第十一章「怒りか、楽しみか」 |
「妊娠していますね」 あらかじめ覚悟は決めていたものの……改めて産婦人科の医師からそう告げられると、茉莉香は落胆の色を隠せませんでした。 「すでに八週目に入ってますね。つわりなどあると思われますが、安定期までは無理しないようにしてください」 茉莉香は、「ありがとうございます」となおざりに頭を下げて診察室を後にした。控え室では、満面の笑みを浮かべた若い看護師になぜか産婦人科まで付いてきた田中が「お父さん、おめでとうございます!」などと話しかけられていい気になっている。
(何がお父さんよ!) そう茉莉香は憤るが、田中が本当に『お父さん』である可能性が極めて高いことにすぐ気がついて暗澹とした気持ちになります。 田中は、子供のお父さんであっても夫ではないのです。看護師におだてられて調子に乗っている田中の様子をため息混じりに見つめて。 (はぁ……もうこの病院は使えない) ……などと、考えます。茉莉香の気分はどんどん沈んで行きました。 隣で何食わぬ顔をしている田中への怒りを掻き立てなければ、今にも泣き叫んでしまいそうなほど、茉莉香は暗く不安定な気持ちを抱えているのです。 帰宅の途につく間も、終始田中は機嫌が良くて、対照的に茉莉香は落ち込んでいました。 茉莉香は、自分のお腹をそっと見つめますが、まだ外見上はまったく変化はありません。本当にこの中に、隣で脳天気にはしゃいでいる田中の子供がいるのかと思うと、吐き気がこみ上げてきます。 つわりなのでしょうけど、それ以上に嫌悪感が強いのです。歩きながら手を握ろうとしてくる田中の手を、茉莉香は何度も振り払いました。 住んでいるマンションが近いのに、この男は一体何を考えているのでしょうか。 夫ではない男、しかも田中のようなマンションで評判の悪い得体のしれない男と手をつないでいるをご近所の人に見られたら、茉莉香は身の破滅です。 そうして、こんな男の子供を孕んでしまっている自分の今の身の上を思うと、夫に申し訳なくて罪悪感に押しつぶされてしまいそうな気持ちになります。 いっそ何もかも壊してしまいたいような、自暴自棄の気持ちすら沸き上がってきて、叫びだしたくなります。このまま泣きわめいて路上に転がれたら、どれほど気持ちいいでしょう。それでは本当に全部終わってしまうから、茉莉香はその激しい衝動を、堪えた涙と一緒に何とか飲み込むのです。 ようやく二人は、マンションの自室に戻りました。もちろん、田中も図々しく家まで付き添っています。
田中は、すっと後ろから茉莉香を抱くと、ポニーテールを手のひらでさっと持ち上げてうなじに舌を這わせてきました。ベロンと首筋を舐めまわされたところで、茉莉香はもう限界です。膝の力がガクンと抜けます。 そして。 「ウウッ……うああああぁぁぁん」 茉莉香は、大声を上げて泣き、玄関先で崩れ落ちました。 「おい、茉莉香……」 田中は、力なく崩れ落ちた茉莉香を抱き上げると、ソファーまで運びました。クズクズと泣いていますが、抵抗はありません。 従順なのではなく、もはや抵抗する気力もないといった様子。 「ヒックッ、ヒックッ……」 ソファーにもたれかかるようにしてしゃくりあげている茉莉香を、田中は傲然と見下ろして言いました。 「いきなり泣きだして、何が不満なんだ」 茉莉香はそれを聞いて唖然としてしまいます。すっと血の気が引いて、息を呑みます。涙もしゃくりあげた悲嘆も止まりました。 皮肉なことに、田中に対する憤りだけが、無気力に落ち込みそうな茉莉香の気持ちをなんとか盛り上げているのです。 まったく言うに事欠いて「何が不満なんだ」とは、何なのでしょう。茉莉香にとって、現状は不満なこと以外見当たらないのです。 「……ふうっ」 顔を真赤にして田中を睨みつけて、何か言いたげな瞳の色を見せた茉莉香ですが、それも息と一緒に吐き出して、ソファーに身を沈めました。 「なんだ、言わないとわからないぞ」 「田中さんに言っても無駄かと思いました。……でも、産婦人科にまで付いてくるのはやめてください。外で馴れ馴れしくするのもやめて。私にも生活がありますから」 茉莉香は、言うことだけ言うと、また口をつぐみました。 「わかった、別に奥さんの生活を破綻させようって気はないんだ。そうだな、口でしてくれるか」 泣きわめく茉莉香を見ても、まだ薄笑いを浮かべている田中の言葉には全く誠実さが感じられません。口先でそう言っても、どこまで分かっているのは疑問です。 それでも舐めてくれと田中に言われると、半ば反射的に涎を口内に溜めてしまう自分が情けなくて、茉莉香はまた涙を流しました。
「じゃあ、舐めます……」 結局のところ、精液便所である茉莉香は田中の言葉には逆らえません。茉莉香は、ズボンを下ろして勃起した肉塊を剥き出しにした田中の前に座って、舌を這わせます。 優しく舐めると、硬くなりました。しばらく馴染ませたあとで今度は口内全体を使って大きくジュポジュポとピストンします。 すでにその行為は、長年連れ添った夫婦が行うほど慣れたものでした。 それでも機械的にフェラチオ運動を繰り返す間、時折茉莉香は嗚咽を漏らして泣いていました。 「なんか泣きながら舐められると、いじめてるみたいでたまらねえなあ」 茉莉香が目を泣き腫らしてたまに嗚咽を漏らしているのに、田中は萎えることなくさらにグイッと勃起の角度を上げます。 「ううっ…‥」 嗚咽を漏らす女に舐めさせていることで、田中は余計に興奮しているようでした。別に同情して欲しくて泣いているわけじゃないけれど、田中は最低だと茉莉香は思いました。まるで追い打ちをかけるようではありませんか。 泣き顔の茉莉香に興奮して、それでいつもより早かったのでしょうか。 田中は程なくして、軽く自分でも腰を振ると茉莉香の喉の奥にドピューと激しく打ち付ける射精をいたしました。 「お腹の赤ちゃんに栄養をやらなきゃいけないからな、たっぷり飲めよ」 「うぐっ……」 また田中が下らないことを言っているのを聞かされます。耳をふさぎたいような気持ちに耐えながら、茉莉香は口内に吐き出されたねっとりとした熱い塊を、咽ないようにゴクンと飲み下します。
ドクドクッと熱い精液の塊が、茉莉香の喉を通って胃の腑へと落ちて行きました。
そうして生臭くてマズいお馴染みの味を飲んでしまってから、きちんと憎い男の亀頭を舐めまわします。きっちり綺麗にするまでが精液便所だからです。 茉莉香は、すでに夫のより慣れ親しんでしまった田中の一物を舌でペロペロと舐め回してしまって、綺麗にしていきました。 カリの上っ側を舌先がこするのが気持ちいいのか、射精後にも関わらず田中は呻き声を上げます。 もしかしたら女と一緒で、イッた直後は敏感になっているのかもしれません。ここでもう一度刺激してあげたら、またイクかも。そんなことをいつの間にか考えている自分に、茉莉香は愕然とします。いくら精液便所といっても、そこまでのサービスをすべきなんでしょうか。しかも、ひどく心を傷つけられた後なのにです。 「はい……。もう、綺麗になりましたよね」 ヌルッとした一物から唇を離し、凍えるような声で茉莉香は呟きます。田中への嫌悪感より、さらなるご奉仕をして田中を喜ばそうとしてしまった自分にショックを受けて、心が冷たくなってしまったのです。 さっさと立ち上がって離れる茉莉香を見て、田中はまだ笑ってはいましたが、ちょっと興ざめしたような表情を見せました。 「フヒヒッ、冷たいなあ、奥さん。俺がせっかくお腹の赤ちゃんのために、良質のタンパク質をご馳走してやったのにさあ」 「誰が……あなたの赤ちゃんなんかにッ」 下唇を噛み締めた茉莉香の瞳に、ジワッと悔し涙が浮かびます。もうすべて仕方ないことと諦めていても、精液便所の扱いを受けた上でここまで田中の赤子を孕んだことを揶揄され続けると、怒りに震えるのは当たり前といえます。 「ふーん、じゃあ奥さんは俺の赤ちゃんなんか産みたくないんだ」 「当たり前です、誰が、誰が好き好んであなたなんかの……」 茉莉香がそう言ってしまうと、田中は口元に浮かんでいた笑みを歪めて、ちょっと怖い顔をしました。 「じゃあ、産めなくしてやってもいいんだぜ」 「えっ……」 田中の言っていることがわからずに、茉莉香はポカンと立ち尽くしました。 そんな茉莉香の手を、立ち上がった田中はさっと引いて寝室のベットルームまで引きずっていきました。
「ほら、今度はセックスで抜いてもらうわ」 「きゃっ」 茉莉香は、ベットに投げ捨てられるように乱暴に転がされました。その上に、乱暴に田中がのしかかってきます。 「ほら、さっさと脱げよ」 「ちょ、ちょっと待って下さい」 茉莉香は、そう懇願しましたが強引にずるっとストッキングとパンティーを一緒に引きずり下ろされました。 「ほら、股開け」 ガバっと股を開かされると、そこに頭を埋めて股を舐めてきます。茉莉香は恥ずかしくて真っ赤になりながら、脱げと命じられてるから慌ててスカートを腰から外してカーディガンを脱ぎます。 「ああんっ、もうっ」 モコモコのセーターを慌ただしく脱ぎながら、田中はよく洗っても居ない他人の性器を舐められるものだ、汚くないのだろうかと考えて、ついさっき自分が洗っても居ない田中の性器をたっぷり舐め回していたのだと思い出して頬を真っ赤に染めます。 ああっと強い声が漏れるほど愕然としてしまう一方で、舐められるのはお互い様なのだと思えばちょっとホッとしてしまう気持ちもあるのです。そう思えば、濡れてないヴァギナに無理やり舌をねじ込まれて唾液でベトベトにされる気持ち悪さにも耐えられました。お互い様なのだから、仕方がないと。 「おらっ」 いつになく荒々しく茉莉香の上に伸し掛かり、そのまま猛りきった一物を挿入しました。さっき抜いたばかりだというのに、ガチガチに硬くなった陰茎は茉莉香の中を乱暴に突き刺します。 「ああっ、どうして、そんな乱暴」 茉莉香はまだブラジャーも外していないのです、こんなにガンガンと腰を振られてはそれどこではありません。 唾液の湿り気のおかげで、辛うじて痛みはありませんが、濡れていない膣襞を無理やり抉られるのは決して気持ちがいいものではありません。 いつもはもっと優しいのに、今日はどうしてこんなに……悲しいほどに荒々しいのだろうかと茉莉香は疑問に思いました。
