高そうなバックを持って白い帽子をかぶっているエリナは、家庭的な主婦にはとても見えない、どっちかといえば人のよさそうなお嬢様。人妻というのなら、いかにもセレブって感じ。 「ふーん若いな。人妻とは思わなかった。主婦って言うより、セレブって感じだな」 やだ、またオジサンと一緒のことを考えていたみたい。 「そんな、セレブなんて……。ただの主婦です」 「まあ、それはいいや。それで若奥さん、あんたはなんで自分が排卵日だと自覚してるのかな?」 「あの、私はきちんと基礎体温つけてますので。今日は確実に……」 エリナさんは口をつぐんだ。続く言葉は、『危険日』あるいは『排卵日』か。上品そうな女性だから恥ずかしがっているのだろう。 「排卵日ってことか」 オジサンがそう聞き返すと、エリナさんはコクンと頷いた。 「そういう事か、よくわかった。教えてくれてありがとうな。それじゃあ奥さん、ちょっと服を脱いで裸になってくれるか」 「こんな場所で、裸になるんですか?」 電車の中なのだ。一応、公共の場所だから躊躇するのは当然だろう。 「別に良いだろう、俺だってあそこの女だって裸になっている」 オジサンは中出しされて座席にぐったりといているメガネOLを指差す。 精液と愛液の据えた臭いが鼻につく、ちょっと淫蕩な雰囲気に押されたように「分かりました」とエリナさんは血の気の引いた蒼白な顔を歪めながら、スカーフに手をかけた。 赤いスカーフをしゅるりと下ろして、赤いスーツを脱ぐと綺麗に座席の上に畳む。こういうところに性格がでるよね。エリナさんはその上に白い帽子をちょこんと乗せてオジサンを振り返った。 「下着も脱ぐんだよ」 「分かりました……」 エリナさんは、レースのついた淡紅色のブラジャーを剥ぎ取ると、大きめのおっぱいを晒した。なかなか立派なオッパイ。人妻だというのに、乳首はピンク色で大人しい。胸の大きさは、私と一緒ぐらいだけどエリナさんのほうが前にポンと突き出てる感じでカッコイイ。大人しいお嬢様風だったのに、女は脱いでみないと分からない。 スッとブラとおそろいの赤いショーツも脱ぎ捨てると、青白い肌を晒した。胸と腰とお尻のあたりだけ、少し肌がピンク色になっている。もしかするとこんな場所で裸にされて、高揚しているのだろうか、エリナさんは苦しげに少しハァハァと息も荒い。 「力抜けよ」 オジサンはエリナさんの肩に手を置くと、優しくさすった。エリナは少し落ち着いたのか、ぎこちない笑顔を見せた。 「すいません、緊張してしまって……」 「いや、無理はないだろうよ。こんな経験は初めてなんだろう?」 オジサンはニヤリと笑って親しげに声をかける。 「はい、他の人に裸を見られるのは久しぶりです……」 「子作りしてるんだろ。旦那さんに、可愛がってもらってるんじゃねーのか」 オジサンは肩を抱いたまま中年男らしいねちっこさで、エリナの柔和な顔を覗き込むと真っ白いほっぺたを長い舌でベロリと舐めあげた。性欲に猛り狂ったオッサンの表情は化物じみている。 エリナは、激しい嫌悪に顔を背けたようだった。 「ちょっと、いい加減にしなさいよっ!」 私は、エリナさんの嫌がってる様子を見て、オジサンとエリナさんの間に分け入った。関わりたくなかったし、私はこの場では場違いな存在だということをビンビンと感じるけど、もう黙って見ていられない。 オジサンの胸をドンと押し返す。そんなこと気にしてる場合じゃないけど、オジサンの肌はヌメッとして気持ち悪かった。後で手を洗わないといけない。
「なんだよ、アヤネちゃん。お前には関係ないだろ」 「だってこの人、嫌がってるじゃないっ!」 私の胸の中で、カーッと義憤が燃え上がった。エレナさんに近づかせないように立ちふさがって私は続けて叫ぶ。 「嫌がってる女の人の身体を触るのは痴漢行為よ」 私は、叫びながらだんだんと意識がハッキリしてくるのを感じだ。そうだ、こんな場所で裸にさせられてる段階で、止めないといけなかったんだ。どうして、雰囲気に飲まれてしまったんだろう。 「『痴漢行為よ』だってさ、アヤネちゃんは面白れぇことを言うなあ」 オジサンはひるむどころか、声色を真似をしてからかってくる。私が激昂するのを楽しんでいるようだった。一発平手でも食らわしてやろうか。 「止めないと、ぶつわよ!」 私はこれでも、手が早い方なのだ。男なんかにビビらない。今にも殴りかかってきそうな私の勢いに押されたのか、オジサンも両手を前に突き出して押しとどめた。 「おいおいマジかよ、こんな公共の場所で暴力はダメだよ」 「公共の場所でやっちゃいけないことをやっているのはどっちよっ!」 足を踏み鳴らして、怒り狂う私を押しとどめてから、オジサンはエレナさんに慌てて聞いた。 「おいっ、若奥さん。俺がお前の身体を触るのは痴漢行為か?」 