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E小説(中出し・孕ませ・時間停止・催眠・環境変化など)
エロ小説のサイトですので18歳未満の方はお帰りください。傾向はマニア向け、作品中のほぼ100%中だし妊娠描写、付属性として時間停止・催眠・環境変化などです。
第三章下
 来て本当によかった。幸助の一生で一番忙しい一日。その一日の終わりをこういう風に迎えられるなら悪くはない。
 その幸助にとっての、幸運の女神は、ちょうど入り口近くの洗面台で身体を洗っていたらしく全身を泡だらけにしていたのだった。やはり最初に目に付くのは特徴的なおっぱいだ。
 風船を限界にまで膨らませたようなおっぱいといえばいいのだろうか。おっぱいそれ自体が独立を主張しているかのように極度に飛び出ていて根元でくびれている。その大きな風船のような巨乳の三分の一ほどの巨大さに淡いピンクの乳輪が張り付いており、乳頭は完全に陥没していた。胸に張り付いたようなおっぱいしか知らない幸助にとって、こんなおっぱいがありうるということが衝撃だった。
 顔は、美人というほどではなく、可愛いというのともまた違う。頬は柔らかそうで、厚い唇は魅惑的だった。幸助はただ「引かれる」と感じて彼女を求めた。それは、男好きする顔とでもいうべきだろうか。女性らしい容姿、いや雌らしい容姿といってしまったほうがいい。
 ほっそりとした腰つきも、なめかましいお尻の曲線も、見事に男に愛されるべき女をやっていた。
 女風呂には他にも数人の女性客がいたが、もうこの段階で幸助は彼女しか見えなくなっていた。気がつくと、もう自分の一物は抑えきれないほど勃起していて自分の腹にくっつくほどおったっている。こすればそのまま何回でも射精してしまえそうだった。もちろん、そんなもったいないことはしない。

 男子高校生の生理というのは、これで繊細なものだ。性欲が鬱屈しているということもあるのだが、それだけではない。性に対する幻想と現実が頭の中で混濁して、意外にもセックスに綺麗なものを求めていたりする。
 幸助も少年を脱しかけて、男になろうとしている年頃だった。童貞を切るというのは、自分の古い殻を脱ぎ去るということに違いない。ほんのついさっきまで、「初めてのセックスは好きな人としたい」という欲望で、自分の性欲を押さえつけることができていた。それが、目の前の泡だらけになっている風船おっぱいをみて、それが出来なくなってしまったのだ。
 それでは、目の前の男好きをする女性に幸助が恋をしたのだろうか。それは、結果としてはありうるかもしれないが、今この段階においてそれはない。やはり、それはただの性欲であり、子孫を残していきたいという、生き物としての本能の滾りだった。

 もう衝動的に、襲い掛かっていた。思ってやったことだが、思わずといいたいほど自然に後ろから胸を揉みしだ居ていた。
「うあぁ……」
 思わず声が漏れた。違いすぎる。あくまでも服の上からだが、幸助は今日クラス全員の女子の胸を揉んでいる。如月先生も揉んだから、大人の女性の巨乳だって揉みまくってる。それは、マシュマロのように柔らかい、それはそれで胸を熱くさせる素敵な感触であった。
 だが、この泡立てられた風船おっぱいの揉み心地はどうだろう。柔らかい? プニプニする? そんなぐらいで感動していた自分が馬鹿らしく思えるほどの素晴らしさで思わず笑ってしまった。
 だってこのおっぱいは、この手に掴めるのだ。
 思い出したのは、ホルスタインの乳搾りだ。そう、この乳の括れは『私の乳を搾ってください』といわんばかりに、幸助の手にジャストフィットしている。
 押し付けたり、締め付けたり、ねじってみたり、石鹸の泡がついているのでよく滑る。幸助は、一心不乱にしごき続けた。おっぱいの中から、本当に乳を搾り出せてしまうのではないか。それぐらいの勢いでもみ続けた。
「やばいな……」
 本当に乳が出てしまったのではないか、そう思って確認をするために手は乳から離さずに前に回りこんで見る。力をかけたら、弾力を保ちつつも、無限の柔軟性を示すおっぱいに感動しつつ、その大きすぎる乳輪の先を見つめると。
 何かの奇跡のように、陥没していたはずの乳頭が刺激を受けて、立ち始めるところだった。今度は少し浮き上がってきた乳頭を、必死にこねる。陥没した中にはきちんとコリコリする乳首が隠れているらしく、それを指で指でひねり出すように扱く。
「……でかい」
 陥没した乳頭があるのは、なんとなく知っていたが、みんなこんなに大きな乳首を隠しもっているものなのだろうか。
 乳輪の色と一緒のように薄くて、可愛く飛び出してきている乳首に思わず吸い付いていた。微妙に石鹸の苦味があったが、それにも構わずに一心不乱に吸う。
 そうなのだ、おっぱいは吸うものだったのだ。
 吸い応えのあるコリコリした乳頭の真ん中には小さな凹みがあって、きっとここをがんばって吸い続けていたら甘い乳が出てくるのだと信じられた。
 もちろん、妊娠なんてしていないだろうから、乳など出てこないのだけど。
 それでも、前から抱え込むようにして吸っているうちに、大きな満足感と共に少し満足して頭が働くようになってきた。
「はぁ……」
 幸助は何かというとため息が癖なのだが、幸せだからこそでてくる満足のため息を久しぶりに吐いた気がした。
 時間が止まった時の女は、まるで意識を失って眠ったような感じだった。おっぱいを弄るたびに、息が荒くなるし、興奮させれば頬も染まる。本当に強い刺激を与えたら、目を醒ましてしまうんじゃないかと怖くなるほどだ。