「わざと乱暴にやってやってるんだよ!」 「ええっ?」 茉莉香の気持ちが肌を通して伝わったのか、パンパンと荒々しく腰を突き上げながら田中は叫ぶのです。 「さっき俺の子供を産むのは嫌だって言っただろう」 「でも、それは田中さんがあんまりひどいこと言うから……」 茉莉香は、またジワッと目尻に涙を浮かべます。これが妊娠初期のマタニティーブルーなのでしょうか。一度気持ちが高ぶると涙が止まらないのです。 「言い訳はいい、ずっと態度を見てたら本当に奥さんが心の底から嫌がってるのはわかるからな。だから、俺の子供なんて堕ろしてやろうっていうんだよ」 「そんな、でも堕胎はダメなんでしょう」 赤ちゃんを堕ろす。その残酷な選択は、最初から封じられていました。だから、もう茉莉香の意識にも上がらなくなっていたのに、田中はこの期に及んでなんでそんなことを言い出すのでしょう。 「堕胎は禁じた、だが自然に流産するのはいいんだ。医者も言ってただろ、気をつけろって! この時期に乱暴なセックスしまくれば堕ちるかもしれないぜ」 ガンと腰を突き上げて、強く茉莉香を抱きすくめるようにしながら、田中は悪魔のように囁きかけました。 「えっ、でも産むって約束したのに……」 田中の赤ちゃんを産むと、茉莉香は他ならぬあの怖いカボチャ頭に毎日約束させられているのです。だから夫への強い罪悪感にも負けないぐらい、お腹の赤ちゃんを大事に育てないといけないとは思わされていたのに……。 「良いんだよ、俺の精液便所になるとも約束してんだから、その過程で自然に堕ちるなら問題ない。あとはお前の気持ち次第だからな」 田中はそう言って、赤ん坊を産まないならこんなでかい乳はいらないだろうと言わんばかりに強く、乳房を握りしめながら強いピストンを再開しました。 強い、まるで獣のような腰使いです。茉莉香の膣は、今にも引きちぎられんほどに強く亀頭をこすりつけられて、傷つかないために慌てて愛液を垂れ流しているところです。 ジュブジュブといやらしい音が耳に響きます。 「あああっ、いやあっ」 「俺の子供なんて産みたくないんだろ、だったらこのまま殺してやるよ!」 でもまだ濡れが足りない、このままだと本当に殺されてしまうと思うとブワッと涙が溢れて止まりません。 「そんなダメッ」 茉莉香は必死に抵抗します。精液便所として、田中に奉仕しなければならないなんて約束も、もう頭から吹き飛んでいます。 ただ、今はお腹を守らないといけないと思ったのです。 「嫌なんだろ、俺の子供なんて産みたくないんだろ、だったらこのまま子宮まで突き刺してぶっ殺してやらぁ!」
その自分で叫んだ言葉で興奮したのか、田中があっけなく中で射精したのがわかりました。ドピューとすぼまった穴に注ぎ込まれる音がして、ドクドクッと慣れ親しんだ振動が膣に伝わって、やがて田中の陰茎が緩まっていきます。 膣の中でイッたのでしょう。いつもはもっとじっくりと責めてくる田中なのに、いつになく絶頂に達するのが早いです。 茉莉香は、(ああっ、よかった田中が出したからこれで終わる)と安堵しました。これでもう、乱暴にされることはないと思いました。 だがその考えは甘かったのです。
「まだだ、死ねっ死ねっ死ねッ死ねッ死ねッ!」 田中は柔らかくなったはずの陰茎をグンと硬くいきり立てて、凶暴なピストンを再開しました。恐ろしいことに、田中のペニスはまた膣の中で鉄のように硬く尖っています。 いつもは気持よくしてくれるはずのペニスが、まるで子宮をえぐりとるための鋭い凶器のように感じられて、茉莉香は心底恐ろしく感じられました。 「ヤダッ、どうして硬くなるのッ、あっ、ダメッ! ダメぇ!」 茉莉香は半狂乱になって、手をついて田中の身体を離そうとします。涙も鼻水もダラダラと垂れ流して、可愛い顔が無残なことになっていましたが、もうそんなこと気にしてられません。必死で暴れます。 「なんだよ、ハァハァ……なんでダメだ」 茉莉香のあまりの形相に、田中も驚いて少し腰の動きを止めました。田中に無理やり犯されていたときでさえ、こんな顔はしていないぐらい恐ろしい顔をしています。あんまりイヤイヤとしたので、まとめていた髪がほどけてぐしゃぐしゃになってしまっていました。ポニーテールにまとめていたゴムが切れてしまったのでしょう。 「ダメでず、赤ちゃんを殺さないでぐだざい!」 茉莉香は、大泣きしてしゃくりあげながら、今度は田中の動きを止めようと両手両足で必死に抱きついてきます。 「おい、だって赤ちゃんいらないってお前が……」 「ごめんなざい……わだしがわるかったですからやめてッ!」 茉莉香は、田中をもう動かせまいと両手両足で必死に抱きついています。こうなっては、さすがに田中も身動きが取れないようで、困った顔をしました。 「悪かったっていってもな、こうやって射精しまくれば子宮の中の赤ちゃんも精液で溺れて死ぬんじゃないか」 田中はまだ怖いことを言っていますが、口調に少しからかうようなトーンが混じりました。お腹の赤ちゃんを殺すと叫んだ田中の気持ちは、さっきまで怖いほど本気に聞こえていたけれど、どうやら風向きが変わってきたようです。 「お願いだから殺さないでください……私、赤ちゃん産みたいですから、ちゃんと育てますからやめてください」 茉莉香はこれが最後のチャンスだと思って、自分の不思慮な発言を謝って、必死に田中にすがるように抱きついて哀願しました。
茉莉香が自分でも不思議だとしか思えないのは、田中の子供を宿したと思った時に最初は堕ろそうとすら思ったお腹の子が、殺そうかと本気で言われた瞬間になんとでも守らなければならない命に変わったことでした。 これが、母性だ……などとしたり顔で言う男がいれば、茉莉香はその憎らしいほっぺを思いっきり張っ倒してやります。倒れたところに、腹に蹴りを食らわせてやってもいいかもしれません。 なにせお腹の子供は、愛する夫と真逆の男の子供なのです。本来あってはならない不義の末に生まれて育つ児のことを思えば、あまりにも不憫に思えます。 でもそれは理屈です。今の茉莉香は、お腹の子供を何としても十月十日育てて無事に産み落として、すくすくと元気に育ててあげないといけないのでした。 これは世の中のあらゆるルールに優先します。茉莉香は、お腹に宿った命を何としても守らなければならないのでした。
「茉莉香の言うことは分かったよ。でも仮に俺の子が産まれたとしてさ、本当に愛することができるのか」 無理やり孕ませた田中が、今も茉莉香を抱き敷いてそういうのです。鼻で笑うことも、怒ることも、罵ることもできましたが茉莉香はちゃんと答えました。 「愛して育てることが……できます」 「おい、俺は……俺の子供だぞ」 田中は茉莉香がきちんと覚悟を決めて肯定してくれたのに、その言葉にこそ打ちのめされたように重ねた身体を離してベットにゴロリと転がりました。 そして、シーツの上に乱雑に脱ぎ捨てられた茉莉香のベージュのブラジャーを拾い上げて(さすがに巨乳なので、小ぶりなメロンならゴロリと入りそうなほど大きなカップです)茉莉香の目の前に突きつけました。 「なんですか……」 「俺は、これだよ……つい二、三ヶ月前までそこのベランダに忍び込んで、このブラジャーの匂いをクンカクンカ嗅いでたんだよ」 「キモッ」 思わず茉莉香は眉を潜めてしまいます。 「そうだろ、キモいだろ。この茶色のパンティーでだって何度シコったかわからん」 「ヤダッ、そんなことしてたんですかっ!」 「よく裏返して見てみろよ、俺のシコった痕跡が残ってるかもしれないぜ」 茉莉香は、パチンと田中の手から自分のショーツを奪い取ると裏返して見ました。うっすらと黄色い後が残っているような気がします。 「ああーっ」 頭を手で押さえて、茉莉香が小さい悲鳴を上げました。きっとあまりのありえない話に、偏頭痛に襲われたのでしょう。 「奥さんが悪いんだよ。油断してベランダに下着なんて干すから」 「ここ六階ですよ、まさかそんなことされるなんて思わないじゃないですかッ!」 茉莉香は声を張り上げます。
なんだか、すっかり気分が冷めてしまいました。そうするとやっぱり田中正志という男は気持ち悪い人だなと思ってしまうのです。決して、好きになれるタイプではない。 「そうだよ、俺はキモい男だし。変態だよ、変態……。そんな男の遺伝子を半分受け継いだ子供を本当に愛して育てられるのかよ」 「それは……愛して育てられますよ」 茉莉香はもう理屈でなくそう言い切れるのでした。 「何でだよ、わからないな。なあ、このブラジャー見てさ。奥さんのデカパイ触りてえなあと思って、実際に触ってさ」 田中はブラジャーと茉莉香のたわわなオッパイを見比べて、助平そうな顔をしてから揉みしだきました。 「あ……」 「そんで、こうやって奥さんのパンティーでシコって、いつか奥さんのマンコに中出しして妊娠させてぇってオナニーしてたんだぜ」 「そう聞くと……結構キツイですね」 心なしか、茉莉香の顔がさっきよりも更に青ざめています。 「その結果授かった赤ちゃんを、それでも愛して育てられるってどうしてさ」 田中は、変態行為を告白しながらも冷めた瞳で聞くのです。 「それは……だって、田中さんがどうしてたって、それは田中さんが悪いだけで、出来た赤ちゃんには罪はないじゃないですか」 まるで聖女のようなことを言う茉莉香を、田中は呆然と見つめていた。手に持っていたショーツもブラジャーも落としてしまう。 当事者が言うのでなければ、まるで偽善のようなセリフも、身を持って子供を産み落とそうと決心した茉莉香が言うのであれば聖母の言葉にもなります。 「そうか、ううん……そうなんか」 「わかってくれましたか、田中さん」 いつの間にか、ベットに寝そべって長いこと話し込んでしまっていましたが、どうやらこれで終わりのようです。田中はきっと、茉莉香の美しすぎる覚悟に打ちのめされてしまったのでしょう。 田中はうーんと呻き声を上げながら、ずるずるごろんと身体を転がすようにして茉莉香の横にやってきます。