「えっ、いえ……」 オジサンは変な説得力で丸め込もうとしている。そうはさせるものか。 「ねっ、あなた。本当は嫌なんでしょ、嫌なら止めてって言っていいのよ」 「えっ、あっ……」 エレナさんは、私とオジサンの両方の顔色を伺ってキョロキョロし始めた。 まったく年上で人妻だっていうのに、小娘みたいな人だなあ。普段はそれで可愛らしいのかもしれないけど、いまは非常時なのよ。 「ねえっ、エレナさん。あなたこのままいくと、この男に犯されるわよ。それでもいいの?」 私が必死になってエレナさんの肩を掴んで説得しようとしているのを、オジサンは横目でニヤニヤと笑って押しとどめた。 「おいおい、待てよ。アヤネ、お前は前提から間違ってる」 「何がよ!」 私は、間違っていると言われるのが一番嫌いだ。 「まず、なぜかお前は俺のことを男だと思っているらしいが、ここに居るお前以外の人間はみんな俺のことを女性だと正しく理解している」 なあそうだろうと、オジサンが周りの女性客に呼びかけるとみんな「うんうん」と頷いた。私は、一人だけ自分が間違っている立場に置かれて、極度の怒りと不安でスーと音を立てるようにして頭から血の気が引いていくのを感じた。 気絶するかもと思うほどの落胆を、下唇を血が出るほどに噛み締めてなんとか耐える。 「みんな、おかしくなってるのよ」 自分だけは、何とか正気を保とうと努力した。
「これは、アヤネちゃんのせいでもあるんだぜ」 「何がっ、何が私のせいよ!」 誰のせいかと言えば、女性専用車両に乗り込んできたオジサンのせいに決まっているのに、なんで自分ばかり非難されなければならないのか。 「だからぁ、チッ……分からねえ女だな。お前に向けて俺が女だと言うことを証明するために、この若奥さんにもご協力いただいてるわけじゃねーか」 まったく言ってる意味がわからない。 「いいか、アヤネちゃん。これをよく見ろ」 オジサンは勃起したイチモツを私に突きつけるように見せつけた。それはまあ、ピンク色の鎌首を持ち上げた蛇みたいで化物じみた生殖器だ。 「そんな汚らわしいものを、私に近づけないでよっ!」 「おい、これはなんだアヤネちゃん。言ってみろよ」 ほれほれとオチンチンを上下させるオジサン。 「男の、薄汚いオチンチンに決まってるじゃない」 チンコをピンコ勃ちさせながら、オジサンはアメリカ人のように手を広げてやれやれと呆れたジェスチャーをした。 あまりのムカつきに、私は吐き気がした。 「若奥さん、これはなんだと思う?」 今度は私にしたのと同じ質問を、エレナさんにするオジサン。 「女の人の……ちょっと大きなクリトリスです」 真っ赤な顔で俯きながらも、確かにエレナさんはそう確かに言った。私は、あまりのことに絶句して二の句も接げない。 「よし奥さん、じゃあ俺のクリトリス舐めてくれるか?」 「えっ、それはちょっと」 オジサンはさすがに断られている。当たり前だけどちょっと小気味よかった。 「なんだよ、クリトリスなんだから舐めてもいいだろうがっ!」 そう詰られるとエレナさんはちょっと躊躇を見せたが、言われたとおりに跪いて小さな舌を出して、精液と愛液がこびりついている勃起した男性器をペロペロ舐め始めた。 「ちょっとアンタ何をやらしてんのよ!」 私が慌てて止めに入るが、手を前に出してオジサンは押し留めた。 「お前はちょっと黙って見てろ。これはアヤネちゃんのためにやってる証明なんだから」
なんで私のためにこの人が口淫されないといけないのか、しかし黙って見てろと言われると私も口出しし難く、悔しくて下唇を噛み締めた。 「若奥さん、アンタもフェラチオへったくそだなぁ」 「ふみまふぇん……」 エレナさんは陰茎を咥えこみながらも、オジサンに怒られてシュンとうなだれている。しばらくエレナさんは眉根をしかめながら、嫌そうにオジサンのチンチンを舐め回していたが、オジサンがストップをかけた。 「まあフェラチオはいいや。こんな刺激じゃイケねえ。奥さんはまだ若いから、これから旦那のために精進しておけよ」 オジサンは勝手なことをほざいて笑っている。下手くそというわりに、エレナさんに舐められてガチガチに硬くしてるくせに。 「あの、出来ましたらその……。若奥さんっていうの止めていただけませんか」 知らないオジサンの前で裸になってるのだから無理は無いけど、奥さんと呼ばれるたびにエレナさんは暗い顔をしている。 もしかすると、罪悪感を刺激されるのかもしれない。夫がいるのに、他の男の陰茎を舐めされられたのだから当然だ。 「ふうんっ、別に呼び名なんてどうだっていいけど、アンタが嫌ならエレナって呼ぶわ。エレナは、もし俺が男でさっき舐め回したこれがクリトリスじゃなくて、チンチンだったらどうする」 カチカチに勃起したチンコを、ベチベチとエレナさんのホッペタに押し付けて、オジサンは尋ねる。 