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E小説(中出し・孕ませ・時間停止・催眠・環境変化など)
エロ小説のサイトですので18歳未満の方はお帰りください。傾向はマニア向け、作品中のほぼ100%中だし妊娠描写、付属性として時間停止・催眠・環境変化などです。
後日談4「身体のこと」
 季節外れの台風がやってきて真夏がぶり返したと思ったら、今度は寒波がやってきました。まったく近頃の地球の気候はどうなっているんでしょうね。
 なんでも夏がいつまでも暑いと冬は急激に寒くなるそうです。放射冷却みたいな理屈なんですかね、十二月の晴れ渡った空は青々と高く、空気は冷たく澄んでいます。
 田中正志がマンションの他の女全てと手切りを終えてからもう幾日も経ちました。
 そして今日も、深谷家の静かで温かい雰囲気が漂う寝室で、田中正志と深谷茉莉香がお互いに一糸纏わぬ姿となってふざけあうようにして睦み合っていました。
 恋人同士みたいに、あるいは若々しい夫婦のように。
 もちろん久しく他人行儀にしていたわけですから、すぐに打ち解けるというわけにもいきません。
 ですが何度か触れ合う回を重ねるごとに、二人は昔の調子を取り戻して茉莉香も正志のことを苗字ではなく元のように名前で呼ぶようになってきました。
 正志は一度はもう完全にスッパリと茉莉香のことを諦めていたわけで、最初はなんとなくバツが悪い気持ちでしたが、耳元でくすぐられるように「正志さん」と呼ばれると「茉莉香」と返すしかありません。
 何度か名前を呼び合い茉莉香の柔らかい身体をまさぐり甘い唇を吸うことで(そうだったこんな親しくて温かい関係だったのだ)と正志は思い出しました。身体が覚えているってやつでしょうか。
 そうなってしまうと、心のどこかに蓋をして溜まっていたやるせない思いが止めどなく溢れでて、正志は茉莉香の柔らかい身体をもうどこにもやらないと強く抱きしめます。
 やるせない気持ちをそのまま茉莉香の身体にぶつけるのです。肌から伝わるその強い気持ちを茉莉香は優しく手の平で受け止めて、硬さを確かめるように握りしめて、くすぐるようにその柔らかい先っぽを指で擦りました。
 茉莉香の指が正志自身の先っぽを弄ると、止めどなくお汁が溢れてきます。指ですくい取るようにして先走り汁をぺろりと舐めると、少し辛いような酸っぱいような味がします。茉莉香にはもう慣れ親しんだ味。
 彼女はそのまましゃがんで、固くそぼった正志自身の先をぷっくらした唇で咥えると、その溢れ出る想いをチュルッと音を立てて啜りました。
「ううっ……」
 正志は小さく呻き、そんな淡い刺激だけでドピューッと呆気無いほど簡単に放精してしまいます。いくらなんでも早すぎですけど、我慢しないで惜しげも無く出してしまうほど安心しきっていると言えるのかもしれません。

 茉莉香は慌てること無くどっと溢れでた熱い精液を、長い間に溜まった気持ちと一緒にお口の中に全て受け止めて、口の中いっぱいに溜めて濃い味を堪能します。
 そして、そのままコクリと喉を鳴らして正志の熱いお汁を飲み下しました。
「ごちそうさまでした」
「ああ……ありがとう」
 正志は満足げにため息を付くと、ベットに腰を下ろしました。

「なあ、お前の身体のこと、夫はなんて言ってるんだ」
 正志の柔らかくなった陰茎を舌で綺麗に舐めとっている茉莉香に正志はそう聴きます。唐突な質問でしたが、前々から聞きたかったことをようやく尋ねるみたいな空気もありました。
「えっ、身体ですか? 確かに赤ちゃん産んだから体型も変わってしまったし、乳房もこんなですし、乳首も大きく黒くなっちゃいましたけどね」
 茉莉香もまだ授乳中の経産婦ですから、ピンク色だった乳輪も大きくなり黒くなっています。乳首は、子供に吸われていることもあるだろうし、妊娠中に散々と正志に嬲られたせいで伸びきって長乳首になっています。
 それでも大ぶりのツンと上を向いた乳房に、くびれたウエストからヒップにかけた優美さは一子がいるとは考えられないほど奇跡的なプロポーションの維持と言えます。むしろ肌の張りは出産前より向上しています。
 正志の贔屓目だけではありません。それは何が茉莉香の肢体をこうまでも美しくさせたのか、美容の秘訣を小一時間は問いただしたくなるほどです。だからこそ、肥大化した乳首とそして下腹部にある女性器からはみ出している一部分が目立ちます。
「いやいや、乳首もそうだけどさ、俺が言ってるのはクリトリスのことだよ」
 正志の指摘に、俯いた茉莉香の頬がすっと紅色に染まります。
 そして、少し言いにくそうにつまりながら話し始めました。
「これはその、夫に聞かれたら授乳のために乳首が大きくなったのと同じように、出産に伴う身体の変化だって説明しようと思っていたんです」
 その説明もちょっと、いやかなり無理があるような気がしますが、それよりも正志にはもっと気になるところがあります。
「説明しようと、思っていた?」
 引っかかる言い方です。
「ええ、そうなんですよ……。当然その夫とは夜の営みをしてますから、見てすぐ分かると思うんですけど」
 夫と『してます』という言葉を聞いた瞬間、正志は胸のあたりがズキリと痛みました。

 この場合、間男は正志の方なのですけれど、茉莉香が夫と夜の営みをすることはごく当たり前のことなのですけれど、やっぱり茉莉香が他の男に抱かれていると聞いていい気持ちはしないのです。
 嫉妬の炎は簡単に消えるものではありません。そもそも、その独占欲が茉莉香の乳首とクリトリスを肥大化させてしまった原因でもあるわけなのですが、胸の奥に燃えるわだかまりを抑えつけて、正志は続けます。
「君の旦那は、自分の妻のクリトリスがそんな風になってても何も言わなかったわけだな」
 憤懣やるかたないと言った口調です。正志が言える義理ではないと思うのですが。
「はい……」
 茉莉香の方も、なぜか申し訳なさそうに小さく頷きました。
 赤黒く赤ちゃんのペニスぐらいの大きさに肥大化して、皮が剥けっぱなしになった茉莉香の大きな陰核。夫なら絶対に気が付かないわけがないのです。
 旦那が気にしないということであれば、正志はむしろホッとすべき立場のはずです。
 それなのに悔しいような、憎らしいようなそんな仄暗い憤りが胸にどんどんと広がっていきます。茉莉香の身体の変化を無視されたことで、茉莉香の夫、義昭に対するたった一つのアドバンテージが真っ向から否定されたような気がしました。
 それは言葉にしてみると(お前はそんなに余裕なのかよ、なんで茉莉香のことを見てやれないんだよ)という怒りなのでしょうか。
 全く自分勝手な言い分としか表現しようがありませんが、正志の素直な思いでした。
「よし茉莉香、今度は俺の舐める番だな。股を手で開いてクリトリスを差し出せ」
「はい……」
 茉莉香は従順に、ベットの上でしゃがみ込むと屈んだ正志の前に股間を晒しました。一年ぶりの茉莉香のオマンコには、恥毛が生えそろっています。
 外陰唇の周りに生えそろった恥毛があっても分かるぐらい、男の中指ほどの大きさに成長した茉莉香の赤黒いクリトリスの頭の先は剥けきっていて、茉莉香が自らの手でギューと押し開いた秘裂から飛び出ています。
 肥大化して充血した陰核はグロテスクでしょうか?
 いえいえ、正志にとっては自分の手で育てた可愛い小豆との再会です。愛おしい茉莉香の小粒の表皮を傷つけないように、指を唾液を馴染ませてから優しく擦ります。

「クリオナは、まだやっているのか」
「はい、あの日からも毎日欠かさずに……してます」
 あの日というのはやはり、正志と茉莉香の関係が終わった日でしょうか。それからも茉莉香は毎日自分で摩っていてくれていた。それが、正志にはとても嬉しいのです。
 だからこそ皮が剥けたままでクリトリスは前と変わらない大きさで艶やかな光沢を保っているのかもしれません。
「茉莉香の旦那は、そのするときにクリトリスは弄ってくれないのか」
「夫は淡白ですから」
 そうか、やっぱりなと正志は思います。きっと茉莉香の旦那だってフェラチオはさせているはずです。
 それなのにクンニもしてやらないなんてなと正志は鼻息荒く憤ります。あるいは、男として勝てる部分がもうここにしか無いから必死になるのかもしれません。
「毎日クリトリスでオナニーしてたときは、何を考えてたんだ」
 そう言いながら、さらに潤滑を増したシコシコと擦ります。茉莉香が自らの手で押し開いたピンク色の内蔵は、すでに愛液に湿っています。
「あっ、あの、正志さんにされた時のことをずっと思い出していました」
 茉莉香は本当に久しぶりに、他の人に身体中で一番敏感な部分を嬲られる快楽に身を震わせます。
「そうか、もう今日からは自分で慰めるなんて寂しいことはしなくていいから」
 そういうと、充血した茉莉香の小豆の先に優しくキスをしました。
「あっ、ああっ」
「俺が毎日舐めてやるよ、これからずっと毎日茉莉香が満足するまでずっとだ」
 正志は優しく茉莉香の陰唇全体にキスの雨を振らせます。ペロリと、小陰唇の内側の愛液の味も確かめました。
 ああー茉莉香の味だと思うと、それだけで奮い立つ思いがします。
 全身に元気が湧いてきます。
「ありがとございます、舐めてもらって気持ちいいです」
「そうか、もっと強くするから痛ければ言えよ」
 女性へのクリトリスの愛撫はフェラチオとそんなに変わりません。

 クリトリスの先をチューと吸って、舌の腹でゴシゴシとこするようにしました。
「ああっ、いいっ、自分でするより正志さんに舐めてもらう方がずっと……イイッ」
 そう呟いて、小さい嬌声と共に静かに身を震わせるようにして茉莉香は呆気無くイキました。
 控えめな茉莉香らしく自分の声と気持ちを押し殺したような、控えめで慎ましいオーガズムの震えです。
 それでも茉莉香がイッたときに吐き出す、ハァーという甘い吐息に正志は頭がクラクラとします。茉莉香の甘い息をもっと吸いたいと思って、そのまま脱力感でぐったりと仰向けにベットの上に寝そべった茉莉香を、上から抱きすくめるようにして、甘い唇を吸いました。
 抱かれることはまったく拒絶しなかった茉莉香は、なぜか口づけされると慌てて拒もうとしました。
「んんっ、だめぇ、正志さん! 汚いですよ、さっき私フェラしましたから」
 そう言えばまだ口を洗っていませんでしたね。
「いいよ、俺は気にしない」
 正志だって自分の精液を飲む趣味はありませんが、茉莉香は女神です。たとえフェラチオしたあとでも、茉莉香の口内が汚いわけがないと思えました。
 最初は「汚いです、ダメです」と拒んでいた茉莉香も、舌を絡めるようにされるとたまらず自ら求めるように舌を伸ばして正志と深いキスを交わしました。
 正志の精液は、多くの女性の証言からすると濃くて苦いらしいですが、それを飲み込んだはずの茉莉香の口内はとても甘ったる味がして美味しかったのです。
 茉莉香の唾液をたっぷりと心ゆくまで味わうと、今度はでんぐり返しにして股を開き、もうひとつの穴に舌を伸ばしました。
「あっ、そこはダメです」
 舐めたのは前の穴ではなく後ろの穴でした。
「だから、茉莉香の身体に汚い場所なんてないって言ってるだろ」
 正志が茉莉香の股ぐらに屈んで、太ももに手をついてアナルを犬のように舐めだしたのです。
「正志さん! お尻の穴は、本当に洗わないとダメですよぉ」
 またクンニされるのだと思い込んでいた茉莉香はびっくりして瞳を大きく見開いて身をこわばらせました。

 茉莉香の驚きが太ももの震え伝わってきて、正志は得意になりました。
 お尻の穴も驚いたようにキュッと窄まります、でも悪い感触ではないと分かっているから細くなった肛門に舌をねじ入れるようにして舐めだしました。
 いくらトイレがウォシュレットだといっても、穴の中までは綺麗に洗浄できていません。
「ふふ、後ろも使うのは久しぶりだがこっちはちょっと狭くなったんじゃないか」
「お尻の穴はほんとに汚いから、汚いからぁ……」
 そう言いながらも、茉莉香は身動き取れません。やられてみると分かるのですが、お尻の穴は人間の急所なのです。
 仰向けで倒れた状態でここを責められると、四肢の力が抜けてしまってどうしようもなくなります。
「そう言いながら、腸液でヌメって来てるぞ」
 笑っている正志。
「正志さん、ほんとにダメッ!」
 ついに怒られてしまいました。
「分かったよ、そう怒るなって」
 正志が解放してくれたので、茉莉香はよろっと身を起こしてから正志の広い額にメッと指を突きつけて叱りました。
「私が汚くないって言ってくれるのは嬉しいのですけど、お尻の穴は洗わないと雑菌が多いからダメですよ」
「ああ、そうだったな」
 いきなり尻を舐めだしたのは、びっくりさせたいってこともあったのでしょうが、こうやって茉莉香に怒られたいって気持ちがあったのもしれません。
 珍しい茉莉香の怒り顔が見られたのがたまらないのか、正志は叱られてる癖に妙に嬉しそうにニコニコしています。
「お尻の穴がしたいんだったら言ってくれたらちゃんと洗ってからいくらでもさせてあげますから」
 茉莉香も主婦です。衛生問題は、なおざりにしたくないってことなのでしょうか。
「じゃあ一緒にお風呂でも行こうか」
「そうですねえ、じゃあそうしましょうか」
 一歳児の娘がきちんとまだベビーベットでお昼寝しているのを確認して(茉莉香は家事も育児もありますから、暇になるタイミングを見計らって正志はやっているのです)軽くシャワーを浴びることにしました。

     ※※※

 本当にアナルセックスをするつもりなら、浣腸まできちんとして直腸まで綺麗にしないといけないのですが、今日はそこまでするつもりはないと言うので、シャワーで軽く洗うだけにしました。
「その代わりといっちゃなんだが、アナルビーズ入れようぜ」
「ああ、正志さんそれ好きでしたよね」
 茉莉香は、苦笑します。
 お互いに裸体ですから、そのままシャワールームに行って交代にお湯を浴びました。こんなことなら、あらかじめお湯を張っておけば良かったと茉莉香は少し残念に思い、頭の中のこれから注意するリストに入れておきます。
 茉莉香がシャワーのお湯でなるべく綺麗に肛門の中を洗うついでに、正志が馴染み深いアナルビーズを持って来ました。
 ひも状の糸に、大小様々のカラフルなシリコンボールがついているものです。茉莉香のおしりの穴の洗浄が終わると、正志が丹念に洗ったボールにタップリとローションをかけたものを渡してきました。
「久しぶりだけど、自分で入れられるか? 俺がお尻に挿れてやろうか」
「自分でできると思います」
 去年のことですから、できるかどうか迷いましたがアナルビーズを渡されたら茉莉香の手をお尻の穴が覚えていました。
 固くて柔らかい不思議な感触、ピンボールの玉より少し小さい程度の大小様々なボールを、プツリプツリとお尻の穴に押し込んでいきます。
 ローションの滑りのおかげか、久しぶりなのにやすやすと飲み込んでいきました。
 全部で十個の玉を完全に挿入すると、窄まったお尻の穴からは引っ張りだすための輪っかがぶら下がるだけになります。
「今日一日――」
 したり顔で宣言しようとする正志を手で制して、茉莉香は言いました。
「今日一日アナルにビーズを入れたまま過ごせばいいんですね」
 正志のやりたいことなんて聞かなくても、茉莉香は全部分かっているのです。
「よくわかってるじゃないか。お尻の穴の方は、最近してなかったんだろ?」
 もちろん茉莉香には、それが日常生活で穴を広げて具合よくして準備しておけと言う意味だと分かってます。
「だってお尻の方は……誰かは知りませんけどイタズラしてくれる人がいませんでしたからね」
 分かりきったことだから、そうやって冗談で混ぜっかえして、茉莉香はウフフッと堪え切れない笑い声を漏らしました。
 お尻の穴にたくさんの異物が入っている状態は、とても違和感があってソワソワしちゃうものですけれど、それに耐えることも茉莉香には決して不快ではありませんでした。

 シャワーから上がったあとは、コンドームを使用してのセックスです。
 茉莉香は、正志の分厚い肩にそっと手を回します。
 ゆっくりとピンク色のコンドームを被った勃起した陰茎が自分の中に入ってきます。完全に入ってしまうと、正志は優しくキスをしてきました。
 抱き合ったままで唇を重ねて、ゆっくりと腰の動きを合わせて生殖器を擦り合わせる快楽に耽る。
 軽く息を弾ませる程度の穏やかで、それでいてうっとりとした至福の時間を堪能します。二人の境界線が融け合って、まるで蕩けて一つになってしまうようなセックス。
「ああっ、正志さん」
 じわと温かいオーガズムの波が深々と埋められた膣奥から、全身に広がっていきます。満たされて、充実して、気持ちいのに、どこか狂おしいほどに切ない。
「茉莉香、茉莉香ぁ……」
 そう正志に名前を呼ばれて、不意に夫のことを思い出しました。
 新婚の頃は、夫ともこんな満たされた時間をゆっくり取れていたのだけど、忙しい日々にいつしかスレ違うようになって、ああダメと茉莉香は思います。
(いまは、夫のことは考えちゃダメ)
 夫に悪いって気持ちはもちろんありますが、それより正志に抱かれているのに他の男と比べるなんて失礼なことだと茉莉香は自戒します。
 正志の重たい体重を乗せた深いピストンが、子宮口まで突き上げてきて、ありがたいことに余計な思考を全部吹き飛ばしてくれます。
「ああっ、最高……」
 茉莉香は久しぶりにポルチオ(子宮膣部)性感帯を刺激されてたまらない気持ちになりました。
 夫だと届かない茉莉香の女の子の入り口に、正志のジャストサイズの陰茎だと届くのです。コンコンと入り口をノックされたら、頭が真っ白になってもう何も考えられなくなります。
 これだけは、夫もしてくれない、正志にしかできないことです。
 膣全体が、悲鳴を上げるようにギューと正志の硬いモノを絞りました。
「おおっ、茉莉香イクぞ」
 正志がきゅうきゅうとからみついてくる粘膜のすみずみまで屹立ですりあげて、オッパイを思いっきり掴みました。
 強く握りしめられた衝撃で、茉莉香の褐色の乳首の先からピュウッと母乳が噴き上がりました。
「ああああああぁ、お願い、中に、中にくださいっ!」
 茉莉香はもう悲鳴を上げて、中出しを懇願しました。

 ドピューッ、ドクッドクッ……

 膣は精液を絞ろうと収縮を繰り返して痙攣しますが、いつもの熱い飛沫は茉莉香の女の子の中に入って来ません。
 その代わり、膣の中で風船のようにコンドームの精液溜りが膨れて精液をシャットアウトします。
 ツルッと射精を終えた陰茎を引き抜くと、正志は手慣れた様子で根本をつまむようにゴムを外して、入り口を固く縛りました。
 ほらというように、先っぽにたっぷりと精液の詰まったピンク色のコンドームを茉莉香の鼻先にぶらぶら持ってきます。
「コンドーム入りの精液ってのも、なんかエロくていいもんだな」
「あの、中で出さなかったんですね」
 茉莉香は、不思議なものでも見たというように瞳を丸くして精液入りのコンドームを見つめています。
「避妊しろって言ったのは茉莉香じゃないか」
「そうでしたね、でも正志さんのことだからてっきりコンドームが破れちゃったとか言って中出しするものだとばっかり思い込んでました」
 そうですね、そういう印象ありますね。そうやって避妊してくれると思った女の方を慌てさせるイタズラをやるのが正志のいつものやり方ですよね。
 でも正志は茉莉香に対してはそうはしなかったということなのでしょう。
「なんだ信用がないんだなあ、少なくとも俺の方からは茉莉香の家庭を壊すようなことはしないって約束したじゃないか」
「いえいえ、信用してないってことはないんですよ。でも……」
 茉莉香は、ほんの少しだけ不満そうな顔をしています。
 正志が約束を守ってくれたのは嬉しいし、茉莉香にも今の生活を守らなければならない気持ちもあります。
 でも、茉莉香は(正志さんは私の中に出してくれなかったのか)と分かった瞬間にちょっと寂しい気持ちになったのも事実なのです。
「茉莉香の家庭を壊さないって約束を守った上で、中出しする方法も考えなくはなかったけどな」
「えっ、それってどういうことですか」
 そんな方法があるのでしょうか。たまに突拍子もない意表を突くやり方で、ルールを打ち破ってしまうのが正志という男ですから。
 ちょっと気になって、茉莉香は聴き返しました。