(また、抱かれるのかな) そう茉莉香が思うと、そうではないようで田中はむにゅっと茉莉香のお腹あたりに頭を引っ付けて、まだ小さい生き物の形にすらなってないであろう赤ちゃんの存在に耳を傾けているようでした。 もしかすると、父親の自覚に目覚めたのでしょうか。 (まさかね~) 田中のようなダメな人に、そこまで期待するのは酷というものだとは茉莉香も納得していたのですが、とても信じられないことが起きました。 「うううっ、やっぱり納得出来ない!」 そう言うと、茉莉香のオッパイにむしゃぶりついて乳首を吸い始めました。 「いやっ、いきなり何するんですかっ、えええっ? 何で泣いてるんです!?」 田中は、いつの間にかボロボロと涙を流していました。鼻水も垂らしています、さっきは茉莉香がそんな感じだったんですが、話している間にもう顔をティッシュで吹いて髪も整え直しています。 それなのに、今度は田中が赤ちゃんみたいに泣きだして乳房に食らいつくのです。面食らうなという方がおかしいことです。 「何で、茉莉香は俺のこと好きになってくれないのさあー」 (うあー、この人泣きながらむちゃくちゃ言い始めた……) 茉莉香は、この自分寄りも一回りも年上の駄々っ子を何としたらいいかオロオロとしてしまいました。 形勢逆転と言いますが、こんな逆転はちょっと嫌です。
「ねっ、田中さん。いったん落ち着きましょうよ、どうしちゃったんですか」 おいおいズルズルと、鼻水を垂らしながら泣きじゃくって自分のオッパイにむしゃぶりついてくるおっさんをどうすることもできずに、茉莉香はしばし途方にくれるのでした。どうしてこうなったんでしょう。 次回に続きます。
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第十章「喜びか、悲しみか」 |
「奥さん、なんか疲れてるね」 夫が出勤してからしばらくして、深谷家にひょっこりと田中がやってきてそう言いました。旦那にも心配されましたが、茉莉香はそんなに酷い顔をしているのでしょうか。 「ええ……疲れてるんで帰ってくれないですかね」 「くれると思いますか」 にっこりと田中は笑いかけてきます。 「ですよねえ……」 茉莉香は、仕方なく田中を招き入れました。 午前中だとはいえ、結構マンションの人の出入りはある。田中と、扉の前で押し問答していたなんてことが知られてしまえば、噂になってしまうかもしれません。 それぐらいなら入れてしまった方がいいと思う茉莉香は、もう毒されているのかもしれませんでした。
茉莉香は、田中にお茶を出すと洗面所に向かいました。これでも女性ですから、他人の目は気になります。 鏡に映る自分の顔は、ひどく青白い顔をしています。軽く化粧をして、寝癖の残る髪をブラシで丁寧に整えました。 そして、後ろ手にキュッと髪を結んでポニーテールにします。 これから、あの男と相対しなければならないのですから、いつまでもフラフラしていられません。 「おや、寝乱れた髪もよかったのにな」 田中はそんな呑気なことを言っています。誰のせいで調子を崩しているのか分かっているのかと、茉莉香は恨めしげな瞳で睨みますが全然応えていません。 「はぁ……それで今日は一体どういうご用件なんでしょうか。田中さんッ!」 今日こそ田中のペースに乗せられてなるものかと、茉莉香は意を決してリビングのテーブルの机を叩くようにしてからドンと着席しました。 田中の飲み干した紅茶のカップが揺れます。それにも微動だにせず、田中は不敵な笑顔を崩さぬままに、話を切り出しました。 「奥さんはもう産婦人科には行ったのかな」 「昨日の今日ですよ、行くわけ無いでしょッ」 まだプリプリ怒っている茉莉香をまあまあと手でなだめながら、田中は続けます。 「いけませんねえ、今は大事な時期なんだからちゃんと検診にはいかないと。顔色だって優れないようだし病院でよく見てもらった方がいいですよ」 「だっ……誰のせいで悩んでると思ってるんですか」 怒りを押し殺すようにして、茉莉香は振り絞るように叫びます。頭に血が登ったせいか、茉莉香の頬に生気が戻ってきたように見えました。 「おや、俺のせいなのかなぁー」 「夫に、妊娠したって告げたの田中さんですよね」 田中の笑顔がニンマリと深みを増しました。 「やっぱり、おかげでこっちは……」 つい、茉莉香は夫に合わせて妊娠を認めてしまったのです。あのとき、そんなことはないわよと言っておけば密かに堕ろすこともできたかもしれません。 夫のではない子供なんて、産むわけにはいかないのに。 「嬉しい知らせは、早い方がいいと思ってさ」 「何いってるんですか……ふざけないでよ」 目尻に悔し涙が溢れて、宝石のような涙がこぼれていきます。最近の立て続けにあった出来事のせいで、茉莉香は感傷的になりすぎているのかもしれません。 それも、すでに茉莉香がすっかりと田中の催眠に毒されている証拠かもしれません。そんなこと当人は知るよしもありませんが。
皮肉なことに、田中への怒りを爆発させることで、悩みに青ざめていた茉莉香の頬はうっすらと紅がさして元気が出てきてしまっているのです。 「奥さん、俺としたあと旦那さんとも生でやったでしょ」 「えっ、どうしてそれを……もしかして見てたんですかッ!」 茉莉香は眉をしかめて、頬をまたさっと青ざめさせました。上がったり下がったりなかなか忙しいです。 「クククッ、まさか俺も夫婦生活まで監視してるわけにはいかないけどさ。奥さんなら罪悪感で、夫に生でやらせたんじゃないかとカマをかけてみたのさ」 「ううっ、だってそれは妊娠しないって思ったから」 田中に言われた通りでした。茉莉香は、田中との情交のあとで夫にも生で抱かれたのです。それも、今から思い出すと恥ずかしいことにものすごい燃えっぷりで夫が驚くほどの乱れ様でした。 しかし、よくよく考えてみれば妻が夫に抱かれるのは当然のことで、なぜ田中に非難されなければならないのかとまた怒りが湧いてきます。 「妊娠しないだって、違うだろ。夫に子供が出来ても不思議に思われないように、生でさせたんだろ茉莉香は」 「なななっ……」 茉莉香は噴き出るような怒りにむせ返りました。言葉がうまく出てきません、口からゆでが出そうです。よりにもよって、なんてことを口走ったのかこの男。茉莉香の怒りは頂点に達します。 もう茉莉香の意識はカッと怒りに燃え上がり、悶々とした悩みも、具合が悪かったことも忘れてしまいました。 「ハハハッ、まあ夫に俺の子供を育てさせないといけないんだからしょうがないとは思うけどさ。夫にもう抱かれないって約束を破ったのはいただけないな」 「私ッ、そんな約束してませんッ!」 茉莉香はドンと拳で机を震わせて、力の限り叫びました。 「約束したじゃん、もう忘れちゃったのかよ。しかたないなあ茉莉香は」 田中は、カバンからディスクを取り出すとリビングのブルーレイレコーダーにセットしました。 「ちょっとなに人の家のテレビを勝手に……」
『えっと、深谷 茉里香(ふかたに まりか)二十三歳です。専業主婦をしています……』 茉莉香が止める間もなく、映像がスタートしました。 あえてタイトルをつけるなら『深谷茉莉香二十三歳、間男と種付けセックス二連発』ってところでしょうか。 「ほら、よく撮れてるだろ」 「いやぁあああ、こんなの見せないでくださいっ」 茉莉香は目をそむけました。せっかく忘れていたのに、あの時の悪夢がありありと思い出されてしまいます。 それはまさにフラッシュバックでした。
『っとそれで……、今日は同じマンションの住人の田中正志さんにタネ……、種付けセックスをしてもらう記念に』
「そう言わずに、もっとよく見てなよ」 映像を止めようとする茉莉香を、田中は抱きすくめて押しとどめました。 「ちょっとヤダッ……やめて」 抱きしめられて、抵抗しようとする茉莉香を強く強く抱きしめます。すぐに力が抜けていくのを感じました。 (どうして……) 映像の中の茉莉香は、膣奥に自ら指を突っ込んで喘いでいます。田中からはこんな風に見えていたのかと、茉莉香は唖然としています。 自らの子宮口を弄って喘いでいる茉莉香は、まるで自分とは別人のようです。悔しいけれど淫蕩な人妻そのものでした。 いつしか茉莉香は、自分が映る映像に引き込まれていました。 田中と茉莉香のお互いに一糸まとわぬ姿になって、濃厚に交じり合う姿。 茉莉香はそれを横面みながら、田中にソファーに押し倒されました。
『じゃあ、俺の子供ができたら旦那の子どもとして育てるのか』 『そう……、そうです。そうしますから、どうぞ種付けだけなさってください』
「ほら、俺の子供を育てるって約束してるじゃん」 田中は指を指してあざ笑います。 「だってそれは、演技だって言ったから……」 茉莉香は、泣きたくなりました。 茉莉香は、もう抵抗する気力も萎えてしまいます。田中にソファーに抱きすくめられたままで、こんな映像を延々と見せられることになろうとは思いもしませんでした。
『よし、茉莉香お前は今から俺の精液便所だ、二十四時間俺の欲望を受け入れろよ』 『はい、私は正志さんの精液便所です。いつでも私の中に出してください』
「ハハハッ、精液便所になるとかも約束してるなあ」 「そんなそれも……ンンッ」 演技だと抗議しようとした唇をキスで塞がれました。そのまま唇に舌をねじ込まれて、たっぷりと舐め回されてからチュパッと口を離して、田中は嬉しそうに叫びます。 「ふはっ、久々の茉莉香の唇の味だ!」 「何なさるんですかぁ」 茉莉香は、また泣きそうになってしまいます。キスされたのがショックだったのではないのです。 何の抵抗もできずに、田中の舌を受け入れてしまった自分に強い衝撃を受けたのでした。すでに忘れてしまったと思った感覚が、まだ茉莉香の中に残ってしまっている。その事実が、茉莉香の身体をこわばらせます。 「なんだよ、何怒ってるんだよ。茉莉香は俺専用の精液便所なんだろ」 「私、そんな約束してませんーッ」 田中はニヤッと笑うと、ソファーに座る茉莉香の目の前で下着を下ろして勃起した一物を剥き出しにしました。 今日も田中の陰茎は、元気よく反り返って居ます。 「ほら、催したから舐めてくれよ」 「そんな……私はぁ」 茉莉香は、目の前の亀頭の先っぽに瞳を奪われたまま、呆然と硬直してやがて口内に唾液を溜めると、ゆっくりと口を開いてまるでバナナでも咥えるかのようにフェラチオしました。 「うはぁ、さすが人妻だな。うまいもんじゃ……ないか」 思いの外激しい茉莉香のフェラに、田中も思わず腰が砕けたようによろめいてしまいました。 「ふぉんあ、ふあぁ、ふああぁ……」 茉莉香は自分でも何をやっているのかわからない呻き声をあげながら、ベロベロと嫌な男の一物を舐め回しているのです。 しかも、裏筋をタップリと舌でこすりつける濃厚なフェラでした。 ポニーテールを揺らすように、頭を前後に振ってジュボジュボと口淫します。 「おっと、茉莉香ストップ。いまは話が先だ」 「ぷふっ……何なんですかこれぇ」 茉莉香は、もう大粒の瞳から涙を流しています。眉をしかめて、嫌な男のペニスを滑らさせられた嫌悪をあらわにしているのに、濡れた唇だけがいやらしく男の一物を求めて淫蕩な舌なめずりをしているのです。 フェラしろって、田中に命じられた瞬間から、まるで自分の唇ではないみたいに。