「死にます……。主人に申し訳ないから、舌を噛んで死にます」 エレナさんは悲壮な顔でハッキリとそう言い切った。 いやいや、舌噛んで死ぬってのは小説の中だけの話で、実際にはそんな死に方できるものじゃないと私は思うのだが、ツッコむ空気ではない。 「ほら、聞いたかアヤネちゃん。エレナは偉いよね、いまどきそんな貞淑な妻っているんだね。旦那に申し訳ないから死ぬとまで言ってるんだぜ?」 「そりゃ、偉いとは思いますけど……」 「じゃあいい加減、俺を女だって認めたかな」 「いや、それとこれとは全然関係ないでしょっ!」 そんなこと言われたって、私はオジサンが男性にしか見えないのだから、答えが変わるわけがない。
「ひでえなぁ、おいエレナさん。この娘、あんたに死ねって言ってるぜ」 エレナさんのブラウンの瞳から、耐え切れないとばかりにツーと涙がこぼれた。ええっ、どういう展開? 「ちょっと、私は彼女に死ねなんて言ってません! ただ私からはオジサンが男にしか見えないって言ってるだけで……」 なんか私が泣かせたみたいだったので、慌てて申し添える。なんで私が悪者にされないといけないのかという怒りが沸々と湧いてくる。 さっきからこんなのばっかりだ。 「じゃあさアヤネちゃん。そもそも、男と女の違いってなんだろう。クリトリスとチンチンの違いってなんだよ」 オジサンは私に真面目な顔で聞いてくる。ちょっと、その汚いものを近づけないでほしいのだけれど…… 「……それは、えっと」 クリトリスは、発達未良の男性器の名残だったと習った覚えがある。そうすると性別の違いはあっても同じものってことになるのかな、えっとえっと……その両者の違いはどこで見分ければいいんだろう。 「それは、やっぱり男についてるか女についてるかで……」 期待した答えを返さない私に、オジサンは呆れたように反論した。 「それじゃあ堂々巡りじゃねーか。そうじゃないだろ、単純な違いは精液を出して女を妊娠させられるかどうかだろ」 そうだ生殖機能の有無。なんでこんなオジサンに指摘されないといけないのだろうという悔しさがあって、私は悔しくて臍を噛んだ。いくら嫌な男の言葉だと言っても、オジサンの方の的確な答えであることを認めないほど、私は狭量ではない。 「それは、オジサンの言うとおりです」 「だろう、だったら確かめるのは簡単。アヤネちゃんはチンチンって主張しているこの俺のクリトリスで、この若奥さんとセックスしまくって妊娠するかどうか確かめるのが一番簡単じゃないか」 若奥さんと言われて、俯き加減で涙をこらえていたエレナさんがビクリと肩を震わせた。そうは呼ばないって約束してたのに、本当にデリカシーが無い男だ。
「というわけだから、エレナ。ちょっと人妻マンコ貸してもらえるかな」 「だからあの、本当に妊娠したら困るんです!」 さすがに貸してくれといって、じゃあどうぞとは行かないらしく強く拒絶するエレナさん。妊娠の危険があるなら、フェラチオとはわけが違う。 そんな困惑の様子もお構いなしに、抱きついて股間をすりつけているオジサン。 「なんで困るんだよ。妊娠したいから、基礎体温をつけてるんだろう?」 「それは、旦那様の赤ちゃんだからです。他の男の胤で妊娠なんかしたら離婚されちゃいますよ」 ふーんと、オジサンは何がツボに入ったのか、また小憎たらしいニンマリ笑いを浮かべた。 「いまどき胤なんて言い方、時代劇みたいじゃねーか。やっぱりお嬢様育ちっぽいな」 「そんなこと……。ありません」 否定の仕方が上品で、やっぱり育ちのよさを感じさせる。 「ハハハッ、そんなお嬢様にプレゼントだ」 オジサンは、エレナさんの手にゴムの蓋のようなモノを手に握らせる。 「これなんですか……」 初めて見たらしく、物珍しそうに手で摘まんで眺めているエレナさん。ちなみに、私も初見だった。一体なんだろう。 「ペッサリーという避妊具だ。子宮口にかぶせて使うんだ」 エレナさんの顔がパッと明るくなる。避妊してくれるのだと思ったのだろう。しかし、その笑顔はすぐに曇ることになる。 「こんど旦那とセックスするときにそれを使え」 「えっ……今使うんじゃないんですか」 当惑した顔をするエレナさん。こっちを向かれても困る、オジサンの言うことは全くワケが分からない。 「何を馬鹿なことを言ってるんだ、俺とのセックスに避妊具を使ったら子供ができるかどうか確かめることができないじゃないか」 「えっ、それはそうですけど?」 エレナさんは、眼を泳がせて口ごもる。 「いいか、万が一にも俺の種と旦那の種が混ざって、どっちの子供か分からないなんてことになったら困るだろう?」 「それは、もちろん困ります」 当たり前だ。 「だから、今回の排卵日は旦那とのセックスの時にそれを使って、旦那の精液が子宮に入らないようにするんだ」 オジサンはとんでもない要求をさらりと口にした。私も、当事者のエレナさんも唖然としている。