 ここで射精するまで、犯しつくしてもいいのだが、不意に動いている彼女を見てみたくなった。女風呂の全体を確認する、アジアンテイストというかアマゾンテイストを出したいのか、生い茂った観葉植物を区切りにして、真ん中に洗面台が並び、温泉っぽい浴槽が種類別に三つ、ジャグジーが二つ、サウナと水風呂が一つという構成である。
 風呂に居る人間は数人であり、清掃職員の姿も見えない。グルグルと回って確認してみたが、この真ん中の観葉植物の茂みの影に隠れれば、とりあえずは隠れられそうだった。わざわざ覗きスポットを作っているわけではないのだろうが、好都合な構造である。
 十分に注意して、身を伏せると時間を動き出させた。
「かける……」
 ゆっくりと、スロー再生のように彼女が動き始める。それまで気にならなかった、湯気がモクモクと流れ出してきた。時間と共に、大気の環流が始まったというわけだ。風船おっぱいの彼女は、なにやら胸を強く押さえて立ち上がると、キョロキョロと周囲をうかがった。
「やべ……」
 向こうから見えないと分かっていても、思わず深く身を伏せる。
 やっぱり、時間停止中にやった行為もそれなりに後が残るようだ。その点は、気をつけてやらなければいけないな。
 彼女は、ため息一つつくと気を取り直したようにボディーソープを付け直して、身体を洗い始めた。こっちが弄るのもいいが、自分で洗っているのを見るのも趣き深いというものだ。名前も知らない女だが、もはや自分のもののような気がした。
 そうやって、楽しんでいるうちに身体を流し終えた。身体を洗って、それで上がる人はあんまり居ないはずだ。きっと身体を温めなおしに、浴槽に行くだろうとは予測していたのだが。
「しめた、ジャグジーに入るぞ」
 ジャグジーは、一人用の泡風呂である。寝そべって強い泡を全身に浴びることによって血行がよくなる効果があるそうだ。小さめのスーパー銭湯でもたいていはどこも設置してあるものだが、普通の浴槽に行かれるよりも格段に都合がよかったのだ。
 なぜなら、激しく噴き上げる泡で多少の痕跡なら消えてしまうだろうからである。
 遠目に、ジャグジーにゆったりと浸かって気持ちよさそうにする彼女が見えた。
「……わる」
 幸助は多少の疲労感など、興奮で吹き飛ばすように力を発動する。おっと焦りすぎはいけない、女湯で頭を押さえて転げ回るわけにいかないからな。ゆっくりと、空気が張り詰めていき環流していた湯気が動きを止める。それが、時間の停止を確信させる。
「よし」
 ゆっくりと、風船おっぱいの女に近づいていく幸助。
「恨むなら、わざわざジャグジーを選んでしまったその身の不幸を恨むのだな」
 普通の浴槽なら、そこまでいかなかっただろうに。やはり、ここで幸助に出会ってしまった彼女は不幸で、今日の幸助には幸運の女神がついているようだ。
 幸助は、もう高まった期待と興奮でそんなもの見ていないのだが、止まっている泡風呂というのも中々壮観な眺めである。泡の空気玉、そのままで無数に水の中に停止している光景は、幻想的ですらある。
 そうして、その無数の泡の中で気持ちよさそうに寝そべっている姿も無防備で素敵だった。さっきの違和感とか、大人の女性は気にしないものなのかもしれない。風船おっぱいは、やはり泡の勢いで右左に揺れたまま固まっていて、すこし泡の力で浮き上がっていたのがエロく見えていい。
 少し左に身体を押しのけるようにして、幸助もジャグジーに入る。一人だとゆったりめだが、二人で入ると少し手狭だ。身体が密着する。とりあえず、下に深く入り込んで少し浮いている身体を上に押し上げるようにしてみる。
「おおっ……いい感じ」
 時間が止まった世界でも、ちゃんとお湯は温かくて気持ちがいい。泡は出てこないから、身体に触れると同時に割れて消えてしまうけど、そのプチプチする感覚もなんだか楽しい。
「ふぅ……」
 少し背中を押して、彼女を浮かすようにして、湯船の感覚を楽しんで見たりする。終わってから、男湯でいいからゆっくり入っていくのもいいかもしれないな。
 目の前の女を後ろから抱きしめる。幸助の身体がもう少し大きければよかったのだが、目の前の成人女性と幸助はちょうど一緒ぐらいの大きさだから。完全に抱きしめるというわけにはいかない。
 お湯の浮力も借りて、ちょっと力を込めて相手の上半身を押し上げて、自分の上に座らせるようにする。密着した肌は、しっとりとしていてとにかく気持ちがいい。
 後ろから、おっぱいを掴む。先ほど触りまくったくせに、よく飽きないものだ。
「ああっ……やっぱりいいな」
 この髪も、手に絡みつくようなしっとりとした肌も、揉み心地のいいおっぱいも、身体の温かさも、いまだけは自分だけのものだ。胸をくびれから乳頭まで揉み出すようにして、また乳首を勃起させるために触りながら、自然に股間の猛りを彼女の股に押し付けていく。
 左手では、胸を揉みしだいたままで、右手は彼女の陰唇をなぞるように触る。
「ほんの少し濡れてる感じがするな」
 筋をなぞるように触れていると、驚くほど簡単に中に手が入っていってしまう。思わずに、結構深い部分に指が吸い込まれていく。女の子の穴の中に。
「うぁ……やばい感覚だな」
 そのために創られた襞は、幸助の指をねっとりとまとわりつきながら飲み込んでいく。とても卑猥で、吸い寄せられるような感覚だった。刺激は十分であったし、そのために作られていたものなのだから。
 意識しなくても、その大事な部分に自分の勃起しすぎたものをこすり付けていく。童貞が始めてするのに、いろいろ分からなくて困惑するっていう心配をしていたのだが。そんな心配が馬鹿みたいに、亀頭が吸い込まれていく。
「うぁ……こういうものなのか」
 後ろから突き上げる角度がぴったりとあっていたのだろう。肌と肌が水の潤滑ですべりあうように重なって、ちょっと押し上げるようにしてみると、彼女の柔らかい粘膜の中に吸い込まれるようにして、入ってしまった。
「おわっ!」
 じっくりとするつもりだったのに、こんなにあっけなく入ってしまうものか。
 自分がイメージしていた、初めてのプランなどここでどうでもよくなってしまった。
 彼女の腰を掴むようにして、必死に押し付けていく。
 動物のように、猿のように、ただ目の前に初めて味わう快楽を貪った。
「やべえっ……止まらない」
 初めて味わった肉襞の味というのは、これまで感じていた興奮ではなかった。
 腰を押して引くだけで、味わえる一体感。胸を掻き毟るように湧き上がってくる欲望と欲求。そんな塊が胸から湧き上がるたびに、たまらなくて腰をふるのだ。自分を包み込んでくれる柔軟な襞が、粘膜同士がこすれあう感覚にどうしようもなく声をあげる。
 その気持ちよさが気持ちよすぎて、理性を抑えることができない。
 制御を振り切ってしまえば、あとはもう突き上げて射精するだけ。
「あっ……あっ!」
 柔らかいピンクの塊が、自らを完全に包んでいるのを感じた。
 その中で、我慢せずに自らを解き放ってしまう。
 股間から、とんでもない量の迸りが競りあがってくるのが分かる。
 たっぷりと、出してしまうのだ。
 中で出すということは、どういうことかは理解していたが。
 この欲望は、その理解を軽く超えている。
「うああぁああああぁぁああああああああ」
 何かが自分の中から、出てくると思った。腰の動きはもう、独立した生き物のようで、意識しなくてもガクガクと身体を振るわせる。
 お湯よりも、もっともっと暖かいものが吐き出されていく。
 それは、幸助の欲望そのものだった。
「ふぅ……」と、幸助の胸のなかで、女が息を吹き返した。それはまるで、生きて感じているような大きな呼吸。
 もしかして、時が動き出したのか!?
 幸助は慌てた、それでも腰の中の愚かな息子は止まらない。一番奥を突き上げながら、欲望を吐き出し続ける、ドピュドピュ!と意識のない女の中を白濁液で汚し続ける。
「うぅ、あぁ……気持ちいいからもういい!」
 幸助は開き直った、もうどうでもいいやと。
 初めてのセックスというのは、そういうものなのだ。
 幸い、実際時が動き出したということはなかった。
 幸助の考えていたよりも、人間の身体が時間停止の状態でもっと動くというだけのことだった。