『よし、お前のマンコもクチマンコもケツマンコも俺のものだからな』 『はいっ、そうですっ! 全部正志さんのものですっ!』
ビデオの方は前半の佳境に入っていました。 茉莉香のいわば、隷属宣言のような部分です。
「ほら、ちゃんと自分で言ってるのを聞いたか。お前はもう俺のモンなんだよ」 「そんなのって、嘘でしょう……」 茉莉香は、何を言われているのかわかりませんでした。 いや、言われていることは理解しています。でも、納得出来ないし、わかりたくないのです。 (だってこれはただのお芝居でしょう)そう茉莉香は言いたいのです。
『旦那にもう挿れさせるんじゃねーぞっ!』 『はいっ、絶対に正志さん以外に挿れさせませんっ!』
「ちゃんと聞けよ。お前が自分で、旦那にはもう挿れさせないって約束してるんだろうが。それを破ったなって、俺は言ってんの」 「そんな、そんなのって……」 茉莉香は戸惑います。田中の言っていることは明らかに理不尽です。それなのに、申し訳ないって罪悪感が胸の奥から湧き上がってくるのです。 「グフフッ、まあ旦那に自分の子供だって思わせるためって理由があったんだものな。その点を考慮すれば許してやってもいいかもしれないな」 「あなたに許してもらうことなんて何も……」 そう言いながら、ホッとしてしまう自分が居るのです。 「まあ、もう二度と過ちを犯さないために、ここにこれを置いておくわ」 田中はハロウィンのカボチャ頭をリビングの棚の上に置きました。茉莉香が真っ二つに割ったあとは綺麗に修復されていますが、なんだか割れた痕が逆におどろおどろしい感じで、飾りとしては最悪だし季節外れもいいところです。 「そんなの汚いカボチャ、こんなとこに置かれても困りますよ」 なんだかハロウィンカボチャの繰り抜かれた眼の奥に、ボワっと淡い光が見えて……それが茉莉香をじっと監視しているようで怖いのです。 茉莉香は一度はそれを叩き割って中身が空っぽであることは確認しているのに、それは何か意味有りげな重たい気配を持っているように見えます。 「これはペナルティーなんだから、ちゃんと置いておいてもらうぞ。このカボチャ頭に毎日誓うんだ。『もう絶対に約束を破りません』とな」 「そんなぁあぁぁ」 茉莉香は、絶対に嫌です。大体、こんなカボチャが置いてあったら夫にだって不審に思われます。そうじゃなくても、怖くて嫌なのに……でもペナルティーと言われると逆らえないのです。 それはやっぱり『約束を破ったから』そんな自分の内心からの声が、恐ろしい響きを持って茉莉香の身体を震わせました。
「よし、わかったらビデオを鑑賞しながら、俺のを舐め回してくれよ。この一ヶ月、ビデオでしか抜けなかったからたっぷり飲んでもらうぞ」 ほっぺたに、赤黒い陰茎を突きつけられると、茉莉香は嫌でも唇を開いてパクリと咥えてしまいます。 「ンフッ……ンフッ……」 (なぜ私はこんなに必死に舐めているんだろう) 茉莉香はそんなことを思いながら、小さい口をいっぱいに広げて喉の奥まで飲み込んでいます。 嫌いなはずの田中のオチンチンを美味しそうに頬張ってから、ジュルッと吸い上げて、舐め回して舌で裏筋をこすりあげて、田中が気持ちよさそうに小さく呻き声を上げるのに浮き立つような気持ちにすらなっているのです。 「くうっ、たまらんな。さすがに、これは」 「ングッ、ちゅ……ちゅる……ジュポジュポジュポ……」 一回出してしまうか」 「ふぁい……はむっ……ンクッ、ンジュッ」 田中の亀頭の裏をベロベロ舐め回してから、またチュウっと吸い上げて大きな亀頭を喉の奥まで飲み干しました。 亀頭の震えで、射精が近いと感じたからです。 「よし、赤ちゃんを育てるのに栄養がいるだろうからいま良質なタンパク質をやるからな、出るぞッ!」 「はぁっ、はぁ…‥ちゅうっ、ちゅぅぅぅぅぅっ……!」
ドピュンッ、喉の奥に温かい精液が当たりました。
濃くて、トロトロの精液が喉の奥に直接あたってドロドロと茉莉香の口内に放精されていきます。 臭くてマズいはずのその液体を、茉莉香はまるで甘露を飲み干しているかのように、嬉しそうに飲み下します。 形の良い唇を窄めて、タコのようにチュウチュウと亀頭に残った最後の一滴まで吸い上げていくのです。
「茉莉香、よくできたな。いい吸いっぷりだった」 田中は、茉莉香のさらさらの髪を優しく撫でさすります。 「んふっ、はぁ……」 ほめられて、茉莉香もまんざらでもない様子で笑顔で精液を恵んでくれた田中の陰茎をいとおしげに舐めて綺麗にするのでした。 「これから毎日飲ませてやるからな」 「はいありがとうございます……って、何でこうなるんですかッ!」 茉莉香は驚いてソファーから立ち上がりました。 自分はまた、雰囲気に流されて何をやってしまったのか。ドスドスと、冷蔵庫まで歩いていって冷たい紅茶でうがいをします。 テレビは、まだ茉莉香の乱行を映し出しています。ちょうど、茉莉香が受精しているシーンです。 暗澹たる気持ちで、茉莉香はため息と冷たい紅茶を飲み干しました。 「どうしたんだ茉莉香、あれか妊婦さんの情緒不安定ってやつか」 マタニティーブルーかと問われて、茉莉香はまた眦を決して田中を睨みつけます。 「違います、どうしてフェラチオなんかしなきゃいけないんですか!」 「だって、茉莉香は俺専用の精液便所だから当たり前だろ」 自分がそうしてくれって言ったんだろうと、田中は含み笑いを浮かべています。 それにたいして、それはお芝居の話でしょと茉莉香が反論するのもさっきの繰り返しです。
「埒が明かないなあ、きちんと説明してあげるからこっちにきてよ」 茉莉香は、警戒感の塊のような顔をしてそれでも説明はして欲しかったのかゆっくりと田中の方に近づいていきます。 それでも手は前にして、自分の身体をガードしています。そんなことをしても無駄だということが、茉莉香にはまだ納得がいっていないのです。 そんな茉莉香の大きなおっぱいを、ブラウンのセーター腰にむにゅっと掴みました。 「きゃあー、何するんですかッ!」 茉莉香は、田中の手をばちんと跳ね除けます。まあ、触られないように警戒していたのですから当たり前の反応と言えます。 それを予測していた田中は、跳ね除けられた手を見つめてふうとため息一つついてから命じました。 「茉莉香、オッパイでチンチンしごいてくれ」 「はーい」 茉莉香は、慌ただしげにセーターを脱ぎ捨てると、バチンと紫のブラジャーを弾き飛ばしました。ゆっくり脱ぐのももどかしいという勢いです、茉莉香の自己申告では90センチ、本当はもっとたわわに成長している円錐型のオッパイがブルルンと揺れました。 茉莉香がパイズリしやすいように、田中はチンコをおっ立てたままでソファーに座ります。 茉莉香はまたチンコを舌で舐め回して、お湿りとシゴキやすい硬さにしてから、大きなオッパイの谷間で、田中の硬い陰茎をしごきはじめました。 「はっ、ふっ……ふっ、ふっ……」 パイズリしても女性は気持よくないはずですが、茉莉香はほんのりと頬を赤らめて楽しげにチンチンを擦り立てています。 田中は一方的に気持よくしてもらっているのが悪いと思ったのでしょうか、乳首をコリコリと弄ってやると、茉莉香はハァンと嬉しそうに嬌声を上げます。 しばらく、茉莉香のピンク色の乳首を指先でこね回してから田中はフフンと含み笑いを浮かべて、不意に訪ねました。 「ねえ奥さん、俺に乳首いじられて嬉しい?」 「嬉しいわけないじゃないですかっ」 茉莉香はハッとして目を大きく見開きます。それでも両の手にたわわなオッパイを添えて、田中の勃起した陰茎をこする動きは止まりません。
「さっきは触られるのも嫌そうだったのに、今は乳首いじられて気持ちよがってるじゃん。どうしてだと思う?」 「ふうんっ、それはそのぉ……」 茉莉香は考えてもわかりません。ただ、オッパイでオチンチンを気持よくしてくれと言われたから、そのとおりやっているだけなのです。 「それは茉莉香が真面目に、俺の精液便所になるって約束を守っているからだろう。ただ触れられるのは嫌でも、『俺を射精に導くため』ならオッパイだろうがマンコだろうが、触らせて平気なわけだ」 「そんなあ、私約束なんて……うふん」 茉莉香は眉をひそませて、困惑と嫌悪の入り混じった表情を浮かべますが、同時に唇はさも嬉しいと言った微笑みを浮かべています。そして、オッパイで田中の勃起したオチンチンをこすり続けているのです。 喜びと怒り、哀しみと楽しさが入り混じった、さも複雑な表情にこわばった茉莉香のほっぺたを、田中はプニプニっと指で突っつきました。 田中が触れれば、茉莉香の顔はふわっとした笑顔に変わります。そうして、その間も半ば自動的にパイズリを続けるのです。 茉莉香の乳首をつまみ上げては楽しんでいた田中はやがて絶頂を迎えつつあるのか、苦しげに呻いて「ウウッ、出すぞ茉莉香」と告げました。 茉莉香は、小さい唇をめいいっぱい開いて、ビューッと顔に飛びかかる精液を受け止めました。 一発目は、茉莉香の唇にうまく飛び込みましたが、ビューッビューッと元気のよい射精が何回も飛び、茉莉香の端正な顔を汚していきます。 田中も、二発目にしてはなかなかの精液の量です。溜めていたというのは嘘ではないのでしょう。 「はぁはぁ……ふうっ」 茉莉香は荒い息を吐いて、息を整えるとたわわなオッパイではさんでいた陰茎をつまみ上げて、舌でベロベロと舐め回して綺麗にしました。 そして自分の顔や胸元にかかった精液をなるべく集めて唇で舐めとっていきます。 ドロリと付着したとろみのある田中の精液は、決して美味しいものではなくて、しょっぱ苦い独特な臭みがあるのですが、それを茉莉香はさも美味しそうに舐めとっていくのです。 そうして、田中が撒き散らした遺伝子をできるだけ胃の腑へと落とし込んでしまうと。茉莉香はハッとしたように顔を上げて、悲しそうな顔をしました。 でも、もう泣きませんでした。 「顔を洗ってきます」 そういって、洗面台に走って行きました。