「ええっ、それじゃあ……あべこべじゃないですか」 そう気を取り直したエレナさんに当然の如く反発するのを聞いて、オジサンはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。 「そうだ、あべこべをやるんだ。あべこべでイイんだよ」 エレナさんは混乱したように、目を白黒させている。オジサンはそんなエレナさんの混乱に乗じて、畳み掛けるように叫ぶ。 「お前は、旦那以外の男に中出しされるような淫乱女なのか?」 「いいえ、違いますぅ!」 「じゃあ、あべこべだ。今から中出しされるお前はあべこべでないといけないんだ」 「あべこべ……あべこべですか?」 エレナさんは口の中で、確かめるようにあべこべと呟いた。 「いいかよく聞け、俺は女だからお前は妊娠しない。だが、そもそもお前は貞淑な人妻なんだろうから、元々が夫以外の誰ともセックスするわけがないんだ」 「そうです、そうですよ、こんなのおかしいです!」 エレナさんは細い首がちぎれてしまうんじゃないかと言うほど、怖いほどブンブンと上下に振っている。頭を激しく振り乱すから長い髪が乱れる。 「だから、今だけは、あべこべになってるんだ」 「今だけあべこべ?」 首の動きがピタリと止まって、だらんと髪が垂れる。暴れる身体を後ろから抱きすくめながらその耳元に、オジサンはあらぬことを囁く。 「エレナ、普段のお前とは真逆になるんだ。貞淑は淫乱、貞節は裏切り、拒絶は歓待に変わる。さあ、その濡れそぼった穴を開け!」 「えっ? ああーッ」 エレナさんは強引に、後ろから挿入されたようだった。ガッツリとハメられて、身動きが取れなくなる。 「ちゃんと濡れてるじゃないか、マンコはもうすでにあべこべになってきてるな」 「違います、抜いてください……」
後ろからエレナさんの形の良い乳房を激しく揉みしだくと、ゆっくりと力強く腰を叩きつけてオジサンは叫ぶ。 「そうじゃないだろ、いつもと逆って言ってるだろッ!」 「えっ、逆。ああっ、挿れてください……」 そう聞いてオジサンは嬉しそうに叫んだ。 「そうだよ、それでいいんだ。普段とはあべこべだからな」 ゆっくりと腰を蠢めかせるように動かし始めた。傍目から見てる私が見ても赤面してしまうぐらいのイヤラシい動き方。 「あべこべっー あああっ でもこんなのって」 やがて腰の蠢きは早くなる。オジサンはパンパンと腰を打ち付けるようにして、人妻の具合を愉しんでいるようだった。 「いいんだよ、ハァハァ、普段が人間なら今のお前は盛りのついた猫だ」 「猫、猫ですか……、にゃぁー?」 なぶられるまま、オジサンの言葉に翻弄されてエレナさんは狂乱している。まるで操り人形のようにされるがままに身体を自由にされて、その度に長い軽そうな髪が、フワッフワッと私の鼻先で揺れた。 「ほら、もっと盛れッ! もっと求めろおッ!」 「あああああ――ッ!」 エレナさんは叫び声を上げると、自ら求めるように腰を使い始めた。ジュプジュプと厭らしい音が響く。雌の匂いが、汗と共にエレナの身体から立ち上って充満していく。 「ああっ、いい具合だぞエレナ。気持ちいいか」 「気持ちイイにゃあああ!」 獣のように腰を打ち付ける。 私は、目の前に展開される光景に目を疑った。 さっきまで、貞淑だったはずのエレナさんが淫乱女になってにゃあにゃあ喘いでいる。 後から思えば、私は止めるべきだったのかもしれない。 それでも、予測不能意味不明の現象を目の前にして、人は硬直する。 起きた現象を理解しようと考えてしまう。 それは、やや早漏気味らしいオジサンが人妻の媚肉を味わい尽くすのに十分な時間だった。
「くそ、もうイクぞ。どこに出して欲しいんだ」 「中に、中に下さいにゃああああ!」 私がハッと気がついたときにはすべてが遅い。 「おっし、俺の子供を妊娠しやがれメス猫!」 「ふにゃあああ!」 オジサンがガクガクと腰を振るうと、満足気に鼻息をすぅーと吐き出して動きを止めた。男が感極まった気持ちよさそうな、とても気持ち悪い顔をしている。 これはつまり、オジサンがエレナさんの中に射精してしまったってことなのだろうか。あまりに唐突な展開すぎて、私は理解がついていけない。 「これは……」 もう言葉にならなかった。なぜ、オジサンの言われるままにエレナさんは発情してしまったのか。 なぜ急に身体を許してしまったのか。 「ウフフッ、私夫以外の人に中に出されちゃった……にゃあ」 まだ猫が残っているのか、エレナさんは猫の鳴き声を上げると、ぐたっと電車の床の上に転げた。 オジサンが腰を引くと、ポッカリと穴の開いたマンコからドロっと白い精液が床に零れた。 「さて、アヤネちゃん。これで俺が女だってわかったかな」 「何を言ってるんですか、わかりません……」 オジサンは私の答えに、芝居がかった仕草で嘆息すると手を広げるジェスチャーをして後ろの女たちに叫んだ。 「しょーがねーな、次はお前らの出番だぞ!」 嘘でしょうまだ続くの? どうしようと思ったけど、私にはどうしようもないことにすぐ気がつく。オジサンをもう女っだと認めてしまえばいいのかな。そうすれば、止まるのかな。 でも嘘を付くなんて……、そう迷っているうちに新しい宴が始まってしまった。