「簡単なことさ、俺と茉莉香が結婚して家庭を作ればいいだろう」
「なーんだ、そんなことですか」
 茉莉香が夫の義昭と別れることはありませんから、根本から不可能な提案でした。いくら茉莉香でもフフンと鼻で笑ってしまいます。この前も、正志はそんな冗談を言っていましたが茉莉香はまったく本気にしていません。
「俺が茉莉香を惚れさせて、茉莉香が夫よりも俺を好きになれば離婚するだろ。そしたら……」
 茉莉香は正志に最後まで言わせないで、被せ気味に話を遮りました。
「はいはい、前から思ってたんですけど正志さんって意外に自信家ですよね。私が夫に見放されて離婚することはあるかもしれないけど、私から夫と別れることは絶対にありませんからね!」
 ちょっと自分でもキツイ言い方になってしまって、茉莉香は内心でドッキリしました。
(なんで私はこんなにムキになっているんだろ)
 自分でも当惑するぐらい大きい声を出してしまっています。
 どうせ冗談なのだから、こんなに怒ることもないはずです。
「なあ茉莉香、オッパイ飲んでもいいか」
 不必要にキツイ言い方をしてしまったのに、正志は何の反応も見せずにちょっと困ったように微笑みながらそうお願いしました。
「へっ、ああどうぞどうぞ」
 さっき正志が力いっぱい握ってしまったから、茉莉香の左右のオッパイから溢れでいてるのです。胸から溢れてしまった母乳までもったいないと言いながら舐め啜ってから、チュパチュパと美味しそうに啜ります。
 ただでさえ巨乳の茉莉香の乳房にはたっぷりミルクが詰まっています。ちょっと絞り出したところで、吸えば吸うほど母乳はたくさん分泌されるのです。
 乳が張って張って、もう一人赤ちゃんが入ればちょうど良いぐらいに思っていましたから、正志に乳を吸われることは茉莉香にとっても嬉しいことです。
 母性に目覚めた恍惚とした表情で、正志のチクチクするいがぐり頭をイイコイイコと撫でてあげます。

「茉莉香の乳はほんとに美味しいな、甘くて濃厚で元気がでるよ」
 口だけでなく、本当にエネルギーを回復したと言うようにギンギンに股間を膨らませています。
「喜んでもらえて嬉しいです。どうせ余ってますから私のミルクで良ければたくさんどうぞ」
「じゃお言葉に甘えてもっと飲ませてもらおうかな、本当に吸えば吸うほどいくらでも出てくるね。牧場でも開けばいいんじゃないかこのミルクタンクは」
 そんな冗談を言ってくるので、茉莉香もホルスタインじゃあるまいしと笑いました。
「アハッ、さすがに他の人に飲ませる気にはなりませんね、私のは娘と正志さん専用のミルクですよ」
「おや、こんなに美味しいのに旦那は飲まないのか」
 そう言われると茉莉香の笑いが少しだけ強ばります。
「あの人は、その……だって母乳は赤ちゃんにあげるものだから大人が飲むっておかしいでしょう」
 茉莉香が妊娠しても夫は変わらずに優しいですが、胸にはあまり触れなくなってしまいました。夫がオッパイが出るのを、好ましく思ってないのではないかと密かにコンプレックスなのです。
 もちろんそれで夫に不満があるわけではないのです。だけど、女の身体から母の身体に変化してしまったことを咎められているような、少しだけ距離が出来てしまったような寂しさがあります。
「そうか、そうだな。変態な俺みたいな男しか母乳は飲まないよな」
 卑下しているのだか、自慢しているのだか、よくわからない口調でそういうとまた一心不乱に乳首を啜る作業に戻ります。
「変態っていうのはちょっと可哀想ですよね、正志さんは私の大きな赤ちゃんですよ」
 間男ではなくて、もし正志がもう一人の大きな赤ちゃんだったら誰も苦しむことはないのにと茉莉香はそんなあり得ないことを思ってしまうのです。
 いっそそうだったらどれほどいいことでしょう。それなら正志だって家族になることもできると茉莉香は思うのです。
「俺が茉莉香の夫だったら、毎日オッパイ吸ってやるのに」
「またその話ですか……」
 冗談にしてはしつこいなと茉莉香は思います。

 茉莉香は離婚しろなんて話は冗談でも怖いので、ちょっと焦った気持ちで何か違う話題に変えようとするのですが、なぜかこんな時に限って頭が空回りしてしまって思いつきません。
「俺と結婚してくれたら、オッパイだけじゃないぞクリトリスも、お尻の穴も、茉莉香の身体中を全部舐めて綺麗にしてやるよ、ずっと毎日二人で満足するまで……」
「それはまた、最悪のプロポーズですよね」
 茉莉香もさすがに苦笑しました。本当にこんな変態的な告白は聞いたことがありませんが、正志らしい冗談と思えば微笑みを誘われます。
「うーん、このプロポーズはダメかな」
「それで落ちる女の子がいるとしたら、その子も立派な変態ですよね」
 SMの女王樣みたいな人なら、毎日身体中を舐められるご奉仕を受けるというのは喜ぶかもしれませんけど。
 どちらかといえば、茉莉香は奉仕したい方でした。
「まあいいか、じゃあもう一回やろう。もちろんゴム付きで」
「はーい、どうぞ正志さんが満足いくまで私の身体を使ってください」
 正志は反り返る怒張に新しいコンドームを被せると、茉莉香の身体を抱きしめるようにゆっくりと覆いかぶさりました……。

     ※※※

 ……正志と茉莉香が仲睦まじく過ごした、その日の夜遅く。
 仕事から帰宅した夫は食事もお風呂も終えて、茉莉香の方も娘をあやしつけて眠らせてからいつもの夜の営みの時刻となりました。
 どちらから言うとも無く、そういう雰囲気になるわけですが今日の茉莉香は申し訳なさそうに断りを入れました。
「あっ、あのすいません。今日は生理がきちゃってまして……」
「気にしなくていいよ。俺も今日は仕事で疲れてたからさっさと寝るよ」
 アハハと笑うと鷹揚に、夫の義昭は手を振りました。
「義昭さん、もしよろしかったらお口でしますよ。それでしたら疲れてても」
「いや、今日は本当にいいよ。それに俺はなんかフェラチオは、あんまり好きじゃないんだよね。俺の大事な奥さんを道具みたいに使ってるみたいで気分が良くないのかなあ」
 言葉だけでなく爽やかに微笑みながら、義昭は茉莉香を抱きしめてくれます。
 その抱き方は涙が出るほどに優しくて義昭の大きな胸は暖かくて、大事にされているってことが薄い寝間着越しからも伝わってきて、茉莉香に夫への愛情を再確認させるものでした。
 やはり茉莉香の夫は優しくてカッコイイ、そう思うのです。
「ありがとございます、じゃあ生理あけたらまたお願いしますね」
「うん、でも無理しなくていいんだぞ、お前だって茉悠の世話もたいへんだろうしさ。急に寒くなってきたからお前も茉悠も体調に気をつけるように……。ああそういや、冬用の背広のコートってどうしたかな」
 身体を気遣ってくれたあとに、不意にそんなことを聞かれます。もちろんいい奥さんをやっている茉莉香は育児だけでなく家事に余念がありません。
「それなら今日クリーニングから出して、換えの背広と一緒にいつもの場所に吊るしてありますから」
「おっ、ありがと。また近いうちに出張になるかもしれないから。今度は北の方の事業所だってさ、参るね」
 義昭は、さっとカバンの整理をして明日着ていくカシミヤの暖かそうなロングコートがクローゼットに掛かっていることを確認すると、ベビーベットで眠る娘の茉悠を眺めて、しばらく幸せそうにわが子の柔らかいホッペタを指でつつくと、明日も早いからごめんと先に寝入ってしまいました。
「私もお風呂頂きますね」
 小さな声で茉莉香は床に入った義昭に声をかけましたが、すでにすやすやと寝息を立てているようで返事がありません。

 生後半年ぐらいまでは、娘の茉悠もグズがって頻繁に夜泣きしたりしたものですが、最近はそんなに手間もかからなくて、夜中にほんの少し開いたこの時間は茉莉香のささやかな自由時間になっています。
 お風呂は、本当は昼間に正志とシャワーを浴びたわけですから必要ありません。
 脱衣場で普段着にしているトレーナーやスエットやシャツを脱いで、申し訳ない程度にレースの飾りがついた妊婦用の大判のブラジャーに、パンティーを脱ぎ捨てて一糸まとわぬ裸体になると、お風呂場へと入りました。
「うっ、うううんっ……」
 そしてお風呂場から、茉莉香の小さな呻き声が響きます。
 何をしているかって?
 まるでお尻の穴から出産するように、パールビーズを引きぬいているのです。
 ローションの滑りの助けを借りても、やはり久しぶりのパールビーズは抜くのにも難儀しました。
 それだけ、強烈な刺激を与えてくれたとも言えるでしょう。
 ビーズ十粒の出産を終えると、茉莉香は言い知れぬ解放感を感じました。
 夫や娘の前で、いい母親を演じながら、お尻の穴にこんな大きな玉を埋め込んで喜んでいるなんて。
「私も立派な変態さんですよね」
 誰も見ていないのを知っていても、いや知っているからこそ茉莉香はそう一人で独白して正志のことを笑えないなと苦笑しました。
 茉莉香の出産はまだ終わりません。
 膣口に貼られた、絆創膏(ちゃんと陰毛が絡んでも剥がれやすいタイプです)を剥がすと中からツルッとピンク色のビニール袋のようなものを取り出しました。
 濡れた膣から引きぬいて、プラーンと目の前に持っていくと透明ピンクの中に白濁色の液体が溜まっている。
 そう、これは精液入りの使用済みコンドームでした。
 避妊しつつも、精液入りコンドームはプレイに利用する。さすがは変態な正志の発想といえます。
 おかげで(もし万が一膣の中で袋が破れちゃったら、夫の前でまた正志の子供を妊娠してしまう)なんてことを考えさせて、茉莉香を興奮させることに成功したわけです。

 取り出したコンドームは、きっちりと縛られていてどこからも漏れた形跡がありません。もしかしたらと思っていた茉莉香はホッとして、お口の中に精液入りコンドームを入れてクチャクチャと口の中で弄びました。
 そして、もう一つ膣からツルリと精液入りコンドームを取り出します。
 これも破れてません。
「ちょっと残念かも……」と茉莉香は呟いて、何を馬鹿なことを言ってるんだろうと首をブルブル振るいました。
 変なことを考えてしまうのは、ちょっとエッチな気持ちになっているからです。
 昼間にあれだけ正志とやっておいて、茉莉香はまた風呂場で肥大化したクリトリスをこすります。
「あっ、あっ……」
 今日はなんだか気持ちが怖いほど盛り上がっています。
 眼の前でコンドームを破いてしまうと、中から手に精液を取り出しました。
(中に入れなきゃ大丈夫だよね)
 茉莉香は膣に入れていたせいでまだほのかに温かい精液を指先になじませると、勃起したクリトリスの先に塗りつけました。
 確かにクリトリスと膣口とはほんの少し離れていますが、同じ膣の中に存在ます。
 それは限りなくギリギリアウトな行為ではないでしょうか。
「うっ、ううっ……」
 指で正志の精液を塗りつけては、クリトリスを擦り上げる行為に、茉莉香は切なくてたまらなくなります。
 口の中で弄んでいたコンドームも取り出しました。
「垂らすだけ、垂らすだけなら……」
 もう我慢できません。
 茉莉香は、お風呂場に寝っ転がると天に向かって勃起しているクリトリスの先に乱暴に引きちぎったコンドームの中の精液を垂らしました。
「ああっ、イクッ、イクッ!」
 べっとりと精液に濡れたクリトリスを擦り上げて、茉莉香は激しく身を震わせるようなオーガズムに達しました。
 クリトリスに垂らされた精液は、そのまま膣口の方にも流れていきます。
 ビクッ、ビクッとお風呂場で腰を振るいエビぞり反る茉莉香は声も出せないほどの絶頂にヨガり狂います。
 茉莉香の穴は、べっとりと膣口表面を流れていく精液をまるで欲しがるようにヒクヒクと収縮して、膣中へと精液を啜り込んでいるのでした。

後日談3「手切りの代償」
「ほら、真那ちゃん見てごらんお母さんの膣中にいっぱい白いの出てるだろう」
 正志はベットの済みでうずくまっている真那ちゃんを呼ぶと、母親の股を開いてさっきまでセックスしていた接合部を見せました。
 淫液に濡れたビラビラを指で捲ると、膣口からタップリと中出しされた白濁液がトロリとにじみ出てきます。
「これ、おじさんの精液?」
「そう真那ちゃんよく覚えていたね、お兄さんと呼ぶこともついでに覚えておいてね」
 いまだお兄さんと呼ばれることを諦めていないのか、正志はしつこいです。
 それにしても子供は吸収力が早い、教えたことはちゃんと覚えていました。
「この精液の中に、精虫ってちっさなオタマジャクシがたくさんいるんだ。それが君のお母さんのお腹の中まで泳いでいって卵と合体すると赤ちゃんになるんだよ」
「ふぇ……」
 分かったのか分からないのか、真那ちゃんは眼を丸くしてなんと答えていいのかも分からないといった複雑な顔をしています。
 正志なりに子供に噛んで含めるように教えてあげたつもりなのですが、セックスの実例を見せても目に見えない卵子と精子が受精することまでイメージさせるのは難しいことなのかもしれません。
「あの、せめて洗わせてください」
 娘の前ですがもう恥ずかしがっている場合ではないと、佳寿美は意を決して正志に懇願しました。
 すでにタップリと濃いのを出されてしまったのは仕方がないにしても、今すぐ洗浄すれば妊娠率を下げることもできるのではないかと考えたのです。
 佳寿美は負けん気が強く諦めの悪い女性です。ここまでされてもまだ諦めてはいないようでした。
「おや、おやおやおや~。佳寿美は、俺の子供を妊娠したいんじゃなかったかな」
「ううんと、このままだと気持ち悪いでしょだから」
 契約書によって『喜んで』正志の子種を受け入れなくてはならないのです。佳寿美は膣洗浄の言い訳を考えますが、この程度しか思い浮かびませんでした。
「気持ち悪いから、膣を綺麗にしたいわけか」
「したいです、お願いですから洗いに行かせてください」
 佳寿美は、少しでも膣から精液が出て行くように何度もイカされて重たい身体をベットの上で起こしてしゃがみました。
 ぷっくりと赤く膨れた陰唇からトロリ、トロリと白濁液が流れだしています。普段の佳寿美なら、お気に入りの北欧製のベットがこぼれ落ちる精液で汚れることが気にかかったでしょうが、今はそんなことどうでもいい様子でした。
「じゃあこうしよう、真那ちゃんに舐め取らせるならいいよ」
「ええっ、なんてことを……」
 中出しした精液を洗うことは許さないが、真那に舐め取らせるなら構わないというのです。
 なんという、なんという酷いことを言い出すのかと佳寿美は泣きそうに瞳を充血させて鬼のような形相で睨みつけました。
「嫌ならいいんだぜ」
 佳寿美が困っているのを見て笑っている正志、この一年怒ってもすかしても、この男には何を言っても無駄だと思い知らされているのです。
「真那、お願い舐めて綺麗にしてちょうだい」
 佳寿美は、躊躇なく娘に自分の女性器を舐めさせることを選択しました。
 事態は一刻を争います。こうしている間にも目の前にいる気持ち悪い男の白いオタマジャクシが、自分の卵子をレイプしようと子宮の中へと群れをなして泳ぎまわっているのです。
 精子の量を少なくすれば少なくするほど、望まぬ懐妊を避けられる。佳寿美は必死でした。
「ええっ、苦いのやだよぉ」
 真那ちゃんは渋面です。そりゃそうでしょう、精液が苦いのも嫌なのでしょうが、それ以前に母親の股を舐めろと言われてスゴスゴと従う子供はいないでしょう。
「いいからお願い真那、綺麗にしてちょうだい!」
 佳寿美が鬼のような形相のままだったのが功を奏したのか、真那ちゃんは気迫に押されるように四つん這いになり、しゃがみこんだ母親の股ぐらにイヤイヤ顔を突っ込んでペロペロと舐め始めました。
(自分でさせておいてなんだが……)
 背徳的な光景だなこれはと、正志はドキドキしてきました。
 録画しているビデオカメラの位置を、母親の股を舐める真那娘の揺れる小さいお尻がよく映るように調整します。
 貴重な映像とはいえますからそれは記録しておいたほうがいいでしょうね。
 正志は、そのついでに荷物から愛飲している三千円もする金のユンケルを取り出して蓋を開けて豪快にグビリとやります。
 辛くて滋味深い味わいが正志の乾いた喉を潤しました。
 こんなものを飲んでるから、精液苦いって真那ちゃんに言われてしまうのかもしれませんが、高級エナジードリンクのおかげか、真那ちゃんの幼いツルッとしたお尻のおかげか、またムクムクっと正志の股間が鎌首を持ち上げていきます。
 正志は、ベットサイドにさっき佳寿美のお尻の穴に突っ込んで気が付かないうちに転げ落ちたバイブも見つけました。
 また使えるかもしれないので、拾い上げてバイブに被せているコンドームを剥ぎ取り、新しいものに交換しておきます。

「うぇぇ、苦いよお……フェロフェロ」
 そうこうするうちにも、母親の股ぐらから溢れる正志の中出し液を真那ちゃんは舐めさせられています。そりゃ苦しいでしょう、不味いでしょう。
「お願い啜って綺麗にして、真那ちゃん後でアイス上げるからね」
 アイスぐらいで釣れるものなのかと正志は不思議に思います。
 例えば正志なら、子供の頃でも父親のチンポ舐めてくれと言われたら想像するだけでうぇっと吐き気が来ます。絶対拒否だと思うのですが、女の子は平気なものでしょうか。
 それとも、真那ちゃんが特別に聞き分けの良い純真な子なのでしょうか。
 真那ちゃんは苦いだの不味いだのと不満を述べますが、お母さんは完全に綺麗にするまで許してくれません。グズグズと嗚咽を漏らしながら、お母さんの膣の中の精液を全部啜り出して飲み込みました。
 佳寿美も、せめて舐めとった精液はペッと吐き出しても良いと教えてあげればいいのに。
 正志は後ろから、真那ちゃんの揺れるツルツルのお尻と、おしりのワレメの中央にある窄んだ小さな肛門をじっくりと観察しつつそんなことを思いました。
 真那ちゃんが正志の精液を飲んでくれるなら、それはそれで興奮するのですから正志にとっては都合がよいのでしょう。だから「飲まなくて良い」と教えないで、黙って眺めている正志も人が悪いです。
 それにしても、お母さんのバイブでほじくられたガバガバのアナルと、真那ちゃんの未開発の窄まったアナル。
 大きさも形も全くの別物でありながら、肛門のシワ、周辺部の小麦色から内側のピンク色になっていくグラデュエーションがそっくりだと正志は思うのです。
「うーんやはり母娘だな」
 そんな分かったようなことを呟きながら、悦に入ったしたり顔で正志が頷いているのがなんか若干ムカつきます。
「お母さん綺麗になったよ、もういいよね?」
「本当に綺麗になったの?」
 佳寿美は必死になって聴き返します。娘にあまりにも辛い当たりだと思うのですが、彼女にとっては懐妊するかどうかの瀬戸際なのですからしょうがないですね。
「うん、大丈夫。綺麗になったよぉ」
 素直で親思いな娘は泣きそうになりながらも、指でビラビラを開いて内側まで白いのが残っていないかどうかをしっかり確認してからそう報告しました。