あとに残された田中は、さすがに二回も連続で射精して疲れたのか、ため息を付きます。口元には満足気な笑みを浮かべています。しかし、どうしてだかわかりませんが田中も少し悲しげな目をしていました。 田中は一人でもう一度深いため息をつくと、隠すように顔の半面に手を当てて俯きました。その背中は少し寂しそうでもあります。隠れて居ない方の顔は、まるで涙を流さずに泣いているようでもありました。 そんな打ちのめされた田中の様子を、モノ言わぬハロウィンのカボチャ頭だけがずっと見つめているのでした。
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第九章「妊娠か、生理不順か」 |
ハロウィンの悪夢から一ヶ月後。
季節はすっかり冬めいてきて、街もクリスマスを意識したイルミネーションなどが飾られ始める季節。 茉莉香は、一ヶ月前の出来事などなかったように普段の日常を取り戻していました。 このまま半年、一年と時が過ぎていけば、忌まわしい記憶も薄れてやがては忘れてしまえる。そう思って、前よりもさらに努めていい奥さんをしている茉莉香には不安なことがありました。 生理が遅れているのです。
「まさかね……」 そう茉莉香は思います。遅れていると言っても、本来の生理予定日よりまだ半月も経っていません。ちょっとした生理不順、この程度の遅れならおかしくはありません。 それでも、逆に半月も遅れているとも言えるのです。 もう無理やり過去のこととして流してしまっていますが、あれほど妊娠を意識させられる出来事があったあとに、生理が遅れている。これは看過できないことです。目をそらそうとすればそらそうとするほどに、気になってしょうがありません。 そのストレスが生理不順を生んだとも考えられます。 この不安を解消して、堂々巡りの思考を止めるのは簡単です。妊娠検査薬で調べてみればいいのです。まさか、妊娠しているわけがないのです。 「だって私はあのとき、避妊薬を飲んだのだから……」 それでも検査できないのは、もしかしたら恐ろしい結果が出てしまうかもしれないという恐れからでした。 最近、吐き気がして不快な気分に陥ったりします。乳房が張った感じがあるのです。まるで妊娠の初期症状のような。 そんな様子を何度か旦那に指摘されて、具合が悪いのかとも聞かれました。 そのたびに何度も「なんでもない」と答えるのですが、言えば言うほど茉莉香の胸に不安が広がっていきます。
そんな陰鬱な気持ちを抱えて、ふらふらとマンションの近くを歩いていたので、茉莉香は男が近づいていたのに気が付きませんでした。 「やあ、奥さん。買い物?」 まさに茉莉香の不安の元凶である男、田中正志は膨らんだエコバックを見ながらそう訪ねました。 「ええっ」 茉莉香は、言葉少なに頷きます。 「本当に久しぶりだね」 「……そうですね」 そんなことを言わないでほしいなと茉莉香は思います。 (久しぶりですって……) そんなことを言われたら、思い出したくもないことを……前に会ったときの出来事をありありと思い出してしまいます。 想像してはいけないと思うからこそ、憎らしい男の顔を眺めてありありと思い出してしまうのです。 田中とその時したことを、そして……その時の自分の気持ちを。 (あれは、あのときは……) 茉莉香の内心の苦悩を知ってか知らずか、田中は何気ない様子で尋ねるのです。 「奥さんすこし顔色が悪いね」 「……えっ」 ほっそりとした手を冷たい頬に当てます。コートは着ているのですが、ちょっと風が冷たすぎるように感じます。 「悩み事でもあるのかな」 「あの、たぶん寒いからだと思います」 だから、心配することはないのだと茉莉香は言いたかったのです。寒いと言ったのは、無意識にもうさっさと目の前の男と別れて、家に帰りたいと思ったからかもしれません。何気ない様子の田中には、恐ろしいところなど微塵もないのにすっと背筋が震えます。 茉莉香は、理由もなく早くこの男から逃れなければいけないと思いました。 「ねえ奥さん……」 「あの田中さん、すいませんけど」
「ねえ奥さん……生理来てないんじゃないの?」 茉莉香の悪い予感は当たりました。 「嫌ぁ……」 その茉莉香の不安を言い当てた悪魔のような言葉で、周りの空気はさらに下がったような気がします。 凍える寒さに、茉莉香は震えるようにして膝をつきました。 その身体を、抱きすくめるようにして手を伸ばしてきた正志の腕を振り払うことがどうしても出来なかったのです。 そのまま茉莉香は田中に引きづられるように連行されます。そのまま田中は深谷家に上がり込みます。 田中にとっては勝手知ったる他人の家、そのまま夫婦の寝室へとやってきてしまいました。 まるであの日の続きが始まったように感じて、茉莉香は一切逆らうことができなかったのです。
※※※
「ねえ、奥さん」 「はい……」 引っ張っていた田中の手が離れると、茉莉香はまるで罪人のように床に突っ伏しました。 「いや、茉莉香と言ったほうがいいかな。二人だけなんだし」 「それは、もう終わったはずでしょうッ!」 田中を見上げて、茉莉香は声を震わせて叫びます。田中に名前で呼ばれるとゾクリとするのです。あの時の感覚が、戻ってきてしまう。それはもう絶対にあってはならないことなのです。 「俺さ、妊娠検査薬買ってきたんだよね」 「なんでそんなものを……」 田中は茉莉香の問いに答えずに、棒状の白いプラスティック製のスティックを手渡します。 妊娠検査薬を使ったことはありませんが、茉莉香も女性ですから使い方ぐらいは知っています。 「ここで、今すぐに調べてみるといいよ」 「……わかりました」 逆らえない空気を感じて、茉莉香は渋々と立ち上がります。茉莉香だって、気にならないわけではないのです。これも踏ん切りをつける、いい機会だと思えばいいのかもしれません。 「おっと待った、調べるのは『ここで』と言ったじゃないか」 「ええっ、なんですって……」 トイレで一人で調べようと思った茉莉香を、田中は押しとどめました。妊娠検査をここでしろということは、つまり妊娠検査薬のチェックスティックに、ここでオシッコを吹きかけろということです。 いつぞやの花瓶に排尿した醜態を、茉莉香は思い出してしまいます。 しかも、また田中はハンディーカムのカメラを取り出しています。三脚まで持ちだして、撮影するつもりのようでした。
「そうだ茉莉香、この前のビデオすげー綺麗に編集できたんだけど見たい?」 「止めてくださいッ!」 もう絶対に田中の言いなりにはなるものか。そう拒絶しようとした茉莉香に、追い打ちをかけるように忌まわしい映像が詰まったディスクをちらつかせてくるのです。 もしかしたら田中は、そうやって茉莉香を脅しているつもりでしょうか。 「なんだよ、せっかく綺麗に撮れたのにさ」 「もう何なんですか、あの時のことは……ハロウィンはとっくに終わったでしょう」 あの悪夢のようなハロウィンから一ヶ月、ようやく茉莉香にはいつもの生活が戻ってきたというのに。 なんで今頃になって田中はやってきたのか。 「ハロウィンは終わったけど、ハロウィンの最後のイタズラはまだ終わってないんだよ。だから、奥さんにはまだ撮影に協力してもらわなければならないのさ」 「あれで全部、終わったんじゃなかったんですかっ」 田中は無言で三脚を立て、茉莉香にカメラを向けます。 ハロウィンのイタズラがまだ終わっていないなら、お菓子が用意できなかった茉莉香には従う義務があるのです。 「ほらっ、早くしてよ」 茉莉香が迷って動かないので、田中はカメラを覗きこみながら焦れたように催促しました。 「どうすればいいんですか」 撮影と言っても、前のようなシナリオはありません。 「妊娠検査をしろと言ったじゃないか。さっさと大股を開いて、そこでチェックスティックにションベンをぶっかければいいだろ」 「こんな場所で……」 そう当惑しながらも逆らうことのできない茉莉香は、せめて床が濡れないように何か受けるものを探してしまいます。 寝室にあるのは、茉莉香が愛用している水差しだけでした。それを手にとって、これにオシッコをするのはすごく嫌だなぁと茉莉香は思ってしまいます。 なにせ自分が飲む水を入れるボトルですから。 「早くしてよ、それでいいじゃん」 「わかりました……」 田中に促されて、仕方なく茉莉香は水差しの中の水を捨てました。
「なんだよその嫌な顔は、待ちに待った妊娠検査なんだからもっと嬉しそうにしてよ」 「ええっ、そのなんですか……そういう演技ってまだ続けないといけないんですか」 茉莉香は、前のことを思い出してそう言いました。 いつの間にか茉莉香は嫌悪に顔を歪めていたようです。とりあえず、しかめた眉を緩めて無理やりこわばった笑顔を浮かべてみます。 「そうそう、笑顔の方が可愛いよ。待望の赤ちゃんが出来てるかどうか調べるんだからそれでいいんだ」 「待望の、なんですね……」 逆らう気力もなく、茉莉香はコートを脱いでスカートをたくしあげました。嫌なことはさっさと済ませてしまおうという気なのかもしれません。 この時の茉莉香は、まさか本当に妊娠しているなんて思っていませんですから、淡いブルーのパンティーをスルッと脱ぎ捨てて水差しの上に跨ると、尿道を開きました。
ショワワワワワッ……
寒い季節ですから、水差しにたまる黄金水から湯気が出ています。 茉莉香はそこに、妊娠検査薬のスティックの先をつけます。妊娠すると子宮に着床した受精卵からヒト染毛性ゴナドトロピンというホルモンが分泌されます。 チェックスティックは、尿中にこのホルモンがあるかどうかで妊娠を調べるという仕組みです。 茉莉香はチェックスティックに尿をつけて、キャップをすると床に置きました。
一分もすれば結果が出るはずです。
ティッシュで股を拭くと、パンティーを履いて茉莉香は祈るような気持ちで、判定が出るのを待ちました。 長い長い一分が過ぎ去って、茉莉香はチェックスティックを拾い上げて反応を見ました。 判定窓に赤紫色のラインがあらわれています。 結果は、陽性でした。