 湯上りの身体に、夕暮れの風が心地いい。
 ポカポカと湯気を立てながら、少し湿った前髪を気にするように幸助は歩いていく。
 駅まではもう少し、その幸助の脇を後ろからスカートを靡かせて自転車の女性が駆け抜けていった。
「あっ……さっきの」
 さっきの幸助の初めての相手になった女性だった。足を止めて、自転車を気持ちよくこいでいく彼女の背中を万感の思いで見送る。
 夕焼けをバックに、駅前を駆け抜けていく自転車の彼女の姿はとても美しくて絵になっていると思った。
 こんな偶然があっても、手を振ることも、声をかけることも許されないのがこの力のネックなのだろう。
 だけど、今の幸助はこれでいい。余韻はあるが未練はない。幸助は、後ろを振り返ることなく駅の改札を潜っていった。
終章「かわらぬこころ」
 いつもルシフィアと話していた屋上、そこに幸助は斎藤美世を呼び出した。美世は、やや活発すぎるところはあるが、普通の女の子だ。ルシフィアのように眉目秀麗でもなく、山本佐知のような健康美もなく、松井菜摘のような豊麗な肉付きがあるわけでもない。ちょっと綺麗で、ちょっと可愛くて、ただほんの少し距離が近かっただけ。
 そう冷静に分析する理性は幸助にはある。だが、そんなものを含めて世界を覆いつくすぐらいに幸助は美世が好きだった。この気持ちって、もうどうしようもないものだった。幸助は、力を得て性的な満足をたっぷりと味わうことができた。こんな幸運を得た高校生というのは、もしかすると世界で一人かもしれないと思考して、でもそんな僥倖と比べてもなおそれ以上に嬉しいこと。
 それが、そういう成長を通して「美世に告白できる」踏ん切りをつけることができたということなのだ。

 ありふれた恋愛と、無限の可能性を持つ力。それを天秤にかけて、恋愛を取る幸助はやはり普通の高校生だったということなのかもしれない。だが、それのどこが悪いのだろう。

 呼び出した美世は、屋上のフェンスの前で待っていた。偶然なのだろうが、それはいつもルシフィアが立っていた位置で、それにシニカルなユーモアを感じて、少し幸助は頬が緩む。
 たぶん、偶然というものはない。それも数奇というものなのだと、今の幸助は考える余裕があった。これから、好きな女の子に生まれて初めて告白するというのに、四肢に力は満ちて、本当に心の底からリラックスしていた。
 目の前で、幸助を見て美世はニッコリと微笑んでいる。これはうまくいくという確信があった。
「斎藤、あのさ……」
「うん」
「俺、お前のことが好きだ。付き合ってください!」
 何の衒いもない。単純な言葉でいいと思った。自信はあっても、それでも美世が黙り込んで考え込むような数瞬が、永遠にも感じられるほどに幸助は長く感じた。そうして、うつむいた美世が発した言葉は幸助の望んだ答えではなかった。
「幸助くん変わったよね……」
「ん、ああっ……自分でもそう思う」
 幸助はそこで、始めて焦った。美世の意図が読めなかった。ぼくが変わったからなんだっていうんだ、よく変わったならそれは成長だから、いいことじゃないのか。そして、なぜ答えの代わりに、それがいま言われるのかという困惑、不安。
「私さ……」
 美世は言葉をかみ締めるように、間を置く。
「前の幸助くんが好きだったんだよね」
 幸助は、美世の言葉が理解できなかった。前の、情けない、ただの俺が、好きだったってことか。そして、今は好きじゃないと。それはつまり。もう駄目ってことか。
 幸助は絶句する。ただ、立ち尽くした。そんな幸助の様子を楽しむように見ながら、残酷に美世は続ける。
「ほら、こんなこといったら幸助くんに悪いと思うんだけど、友達いなかったじゃん。幸助くん私しか友達いなかったよね」
「うん……」
「私、そういう人が好きなんだよね。自分がこういう性格だからかな。幸助くんと近くにいて話してると落ち着くっていうか、あーこの人と親しくしてるの自分だけだなと思うとすごく安心する。ちょっと酷いけど、私はそんな感じ……」
 幸助はもう気持ちがガクンと落ちてしまって、相槌も打てないでいる。
「だからさ、最近。幸助くん、私のことほったらかしだったよね。すぐ帰っちゃうし、他の娘ばっか見て相手してくれないし。ああいう寂しいのは……駄目なんだよ」
 この場所から、幸助は去りたかったけど走り去る気力すらなかった。これまでの全ての幸助の頑張りが、この結果ということで……こんなことなら時間停止の力なんてなければよかったのに。半ば真剣に幸助はそう思った。だが、過ぎ去ったときは取り戻せない。
 幸助はただ力もなく、その絶望を受け入れていた。
「だからさぁ……って、もう! なんだよその酷い顔」
 ガッと幸助は乱暴に肩を掴まれた。
「うぁ!!」
 幸助の四肢からは力が抜け切っているというのに、美世の相変わらず遠慮がない一撃で思わず転びそうになる。
「もうやだ、そんな顔しないでよ。私がイジメてるみたいじゃない!」
「いやっ、イジメてる……だろ!」
 いきなり身体を振るわれて、愕然とする幸助の息がかかるぐらいの距離に美世はいる。拒絶されているのに、ドキドキしてしまう自分が情けなくて悲しかった。
「あーもう、泣くな馬鹿!」
「泣いてな……んっ!」
 そういって、顔を真っ赤にして反応してしまった幸助は、美世に抱きしめられた。ほんの少しだけ豊かな胸に抱かれて、幸助は思わず息が詰まる。
「私の立てたシナリオでは、誰にも相手されなくてどうしようもない幸助くんを、しょうがなく貰ってあげるという」
「んっ……それ酷すぎるだろ!」
「あはははっ」
 美世は、強引に幸助を抱き寄せ、高らかに笑った。明らかに、幸助は弄ばれているのに、不思議と悪い気持ちはしなかった。ただ、安らかなのだ。それは、幸助の到達点。
「斎藤……」
「いいよ、いまのいい顔見て十分仕返ししたから……付き合ってあげるよ」
 幸助は、万感の思いで声が出なかった。そして、声の変わりに涙がでた。本当に、泣いているのが分かっていても、美世は今度は笑わなかった。
「あと……変わったんなら、いい加減、私のこと名前で呼びなよ」
「美世……」
「よし! ……でも呼びつけは早いんじゃないかな。そうだなあ、とりあえず美世様と呼びなさい」
 結局、成長してもどんなに強くなっても、どうしようもなく美世が好きな幸助は、美世の手の中で踊っていたようなもので、それでもそれがこんなにも心地よいと思えるのなら、幸せならば。
 幸助は、しばらく美世の胸の中でつかの間の永遠を楽しむのだった。