「よし、舐め取りは終わったか。じゃあ二ラウンドいこうぜ」
「ええっ、なんでー! 嘘でしょう?」
 佳寿美は予想もしていないことを聞かされて目を剥きます。
「誰が種付けは一回だと言ったんだ、今日一日頑張るってあらかじめ言ってあるだろ」
「ううっそれは……、でも娘が、あんなに頑張って舐めてくれたんですよ」
 せっかく綺麗にしたのに。そう言う佳寿美の理屈もわからないでもないですが、相手は猛った獣のような男です。そんな人情が通じる相手ではありません。
「そんなの俺に関係ないしー、佳寿美が約束破るつもりなら、こっちにも考えがあるんだぞ」
「わかりました、わかりましたよぉー」
 約束破るのかと言われては、もう何も言い返せなくなります。佳寿美はベットに四つん這いになると、ほら勝手に犯せばいいでしょとばかりにお尻を突き出しました。
 どうやら、さっき正常位でやったので今度は後背位でやるつもりらしいです。
(なんだ佳寿美、口では嫌だとか言いつつ、本当はノリノリじゃねーか)
 そう正志は、内心でほくそ笑みました。
 後背位は、正常位よりも奥まで届きます。その上、バックから突いて射精すれば、子宮口は斜め下方向に付いてますから妊娠しやすくなるのです。
 それを佳寿美は分かっていないのでしょうか、それとも頭では嫌がっても感じさせてくれる男の子供を孕みたいという女の無意識がさせたことなのでしょうか。
「よし、望みどおりバックから挿れてやるよ」
「ああっ、もう、また入ってくる……、またぁ!」
 たっぷりと交合して、娘にペロペロと舐めてもらってふやけた蜜壷はやすやすとカチカチに反り返った正志の怒張を飲み込んでいく。
「奥さんさっきと一緒で、十回イケたら外に出してやるからな」
「そんなこといって、あっ、ああぁぁぁ、どうせぇ、嘘なくせにいぃ!」
 さすがに、佳寿美はもう騙されないぞと身を固くします。
「そんなことねえよ、きちっとイケたら外に出す! でもここから十回もイケるわけないだろうが」
「ああっ、本当なら、私絶対に十回イッてやりますからっ!」
 佳寿美がそう宣言すると、形の良い柔らかい弾力のお尻がグイッと持ち上がます。正志は突き上げた自分自身で、佳寿美の膣壁がキュウウウッと収縮するのを感じました。
 絞めつけがきつくなり、肉襞の密度が上がった感じは、佳寿美のやる気を感じます。

 まだまだ、佳寿美は勝負を諦めて無いわけですね。正志も、それは望むところだと熱を持った肉襞をカチカチの陰茎でかき回して、佳寿美をさらにゆっくりとこねくり回しました。
「そんなに俺の子供を孕むのがイヤなのかよ」
「イヤに決まってるでしょ、ハァハァ早く乳首弄ってもっと私を感じさせてェェ!」
 ご要望通り、正志は後ろから尖った乳首をコリコリと刺激してやりました。そのたびに、佳寿美はアンアンと気持ちよさそうに喘ぎます。
 赤く充血した佳寿美の乳首は、何度もイカされた性的興奮のせいか、プックラとこれ以上無いほどに勃起して、正志の太い指でもシコシコとこすれるほどに伸びきっています。硬くそぼった乳首を指先で弾きながら、(やっぱり授乳を経験した女は乳首が長くなるのかな)なんてことを正志は思っています。
 佳寿美の乳首の根本から力いっぱい扱き上げてやると、ジュワッと蜜壷に愛液が音を立てて分泌されました。
 正志は愛液で潤滑を増した佳寿美の膣襞の感触を楽しむように、反り返った陰茎をパンパンと小気味良い音を立てながら叩き込みます。
 正志のがんばりに応えるように、ざわざわとうねる蜜肉が正志の分身を強く搾りたててくれる。熟れて来ています、絶妙な締め付け具合です。
「くうっ、これは……たまんねえ」
「きちゃうっ、ああっきちゃったああぁぁぁ、イク、イクッ、イグッ!」
 わけのわからないことを喚きながら、佳寿美は背中をぐんと弓なりに反りました。パラっと宙を舞う佳寿美の髪の毛から、絶頂に達した女特有の甘ったるい香りが漂います。
 正志はフワッと鼻先をくすぐる、熟した雌の匂いに気が狂いそうなほど情動を掻き立てられ、佳寿美の奥深くで自分の分身をさらに石のように硬く膨らませました。
「くそっ、これうああぁあぁ」
「いいっ、いくっ、いくっ、ああっ、いやああああああぁぁ」
 正志は吠えます、佳寿美も叫びます。これは永久機関なのかもしれません。
 佳寿美の絶頂が正志の気持ちを高ぶらせて股間を熱くします。正志の興奮がさらにピストンを激しいものにさせ、こすりあう粘膜から快楽の振動が佳寿美に伝わってさらなる絶頂へと導かれるのです。
 正志は二回目とは思えないほどの焼けつくような強烈な射精欲に気が狂いそうでした。それでも、この瞬間の永遠を少しでも長く楽しみたいがために、ぐっと腰を打ち据えて力いっぱい佳寿美の美乳を手で握りつぶすように握りしめて、グワッと腰からこみ上げてくる射精の波動を精一杯我慢します。
 自分の快楽は狂おしいほど我慢しつつ、奥までゆっくりと突いて、ズブリと突いて、絡みつくほど突いて、肉襞の感触をたっぷりと味わい、女を先にイかせる。
 雄の充実とは、まさにこのことでしょうか。

「はぁ、佳寿美。もう限界だ、出すぞぉー」
「だめーっ、待って私まだっ、四回、五回? ああんっ、十回イケてないからぁー」
 どうやら十回は、間に合わなかったようです。
 一回戦目をあれだけ長々とやりまくった脱力感もありますし、二回戦目でさらに十回絶頂に達するとか、いくら女性が男よりは回数イキやすいとはいえ軽い絶頂を含めても、無理な話なのです。
「無理だ、もう俺も我慢……、できないから諦めて孕んどけっ!」
「そんなぁ、待って、待って、もう少しで六回目ェェ!」
 正志が意地悪して、さっさと射精するわけではないのです。むしろ強い刺激に対して、我慢に我慢を重ねたほうでした。
 女が本当にイケばその身体は怖いぐらいに痙攣し、膣はジュワワッといい具合に熱を持ってきますし、ギュッギュウッと締め付けて収縮しますし、プンプンと男を興奮させるフェロモンが毛穴という毛穴から発奮して匂い立つのです。
 そんなに嬌声を上げて心底からイキ狂われたら男性の方も絶頂を耐え切れません。
「いくぞっ、佳寿美ぃぃ中に出すぞぉぉぉぉ!」
「はっ?! いやあああぁぁぁ!」
 佳寿美、無念の叫び。
 ビクンと跳ねるように、腰を打ち付けて正志の動きが止まると。
 ドピューッ! と熱い精液の迸りが膣奥に注がれたのが分かった様子で、暴れていた佳寿美も静かに動きを止めました。
 次々と勢い良く吹き出すしぶきが、肉壷の中にドクッドクッと注がれていきます。
 同時に完全に開ききった子宮口の中に熱い塊を叩きこまれた佳寿美もまたエクスタシーに達した様子で、正志の脈動に合わせて背中を引きずらせて吐き出す欲望のすべてを完全に受け入れました。
「ふうっ」
 満足気なため息と共に、射精が終わり緩まった陰茎を正志がツルリと引き抜くと、佳寿美のポッカリと空いたヴァギナからトルルッと、愛液と精液が交じり合った混合液がこぼれ落ちました。
 ポタリ、ポタリとドロっとした精液の塊が垂れ下がりベットのシーツを汚します。

「あああ……また中にぃぃ」
 佳寿美がハァハァと脱力感にベットに崩れ落ちます。
「ハハッ、また中出しだったな残念賞」
 正志は笑いながら続けます。
「どうする、もう諦めて妊娠するか。それとも、また娘に中出し精液を舐めさせるのかな」
 正志にそう耳元でつぶやかれて、佳寿美の瞳に精気が戻りました。彼女はまだ諦めていないのですね。
 佳寿美は気合を振り絞るようにベットから起き上がると、娘を呼びつけます。
「真那ちゃんお願い!」
「うぇぇ、また舐めるのぉ?」
 よろよろと嫌そうにやってきた真那ちゃんは、また母親のオマンコを舐めさせられるハメになりました。
 彼女は、今回一番の犠牲者かもしれませんね。
 あとは語るまでもありませんが、もうこの繰り返しです。
 真那ちゃんが、佳寿美の股ぐらを綺麗にしている間に正志が滋養強壮剤を補給してまたセックス、またセックス……。
 佳寿美と正志の排卵日種付けセックスは、五回戦目に突入していました。
 すでにサドンデスの様相を呈していますから、今度はなぜか騎乗位で正志に跨っている佳寿美も息も絶え絶えになっていますし、正志もさすがに無駄にセックスだけに発揮される日頃の精悍な動きも鈍っています。
 真那ちゃんはというと、約束のアイスクリームを冷蔵庫から勝手に取って食べています。母親と間男のまぐわいを冷めた瞳で見つめながら、グッタリとベットの片隅に座り込んでぼんやりと練乳入りアイスを齧っています。
「はぁぁ……もう勝手にしてよ」
 真那ちゃんもため息なんか付いて、なんかもういろんなことに疲れてしまって、どうでも良くなってしまっている様子。彼女がグレてしまわないかと心配です。
 アイスを綺麗に食べ終わると、そのままベットの隅っこで丸くなってスヤスヤと眠り込んでしまいました。

「なあ、もう諦めたらどうだ」
「はぁー、はぁー」
 強い脱力感の中、佳寿美は深い息をつきながら精力を振り絞って自ら腰を振るっています。
「だからさ、俺がイクまでに十回イクなんて無理なんだって」
「イケますよ、絶対イキますよぉぉ……」
 どうやら佳寿美は、十回イケば外出しという遊びを繰り返しているうちに目的が十回イクことに摩り替わってしまったようです。
 赤黒く充血して感覚の鈍くなった乳首を強く強く自分の指で絞りながら、佳寿美はただ自分が性的エクスタシーを感じることだけを目標にして、必死に腰を振るいます。
 正志の方もさすがに五回目ですから、勃起は維持できているものの強い刺激を与えられると陰茎に鈍い痛みが走るようになっています。
 超強力な滋養強壮効果のあるユンケルスター、一万五千円分のパワーを持ってしても精力の限界なのでしょう。
「くうっ、もう無理だろ、キツすぎる」
「ああっ、ああっ、イッちゃダメですからね、私が、十回イクまで、絶対に我慢してください」
 正志の精液タンクもカラカラですから、射精までの時間は長くなっていきます。佳寿美にとっても不利な条件ばかりではないのです。
 メスの嬌声を上げつつ佳寿美がエクスタシーに達すると、彼女の頭の中はスイッチがカチリと音を立てて切れ変わったように快楽の脳内物質に満たされます。
 それは視界がホワイトアウトして、ふわっと飛び上がるような感覚です。
 今日はもう合計で何十回イッたかはわかりません。
 佳寿美だって、夫とのセックスで絶頂は経験したことは何度も有りますが、それでもこれまでこんな激しくて深い経験をしたことは一度もありませんでした。
 絶頂のスイッチが入りすぎて、ずっと入りのままバカになってしまったように頭の芯がぼんやりとしているのです。
 身体は一切の重さを失い、まるで羽が生えたようにフワフワと快楽の空を飛んでいます。
 没我に近い状態。佳寿美が何も思わなくても勝手に腰が勝手に動いてしまう、すでに身体の疲れは限界ですが、連続して絶頂を迎えやすいという点で有利にも思えてきます。もう今回のカウントも、四回、いえいま正志にしがみつくようにして深々と自らの奥に挿し込み、甘い喘ぎ声をあげながら今連続でイッた、五回・六回目に達しました。
 がんばれ佳寿美、もう少しです。

(これなら、今回こそイケる)
 切なげに眉をゆがませて、しがみついた正志の身体にすがりついた佳寿美がそう確信したとき。
「おい、佳寿美! そこまでして外出しを求めるっておかしくないか……約束を忘れたのかよ」
 佳寿美が腰を振るう腹の下で、疲れきって目の隈が黒くなっている正志が少し不満そうに叫びました。
「えっ、ああっ、だって約束でしょう十回イッたら外出しって言ったじゃない!」
「それはそうだけど、喜んで孕むって約束でもあったわけじゃないか。そんなに外出しを求めるのっておかしいだろ」
「そんなっ、でも、約束って、私すごい頑張ったんだから、頑張ったんですよぉぉ!」
 感情的に声を震わせながらも、佳寿美は満腔の力で七回目の絶頂を迎えました。もう喉もカラカラに乾いているのに、まだここに至ってもイク度に毛穴から汗が吹き出します。
 だから佳寿美の身体は汗だくになっているはずです、それなのに肌は妙にすべすべして爽やかななのです。
 ランナーズ・ハイにも似たようなこれは、オーガニズム・ハイ――そんなものがあるとしたら今の佳寿美がそうでした。
 佳寿美は男の精をたっぷり啜って、ツヤツヤのスベスベになっています。
「頑張ったのはわかるよが、……しょうがないな」
「いいんですよね、約束ですからね! 十回イケたらぁ~、外にイクゥゥッ!」
 謳うように呻きながら八回目の絶頂。
「わかったよ佳寿美も頑張ったしな、俺がイクまで我慢できたら外出しだ」
「よかった、イクッ、いぅ、イグッ!」
 もう何を言っているのかも定かではありません。とにかく身体中を駆使して感覚の鈍った乳首を千切れそうなほど自らの指で握りつぶして、腰を一心不乱に振るいます。
 佳寿美は確かに九回目の絶頂を数えました、新記録です。
「おおお、これはすごいな」
 正志も、五回も射精してまだチンポがちゃんと気持いいとは不思議なものだと思っています。若い頃に一度に何回射精できるかやったことがありますが、五回目の射精なんかもう痛くて苦しいだけだったはずです。
 愛液でトロトロに蕩けるマンコは連続射精で痛めつけられた陰茎も優しく包み込み癒してくれます。それなのに、海洋性の生物のように上へ上へと精液の迸りを吸い上げようと蠢くのです。
 今射精してやったら、佳寿美のマンコは気持よく子宮口から啜り込むんだろうなと想像すると、このまま思いっきり中出しかましてやろうかと思いましたが、それではあまりにも佳寿美が可哀想で報われない。
 正志は、疲れきっているのにまだ腰を打ち付けてくる女を哀れに思って射精を我慢することにしました。

「飛ぶっ、飛ぶっ、身体が吹き飛びそうですっ」
「おうっ、翔べ翔べぇ」
 最後のラストスパート、正志も腰を合わせて下から突き上げてやります。
「十回目ェェ、イクゥグググーッ!」
 佳寿美はぐいいいいんと身を反り返らせて、正志の顔にツバキを飛ばしながらうああああと叫びました。
 唾を顔に飛ばされても、正志は汚いとも想いません。汗だくになって身体を絡め合って、体液を交換しあった仲です。正志が一方的になのかもしれませんが、佳寿美に愛情に近いものが芽生えています。
 あれほど気位が高かった女が、死に物狂いで勝ち取った十回だったのです。
「よっしゃ、もう寝てろ、外出ししてやるよ」
「あああっ、ああああああぁ」
 佳寿美は、もう何も言えずにそのままバタリと後ろに倒れこみました。
 スルッと佳寿美の吸いつくマンコから勃起した陰茎を引き抜くと、まるで射精確認するAVみたいだなと内心の微苦笑を隠せずに、半笑いで陰茎を手で擦って佳寿美の顔に精液の雨を降り注がせました。
「ほら、顔射だー!」
 五回目の射精ですから、白っぽい液も少なくなった量の少ないものですが、それでも勝ち取った外出しの飛沫を浴びながら、佳寿美は恍惚とした表情で微笑み。
「ありがとございます」
 何故かお礼を言って、そのまま目をつぶって息絶えました。
「おや、おい佳寿美? おい……、なんだ死んだかと思ったぞ」
 よく見ると、スヤスヤと小さい寝息を立てて眠っているだけです。
 体力の限界だったのでしょうね。
 正志だって、もう疲れきってヨレヨレなのですが、ベットの端を見ると真那ちゃんは裸のままで丸くなって寝っ転がっています。これは、このままにはしておけません。
「ふうぅ、後片付けすっか」
 やはり後片付けは男の仕事だと、正志は苦笑してから萎えかける四肢に気合を入れます。まず白濁色の液体に汚れた佳寿美の顔を濡れタオルで拭いてやることから始めて――

     ※※※

「――ハッ?」
 目を覚ますと、佳寿美は起き上がりました。
 どうやら眠ってしまっていたようです。ついさっきまで、佳寿美は正志とセックスしていて最後に顔射されて……。
 記憶が曖昧ですが、どうやらそこで気を失うようにして寝入ってしまったのでしょう。あれからどれぐらいの時間が経過したのか。
 すぐ横には、疲れきってぐったりとしている娘が寝ていました。
 起き上がろうとするとまだ身体の節々が軋みました。疲れが取れきっていない、寝入ってからいったい何時間経ったのやら。
 季節外れの台風のせいで、ベットルームはカーテンも雨戸を閉めていますから今が昼か夜かも分かりません。
 ただ、激しい風雨の音はもう聞こえないからいつの間にか季節外れの台風は過ぎ去ってしまったのでしょう。
 そして風雨の音の代わりに、佳寿美の耳に「ブブブブッ、ブブブブッ」という不愉快な音が響き渡ることにようやく気が付きました。
 まさかと思って身体にかかっていた毛布を跳ね除けます。
「あれ、私下着つけて……」
 佳寿美は完全な裸体ではなく、なぜかレースのついたピンク色のパンティーを穿いていました。
 でも電子音がするのとパンティーの股ぐらが異様に膨らんでいるのです。
 すごくすごく、嫌な予感がしました。
 そして、佳寿美のお腹にマジックで黒い文字が書かれているのに気が付きました。
 読みたくないと思っても、目は文字を自然と追って頭の中に意味を送り込みます。
『人妻マンコ確かに約束通り種付けしましたごちそうさま 田中正志』
 スルッとパンツを脱ぎすてると、佳寿美の股ぐらに大きなバイブが突き刺さりっぱなしになっていました。
「ううっ、なによこれぇ!」
 こんなものを挿入されたままで寝ていたなんて、疲れきっていたとはいえ不覚としか思えません。

 電動し続けるバイブを引き抜くと、明らかにピンク色のコンドームを付けられたバイブの先っぽに自分の愛液だけではない白っぽい粘液が付着しています。
 バイブを引きぬいた後の膣はポッカリと穴が開いていて、そこからタップリと貯めこまれていた中出し精液が、ゴポゴポと音を立てて膣口から大量にこぼれ出てきました。
「うああぁ、もういやあだぁ、やだぁぁ」
 こんな粘っこい精液をずっと排卵日の膣にずっと注ぎ込まれていたなんて受精確実じゃない。
「イヤァァァ」
 恐ろしい想念を振り払うように、佳寿美はブルンブルンと首を振るいます。
「はあぁ……もう、あのクソ男ぉ!」
 怒りに気力を取り戻した佳寿美は、娘を叩き起こしてすぐに一緒にシャワーを浴びにいきました。もう徹底的に身を綺麗に清めました。
 水性マジックで書いた文字は跡形もなく消すことができます。膣からこぼれ落ちる精液も綺麗に中まで洗うこともできます。
 でも、その時にはすでに排卵を終えた佳寿美の子宮の卵管まで泳ぎ着いていた正志の精子と佳寿美の卵子が早くも結合を果たそうとしていたことを当の佳寿美は知りませんでした。
 確かに妊娠の確率は百パーセントではないと先に申し上げました。
 でも排卵日中出しは、やはりアウトなのです。