「茉莉香、結果はどうだったんだ」 「ああっ……ウソッ」 茉莉香の顔は陶器のように白く、すっかり青ざめてしまい血の気が引いています。 「クックック……、だからさあ、そういう時は嬉しそうな顔をしてっていってるじゃんかよ」 茫然自失の茉莉香とは対照的に、笑いがこらえきれない様子の田中。 「田中さん、これ何かの間違いですよね……だって私はちゃんと避妊薬飲んだんですからっ!」 「アハハッ、まあイタズラ成功ってことでな」 成功じゃなくて、性交かなとか分かりづらいキモオタジョークを口走っては腹を抱えて笑っています。 「イタズラ……そっか、これも田中さんのイタズラですか」 茉莉香はすがるように田中を見つめています。 「おっ、わかっちゃったか」 田中は嬉しそうに茉莉香の表情の変化を撮影しています。この記念すべき瞬間を余すところなく撮影しようとカメラを回し続けています。 「田中さんが妊娠検査薬を陽性でるように細工したんですよね、私は妊娠なんてしてないですよねっ!」 茉莉香の声は悲鳴に近づいています。 「そうじゃねーよ、奥さんが飲んだ薬さあ。あれ避妊薬じゃないんだよね」 「ああっ、止めてくださいっ!」 茉莉香は、耳を塞いで俯いてしまいました。茉莉香だって馬鹿じゃないのです、薄々は気がついていたことでした。 でも気がついていたことと、認められることは別です。 「排卵誘発剤ってちゃんと書いてあったでしょ、なんで飲んじゃうかなあ」 「イヤッ、聞きたくない、聞きたくないッ!」 なぜならそれは茉莉香にとって死刑宣告に等しいのです。 茉莉香は、床に膝をついてごろりと転がりました。尿が入った水差しも倒れて、床が汚れてしまうのですが、今の茉莉香にそんなことを気にする余裕はありませんでした。
「排卵誘発剤飲んで、あんだけセックスしたらそりゃ妊娠しちゃうよなぁ」 「いやぁあああぁぁぁあああぁぁぁあああぁぁぁ……」 茉莉香の悲鳴は絶叫に変わり、極度のショックのためか、そのまま意識を失いました。
※※※
「どうしたんだ、部屋を真っ暗にして」 寝室にパチリと明かりがつきます。どうやら時刻はすでに夜遅くになっていたようです。 声の主は茉莉香の夫、深谷 義昭(ふかたに よしあき)でした。 昏倒した茉莉香は、そのまま寝室のベットに寝かされていたようでした。 床に零れた尿も綺麗に拭かれていて、水差しも洗われています。田中が綺麗に掃除していったのかもしれません。 「ああっ、あなた……」 「寝てていいぞ、もしかしたらまだ具合良くないのか?」 優しい夫は茉莉香を気遣うように声をかけてくれます。 「でも、お夕飯作らないと……」 茉莉香は買い物に行っただけで、夕飯の準備もしていないことに気が付きます。 「いやっ、マジで寝てていいって。ご飯は店屋物でも取ればいいし、何なら久しぶりに俺が料理作ってやろうか」 これでも学生の頃は自炊してたんだぜと、背広を脱いでシャツの腕をまくって見せます。フザケているのですが、半ば本気で料理を作ってやろうかと言っているのは夫婦なのでわかります。 「うふふっ、ありがとう。でも本当に大丈夫ですから」 ベットから起き上がった茉莉香を、なおも気遣わしげに見つめて夫はつぶやきます。 「ホント無理するなよ、だって赤ちゃんができたんだろ」 「えっ……」 茉莉香はマジマジと夫の顔を見つめました。 「マンションの誰だっけ、帰りがけに聞いたんだよ。水臭いなあ、妊娠が分かったならすぐ俺に電話してくれたらいいのに」 「ええ……」 茉莉香が青ざめているのが、本当に具合良くないだけと思ってくれたらいいと、内心で祈ります。
「だからさ、夕飯は店屋物でもなんでも。ああ、良かったら久しぶりに外に食べに行ってもいいしな。もし食べられないならお粥でも作ってやろうか、こういう時って酸っぱいものが食べたくなるんだったか」 なおも元気が無さそうな茉莉香を笑わせようと、夫はオーバーリアクションで話しかけてくれていますが、反応は上の空でした。 「うん、でも食欲ないから……」 「そっか、まあとりあえず寝てていいぞ。とりあえず俺は勝手に食っとくし、風呂とかも俺がしとくから、今日はゆっくりな」 また寝室の明かりが消されて、茉莉香は一人でベットに横たわりゆっくりと考える時間できました。 でもこの状況、じっくり考えてみても茉莉香にはどうすればいいかなんてわかりませんでした。 分かるのは、自分がどうしようもない状況に追い込まれてしまったと言う事実だけだったのです。
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第八章「受精か、着床か」 |
ほんの少しのインターバルを取ってから、正志と茉莉香の種付けセックスはまだ続きます。 「ああっ、あっ、あっ」 茉莉香が、正志の上で飛び跳ねるように突き上げられて嬌声をあげています。 ベットのへりに座った正志の上に、茉莉香が後ろ向きに足を大きく開脚して座り、挿入されています。 いわゆる、乱れ牡丹と呼ばれる体位です。 大きく足を広げての挿入なので、接合部分が丸見えです。正志に突かれてる茉莉香のマンコをカメラが撮影しています。 アダルトビデオなどにありがちな、カメラ目線を意識したセックスを楽しんでいるのです。 「どうだ、茉莉香。いいか」 「はいっ、いいですっ、正志さんのオチンチン最高ですっ!」 息とたわわなオッパイを弾ませながら、最高の笑みで卑猥なセリフを言ってみせる茉莉香にもはや迷いはありません。 なにせ茉莉香はもう、カメラの前で精液便所宣言までしてしまったのですから、羞恥心などぶち壊れています。これ以上、何を恥ずかしいことがあるでしょうか。 「よし、素直でけっこうだ」 「あっ、ああああぁーっ!」 正志は茉莉香の弾けるような身体の反応に、満足して更に腰を深々と突き上げるのでした。 「ほら、茉莉香の欲しがってる薬がここにあるよ」 ひとしきり、カメラの前での茉莉香の乱れっぷりを楽しむと、薬の入った白い封筒を差し出します。 「あっ、これはもしかして」 封筒を受け取る茉莉香。カメラに写った映像からも『はいらん ゆうはつざい』と下手くそなひらがなで書かれた文字が読み取れます。 「そう、約束のお薬だよ。茉莉香が今日確実に受精したいっていうから用意したんだ」 「ありがとうございますっ!」 茉莉香は嬉々として封筒に手を突っ込んで錠剤をつかみ出しました。そして、水もないのに貪るように錠剤を飲み干します。 「おいおい、そんなに慌てるなよ」 「んくっ……ごめんなさい、つい」 正志は、茉莉香を気遣うように水の入ったボトルを手渡してやります。 茉莉香は水をゴクリと満足気に飲み干すと、正志の上から腰を引きぬいて、立ち上がりました。 「こら、茉莉香。まだ撮影は終わりじゃないぞ」 「えっ……ああ、すみません」 茉莉香が喉から手が出るほど飲みたがってた薬、つまり『避妊薬』を飲み終わったと思った茉莉香は、つい逃げ出そうとしてしまったのでしょう。 しかし、シナリオは薬を飲んだあとも続くことになっています。 そして、茉莉香もシナリオが終わるまでが悪戯なのですから、逆らうわけにはいかないのです。 「まあ、疲れたならしばらく休んでもいいけどな。即効性とはいえ、薬が効いてくるまでには多少の時間は必要だろうから」 「そうですね……」 茉莉香はどうしたら良いかわからず、正志の横に立ち尽くしている。 正志はふうとため息をつくと、自分もペットボトルの水で喉を潤します。 そして、茉莉香を抱き寄せるようにベットに座らせて、また潤んだ唇を吸いました。 しばらく、唾液を交換し合う濃厚なキスが続きます。二人は睦まじい恋人同士のようでした。 「ふふ、茉莉香。お前はいい女だな」 正志にとっては、こうしてゆっくりと茉莉香を感じられる時間も楽しいものです。茉莉香のほうもまんざらでもないようでしたが、少し様子に変化があったようです。 「んんっ、正志さん。私、なんだかお腹が熱い……」 茉莉香の身体に変化が訪れました。 「おっ、ようやく薬が効いてきたみたいだな」 事情が分かっている正志は、ほくそ笑みます。 「お腹が、なんだか切ないです」 茉莉香は、自分の身体の変化に戸惑っている様子でした。 「よし、茉莉香。俺の上にもう一度またがってごらん」 「えっ、……はい」 茉莉香は素直に、言われるままに、腰を沈めていきます。 (くうっ、これはすごいな……) 茉莉香が完全に腰を沈めてしまうと、正志は思わず呻きそうになりました。重たかったわけではありません。 沈み込んで、正志の生殖器を飲み込んだ膣の絞めつけが凄かったのです。 茉莉香の中は、さっきよりもトロトロに熱くて柔らかくて、それなのにぎゅうぎゅうに絞めつけてきます。 茉莉香の下のお口は、おねだりしているようにダラダラといやらしく愛液を垂れ流しました。 正志が動かないでいると、なんと茉莉香は自分から腰を使い始めてしまいます。 「あっ、なんだかお腹、熱くて……たまらない」 「ほう、お腹が熱く感じるのか。さっき飲んだお薬の効果で、もう排卵が始まってるのかもしれないぞ」 それを聞いて、茉莉香は切なそうな顔をしました。 「えっ、でも……」 首だけ振り返って、正志の顔を見つめます。正志の不穏当な言葉を聞いて、ほんの少しだけ疑念を感じたのでしょう。 (排卵誘発剤とは、お芝居の話で本当は事後避妊薬を渡してくれたんでしょう?)と茉莉香は、正志に目で訴えかけています。 それに、正志は笑顔で頷きながらこう言いました。 「ほら、茉莉香。俺の子種を受精してくれるんだろう」 茉莉香は含むような笑顔を浮かべると、少し考えこむように俯いてから…… ふっと前を向いて、カメラに視線を向けました。 「はい、受精しますっ!」 そう茉莉香はそう叫んで、自ら正志の射精を促すために腰を振るい始めました。淫蕩な人妻の演技、アンアンと派手に嬌声を上げる茉莉香の姿は、もはや演技か本当に感じているのかは本人にもわからないのかもしれません。 茉莉香が『受精』と言われて納得したのは、正志が『事後避妊薬を飲んでも排卵はあるから受精はする、だが着床はしないから妊娠しない』と事前に教えこんでいたためです。 その話を持ちだされて、ちゃんと避妊薬だよという確認の合図だと思ってしまったのでしょう。 もしかしたら、目の前の出来事を合理的に解釈して、事後避妊薬にも排卵する副作用があるとでも考えたのかもしれません。もちろん、事後避妊薬を飲んでも排卵するなんてのは正志の大嘘です。 排卵を抑制するから、事後避妊薬は高い避妊効果があるのです。それで排卵してしまっては困ったことになります。 女性が自ら排卵を感じるなどということが実際にあり得るのかどうかわかりませんが、この時の茉莉香は排卵の予兆をお腹の熱として感じていました。 茉莉香が本当に排卵するとしたら、妊娠の危険が極めて高いのです。 それを知らない茉莉香は、排卵だけなら、受精だけなら良いと考えてしまいました。 「茉莉香ッ!」 ズンと下からの突き上げが更に激しくなります。 「はいいっ!」 