 そんな二人の様子を、こっそりと伺っている金髪少女がいた。ルシフィアだった、そうしてその後ろにはマサキも隠れて見ている。幸助が美世に告白するという話を聞いて、気になって見に来たのだが、マサキは少し不満げな顔である。彼には、友人の決着の付け方が少し納得いかなかった。
 それなのに、幸助を好きなはずのルシフィアが、やけにすっきりした表情で様子を見ているので、マサキは意外に思って声をかけた。
「いいのか、幸助くんを取られて」
「フフッ……取られて嫉妬してるのは、あなたではないんですか」
「なっ……ぼくはホモじゃねえぇ!」
 揺さぶってやったつもりが、ルシフィアは余裕で、ひどい冗談を言ってくるのでマサキは思わず声を荒げてしまう。心が読まれなくなっても、やはりこの金髪娘は、底が知れない。見ているとたまに怖気がする。マサキは金髪美少女を見ると、優しくて、それでいてとっても怖い師匠をつい思い出してしまうので、ちょっと苦手でもあるのだ。やはり女は国産に限ると友人にも強く勧めたい。
「声が大きいですよ……」
「すまん……だが正直なところぼくにも、いまさらあんな薄い恋愛ごっこをやる彼の気持ちが分からんのだが」
「闇に飲まれてしまった邪悪で可哀想な人間には絶対わからないでしょうね。幸助さんは泥にまみれてもなお、高貴で純粋なのです。あの人は、自分の獣の部分と人間の部分を分離することで、自分の中に大事なものをきっちり守ってる人ですから」
「それが分かっていて、嫉妬せずに満足しているお前の気持ちもわからんな」
 マサキは、それが疑問だった。しばらく黙っていたルシフィアだったが、口を開く。

「……説明する義理もないんですが、いいでしょう教えて差し上げます。あの美世さんが幸助さんの何を知ってますか?」
「なにって、一年以上の付き合いなんだから、お前よりはよっぽど親しいだろう」
「幸助さんは、すでに能力者として覚醒しています。その裏を知らないで、恋愛ごっこをやっているだけの彼女なら、問題にならないですよ」
「……そういうことか」
「そう、ようやく察しましたか。幸助さんの裏も表も知っていて、なお付き合っているのは私だけなんです。ねっ、嫉妬なんてする必要ないでしょう?」
 そういって、ルシフィアは心底満足げに笑った。それは理屈ではそうだが、感情は違うはずだろう。なぜ、そんな顔で笑えるのかマサキには理解できない。
「あー怖い怖い、こんな鬼女のいる特進科なんかに長居したくない、ぼくはもう帰るからな」
 そういって、マサキは縄梯子を降りていく。そんなマサキを気にせずに、ルシフィアはなおも飽きずに美世と抱き合っている幸助を見つめていた。きっと、それは心からの笑顔のままなのであろう。だが、その背中から感じる凄みは、マサキの背筋を寒くさせる。
 まったく、この女の情念はマサキには理解しがたいほど深くて恐ろしい。ヘタに覗き込んだりしたら掴まれて谷底に引きずり込まれてしまうのではないか。
 だいたいルシフィアは、別に幸助に隷属したわけではないはずだ。同じ能力者としては二人はいまでも対等の関係にある。それなのに、あれだけいいようにされて、なおも平気な顔で幸助を愛せるルシフィアの気持ちは、マサキには絶対に理解できなかった。あんな怖い女の手綱も握らずに、手元おいて安心している友人の気持ちも解らない。

 それが幸助のいう理解だというのなら、きっと幸助くんは、ぼくを乗り越えて成長していったのだなと考えてようやく、マサキはようやくこの結末に少し納得できた気がした。マサキに幸助の至った高みが理解できなくても、それは当たり前だ。人がそれぞれ違うように、その力のありようは違って当然なのだから。理解できなくても、友達を信じることはできる。
 そうなら、もはやマサキは特進科には来る必要もないだろう。学園のこっち側は、もう幸助のための学園となったのだから。そうして、マサキは幸助のためだけでなく、彼の幸せな楽園が長く続くことを……深く祈る。
 なぜなら、それこそがマサキと幸助の、友情の証にもなるのだから。