 そして残酷なことに出来上がった受精卵は、当の佳寿美が望まなければ望まないほど確かに子宮へと着床してしまいます。
 佳寿美が十年ぶりの受胎を迎え、正志の子種をこの時しっかりと宿されてしまったことを知るのは、これから一ヶ月以上も先のことになるでしょう。

後日談2「手切りの対価」
 季節はずれの嵐が、荒れ狂う十一月。耳を疑う話ですが、本当に暴風警報が出ているのです。もう秋だというのに、地球の気候はどうなってしまったのでしょう。
 空には重たい雨雲が立ち込め。時折、遠雷の音が響きわたります。まるで夏がぶり返したようだと人々は口々に訝しがりました。
「奥さん、雨戸は閉めなくてもいいのかな?」
 正志は、窓ガラスにパラパラと叩きつける激しい雨音を聴き、カーテンの隙間から外を眺めて目の前の女性にそう尋ねました。
「雨戸なんかどうでもいいんですぅ! それよりその話本当なんでしょうねぇ」
 岸辺 佳寿美(きしべ かすみ)は、のん気な正志の提案に眦を釣り上げて上目遣いに睨みつけると、ヒステリックに叫び返しました。
 場所はマンションの四階、岸辺家のリビング。
 マンションの構造は、どこの家もそんなに変わりません。変わるのはデザイン。
 北欧式で統一された木目調の美しい家具に所狭しと並べられたカラフルな輸入雑貨と民芸品、積み重なる光沢のあるマイセンの陶器類が、この家の主の表面上は豊かな趣味と反面ちょっとせせこましい性格を表しているようです。
 一言で表すなら装飾過剰でしょうか。
 岸辺佳寿美は、三十二歳の主婦です。夫は輸入雑貨店のオーナーをしてますからプチセレブ妻と言ってもいいでしょう。やや目付きと性格がキツいのに目をつぶれば、その整った眉目と高い鼻筋は十分に美人妻で通ります。
 わりあいと大きな胸とは対照的に下半身はほっそりとしていて、小学生の娘が居るとは思えない程度にはプロポーションも維持されています。きっちりと化粧して華やかな装いに身を包めば二十代半ばでも通ることでしょう。もちろんプライドの高い佳寿美は普段、娘にとっては自慢の母親で、夫にとっては若々しい妻をやっているのです。
 ですが、ビデオカメラの前で無残にも裸体に剥かれて、その高い鼻の穴を思いっきりフックで引っ張りあげられてフゴフゴと嘶くしかないブタ鼻にされた今の岸辺佳寿美の姿は、疲れきった歳相応の哀れな女にしか見えませんでした。
 しかも、彼女は四つん這いになりながら正志にケツの穴をブンブン唸る図太いバイブで深々と穿られているのですからなお一層のこと無残です。
「ああ本当だ、今日一日頑張れば貴女も娘さんも解放するって約束しようじゃないか」
 その甘い囁きに、佳寿美はチラッとリビングの部屋の隅でこの前のハロウィンのイベントで貰ったお菓子を食べている娘のほうを見やりました。
 岸辺 真那(きしべ まな)
 佳寿美の二歳年上の夫、岸辺冬彦(きしべ ふゆひこ)との間にできた女の子で、今年で十歳になります。ちょっと前に正志が「まさに真那娘(まなむすめ)ってわけか」と呟いて、佳寿美と真那の両方に物凄く嫌な顔をされたことは記憶に新しいところです。

 今日は台風のせいで学校が休みになった真那も、母親の付き添いのように裸にされていますが、SM的な責めを受けている佳寿美に比べると比較的自由な行動が許されています。善悪でいえば、明らかに悪人の側に位置する正志も、子供をいたぶるほど悪質ではないようで少しホッとします。
 ちなみに正志も裸です。一歩外に出れば冷たい雨が降り注いでいるのですが、部屋はエアコンで適温に保っているので寒くはありません。
「でもなんで急に解放なんて言い出したんですか」
 疑わしそうに目を細めて、佳寿美は正志を睨めるように見つめます。彼女は、勘の鋭い女性です。目の前の餌にすぐ食いつくほど馬鹿ではないのです。
 この急な好条件の申し出の裏には『何かがある』程度のことは佳寿美でも察しました。
 しかし、神ならぬ身にはまさか、マンションの奥様仲間である深谷茉莉香が我が身を犠牲にして解放の約束を取り付けてくれたことまではわかりません。
「まっ、端的に理由を言えばアンタにも飽きたってところかなあ。ほら、この『契約書』に解放の条件を書いたから読んでみてよ」
「条件一、自ら望んで田中正志の子を妊娠すること……、ちょっと待ってください」
 甲高い声で、佳寿美はストップを叫びます。
「待てないなあ、それは排卵日の今日に喜んで中出しを受けるって意味だと思ってくれたら間違いないよ」
「そんな、でも……」
 なおも抗弁しようとする佳寿美に、また正志は囁きます。
「アンタみたいなオバサンが中出しされたところで、ヒット率は低い。子持ちの人妻なんだからそれぐらい知ってるでしょ」
「ぐっ……」
 正志と佳寿美は同い年位なのに、オバサンとは酷い言われようです。しかし、佳寿美も十年前に真那を産んだあとは子供はできていないのも確かなのです。
 一般的に、妊娠率は危険日中出しで二割、排卵日中出しで三割と言われています。当然個人差がありますから、自然に任せて十年妊娠してない佳寿美は孕み難い方だと経験的には考えていいでしょう。
 たった一回危険な橋を渡るだけで、この永久に続くかと思った責め苦から解放されるなら悪くない賭けです。
 それでも、佳寿美は迷いました。この一年、中出しだけは絶対に避けつづけてきたのです。それは彼女にとって絶対の防衛ラインでした。

「そうだよねえ、迷うのは当たり前だよね。なにせアンタは、中出しを避けるために娘まで犠牲にしたぐらいだからなあ」
「言わないでください」
 釣り上がっていた佳寿美の眦が、情けなく下がりました。今にも泣きそうな顔をしています。意気消沈して身体から力が抜けたせいか、アヌスからバイブがズリッと抜けました。
 ポトリと鈍い音を立てて床に落ちたバイブは、ブブブブッと振動音を立てながら、リビングのフローリングの上を踊るように転がっていきました。
 この一年、正志は佳寿美と『あるゲーム』をして楽しんでいました。
 それは、中出しを避けるために佳寿美がどこまで別のものを犠牲にできるかというゲームでした。
 鼻フックも、アナルセックスも、SMプレイも、セックス撮影も、スカトロも、娘の前で最悪の醜態を演じることも、望まぬ妊娠の危険をさけるためなら佳寿美はなんだってやりました。
 そしてついに、娘にフェラさせるか自分が中出しされるかという究極の選択を出された時に、佳寿美は娘ですら犠牲にしたのでした。
 これには正志も少し驚いて、母親の言いつけ通り小さいお口で奉仕した真那ちゃんに罪悪感も感じたりして(ちょっとやりすぎたかな)なんて内心は思っていたのです。
 母親であることと、妻であること、どちらかを選ばなければいけないときに妻であることを選ぶ女も居るのだと正志は知りました。
 だからこそ、だからこそ、無理やり犯すこともできる正志ですが、この中出し妊娠ゲームの終わりに、彼女が『排卵日に中出しされて解放』と『中出し拒否』のどちらを選ぶか、選択権を与えたのです。
 正志には茉莉香との約束があるので、どちらにしてもすぐ解放しなければいけないのですがそんな不都合なことは黙っています。
 まあそれが、正志が今年この母娘に下した『ハロウィンのイタズラ』と言えるかもしれません。

「どうだ、腹は決まったか」
 正志は、床に転がったバイブを拾いあげながら聞きます。ほっとくといつまでも葛藤してしまいますから適度に問いただす必要があります。
「条件二、出来た子供は夫婦の子どもとして慈しんで育てること……、堕ろしちゃいけないってことですよね」
 佳寿美は応とも否とも言わず、解放の条件を読み進めました。
「それは当たり前だろ」
「当たり前なわけないでしょ、なんで私が貴方の子供なんか……」
 おっとこの流れはマズいなと正志は思いました。
 SMプレイをやっているわけですから虐めるのは好きなのですが、正志に罵られる趣味はありません。
 すぐに「まあまあ、もし子供が出来たらの話だよ」と宥めました。
「あとアリバイのために夫に抱かれるのは許可するが、安全日だけにしてくれよ」
 決心を促すために、正志は補足事項としてそう続けました。こういう逃げ場も作っておかないと追い込み過ぎになるからです。
「でも、安全日といっても夫の子供になるかも……」
 往生際悪く、佳寿美は続けます。
「そこまではしょうがないなあ。たまたま安全日だと思ったのに旦那さんがヒットさせても自然に任せた結果だから構わない。そうだ、そこまで言うなら安全日に一回だけしかしちゃいけないと条件をつけておこう」
 佳寿美が迷って聞き返したせいで、条件は益々悪化しました。
「そんなあ」
「さあ、まず排卵検査薬で排卵日かどうか調べてみようよ。どうせ排卵日じゃないなら、今日はできないんだし」
 そう言いながら、四つん這いになっている佳寿美の股間にコップを当ててここに小水するようにと命じました。
「わかりました……ふう」
 佳寿美が息むと、すぐにショワワワワッと音を立てて、黄色いオシッコが勢い良くコップに注がれていきます。
 佳寿美は、何度もスカトロを経験しているので、もはや正志の前でオシッコするは恥ずかしさにも慣れたものでした。
 ほのかに室内に漂うアンモニアの匂いも気になりません。
「さてと……うーんやっぱり今日が排卵日みたいですよ。良かったですね」
 正志は排卵日検査薬をコップに溜まった尿に突っ込んで、結果を見ながら。
「うう……」
 あんまり嬉しくなさそうに佳寿美は眉を顰めました。彼女は、正志に命じられてここのところ毎日排卵日検査薬で調べているのです。昨日が薄い紫のラインで、今日が濃い紫の陽性反応が検出されているのですから、今日から排卵日と言えるでしょう。
 佳寿美は今から二十四時間以内に確実に排卵します、その時に子宮に精虫が入れば受精することでしょう。

「これで条件は揃ったわけだが、どうしようか」
 手で陽性反応の出た排卵日検査薬を弄びながら、面白そうに佳寿美の顔を覗き込んでいます。正志もなかなか性格が悪いです。
「条件三、岸辺真那に性教育を行う……これは何ですか?」
 信じられないと言いたそうな顔で睨んでくる。
「子作りセックスするついでに、真那ちゃんにもその様子を見学してもらって性教育を行おうってことだよ。もちろん撮影もさせてもらう」
「真那に、私達がしているところを見せろっていうんですか!」
 ヒステリックな声が響き渡った、端っこでお菓子を食べながら携帯ゲームで遊んでいた真那は、何事かと驚いた様子で二人の方を栗色の可愛らしい瞳を丸くして見ています。
「ふふっ見せるだけじゃ今更だろ。きちんと理解させることが条件だって忘れないようにな。アンタの娘に『俺とアンタが子作りするって意味』をね」
「どうしてそんな酷いことが思いつけるんですか……」
 恨めしげに、眦を釣り上げた佳寿美にキツく睨まれても、自分の絶対的優位を確信している正志は怖くもなんともなかった。
「御託を並べるのはもういいだろ、どうなんだやるのか、やらないのか?」
 苦悶の表情を浮かべた佳寿美は、これだけ詰め寄られてもすぐに頷きませんでした。
 今日は嵐でどうせ出かける用事もないから時間はあると正志は考えて、煩悶している佳寿美を放っておいて裸で携帯ゲームを弄っている真那と遊ぶことにしたようです。
 佳寿美は、しばらく部屋を虚ろな目でウロウロと部屋を歩きまわると、額の汗をティッシュで拭ってから手ぐしで髪を整えた、
 ようやく逃れられないと決心がついた様子で正志たちの所に来て、少し悔しそうに「……やります」とだけ言いました。
「じゃあ、この契約書をもう一度しっかりと読んでから了承のサインを……よし、じゃあ今日の手順の細かい打ち合わせを始めようか」
 契約書を大事にしまいこんでから、嬉々として準備を始める正志。
 こうして、母から娘への実地を通した家庭内性教育が幕を開けました。

     ※※※

 岸辺家の夫婦の寝室、裸の母娘がシングルベットを二つくっつけて作ったベットの上に座っています。
 ベットが分かれているということは、普段は一緒に寝ていないということかとも正志は思いました。
 まあ、少なくとも十歳の娘がいるのですから結婚して十年以上が経っているわけです。セックスの回数が少なくなってもしょうがありませんね。
「お母さん、なんなのこれー?」
 まだ第二次成長期も迎えていない十歳の少女は、何か不穏な空気を感じたのか愚図がってそわそわしているようです。
「いいから静かにしてなさい」
 そう娘の手を取ってたしなめた佳寿美には少し疲れたような表情、すでにこれから起こることを諦観しているのかもしれません。
 そんな二人の様子がよく映るようにビデオカメラを設置する正志は得意満面といった様子でした。
「それじゃあ始めようか」
「はい、よろしくお願いします」
 正志が回すカメラに向かって、佳寿美は三つ指を付くと綺麗な土下座をしました。
 そんな母親を横目に見て、娘の真那も慌てて頭をペコリと伏せました。
「それじゃあ、どうしようかな……。まず自己紹介からか」
 正志がそう注文をつけます。
「岸辺佳寿美。職業は主婦です。歳は三十二歳で身長は百五十五センチ、バストはDの八十六、ウエストは五十八、ヒップは八十五……」
「ウエスト五十八はちょっと鯖読みすぎなんじゃないかお母さん」
 正志が苦笑して混ぜっ返すと、ちょっと不快そうにムッとして「じゃあ、ウエストは六十ってことにしておいてください」と付け加えました。
 実際のところウエスト六十センチでも過少申告かもしれませんが、三十二歳の子持ちであることを考えればきっちりとくびれがあるウエストなら上出来といったところでしょう。
 もともと豊満なタイプが好きな正志にとっては、痩せすぎているより脂の乗った抱き心地の良い佳寿美のような女のほうが好きなのです。
「それで佳寿美さんは、どうしたいのかな」
「今日は、そこにいる正志さんに種付けをしていただこうと思います」
 ふうっとため息をついて、唇を震わせるように小さな声でそう言いました。自分でそう言ってしまってから、憂鬱さに表情を失いました。佳寿美のシャープなラインの頬は、血の気を失って青ざめています。

「お母さん種付けってなに?」
 声が小さいから活を入れてやろうかと正志が口を挟む前に、先に隣の真那ちゃんが佳寿美に尋ねました。
「真那ちゃん、種付けってのはね、赤ちゃんを作ることだよ」
 黙り込んでいるお母さんの代わりに、正志がそう教えてあげました、
「えっ、赤ちゃん?」
 真那は驚いた様子で、目を丸くしています。まだ十歳なので、雰囲気を察するのは難しかったのかもしれません。
「そうだよ、これから君のお母さんと俺とで赤ちゃんを作るんだ」
 正志の口元を悪魔のように歪ませました。悦に浸っている――純粋な少女に下世話な知識を与えることに、この上ない喜びを感じている様子で質が悪いですね。
「えーでも、赤ちゃんって結婚してないとできないんじゃないの?」
 もっともな疑問でした。
 これは性教育も兼ねているのだから、真那ちゃんが興味を持ってくれるのは正志にとってもありがたい展開です。
「ハハハッ本来は愛しあった夫婦が作るものだよね、でもそうじゃなくてもできるんだよ。お母さんに詳しく聞いてみたらどうかな」
 俯き加減に黙りこんで居た佳寿美は、目をぎゅっとつぶり眉根を寄せて頬を歪ませました。嫌で嫌でたまらないといった顔です。
「ねえお母さん、お父さん以外の人と赤ちゃんを作るって嘘だよね?」
「……本当なのよ、真那。これから田中さんと赤ちゃんを作るの。今から教えてあげるから黙って見てなさい」
 地獄から響くほどに低い声でそう佳寿美は言いました。どうせ済まさないといけないことでも、考えるだに辛いのでなるべく感情を殺そうとしている様子です。
「お母さん、ダメだよお父さん以外の人と赤ちゃん作るなんて」
 幼い真那にも、不貞という倫理観があったようです。子供でも、なんとなく悪いことだとは知っているもんなんですね。

「これも真那のためなのよ、我慢して……」
 佳寿美は消え入るような小さい声で、そう真那に言い聞かせました。
「そんなのわかんないよ、ダメだよぉ」
 悔しそうにベットのシーツを握っている佳寿美の腕に、真那は小さい身体をまとわりつかせました。
 母親の苦悩が伝染したのか、真那も今にも泣きそうな顔をしています。
(このまま見てても飽きないが……)
 愁嘆場もあまりに長々続くと飽きると正志は思って、口を出すことにしました。
「真那ちゃん、あんまりお母さんを困らせちゃいけないな」
 正志が声をかけると、ビクッと真那ちゃんは少し怯えた表情で見上げました。おかげで泣かなかったのは良かったのですが、こんな怖い人みたいな扱いをされると正志だって内心は傷つきます。
 酷いことをしたのだから真那ちゃんに嫌われているのはしょうがない。そう正志は思っているのですが、実際のところ真那ちゃんが正志を嫌われているのは鬼畜な所業が原因というよりは、母親が『あのオジサンは危ない人だから近づいたらいけない』と昔から偏見を吹きこんでいたからでした。
 だからこそ、お母さんが嫌いぬいている相手といきなり子作りすると聴かされて、直感的にダメだと感じたのでした。
「オジサンもお母さんに酷いことはやめて」
 母親の危機に勇気を振り絞るようにして、真那ちゃんは抗議します。
「おやおや、俺が悪者か。お兄さんはお母さんに頼まれて種付けするんだけどな」
 正志はオジサンと呼ばれるのが嫌なのか、さり気なくお兄さんに変更しています。まあ、子供からみたら三十二歳は十分オジサンですよね。
「そんな、お母さん嫌がってるよ……」
 母親の反応は、子供にはすぐ分かるものです。
「分かんないかなあ、じゃあちょっとそこで見てね」
 正志は、佳寿美の股ぐらに顔を埋めるようにして股間を舐め始めました。

「あいかわらず、毛深いオマンコだな。ビラビラの周りまで生えてる、舐めるのに毛がまとわりついて邪魔なんだよな、いっそ全部剃ってパイパンにしたらどうなんだ」
「ううっ、ごめんなさい、剃るのは……」
 剪毛プレイも提案されたことは何度もありますが、夫にバレてしまうからと断り続けているのです。
「真那ちゃんは綺麗なパイパンなのにね」
「パイパンってなに?」
 真那ちゃんは、自分の母親のお股の周りを犬のように嘗め回す正志を興味深げに見つめています。
「パイパンってのはね、真那ちゃんのお股みたいに毛が生えてないことだよ。ほらお母さんと自分の股を見比べてごらん」
 真那ちゃんは言われた通りに、自分の股間とお母さんの股間を見比べてみました。
「全然違うね」
 真那ちゃんは、単純にそう表現しました。なんとなく、母親がお股はあんまり見てはいけないと教育しているせいか、彼女にとって自分のやお母さんの生殖器をマジマジと観察したのはこれが初めてであったりします。
「このお股のワレメをマンコって言うんだよ。ほら見てごらん、このお母さんの穴から真那ちゃんは生まれてきたんだよ」
「えーうそ、こんな小さいところから出て来れないよ」
「あれ真那ちゃんは、まだ性教育は受けてないのかな」
 正志は自分の子供の頃の記憶を思い起こします。小学校の女子が別室へと呼ばれたのが確か小学校の高学年の頃です。
 そう考えると、真那ちゃんが知らなくても不思議はありません。
「性教育ってなに?」
 正志は(本当ならお母さんに教えて欲しいんだけどなー)と、股から顔をあげて佳寿美の様子を見ますが、顔を手で覆うようにして肩を震わせて押し黙っています。きっと、あの手を無理やりどかせたら、娘に股ぐらを覗き込まれるという羞恥に顔を真赤にしていることでしょう。
 無理して母親に自分の身体を使ってに性教育させるのも乙ですが、人妻の恥じらいも決して気分の悪いものではありません。