茉莉香はそれに腰の動きを合わせて、更に深々と沈めます。深く、激しく、えぐるように鋭角に突き上げてくる亀頭が、子宮口をノックするのを感じるのです。 「茉莉香ッ、ウウッ、早く排卵しちまえっ!」 「あっ、ああっ、しますっ!」 お互いの生殖器が重なりあい、快楽の渦に融け合う一体感。正志の睾丸から、茉莉香の子宮へとまっすぐに伸びた生殖管のラインが一本につながったような感覚。 正志はまだ射精していませんが、何か熱いものが自分の下腹部から飛び出して茉莉香の下腹部へと流れだして行くのを感じました。 「茉莉香ぁ……」 「熱ッ!」 ギュウッと正志の分身を茉莉香の膣が絞めつけます。あまりの絞めつけに、ちょっと漏らしてしまいましたが、これまで熟れた人妻の膣襞に鍛えられた正志はまだ射精を堪えます。 ギュウギュウと、まだ絞める。絞めつけ続ける。亀頭の鈴口から魂までも吸い込まれそうな茉莉香の絞めつけに正志は確信しました。 「茉莉香、排卵しちまったんだろ」 「ハイッ、出ちゃいました……」 ハァと甘い気を吐き出す茉莉香の頬はほんのりと色づき、瞳には涙が滲んでいます。 「人妻が、間男に排卵させられたんじゃざまあないわな。茉莉香、ほらカメラに向かって旦那に向かって、言ってやれよ!」 「あなたっ、ごめんなさい……私あなたの留守中に不倫して、排卵しちゃいましたぁ!」 茉莉香は魂が口から零れそうなセリフを、嗚咽とともに吐き出します。 「よし、よく言ったぞ。ご褒美に茉莉香の卵子に直接ぶっかけてやるからな」 シナリオのクライマックスです。 これが言いたくて、正志はここまで射精をこらえてきたようなもの。あとはもう流れで出してやれと思い、正志は腰の突き上げを再開しました。 「あなたっ! ごめんなさい、私は今からぶっかけられてぇ……他の人の精子で受精しちゃいますっ!」 正志は無言で下から突き上げて、最後の膣の感触を味わいます。 「あなたっ! ごめ……んなざい、こんな変態で、私ごめんなさいっ!」 徐々にセリフに交じる嗚咽がひどくなり、黒目がちの大きな瞳からはポロポロと涙がこぼれて、茉莉香は自分でも何を口走っているのかわからなくなっているようです。 不貞行為を撮影されながら、夫に向かって話をさせられる。罪悪感に胸が締め付けられるほど痛いのに、その痛みが甘い気持ちよさを伴う。 自らの罪の告白に、ペリペリと薄皮が剥がれて、自分の魂が剥き出しになるようなカタルシスを茉莉香は感じていたのでした。 「茉莉香ッ、孕ませるぞッ、茉莉香ッ!」 その間にも、正志は浅ましくも腰を振るい更に茉莉香の奥深くへ。膣奥のコリコリっとした子宮口をこじ開ける勢いでこすりつけます。 先ほどの痛いほどの吸引力は程よく緩んで、膣の中はトロトロのトロマン状態になっています。 今度はこっちの番だとばかりに、正志は最後のピストンを行い、人妻の膣襞の感触を生の生殖器でタップリと味わいました。 (ああっ、茉莉香の旦那は生で入れたことないんだよな。俺だけが、この気持ちよさを味わったんだ) そう思った瞬間、堪えにこらえてきた射精が解き放たれました。 ドクーッ! ドクドクンッドクンッ 堰を切ったような放精。こらえてきた全てが、茉莉香の膣奥に吐き出されていきます。 ビュビュビュビュビュビュビュルーッ 子宮口を通して、大量に噴出された精液は茉莉香の子宮に溢れて、卵管へと注ぎ込まれます。 そして、ちょうど卵管を通っていた茉莉香の卵子に向かって流れ込みました。 茉莉香の卵子は、瞬く間に精子の大群に飲み込まれ取り囲まれてしまいます。 そして、白いオタマジャクシたちに表面を削られて、やがて幸運な一匹が卵子の膜を突き破り受精を果たします。 茉莉香は正志の子種を受精する瞬間―― 「あなたっ、愛してますっ……」 嗚咽にまみれ、混濁する意識のなかで、最後にこぼれた茉莉香のつぶやきはシナリオにもない夫への愛の言葉でした。 それは射精後の放心状態にある正志の耳にも響きましたが、怒ったりはしません。嫉妬も感じません。むしろ、心地よさすら感じました。 人妻が他の男の精を受けながら、夫への愛の言葉を口にする。 夫婦の愛へのこれほどの冒涜があるでしょうか。それでいて、その額に汗を浮かべて感極まった茉莉香の姿は崇高であるほどに気高く美しいのです。 その残酷さは、歪んだ正志の心を完璧に充足させるものだったのでした。 だから、正志はこれ以上の陵辱を止めて、ここで茉莉香を開放してハロウィンの饗宴を終わりにするのでした。 全て終わった。そう茉莉香は安堵します。 しかし、それは新たな狂宴の幕開けへの布石に過ぎなかったのでした。
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第七章「妻か、便器か」 |
「それでは……」 茉莉香は、ベットの上で立ち上がると、ちょっと小首を傾げるようにして考えました。そして、しゃがみ込むようにして正志に耳打ちします。 (あの、髪は動きやすいように括ったほうがいいですか) 茉莉香の甘い吐息に耳をくすぐられて、正志は思わず笑ってしまいます。 (いや、ストレートのままで頼むよ。そっちのほうが好きなんだ) せっかくだから、正志も耳打ちで返しました。どうやらシナリオ以外のことはしゃべってはいけないと思っているらしいです。 立ち上がると、ナイトガウンを脱ぎ落とした茉莉香は、紫のレースがついた下着だけの姿になりました。 「下着も、脱いだ方がいいですか」 「いや、俺が外すよ」 茉莉香の背中に手を回して、ブラのホックを弾く……ととと、うまく外せません。茉莉香のブラは、ダブルホックですから片手では外しにくいのです。 不恰好な自分に苦笑すると、正志は後ろに回って両手でブラのホックを外しました。ぷるんと、たわわなオッパイが開放されます。相変わらずの巨乳です。 正志は、次にふっくらとしたお尻とすらりとした長い足にそっと触れてから、さっとショーツを引きずり下ろします。足首から、ショーツを外すと、前に回って裸体を鑑賞します。 気をつけの姿勢のまま、じっと突っ立っている茉莉香。そうしているだけで、美しいプロポーションだと感じます。 若々しい肌は透き通るように白く、とても人妻とは思えない瑞々しい張りがあります。輝くような裸体にしばし息を呑んだ正志は、ハッと気を取り直してカメラのレンズを覗きます。
「よし、初めていいよ」 本当はもうカメラを回しているのですが、正志はスタートを区切るためにそう言いました。 「えっと、深谷 茉里香(ふかたに まりか)二十三歳です。専業主婦をしています、夫とは結婚して二年になります」 「よし……」 カメラを覗きこみながら、正志は頷いて見せる。先を促されて慌てて茉莉香は口上を続ける。 「スリーサイズは上から90・60・85です」 本当か嘘か、なんかいい加減な数字を並べて見せる茉莉香です。 「ふーんオッパイはもうちょっとありそうだけどな」 シナリオにはないですが、ちょっとアドリブで混ぜっ返して見せる正志。 「胸はもうちょっとあるかも、最近測ってないのですいません。えっとそれで……、今日は同じマンションの住人の田中正志さんにタネ……、種付けセックスをしてもらう記念にビデオを撮ってもらってます」 茉莉香はアドリブにもちゃんと答えた上で、きちんと段取りをこなしています。聡明な茉莉香が、きちんとシナリオを記憶している証拠です。セリフも、よどみなく言えています。 「旦那の留守中に、他の男に種付けして欲しいなんて茉莉香は本当に変態だね」 「はい、私は変態なんです……普段、夫に抱かれているベットで、正志さんに抱いてもらうとすっごく興奮できていいんです」 シナリオ通り、順調で怖いぐらいです。自分の考えた卑猥なセリフを、茉莉香に言わせていることで正志は必死に興奮を抑えつけないと、正志の方がセリフをトチりそうなほど心臓がバクバクいっています。 「夫への罪悪感がスパイスになるってことか。生セックスはこっちも気持ちいいからありがたいけど、奥さんは結婚してるんだから妊娠はまずいんじゃないの?」
キラっと茉莉香の大粒の瞳が光りました。怒りか、悲しみか、茉莉香本人でないと、その心はうかがい知ることはできませんが、胸にこみ上げる気持ちで目が潤んでいるのでしょう。 そのまま泣きだしてしまうかもしれない正志は心配になりましたが、茉莉香はさっと腕で目をこすると毅然とした顔で続けます。 「それは正志さんと生セックスしていて、夫よりも……、夫よりもすっごく気持ちがいいから、このまま正志さんの子供が妊娠できたらどれほど気持ちいいかと思って……、その……、種付けセックスをすることを決意しました」 茉莉香は激情に震える声を抑えるように、言い募りました。きちんと言えていますが、どうも段取りを忘れているようです。 「わかった、わかった。茉莉香の気持ちはよくわかったけど、態度でも示してくれるかな。カメラの前で」 セリフだけではダメなのです。シナリオでは、カメラの前でオナニーをしながらおねだりすることになっています。 「あっ、はい」 股をおっぴろげて早速、オナニーにとりかかるかとおもいきや、茉莉香は足を広げた姿勢のままで俯いて止まってしまいました。 「どうした」 「いえ……」 女というのは不思議な動物で、必要がなければ自分のマンコもウンコも不浄のものとして見たくないものなのです。普段オナニーの習慣もない茉莉香は、シナリオに書かれていた『股をおっぴろげておねだりする』と言う手順がよくわからないのでした。 おずおずと、股に手を伸ばして擦る。クリトリスの先を手でこするような大人しいものだ。そのぎこちない手つきをしばらく面白そうに見ていた正志ですが、埒があかないと思って手をだすことにしました。 「手伝ってやるよ」 後ろから、豊かな乳房を持ち上げるように掴むと優しく揉みしだきました。正志がリズミカルに胸を揉むと、それに刺激されたように茉莉香の自慰の手も早まっていきます。 「んっ、んっ……」 茉莉香が濡れるに従って、メスのいやらしい匂いが漂ってきます。又を擦る手もそれなりに形にはなっていましたが、まだ正志のイメージする絵にはなっていません。今の茉莉香は間男の子種を欲しがる淫蕩な人妻なのです。