 停止の学園 終了 著作ヤラナイカー
第十三章「しんじられる」
 場所は、いつもの特進科の屋上。準備できるまでに、結構な時間がかかってしまった。その間に、幸助の覚悟も自ずから決まっていた。階段を駆け上がるように登っていくと、あの場所にはやはり、佐上ルシフィアの姿があった。
「貴方から私を呼ぶなんて……初めてですね」
「そうだな」
 幸助はもう無言で返さない、いまのルシフィアには”いわないと分からない”からだ。
「いよいよ、決着をつけようってことなんですか」
「これは、そういうことじゃない」
 幸助は、ルシフィアの肩を掴むようにしてにじり寄った。突然距離を詰められて、ルシフィアは焦ったように肩をつかまれた手を振り払おうとする。でもその力は、弱い。ただの女性の力でしかない、そう相手の行動を思考から先読みできないルシフィアの力はただのか弱い女の子でしかない。
 それなのに、ルシフィアは必死で手を押し返そうとしている。もう余裕の笑顔も、酷薄な笑みもそこにはなくて、まるで駄々をこねた子供ような怖い顔をする。彼女はこの瞬間気がついたのだ、自分の心を読む能力が完全に封じられていると。罠にはまったのは自分だと。
「いつから、いつから私の力を封じたんですか!」
「マサキが消えた日からだ」
「私は…………私に……読心力がなくても、貴方なんて簡単に……そう、簡単に、追い落とすことができるんです」
 そういって、ルシフィアは困惑した表情を隠すことすら出来ずに、それでも崩れる落ちそうな笑みを保とうとする。もはや、彼女は追い詰められていることに気がついてしまった。ブラフも使えない。
「俺だって、やろうと思えばいまのこの一瞬でお前を殺せる。でも、これは最初からそういうゲームじゃない」
「そんなのは!」
 自由なほうの手で、ルシフィアは殴りかかってきた。それを簡単に幸助は受け止める。解っていたが、その細い腕は……弱すぎる。
「お前こそ、いつまでこんなゲームを続けたら気が済む」
 掴まれた腕に、それでも精一杯の力を込めて、ルシフィアは身体を震わせるようにして幸助を睨みつける。その蒼く輝く瞳に力を込めても、それがどんなに綺麗でも、もう幸助にとっては、無力なただの小さな少女のものでしかない。幸助を押さえ込む力など、そこにはもう片鱗も存在しなかった。むしろ震えるルシフィアは、幸助の腕にすがり付いているようにしか見えない。
「私は、読心術がなければ……ただの女に過ぎないといいたいんですね。私を見くびらないで! そうだ、あなたを、あなたをいまここで殺してあげます!」
 そういうルシフィアの声色には、追い詰められた絶望がこもっていた。脅しにすらなっていない。こうやって自分の罠に誘い込んだ幸助が、ルシフィアに対する対策を取っていないわけもない。もはやルシフィアは、立ち尽くすしかないのだ。何重にも詰んでいることに気がつかされる屈辱。一歩下がるための逃げ場すらなかった。
「佐上の家にだって多少の力は……ここはうちの学園、ただの学生一人ぐらい、殺しても現行犯でなければもみ消せるのですよ」
 そうやって、幸助を睨みつける。幸助の瞳は微動だにせず、どんなに強く見つめても隙を見つけることができなかった。この人は、いつのまにかこんなに強い人になってしまったのかと、ルシフィアはまた諦めたように頭を伏せた。
「どうせ、そんなことやるつもりもないだろ」
「そうですよ、人を殺すなんて私には怖いです、それにもみ消してもらっても、そこで社会的に私は終わりですから。全部……全部……ああ、あなたの心が分かりません。こんな読めない会話は、私には怖い……」
「普通は、こうなんだよ。みんなこうやって相手の心が分からずに会話してるんだ」
 そうやって、肩を叩くようにして手をはずすと、少し離れて幸助は諭すようにいってやる。押し返そうとしていたルシフィアの手は、もうそれで力を失ってだらりと下がった。「相手の心が、分からないと私はなにを言っていいのか……すら」
「素直だな……もう少し虚勢を張ると思ったが」
「分からないですよ、あなたには……私がいま感じている恐怖も! 苦しみも!」
 弱々しく、よろめくようにしてルシフィアは、フェンスに手をついた。心が読めないだけで簡単に暗中に叩き込まれる彼女は弱々しい。それは生まれつき目が見えないものと、生まれて初めて視力を奪われた人間との違いだった。
 ルシフィアは闇に落ちたのだ。
 彼女にとって、人間というのは美しくも醜くも、全て見えているのが当たり前の存在で、それが見えないで相手と対峙するのは、その瞬間、その刹那が、まったく前の見えない霧の山道を百二十キロで暴走する車に乗せられてるみたいで。恐ろしい。
 まして、相手は時間停止能力者の幸助。
 次の瞬間、自分は断崖絶壁から落ちて死ぬかも。

 ルシフィアの憤りを言葉にするなら「なぜ私は、こんなに油断してしまったのだろう」ということだ。そうやって理由を問いただし続けて、自分を叱咤して奮い立て続けでもしなければ、この瞬間という恐怖に耐えられそうもなかった。
 読心術さえあれば、ルシフィアはいつでも安全圏にいた。相手がどんな人でも、人を超える鬼でも、神ですら、その悪意をあらかじめ見抜けるなら、どうとでも対処できるだけの力が彼女にはあった。だからこその絶対の余裕。
 それを失って、幸助の目の前にいるということは。次の瞬間ルシフィアは身体の自由を奪われ、むちゃくちゃに犯されているかもしれない。あるいはもっと恐ろしいことに、自分が死んでいることに気がつく暇も与えないで、死体の一片も残らずに切り刻まれて殺されているかもしれなかった。
 自分がいなくなれば、佐上家は幸助を疑う。それがルシフィアの打っていた布石。でも、幸助の時間停止能力は自分しか知らない。幸助の能力にだって、盲点や弱点があることを彼女は知っているのだが。だからこそ、その情報を持つ彼女を消してしまえば幸助は無敵だった。
 幸助に対抗するだけの拠り所として残しておいた、小さくてしっかりとした安全ロープを断ち切られてしまったのだ。万が一の安全綱もなしに、両手の力だけで断崖絶壁に張り付いているみたいなものだった。足はすくみ、身体はこわばって、もう登ることも降りることもできない。いっそのこと、風が……風がこの身を吹き飛ばしてくれれば、少なくとも終わりを迎えることで安心できるのに。こんなに怖くないのに。