「佳寿美は、今さらこんなことで恥ずかしがってるのか、これじゃあどっちが娘なのか分かったもんじゃないな」
 そう言って正志が笑うと、佳寿美は小さい声で「言わないで」と呻き声をあげました。
 実際のところ、真那ちゃんが正志の前で裸になっても恥ずかしがってないのは、肝が太いわけでも羞恥プレイに慣れているわけでもなくて、まだ性的なことを恥ずかしいことだとよく分かっていないだけなのですが、元来が無神経な正志にそこまで察しろというのは無理なことでしょう。
「ほら、真那ちゃん。もっとお母さんのオマンコよく見てごらんよ、ちゃんと穴が開いて、中が濡れてきているだろう」
 濃いピンク色のオマンコのビラビラを指で広げながら、正志は真那ちゃんに説明します。さっきアナルをバイブで散々ほじくられたせいか、それとも娘に見られているというシチュエーションで意外にも興奮しているのか、すでに膣壁からトロッとした愛液がにじみ出ています。
「オマンコってなに」
「赤ちゃんを作る穴のことだよ。真那ちゃんのお股にもお母さんと一緒でオマンコついてるでしょ」
 そう言われて、真那ちゃんは自分のツルリとした股を見ました。毛も生えていない、本当にただワレメがあるだけの綺麗な股です。
「えっ、でも私は穴なんて開いてないよ」
「開いてるはずだよ、自分のワレメをよく触って確かめてごらん」
 正志がそう勧めると、真那ちゃんはお母さんの成熟した生殖器と自分の未発達のワレメを見比べて、指で広げてみました。
「ちょっと、真那に何させてるんですかっ!」
 顔を隠していた佳寿美ですが、不穏な方向に話が進んでいると気がついて恥ずかしがるのも忘れて怒り始めました。
 顔を真赤にして怒られても、股をおっぴろげているこの状況では怖くもなんともありませんでした。
「性教育だよ、真那ちゃんに性教育するって約束しただろ」
「でも真那は子供ですよ、そんなのまだ早すぎます!」
 ヒステリックに騒いでる佳寿美ですが、なぜかこんな状況でさらに愛液がトロリと流れて光っています。
 女性にとっての激しい怒りは、もしかすると性的な興奮に近いのかもしれません。

「真那ちゃん、指を入れて穴が開いてるか確かめてごらん」
「ダメッ、真那しなくていいからね」
 怖いオジサンと、お母さんにそう方々から言われて真那ちゃんは股を指でまさぐりながら、それでも指で軽く穴を確かめて見ました。
「ううんっ、ダメ。オジサンやっぱり穴なんて開いてないよ」
 処女膜と言ってもただの粘膜ですから、ちょっと強引に押しこめば指一本ぐらいは入るはずなのですが。
 もしかすると、真那ちゃんは膣とオシッコの穴を勘違いしているのかもしれません。
「じゃあ入れなくてもいいよ……、あとオジサンじゃなくてお兄さんな」
 正志は微苦笑してそう付け加えました。子供相手でも、やっぱりオジサンと言われるのは嫌みたいですね。
「でもクリトリスぐらいは知っといたほうがいいしな、真那ちゃんお母さんのオマンコをよく見てごらん、上の部分に小豆さんがついてるだろう」
「えー」
 真那ちゃんは正志にそう言われて覗きこみますが、よくわからない様子です。
「ほら、ワレメの一番上の付け根に小さいお豆さんがあるんだよ」
 そういうと、正志は陰毛の重視をかき分けるようにしてクリトリスの皮をクリっと剥くと思いっきり指で押しつぶしました。
「うぐっ……」
 敏感になっていたクリトリスはあっという間に硬く膨らんで小さなピンク色の頭を突き出します。
 そこをさらにつまみ上げるようにしてクリクリと刺激していきます。そのたびに佳寿美は手で口を押さていても、抑えきれずに呻き声をあげました。
「オジ……お兄さん、お母さん痛そうだよ!」
「痛くないんだよ、ここを刺激すると大人の女は気持ちいいのさ。なあ佳寿美、気持ちいいよな?」
「ふぐっ、気持よくなんかあっ! ないっです!」
 佳寿美は、荒い息の下からそう返答してみせます。

「そう言うわりには、マンコドロドロに濡れてすげえメスの匂いさせてるじゃん」
 しかし、開いた秘裂からトロトロと溢れ出る汁までは隠せないのです。プンプンと匂い立つような白い本気汁が出てきています。
 排卵日の今日、やはり佳寿美のマンコは生殖に向けて準備万端整っているようなのでした。
 試しに、指を突っ込んでみると愛液にヌメる膣襞は指に絡んで吸い付いてくるようです。
 そんな二人の様子を見ながら、教えられてもいないのに真那ちゃんは自分の股をまさぐってクリトリスがあるかどうか調べ始めました。
「おっ、自分で触ってるのか。勉強熱心でエライな、気持いいか?」
「んんっ? やっぱり良く分かんないや」
 真那ちゃんは、そういうと照れくさそうに小首をかしげました。
「ああっ、真那っ、ううーっ!」
 クリトリスを乱暴な指使いで弄ばれながらも、娘に手を出すなと言いたかったようなのですが、佳寿美の方は声にならない様子なのでした。
「ほら、舐めてやるからな。佳寿美もいい加減、気持ちいいって認めてしまえよ」
 正志は、またクンニリングスに戻りました。今度は膣口を刺激するだけでなく、タップリと赤く勃起したクリトリスをチュウッと吸って、歯で根本を甘噛みしました。
「そこっ、だめーっ、ああーっ!」
 佳寿美はよがりくるっています。頭が真っ白になって、身体がエビぞりに反り上がりました。
「ははっ、真那ちゃん。お前のお母さんイチャッたみたいだぞ」
 正志が嬉しそうに笑いました。
「行っちゃったって、ここに居るよ」
 真那ちゃんはわけもわからずそんな惚けたことを言いながら、身体を震わせて激しく消耗したらしい母親を心配そうに見つめていました。
「真那ちゃんイクってのは、どっか行くわけじゃなくてクリトリスは刺激されてめちゃくちゃ気持ちよくなることだよ」
「でもお母さん苦しそうだったよ」
 異様な母親の状態を目の当たりにしてしまった真那ちゃんは、少し心配そうです。
「気持よくなってるんだから心配することはない、なあ佳寿美」

 正志がそう言うと、佳寿美は目を開けてぼんやりと真那の方をみて言いました。
「ハァハァ……そうよ、真那……。お母さんちっとも痛くはなかったのよ、心配しなくていいからね」
 自分が娘を安心させるためにイッたことを認めてしまう――これも母親の愛情かと、正志はほんの少しだけ佳寿美を見直しました。
 フェラチオさせたのは自分なのに、娘を犠牲にした酷い母親と正志は勝手なイメージを持ってしまっているのです。
 まあ佳寿美の方も、散々偏見で娘やご近所に正志の悪口を言いふらしたのですから、その点だけはお互い様なのかもしれません。
「ほら見てごらん真那ちゃん、今から君のお母さんとセックスするからね」
「えっえっ?」
 オジサンがそう言うが早いか、自分のお母さんに伸し掛かったので真那ちゃんはびっくりします。
「ほら、ヌレヌレのオマンコに俺のおチンチンを挿れるんだよ」
「ちょっと、田中さん娘にそんなことまで!」
 佳寿美は抵抗する気力もなくぐったりしていますが、さすがに娘に見せつけられるようにされると手で上から伸し掛かろうとする正志を押し返しました。
 そんな佳寿美の抵抗を、正志は睨みつけて力で押さえつけながら真那ちゃんに向かって性教育を続けます。
「今日のお母さんは、排卵日なんだよ」
「排卵日ってなに?」
「赤ちゃんの卵がオマンコの奥の子宮に飛び出してくるのさ。そこに俺がチンチンを挿しこんで射精すれば赤ちゃんができるんだよ」
「射精?」
「精液が出ること、ほらこの前このオチンチンから出る汁飲ませてあげたじゃない」
「あっ、あの苦いやつ……」
 真那ちゃんは嫌な記憶を思い出したのか、苦いものでも食べてしまったみたいに目を細めて可愛らしい小さな唇をすぼめました。
「あの白い液体が赤ちゃんの種なんだよ、オタマジャクシみたいな種が君のお母さんのお腹に入って卵とくっつくと赤ちゃんになるんだ」
「そうなん……ですか」
 あまりのことに真那ちゃんはなぜか敬語になってしまいました。大事なことだとは飲み込めたみたいです。

「よしじゃあ、実際やってみよう」
 ジュブッと淫らな音を出して、膣がカッチカチに反り返った陰茎を飲み込みました。
「いやっ!」
 正志に深くまで挿入されて、抱きしめられると佳寿美は肌が粟立つような生理的嫌悪から、ついに拒絶の声をあげてしまいました。
「おや、嫌なのか。じゃあ止めるか?」
 ニマニマと余裕の笑みで正志は聴き返します。
 これは明らかに、止めたらあの約束もなかったことになると言う含みを持たせた脅迫です。
 刹那、自らサインした契約書の文面が想起されました……『条件一、自ら望んで田中正志の子を妊娠すること』……自ら望んでなのですから、抱かれることを拒否するのは明らかにルール違反になります。
 ここで受け入れなかったら、これまでやってきたことは全て無駄になってしまう、
 佳寿美は、悔しそうな顔で正志を睨みつけると「うううっ」と呻くように息を吐いてから「……いえ、どうぞセックスしてください」と嘆願しました。
 自ら望んでもいないことをお願いさせられる、これは恥辱だと佳寿美は考えます。
(ああせめて、娘の前でなければ)
 そう思うとやり切れない気持ちになりますが、ここにいたっては致し方ないことです。佳寿美は、全身の力を抜いて嬲られるままに任せました。
「奥さんにお願いされたらしょうがねえなあ、真那ちゃんよく見ておくんだよ。今からお兄さんとお母さんが生殖器をこすりあわせて、君の弟か妹を作っちゃうからねー」
 上機嫌の正志は、佳寿美の豊かな乳房をねじ曲がるぐらいに強く握りしめながら、真那ちゃんに見せつけるような正常位で、ゆっくりと抜き差ししてわざとジュポン、ジュポンとイヤラシい音を立てつつ深々と腰を打ち付けます。
 さっきまでアレほど止めて、止めてと騒いでいたのですから、真那ちゃんはここいらで悲鳴をあげて止めようとしてくるだろうと正志は予測していました。
 むしろ見せつけるようにセックスして、母娘の悲鳴を肴に楽しもうと鬼のようなことを考えていたのです。
 それなのに、真那ちゃんがいつまでも押し黙ったままでこっちを見ているので、正志は少し拍子抜けしました。

「あれ、真那ちゃんは俺とお母さんが赤ちゃん作ってもいいのかな?」
「だってお母さんがそれでいいんでしょう……」
 真那ちゃんは二人が抱き合ってるベットの脇にしゃがみこんで、少し寂しそうに指を咥えて見ています。どうでもいいわけではない証拠に、痛そうな顔をしています。心の苦痛に耐えるためか、無意識に指を強く噛んでしまっているのでしょう。
「お母さんの望みなら、真那ちゃんは我慢するのか偉い子だね」
 娘は父親に付くなんてことを言いますが、真那ちゃんは母親っ子なのだなと正志は思いました。
「真那、ごめんね一回だけだから……」
 そんな娘の様子に、こっちも耐え切れなくなったのか佳寿美も謝罪します。
(うーん、愁嘆場ならまだしも母娘の人情劇なんて見せられたら萎えるなあ)
 そう考えた正志は、ちょっと刺激剤をぶち込むことにしました。
「真那ちゃん、お母さんはセックスが気持ちいいから仕方ないんだよ。ねえ、佳寿美さん」
 正志は、一旦挿入したオチンチンをニュルンと引き抜くと、真那ちゃんに仲良しだよと見せつけるようにぎゅっと抱きすくめました。
「そっ、そうですね」
 嫌いな男と正常位でぴったりと身体を合わせたままで、佳寿美は引きつった笑顔でそう答えました。
 おい耳を貸せと、正志は真那ちゃんに聞こえないように佳寿美に囁きます。
「もし俺がイク前にアンタが十回イケたら、中出しか外出しか選ばせてやるよ」
「本当ですかっ!」
 佳寿美がガバっと跳ね起きた勢いで、正志は押さえれてベットの上にゴロンと転がされてしまいました。
 あまりにも激しい佳寿美のテンションの変わりように正志も苦笑します。
「アハハ、もちろん約束は守るさ」
「じゃあ、あの……さっき一回舐められてイッたのも数に入れてくれます?」
 そう聞かれて、ベットの上に寝そべってる正志はフフンと鼻で笑いました。

「ほう、やっぱりさっき気をやってたのか」
「はいイキました、私気持ちよくってよがりくりっちゃいましたよ。あれも一回でいいですよね」
 とたんに意気軒昂になって、佳寿美は身を乗り出してきます。
 希望が見えたのです、夫を裏切りこの世でもっとも忌み嫌っている男の種を植え付けられる地獄から救われる可能性が。
 たとえ正志の気まぐれであったとしても、最悪の自体を避けるためにできることがあることが佳寿美を歓喜させました。
「オッパイ触ってもいいか」
「はい、触ってください。もっと強く握ってもかまいません、どんどんイかせてくださいね」
(十回、すでに一回イッたので残り九回イッたら外出ししてもらえる!)
 その思いが、娘がじっと自分の様子を見ているのも忘れて佳寿美を奔放にヨガり狂わせました。
 兎にも角にも、正志をイカせずに自分が早くイカなくてはいけません。胸をもみくちゃにされながら、佳寿美は必死に指で自分のクリトリスをこねくり回してアンアンと嬌声を上げます。
「どうだ、ケツ穴にもバイブ挿れるか」
 正志はいつの間に用意していたのか、先程もSMプレイに使ったバイブを手にしています。
 マンコには生挿入のくせに、バイブには衛生のためにコンドームを被せているというのが皮肉なものです。
「挿れて、人妻のエッチなケツ穴にぶっといバイブぶち込んでください!」
 佳寿美のおねだりに気を良くした正志は、たっぷりサービスしてやると人妻の豊満なヒップを持ち上げて、パクパクと口を開いたアナルのすぼみに無骨なピンク色のバイブの先を押し込みました。

「ほらっ」
 すでにケツ穴を開発されている佳寿美の尻穴はスルリとぶっといシリコン素材の亀頭の先を飲み込みました。
「ふとぁ、奥までキちゃう」
「ほら、一番奥まで突っ込んでスイッチ強だ」
 バイブのスイッチを最強にひねると、極太のバイブはグルグルと回転して機械的に佳寿美のケツ穴をほじくり回しました。
「クルッ、クルッ、狂うっ、イクッ、イグッ、イッちゃう」
 ビクンビクンッと身体を震わせて身悶えします。
「まったく佳寿美はエッチだなあ、無事に妊娠したら尻穴の方でも可愛がってやるかな」
「うえっ……」
「どうした、なんだか嫌なのか?」
 妊娠と言った時にビクリと身を硬くして表情を引きつらせたのは正志にも分かりました。あえて、嫌がるだろうと思って話を振ってやったのだから、これはしてやったりと言ったところです。
 佳寿美は『喜んで』正志を受け入れないといけないのですから、もしも嫌がる素振りでも見せようものなら、約束違反になります。
 これまでの苦労が水の泡になることだけは避けなければいけませんでした。
「いえっ、ありがとうございます」
 約束さえ果たせば、どうせ今日で終わりなのだ。妊娠することも、尻穴を犯され続けることもありません。
 佳寿美は偽りの艶笑を浮かべて、誘うように股を開きました。
「ほらっ、子種をくれてやるぞ」
 そこに、正志はためらうことなくビンビンに勃起した肉柱を叩きこみます。
「ああーっ!」
 佳寿美の奥にコツンと当たって、ビリビリっと全身に震えました。
「どうだっ」
「最高です、サイコーぉ、イクッイクッ!」
 佳寿美はとにかく求めることしか考えていない。ギュッと正志の弛んだ身体を抱きしめると、イクッイクウッと性的な絶頂を満腔に湧き上がる力で表現しました。
 それは演技の部分もありましたが、そう叫んでいるうちに本当の波がやってきてそれに身を任せていれば頭は真っ白になってしまいます。
 娘がジッと耐えるような眼で見ていることなど、もうヨガり狂う母親の頭にはありませんでした。
「あっ、イヤッ、イヤーッ、イクゥウッ!」
 苦悶の表情で、襲い来る正志の身体を股でギュッと挟んで求める佳寿美。
 そこに真那ちゃんが邪魔に入りました。

「ダメだよー!」
「おおっ、おう……」
 佳寿美のあまりの痴態に、正志も少しイキかけていたタイミングだったので、咄嗟に不意をつかれて正志もフリーズしてしまいました。
 母親を犯すことで娘も嬲ろうと考えていた正志ですが、さすがに性交の最中にそんなにも冷静ではいられなかったようです。
「お母さん、嫌がってるよ!」
 クリっとした愛らしい瞳に涙を浮かべて真那ちゃんは小さい身体をねじこむように、二人の間に割り込みます。我慢の限界だったようです。
「真那、ああ違うのよ。お母さん、嫌じゃないから……」
 せっかくまたイキかけていたところで、娘に邪魔されて佳寿美も少しムッとしました。嫌じゃないからというのは本気で言っていました。
 そう考えて、これは娘と自分を解放するためにイヤイヤやっていることなのにと少しゾッとしました。
(私、いつの間にか本気で……)
 そういえば、何度イッたのかカウントしていません。八回でしょうか、九回でしょうか。さっさとイク動作を繰り返して目標を達してしまえば、佳寿美は中出しを回避できるのに、いつの間にか肉欲に溺れてしまった自分に気がついたのです。
 いまも佳寿美のマンコは正志と繋がったままでギュウッと陰茎を締め付けています。
 こんなことをしていれば、正志も中で射精してしまうでしょう。
「分かったかい、真那ちゃんお母さんは嫌じゃないってよ」
「ううっ、でも痛そうだよぉ」
 正志の説明に、真那ちゃんは納得いっていない様子です。
「違うのよ、真那お母さんとっても気持ちいいから、セックスのときにイヤって言うのは嫌じゃなくて気持よすぎて言っちゃうのよ」
 娘を納得させるために、佳寿美もそう付け加えました。
「ええー、そんなことって……」
 釈然としないながらも、母親にそう言われては真那ちゃんも渋々引き下がるしかありません。
 真那ちゃんは、母親の言うことを聞くいい子でした。

 正志は、母親と汗だくで繋がったままでポンポンと真那ちゃんの柔らかい髪を手で撫でるようにすると。
「お前も大人になれば分かるさ」
 そう言いました。
「うえっ……分かったよごめんなさい」
 真那ちゃんはそう言って壁際まで下がって、じっと耐えるようにうずくまりました。もちろんほんとうの意味で分かってなどいませんが、大人に成ればわかるのかなと思ったのかもしれません。
 母親がお父さんではない男と子作りをしている意味を分かってしまえばそちらのほうが苦悩するでしょうから分からない方がいいのでしょう。
「あの、田中さん。私もう十回イキました」
 佳寿美はこのタイミングで、一気に切り出しました。
 本当に十回イッたかどうかなど、カウントを忘れてしまったので分かったものじゃありませんが、娘が割り込んでくれて冷静になったこの瞬間しかないと思ったのです。
「ほうっ、もう十回イッたのか」
「ええですから約束通りイクときは外に……」
 がっぷりと、奥まで突き入れられた状態ですが正気を取り戻した佳寿美は外出しを懇願します。
 ただ、彼女のマンコは度重なる絶頂に蕩けるように熱く熟していて、カチカチの石みたいに勃起した正志の陰茎を優しく包み込み、佳寿美とは別の生き物のように先っぽからにじみ出る先走り汁を啜っています。
「確かに、外出しか中出しか選ばせてやるとは言ったが……俺がその選択を聞き入れるとまでは言ってないよな」
「なっ、なにを言ってるんですか。約束したでしょぉ!」
 この期に及んで、そんな約束破りを言い出す正志に佳寿美は怒りを感じました。頭が怒りに熱くなって、身を起こそうとしたのですが何度も何度もイカされた腰は重くて起き上がりません。

 排卵を迎えた佳寿美の子宮口はぐぐっと膣の中を降りてきて、正志の先走り汁をドロドロと滲ませる先っぽと口づけを交わしています。
「ほら、中と外どっちがいいんだぁ!」
「ちょっと待って、ホントにダメェ! イヤッ、イヤッ、外にぃぃ!」
 度重なる絶頂のせいか汗でしっとりと滲む佳寿美の身体を抱きすくめるようにしてさらに深く腰を打ち付けると、正志はニヤッと笑いました。
「そんなこと言っても、もう遅えよ」
「いやぁああああ!」
 射精へのラストスパート、正志が更に激しくガンガン腰を打ち付けるとビクビクッと佳寿美の成熟した身体が弾けました。
 ドッと毛穴から汗がにじみ出て脂の乗った艶やかな肉は、妖艶な光沢を見せて淡い桜色に染まっています。
 腰を打ち据えるたびに、ボリューム感のある乳房が瑞々しくブルンブルンと震えました。
「くっ、佳寿美、中で俺の子種をたっぷり味わえっ!」
「いやっ、いやっ、中はイヤァァァ!」
 揺れる乳を力いっぱい握りしめて、ガガッと膣の中を硬い陰茎が奥へさらに奥へと入り込んでいきます。
 蕩けるような柔らかい膣襞と、コツリとした感触の子宮口の感触を先っぽで楽しみながらさらにダメ押しとばかりに一番奥まで尽き入れて、正志もようやく絶頂を解き放ちます。
「うううっ、おおおおっ」
 正志はあまりの気持ちよさに吠えました。
 佳寿美をなるべく多くイかせるため耐えに耐えた欲望の昂ぶりが頂点を迎えたのです。
 頭の中が真っ白になるような怒涛のエクスタシーが襲い、ピンッとネジが外れたように快楽が亀頭の先から迸っていきます。

 ドクッ、ドクッ、ドピュルッ!