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序章「女性専用車両 OL編」 |
女性専用車両に、でっぷりと太ったオジサンが乗り込んできた。ヨレヨレの背広の中年サラリーマン風のオジサンは、女性専用車両だというのに、気持ち悪い笑いを浮かべて周りを見回している。 周りが女性ばかりだから、間違って乗車したにしてもせめて申し訳なさそうにすればいいのに。最悪なことにその男は、辺りの女性をじっとりとした視線で眺めて、ニマニマしている。
私は「ふうっ」とため息をついてから、オジサンに声をかけた。 「ちょっと貴方、ここは女性専用車両なんですよ」 「だからなんだよ?」 オジサンはイヤラシイ笑いを崩さずに返してくる。 自分で言うのも何だが、私――立花アヤネは、自分で嫌になるぐらい正義漢の強い女だった。 だから、周りの人が黙っていても、こんな光景を見ると我慢できない。 「なんだよって、女性専用車両です。意味が分かりますか。男の人は乗っちゃいけない車両なんです」 「ええ、意味は分かるよ。だから俺も乗ったんだ」 言うに事欠いて、確信犯らしい……。いやこう言うのは、故意犯って言うんだと大学の一般教養の教授が話していた。いや、そんなことを考えている場合じゃない。 「あんまりふざけたことを言うと、車掌さんを呼びますよ」 「君こそ、フザケてるんじゃないか。変な言いがかりをつけるのは止してくれ」 話にならない……。私が怒りを感じて、さらに叫ぼうとすると隣のメガネの知的なOLが声をかけてくれた。スラっとした身なりで、理知的な顔立ち。つんとすました気の強そうな美人で、ちょっと苦手なタイプだがこんな時はその刺々しさが、頼もしい味方に思えた。 「ちょっと、貴方たち何を車内で騒いでるんですか」 良かった、これで二対一だ。ここは周りは女性ばっかりなんだから、オジサンに味方は居ないのだ。騒ぎにさえなれば、オジサンに勝ち目はない。私は安心して、OLに感謝の微笑を向けた。 「ありがとうございます、このオジサンが女性専用車両に勝手に入ってくるから……」 「貴方……。さっきから何を言ってるの? この方は女性じゃない」 OLは、狐につままれたようキョトンとした顔で私を見つめてくる。 「えっ……。どう見てもオジサンじゃないですか」 辺りの女性を見回しても、私に賛同を意見を返して来る人は誰もいない。私のほうが、何を馬鹿なことを言ってるんだという冷ややかな眼で見られている。こんなことってありえない。 「疑いは晴れたかな?」 オジサンは満面の笑みで、勝ち誇ったように胸を張っている。クソッ……。 「誰がどう見ても、貴方はオジサンですよっ!」 私が叫んでも、誰も相手にしてくれない。件のOLは、私の顔を気持ち悪そうに見つめて顔を背けた。 「ふーん、まだ疑ってるみたいだね。俺は、こういうモノだよ」 男が差し出した名刺には『株式会社DLO 資材課長 中畑道和』と書かれている。 「やっぱり、男じゃないですかっ!」 おもいっきり男の名前だ。 「ミチカズって読むんだ。ミッチャンと呼んでくれてもイイよ」 「誰が呼ぶかっ!」 「ちなみに四十二歳独身で、彼女募集中だからね」 突込みどころが、多すぎて私は絶句してしまう。こんなふざけた男と関わりを持ってしまうとは……。マトモに相手をしてむかつくだけ損というものだ。やっぱり黙って口を出さないほうがよかったかと、今更自分のそんな性分を後悔する。 「なんで黙ってるんだ。こっちが自己紹介したから、紹介しかえすのが社会人のマナーじゃないのか」 こんなハゲデブオヤジに言われたくないけど、確かに正論なのでしょうがない。 「私は、立花アヤネといいます。西應大学の二回生で、歳は二十歳です」 「ふーん、アヤネちゃんか。可愛い名前だね。学生なら礼儀を知らなくても仕方がないな。でも、二十歳を過ぎたら社会人なんだからあんまり失礼なことを言ってはいけないよ」 なんで、こんな貧相なオヤジに威張られないといけないのだろう。 それにしても、不思議なのは明らかにオジサンなのに周りの女性がみんなオジサンを女性を認識していることだ。