「ルシフィア、お前は何が望みだ」
 ルシフィアは、本当に虚を突かれた質問をされた。それを言おうとしていたのは自分なのに、もう幸助の望みどおりにして。一思いに、そう彼女は思っていたのに。フェンスを掴んだ手に力を込めて立っているのは、最後の矜持だ。
「望みをいうのは、あなたのほうじゃないですか。見事に、あなたは勝ったのですから、私は何でも……」
「だから、そういうことじゃないっていってるだろ」
「なにが……すでに檻の中に放り込んだ獲物を、弄っていたぶって、そんなに楽しいのですかっ!」
「……お前は、読心術が使えないとほんとに物分りが悪くなるな」
 自分の意図を中々理解してくれない、ルシフィアに幸助は少し憤る。
「だって、ずっと私は、それだけを頼りにして……生きてきたのに……うっうう」
 ルシフィアはついに、泣き出してしまった。それに自分で気がついて、ルシフィアは深く羞恥を感じた。まるで、泣いて許してもらおうという馬鹿な子供みたいだった。こんな命乞いをするつもりはない、彼女にだって能力者としての誇りはあるのだ。視線をはずさずにキッと、幸助を見つめながら、それでも青い瞳から止めなく涙が零れ落ちた。
「泣くなよ……」
 こうして目の前にして見ると、泣いているルシフィアは小さな少女に過ぎなかった。男としては、身長が高くもない幸助が見下ろせるほどに小柄の少女。
 彼女は幸助にはよりかかってくれない、フェンスにしがみついてなんとか倒れないようにと踏ん張っているのだ。その姿が、口よりも能弁に彼女の心を語っているように幸助には思えた。
「もう一度聞くぞ、ルシフィアお前は何が欲しかった」
 幸助はさらに一歩、ルシフィアに歩み寄る。もはや身体が触れるほどに。一瞬、身体がビクッっと震えたがすでに抵抗はなかった。手を掴んで握る、振りほどくほどの力もない。何気ないことだが、ちゃんと雰囲気を読み取って、女性にこういうことができるようになったというのがたぶん幸助のささやかな成長。
 しばらくそのままにして、幸助は返答を待った。
「私は……わかってほしかったです」
 長いこと待った末の言葉が、分かって欲しかったということ。理解。分かり合えるということ。たくさんの人に囲まれながら、その力ゆえにルシフィアは孤独。もうそれは、孤独をいつも傍らにおいて、友達にしてしまえるほどの孤独。それは諦めにも似た、安らぎだった。
 そう、孤独を安らぎにして慣れてはいたけれど、それは望んだものではなかった。ルシフィアが望んだのは理解。することではなく、本当は理解されることをずっと望んでいた。それなのに、彼女はただただ人を理解することだけをずっと強いられていた。
 人は、人の心は、あまりにも醜い。
 耳を塞いでも、入り込んでくる人々の本心に汚され陵辱され汚染されて、心がまるで何種類もの濃い絵の具をまじ合わせたような、汚く粘つく黒色のドロドロとした悪意の極色に塗り染められて穢された。それでもう、いつしかそれに何も感じなくなった。
 それは、人の醜さから目をそむけることで、自らの醜さからも目をそむけていたのかもしれない。
「辛かったんだな……」
 そういって、幸助はルシフィアの手を引き寄せて、そっと抱き寄せる。彼女はほんの少しだけ身じろぎして、そして幸助の胸で泣いた。こんなに素直に泣くことが出来たと本人が驚くぐらいに。

 まことに絵になる格好だった。幸助の容姿レベルが少し釣り合ってない気もするが、素直になったルシフィアは可愛かったし、幸助も悪い気はしない。でもこの間も幸助の頭は状況に酔うことなく、フル回転でルシフィアの心を理解して、読み取ろうとしていた。
(おおむね、うまくいった……できすぎたぐらいだ)
 幸助は、そうこっそりと心の中でほくそえむ。人は自分を理解してほしい、分かってほしい。それはルシフィアもいっしょだった。だが、理解は善意だろうか。そうではない、理解は悪意の現われでもある。ルシフィアがそうしたように、人の心を完全に理解するということは、その人を手中に収めていいように操るということでもある。
 心が読めなくなったルシフィアを落とすのは、予想通り赤子の手を捻るように簡単だった。読心術を使い、人の願望を読み取っていいように操っていた少女が、その力を使えない幸助の前では、まるで子供のように落ちる。これはこれで、面白いものだった。
 このまま、この人々の醜い心を汚されてなお、美しい少女を綺麗に落としてやってもいいのだが、それをやらないのが幸助でもある。

「……私は、同じ能力者のあなたなら、いいと思っていました」
 しばらくして泣き止んだルシフィアは、まるで、心の奥をさらけ出すように話し続けていた。涙が、頑なな心を流しきってしまったように。
 ルシフィアのことだ、本当はもっと上品なやり方で、もっともっとうまくことを運ぶつもりだったのだろう。それでも、結果が一緒ならば構わないということなのだ。
「そうか」
 ただ、それだけいって幸助はルシフィアの綺麗な髪を梳くようにして撫でてやる。それは、せっかく胸の奥から言葉を吐き出しているのだから、余計なことは言わないほうがいいという幸助のずるい計算でもあったけれど、たぶん自分が理解していることで正しいと幸助は考えて。
「私は、あなたにも能力者としての孤独を感じて欲しかった。私は酷い女です、同じ地獄に落ちてあなたも私と一緒になってほしいと思っていました」
「うん」
 そんなことを思っていたのかと本当は幸助は意外だったのだが。そうして、幸助のこれまでの道のりは、地獄というよりはむしろ極楽めいた道行きだったのだが。
「こんな私を、あなたは受け入れてくれるんですね……ああっ」
 そういって、頭をさらに強く幸助の胸に預ける。最後、聞いたんじゃなくて断定だった。そういう危うさに気づくほど、今の幸助に鋭さはない。
 結局、ルシフィアは特殊能力のある自分と他人に線引きしていて、それが彼女の孤独の檻を作っていたのだ。
 優れた自分を自認することは、劣っていることと同じように人を孤独にするもの。
 幸助が同じ能力者として、その内側に入ってきただけ。だから、ルシフィアは幸助に理想を投影している。初めての対等な他者を感じて、それだけでもう満ち足りている。それは、幸助にとって都合のいいことだから「うん」と頷いてやるが、本当は少し怖いことでもあるのだが、今の幸助にはわからない。もしかしたら、何かの拍子にルシフィアのいう『地獄』が見えるかもしれない。
 そうして、ルシフィアは初めて満ち足りたようにまた「ああっ……」と声をあげた。強く強く幸助を抱きしめていた。
 それは幸助が求めたからではなくて、ただ彼女がそれを自分に許したからだったのかもしれない。
第十二章「せいちょう」
 静まり返った教室で、幸助は必死に腰を振るっていた。ドクドクッと、半裸に向かれた貧乳ロングヘヤーの少女の膣内に射精する。
「磯辺由香里も、これで完了っと!」
 これで特別扱いの斎藤美世以外のクラスメイト全てへの陵辱が完成した。全員処女というトンでもない結果だったのには、さすがの幸助も驚いた。最近の高校生が遊んでいるという話は、幸助のクラスには当てはまらないらしい。
「こうやって、催眠アクセサリーをつけておけば」
 記念すべき最後の由香里嬢には、催眠リングにしておいた。銀色に輝くそれは、怪しい光を放っている。
「……かける」
 時間が倍速で動き出していく。乱雑に股を拭いただけで、パンツすら剥ぎ取られて穿いていない状態なのに、何も言わずに授業に戻る由香里。周囲も、何も言わない。これが、催眠アクセサリーの効果というものなのだ。
 担任教師も含めて、クラス全ての攻略を終えた幸助は授業にも飽きて青空を見る。前にも増して授業に身が入らない幸助。テストは時間停止でなんとでもなるから、大筋の流れだけ理解しておけばいい。
 マサキとの約束、幸助の成長。これで、自分は何か変わったのかと幸助は考える。
「いや……まだ足りない」
 授業が終わると同時に、幸助はカバンをもって飛び出すように走り出した。