 うねるような熱い奔流がいくどもペニスを走り抜けて、佳寿美の子宮口にゼロ距離射撃で叩きこまれていきます。
 佳寿美は、自分のお腹の中に温かい男の種がジワァと注ぎ込まれるのを感じました。
「イヤァァァ、中に出されてる、種付けされてる、いぁぁあああああぁ……」
 全身をビクビクッと痙攣させながら、佳寿美の身体は言っていることは真逆に動きます。股を開き、正志の腰にほっそりした足を絡めて生殖器を収縮させて子種を吸い取っていきます。
 嫌だと思っても、身体が自然と男の精を啜るのは盛り上がってしまったメスの本能なのでしょうか。

 ドピュドピュ……ドクドクッ……。

「くうっ、やっぱ熟れた人妻はたまらんな」
 正志はまるで全身で射精したような獰猛な快楽に。思わず呻いてしまいました。
 たっぷりと佳寿美を感じさせてやった甲斐があったというものです。
 初めての佳寿美への種付けは最高の射精になりました。

「嫌っていったのに、嫌っていったのに……」
 もう中出しされているのに、現実を認められないのかまだブツブツと文句を言っています。
 身体は欲しがってた癖にと正志は笑いました。
「イヤってのは嫌じゃないって言ったのはお前じゃないか、中に出して欲しかったんだろう」
 全てを放出しきったあと、正志は自分の遺伝子を最後の一滴まで佳寿美の中に注ぎ込むために、ギュウと抱きしめるようにしました。
「それは……違うじゃないですかぁぁぁ」
 端正な顔を歪めて、涙をポロポロとこぼして佳寿美は絶叫しました。
「何が違う、それとも、娘に嘘をついたのか」
「ちがっ、ちがいます」
 ハッと壁際で悲しそうに見つめている娘の姿を見て、佳寿美の頭は冷えました。
「ハハッ、まあどっちでもいいさ。どうせ十回イッたってのも嘘だっただろ、こっちだってお前が本当は何回イッたかぐらいわかるよ」
「それは……」
 正志だってカウントしていたわけではないのですから当てずっぽうの指摘ですが、イッたとしても半分にも満たなかったであろうことは、佳寿美にだって自覚できていましたから黙るしかありませんでした。
 十回イッていないのだから、どちらにしろ約束は不成立。
 こうして一回目の種付けが終わりました。

後日談1「ハッピーハロウィン」
 瞬く間に、季節はめぐり今年もハロウィンがやってきました。
 すでに秋深い十月三十一日、真っ黒い魔女やオレンジ色のカボチャモンスター、思い思いの扮装に身を包みはしゃぎ回る子供たちに比べると、大人には少し肌寒い季節です。
 トリック・オア・トリート――「イタズラか、お菓子か!」
 華やかな子ども会のハロウィンイベントをよそ目に、田中正志(たなか まさし)は厚手のジャンパーのポケットに深く手をツッコミ、ちょっと猫背にマンションの階段を上がっていきます。
「トリック・オア・トリート……」
 通り過ぎた正志も、子供たちの掛け声に合わせて口の中で呟いてほんの少しだけ笑いました。
(もう一年か)
 階段を駆け登ると、踊り場に見たことのない銀灰色の猫が居ました。迷い込んだ野良でしょうか、正志は腰をかがめて手を差し伸べると「お前も一人か」と呟きました。
 ちょっと芝居がかった仕草で、いい三十二歳の大人が何をやっているのかという感じですが多めに見てあげてくださいね。
 それなりに、彼も経験を積みました。望むべくもない僥倖と快楽、挫折と寂しさ、不意に夜半過ぎに独り横たわる寝床で寂寥感に襲われてもシクシクと泣くこともなくなりました。
 銀灰色の猫は何だコイツと言いたげに手の匂いをくんくんと嗅ぐと、さっと階段を駆け下りて行きました。
 呆気無いものです、正志も目で追うだけでそのまま階段をゆっくりと登っていって七階の自分の部屋へとたどり着きました。
 エレベーターを使わずに、わざわざ階段を登ったのは運動のためということもありますが、今日の夜中に備えてコンセントレーションを高めたかったのです。

 今日は十月三十一日、ハロウィン。
 田中正志が、カボチャ頭の幽霊、ジャック・オー・ランタンに変身できる特別な日です。この日のために丁寧に作った新しいカボチャ頭を持って、風にたなびく黒マントに身を包むと部屋のベランダから出て、ベランダから下界を睥睨しました。
 マンションの中庭では未だ、ハロウィンの仮装をした子供たちと付き添いの親御さんやボランティアの人たちがワイワイと騒いでいます。
 そのほとんどがこのマンションの住人です。
 魔女っ子の服装をした可愛らしい少女が走り回るのを見て、正志はオレンジ色のカボチャ頭の中でニヤッと笑い――
「ガオォォォン!」
 いまだ暮れ切らぬ夜空に浮かぶ黄金色の満月に向かって雄叫びを上げました。

 昨年のハロウィン、中庭にいるマンションの住人たちの中で、運悪くお菓子を用意できなかったそのうちの何人かは、正志の毒牙にかかりました。
 芝生の上を元気に走り回っている小学生の魔女っ子、岸辺真那(きしべ まな)ちゃんも、軽微な被害を受けています。そしてその傍らで、他の奥さんと談笑している真那ちゃんのお母さんも正志に犯され済みです。
 今年はこのマンションの何人がお菓子を用意できずに犯されるでしょうか。
 それを考えると、正志は滾るものを抑えきれずに気勢を上げるのでした。
「さてっと」
 そろそろ中庭で催される子ども会のハロウィンイベントも終わる頃です。本格的に動き出すのにはまだ早いですが、この心の滾りを程よくクールダウンするために正志は少し寄り道することにしました。
 このマンションで最も心安らぐ場所、愛すべき人の住む部屋へと足を運ぶのです。

     ※※※

 正志の部屋のちょうど下に当たる『深谷』と表札のついた部屋の前まで来ると、呼び鈴を鳴らしました。
 程なくして深紅のカーディガンをふわりと羽織ったおっとりとした女性が出てきます。この家の主婦である深谷 茉里香(ふかたに まりか)です。
 二十四歳になった彼女は、すでに一児の母ですがその容姿は初めてあったときから衰えるどころか、さらに女としての美貌を増したように見えます。瑞々しい若さはそのままに、落ち着いた母性を感じさせる優しい物腰を兼ね備えた彼女は、正志が女性に求めている全てを具現化した存在と言っていいでしょう。
「田中さん……ですよね?」
 真新しいカボチャ頭の眼の部分を覗き込むようにして、マジマジとこっちを見ています。母親になった茉莉香からは、甘いミルクの香りがしました。
「ええ、そうですよ」
 脅かすつもりもなかったので、正志はすぐに頷きました。
「よかった、子ども会の人かと一瞬思ったけど、大人は仮装してませんからね。田中さんは今年もそれなんですね……」
 そう呟いて少し呆れたように笑うと、「入りますか?」と尋ねました。
 もちろん正志は、そのつもりで来たので頷きます。
 今年もこの時期になると、商社に勤めている茉莉香の夫は忙しくなります。短期出張に出ていると正志は知って訪ねて来ているのです。
 もちろん、正志の手の内を知っている茉莉香が二度と同じ罠に引っかかるとは思えませんから変な下心があるというわけでもないのですが、やはり茉莉香が一人でいる日でないと落ち着いて話も出来ないものです。
「もう、子ども会のお菓子配りは終わったんですよね」
 玄関先のダンボールの空箱を見て、正志は確認のために聴きます。
「ええ」
 茉莉香は頷きました。
「俺が居るときに、誰か来たら大変だものなあ」
 ちょっと脅すように正志が言います。
「……ふふっ、そうですねちょっと困っちゃいますよね」
 冗談で言っているのだと気がついて、茉莉香も芝居がかった声色で答えました。

「いまオッパイ飲んで寝ちゃったんですよ」
 ベビーベッドでスヤスヤとおやすみタイムでした。
「そうか……」
 挨拶できないで残念という気持ちはありましたが、あまり子供と会わない方が良いとは正志もわかっているのです。
 茉莉香の生活に迷惑をかけない約束は、今も生きています。茉莉香の娘、茉悠(まゆ)もすでに一歳児で掴まり立ちもできれば、パパ、ママぐらいは言えるようになっています。正志のような部外者が、夫婦の部屋に出入りしていることを不審に思う日も近づいてきたと言えます。
 茉悠が実は夫の子供ではなく、正志との間に出来た子供です。
 でも、だからこそ正志は会うべきではないのです。
 それなのにこうして部屋に上げてくれるのは、茉莉香の優しさと言えます。茉悠の純真無垢な寝顔を眺めて正志は、そんな茉莉香の優しさを汚したくないと彼にしては殊勝なことを考えて、眺めるだけで満足してそっと子供部屋から立ち去りました。
「お茶でも入れましょうか」
 子ども会の催しが終わってまださほど時間も経っていないので、お茶ぐらいならいいかと正志は思いました。
「うん、いただきます」
「紅茶何も入れなくていいんでしたよね」
 沸騰したお湯をティーポットに注ぎながら、茉莉香は聴きます。
「ああ」
 白いティーカップから立ち上る湯気を見ながら、正志は感じ入りました。赤ちゃんが居て、茉莉香がいてお茶を入れてくれる。
 これが温かい家庭かと思うのです。チクリと、嫉妬で胸が痛みました。
 もし出会い方が違っていたら、茉莉香がまだ独り身のときに夫の深谷 義昭(ふかたに よしあき)より先に出会っていれば、もしかしたら全てを手に入れられていたかもしれない、そう考えるとたまらなくなります。
 たとえハロウィンの不思議な力でも、時を戻すことは出来ません。
 カボチャの兜を外し、茉莉香の手づから入れてくれた紅茶を一口飲んで、そのほろ苦さに正志は少し口元を歪めました。

「田中さん……」
 しばらく雑談したあと、少し言い難そうに茉莉香は名前を呼びます。
「なにかな」
「そのハロウィンの仮面、私以外の人にも使ってるんですか」
 使っている――なかなか深い意味のこもった言葉です。
「そうだね『使って』いるね」
 隠すつもりのない正志は、即答しました。
「そう……なんですか、もしかして岸辺さんのとこですか」
「ほう、なんで分かったの?」
 去年、正志のカボチャ頭の犠牲になった家庭の中で、もっとも悲惨なケースが岸辺家でした。このマンションでも一番正志を嫌いぬいていた岸辺佳寿美が、本人のみならず娘まで巻き込む形で生贄になっているのです。
 ただ、どうして茉莉香がそれを知っているのか少し不思議になって聞き返しました。正志は、完全に秘密にしているつもりなのに。
「だって佳寿美さん、田中さんのことをすごく悪く言ってたのに今年に入ってから全く言わなくなったから」
 ああそうなのか、と正志は思いました。
 自宅に始終引きこもって、IT関係の仕事(自称)をしている正志は、実質無職のようなもので用事がなければ日がな一日マンションをふらふらとしている不審者です。
 当然ご近所の奥様方からは、評判最悪で特に正志のことを警戒していたのは小さい娘を持つ母親でもある岸辺 佳寿美(きしべ かすみ)でした。
 ご近所に、正志の危険性について触れ回っていた佳寿美が急にその話題を止めたとなれば、茉莉香がそのことを逆に不審に思っても仕方がないことです。
「たしかに、佳寿美さんに使ったなあ」
「もしかして、真那ちゃんにも?」
 茉莉香は、黒目がちの大きな瞳を見開いて正志の眼を覗きこんできます。
「いっ、いや……」
 思わず、後ろめたい正志は口をつぐみ目をそらして言いよどんでしまいました。
「本当に?」
「……さすがに相手は小学生の子だろ、そっちはやってるわけないよ」
 嘘でした。
 ロリっ娘はどうだろうという興奮を抑えきれなかった、正志は真那ちゃんにお口で奉仕させてしまっていたのでした。

 さすがにそれは一回だけのことでした、決して善人とはいえない正志も気が咎めたと見えます。まさか、小学生にフェラチオさせたなんてこと、茉莉香には絶対に知られたくなくて正志は誤魔化すように「あはは、なわけないよねえ」と笑いました。
 しばらく、正志の泳ぐ眼を黙って見つめていた茉莉香は「ふうーっ」とため息をつきました。乗り出していた身体を戻して、ゆっくりと背を椅子に持たれさせると薔薇の花びらのような唇をカップにつけて、クイッと飲み干しました。
「もし田中さんが真那ちゃんにまで何かやってたとしても、私は止める権利はないのかもしれませんけど……」
「いやいや、本当にそっちはないって」
 明らかに疑わしい眼を向けてくる茉莉香に、正志は慌てて宙を泳ぐように手を横に振いました
 慌てて否定すれば否定するほど、怪しくなるのはどうしようもありません。
「やっぱりこれは没収します」
 イタズラっぽい口調で、茉莉香は正志の側に回りこんでくると紅茶を飲むためにテーブルに乗せておいたドテカボチャを取り上げました。
「いやいや、それは困るよ」
 手を伸ばそうとすると、茉莉香はそのままドテカボチャをリビングの棚の上に持って行ってしまいました。
「うちのハロウィンの飾りにちょうどいいですよね、もう今日でハロウィン終わりですけど」
「いやいや、茉莉香さん……」
 慌てて席を立った正志は、茉莉香の名前を呟くとなんだか寂しくなってふうっとため息をつきました。
 黙って立ったまま紅茶をグイッと飲み干すと、カボチャ頭を取り返そうと茉莉香のところまで歩いていきます。ハロウィンの魔法のかかったドテカボチャは、これひとつしかないから本当にないと正志も困ってしまうのです。
 取り返すべきです。
「茉莉香さんが、相手をしてくれるっていうならそれはいらないけどさ」
 茉莉香が抱えているカボチャに手を伸ばして、彼女のミルクを溶かしたような滑らかで白い手に正志の無骨な手の平が重なりました。そのタイミングで、ふいに願望が口をついて出てしまいました。
 正志は、冗談めかして言っただけのつもりです。仮にもう一度セックスしようなんて提案しても、断られるのは分かっているのです。
 なぜなら正志には約束があるのですから、茉莉香の生活を壊さないように、この一年ずっと我慢してきたのですから。
「私が相手をしたら、もう他の女には手を出しませんか?」
 思いもかけない茉莉香の言葉を聞いて、正志はゴクリと唾を飲み込みました。さっき紅茶を飲み干したばかりなのに、口の中が緊張で乾いていくような気がしました。
(冗談だろ?)と思います。
 でも正志を見つめ返した茉莉香の夜の闇のように深い瞳は、本気の色をしているように感じました。

「ハハッ、何を言ってるのさ。約束があるでしょ、約束だから、俺は君の生活を壊さないようにずっと……」
 我慢してきたんじゃないか。正志は、最後の言葉を飲み込みました。そこまで言ってしまうと自分を抑え切れない、冗談では済まないと正志は分かっています。
「でも私の代わりに、私たちの代わりに、田中さんは他の家庭を壊しているんですよね?」
「それは……その通りだ」
 茉莉香の言葉は、正志には否定できません。本当なら嘘をついてもいいはずです、茉莉香にはもう止める権利はないのです、なぜならもう正志とは関係ないのだから。
 それでも、そう分かっていても、正志は茉莉香には嘘がつけないのでした。
「私、耐え切れませんよ。聞いてしまったら、他の人を犠牲にしてまでそんな」
「でも俺だって困るな、男だから我慢はできないし、だからってまた君を抱いていいなんて言われたら今度こそ中途半端では済まなくなる」
 正志は、それはいけないと理性では考えているから、カボチャ頭を取り返そうと手を伸ばしますが、身体が茉莉香の柔らかい肩に触れてしまいます。
 甘い香りのする茉莉香のさらさらした髪が顔に触れて、甘い香りが漂います。正志は、そのまま我慢しきれずほんの少しならと思って抱きました。
「私が……します、ようは田中さんを満足させればいいんでしょう。私はその術を知ってますから」
 覚悟を決めたように、茉莉香が正志を抱きしめてきました。密着した身体からお互いの体温が伝わります。暖かいと正志は思いました。
 そのまま首にほっそりとした茉莉香の手が回され、耳たぶを愛撫するように甘い声で囁かれると、もう正志には抵抗できません。
 気がつくと乾いた喉を潤すように、茉莉香の唇を貪っていました。
 一年ぶりのキス、ぎこちなくスムーズに舌を絡めあえたのは身体が覚えていたからなのでしょう。
 しばらくこの世で最も甘い唇を満足いくまで味わうと、正志は振り切るように唇を離して深呼吸しました。

「ぷはっ、やっぱりダメだ。そんなことさせられない」
 蕩けそうな愛情を、黒々と渦巻く蛇のような欲望を、正志は強引に理性で抑えつけて身を離します。一度、触れ合った身体を離すのがこれほど辛く感じる。だからこそ、その愛欲に流されてはいけないと正志は強く思うのです。
「私がここまで誘ってもダメなんですか」
 科をつくって上目遣いに覗き込んでくる茉莉香の瞳は、とても大きくて蠱惑的に思えました。そのまま見ていると引きこまれそうになってしまいます。
「ダメじゃないから、ダメなんだよ」
「それじゃ、理由がわかりません」
 茉莉香はちょっと拗ねたように柔らかい大きな胸を正志の胸に押し付けてきます。あくまで誘惑するようです。
「このまましたら、きっと君の全てを奪いたくなる。約束が守れなくなるから」
 茉莉香の平穏な日常を乱さないという約束。
 約束をこの一年、正志は守り続けてきました。正志の子供を産んでくれて、真摯な愛情で育んでくれる茉莉香に報いるために、涙ぐましい努力で我慢してきたのです。
 それは、ほんの少しの亀裂から台なしになってしまうかもしれません。
「あら、田中さんは凄い自信なんですねー。私が愛する夫より、田中さんを選ぶと思ってるんですか」
「それは思ってない、思ってないけど……」
 正志は、この一年で少しは人間として成長してマンションの住人とも近所付き合いをするようになって来ました。
 茉莉香の夫、深谷 義昭(ふかたに よしあき)とも会えば挨拶するし、何度か雑談をする程度にはなっているのです。
 そこで痛感したのは、茉莉香の夫は一流の男だということです。プータローと大差ない正志に比べると、正志より六歳も若いはずの義昭が本当に大人の男だと感じます。
 人生経験、社会人としての責務、結婚の有無、父親としても意識、正志と義昭ではあまりも大きな差があります。
 そして何より、茉莉香を幸せにできるのは義昭の方だと正志自身認めざる得ないのは辛いところです。