私のほうが、どこかオカシイのではないかという気にさせられるぐらい、それがなんだか怖い。 「それであの、なんでオジサンは女性だと周りに思われてるんですか」 周りに聴かれたくなくて、小声でオジサンに語りかける。オジサンは、さも心外という顔で大声を張り上げた。 「お互いに自己紹介までしたのに、君はまだ俺を男だと思ってるのか!」 「ちょ、ちょっと大きな声を出さないでください……」 周りの女性の非難げな視線が、なぜかオジサンではなく、私に突き出さって居たたまれない。 「これはしょうがないな、俺の名誉のために証明しないと……」 オジサンは上着を脱いで、ネクタイを緩める。止めるまもなく、シャツのボタンを剥ぎ取るようにして上着を脱いだ。 「なっ、なんでブラしてんの!」 私は周りの眼も気にせず、思わず叫んでしまった。 「本当に失敬だな君は、女性ならブラジャーをつけてるのは当たり前だろ」 それは女性なら当たり前だけど……オジサンはピンクのブラジャーをしていた。それがまた変態的な意味で似合ってるから気持ち悪い、モジャモジャの胸毛がはみ出てるよ。 「ほら、ブラジャーも外してオッパイも見せてやるよ。どうだ、オッパイだってちゃんとあるだろう。これのどこが男だって言うんだよ」 そんなのただオジサンがでっぷりと太ってるだけだ。 私が不満げにため息をついていると、オジサンは仕方が無いなと呟いてベルトを緩め始めた。 もう次に何が来るか予想できたので、私は必死に止めようとしたのに、背広のズボンと一緒にトランクスも降ろした。私の目の前に、オジサンの勃起した見事なチンチンが現れた。ズルムケで、亀頭の先っぽがやけに綺麗なピンク色なのがムカつく。 「さあ、これでも俺が男だって言うのかよ!」 「ちっ……。チンチンついてるやんっ!」 私は、もう恥も外聞もなく叫んでいた。なんでこのオジサンは女性専用車両で全裸になっているんだ。誰か、何とかしてくれー。私の心の叫びは、どこにも届かない。 だって周りの女性客は、黙ってる。私ひとりだけがオカシイと思ってるみたいなんだもの……。 私は不意にこの理不尽な現実から逃げ出したくなって窓の外を見るけれど、まだまだ駅までは長い道のりだった。痴漢の心配もない。安心出来るはずの女性専用車両が、私にとって敵地になるなんて想像を絶していた。
※※※
「ちょっと貴方、さっきから見てたら女性を裸にして何をやってるの。電車は、そういうプレイをする場所じゃないのよ」 さっきの知的でちょっとエロい感じのOLが、もう我慢出来ないという感じで注意してきた。もちろん、オジサンではなく私に向かって怒っているのだ。もう嫌になる。 「だって……。だって、オジサンが勝手に脱ぎ始めたんだもん」 「さっきから見てるけど、貴方が悪いわよ。勝手に人を男だとか言いがかりをつけて」 なんで私が怒られないといけないのだろう。理不尽極まりない。 「だって、見てくださいよぉー。オジサンにはチンチンついてるんですよ。これをどう説明するんですか」 確かに、男に見える女性もいるかもしれない。だがチンチンが付いている女性は存在しないはずだ。仮に女性だとしても、男性器が付いている女性ということになり……えっと、つまりやっぱり男性ということになる。そういう意味でやっぱり、チンチンは男のシンボルなのだ。 「バカねえ、貴方本当に大学生なの? 西應大って言ったらかなり賢いんでしょ」 メガネOLは、私のことを鼻で笑った。西應大は、このあたりではトップクラスの大学だ。学歴の高い女なんて、モテないから就職に有利ぐらいしか利点ないんだけど。どうもこの知的銀縁メガネOLは、学歴コンプレックスがあるんじゃないかと私の女の勘が察知した。 出身大学を聞いたとたんに、やけに突っかかってくる人は結構いるものだ。おそらくこのOLは、出身大学が西應より下位ランクだから私に厳しいのだろう。私は学歴で張り合う気なんて無いのに、やたら高い学歴がかえって邪魔になると下唇を噛み締める。 「これがおチンチンじゃないなら何だって言うんですか」 オジサンの汚い肉棒を指差して、私が言うとメガネOLは胸を張ってこう答えた。 「何って、女性についてるんだからクリトリスに決まっているじゃないのっ!」 私の現実がガラガラと瓦解する音が聞こえた。 「こんな大きなクリトリスが、あるわけないじゃないですか……」 クリトリスっていうのは、私にもついてるけどほんとにコマメ程の大きさだ。しかも皮を剥かないと、こんなズルムケにはならない。 「あら、やっぱり見た目通り子供なのね。クリトリスっていうのは、男とのセックスとかプレイで刺激されると大きくなるものなのよ」 知的OLメガネが、私に小馬鹿にした風に言ってくる。クソッ、見た目通りは余計だ……。処女で悪かったね、勉強出来すぎて男に敬遠されて、彼氏居なくて悪かったわねっ!「でも、それにしたって大きすぎ……」