「こうちゃん……最近変わったなあ」
 それを目を細めて見送るようにした美世は、小さく呟いた。

 そこから、幸助は見境なしだった。帰りの電車内、ちょっと美人なOLと目があうと、すぐ時間を停止して、パンツを剥ぎ取るようにして脱がし、カバンに常備してあるローションを股に突き刺してぶちまけて、すぐ挿入する。
 ガンガンと腰を振っているうちにお互いに身体がその気になるから、真っ赤な口紅を舐めとるように口をつけながら、中に出してやるのである。そうやってドロドロと精液を垂れ流していても、催眠アクセサリーさえつければ、後始末をする必要もない。

 あるときは、電車待ちをしていたランドセルを背負った小学生の下は……まあ使えないから口に無理やり挿入してイマラチオをする。まだ、育ちきってもいない胸を揉みつつ頭を抱えるようにして、口の中に欲望を吐き出す。
 そうして、時間の停止を解けば、いきなり口の中に出現した粘り気のある液体に小学生はむせて、半ばを飲み込み、半ばを吐き出してしまう。床にその娘が吐き出した、白濁の液体が飛び散っていた。隣にいた、同級生が心配そうに覗き込んで背中をさすっているのを、幸助は他人の振りをして楽しげに見ているのである。まさに鬼畜の所業であった。

 やりたい盛りの高校生のリミッターをはずしてしまうというのは、恐ろしいものだ。幸助もこれはやりすぎじゃないかと自戒しつつも、若々しい睾丸は吐き出しても吐き出しても新しい精液を生産して、それを幸助は誰を使って発散させてもいい立場にいるのだ。これでは、やるなというほうが酷というものかもしれない。

「やっぱやりすぎだけど……」

 だがそう考えていた矢先に、自宅の近くの駅で降りてから、犬を散歩させていた中学生ぐらいの長髪の少女にまたムラムラきて、服を引きちぎるようにして襲ってしまい、そのついでとばかりに、井戸端会議に興じていた駅前の大型マンションの若妻まで、ローションまみれにして抱きつくように中に射精するにいたっては、もはや幸助は自戒するほうを止めた。
 出しても出しても、まだ足りない幸助の欲望。白熱する銅線が火花を散らしながらオーバーヒートするように。幸助の行く先には、どんどん犯されていく女たちが増えていく。
 犯して犯して犯して、身体の力が燃え尽きてしまうまで犯して。そうして、倒れるように休んで犯して犯して犯して。そのようにして、幸助の身体と心は獣のような新しい熱に冒され、塗り替えられていく。
 それは、身体の毒が全て出てしまうような感覚だった。自分の凶暴に身を任せて、それをやりきってしまうことで、幸助の存在自体がムクムクと膨れ上がっていく。彼は、自分が自由で、そして大きな力をもった存在であることを実感として自覚したのだ。

 それはたぶん、幸助の「覚醒」だった。
第十一章「まんしょんぷれい」
 さて、ついこの間あやうく芽衣子に殺されそうになった我らが幸助くんはというと、やっぱり時間停止を使って女を犯すしかやりようがなかった。
 とりあえず、芽衣子のほうの問題が片付いたので彼の時間的制約はなくなったともいえるのだが、これで本当にこんなことをやっていて成長できるのだろうか。
 まあルシフィアと対峙しようにも、外堀を埋めたままでチェックメイトする決め手がないのが今の幸助の現状だからしょうがないともいえるのだが……成長への糸口を探すような気持ちで、彼は今日も陵辱にまい進する。