「だったらいいじゃないですか。去年の続きをやるだけですよ、夫の相手をする合間に田中さんを……満足させれば」
「うーん、そうは言っても」
 擦り寄ってきた茉莉香を抱こうか引き離そうか、正志は苦しそうに煩悶します。
「新しい約束を取り決めしましょう」
「約束?」
 正志は、甘さと苦さの入り交じった二人を縛る鎖にもなりかねないその言葉に、重い感じを受けました。
 これから提案されたことは断れないであろうという予感に戦慄を覚えたのです。
「私がこれから貴方を満足させますから、もうこのマンションの他の女は解放してあげてください……いえ、もう他の女は絶対に抱かないと約束してください!」
「……それは」
 迷いながら口を開こうとした正志に畳み掛けるように続ける茉莉香。
「同時に、私の生活は守り続けるって約束も守ってくださいね。セックスは……、してもいいけどちゃんと避妊してください」
「うむっ」
 正志は茉莉香に抱きすくめられて、身動きひとつとれず困ったように唸りました。考えこんでしまった様子です。
「虫のいい約束ですかね?」
 茉莉香に、そう上目遣いに下から覗き込まれると正志はもう断れないから余計に困るのです。
「虫は悪くないと思う、むしろ俺にとっては願ったり叶ったりだけどさ」
「じゃ、良いじゃないですか」
 茉莉香は、そのまま身体を滑らせるように正志の腰まで身体を屈めてズボンのジッパーを下ろしました。
「おいっ」
「じゃあ、お口でしますね。久しぶりだから上手く出来るかどうかわかりませんけど」
 茉莉香が正志の社会の窓に指を入れてまさぐると、元気な肉棒がピンク色の亀頭を見せました。

「いやっ、茉莉香さん?」
「クスッ、あいかわらず元気じゃないですか」
 そのまま、口内に唾液を溜めていた茉莉香は、躊躇なく正志の息子を亀頭の先から飲み込んだ。
 暖かい茉莉香の口内の感触、脳天までビリビリと電気が走るような快楽と共に妙な懐かしさを正志は感じます。
「そりゃ、元気にもなるさ」
 他ならぬ茉莉香に舐められているのだから、そう正志は湧き上がる歓喜に翻弄されながら呟きます。
 茉莉香の久しぶりの舌技、まったく衰えていませんでした。その舌使いは迸るような強さを伴っていて、それなのにどこか優しく裏筋を丁寧に舐め上げてくれる様は触れ合う粘膜に慈しみを感じます。
 これは奉仕だ、と正志は思いました。
 正志はこの一年、いろんな女に奉仕させてきました。フェラチオもパンを食べるのと同じぐらいの頻度で、日常的に受けている行為でした。
 でも正志に傅く女は、みんな正志に好意を持っていません。
「んっ、ん……」
 茉莉香が必死に舐めてくれる強烈な快楽、合間に息をつく茉莉香の温かい小さな鼻息までも心地良いのです。
 嫌がる女に無理やりイマラチオさせて、服従を誓わせて肛門まで舐めさせて見ても、茉莉香の一しゃぶりの心地よさには遠く及ばない。
 正志は、愛される充足を思い出しました。それは、茉莉香にしか埋められない正志に開いた大きな穴で、パズルのピースのようにピッタリとハマってしまうのです。
 こんなに気持ちいいなら、もう逆らえないと正志は覚悟しました。
「早くて済まないけど、出そうだ……」
 鈴口から次々と溢れでてくるカウパー汁をペロペロと舐め取られて、チュッチュと先っぽにキスされます。
 浅く深く、茉莉香が顔を前後に揺らすたびに、さらさらとした髪が揺れて正志を絶頂へと導きます。
「だふぃて、んちゅ……気持良かったらいつでも出していいですよ」
 一旦口を外して、そう言うと茉莉香はまたジュプッ、ジュプッと深いストロークでペニスを飲み込み、吸引します。
 キューッと唇を窄めて強く吸いながら茉莉香は、早く出してと射精を促すように鈴口からカウパー汁を音をたてて啜りました。
「くっ、出るぞ」
 ここまでされてはもう射精欲を耐えることはできません。
 正志は、茉莉香の髪に指を絡めて深く口内に突き出しました。
 茉莉香は、その動きを予測していたように口内でビクンビクンと脈動する陰茎を喉の奥までやすやすと飲み込みます。
 激しく反り返った肉棒は、茉莉香の喉の奥で弾けました。
 刹那、ううっと言う呻き声と共に、茉莉香の口内を焼くような熱く滾った精液が叩きつけられました。

 ドピューッ!

 激しい射精を口内に受ける茉莉香の顔は、正志には見えません。
 ですが、頭が真っ白に焼きつくような絶頂の中で、正志は茉莉香が笑ったように感じられました。第三者視点で、恍惚とした表情で正志の精液を啜る茉莉香の顔を幻視するような不思議な感覚に包まれたのです。
 あまりにも深く快楽の向こう側にイッてしまうと魂が身体から遊離してしまうのかもしれません。
 心がふかふかと浮き立つ間も、正志の陰茎は正確な機械のようにリズミカルに脈動して放精します。
 ドピュ! ピュルピュルピュルルルッ……。
 口内に次々と吐き出される白い奔流を、茉莉香はそのままゴクッゴクンッと一息に飲み干しました。
 ゴックンと最後の一滴まで飲み込んでしまいます。
「ふうっ、たくさん出ましたね」
 ペロペロと陰茎を舐めて綺麗にすると、チュルっと亀頭の先を啜る茉莉香はやっぱり天使のような笑顔で微笑みを浮かべていました。
「ああっ……」
 その笑顔を見て、正志はなんと美しい、愛しい女なのであろうかと胸がいっぱいになりました。
「また硬くなっちゃいましたね」
 もう一度しましょうかと言う茉莉香の誘いを、正志は意外なことに素っ気なく断りました。
「いや、今日は帰るよ」
 あまりに深く感じ入ったせいか、一年振りのフェラチオの余韻をしばらく楽しんでいたい気持ちでもあったのです。
 それに、正志は少し一人になって考えなければならないこともありました。
 二人のこれからのことです。
 あくまでも不倫の形でしかないのに、また始まってしまったこの関係をどうすればいいのだろうかと苦悩します。
 幸せになれるはずもない、幸せにできるはずもない、どこにも行きつけはしないというのにどうしてこうなってしまうのでしょう。
 諦めていたのに、諦めているのに、運命はそれを許さないのかと正志は苦悩します。
 ちょっと自分に酔いすぎですが、彼は彼なりに真剣に考えているのです。

「田中さん、忘れてました……」
 玄関先まで正志を送った茉莉香は、少しイタズラっぽい笑い声をあげてこう呟きます。
「ふふっ……ハッピーハロウィンです」
 茉莉香がくれたお菓子には、カボチャの形をしたクッキーで、ひときわ大きなクッキーにハッピーハロウィンとチョコレートで刻印されていました。
 幸せなるハロウィン。
 それは、良いハロウィンをお過ごしくださいという定型句の挨拶、ハロウィンで人が幸せになるわけではありません、せいぜいがグッドモーニング程度の意味です。
「ああっ、ハッピーハロウィン」
 それでも万感を込めて、正志はお礼代わりの挨拶を返します。
 先の見えない悩みの中でも、愛した女性にお菓子を貰えた正志は幸せでした。
 トボトボと、自分の部屋へと戻る頃には正志が立てていた今年の陵辱計画のことはすっかり吹き飛んでしまっていました。

 ともかくこうして、新しいカボチャ頭はまた深谷家のリビングに飾られる事となり、正志は今年のイタズラを中止させられてしまったのでした。

第四章「女性専用車両 乳首編」
(なにこれなにこれ、なにこれ……)
 現実とは思えない、思いたくない気持ちから私は呟いた。
「なんでこんなことになってんの……」
 場所は、早朝の電車の中。私がいつも通学に使う一番前の女性専用車両。私はそこで裸になり、おなじく裸になって醜い裸体を晒しているミッちゃんに胸をもみくちゃにされているのだ。
 なんでこんなことになってしまったのか――

 列車の中に、大きく開いたスペース。その真ん中の長椅子にどっかりと座り込んでいるオバサンを見た時、私は強烈な既視感を感じた。
 会うのは昨日の帰りの電車に引き続き二度目のはずだ。
 それなのに、何度も何度もこんな出会いを繰り返しているような気分を感じるのだ。多分錯覚だろう。
 どうせそんな直感が働くのなら、せめて車両に乗り込む一歩手前で気がついていればよかったのに、こうして顔を忘れるまでオバサンのことなんか忘れていたのだから私の記憶もいい加減なものだ。
 私はいつも時間に余裕を持たせているから、電車一本ぐらいなら乗り過ごしても大学の講義には間に合ったのだ。
 今からでも降りられないかと後ろを振り返る。車両のドアは無残にもプシューと音を立てて閉まるところだった。やけにゆっくりと閉まっている。
 今ならすり抜けて外に出られるのではないか、そう思って身体を扉の隙間に滑り込ませてみるが、出っ張った胸とお尻が邪魔で通り抜けられそうに無かった。
「おいおい、アヤネちゃん。せっかく乗ったのに降りるのかい。学校に行くんでしょ」
「そうですけど……」
 さすがに面と向かって、貴方に会いたくなかったんですとは言えなかった。
「朝も会えるなんて奇遇だね」
「そうですね」
 オバサンの浮かべる屈託のない笑みに、私も愛想笑いを返すしかない。
「それじゃあ、さっそくだけど服を脱いでくれるかな」
「はっ?」
「いや、服だよ。暖房強めに効いてるから、裸になっても寒くないでしょ」
「あの……意味がよくわかりません」
 なんで電車の車内で裸にならなきゃいけないのか。
「ああっ、そうか。大丈夫だよ、俺も脱ぐからね」
 そういうとオバサンは、自らくすんだ灰色の背広を脱ぎ始めた。ズボンもパンツもさっさと下ろしてしまう。
「ちょちょ、ちょっと待ってください。おかしいですよ」
「なにが?」
 シャツを脱ぎ捨てて、すでに醜い中年の裸体を晒している男……、ではなくて男っぽくみえる女性は私に不満気な顔を向けた。

「いえいえ、電車の車内で裸になるとか理由がわかりません」
「別にいいでしょ理由なんて。俺が脱げって言ってるんだから脱ぎなよ」
「ええ……」
 オバサンはじっと私の当惑した顔を見つめる。
「もしかして、俺のことをまた忘れてるとか?」
「いえ覚えてますよ、中畑道和、四十二歳独身でしたよね」
 あんな強烈な記憶忘れるわけない。
「歳まで覚えてなくてもいいんだけどね」
「昨日お名刺いただきましたから」
 ミッちゃんは、名刺に歳までは書いてなかったはずだけどなと苦笑すると私に理由を告げた。
「昨日も脱いでもらったじゃん、俺が男性であることを証明するために」
「あっ、あれですか。でも何度確かめても女性ですよ」
 そうなのだやるだけ無駄だ。私の意思は変わらない。間違ったことを、認める訳にはいかない。そういう節を曲げない正義感の強さは、私は生まれついての性分というものだった。
「だから今日も確かめて貰おうと思ってさ」
「でも裸になるなんて……」
「なんで、俺が男だったら問題だけど『同じ女性なんだから』裸を見られるぐらい、いいでしょ」
「しょうがないですね」
 そう殺し文句で迫られると、私も従わないわけにはいられない。いつものロングコートと中に来ているセーターと下着を全て脱ぎ捨てて綺麗に長椅子の上に畳んだ。
 裸体になって直立不動で立つ私を、ミッちゃんは上から下まで睨めるように見つめた。例え相手が女性でも、指すような視線で見られると怖気が走るものだ。

 そうだ別に女性だって、裸を見られるのは恥ずかしくて当たり前じゃないか。
「アヤネちゃんは相変わらず、いいおっぱいしてるな」
 そう言うと、ミッちゃんは私の胸を下から掴むようにして力強く揉み始めた。グニュグニュと、柔らかい私の胸は面白いように形を変える。
「胸はあんまりやめてください、自分でも好きじゃないんです」
 いい乳だとお世辞を言われても、自分で不格好な胸だと自覚しているのだから嬉しくない。大きな瓜が二つくっついているような張りのない垂れ乳で、乳首も乳輪も大きめだし大きすぎる乳房に青い静脈が浮かんでいるのも醜いと思う。
 そんな私のコンプレックスの塊を嫌らしく揉む、その手を跳ね除けられなかったのは、きっとそれをするとまた女同士だからいいだろうって問答が始まることがわかりきっていたからだ。
 女同士だからって、やってもいいことと悪いことがあるはずなのに。
「こんなにデカくて魅惑的なオッパイはなかなかないぞ、ほら乳首だってこんなに柔らかくて伸びる……すげなこれ」
「ちょっと止めて! 引っ張らないで、千切れちゃいますよ」
 私の両方の乳首を指で摘み上げると、思いっきり引っ張ってくるミッちゃん。キリキリと痛みが走り、さすがに私は止めさせようとした。
「なんでだめなのさ」
「痛いですよっ、痛いですからダメに決まってます!」
 それ以上に嫌だ、指で伸ばされて分かったけど私の乳首は凄い伸びるのだ。ピザの上でとろけたチーズみたいにあんまり柔らかく伸びるので、自分でも怖くなった。ミュニュウウウ―ッて無理やり伸ばされて、乳首が伸びたまま元に戻らなかったらもうお嫁にいけなくなるじゃない。
「ふうん、痛いからダメなのか」
 ミッちゃんは不服そうに鼻を鳴らして私の乳首から指を外すと、遠くで取り巻いている女性を一人呼んだ。

「おいっ、マユミちょっとこい」
「あーい」
 長身のスラリとした背格好。歳の頃は二十代後半ぐらいか妙齢の女性で、艶のあるセミロングの黒髪を綺麗にセンター分けしている、なかなかの細顔美人だった。マユミというのが彼女の名前なのだろうか、呼ばれて来た所をみるとミッちゃんとも知り合いらしい。
 こっちに来るまでに首に巻いていた暖かそうなストールを落とした、その下に小さなハートのついたチョーカーを付けている。全体的にほっそりとした印象の彼女は、本来ならモデル体型なのだろうけど、妊娠しているらしくぽっこりと大きなお腹を抱えている。
「脱いで胸を見せろ」
 私が唯々諾々と従ったように、彼女も抵抗せずに着ている淡いピンク色のマタニティーウエアを脱ぐ。身体のラインがよく分かるウエアはモコモコで暖かそうなデザインだったけど、中から姿を見せたやや小さめの乳房を覆うブラジャーは、色鮮やかなパープルだった。ブラを外すと、やはり妊娠しているらしくほとんど黒に近い褐色の乳輪。
「あっ」
 私は思わず驚きの声をあげた。別に、妊婦さんの乳首が黒かった事に驚いたわけではもちろんない。
 そのほっそりしたの妊婦さんの体型には、不釣り合いなほど大きな黒乳首の先に、大きな銀の輪っかが嵌っていたのだ。いわゆる乳首ピアスっていうやつだ。
 小さい乳房の割には、大きめの乳首に大きな穴が開けられてそこを武骨な金属の輪っかが通っている。妊婦の乳首にピアスがついてるなんて……。
 私は、見てはいけないものを見てしまったような気がして思わず眼を背けた。
「おっと、アヤネちゃんに説明するために脱がせたんだからちゃんと見ててよ」
「いったい何なんですか、この人はなんでこんな……」
 いきなりピアスを乳首にはめられた妊婦さんを連れてこられても、私は当惑するしかない。
 見ろと言われても痛々しくて見ていられない。
 なんで妊娠してる女性にこんな酷いことができるんだ。誰が妊娠後期の女性の大事な乳首にピアスなんて、これから赤ちゃんにオッパイをあげなきゃいけないのに。
「アヤネちゃんそんな顔するなよ。こいつは平気なんだよ、乳首にピアスつけてもこうやって乳首を引っ張って伸ばしても女同士なんだからさ」
 そう言うとミッちゃんは思いっきり妊婦の乳首ピアスを引っ張った。ぐにゅっと、千切れてしまうんじゃないかと怖くなるほどマユミさんの乳首は伸びる。
「馬鹿なことしないでください、女同士とか関係無いでしょ!」
 私が目に涙を溜めて真剣に怒ると、さすがにオバサンも肩をすくめて悪びれた態度でおどおどと私をなだめた。

「冗談だよ、本気にするなって……」
「こんなのひどすぎます……何が冗談ですか、これじゃあんまりにも……」
 私があまりのショックに涙を流してしゃくりあげていると、私をなだめ慰めるような仕草でマユミさんが私の前にやってきて、乳首ピアスをチリンと揺らしながら身体を反転させて、背中をそっと見せた。
「あんたこれを見ろよ。あたしは変態女だから、これで嬉しいんだ。あんたに同情して貰う必要なんかない」
「えっ、だって……」
 マユミさんの背中には『変態M女』とマジックで落書きがされている。彼女はこれを見せたかったのだ、でも意味がわからない。
 これは一体なんだろう。変態M女って?
「あのね、こうやってこのオジサンに身体に書かれるとその通りになっちゃうのよ。あたしは変態M女って書かれたから、そういう性癖になったんだ。だから、あたしは自ら望んでこういう身体になったってわけ」
 私はポッカーンと口を開けた。
 マジックで書かれるとその通りになる?
 何を馬鹿なことを言ってるんだって話だ。それより私が気になったのは、別のことだった。
「あの……貴女の名前たしかマユミさんでしたよね。マユミさんは、あの人が男に見えるんですか?」
 そう私は、彼女がオジサンと言っているのを聞き逃さなかった。
「あんたはあの人が男以外の何かに見えるの?」
 今度は、マユミさんのほうが私を呆れた顔で見る番だった。ミッちゃんも、自分のことを男だなんていう時があるけど、どうもこの人にも男に見えているらしい。
 私はもう一度ミッちゃんの弛んだ身体を上から下まで眺める。
 弛んだ腹や、その醜悪な面相なんかを。確かに男っぽくみえるけど、それはオバサンだからで、下腹部にあるあの不気味な赤黒い肉塊もクリトリスなんだ。
 私はおかしくない。
 だとすると、ミッちゃん……は、悪ふざけばかりするから冗談で言っているだけかもしれないが、このマユミさんはオバサンを男だと錯覚させられている。
 思えば三十分足らずの電車内の時間がゆっくりと引き伸ばされているこの環境、ミッちゃんの都合の良いようにみんなが動いている事実。
 確かに魔法のような力が働いていると思ってもいいかもしれない。

 ほんの少し前の私なら、絶対にそんなこと認めなかったのに、私の思考も柔軟になったものだ。魔法のような現実を揺るがすルールがあるとすれば、あのマジックで身体に書かれたことがそのままその人の性的嗜好になるなんてのこともありえるかもしれない。
 その様な可能性があるなら、あのマジックで書かれるリスクだけは避けるべきだ。
 そんな、私の思考の流れを、もしかしたら読んでいたのだろうか。
 ミッちゃんは、手に持ったマジックペンを私に向けて高圧的に微笑み「じゃあアヤネちゃんも、M奴隷にでもしてやるかな」と胡乱な目付きで脅してくる。
「いやっ、それだけは止めて下さいッ!」
 私は必死に頼み込んだ、いまでもマジックで書いただけで人がその通りになるなんて信じられないのだけどリスクは避けたい。
 それに、身体に文字を書かれること自体なんか気持ち悪いし。
「だって、乳首引っ張ったぐらいでダメっていうしさ」
「胸ぐらい好きにしていいから、そのペンをこっちに向けないでください!」
 ミッちゃんは跪いて懇願する私をしばらく面白そうに眺めていると、マジックペンを脱いだ背広のポケットにしまってくれた。
「やっぱりアヤネちゃんは賢いね。そう素直にお願いしてくれたら、俺はもちろん無理強いはしないよ」
 交換条件に胸を自由にしていいと許可してくれたからねと、ミッちゃんは付け加えて悪びれた顔で笑った。結局、要求を飲まされてしまった。
 少し口惜しいけれど、M奴隷にされる可能性を回避できたことに私はホッとした。
「じゃあ、乳首伸ばすお手本を見てもらおうか。マユミ、乳首を伸ばして見せてやれ」
 マユミさんは、左右の乳首ピアスに指をかけると自分でニュッと伸ばした。妊娠しているせいだろうか、ただでさえ哺乳瓶の先に付いている吸口みたいに飛び出た乳首が、ピアスに引っ張られて私の親指ぐらいまで引き伸ばされている。
 ピアスの穴まで引き伸ばされているので、千切れるんじゃないかとハラハラする。