なおも抗弁しようとする私を手で抑えて、OLはタイトな赤いミニスカートを剥ぎ取るとストッキングと一緒に、深紅のパンティーも脱ぎ捨てた。高そうなパンティーしてやがるな、この淫乱淑女め。 「……でもないのかっ!」 私の中指ぐらいの大きさのクリトリスが、メガネOLのビロビロの割れ目からはみ出ている。うわー、大人のアソコってこんなんなんだ。清楚に見えたのに、こんなにクリトリス大きいなんて……。 私はオジサンのアソコを見たのとはまた別の意味で、世の中がもう信じられなくなった。中指ですよ中指、オジサンのチンチンとは別問題として信じられない大きさだ。 もちろん皮もズルムケで、マンコから突き出してる赤黒い肉棒をこすりながらOLは「どう、触って確かめてみる?」と聞いてきた。 「その件に関しては、謹んでお断りさせていただきます……」 最初は清楚で知的だと思った、とんでもない淫乱OLは勃起したクリトリスをさすってくすんくすん鼻を鳴らしている。 「なぜか、クリトリスを刺激すると私は鼻がむずがゆくなるのね」 「いや、聞いてないです……」 「クリトリスを調教されるのが好きで、彼氏に掃除機で吸ってここまで大きくしてもらったのよ」 「いや、だからそんなこと聞いてないです!」 真剣にムカつくから、彼氏自慢やめてください。 知的あらため、痴的OLはくすんくすん犬みたいに鼻を鳴らしながら、クリトリスをこすり続けた。まだ大きくなるみたいで、確かにOLのクリトリスはまるで小さな男の人のアソコみたいに鎌首を持ち上げている。 同時に、指を自分の女性器に滑りこませてヨガっているのが女の人のオナニーって感じだが。 「で……。どうなんだアヤネちゃん。俺が女だって認める気になったか?」 おチンチンを勃起させたままのオジサンが、私にそう聞いてくる。いいからお前はさっさとその粗末なモノをしまえよ。風邪をひくよ、どうでもいいけどー。 「認める気もなにも、もう無茶苦茶じゃないですか」 「だから、俺が男か女か聞いてるじゃないか」 「男ですよ、男ですっ!」 それを聞いて、周りの女性客が私に非難げな視線を向けてきた。 「チッ」とか舌打ちする人までいる。何だこの空気、何だこの空気! オジサンはわざとらしくため息をついて、ニンマリするとメガネOLの肩をポンと叩いた。 「おい、まだこのお嬢ちゃんは認める気にならないんだってさ」 「はあっ……。えっ、ああっ……どうしましょう?」 さっきよりも柔らかい口調で、痴的OLはオジサンにしなだれかかる。さっきから、OLのマンコからポタポタと愛液が漏れてるんだけど、なんで電車の中で本格的にオナニーしてるのこの人! 「そうだなあ、俺のこれが男のモノじゃなくて、女のクリトリスだって証明する方法がなにかあればなあ」 「そうねえ、女のクリトリスも男のオチンチンも大きさが違うだけで……。あっ、そうだ私は今日すごく危険な日なんですよ」 「ほおっ、そいつはいい!」 オジサンは嬉しそうな声を上げた。 「その大きくそそり上がったクリトリスを、私の危険日のマンコに入れたら女の人だって証明になるかも……」 痴的メガネOLが全部言わない間に、興奮したらしいオジサンは「おいっ、そこらへんどいてくれ」と座席から、座っている人たちをどけた。ベット替わりに、痴的メガネOLを座らせる。 うあー、オジサンのチンチンぴくんぴくんしてる……。
「ちょっと、そこのおバカな西應女子大生!」 座席に組み敷かれながら、メガネOLが私に向かって叫ぶ。 「アヤネです……」 「アカネでも、ハガネでもいいけど」 「いや、だからアヤネですって」 「どうでもいい! 私は貴方の為にやるんだから、ちゃんとこっちにきて見てなさいって言いたいわけ」 OLがうるさいので、私はオジサンとOLのセックスを見学するハメになる。いや、ハメてるのはオジサンたちだけど……。 「だけど、超危険日って言ったって、お前は彼氏いるんだろ」 オジサンは、自分の種で妊娠したかどうか解らないじゃないかと言う。 「私の彼はドSだけど、紳士だからちゃんとコンドームつけてくれるの」 「ふーん」 オジサンが深みのある笑みを浮かべた。 「本当は、たぶんまだ遊びたいから子どもが出来たら嫌だと思ってるんだと思う。私だってそうだもん。子どもなんて出来ちゃったら、仕事続けられないし……あんっ」 オジサンはゆっくりと、勃起したカチカチのイチモツをOLの割れ目に挿し込んだ。私も嫌々とか思いながら、初めて間近で見るセックスに興味津々だった。 「結構こなれてて、良いマンコだな。彼氏とも相当やってるんだろ」 オジサンがパンパンと音を立ててピストンしながら、OLの耳元で囁く。ああっ、この人達電車の中で、本当に生でセックスしてるよ。 