 クラスメイトをあらかた犯しつくした幸助は、今度は担任教師の如月弥生を狙うことにした。学校ではなく、わざわざ深夜に時間を止めて自宅に出向いたのはちょっと酷いことをするつもりだからである。
 弥生の自宅は学校の職員室で調べることができた。いまどき紙ベースで職員情報を綴ってるって、情報管理が遅れている。学校法人なんて、こんなものなのかもしれないが、紙媒体だとパスもかけられないので、職員室に入られたら経歴から住所年齢まで丸分かりになる寸法である。ちなみに、如月先生は二十四歳だった。
 独身教師の如月弥生はマンションで一人暮らし、意外にも幸助の自宅にわりと近い位置にあったので、深夜に自転車で向かう。月夜と街頭が照らす深夜を、自転車で移動するのも中々珍しい経験だった。
「時間停止させてないと、補導とか不良とかが怖くてこんな時間に出歩けないからね」
 ちょうど午前零時も過ぎたあたり、幸助の家は駅近くの住宅街のほうで、如月先生のマンションは国道寄りにあった。
「あの部屋かな」
 如月先生の部屋は501号室。右から順番だとすると、たぶんあの部屋だろうと目算はついた。カーテンからベランダに差し込む明かりは、在宅でまだ起きてることを示す。
「まだ起きてるのか、明日も学校なのに……寝てくれてたほうが都合がよかったんだが」
 起きてるものは仕方がない。
 自転車のかごから、荷物を担いで入り口へ。
「入り口、住人じゃないと開かないのか……」
 がっちりと頑丈そうな二重のガラス戸で仕切られている。他の住人や宅急便でも着たときに一緒に通ってしまえばいいのかもしれないが、深夜なのでそんなものを待っていても埒が明かない。
「これは困ったな……」
 ぴっちりと閉じている自動扉を見て途方にくれる。時間が止まっていても、こじ開けるのは無理だろう。割れば時間が動くと同時に非常ベルがなって厄介なことになるだろうし……これじゃ入り口からは無理だな。
「ああ……そうか、災害用の非常階段があるはずだな」
 裏の非常階段から回れば、こっちは入り口に施錠もなく普通に侵入できた。これじゃあ、認証の意味がないような気がするのだが。もしかすると、管理人室からカメラで監視されてたりするのかもしれない。時間が止まっているので問題はないが。結局は地方都市の普通のマンション、形だけのセキュリティーで、結構ルーズな警備なのだろう。
 壁に張り付くように作られている無機質な鉄骨の非常階段を登っていく幸助は、なぜか妙にわくわくするのを感じた。
 この部屋かな……。ちゃんと表札がかかっているので間違えようがない。
 喜び勇んで、ドアノブをまわすと……
「……鍵がかかってる」
 どこまで、幸助はアホなのだろう。それはマンションの部屋の扉に鍵ぐらいかかっていてあたりまえだろう。
「そうだ……」
 時間を動かして、イヤホンを鳴らして隠れる。
 しばらくして、「こんな時間にだれよ!」とか弥生は悪態つきながら、ガチャリと扉があけた。
 また、すかさず時を止める。
「如月先生が起きてて……結果的によかったわけだ」
 もし、早めに弥生が寝ていたら扉を破壊して入らなければなかったわけだ。
 チェーンをはずしてマンションの扉を開けるほど、弥生も馬鹿ではないようで。幸助は、かかっていた扉のチェーンを隙間から手を伸ばしてそっとはずし、不機嫌そうな弥生と扉の間を抜けて、入っていく。そして、また内側からチェーンを止める。
「さてと……」
 なんというか、本当にただの1LDKの狭い一室である。ベットが一つあって、テレビがあって板張りの床には女性誌が乱雑に散らばっていて、安物そうな化粧台が一つおいてあって、その前にまた乱雑に化粧品が並んでいる。台所には、酒の空き瓶や弥生が飲んだらしい缶ビールの空き缶が山のようにビニール袋に包まれて置かれている。なんか雑然とした部屋だなあという感想。
 そのカオスには女性らしさの欠片も感じられずにがっかりした面もたしかにある。
 だが、逆に考えてみれば独身女性の一人ぐらしなんてこんなものなのかもしれない。
 幸助は、山本姉妹の綺麗な住まいしか知らないので、その独身女性の一人暮らし生活のリアリティーに衝撃にも似た奇妙な色気を感じた。
 安物の香水が仄かに匂い立ち、また安物そうな少しくたびれた下着がカーテンの内側に干されているのがまたエロスを感じさせる。
「隠れられそうな場所は……ベランダ以外ないか」
 ベランダの鍵が開いている、まあ五階だから無用心にもなるか。
 とりあえず、幸助はベランダの外のカーテンから室内の様子を伺うことにした。そのようにして、時間をまた再起動させる。
「まったく……なによ、こんな時間に悪戯? 馬鹿にしてっ!」
 悪態つきながら、疲れた眉をひそめるようにして、機嫌が悪そうに荒々しく鍵を閉めて、室内に戻る。学校では声を荒げる姿も見たことがないというクールビューティーの如月先生が、自分の部屋に一人だとこんな顔を見せるということに幸助は驚く。
 これが、仕事の顔とプライベートの表情の違いというやつか。
 テレビをBGM代わりに足投げ出すように座り、鏡に向かって眉を整えながら、たまにマナーモードの携帯がブーンブーンと鳴っているのは友達とメールでもしているのだろうか。風呂上りなのだろう、寝巻き代わりのシャツにジャージの下という百年の恋も冷めそうな色気のない格好だが、ブラもつけてないで透ける乳頭はそれはそれで高校生の幸助には強い刺激で、別方面の淫靡を感じさせる。
 弥生が教師という職業のためか、おとなしめの自然派メイクでよかっただろう。マニュキュアもつけてないのだから。風呂上りで化粧すらしていない弥生が、眉でもなかった日には変に繊細な部分がある幸助は犯す気もなくなってしまうかもしれない。
 元々がわりと端正だし、まだ若いからノーメイクでも可愛いものである。まだ乾ききっていない風呂上りの艶やかな髪は、これはこれで大人っぽい魅力を感じさせる。弥生は、まさに女の盛りを迎えつつある年齢なのだ。
「なかなか寝ないな……」
 最初は弥生の素の生活を覗くだけで興奮していた幸助も、全然眠らないので、ベランダで部屋を覗きながらジリジリとする。寝不足は美容に悪いんじゃないだろうか。午前は一時を過ぎようとしたころ、ようやく電気を消してベットにもぐりこんだ。
 ただ、幸助の計画ではここからが長いのである。弥生の寝息が聞こえるようになってからも、しばらく待たなければならない。完全に熟睡して、夢でも見るには三十分は待たないといけないだろう。

「も、もういいだろうか……」
 静かに時間を止めて室内に入る。大きなボストンバックの荷物を片手にしている幸助は、電気をつけてからおもむろに荷物を取り出す。全身拘束具に、目隠しに猿轡、ローションに、大きさの違う各種バイブ。ベットを汚さないように専用のマットまであるのだ。SMプレイグッツ……というより、これは完全レイプグッツか。こんな道具を「試して見ないか?」というマサキから借り受けてきたのだ。
 すぐにシャツと、ジャージとピンクのパンツを剥ぎ取って真っ裸にすると、その身体にゴム製の黒い全身拘束具を貼り付けていく。まるで、大きな輪ゴムが無数に身体に巻きつくような構成で、身体を傷つけずに胸や股など大事な部分はさらけ出して、大また開きになるというのがこの拘束具の売りである。
 手先が器用なマサキならあっという間なのだろうが、拘束初心者の幸助にとっては、まるで慣れていないプラモデルを造るようなもので、説明書を何度も確認しながらかなり苦労して拘束した。まあ、時間はいくらでもあるから、それなりにちゃんとした拘束をすることはできた。そして、黒い目隠しに猿轡もちゃんと弥生に取り付ける。
「なかなか淫靡な姿だな……」
 あのお堅い数学教師が、手足を縛られて大また開き。まるでM女の変態女のようで興奮する。本当なら念入りな前戯をするのだが、あえてここは、股をローションでベットベトにしてやる。
「いや焦るな、ここは先に肛門からだ」
 アナルビーズにローションをなじませ、一個一個数珠つなぎのそれを肛門へと嵌めていく。
「う……うっ……」
 穴に一個一個ビーズば入るたびに、うなってはいるようだが、まだ時間を止めているのでアナルをえぐられる強烈な感覚でも、目を覚ますことはない。ぼこっ、ぼこっと中指ほどの大きさのビーズを肛門に埋めていく。
 散々ローションで慣れさせてはいたものの、経験がなかったらしく居れるのには苦労した。まったくしてなくても、うんこが出る器官だから指程度の大きさのビーズが入らないわけもない。
 それでも直腸の中をうねって、お腹の中にビーズが溜まっていく感覚が酷い圧迫感をあたえるのか、弥生は苦しみに息を荒くした。
「うっ……」
 十個のビーズが全て弥生のお腹の中に埋め込まれる。
「これでよしっと」
 そして幸助は残酷なことに、こうやって完全に弥生の身体の自由を奪ってから時間を動かせ始めた。


プロフィール

ヤラナイカー

Author:ヤラナイカー
おかげさまでプロ作家になって五年目です。
ボツボツと頑張っていきますので、今後ともよろしくお願いします。
(プロフの画像、ヤキソバパンツさんに提供してもらいました)



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