「乳首が大きいのはマユミが妊娠しているせいもあるんだろうが、それだけじゃないからな」
 ミッちゃんはやはり読心術でも使えるのだろうか。私の思っていることを読んでいるように言い当てると、こう続ける。
「マユミの乳首も最初は小豆粒みたいに小さかったんだ。それがどれだけ伸びるか実験してみたんだよ」
 ミッちゃんは恐ろしいことを言う、人の乳首がどれほど伸びるか実験ですって?
「ピアスも最初は小さいのから初めて、どんどん大きな穴を開けていったんだ。ここまで肥大化して伸びるようになったのはマユミの鍛錬の賜物ってやつだな。凄いと思ったら褒めてやってくれ」
 マユミさんは嬉しそうに笑うと、頬を恥ずかしげに染めている。
 たしかに凄いと思うけど、それは「凄く酷い」ってやつだ。
 よくもここまでと、人間の身体を道具のように扱ったミッちゃんに憤りを感じる。
 でも私も、他人ごとに義憤を感じている場合ではなかった。
「アヤネちゃんの乳首は、元からこの大きさこの柔らかさだからな。クククッ、伸ばしていけばいったいどこまで大きく長くなることか楽しみだ」
「私はこんなピアス絶対つけませんからねっ!」
 想像しただけで恐ろしく、涙目になる私をミッちゃんはなだめる。
「もちろん、アヤネちゃんのような素晴らしい乳に傷なんてつけないよ。これは芸術品だからな、美しさを損なうようなことはしないと約束しよう」
 でも伸ばさないとは約束してくれないんだ、私はミッちゃんに思いっきり左右の乳首を捻り上げられて、先っぽの痛みに呻きながら化物みたいな細長い乳首を抱えて生きる、暗澹たる未来予想図に目が眩むような思いがした。
(私まだ恋もしてないのに)
 好きな男に抱かれたこともないのに、人様に見せられない乳首になるのかな。

「アヤネちゃん、あんまり引っ張ると痛いか?」
「いえ、さっきよりはマシですけど」
 幸いなことに私の乳首は柔軟にできていて、弄られているうちに勃起したせいもあって慣れてきてしまっている。
 鈍い痛みよりも、恐ろしく引き伸ばされている自分の乳首を見つめる心のほうがズキリと痛んだ。
「これやってると、乳首の皮が厚くなってきて痛みもなくなってくるからマユミのときもそうだったし」
「あまり慣れたくはないもんですね」
 私の乳首の先はピンク色だけど、周りの乳輪は茶色に近い。乳首の皮が厚くなってくるということは色素沈着して黒ずんでしまうってことだろうか。
 目の前で乳首ピアスを引っ張り続けているマユミさんの伸びきった褐色の乳首を見ていると、本当に申し訳ないのだけどああはなりたくないと思ってしまう。
 マゾヒストにされてしまった彼女にとっては幸せなのかもしれないけど、女としては終わっていると言っていい。
 あんなに美人でスタイルもいいのに、簡単に終わってしまうんだ。私は、女の儚さを感じて悲しくなった。
「アヤネちゃん、乳首は気持ちいい?」
「えっー、うんと……よくわかりません」
 ミッちゃんは、私の後ろに回って乳房の根本から乳首の先まで肉を波打たせるようにブリュリュンッと強くしごいた。
 おっぱいの扱いはそれなりに手馴れているらしく、私を気持ちよくさせようという必死さは伝わってくるのだが、何せ目の前に大きな銀ピアスを乳首につけられているマユミさんがいるのだ。
 それを見ていると、悲しすぎて胸が苦しくなる。オッパイを適度な強さでマッサージされる気持よさはあっても、性感に浸りきるような気持ちにはなれないでいた。
「ふうっ、アヤネちゃんはまだまだみたいだな。オナニーとかしないのかな」
「ええっ、ほとんどしませんね」
 躍起になって私の胸を嬲っていたミッちゃんだったが、私がいつまでも熱くならないので少し疲れてしまったようだった。
 苦しげにどかっと座席に座り込んで呼吸を整えているミッちゃん。中年のおばさんにしては、いつもハイテンションで無尽蔵の体力を誇っているように見えるけど、やっぱり人の子なんだなあと思う。いつも面倒なことに付き合わされている私はそれに少しホッとするし、根負けさせてやってざまーみろって気持ちもある。

「ふうっー。まっ、乳首の開発はゆっくりやっていくことにしよう」
 ミッちゃんは少し休んでからそう私にとっては至極迷惑な宣言をすると、気を取り直したように立ち上がった。
「よし、ついでだ。久しぶりに抱いてやるから壁に手を付けマユミ」
 ずっと無表情で黙って大きなピアスで牽引して乳首を伸ばしていたマユミさんは、嬉しそうに目を輝かせた。
「抱いていただけるんですか」
「ああっ、さっさと準備しろ。俺も溜まってるからな」
 マユミさんはお腹に巻いているお腹の大きな妊婦用の黒い腹巻を剥ぎ取ると、ブラとおそろいだった綺麗なレースのついたド派手な紫の大きめのショーツも脱ぎ捨てる。
 そして、ミッちゃんに言われたとおりにおしりを突き上げて腰を突き上げた。
 私はと言うと(女同士で抱くとかいってどうするのかなー)と思ってそれを見ている。特に指示はないから、もうミッちゃんたちとは向かい側の座席に腰掛けて休むことにした。
 出来れば、さっさと服を着たいところなのだがそれをすると逆にミッちゃんを刺激しちゃうんじゃないかなと思って怖くて出来ない。
 こうして落ち着いて見ると女性車両とはいえ、素っ裸で座ってるなんてなんだか暖房が効いてるのに肌寒く感じて、心細くちょっと落ち着かない気分だった。
 見ろと言われているからには、目を背けるわけにはいかないんだろうなと思う。だから、見たくもない二人の行為を私はじっと観察する。
 お尻を突き出して、女性器のピンク色のビラビラを指で広げているマユミさんに、ミッちゃんは「違うアナルだ」と言った。
「はい? もちろんアナルの方も使えるようにはしてありますけど……」
 マユミさんは顔だけ振り返って意外そうな顔をしている。
「ほらまあ、膣の方は腹に子供がいるからな一応な」
「優しいんですね……」
 マユミさんは艶然とお尻を付き出し、片手で手をついて片手でお尻の穴を広げた。どうやるのかなと見ていると、やっぱりミッちゃんの人並み外れた大きなクリトリスを挿入するらしい。

 やがて、ピストンが開始される。ミッちゃんが腰を打ち込むときにパンッ、パーンと音がするので激しい抜き差しが行われているのは分かる。
 しかしお尻の穴なんて出来るものなのだろうか。そう思った矢先、挿入されているマユミさんはすぐにアンアンと嬌声を上げ始めた。お尻の穴を突き上げられるたびに、とても気持ちよさな声。
 女は演技をするというけど、火照って紅潮したマユミさんの、恍惚にとろんと濡れた瞳は本気にしか見えない。アナルで、本当に感じているのだ。
 マユミさんは先程「アナルの方も使えるようにしてある」と言った。私の素人判断では、お尻なんて濡れないし、潤滑油になるものもないのに無理やり挿入すると粘膜を傷つけて痛いのではないかと思う。だれど、スムーズに擬似セックスをこなす二人を見ると、お尻の穴を女性器と同じように使用する手立てがあるのだと思えた。
 まともな性経験がない私には、想像もつかないことが眼の前に起こっている。
 汚らわしい見たくないなと思っているのに、こうして見せつけられてしまうと『女性同士』の擬似性行為に深い興味を感じて、観察してしまう自分がいる。
 ちょっと胸が熱くなった、自分がこんな変態行為を見て興奮しているとは思いたくないけれど、心の臓がドクンドクンと高鳴った。
 お尻の穴でするなんて、しかも女同士でなんて、そんな変態行為は「自分の時」の参考のに目が離せない。
「あの、ご主人様ぁ……」
 荒い息の下で、マユミさんがいつもとは一風変わった甘ったるい声をかけた。
「なんだマユミ」
 ピストンを緩めて答える所を見るとご主人様というのは、ミッちゃんのことなんだろう。
「あのこの前定期健診がありまして、あと一ヶ月ほどでご主人様の赤ちゃんが産まれるそうなんです」
「そうか、それはおめでとうと言ったほうがいいのかなあ」
 ミッちゃんは、嬉しそうにシニカルな微笑みを浮かべると、クククッと声を漏らした。

「それでその、ご主人の子供を産んだあとのことなんですが、私がそのまま育てていいでしょうか」
 少し声のトーンを震わせてマユミさんは懇願する。身体の動きが完全に止まっていて、強張っているのが私からでも見て取れる。
「はっ、なんだそんなことか……。生まれたら捨てるなり育てるなり自分で勝手にしろよ。もちろん認知なんかしないからな」
「ありがとうございます! ご主人様のお許しがいただけたので、元気な赤ちゃんを産みたいと思います」
 ホッとしたらしく、全身が緩んだのがわかった。本当に嬉々と目を輝かせて嬉しそうに頬を紅潮させている。
「おい、ケツ穴が緩んだぞ」
 ミッちゃんが苦笑しながら指摘すると、マユミさんは慌てて力をいれた様子だった。
「申し訳ありません、せっかくご主人様にお尻の穴を使っていただいてるのに」
「まあいいさ、今は大事な時期なんだろ。無理するなよ」
 口ではそんなことを言って、出産間近の妊婦に対して無理な体勢を強いているのは誰だろう。私は他人ごとながら、自分勝手なことを言うミッちゃんにイライラしてきた。
 また私の正義感が盛り上がって、余計な口出しをしてしまうところだ。
 だけど、この時ばかりは私にはもっと気になることがあった。二人の会話を聞いていると、どうもマユミさんはミッちゃんの子供を妊娠していると思い込んでいるようなのだ。しかし、そんなことはあり得ない。
 ミッちゃんは『女性』なのだから女同士で子供が出来るなんてありえない。マユミさんはどうもミッちゃんのことを男性だと勘違いしているようなので、擬似セックスを行う内にそういう錯覚に陥ってしまったのかもしれない。
 そう思うと、怒りよりも悲しすぎて居た堪れない気持ちになる。
 マユミさんの悲惨な境遇を勝手に想像して、打ち沈んでいる私にミッちゃんが声をかけた。

「おい、アヤネ」
 セックス中で気が大きくなっているのか、呼び捨てにされて私は少しムッとする。
「はい、なんでしょうか」
 まあ、年上だし言葉遣いが横柄なのは仕方がない。
「この前みたいに、アナルに指を突っ込んで前立腺を刺激してくれ」
 しかしこの横柄過ぎる命令は、仕方がないでは済まない。
「えっーアナルって、ミッちゃんの女性器のことですか……」
 そう言えば前に、指を入れて確かめさせられた。
 歳のせいなのか何なのか知らないけど、ミッちゃんの穴に指を突っ込むと排泄物の匂いがこびりつくのだ
「まだアナルを女性器って思い込んでるのか。あーもう、それでいいよ。早く中指を思いっきり穴に突っ込んで、くの字型に曲げておなか側をさすってみてくれ」
(前立腺を刺激しろって言われても……)
 前立腺は、男性のみにある器官のはずだ。つまり女性のミッちゃんにはないはずなのだ……などと考えながら、それでも私は渋々と指をウェットティッシュで軽く拭く。
 ミッちゃんの言われたとおりに中指を穴の奥まで挿入して、お腹のほうに向かって指をくの字にしてグッと曲げて撫でてみる。
「うあそこ、そのこりっとしたとこを擦るんだ、早くしろ!」
 たまらないといった感極まった声で、ミッちゃんは荒々しく命じてくる。逆らう気も失せた私は、言われたとおりに穴の中に当たる硬い筋のようなものを指の腹で撫でる。こりっと撫でるたびに、ミッちゃんは「あひぃ」だの、「うひぃ」だの情けない嬌声を上げる。
 なにせ人間の粘膜の穴だから、言われるままに強くして大丈夫かと思っておっかなびっくりの行為だったが。
 本人がもっと強く強くと頼むので、もう面倒臭くなって思いっきりゴリっとやってやった。強すぎても、自業自得だ!
「ひゃぁああっ!」
 ミッちゃんが情けない叫び声を上げて腰をブルブルッと震わせた。腰だけではなく、すぐに全身が漫画かと思うほど激しく痙攣した。
「おおぅ!」
 最後に腰をパーンパンと打ち付けると、ミッちゃんは感極まったらしくマユミさんに伸し掛かるようにぐったりと動かなくなった。

 妊婦に伸し掛かるなんて、どういう神経をしているのか。文句を言う代わりに、ミッちゃんの穴の中をかき回してやった。
 そのたびに、アンアンと呻くから面白い。少しは懲りるとイイんだ。
「あたしのお尻を使っていただいてありがとうございました。具合はいかがですか」
 マユミさんは、ミッちゃんに酷いことをされているのに気遣うような声をかけている。ミッちゃんは、それには答えずゆっくりとお尻の穴から長いクリトリスを引き抜く。
 そして、私に向かってこんなことを言ってくる。
「女にケツの穴弄られて、女のケツの穴に出すとかたまんねえなあ……。ふうっ、アヤネちゃんは前立腺刺激の才能あるんじゃねーかな」
「止めて下さい、そんなの褒められても嬉しくありません」
 私は、すっかり臭い匂いを放つ自分の中指を、ウェットティッシュで拭きながら憮然とした表情で睨んでやる。
 どうせ褒めてあげるなら、身重の体で頑張ったマユミさんを褒めればいいのにと思っていると、ミッちゃんはようやく「マユミもよく括約筋を鍛えてたな、なかなかいい締りだったぞ」などと御座なりに褒めていた。
「ありがとうございました、またお使いいただければ幸に存じます」
 一人の女としてではなくただの穴として褒められても、マユミさんはそんなことを言う。
(ミッちゃんの奴隷、ではなくて変態M女だったっけ……)
 ご主人様が相手となると、Mの女性はこんな風になってしまうものなのか。あのマジックペンで一言、背中にでも書き入れられたら自分も……バカバカしい話だと思いながらも、私は恐ろしさに身震いする。
「アヤネちゃんのせいで、すっかりアナルイジられるのくせになっちまったな」
「アナルじゃなくて、女性器です……」
 私がこだわって訂正するのを、ミッちゃんは鼻で笑う。
「まっ、どっちでもいいやな。もう一回やってくれるか」
「わかりました……」
 濃いモジャモジャの毛に覆われたミッちゃんの穴に指を差し込む。そこをかき回して感じさせるのは、決して楽しい作業ではない。
 しかし、今は変に逆らわない方がいいと感じたし――

 私の指先に前立腺を刺激されて、またピンッと勃ち上がったチン……クリトリスをマユミさんが前に垂れた自分の髪をさっとかきあげてから、舐め始めた。
 口内で根本まで一気に飲み込むようにして、ジュプリジュプリとイヤラシい音を立ててストロークする。
 ジュプ、ジュルルル、ジュプ……。
「んふっ、きもふぃいいでふか?
 マユミさんはミッちゃんの勃起したモノを奥まで咥えたかと思うと、玉筋をフェロッと舐め上げてから、上目遣いに聞く。
「おお、久々にお前の舌技を味わってるぞ。肛門をイジられながら、玉を責められるのはこれでまた違った気持ちよさだ」
 ミッちゃんの喜ぶ顔を見て、マユミさんも嬉しそうに頬を染めてお口でご奉仕を始めた。
 ――そうだ、この状況は私にとって都合がいい。
 あの据えた匂いのする肉棒を舐めされられなくて済むし、喉の奥に生臭い液体を注がれなくても済むのは私にとって利益だ。
 ミッちゃんの穴をほじくるのもキツいが、フェラに比べればなんてことはない。私は、あくまでも自分のために、マユミさんの舌のご奉仕に合わせてヌメる穴をほじくる動きを調整する。
 呼吸を合わせれば、何も合図しなくても穴の中がギュウギュウと収縮して、ミッちゃんがヨガっているのが文字通り指先から分かるのだ。
「うおぅ、クソぉ、気持よすぎて我慢出来ない……またイクぞっ!」
 どこに行くのか、ミッちゃんはブルブルッと身体を震わせた。指先の穴の締りから、ミッちゃんが性的なオーガズムに達しているのを私も感じた。
 小汚い中年のオバサンを喜ばせても、私は嬉しくもなんともないけれど、人が絶頂に達する瞬間を目のあたりにするのは、こう興奮するのも事実だった。
 マユミさんは、喉をごくごくと鳴らしてミッちゃんの先っぽから放出される快楽の結果を飲み干していた。
 あんな生臭くて飲みづらいものを、よくもあんなにスムーズに飲み込むものだと呆れつつも感心してしまう。

 私はすっかりまた臭くなってしまった指先をウェットティッシュで拭きながら、どうせもう一度ぐらいやらされるんだろうなと二人の様子を見ていた。
「ご主人様の精液、相変わらず濃ゆくてたまりません……、下のお口にも欲しいんですが」
「おいおい、そっちはやめとけって」
 ミッちゃんはマユミさんのふざけた懇願に満更でもないらしく、嬉しそうにたしなめている。そう言われて、本当に出産前の妊婦の子宮を突き上げるほど鬼畜でもないようだった。
「じゃあ産まれたら、次もご主人様の子種で孕ませてくださいね」
「そりゃあ、マンコの締りが戻ったらまた出してやってもいいけどよ。また父無し子の赤ん坊を産むつもりなのか」
「はい、蓄えも多少ありますし人並みに稼ぎもありますから心配いりません。お好きなときにいつでも種付けしてもらえば……」
 はたで聞いていて、耳を覆いたくなるような酷い会話だった。
 M女とご主人様の、いわゆるプレイってやつなのだろう。あまりにも浮世離れしたバカらしい児戯を見せつけられて、私はマユミさんがイジメられてるとか、虐げられているとか、まともに怒っているのが馬鹿らしくなった。
 こんな会話で、ミッちゃんも興奮しておっ勃てているのだから付き合いきれない。
「おい、アヤネちゃん。すまんけどさ」
「はいはい」
 私は、仕方なくまたミッちゃんのお尻のアソコを刺激する作業に戻った。どうせ前ではマユミさんが勃ったモノを舐め始めているのだろう。
 とにかく私は、早くミッちゃんを精根尽き果てるまでイかせて、このバカらしいゲームを終わりにしなければならない。
 私に後ろの穴をほじくられて、マユミさんに敏感な所を思いっきり舐め吸われて「うあっ! クソッ!」というミッちゃんの気持ちよさ気なイキ声を聞きながら、本当にどうしてこんなことになったのか、答えのない問に自己を没入させる。
 完全にミッちゃんがイッたらしく、飲み干したらしいマユミさんの「濃いのをありがとうございます」という声が聞こえた。
 彼女が言うには、お腹の子供の栄養になるそうだ(私には意味がよくわからない)。ただもうこの盛り上がった雰囲気だと、これで終わりにはならないだろうと予測して、穴をほじくる手は止めない。
 予想通り、ミッちゃんとマユミさんは、また新しい周回に入ったようだ。私はただ二人の補助のために、後ろの穴をほじくるだけ。
 ゆっくりと進む時間、電車はまだ駅につかない。幸か不幸か、考え事に耽る時間はまだまだたっぷりとありそうだった……。



プロフィール

ヤラナイカー

Author:ヤラナイカー
おかげさまでプロ作家になって五年目です。
ボツボツと頑張っていきますので、今後ともよろしくお願いします。
(プロフの画像、ヤキソバパンツさんに提供してもらいました)



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