「彼氏とは三日おきにーっ、やってるけどぉー」 先程までの口調と、ぜんぜん変わる。女はやっぱりセックス中は違う。OLは、頬を上気させて気持よさそうに喘ぐ。 「あっあっ……そこぉーグリグリ気持ちいいいいいっ!」 アンアンと甘えたような喘ぎ声をあげるOL。清楚に見えるほうがいざ乱れるとエロいのだと分かる。痴的OL恐るべし。 「オジサンの方が、太くて奥に当たるから気持ちいいわ……」 オジサンは、OLの上着を脱がしてポロンとオッパイをむき出しにした。BかせいぜいCカップってところかな、乳首はピンクで驚いたけどオッパイの大きさでなら私は勝ってる。いや、そんなことで勝ってもしょうがないんだけど。 「お前のオッパイも、小ぶりだけどなかなか揉み心地いいじゃないか」 小さいオッパイを揉み潰すように、握りしめてオジサンは腰を振るう。 「褒めてくれてありがとう、はぁ、乳首もっとしてぇ……」 乳首をギュッとつまみあげられて、また嬌声をあげる。 「こぶりなオッパイは、やっぱり感度も良いんだな」 「うん、彼氏も褒めてくれるのよぉ」 他の男とセックスしながら、彼氏の話を出来るOLの気持ちがアヤネにはよく分からない。いや、オジサンは男じゃなかったんだっけ。えっと、とにかく彼氏の話ばっかりでムカつく女性だった。
「さてと、じゃあそろそろ中に出すかな」 「うん、来て来て……」 OLは、メガネもズレて艶やかで綺麗に決めた髪も無茶苦茶になりながら、ギュッとオジサンの太い首根っこを抱きしめた。ラブラブの彼氏より、あんなブサイクなデブオッサンのほうがいいんだろうか。 「なんだ、お前の中は熱々だな。そんなに俺の赤ちゃんが欲しいのかよ」 「だめっ、赤ちゃんはダメよっ!」 あれほど感じているのに、手足をばたつかせて拒絶するメガネOLは滑稽だった。 「なんでダメなんだよ、お前もう排卵してるだろ。さっきからこりこりと子宮口が先っぽにあたってるんだけど」 「そんなっ、でも赤ちゃんは困るわ。彼氏に捨てられちゃう」 「お前みたいないい女、孕んだからって捨てねえだろう」 「そうかしら……」 まんざらでもないらしく、痴的OLは暴れるのを止めた。 「そうだぜ、案ずるより産むがやすしって言うだろ。ガキができたって言ったら案外、覚悟を決めてくれるんじゃねーの」 「そうかもしれないけど、でもオジサンの子どもじゃどっちにしてもダメよね」 「そこに気がつくとは、やっぱお前頭が良いな。じゃあ、タップリと中出しされて受精はするけど着床はしないあたりで手を打っとくか」 「えっ、そんなことが出来るの?」 興味深げに、痴女OLのずり落ちたメガネが光った。そんなことが出来るなら、避妊なんて簡単ではないかと。 「やり方は簡単だ。まず、心から俺の赤ちゃんが欲しいと思う」 「うんうん」 「妊娠したら、絶対に堕胎しないでちゃんと産む」 「わかった、それで?」 ドンと腰を突きあげて、オジサンはOLのオッパイをギュッと握りつぶした。 「このちっぱいで、母乳をピューピューだしてガキを元気に育てあげるこった!」 「はぅ!」 オジサンの腰の動きが早くなった。そろそろ限界なのだろう。 「ほら、出るぞ。ちょっとでも妊娠したくないって思ったら着床しちゃうから気を付けろう!」 「あうっ、あうっ、わかったっ!」 「ほら卵子にぶっかけてやるぞ、孕め!」
ドクンドクンと音が聞こえてくるほどに、タップリと腰を落としてOLの蜜壺に精液を注ぎこむオジサン。
「あううっ……赤ちゃん、赤ちゃん出来ちゃう……」 淫乱OLは口からヨダレを垂らしてヨガっている。うわ言のように、赤ちゃん赤ちゃんとつぶやいている。それがさらに彼女の官能を高めているのだろう。 女の因果って怖いものだと、性経験の無いアヤネはゾッとした。 「ふうっ、久しぶりだったから濃いのが出たな」 OLから柔らかくなったイチモツをプルンと引き抜くと、オジサンはやりきったという満面の笑みを浮かべた。 そうして、立ち上がると脱ぎ捨てたスーツのポケットから、マジックペンを取り出してキュッとキャップを外した。 何をするのかと見ていたら、メガネOLのほっそりとしたお腹にキュッキュと何か書いている。 『中出し便所女 種付け済み』 オッサンは、そんな卑猥な文字を書いて楽しそうに笑うと、私に振り返った。よく書けてるだろうという自慢気な顔。 「ちょっと、こっちに近づいてこないでよ!」 私は怖くなって、よろけた。 射精したというのに、ぜんぜん萎えないチンチン、大きなタマタマをぶらぶらさせながら私に聞いてくる。 「さあ、アヤネちゃん。これで俺が女だって分かっただろう?」 そんなこといわれても……私の答えは、決まっているではないか。
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