「茉莉香そうじゃない、もっとよく自分のマンコを観察しろ。膣奥までちゃんと指を入れてみろ」 「はい……」 茉莉香は、言われるままにしっとりと濡れた陰唇の中へと指を挿入します。どう動かしたらいいかもわからず、かき回しているようです。ジュブジュブといやらしい音が響いて、プンプンとメスの匂いが強くなって来ました。 「よし、中指を思いっきり膣奥に押し込んで、コリコリした感触の突起を探せ」 茉莉香の細くて長い指先が、コリコリとした突起に届いたようです。 「……ありました」 「そこが子宮口だ。俺の子供を妊娠したいんだろ、だったらそこを刺激してイケるようにならないといけない」 「あっ、はい、がんばります……」 普通のセックスの絶頂とは違い、子宮口を刺激されてイクのはボルチオ性感と呼ばれるものです。 これには子宮口を意識することが必要なので、オナニーでたっぷり慣れさせる必要があります。 茉莉香がボルチオ性感帯でイケるようになれば、固く閉じた子宮口も多少は緩み、妊娠率は格段に上がるはずです。 幸いなことに時間はたっぷりとあります。 秋晴れの朝日が照らすベットルームで、正志はゆっくりと茉莉香の乳房を刺激したり、唇に吸い付いたりしながらじっくりと性感を高めます。 茉莉香が自分で子宮口を刺激してイケるようにアシストし続けました。 「どうだ」 「ああっ、いきそうです……あああっ!!」 見た目はさほど激しいイキっぷりではありませんでしたが、ジワッと額に汗を浮かべて茉莉香は叫びだしました。 そうして、ギュッと身体をこわばらせると、だるっと脱力しました。 「子宮口でイケたみたいだな。その感覚を覚えておくようにな」 「はっ、はい……はぁ」 茉莉香はぐったりと正志の腕の中で脱力しました。開いたマンコからは、ドロっと愛液がこぼれていました。
イキ終わって、トロンとした表情をしている茉莉香の唇が半開きになっていて、正志は思わず吸い寄せられるようにキスをしました。 口内に溜まっている甘い唾液は、ものすごく甘い蜜の味がします。正志は、射精するよりも、ずっと幸せな気持ちに浸っていました。 女をイかせるだけなのに、触れる肌から茉莉香の気持ちよさが伝わってくるようで、普通のセックスをするよりもずっと深く繋がっていられる気がしました。茉莉香の旦那だって、ここまで甘く蕩けそうな茉莉香の可愛さは見たことがないはずです。 唾液だけではなく、全身から甘い香りがします。全身の毛穴からフェロモンのような匂いが立ち込めて、その濃厚さに正志の股間はいきり勃っています。 深く激しく興奮しているのに、どこかまだ頭の一部分は冷静さを保ったままで明晰です。女を完全にイかせてやったつかの間の万能感のせいでしょうか、正志は自信と力に満ち溢れています。 「茉莉香、ヨガってるとこ済まないんだが、続きできるか」 「はい……」 茉莉香は頷くとベットに腰掛け直し、ほんの数瞬だけ黙り込みます。おそらく次はどういう段取りだかを思い出して、おねだりを続けます。 「……人妻のトロトロのオマンコにどうか種付けしてくださいっ!」 接写するカメラに向かってお尻を持ち上げ、指でニュプッと濡れそぼって充血したオマンコを奥の子宮口まで見えそうなほどに開いて見せる。 一回、ボルチオ性感でアクメを感じたことで、開き直ったのでしょうか。頬を桜色に染めて、笑みを浮かべるの様は茉莉香は正志のイメージした『淫蕩な人妻』に近づいてきています。 「むふ、いいぞもっとおねだりしてみろ」 「お願いします、私とオマンコ、オマンコしてくださいっ!」 普段は貞淑な若奥さんをやっている茉莉香に、隠語を連発させて正志は満足そうに頷きました。日頃とのギャップが、興奮を高めてくれるのです。
「よし、そこまでおねだりされちゃあ仕方ないな。一肌脱いでやるか」 一肌どころか、もう正志も真っ裸になっているのですが。 恩着せがましく、わざとらしい正志のセリフに不満の色も見せることなく茉莉香は微笑みました。 「ありがとうございます」 不満を押し隠して茉莉香の蠱惑的な唇には淑女の微笑み、でもよく見ると目は笑っていません。 その澄んだ瞳を、また愛欲に狂わせてみたいと正志は思います。正志はカメラ位置を確認してから、茉莉香をベットに押し倒しました。 「いくぞ、茉莉香ッ!」 そうして準備万端の女性器に、はちきれんばかりに勃起した一物をあてがってぐっと挿入しました。 そのまま正常位の姿勢で、腰を一気に奥まで進めます。 「あっ! ああっ!」 狂おしい嬌声。これも演技なのでしょうか、それとも本当? それは身体を重ねていけばわかることです。しばらくは無言で、一心不乱に腰を振るいました。 硬い一物で、茉莉香の膣全体をこすりあげるような激しいピストン。突き上げるたびに、茉莉香は気持ちよさそうにメスの悲鳴を上げました。 女の喘ぎは、男を射精へと導きます。 まだ気をやってはもったいないと、深々と膣奥を突き上げてから正志は腰の動きを止めました。 「茉莉香、いっそのこと俺と結婚しないか」 「ええっ、私は夫が居ますからッ!」 「だから今の旦那と別れてさ、俺の子供を妊娠してくれるんだからソッチのほうがいいだろ」 茉莉香の答えは聞かなくても分かっているのです。
「ダメですッ、それはダメ」 髪を振り乱しながら、首を横に振ります。そんなにまで嫌がらなくてもと、正志でも思ってしまいます。 「俺の子供を妊娠したいほど愛してくれてるんだろ、だったらいいじゃないか」 「ダメです、そんな意地悪なこと言わないでください」 (やはりダメか) そう正志は思います。もちろん口説けるとは思っていませんでしたが、やはり少しだけ気落ちしてしまうものです。 「じゃあ、俺の子供ができたら旦那の子どもとして育てるのか」 「そう……、そうです。そうしますから、どうぞ種付けだけなさってください」 「ひどい女だな、茉莉香は……、俺は種馬扱いか」 そう詰りながら、正志は苦笑しています。 「ごめんなさい」 茉莉香は、憂いにしかめた眉を正志に向けました。シナリオは、ここで茉莉香に一つの選択権を与えていたのです。もう諦めて、離婚して正志の妻になる選択が一つ。 そして、それが嫌なら…… 「それじゃ、お前をこれから奴隷として扱うぞ。いや、性奴隷なんてもんじゃないな。お前は俺の欲望を受け入れる肉穴だ、精液便所にしてやるよ」 「はい……、どうか私を正志さんの精液便所にしてください」 ……正志の妻となるのが嫌ならば、精液便所になれというのがもう一つの選択肢なのでした。 「フンッ、俺の妻にしてやるって言ってるのに、本当に茉莉香は変態なんだな」 そう楽しげに罵る正志でしたが、口元にはやはり苦いものが混じっていました。精液便所に落とされてまで、正志の妻になるのを嫌がるのかと思ったのです。 (がんばって気持ちよくしてやったのに……) 正志が行ったのは、本当にねちっこいセックスでした。何度も何度も茉莉香にエクスタシーに至らせました。量でも質でも、茉莉香の夫に劣っているところがあるとは思えません。 違いがあるとすれば、やはり愛の有無か。そう正志は思いました。催眠でも、貞淑な人妻の最後の一線は崩せなかったのでした。
「よし、茉莉香お前は今から俺の精液便所だ、二十四時間俺の欲望を受け入れろよ」 「はい、私は正志さんの精液便所です。いつでも私の中に出してください」 もう茉莉香は、俺の精液便所だ。孕ませ人形だ。そう正志は思うと、あえて荒々しく自分の欲望の赴くままにマンコにチンチンをぶち込み続けます。 さっきまでの愛情の混じった甘い交合ではなく、とぐろを巻く二匹の蛇が重なりあい、お互いの身体を貪り合う愛撫です。 「よし、お前のマンコもクチマンコもケツマンコも俺のものだからな」 「はいっ、そうですっ! 全部正志さんのものですっ!」 貪るように、茉莉香の裸体を力強く掻き抱きました。 「旦那にもう挿れさせるんじゃねーぞっ!」 「はいっ、絶対に正志さん以外に挿れさせませんっ!」 茉莉香もまた、力強く抱きしめ返すことでそれに答えます。足をおもいっきり開いて、正志の腰に巻きつけていました。 だからこそ、茉莉香の肉穴のもっとも深い部分を正志の先っぽがえぐることができたのでした。 「よーし、約束だぞ。ご褒美に中に出してやるからな」 深々と腰を突き上げた正志は、亀頭に強くこすれるコリコリとした感覚を感じます。子宮口がほどなく射精されるはずの精子を吸おうと、降りてきているのかもしれません。 女の身体とは不思議なもので、孕まされることがきちんとわかっていて、そのための準備を整えるのでした。 「ああっ!」 感極まった、茉莉香の叫び声。膣がきゅうううと絞まりました。締まるではありません。まるで吸い付くように強く、陰茎全体が引き絞られました。 「うあああっ、茉莉香あっ!」 これにはたまらず、ついに正志も気をやってしまいます。
ドンッと、腰をハンマーで叩かれたような激しい射精。
ドクドクドクン……。
引き絞られた茉莉香の小さな膣が、正志の全てを吸い尽くす勢いで飲み込んでいきます。正志は、まるで自分の魂までもが全て吸いだされたように感じて、頭が真っ白になりました。 下半身がぽかんと浮かんだような脱力感。ただ強く握りしめた茉莉香の乳房の感触だけが、いまここに生きているとかろうじて感じられるほどの感覚。 ブワッーと視界が真っ白に、世界がクリアになっていきます。 自分の感覚を引き戻すために、正志は茉莉香を強く抱きしめました。 きちんと肉の暖かさを持って、茉莉香は抱きしめ返してくれています。重なりあう身体は、境界線がぼやけてしまいまるで一つになったみたいに感じました。
射精後の冷めた感覚、全ての毒気を抜かれた心地よさ。 「くふうっ」 しばらくして茉莉香が、そんなため息を吐き出しました。 「はぁ…‥どうだ茉莉香、ちゃんと全部中に出してやったぞ」 「ありがとうございます」 茉莉香はちゃんとお礼を言いました。 「ちゃんと孕めよ」 「はい、正志さんの赤ちゃんを…‥妊娠します」 規則的にそう返す茉莉香を苦笑して見つめると、正志は腰を引きました。 茉莉香のヌルッとした股から、正志が柔らかくなった陰茎を引き抜くと、ドロっとした精液が股からこぼれました。 中に全部入ってしまったと思っても、やはり大量に射精したので外にこぼれてくるのです。黄味がかった濃いやつが、ぽっかりと口を開けた陰茎から滝のように漏れだしています。 中出しした証を満足気に見つめると、正志は力尽きたようにドサッとベットに上に転がりました。 さすがに精力旺盛な正志も、すぐ再開は無理です。 しばらくは、茉莉香とベットに寝転んでいることにしました。
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